商標の価値はどう算出する?──弁理士が「7日で示す目安」と実務の進め方を解説

商標の価値を7日で算出するためのRFR法(ロイヤリティ免除法)の解説イメージ

事業で使っている商品名・サービス名・ロゴなどの商標(登録済み・出願中)は、日々の売上に直結していても、「どのくらいの価値があるのか」は数字として見えづらいものです。

一方で、次のような場面では、「この商標はどのくらいの金額で扱うべきか」という目安が必要になることがあります。

  • 商標を譲渡する際に、どの程度の金額で扱うべきか目安を整理しておきたいとき
  • グループ内や関連会社間で、商標を1つの会社に集約するか検討するとき(移転時の価格の目安にしたいとき)
  • 協業・共同プロジェクトの話し合いで、その商標の使用料などを整理したいとき
  • 商標の更新のタイミングで、「商標を残すかどうか」を判断したいとき
  • 既存ブランドをリニューアルするにあたり、「今の商標」の価値を把握しておきたいとき

こうした場面では、商標の価値を判断するための「根拠ある数字の目安」を短期間で用意しておくことができると、その後の協議や社内の検討をスムーズに進めやすくなります。

この記事では、当事務所が行っている商標(登録済み・出願中)を対象とした簡易価値評価について、専門用語を使いすぎずに「なぜ7日で商標の価値の目安を出せるのか」「どういう場合に役立つのか」をまとめました。

1. 評価の対象になる商標(商品名・サービス名・ロゴ)

まずは、どのような商標(商品名・サービス名・ロゴ)がこの簡易価値評価の対象になるのかを整理します。代表的には、次のようなケースです。

  • 登録済みの商標(商品名・サービス名・ロゴなど)
  • 出願中の商標(登録を前提に使い始めている名称)
  • すでに実務で使っているブランド名やシリーズ名で、今後の商標登録を検討しているもの

※ 未登録の名前だけでも整理は可能ですが、その場合は、「将来の商標取得を前提にした参考値」としての位置づけになります。実務上は、登録済み・出願中の商標の方が、価値の根拠を整理しやすくなります。

2. なぜ短期間で数字が出せるのか(RFR法の考え方)

当事務所では、商標・ブランド価値の算定で広く使われるRFR法(Relief from Royalty:ロイヤリティ免除法)の考え方をベースにしています。

RFR法とは?
「その商標・ブランドを他社から借りるとしたら、売上の何%を支払うか」という発想で、事業に対する貢献度を金額に置き換える方法です。

より詳しい仕組みは、こちらの解説ページで説明しています:👉 RFR法の基本ガイド

RFR法で商標の価値を算出するための手順はシンプルで、次の流れになります。

  1. 相当実施料率(その商標を借りるとしたら売上の何%(例:1~5%))を受け取るかを決める
  2. 売上×相当実施料率=その商標が「1年間に生み出す価値の目安」を計算する
  3. 商標を使い続ける期間(例:2〜3年)を想定し、その間に商標が生み出す価値を合計する
  4. お金の時間価値を反映し、先の年ほど価値を少し割り引き、今の時点の金額(現在価値)に換算する
  5. 条件の幅によるぶれ(売上や相当実施料率の増減)を踏まえ、商標の評価額の「上限〜下限のレンジ」を導く

この方式を使うことで、「最短5〜7営業日」でも、社内外で説明しやすいレベルの評価書を提示することができます。

3. こういうケースで役立ちます

  • 商標を譲渡する際に、どの程度の金額で扱うべきか目安を整理しておきたいとき
  • 関連会社・グループ内で、商標をどの会社に集約するか検討したいとき
  • 協業・共同プロジェクトの検討で、その商標の使用料などを整理しておきたいとき
  • 商標更新のタイミングで、「残す商標/手放す商標」を検討したいとき
  • ブランド名やロゴをリニューアルする前に、現在の商標の価値を把握しておきたいとき

いずれも、「今すぐM&Aのために精緻な企業価値評価をする」というよりは、「商標の扱いを決めるための短期評価」として利用されるイメージです。

4. 評価内容(どんな資料が手に入るのか)

簡易価値評価では、商標の価値を「どのように判断したのか」「商標の価値が、どのくらいの金額帯になるのか」を、関係者が確認できるように資料として整理します。実務では、次のような形で提供されるケースが多いです。

  • 1枚のサマリー(要点と商標の価値の金額帯を一覧化)
  • 詳細な評価書(前提・試算・条件を変えた際の金額の変化)

「なぜこの金額帯になるのか」が説明できる構成になっており、社内稟議・取引先説明・比較検討などでそのまま使えます。

5. よくある質問(実務でよく聞かれるポイント)

商標の価値を整理する際に、実務でよくいただく質問を補足としてまとめました。検討時に知っておくと安心なポイントです。

Q. 機密情報は大丈夫?
弁理士には法律上の守秘義務がありますので、原則としてNDA(秘密保持契約)は不要です。ただし、貴社の社内規程などで締結が必要な場合は、NDAにも対応しています。

Q. どんな情報が必要?(概算でOK)
・直近3〜6か月の売上・粗利
・広告費・チャネルの比率
・対象商標(または候補名)の登録/出願状況

Q. まだ登録していない名前の評価は?
出願前の名称についても整理は可能ですが、将来の商標取得を前提にした参考値としての扱いになります。
収益ベースでの算定が難しい場合は、再取得コスト等を用いた参考評価にとどめることもあります。

6. まずは前提条件のすり合わせから(無料)

商標の価値を、短期間で整理してみませんか?

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米田恵太
弁理士。当サイトの運営責任者。幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、大切なものをパクられないようにすべく、特許や商標などの知的財産で大切なアイデアなどを守ったり、活用したりするサポートをしています。 商工会議所、商工会、金融機関、企業など各種業界団体での講演実績も多数。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家のみならず、デザイン会社、マーケティング会社、ミシュランに掲載の飲食店など多岐にわたっています。