相当実施料率(ライセンス料率)の基礎と前提
商標の価値をお金で説明するとき、まず重要になるのが相当実施料率(ライセンス料率)(以下、料率)です。
かんたんに言うと、「他社ブランドを借りて使うなら、売上の何%を支払うか」という割合のこと。
多くの実務では売上高に対する%で表し(例:2〜5%)、この料率を使ってブランドを持つことで得られる価値を見積もります。
なぜ「1〜5%」がよく出てくるのか
裁判例や調査の傾向
公開情報(裁判例の整理や業界調査)を見ると、多くの案件は1〜5%の範囲に入ります。
もちろん個別事情で上下します。
- 上振れ要因:著名・独自性が強い、指名検索が厚い、代替が難しい。
- 下振れ要因:代替が容易、広告依存が大きい、使用実績が浅い。
平均値は業種や販売チャネルで変わります。相場×個別事情の掛け合わせで判断します。
特許との違い(なぜ商標は控えめ?)
- 特許は「技術の独占」が効くため、料率が高め(例:5〜10%)になりやすい。
- 商標は「識別・信用」の影響が中心で、代替できる余地があれば控えめ(1〜5%)になりやすい。
実務での決め方:3つを見ると整理しやすい
- ① 周知性・独自性:指名検索や自然な口コミが厚いか。
- ② 利用範囲:区分の広さ、販路(直販/卸/EC)、地域(国内/海外)。
- ③ 事業の安定性:売上の継続性、返品・解約率、広告停止後の維持率。
【例】自社ブランドをネットで販売する場合
※仮の例です。
- 事業:オンライン販売が中心のオリジナル化粧品。
- 年商:5,000万円。事業譲渡を検討。
- 周知・独自:指名検索と口コミが多い → やや上振れ
- 利用範囲:今は国内直販中心 → 標準
- 安定性:3年継続・返品低め → 安定
結論:料率レンジは2.5〜4.0%。中心値3.0%で試算すると…
(この数字を次のステップで「いまの価値」に直します)
どうやって「いまの価値」に直すの?
考え方はシンプルです。
ブランドの力で、これから先に得られる利益を「1年ごと」に見積もり、
その合計をいまの金額に直して計算します。いわば将来の利益の前取りです。
→ ここから金利の考え方で「いまの金額」に割り戻して合計します。
※ 専門的には「現在価値」と呼び、将来の利益を割引率で調整して合計します。
数式で書くと:PV=各年の税引後CF ÷ (1+割引率)年数。
でも要は「ブランドの力で得られる利益」を、金利を使って現在の価値に換算するだけです。
料率を上げ下げするときの目安(かんたんチェック)
- ほかの名前に置き換えやすい? → 置き換えやすいなら料率を下げ。
- 広告を止めても売上は残る? → 残るほど料率を上げ。
- SNS・口コミなどの自然流入は厚い? → 厚いほど料率を上げ。
実際に評価をお願いする場合は?
ここまでが「料率の考え方」と「計算のイメージ」です。
では、これを実案件として進めるときの料金や流れを紹介します。
料金と納期
商標権の価値評価は税込11万円、ドラフト最短5営業日。詳細は下記ページにまとめています。
商標権の価値評価(概要・料金・FAQ)の「料金と納期」を見る
弁理士対応の強み
料率の根拠づけや、条件を変えた試算(いわゆる感度分析)なども、弁理士が直接対応します。
社内稟議や交渉資料としてそのまま使える形に仕上げます。
よくある質問(FAQ)
Q1. まだ売上がない段階でも評価できますか?
A1. 収益ベースが難しい場合は、再取得コストや防護の必要性、将来回避できるコスト等に基づく参考評価へ切り替えます。
Q2. 特許のロイヤルティ率とどう違いますか?
A2. 特許は技術の独占が効くため高め(例:5〜10%)、商標は識別・信用の寄与が中心で控えめ(例:1〜5%)が多い、というのが一般的な傾向です。
※ 本記事は一般的な説明です。実際の適用は個別事情によって異なります。個別案件では前提をすり合わせたうえで、レンジでの提示を行います。