ロイヤルティ料率の業種別相場と
裁判所が料率を決める3つの要因

裁判例227件+経産省アンケート148件の統合分析 ── 代表事例18件で解説

最終更新:2026年4月|データ出典:ロイヤルティ料率データベース(375件収録)

📑 目次

データの全体像

本記事は、当事務所が運営するロイヤルティ料率データベースに収録された375件のデータから、業種別の料率分布と裁判所の認定メカニズムを分析したものです。

227件
裁判例
148件
経産省アンケート
375件
DB総収録数
4.7%
裁判例 特許平均
3.2%
アンケート 特許平均

経産省アンケート調査(企業が実際に合意した料率)と裁判所の認定値には構造的な乖離があります。特許権では+1.5ポイント、商標権では+0.6ポイント、裁判所の認定が高くなっています。以下、業種別に代表事例18件を抜粋して解説します。

IT・通信分野 ── 0.01%〜20%

事件番号対象知財料率増減理由の要点
令和4年(ワ)第7976号特許権(LTE標準必須特許)9.0%FRAND条件下のSEP。通信規格への必須性(代替不可能)が料率を押し上げ。アンケート電気分野平均(2.5%)の約3.6倍
令和4年(ネ)第10046号特許権(コメント付き動画配信特許)2.0%動画配信サービスのコメント表示技術。サービス全体における寄与度が限定的
平成13年(ワ)第17772号特許権(窒化物半導体結晶膜)20.0%青色LED基礎技術の職務発明対価事件。製品の核心技術で代替不可能
IT・通信分野の読み方:同じ電気分野でもSEP(9%)と寄与度限定の特許(2%)で約4.5倍の差。「その特許がなければ製品が成立しないか」が最大の分水嶺。

機械・製造分野 ── 0.2%〜30%

事件番号対象知財料率増減理由の要点
令和5年(ネ)第10052号特許権(SDダイサー)15.0%半導体製造装置の基幹技術。既存ライセンス契約料率(15%)を参照。一審では30%認定
令和4年(ネ)第10073号特許権(IQOS関連特許)10.0%加熱式たばこの中核技術。製品の差別化に直結する技術で高率認定
令和4年(ネ)第10062号職務発明対価(業務用エアコン)3.5%省エネ技術の職務発明。使用者貢献度を高く評価し仮想実施料率を低めに認定
機械分野の読み方:アンケート平均(2.6%)に対し裁判例では3.5%〜30%と大きく上振れ。既存ライセンス契約が存在する場合、その契約料率が有力な認定根拠に。

建設分野 ── 0.9%〜15%

事件番号対象知財料率増減理由の要点
令和5年(ワ)第70402号特許権(サイフォン雨樋)15.0%製品構造全体に関わる核心技術。代替技術なし・故意侵害を考慮。アンケート固定構造物平均(3.3%)の約4.5倍
令和6年(ワ)第70096号特許権(遮熱)5.0%遮熱技術。寄与度は認められるが代替技術も存在
令和3年(ワ)第29254号特許権(仮設防護柵)6.0%安全設備。安全規格との関連で代替困難な技術と評価

化学・医薬分野 ── 2%〜15%

事件番号対象知財料率増減理由の要点
令和4年(ワ)第3344号特許権(骨粗鬆症治療薬テリボン)15.0%薬効に直結する物質特許。後発医薬品参入に対する特許権侵害で代替困難
令和元年(ワ)第20074号特許権(加熱式タバコ用加熱アセンブリ)10.0%加熱部品に関する特許。製品の核心部品で売上貢献度が高い
令和4年(ワ)第11405号職務発明対価(セレキシパグ)5.9%肺高血圧症治療薬の物質特許。使用者貢献度を高く評価し仮想実施料率を控えめに
化学・医薬分野の読み方:アンケート平均(3.9%)に対し裁判例平均は5.4%。物質特許(薬効に直結)は高率、製法特許は中程度。職務発明では使用者貢献度が大きく考慮される。

商標権 ── 0.1%〜10%

事件番号対象知財料率増減理由の要点
平成30年(ワ)第16422号商標権(第43類 飲食物の提供)8.0%飲食チェーンの商標権侵害。商標の顧客吸引力が高く売上に直接寄与
令和5年(ネ)第10070号商標権(第35類 小売)4.0%小売業の商標権侵害。知名度・識別力を考慮した中間的認定
令和2年(ネ)第10017号商標権(第29/30/31/32類 食品)0.5%顧客吸引力が限定的で寄与度が低いと判断
商標権の読み方:アンケート平均3.0%に対し裁判例平均3.6%。特許権ほどの乖離はないが、顧客吸引力×寄与度で0.1%〜10%まで幅広く分布。ブランド力が強い商標ほど高率。

その他(不正競争・著作権等)

事件番号対象知財料率増減理由の要点
平成30年(ネ)第10081号不正競争(マリオカート関連)15.0%任天堂の著名表示の冒用。マリオブランドの絶大な吸引力+被告が全面依拠
令和4年(ネ)第10063号不正競争(GODZILLA類似表示)10.0%東宝の「GODZILLA」に類似する「GUZZILLA」表示。既存ライセンス契約料率を参照
令和6年(ワ)第70128号特許権(箱型船)8.0%船舶構造に関する特許。技術の重要性を考慮し上限8%を認定

業種別統合比較表

経産省アンケート調査(企業間契約の実勢値)と裁判例227件(裁判所認定値)の業種別比較です。

業種アンケート
(実勢値)
裁判例
(認定値)
認定レンジポイント
IT・通信 2.5%
(n=46)
3.1%
(n=37)
0.01〜20% SEP(9%)と寄与度限定特許(2%)で4.5倍差
機械・製造 2.6%
(n=49)
5.3%
(n=49)
0.2〜30% 実勢値と認定値に約2倍の乖離。既存契約が強力な根拠に
化学・医薬 3.9%
(n=90)
5.4%
(n=34)
2〜15% 物質特許は高率(テリボン15%)、製法は中率
建設 3.3%
(n=36)
4.5%
(n=12)
0.9〜15% 代替技術の有無で最大17倍差
商標権 3.0%
(n=146)
3.6%
(n=35)
0.1〜10% 顧客吸引力×寄与度で変動。著名ブランド冒用は不正競争で高率

裁判所が料率を増減させる3つの決定要因

要因1:代替技術の有無(代替可能性)

「その特許技術を使わずに同等の機能を実現する代替技術が存在しない」場合、料率は上昇します。LTE標準必須特許(代替不可能)で9%が認定された一方、代替技術が存在するコメント付き動画配信特許では2%にとどまりました。

要因2:売上への貢献度(技術寄与度)

特許発明が被告製品の売上にどの程度貢献しているか。サイフォン雨樋の構造全体に関わる特許(=製品の核心技術)で15%が認定された一方、商標の顧客吸引力が限定的な食品事件では0.5%にとどまっています。

要因3:侵害態様と当事者の関係

故意の侵害は料率を引き上げます。サイフォン雨樋事件では、被告が特許を認識しながら実施を継続した点が考慮され、アンケート平均(3.3%)の約4.5倍となる15%が認定されました。

料率増減要因のまとめ

要因料率への影響代表的な認定例
代替技術なし↑ 上昇LTE標準必須特許 → 9%
代替技術あり↓ 低下動画配信特許 → 2%
売上全体に寄与↑ 上昇サイフォン雨樋(構造全体)→ 15%
一部機能のみ↓ 低下食品商標(寄与度限定)→ 0.5%
故意の侵害↑ 上昇サイフォン雨樋(特許認識下)→ 平均の約4.5倍
過失の侵害→ 平均水準偶然の類似技術開発 → 業界平均付近

実務上の3つの示唆

①「実勢値」と「裁判認定値」には構造的な乖離がある

特許権全体で3.2%対4.7%(+1.5pt)、商標権で3.0%対3.6%(+0.6pt)。ライセンス料率を設定する際には、「どちらの数値を出発点とするか」を意識する必要があります。

②「安定している分野」と「大きく変動する分野」を見極める

IT・通信(0.01〜20%)や機械(0.2〜30%)は技術の必須性で大幅に変動。一方、商標権(0.1〜10%)は比較的レンジが狭い。自社の知財がどちらのタイプかを見極めることが出発点です。

③特許だけでなく商標・職務発明・不正競争も含めた横断的な視点

知財ポートフォリオ全体の価値評価には、権利種別ごとの相場感とデータソースの性質の違いを把握することが重要です。

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データ出典

本記事は知的財産の価値評価に携わる弁理士の立場から、公開データを整理し実務上の参考情報として提供するものです。

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