「特許の価値を数字で出したいが、費用の相場がわからず予算が組めない」「数百万円かかる鑑定と、11万円の簡易評価、自分のケースにはどちらが必要なのか?」
特許のライセンス交渉やグループ内での譲渡を進めるにあたり、価値評価にかかる費用の幅に戸惑う方は多いはずです。M&Aで用いられる本格的なDCF法は数百万円、一方で弊所が提供する簡易RFR法は11万円(税込)。この価格差を前にして、「安い方で交渉や税務の場面に通用するのか?」と不安を感じるのは当然です。
結論として、この価格差は精度の「良し悪し」から生じるものではありません。評価額を出すまでにかかる人手と時間の違いが費用の差を生んでいます。交渉のたたき台や社内稟議の根拠を短期間で用意したいのか、大規模M&Aの最終価格を決めるために万全の鑑定書が必要なのかによって、選ぶべき手法は変わります。
ここでは、特許の価値評価に携わる弁理士の立場から、費用の内訳と、事業目的に応じた使い分けの基準を整理します。
特許価値評価の費用が「数百万円」から「11万円」まで開きがある理由
特許の価値評価にかかる費用は、大きく2つの手法で異なります。本格的なDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)であれば数百万円、簡易RFR法(ロイヤルティ免除法)であれば11万円です。
この費用差は、「評価額を出すまでに、どれだけの人手と時間がかかるか」の違いから生まれます。DCF法では、公認会計士やアナリストが市場調査や事業計画の精査に数週間かけます。簡易RFR法では、すでに存在する売上データと料率を使うため、そこまでの工程が不要です。計算式の優劣ではなく、評価額を出すまでの「準備作業の量」が違うのです。
本格評価(DCF法):将来10年分のキャッシュフローを一から予測する
DCF法は、その特許が将来生み出すキャッシュフローをできる限り詳細に予測する手法です。「今後10年で市場シェアはどう変わるか」「競合技術が出現するリスクは」「割引率をいくつに置くか」——こうした不確実な前提を一つひとつ検討するために、公認会計士やアナリストなどの専門家チームが動きます。
事業計画書の精査、市場調査、技術の陳腐化リスクの分析など、やるべき作業が多いほど費用も上がり、数百万円規模になることも珍しくありません。M&Aにおける最終的な買収価格の決定や、上場企業の取得原価配分(PPA)など、厳密性が最優先される場面で使われます。
簡易RFR法:実績データに絞ることで手間と費用を抑える
一方、弊所が採用している簡易RFR法(Relief from Royalty:ロイヤルティ免除法)は、長期の将来予測に過度な時間をかけません。評価のベースとなるのは、「直近の売上実績」と「技術寄与度を踏まえたロイヤルティ料率」という、すでに存在する客観的なデータです。
「この特許を第三者からライセンスして使うとしたら、売上の何%を支払うのが妥当か」——この問いに焦点を絞り、実績値をベースに価値を算出します。前提条件の組み上げに数週間かける必要がないため、11万円(税込)・最短5営業日で評価書を納品できます。
簡易RFR評価が「11万円でも交渉・税務に使える」理由
費用が安いと「その分、信頼性が低いのでは」と心配になるかもしれません。しかし、RFR法そのものは国際的な価値評価の現場でも広く使われている手法です。簡易RFR評価の費用が抑えられているのは、手法が簡易なのではなく、「企業全体の将来」ではなく「その特許にいくらのライセンス料を払うのが妥当か」だけを算出する設計にしているからです。
DCF法が「企業全体の将来キャッシュフロー」を出発点にするのに対し、簡易RFR法は「その特許にいくらのライセンス料を払うのが妥当か」だけを算出します。事業計画書の精査や市場シェア予測といった、不確実性の高い工程を経由しないため、必要な作業量が大幅に減ります。
その代わり、簡易RFR評価の結果は一点の断定額ではなく、前提条件の幅を反映した「価格帯(レンジ)」として提示します。「この前提であれば○万円〜○万円」という形で整理することで、交渉の出発点や社内稟議の根拠として十分に機能します。
あわせて読みたい:特許価値評価の3つの手法(インカム・コスト・マーケット)を比較|どう使い分けるか?
【比較表】事業目的別:簡易RFR評価と本格評価(DCF法)の使い分け
「自分のケースにはどちらが必要か」を判断するための基準を、事業目的別に整理します。
| 事業目的 | 簡易RFR(11万円) | 本格評価・DCF(数百万円) |
|---|---|---|
| グループ内での特許譲渡の価格根拠 | ◎ 適合 | △ 過剰になりやすい |
| ライセンス交渉の料率根拠 | ◎ 適合 | △ 過剰になりやすい |
| 社内稟議・投資判断の参考資料 | ◎ 適合 | △ 過剰になりやすい |
| 金融機関への説明資料 | ○ 対応可能 | ○ 対応可能 |
| 大規模M&Aの最終価格決定 | △ たたき台としては有用 | ◎ 適合 |
| 上場企業の取得原価配分(PPA) | × 対象外 | ◎ 適合 |
表に示す通り、グループ内の譲渡価格やライセンス交渉の根拠として使う場合は、簡易RFR評価で十分に対応できます。一方、上場企業の取得原価配分のように監査法人の承認が求められる場面では、本格的なDCF評価が必要です。
迷った場合のポイントは、「この評価結果を誰に見せるか」です。社内の意思決定者や取引先に見せる場合は簡易RFR、監査法人や裁判所に提出する場合は本格評価——この基準で選べば、必要以上にコストをかけずに済みます。
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特許が複数ある場合の費用——ポートフォリオ評価という選択肢
商標の評価は通常「1ブランド単位」で完結しますが、特許の場合は事情が異なります。「関連する特許が5件あるが、製品としては1つ」「事業部ごとに特許群を持っていて、グループ再編で一括譲渡したい」——こうした、複数の特許をまとめて評価するニーズは特許に特有のものです。
このような場合、1件ずつ個別に評価するよりも、関連する特許群をまとめて「ポートフォリオ」として評価する方が、費用を抑えられるだけでなく実態にも合った結果になります。製品1つに対して複数の特許が貢献している場合、各特許を個別に評価すると、売上への貢献を重複してカウントしてしまうリスクがあるためです。ポートフォリオ単位であれば、製品全体の売上に対する特許群全体の貢献を一括で算定でき、論理的にも整合性の取れた評価書になります。
弊所では、ポートフォリオ評価の費用は件数・技術分野の広がりに応じて個別にお見積りしています。目安として、同一技術分野の関連特許3〜5件であれば、1件ずつ評価する場合の総額よりも費用を抑えられることが多くなります。件数や評価の目的に応じた進め方は、無料相談(30分)でご提案します。
あわせて読みたい:M&Aにおける特許ポートフォリオ評価|買収価格に技術の値段をどう反映させるか
特許ならではの評価の工夫——「技術寄与度」が料率の根拠になる
特許の価値評価には、商標にはない固有の要素があります。それが「技術寄与度(Contribution)」です。
商標の価値が「その名前やロゴが消費者を引きつける力」で測られるのに対し、特許の価値は「その技術がなければ製品が成立しないか」「代替技術が存在するか」「コスト削減にどれだけ貢献しているか」という技術面の分析で測ります。
簡易RFR評価でも、この技術寄与度の分析は省略しません。特許の対象技術が製品全体のうちどの部分をカバーしているか、その部分が利益にどれだけ貢献しているかを分析し、料率の根拠を明示した評価書として仕上げます。「なんとなく3%」ではなく、「この特許の技術寄与度を踏まえると○%が妥当」と説明できる状態にすることが、11万円の評価書に含まれる作業です。
あわせて読みたい:特許のロイヤルティ料率(3〜5%)は何で決まる?|「技術寄与度」で根拠を示す方法
売上がない特許(休眠特許・スタートアップ)の費用と評価方法
「売上がまだない特許でも評価できるのか。できるとしたら費用は変わるのか」——この疑問を持つ方も多いはずです。
RFR法は「売上 × ロイヤルティ料率」を基本構造とするため、売上データがなければ使えません。売上がないスタートアップの特許や、自社で製品化しておらずライセンス収入もない休眠特許については、コストアプローチ(再調達原価法)を用います。同等の特許を一から取得するためにかかるコスト——開発人件費、出願経費、維持年金などを積み上げて価値を算出する手法です。
弊所の簡易評価サービスでは、コストアプローチでの評価にも対応しています。費用は同じ11万円(税込)です。売上がある特許はRFR法、売上がない特許はコストアプローチと、状況に応じて最適な手法を選択した上で評価書を作成します。
なお、自社で使っていない休眠特許であっても、競合他社の参入を阻止する役割を果たしている場合は「防衛的価値(Defensive Value)」が存在します。「使っていないから0円」と判断してグループ会社に無償で譲渡すると、寄附金として課税されるリスクがあるため、休眠特許であっても価値の検討は欠かせません。
あわせて読みたい:赤字企業・スタートアップの特許はどう評価する?|売上ゼロでも「0円」にはならない理由
よくある質問(FAQ)
Q1. 簡易RFR評価と本格評価(DCF法)で、対応できる範囲の違いは何ですか?
A. 簡易RFR評価は、特許1件またはポートフォリオ単位の価値を、短期間で意思決定に使える水準まで整理するためのものです。一方、本格的なDCF評価は、企業全体の株式価値やのれんを含めた包括的な企業価値評価を目的とし、詳細な事業計画や市場分析が前提になります。グループ内での譲渡価格の根拠やライセンス交渉の料率根拠には簡易RFR評価が適合します。当事務所が提供しているのは特許権単位の簡易RFR評価であり、企業全体の本格的なDCF評価は取り扱っていません。大規模な組織再編や上場準備における最終的な企業価値評価には、公認会計士等による本格評価が必要になる場合があります。
Q2. 評価に必要な資料はこちらで用意する必要がありますか?
A. 基本的に必要な資料は、特許公報と対象製品の売上データです。売上データがない場合(休眠特許やスタートアップなど)は、開発にかかった費用の記録があれば対応できます。資料が十分に揃っていない段階でも、無料相談(30分)でどの範囲の情報で評価を進められるかを整理します。
Q3. 特許が複数ある場合、1件ごとに11万円かかりますか?
A. ケースによります。関連する技術分野の特許をまとめてポートフォリオとして評価する場合は、1件ずつ個別に評価するよりも費用を抑えられることがあります。特許の件数や評価の目的に応じて最適な進め方をご提案しますので、まずは無料相談でご相談ください。
Q4. 評価書はどのような形式で受け取れますか?
A. PDF形式の評価書(レポート)をお渡しします。評価額のレンジ(価格帯)、採用した手法とその前提条件、料率の根拠を整理した内容で、社内説明やライセンス交渉、税務上の疎明資料として使える形に仕上げます。
まとめ
特許の価値評価にかかる費用は、本格的なDCF法であれば数百万円、簡易RFR法であれば11万円と、大きな幅があります。この差は精度の優劣ではなく、評価額を出すまでにかかる人手と時間の違いから生じるものです。グループ内での譲渡価格の根拠、ライセンス交渉の料率根拠、社内稟議の説明資料といった場面であれば、簡易RFR評価で十分に対応できます。
特許の場合は「技術寄与度」の分析が料率の根拠として欠かせません。弊所の簡易評価サービスでは、この技術寄与度の分析を含めた上で、料率の根拠を明示した評価書を11万円・最短5営業日で納品します。売上がない休眠特許やスタートアップの特許についても、コストアプローチでの評価に同一費用で対応しています。
「自分のケースにはどちらの手法が合うかわからない」という場合は、無料相談(30分)で評価の目的と手持ちの情報を整理し、最適な進め方をご提案します。
関連サービス
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└ 商標の場合はこちら:商標価値評価における費用の使い分けを解説しています。
参考文献
- 大津洋夫『知財活用の局面・目的に応じた知的財産価値評価の実務』(経済産業調査会、2019年)
- 廣瀬義州『特許権価値評価モデル』(中央経済社、2010年)
- デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社『M&A無形資産評価の実務』(清文社、2012年)
この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)












