意匠権の存続期間は何年?更新・延長の有無と確認方法を弁理士が解説

意匠権の存続期間と更新・延長の有無を弁理士が解説する知育特許事務所のアイキャッチ画像

意匠権は「いつまで守られるのか」「更新できるのか」が分かりにくい権利です。特に、法改正で存続期間が15年→20年→25年と変わってきたため、出願時期によって保護期間が異なります。

現在のルールでは、意匠権の存続期間は「意匠登録出願の日から25年」で、更新や延長の制度はありません。一方で、毎年の「年金」を納付しておかないと、途中で権利が消えてしまう点には注意が必要です。

この記事では、意匠権の存続期間の考え方と法改正の経緯、自分の意匠権がいつまで有効かの確認方法、特許権・商標権との保護期間の違い、よくある質問まで、弁理士が整理して解説します。

意匠権の存続期間は出願日から25年(更新・延長は不可)

意匠権の存続期間が意匠登録出願の日から25年であることを図解したもの。
▲意匠権の存続期間は「意匠登録出願の日」から25年

現在の意匠権の存続期間は、「意匠登録出願の日から25年」です。これは、令和2年(2020年)4月1日以降に出願された意匠に適用されるルールです。

よくある勘違いとして、商標権と同じように「設定登録日から〇年」と思われることがありますが、意匠権については「出願日」が起点になります。出願から登録までに時間がかかったとしても、保護期間がそのぶん伸びるわけではありません。

意匠権の存続期間の数え方

たとえば、次のようなケースを考えてみます。

  • 意匠登録出願日:2025年3月1日
  • 意匠権の満了日:2050年3月1日(出願日から25年)

登録日が2026年1月1日だったとしても、満了日は変わりません。あくまで「出願日」を起点に、25年後に権利が満了します。

なお、意匠権の存続期間中は、毎年(もしくは数年分まとめて)年金(登録料)を納付する必要があります。年金を支払わなかった場合、その時点で権利は途中で消滅してしまいます。

更新や延長の制度はない

意匠権には、商標権のような「更新」や、特許権のような「延長登録」の制度はありません。

25年という存続期間は一度きりで、25年を超えて意匠権を存続させることはできないルールです。更新できないからこそ、いつ権利が切れるのか、事前に把握しておくことが大切になります。

25年になる前はどうだった?(15年→20年→25年の法改正)

現在と過去の意匠権の存続期間の違いを図解したもの。
▲意匠権の存続期間は法改正で延長されてきた

意匠権の存続期間は、意匠法の改正によって段階的に延長されてきました。ざっくり整理すると、次のような流れです。

  • 現行法(令和2年4月1日以降の出願)
    → 意匠登録出願の日から25年
  • 平成18年改正後〜令和2年3月31日まで
    → 意匠権の設定登録日から20年
  • それ以前(現行意匠法制定時など)
    → 意匠権の設定登録日から15年

このように、いつ出願した意匠かによって、保護期間の長さや起算点が異なります。古い意匠ほど「登録日からカウントする」「20年・15年で満了」といったパターンが残っているため、個別に確認する必要があります。

「いつから25年になったのか?」の整理

「いつから25年になったのか?」という点は混乱しやすいところなので、次の2つだけ押さえておくとシンプルです。

  • 2020年(令和2年)4月1日以降に出願した意匠:出願日から25年
  • それより前に出願した意匠:原則として登録日から20年(さらに古いものは15年)

どの改正が適用されるかで、「出願日が起点なのか」「登録日が起点なのか」が変わります。後ほど触れる「満了日の確認方法」とセットでチェックしておくと安心です。

自分の意匠権の満了日を確認する方法

すでに登録済みの意匠について「いつまで有効なのか」「何年まで保護されるのか」を確認したい場合は、次のような手順で調べることができます。

  • ① 登録番号や出願番号を確認する
    意匠公報や登録証、社内の管理表などから「意匠登録第〇〇号」「意匠登録出願〇〇号」などの番号を確認します。
  • ② J-PlatPatなどで意匠の詳細情報を表示する
    登録番号や出願番号を入力すると、出願日・登録日・存続期間などが表示されます。
  • ③ 「存続期間」や「満了日」の欄を確認する
    どの改正が適用されているかに応じて、いつまで意匠権が存続するかが記載されています。

権利がいつ切れるのか分からないまま放置してしまうと、「まだ権利があるつもりで警告書を送ったが、実は期限切れだった」といったトラブルにつながりかねません。重要な意匠については、満了日を社内の管理表などにまとめておくことをおすすめします。

よくある質問

Q1. 意匠権の存続期間は何年ですか?

A. 現在のルールでは、意匠登録出願の日から25年です。2020年(令和2年)4月1日以降に出願した意匠に適用されます。

Q2. 意匠権は更新できますか?延長する制度はありますか?

A. 意匠権には、商標権のような更新制度や、特許権のような延長登録制度はありません。25年という存続期間を延ばすことはできません。ただし、存続期間内に年金を支払い続けることで、その期間中は権利を維持できます。

Q3. 「意匠権 25年」はいつから適用されていますか?

A. 2020年(令和2年)4月1日以降に出願された意匠からです。それ以前に出願された意匠は、「登録日から20年」や「登録日から15年」という旧ルールが適用されます。

Q4. 自分の意匠権がいつまで有効か分からないのですが…

A. 意匠登録番号や出願番号が分かれば、J-PlatPatなどの公的データベースで、出願日・登録日・満了日を確認できます。重要な意匠については、満了日と年金の納付状況を一覧にして管理しておくと安心です。

特許権・商標権との存続期間の違い

「意匠権の25年」という数字だけを見ると、他の知的財産権と混同しやすくなります。ここで一度、特許権・商標権との違いを簡単に整理しておきましょう。

※実務の細かい例外はありますが、ここでは基本的なイメージをつかむための整理です。

権利の種類主な対象存続期間更新・延長
意匠権製品の見た目・デザイン意匠登録出願の日から25年更新・延長は不可(年金不納で途中消滅あり)
特許権技術的アイデア(発明)出願日から20年が原則医薬・農薬など一部は「延長登録」制度あり
商標権商品・サービスの名前やロゴ登録日から10年10年ごとに何度でも更新可能

このように、意匠権は「期間は長いが更新できない」タイプの権利です。期間が長くなったとはいえ、25年を過ぎれば誰でも自由に使える状態になるため、「どのデザインを長く押さえておきたいか」は早めに戦略を立てておく必要があります。

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「自社の意匠権がいつまで有効か整理したい」「特許・商標とあわせて、どの権利でどこまで守るべきか確認したい」といったご相談も、オンラインで承っています。

この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。