ロゴ商標と文字商標の違いと選び方|取得すべき商標を見分けるには

ロゴ商標と文字商標の違いと取得すべき商標の選び方を解説するアイキャッチ画像(知育特許事務所)

このページでは、「文字商標とロゴ商標の違いがよく分からない」「結局どれを取ればいいのか迷う」という方向けに、取得すべき商標の選び方を整理します。

商標の種類の名前だけを追いかけると難しく感じますが、実務ではとてもシンプルです。「自社が実際にどのように名前やロゴを使うのか」から考えると、優先順位が見えやすくなります。

1. 文字商標とロゴ商標の違いをざっくり整理

まずは全体像として、「文字商標」「ロゴ商標(図形商標を含む)」の違いを、ざっくり押さえておきましょう。

文字商標とロゴ商標の違いを説明する図
▲文字だけか、ロゴデザインまで含めるかで保護の範囲が変わる
  • 文字商標:商品名・サービス名など、文字情報そのものを商標として登録するもの(標準文字商標を含む)
  • ロゴ商標(図形商標を含む):文字にデザインを加えたロゴや、図形・マークなど、見た目のデザインを含めて登録するもの

実務上は、「これは文字商標」「これはロゴ商標」と厳密に線引きすることよりも、どの表記がどれだけ使われているか・今後も使い続けるかを軸に考える方が現実的です。

1-1. 文字商標・標準文字商標とは(HONDA の例)

文字商標は、商品名やサービス名などの文字列自体を守るための商標です。特に、書体やデザインを特定しない形で登録するものを「標準文字商標」と呼びます。

HONDA の文字商標

引用:商標公報|商標登録第4797605号(HONDA)

ホンダ技研工業株式会社が保有する「HONDA」の商標のように、文字だけでブランドを認識してもらえる場合、標準文字商標で文字列を押さえておくと、書体を変えた表記にも柔軟に対応できます。

標準文字商標のイメージ:

  • メリット:書体や太字・細字などを変えても、同じ文字列であれば基本的に1つの商標でカバーしやすい
  • デメリット:ロゴ化されたデザイン(図形や特殊な装飾)までは保護できない

1-2. ロゴ商標・図形商標・文字+図形の商標とは

ロゴ商標は、文字にデザインを加えたものや、図形だけで構成されたものなど、見た目のデザインを含めて保護したい場合に用います。

図形商標の例(スターバックス)

スターバックスの図形商標

引用:商標公報|商標登録第5737384号

スターバックス・コーポレーションのように、図形だけでブランドを想起させられる場合には、図形商標としてロゴマーク自体を押さえることに意味があります。

文字+図形の商標の例(ローソン・Amazon)

ローソンの文字+図形商標

引用:商標公報|商標登録第5654011号

Amazon の文字+記号商標

引用:商標公報|商標登録第5886480号

ローソンの看板ロゴや Amazon の矢印付きロゴのように、文字と図形・記号を組み合わせたロゴをそのまま使う場面が多い場合は、実際のロゴデザインの形で商標登録しておくのが基本です。

まとめると、

  • 名前そのものを広く押さえたい → 標準文字商標が軸
  • ロゴの見た目がブランドの核になっている → ロゴ商標(図形・文字+図形)も検討

ただし、最終的には「区分けの名前」よりも「自社がどう使っているか」で決めるのが実務的です。

2. どの商標を取得すべきか|考え方のステップ

ここからは、具体的に「うちの場合はどれを取るべきか?」を決めるためのステップを整理します。

ステップ1:商標の使用場面を棚卸しする

まずは、取得を考えている名前やロゴが、どこに・どのように使われているかを書き出してみましょう。

  • Webサイトのヘッダーロゴ・ファビコン
  • 名刺・パンフレット・提案書
  • 店舗の看板・ウィンドウサイン
  • 商品パッケージ・ラベル
  • アプリのアイコン・起動画面

この棚卸しを行うことで、「文字だけで使う場面」と「ロゴとして見せる場面」が見えてきます。

ステップ2:露出が高い順に優先順位をつける

次に、それぞれの使用場面について、露出の高さ(どれだけ多くの人の目に触れるか)をざっくり評価します。露出が高いものほど、真似されるリスクも高くなります。

  • まずは、会社やサービスの顔となるブランド名(標準文字商標)を優先
  • 次に、看板・パッケージ・Webヘッダーなどで目立つ代表ロゴを検討
  • 予算に余裕があれば、サブブランドや派生ロゴも順次カバー

取得しようとする商標の数が多いと費用も膨らみます。すべてを一度に取るのが現実的でない場合は、「露出が高いもの」「入れ替え予定が少ないもの」から順に優先順位をつけるのがおすすめです。

ステップ3:デザイン未確定なら「名前だけ」先に押さえる

ネーミングは決まっているものの、ロゴデザインが固まっていないケースも多いと思います。その場合、標準文字商標で名前だけ先に出願しておくという選択肢があります。

商標は「早い者勝ち」の制度であり、先に他社に取られてしまうと基本的には巻き返しが難しくなります。一方で、登録後3年以内に使っていないと、不使用取消(取り消し)を受けるリスクもあります。

デザインの完成までに時間がかかりそうな場合は、①先に標準文字商標で名前を押さえておく → ②ロゴが固まった段階で、必要に応じてロゴ商標も追加するという二段階の取り方も検討に値します。

3. ケース別のおすすめパターン

ここまでの考え方を、よくあるパターン別に整理すると、次のようになります。

  • ① 小規模事業・士業・BtoBサービス
    会社名やサービス名を軸にブランドを育てるケースが多いため、まずは標準文字商標で名前を1件押さえるのがおすすめです。ロゴに大きな投資をしていない場合は、ロゴ商標は予算とリスクを見ながら検討します。
  • ② BtoCブランド・パッケージが命の商品
    店頭やECサイトでパッケージが勝負になる場合は、標準文字商標+パッケージに大きく出すロゴ商標のセットを検討します。
  • ③ 複数ブランド・サブブランドが多い事業会社
    全てを一度に取るのが難しい場合は、売上・露出・将来の投資額などを基準に優先度をつけ、順次出願していきます。

いずれの場合も、「文字商標かロゴ商標か」で悩みすぎるより、どの商標が事業にとって一番重要かから逆算して決めると整理しやすくなります。

4. よくある質問(文字商標・ロゴ商標・標準文字商標)

Q1. 文字商標とロゴ商標の違いは何ですか?

文字商標は、商品名やサービス名など「文字列そのもの」を登録する商標です。ロゴ商標は、その文字にデザインを加えたロゴや、図形・マークを含めて登録する商標です。前者は名前を広く押さえたいとき、後者はロゴの見た目がブランドの核になるときに用います。

Q2. 標準文字商標とは何ですか?メリット・デメリットは?

標準文字商標は、特定の書体やデザインを決めずに、文字だけを登録する商標のことです。メリットは、書体や太字・細字などを変えても、同じ文字列であれば一つの登録でカバーしやすい点です。一方、ロゴ化されたデザイン部分や図形は保護対象にならないため、そこまで含めて守りたい場合は別途ロゴ商標の検討が必要です。

Q3. ロゴだけ登録すれば、商品名も自動的に守れますか?

ロゴ商標には文字が含まれていても、「ロゴの形で使っている場合」に主に効くのが基本です。文字だけで使う場面(テキストでの表示など)を広く守りたい場合は、別途標準文字商標で名前そのものを押さえておくことをおすすめします。

Q4. ® や ™ のマークはいつ使って良いですか?

一般に、®(Rマーク)は登録商標にのみ使用すべき記号とされています。出願中でまだ登録されていない段階で ® を付けると、誤認を与えるおそれがあります。一方、™(TMマーク)は「商標として使っている」という表示であり、出願前でも使われることがあります(ただし、日本では必須のルールではありません)。

Q5. ロゴは商標登録と意匠登録どちらで守るべきですか?

ロゴを「商品・サービスの目印」として守りたい場合は商標登録が基本です。一方、ロゴを製品デザインの一部として立体物やUIに組み込む場合など、デザイン全体を守りたいときには意匠登録が適しているケースもあります。どちらを優先すべきかは、使い方や将来の展開によって変わるため、迷う場合は専門家に相談するのが安心です。

5. まずは「どう使うか」を整理してから出願を検討しよう

取得すべき商標を見分けるには、ロゴ商標・文字商標といった名称にこだわり過ぎず、「自社がどう使っているか・これからどう使うか」を整理することが出発点になります。

そのうえで、

  • まずは事業の顔となる名前(標準文字商標)を検討する
  • ロゴの見た目が重要なビジネスではロゴ商標も組み合わせる
  • 使用する商標が多い場合は、露出が高いものから順に取得する

といった順番で考えると、費用とのバランスも取りやすくなります。

次の一歩

この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。