📜 判決文全文
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主文
1被告は、原告に対し、159万7112円及びこれに対する令和2年7月2
3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は、原告に対し、66万9289円及びこれに対する令和2年7月23
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告のその余の各請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の負担とし、その余を被告の負
担とする。
5この判決は、第1、2項に限り、仮に執行することができる。
由事実及び理
第1 請求
1主位的請求及び第1次予備的請求
被告は、原告に対し、2090万円及びこれに対する令和2年7月23日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2第2次予備的請求被告は、原告に対し、400万円及びこれに対する令和2年7月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3仮執行宣言
第2 事案の概要
1前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)
⑴ 当事者原告は、プラスチック製品の製造、加工、販売等を目的とする株式会社である。(争いがない事実(甲1))被告は、テレマーケティング業等を目的とする株式会社である。(争いがない事実(甲3、4、乙20))
⑵ 本件実用新案権原告は、次の本件実用新案権を有する。(甲5)登録番号実用新案登録第3186115号出願日平成25年7月6日登録日平成25年8月28日考案の名称調理用具スタンド本件実用新案登録請求の範囲の請求項1、4、7から12の記載は、別紙請求の範囲の記載のとおりである(以下、このうち、請求項4、7から12に係る考案を「本件各考案」という。)。
⑶ 原告商品の販売等原告は、平成25年8月9日から、本件各考案に係る別紙原告商品のとおりの家型の「アピュイマルチスタンド」という名称の台所用多機能スタンド(以下「原告商品」という。)を小売り又は卸売りにより販売している。原告商品の小売価格は1個当たり●(省略)●円(消費税抜き)であり、卸売価格は様々であった。平成27年4月から平成29年3月の原告商品の販売個数は●(省略)●個、売上額は合計●(省略)●円であった。このうち小売販売による個数は●(省略)●個(売上額合計●(省略)●円)であり、原告商品の販売全体に占める割合は●(省略)●%であった。また、この間の原告商品1個当たりの製造原価は●(省略)●円、1個当たりの経費(宣伝広告費及び荷造運賃)は●(省略)●円であった。(争いがない事実)
⑷ 被告の行為等
ア被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に、別紙被告商品のとおりの家型の「鍋ふたスタンド」(以下「被告商品」という。)を●(省略)●個輸入した。(争いがない事実のほか、甲15、19、20、弁論の全趣旨)。被告は、平成27年8月4日から平成28年8月8日まで、輸入した前記の被告商品●(省略)●個のうち、●(省略)●個を小売価格1000円(消費税抜き)で販売し(売上額合計●(省略)●円)、●(省略)●個を被告が別途販売する「セラフィット」という名称のフライパン(以下「被告フライパン」という。)の購入者にいわゆる「おまけ」として無償譲渡した。(争いがない事実のほか、甲19、20)また、被告は、平成28年8月9日から令和元年6月11日まで、輸入した前記の被告商品●(省略)●個のうち、●(省略)●個を小売価格(消費税抜き)1000円で販売し(売上額合計●(省略)●円)、●(省略)●個を卸売価格(消費税抜き)10円で販売し(売上額合計●(省略)●円)、●(省略)●個を被告フライパンの購入者に「おまけ」として無償譲渡し、●(省略)●個を廃棄した。(乙27)被告商品の小売価格1000円での販売に係る限界利益は、1個当たり●(省略)●円であった。(争いがない事実)なお、被告は、子会社であるオークローンマーケティングインターナショナルインクを通じて、台湾の.●(省略)●(以下「台湾仕入先」という。)から被告商品を輸入していた。(乙20、21)
イ被告商品の形態は、原告商品の形態と実質的に同一であり、被告による被告商品の輸入、譲渡は、不正競争防止法2条1項3号所定の形態模倣行為に該当する。(争いがない事実)また、被告商品は、本件各考案の技術的範囲に属する。(争いがない事実)
ウ被告は、平成27年5月頃、台湾仕入先から被告商品を紹介され、調査を行った結果、被告商品の形態と実質的に形態が同一の原告商品が販売されていること及び本件実用新案権の設定の登録がされていることを認識した。(争いがない事実のほか、弁論の全趣旨)原告は、令和元年5月30日、被告に対し、本件実用新案権を侵害している旨の通知をし、被告は、同年6月11日、被告商品の譲渡を中止した。(甲18)原告は、令和元年7月3日、被告に対し、特許庁審査官作成に係る同年6月20日付け本件実用新案に係る実用新案技術評価書(以下「本件評価書」という。)を提示して警告した。(甲7、乙1)
2争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、以下のとおりである。
不正競争に係る損害賠償請求について①不正競争について被告に故意又は過失があるか。
②平成28年8月9日以降の被告商品の譲渡が、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した原告商品についてのものか。
③不正競争について原告が受けた損害及び額実用新案権侵害に係る損害賠償請求について④実用新案権侵害について被告に故意又は過失があるか。
⑤実用新案権侵害について原告が受けた損害及び額不当利得返還請求について⑥被告が法律上の原因なく本件実用新案権の使用料相当額を利得し、これによって原告が損失を受けたか。
⑦原告が受けた損失及び額
⑴ 争点①(不正競争について被告に故意又は過失があるか。)について(原告の主張)被告には、原告商品の形態模倣行為について故意があり、仮にそうでないとしても少なくとも過失がある。
(被告の主張)被告は、原告商品が販売されていることは認識していたが、被告商品を輸入し販売する行為が不正競争に該当するとの認識を有していなかった。
⑵ 争点②(平成28年8月9日以降の被告商品の譲渡が、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した原告商品についてのものか。)について(被告の主張)平成28年8月9日以降の被告商品の譲渡は、原告商品が日本国内において最初に販売された平成25年8月9日から起算して3年を経過した後のものであり、不正競争に該当しない(不正競争防止法19条1項5号イ)。
(原告の主張)平成28年8月9日以降の被告商品の譲渡であっても、同月8日までに輸入されたものを譲渡する場合には不正競争に該当する。
⑶ 争点③(不正競争について原告が受けた損害及び額)について(原告の主張)原告は、被告による形態模倣の不正競争によって次の損害を被った。
ア被告商品の輸入及び有償譲渡被告は、輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個の合計●(省略)●個を販売したから、原告の損害額は、後記又はのうちのいずれか多額のものとなり、仮にの額となる。そうでないとしても、後記不正競争防止法5条1項の算定による損害額 ●(省略)●円原告商品1個当たりの限界利益は、小売価格●(省略)●円から原価●(省略)●円及び経費●(省略)●円の合計●(省略)●円を控除した●(省略)●円であるから、標記額が原告の損害額となる。【計算式】{●(省略)●-(●(省略)●+●(省略)●)}×●(省略)●≒●(省略)●不正競争防止法5条2項の算定による損害額413万3948円被告商品1個当たりの限界利益は●(省略)●円であるから、標記額が原告の損害額と推定される。【計算式】●(省略)●×●(省略)●=4,133,948不正競争防止法5条3項の算定による損害額 ●(省略)● 円原告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額は原告商品1個当たり、販売価額●(省略)●円の10%であるから、原告は被告に対し標記額を損害額として賠償を請求できる。【計算式】●(省略)●×10%×●(省略)●=●(省略)●
イ被告商品の輸入及び無償譲渡被告は、輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個の合計●(省略)●個を無償譲渡したから、原告の損害額は、後記又はのうちのいずれか多額のものとなり、の額となる。仮にそうでないとしても、後記不正競争防止法5条1項の算定による損害額 ●(省略)●円原告商品1項当たりの限界利益は●(省略)●円である(前記ア)から、標記額が原告の損害額となる。なお、原告商品はもともと小売価格が低額である上、発売以来テレビや雑誌で取り上げられてきた人気商品であって、デザイン性と実用性において競合する商品はないこと等に照らせば、被告商品が無償譲渡されたからといって原告が販売することができないとする事情があるとはいえない。【計算式】 ●(省略)●×●(省略)●≒●(省略)●不正競争防止法5条2項の算定による損害額1557万5859円被告商品1個当たりの限界利益は●(省略)●円であるから、標記額が原告の損害額と推定される。なお、被告は、被告商品を無償譲渡することにより、原告商品を購入して無償譲渡することに要する費用から被告商品を無償譲渡することに要する費用を控除した額の費用を節約して利益を得たものであり、これにより原告は同額の損害を受けた。【計算式】●(省略)●×●(省略)●=15,575,859不正競争防止法5条3項の算定による損害額 ●(省略)●円原告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、原告商品1個当たり、販売価額1000円の10%であるから、原告は被告に対し標記額を損害額として賠償を請求できる。
【計算式】●(省略)●×10%×●(省略)●=●(省略)●
ウ被告商品の輸入被告が輸入した●(省略)●個の被告商品のうち平成28年8月9日から令和元年6月11日までに廃棄した●(省略)●個について、原告の損害額は、後記又はのうちのいずれか多額のものとなり、仮にそうでなの額となる。いとしても、後記不正競争防止法5条1項の算定による損害額 ●(省略)●円原告商品1項当たりの限界利益は●(省略)●円であるから(前記ア)、標記額が原告の損害額となる。なお、原告商品は低額である上、人気商品であって競合する商品はないこと等に照らせば、廃棄したからといって原告が販売することができないとする事情があるとはいえない。【計算式】●(省略)●×●(省略)●≒●(省略)●不正競争防止法5条2項の算定による損害額161万0193円被告商品1個当たりの限界利益は●(省略)●円であるから、標記額が原告の損害額と推定される。
【計算式】●(省略)●×●(省略)●=1,610,193不正競争防止法5条3項の算定による損害額 ●(省略)●円原告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、原告商品1個当たり、販売価額1000円の10%であるから、原告は被告に対し標記額を損害額として賠償を請求できる。
【計算式】●(省略)●×10%×●(省略)●=●(省略)●
エ弁護士費用 500万円原告が本訴追行に要した弁護士費用のうち500万円は被告の不法行為と相当因果関係がある損害として被告が負担すべきである。
オ合計 3559万1600円ただし、原告は、損害の一部として、前記アの●(省略)●円、前記イのうち●(省略)●円、前記ウのうち100万円、前記エのうち200万円の合計2090万円を請求する。
(被告の主張)
ア被告商品の輸入及び有償譲渡について不正競争防止法5条1項の算定による損害額について原告は、原告商品を主として卸売りにより小売価格よりも安く販売しており、平成27年度4月から平成29年3月までの原告商品の売上額合計●(省略)●円を販売個数●(省略)●個で除して算定される約●(省略)●円が原告商品1個当たりの売上額である。また、原告商品1個当たりの製造原価は●(省略)●円、広告宣伝費及び荷造運賃は●(省略)●円である。したがって、原告商品1個当たりの限界利益は●(省略)●円となる。不正競争防止法5条3項の算定による損害額について形態の使用に対し受けるべき金銭とは具体的には商品の売上げに対するものであり、商品の輸入からは売上げは生じないから、商品の輸入数量は使用料相当額の算定の根拠とはならない。また、原告商品の含まれる「個人用品又は家庭用品」に係る特許権のロイヤルティ料率の平均値は3.5%であり、特許権より格段に法的保護の程度が低い商品の形態の使用料率としては、上記の約半分の1.75%以下が相当である。
イ被告商品の輸入及び無償譲渡について不正競争防止法5条1項の算定による損害額について被告商品の無償譲渡分は、被告フライパンの購入者に対するものであるところ、その個数については原告が原告商品を「販売することができないとする事情」がある。すなわち、被告フライパンは人気商品であって、平成28年8月までに170万個以上が販売された。このような販売実績は、被告が、被告フライパンについて、●(省略)●億円以上を費やして大量かつ集中的に宣伝広告を行った結果、多くの媒体において人気商品として取り上げられるに至ったことによるものである。被告フライパンの販売価格も1万4800円から4万1559円であり、被告フライパンの上記販売数量に比して被告商品の販売個数が●(省略)●個にすぎないことに照らしても、被告フライパンの購入者は、被告フライパンの入手を目的として被告フライパンを購入したものであって、被告商品の入手を目的として被告フライパンを購入したものではないことは明らかである。被告が平成28年8月までに被告商品を●(省略)●個も無償譲渡できたのは、被告の営業努力によって築き上げた被告フライパンの人気、ブランド力の貢献によるものである。不正競争防止法5条2項の算定による損害額について被告は、被告商品の輸入及び無償譲渡によって何ら利益を得ておらず、費用のみを要している。不正競争防止法5条3項の算定による損害額について商品の輸入数量は使用料相当額の算定の根拠とはならないし、原告商)。品の形態の使用料率としては1.75%以下が相当である(前記ア
ウ被告商品の輸入について否認ないし争う。なお、不正競争防止法5条3項の算定による損害額について、商品の輸入数量は使用料相当額の算定の根拠とはならないし、原告商品の形態の使用料率としては、1.75%以下が相当である(前)。記ア
⑷ 争点④(実用新案権侵害について被告に故意又は過失があるか。)について(原告の主張)被告には、本件実用新案権侵害について故意があり、仮にそうでないとしても少なくとも過失がある。実用新案技術評価書を提示されて警告を受けることは過失の認定の必須の要件ではない。また、被告が本件実用新案権の存続期間が終了していると誤認していたなどということはあり得ない。
(被告の主張)本件実用新案権侵害について被告に故意、過失はない。実用新案権侵害については、当該登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示されて警告を受けた後に初めて故意又は過失があるといえる(実用新案法29条の2)。被告は、原告から警告を受けた後、被告商品を譲渡、輸入していない。なお、被告は、本件実用新案権の登録番号と同一の登録番号の特許権と取り違えて調査を行ってしまったため、本件実用新案権の存続期間が終了しているものと誤認していた。
⑸ 争点⑤(実用新案権侵害について原告が受けた損害及び額)について(原告の主張)原告は、被告による被告商品の輸入、有償譲渡及び無償譲渡がなければ原告商品を販売することができた。被告による本件実用新案権の侵害によって、次の損害を被った。
ア被告商品の輸入及び有償譲渡被告は、輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個の合計●(省略)●個を販売したから、のうちのいずれか多額のものとなる。原告の損害は、後記又は実用新案法29条1項の算定による損害額 ●(省略)●円原告商品1項当たりの限界利益は●(省略)●円である(前記⑶(原)から、標記額が原告の損害額となる。告の主張)ア【計算式】●(省略)●×●(省略)●≒●(省略)●実用新案法29条2項の算定による損害額413万3948円被告商品1個当たりの限界利益は●(省略)●円であるから、標記額が原告の損害額と推定される。【計算式】●(省略)●×●(省略)●=775,600
イ被告商品の輸入及び無償譲渡被告は、輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個の合計●(省略)●個を無償譲渡したかのうちのいずれか多額のものとなる。ら、原告の損害額は、後記又は実用新案法29条1項の算定による損害額 ●(省略)● 円原告商品1項当たりの限界利益は●(省略)●円である(前記⑶(原)から、標記額が原告の損害額となる。告の主張)アなお、原告商品はもともと小売価格が低額である上、発売以来テレビや雑誌で取り上げられてきた人気商品であって、デザイン性と実用性において競合する商品はないこと等に照らせば、無償譲渡であったからといって原告が販売することができないとする事情があるとはいえない。【計算式】●(省略)●×●(省略)●≒●(省略)●実用新案法29条2項の算定による損害額1557万5859円被告商品1個当たりの限界利益は●(省略)●円であるから、標記額が原告の損害額と推定される。なお、被告は、被告商品を無償譲渡することにより、原告商品を購入して無償譲渡することに要する費用から被告商品を無償譲渡することに要する費用を控除した額の費用を節約して利益を得たものであり、これにより原告は同額の損害を受けた。【計算式】●(省略)●×●(省略)●=15,575,859
ウ被告商品の輸入被告が輸入した●(省略)●個の被告商品のうち平成28年8月9日から令和元年6月11日までに廃棄した●(省略)●個について、原告の損のうちのいずれか多額のものとなる。害額は、後記又は実用新案法29条1項の算定による損害額 ●(省略)●円原告商品1項当たりの限界利益は●(省略)●円であるから(前記⑶)、標記額が原告の損害額となる。
(原告の主張)アなお、原告商品は低額である上、人気商品であって競合する商品はないこと等に照らせば、廃棄したからといって原告が販売することができないとする事情があるとはいえない。【計算式】●(省略)●×●(省略)●≒●(省略)●実用新案法29条2項の算定による損害額161万0193円被告商品1個当たりの限界利益は●(省略)●円であるから、標記額が原告の損害額と推定される。
【計算式】●(省略)●×●(省略)●=1,610,193
エ弁護士費用 500万円原告が本訴追行に要した弁護士費用のうち500万円は被告の不法行為と相当因果関係がある損害として被告が負担すべきである。
オ合計 3559万1600円ただし、原告は、損害の一部として、前記アの●(省略)●円、前記イのうち●(省略)●円、前記ウのうち100万円、前記エのうち200万円の合計2090万円を請求する。
(被告の主張)否認ないし争う。
⑹ 争点⑥(被告が法律上の原因なく本件実用新案権の実施料相当額を利得し、これによって原告が損失を受けたか。)について(原告の主張)被告は、本件実用新案登録がされた平成25年8月28日以降、輸入し譲渡した被告商品について、法律上の原因なく本件実用新案権の実施料相当額を利得し、これによって被告は損失を受けた。
(被告の主張)権利者が、実用新案技術評価書を提示して警告する前の侵害行為について、実施料相当額の不当利得返還請求をできるとすれば、実用新案法29条の2の趣旨である権利濫用の防止が十分に測れず、善意、無過失の侵害者に対し不測の不利益を与えることになって、同定めが骨抜きになりかねない。したがって、実用新案技術評価書を提示して警告をする前の侵害行為については、「法律上の原因なく」という要件が否定されると解すべきである。
⑺ 争点⑦(原告が受けた損失及び額)について(原告の主張)
ア被告商品の輸入及び有償譲渡 ●(省略)●円被告は、輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個の合計●(省略)●個を販売した。本件実用新案の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、原告商品1個当たり、販売価格●(省略)●円の10%であるから、原告は同額の損失を被った。【計算式】●(省略)●×10%×●(省略)●=●(省略)●
イ被告商品の輸入及び無償譲渡 ●(省略)●円被告は、輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個の合計●(省略)●個を無償譲渡した。本件実用新案の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、原告商品1個当たり、販売価格●(省略)●円の10%であるから、原告は同額の損失を被った。【計算式】●(省略)●×10%×●(省略)●=●(省略)●
ウ被告商品の輸入 ●(省略)● 円被告は、輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成28年8月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個を廃棄した。本件実用新案の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、原告商品1個当たり、販売価格●(省略)●円の10%であるから、原告は同額の損失を被った。【計算式】●(省略)●×10%×●(省略)●=●(省略)●
エ合計 400万円(被告の主張)実用新案の実施に対し使用に対し受けるべき金銭とは具体的には商品の売上げに対するものであり、商品の輸入からは売上げは生じないから、商品の輸入数量は使用料相当額の算定の根拠とはならない。また、本件実用新案の実施品の含まれる「個人用品又は家庭用品」に係る特許権のロイヤルティ料率の平均値は3.5%であり、特許権より格段に法的保護の程度が低い実用新案の使用料率としては、上記の約半分の1.75%以下が相当である。特に、被告商品の譲渡について、無償譲渡分は被告フライパンの人気の寄与が大きく、卸売販売分は単価10円で実質的に廃棄処分されたものであって、いずれも本件実用新案の寄与が低いことも考慮されるべきである。
第3 当裁判所の判断
1認定事実前提事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。
⑴ 原告商品について
ア原告商品は、熱可塑性エラストマーで製造された家型の台所用多機能スタンドであり、屋根型部分の色には、ホワイト、グレー、マスタード、レッド、ピンク、グリーン、ブルーの7種類がある。原告商品は、どの部分を底面として設置するかにより、鍋のふたや料理本を立てたり、菜箸やフライ返しを一時的に置いたり、調味料を日常的に置いたり、ペットボトルを差し込んで乾かしたりするなどの目的で使用することができる。(争いがない事実のほか、甲8)
イ原告は、平成25年8月9日から、原告商品を販売している。原告は、原告商品を、その開設する電子商取引サイトにおいて、消費者に対して小売価格●(省略)●円(消費税抜き)で小売販売するほか、商社や電子商取引サイトを開設する業者に対して様々な価格で卸売販売しており、これらの原告商品は、商社等から、直接、又は、更にホームセンター、量販店、通信販売業者等を通じて、消費者に対して販売されている。平成25年4月から平成26年3月までの原告商品の販売個数は約●(省略)●個であり、このうち、小売販売の個数は●(省略)●個(売上額合計●(省略)●円)で、原告商品の販売全体に占める割合は●(省略)●%であった。(争いがない事実)平成26年4月から平成27年3月までの原告商品の販売個数は約●(省略)●個であり、このうち、小売販売の個数は●(省略)●個(売上額合計●(省略)●円)で、原告商品の販売全体に占める割合は●(省略)●%であった。(争いがない事実)平成27年4月から平成29年3月までの原告商品の販売個数は●(省略)●個、売上額は合計●(省略)●円であった。このうち、小売販売の個数は●(省略)●個(売上額合計●(省略)●円)であり、原告商品の販売全体に占める割合は●(省略)●%であった。また、この間の原告商品1個当たりの製造原価は●(省略)●円、1個当たりの経費(宣伝広告費及び荷造運賃)は●(省略)●円であった。
ウ原告商品は、平成25年8月から令和2年1月まで、年数回程度の頻度で雑誌や新聞に掲載されたほか、平成25年には「NHKおはよう日本まちかど情報室」、平成26年には「テレビ朝日スマステーション最新キッチン家電&グッズ」など、テレビ番組でも紹介された。(甲9、10)
⑵ 被告商品等について
ア被告商品は、家型の「鍋ふたスタンド」であり、どの部分を底面として設置するかにより、鍋ふたや料理本を立てたり、菜箸やフライ返しを一時的に置いたり、調味料を日常的に置いたりするなどの目的で使用することができる。(争いがない事実のほか、甲15、19、20)
イ被告は、「ショップジャパン」という名称で、電子商取引又は通信販売を行っている。(乙2、3、9)被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に、被告商品●(省略)●個を輸入した。被告は、平成27年8月4日から平成28年8月8日まで、輸入した前記の被告商品●(省略)●個のうち、●(省略)●個を小売価格1000円(消費税抜き)で販売し(売上額合計●(省略)●円)、●(省略)●個を被告フライパンの購入者にキャンペーン中の「おまけ」として無償譲渡した。
また、被告は、平成28年8月9日から令和元年6月11日まで、輸入した前記の被告商品●(省略)●個のうち、●(省略)●個を小売価格1000円(消費税抜き)で(売上額合計●(省略)●円)、●(省略)●個を卸売価格10円(消費税抜き)で販売し(売上額合計●(省略)●円)、●(省略)●個を被告フライパンの購入者にキャンペーン中の「おまけ」として無償譲渡し、●(省略)●個を廃棄した。
被告商品の小売価格1000円での販売に係る限界利益は、1個当たり●(省略)●円であった。
ウ被告フライパンは、セラミックコーティングを施したフライパンであり、その特徴として、くっつきにくく、油が少なくて済み、後片付けが楽であること、熱伝導率が良く、遠赤外線による調理ができ、有害物質が出ないことなどが挙げられている。被告は、平成26年5月に被告フライパンの販売を開始し、平成28年8月までに170万個以上を売り上げた。その販売価格は、1万4800円から4万1559円(消費税抜き)であった。被告は、前記の期間中、約●(省略)●万円を投じて、著名な芸能人等であるA、B、Cを起用し、テレビ、ラジオ、新聞、インターネット等において、大量かつ集中的に被告フライパンの特徴を紹介する宣伝広告を行い、その結果、被告フライパンは、月数回から20回程度の頻度で、雑誌、新聞、テレビ番組などで紹介されるなどした。被告の電子商取引サイトには、前記被告商品の特徴の紹介に加え、被告フライパンの購入者に被告商品が無償譲渡されることが記載されていた。
(本項につき、乙5~15)
⑶ 原告による警告について原告は、令和元年7月3日、被告に対し、本件評価書を提示して警告した。
本件評価書には、本件実用新案について、請求項1から3、5、6に係る考案について進歩性がなく、請求項4、7から12に係る考案(本件各考案)について新規性等を否定する先行技術文献等を発見できないと記載されている。(甲7)
2争点①(不正競争について被告に故意又は過失があるか。)について被告は、平成27年5月頃、台湾仕入先から被告商品を紹介され、調査を行った結果、被告商品の形態と実質的に形態が同一の原告商品が販売されていることを認識した(前記第2の1⑷ウ)から、その後に行った形態模倣行為である被告商品の輸入、譲渡(同ア、前記1⑵イ)について、少なくとも過失があったと認められる。
3争点②(平成28年8月9日以降の被告商品の譲渡が、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した原告商品についてのものか。)について日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為については、不正競争防止法4条等の規定は適用されない(同法19条1項5号イ)。原告商品は日本国内において平成25年8月9日から販売された(前記第2の1⑶)から、平成28年8月9日以降の被告商品の譲渡は、販売された日から3年を経過した原告商品についてのものである。仮に、同譲渡に係る被告商品が同日より前に輸入されたものであったとしても、同日以降にされた譲渡を理由として不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求をすることはできないと解される。したがって、被告による平成28年8月9日から令和元年6月11日までの被告商品●(省略)●個の有償譲渡及び●(省略)●個の無償譲渡(前記第2の1⑷ア)は、不正競争(形態模倣行為)として損害賠償請求をすることはできない。
4争点③(不正競争について原告が受けた損害及び額)について
⑴ 被告商品の輸入及び有償譲渡について
ア被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個を、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個を販売した(前記第2の1⑷ア)。
被告による被告商品の輸入、譲渡は、原告商品の形態模倣行為に該当する(前記第2の1⑷イ、前記2。もっとも、平成28年8月9日から令和元年6月11日までの被告商品●(省略)●個の譲渡については、不正競争として損害賠償請求をすることはできない(前記3)。)。不正競争防止法5条1項の算定による損害額イ原告は、被告による平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の譲渡によって営業上の利益を侵害され、被告による同譲渡がなければ、原告商品を販売することができた関係があったと認められる。原告は、原告商品を小売価格●(省略)●円で消費者に対して販売するほか、様々な価格で商社等に卸売販売し、卸売販売に係る原告商品は更に量販店等を通じて消費者に対して販売されており、平成27年4月から平成29年3月までの原告商品の販売個数は●(省略)●個、売上額は合計●(省略)●円であり、このうち小売販売による個数は●(省略)●個で、原告商品の販売全体に占める割合は●(省略)●%であり(前記第2の1⑶、前記1⑴イ)、原告による原告商品の販売は卸売りによるものがほとんどであった。このような原告商品の販売の状況に照らすと、被告による前記譲渡がなければ原告が原告商品を販売することができた関係があったとしてもその販売の全てが小売価格である●(省略)●円での販売であると認めるに足りず、上記期間の原告商品の販売の状況に照らせば、不正競争防止法5条1項における原告商品の単位数量当たりの利益の額を算定するに当たっては、上記期間の原告商品の平均販売価格である●(省略)●円を基礎とするのが相当である。そして、この間の原告商品1個当たりの製造原価は●(省略)●円、1個当たりの経費は●(省略)●円であった(前記第2の1⑶、前記1
⑴イ)から、不正競争防止法5条1項における原告商品の1個当たりの限利益の額は、●(省略)●円となる。以上から、原告は、同額に被告商品の販売数量●(省略)●個を乗じて得た額である●(省略)●円を原告の損害の額とすることができる。【計算式】●(省略)●÷●(省略)●≒●(省略)●●(省略)●-(●(省略)●+●(省略)●)=●(省略)●●(省略)●×●(省略)●≒●(省略)●なお、被告による前記譲渡に係る被告商品●(省略)●個の輸入について、その譲渡による前記損害額を超えて原告が損害を受けたとは認められない。不正競争防止法5条2項の算定による損害額原告は、被告による平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の譲渡によって営業上の利益を侵害され、被告による同譲渡がなければ、原告商品を販売することができた関係があ)。った(前記被告は、平成27年8月4日から平成28年8月8日まで、被告商品●(省略)●個を小売価格1000円で販売し、この販売に係る限界利益は1個当たり●(省略)●円であった(前記第2の1⑷ア、前記1⑵イ)。
したがって、被告が受けた利益の額である13万3783円が、原告が受けた損害の額と推定される。【計算式】●(省略)●×●(省略)●=133,783なお、被告による前記譲渡に係る被告商品●(省略)●個の輸入について、その譲渡による前記損害額を超えて原告が損害を受けたとは認められない。不正競争防止法5条3項の算定による損害額原告は、平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の譲渡について、原告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭に相当する額を損害額としてその賠償を請求することができるというべきである。そして、原告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭としては、後記⑵イaのとおり、商品の販売価格に対する5%相当額が合理的であると認められる。
したがって、原告は、被告商品の販売価格の5%に被告商品の販売数量●(省略)●個を乗じて得た額である●(省略)●円を原告の損害の額とすることができる。【計算式】1,000×5%×●(省略)●=●(省略)●平成28年8月9日から令和元年6月11日までに譲渡した被告商品について、その輸入が平成28年8月8日までにされたとしても、原告商品の形態の使用に対し、輸入の行為のみについて、原告に受けるべき金銭があると認めるに足りる証拠はない。
ウ以上から、平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の有償譲渡について、原告が受けた損害の額は、●(省略)●円(前記イ)、13万3783円(同)、●(省略)●円(同)のうちの最も高い額である13万3783円であると認められ、原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち1万5000円は、被告の不正競争と相当因果関係がある損害として被告が負担すべきである。
以上の合計は、●(省略)●円となる。
⑵ 被告商品の輸入及び無償譲渡について
ア被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個を、同月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個を、被告フライパンの購入者に無償譲渡した(前記第2の1⑷ア)。
被告による被告商品の輸入、譲渡は、原告商品の形態模倣行為に該当する(前記第2の1⑷イ、前記2。もっとも、平成28年8月9日から令和元年6月11日までの被告商品●(省略)●個の譲渡については、不正競争として損害賠償請求をすることはできない(前記3)。)。不正競争防止法5条1項の算定による損害についてイ原告は、被告による平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の譲渡によって営業上の利益を侵害され、被告による同譲渡がなければ、原告商品を販売することができた関係があったと認められる。原告商品の不正競争防止法5条1項における1個当たりの限界利益の)。額は●(省略)●円である(前記⑴イもっとも、被告は、被告商品●(省略)●個を、被告フライパンの購入者に「おまけ」として無償譲渡した(前記第2の1⑷ア、前記1⑵イ)。被告は、平成26年5月から平成28年8月までの約2年間に、約●(省略)●万円もの費用を投じて、複数の著名人を起用し、各種媒体において、大量かつ集中的に被告フライパンの特徴を紹介する宣伝広告を行い、被告フライパンを170万個以上売り上げたのに対して、被告が平成27年8月4日から平成28年8月8日までの約1年間に販売した被告商品は●(省略)●個であった。●(省略)●被告商品の小売価格が1000円であるのに対し、被告フライパンは、セラミックコーティングを施したフライパンであり、1万4800円から4万1559円と原告商品の価格の十倍以上の価格で販売されているのであるから、被告フライパンを購入して被告商品を入手したことにより原告商品を購入しなかった消費者がいなかったとまではいえないものの、原告商品を入手したいと考える消費者がそのために敢えて被告フライパンを購入したとは一般的には考え難い。そうすると、被告は、被告フライパンの特徴や宣伝広告により、被告フライパンについて、フライパンを求める顧客に対する顧客吸引力を獲得してこれを多数販売し、被告フライパンの購入者に「おまけ」として被告商品を無償で譲渡することにより被告商品●(省略)●個を譲渡するに至ったといえる。したがって、本件においては、被告商品が実際に譲渡された市場は原告商品の市場とは異なっていたともいえる部分が相当に大きいという、被告商品の譲渡と原告商品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情が存在する。そして、前記の事実関係に照らせば、被告商品の無償譲渡個数●(省略)●個の約85%に相当する数量である●(省略)●個について、原告が販売することができないとする事情(不正競争防止法5条1項ただし書)があるというべきである。したがって、原告は、被告商品の譲渡数量●(省略)●個に原告商品の1個当たりの限界利益●(省略)●円を乗じて得た額から、前記販売することができないとする事情に相当する数量●(省略)●個に応じた額を控除した●(省略)●円を原告の損害の額とすることができる。
【計算式】●(省略)●×●(省略)●-●(省略)●×●(省略)●≒●(省略)●なお、被告による前記譲渡に係る被告商品●(省略)●個の輸入について、その譲渡による前記損害額を超えて原告が損害を受けたとは認められない。不正競争防止法5条2項の算定による損害について原告は、被告による平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の譲渡によって営業上の利益を侵害され、被告による同譲渡がなければ、原告商品を販売することができた関係があった(前記)。もっとも、不正競争防止法5条2項所定の侵害者が侵害行為により受けた利益の額は、侵害品の売上高からその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額をいうところ、被告は、被告フライパンの特徴等を宣伝して被告フライパンを販売したのであり、被告商品●(省略)●個は被告フライパンの購入者にキャンペーン中の「おまけ」として無償譲渡した(前記第2の1⑷ア、前記1⑵イ)のであって、「侵害の行為により利益を受け」たとはいえず、同項の適用に関してはその基礎を欠く。また、被告による同譲渡に係る被告商品●(省略)●個の輸入についても同様である。不正競争防止法5条3項の算定による損害についてa平成27年8月4日から平成28年8月8日までに譲渡した被告商品●(省略)●個のうち、原告が販売することができないとする事情に相当する数量である●(省略)●個(前記)について、被告商品の譲渡と原告商品の販売減少との間に相当因果関係が認められないとしても、その理由に照らせば、被告が原告商品の形態を模倣した被告商品を譲渡したことについて損害の評価が尽くされているとはいえないと解される。したがって、原告は、前記に加え、上記数量について、原告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭に相当する額を損害額としてその賠償を請求することができるというべきである。
そして、株式会社帝国データバンク作成に係る平成22年3月付け「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~本編」によれば、個人用品又は家庭用品に係る発明についてその実施料率は平均3.5%であるとされている(乙25)ものの、原告商品は、家型の独特な形状の商品であり、雑誌やテレビ番組等で紹介された(前記1⑴ア、ウ)ほか、被告が原告商品の存在を認識しながらその形態を模倣した被告商品を譲渡したことなど、本件に現れた諸事情を総合考慮すれば、原告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭としては、商品の販売価格に対する5%相当額が合理的であると認められる。
被告は、前記の●(省略)●個を無償譲渡したところ、それは、被告フライパンの販売という被告の営業活動において消費者に対して譲渡したものであることなどに照らすと、原告は、原告商品の形態の使用に対し、小売市場における価格である●(省略)●円に対する5%相当額を受けるべきであり、したがって、●(省略)●円を原告が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
【計算式】●(省略)●×5%×●(省略)●=●(省略)●なお、被告による前記譲渡に係る被告商品●(省略)●個の輸入について、その譲渡による前記損害額を超えて原告が損害を受けたとは認められない。
b平成28年8月9日から令和元年6月11日までに譲渡した被告商品●(省略)●個の輸入について、原告商品の形態の使用に対し、輸入のみについて、原告に受けるべき金銭があると認めるに足りる証拠はない。
ウ以上から、平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の無償譲渡について、原告が受けた損害の額は、●(省略)●円(前記ア)及び●(省略)●円(前記ウa)の合計●(省略)●円であると認められ、原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち13万円は、被告の不法行為と相当因果関係がある損害として被告が負担すべきである。
以上の合計は、●(省略)●円となる。
⑶ 被告商品(●(省略)●)の輸入について被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成28年8月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個を廃棄した(前記第2の1⑷ア)。この廃棄した被告商品●(省略)●個の輸入について、被告は、「侵害の行為を組成した物を譲渡」しておらず、「侵害の行為により利益を受け」たとはいえないから、不正競争防止法5条1項及び2項の適用に関しては、その基礎を欠く。また、同条3項の適用に関し、原告商品の形態の使用に対し、譲渡の実績がないにもかかわらず、輸入のみについて、原告に受けるべき金銭があると認めるに足りる証拠はない。したがって、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間の被告商品●(省略)●個の輸入について、原告が損害を受けたとは認めるに足りない。
⑷ 小括以上から、被告による平成27年8月4日から平成28年8月8日までの被告商品●(省略)●個の有償譲渡、●(省略)●個の無償譲渡について、原告は、被告の不正競争(形態模倣行為)により、●(省略)●円(前記⑴ウ)及び●(省略)●円(前記⑵ウ)の合計159万7112円の損害を受けたと認められる(これらの譲渡に係る被告商品の輸入について、その譲渡に係る損害額を超えて原告が損害を受けたとは認められない。)。
他方、被告による平成28年8月9日から令和元年6月11日までに廃棄した被告商品●(省略)●個の輸入について、原告が損害を受けたとは認めるに足りない(前記⑶)。
5争点④(実用新案権侵害について被告に故意又は過失があるか。)について
⑴ 被告は、平成27年5月頃、台湾仕入先から被告商品を紹介され、調査を行った結果、被告商品の形態と実質的に形態が同一の原告商品が販売されていること及び本件実用新案権の設定の登録がされていることを認識した(前記第2の1⑷ウ)上、同月頃から平成28年8月8日までの間に被告商品4万個を輸入し、令和元年6月11日までにこれらを有償譲渡、無償譲渡又は廃棄した(同ア)。被告は、令和元年5月30日、原告から本件実用新案権を侵害している旨の通知を受け、同年6月11日、被告商品の無償譲渡及び販売を中止し、その後、原告は、同年7月3日、被告に対し、本件評価書を提示して警告した(前記第2の1⑷ウ)。
⑵ 実用新案権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権の侵害者等に対し、その権利を行使することができない(実用新案法29条の2)。これは、実用新案権が実体審査なしで権利が付与されることから、警告をする際には実用新案技術評価書の提示を義務付けることによって、権利者自身に権利行使に先立って権利の有効性について客観的な評価を十分に認識させるとともに、権利行使を受けた侵害者等の過度な調査負担を防ぐことにより、適切な権利行使を担保する趣旨と解される。したがって、侵害者等が実用新案技術評価書の提示のない警告を受けたり、侵害者等が実用新案権の存在を認識していたりしたとしても、そのことから直ちに侵害者等に当該実用新案権の侵害について故意及び過失があるということはできないと解される。
本件において、被告は、被告商品を輸入、譲渡した際、本件実用新案権の設定の登録がされていることは認識していたが、本件評価書を提示した警告を受けていなかったこと(前記⑴)や、被告において従前本件実用新案権についての紛争があったことを認めるに足りないことなどに照らせば、被告が、本件実用新案権の侵害について認識し又は認識し得たとは認められず、他にこれを認めるに足りる事情はうかがわれない。
⑶ 以上のとおり、本件実用新案権侵害について、被告に故意、過失があったとは認められない。
6争点⑥(被告が法律上の原因なく本件実用新案の使用料相当額を利得し、これによって原告が損失を受けたか。)について実用新案権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権の侵害者等に対し、その権利を行使することができず、侵害者等が実用新案技術評価書の提示のない警告を受けたり、侵害者等が実用新案権の存在を認識していたりしたとしても、そのことから直ちに侵害者等に当該実用新案権の侵害について故意又は過失があるということはできない(前記5)が、本件実用新案権は、設定の登録により発生している。そして、被告は、本件実用新案権の設定の登録がされているにもかかわらず、本件各考案の実施料を支払うことなく、本件各考案の技術的範囲に属する被告商品を輸入、販売した(前記第2の1⑷ア~ウ)から、法律上の原因なく、実施料相当額の利益を受け、原告はこれにより損失を受けたと認められ、また、被告は、遅くとも、本件評価書の提示とともに警告を受けた後の令和2年7月23日以降、同利得について悪意であったと認められる。
7争点⑦(原告が受けた損失及び額)について
⑴ 被告商品の輸入及び有償譲渡について
ア被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個をそれぞれ1000円で、同月9日から令和元年6月11日までに、●(省略)●個をそれぞれ1000円で、●(省略)●個をそれぞれ10円で販売した(前記第2の1⑷ア)。
イ本件に現れた諸事情を総合考慮すれば、前記4⑵イaと同様の理由により、原告が本件各考案の実施に対し受けるべき金銭の額は、実施品の販売価格に対する5%相当額であると認められる。
被告は、前記のうち●(省略)●個をそれぞれ10円で販売したところ、これを消費者に対して販売したことを認めるに足りず、原告が卸売販売によるものも含めて原告商品を販売した際の平均販売価格が●(省略)●円(前記4⑴イ)であることを考慮し、被告は、同額を基礎として算定される額の利益を受けたものとすべきである。
したがって、被告は、法律上の原因なく、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに譲渡した被告商品●(省略)●個について●(省略)●円、同月9日から令和元年6月11日までに譲渡した被告商品●(省略)●個について●(省略)●円、●(省略)●個について●(省略)●円の利益を受けたものと認められる。
【計算式】1,000×5%×●(省略)●=●(省略)●1,000×5%×●(省略)●=●(省略)●●(省略)●×5%×●(省略)●≒●(省略)●なお、被告が、前記譲渡に係る被告商品の輸入について、その譲渡による利益額を超えて利益を受けたとは認められない。そして、原告は、不当利得返還請求を不正競争に基づく損害賠償請求の予備的請求であるとするところ、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに譲渡した被告商品●(省略)●個についての不当利得額(●(省略)●円)は、同譲渡に係る不正競争の損害額(●(省略)●円前記4⑴ウ)を超えない。
ウ以上から、被告商品の輸入及び有償譲渡については、平成28年8月9日から令和元年6月11日までの被告商品●(省略)●個の有償譲渡についての不当利得返還請求が問題となるところ、その有償譲渡により原告が受けた損失の額は、●(省略)●円及び●(省略)●円の合計●(省略)●円であると認められる。
⑵ 被告商品の輸入及び無償譲渡について
ア被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに●(省略)●個を、同月9日から令和元年6月11日までに、●(省略)●個を無償譲渡した(前記第2の1⑷ア)。
イ原告が本件各考案の実施に対し受けるべき金銭の額は、実施品の販売価格に対する5%相当額である(前記⑴イ)。
被告は、前記の個数を無償譲渡したところ、それは、被告フライパンの販売という被告の営業活動に際して消費者に対して譲渡したものであることなどに照らすと、被告は、本件各考案の実施について、小売市場における価格である●(省略)●円に対する5%相当額の利益を受けたものとすべきである。
したがって、被告は、法律上の原因なく、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに譲渡した被告商品●(省略)●個について●(省略)●円、同月9日から令和元年6月11日までに譲渡した被告商品●(省略)●個について●(省略)●円の利益を受けたものと認められる。
【計算式】●(省略)●×5%×●(省略)●=●(省略)●●(省略)●×5%×●(省略)●=●(省略)●なお、被告が、前記譲渡に係る被告商品の輸入について、その譲渡による利益額を超えて利益を受けたとは認められない。そして、原告は、不当利得返還請求を不正競争に基づく損害賠償請求の予備的請求であるとするところ、平成27年8月4日から平成28年8月8日までに譲渡した被告商品●(省略)●個についての不当利得額(●(省略)●円)は、同譲渡に係る不正競争の損害額(144万8329円前記4⑵ウ)を超えない。
ウ以上から、被告商品の輸入及び無償譲渡については、平成28年8月9日から令和元年6月11日までの被告商品●(省略)●個の無償譲渡についての不当利得返還請求が問題となるところ、その無償譲渡により原告が受けた損失の額は、●(省略)●円であると認められる。
⑶ 被告商品の輸入について被告は、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間に輸入した●(省略)●個の被告商品のうち、平成28年8月9日から令和元年6月11日までに●(省略)●個を廃棄した(前記第2の1⑷ア)。この被告商品●(省略)●個の輸入について、本件各考案の実施に対し、譲渡の実績がないにもかかわらず、輸入のみについて、原告に受けるべき金銭があると認めるに足りる証拠はない。したがって、平成27年5月頃から平成28年8月8日までの間の被告商品●(省略)●個の輸入について、被告が法律上の原因なく利益を受け、これにより原告が損失を受けたとは認めるに足りない。
⑷ 小括以上から、被告による平成28年8月9日から令和元年6月11日までの被告商品●(省略)●個の有償譲渡、●(省略)●個の無償譲渡について、原告が受けた損失の額は、●(省略)●円(前記⑴ウ)及び●(省略)●円(前記⑵ウ)の合計66万9289円であると認められる(これらの譲渡に係る被告商品の輸入について、その譲渡に係る損失額を超えて原告が損失を受けたとは認められない。)。
他方、被告による平成28年8月9日から令和元年6月11日までに廃棄した被告商品●(省略)●個の輸入については、原告が損失を受けたとは認めるに足りない(前記⑶)。
第4 結論
よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官柴田義明
裁判官佐伯良子
裁判官仲田憲 史別紙請求の範囲の記載【請求項1】底面が開口し、上板、左右側板及び前後側板からなる箱形状であり、前記上板中央に左右方向に前記左右側板上端まで長尺に切り欠いた上板切欠きと、前記上板切欠きと繋がり、前記左右側板それぞれの上端から底部に向かって長尺凹状に切り欠いた一対の側板切欠きと、によって形成された切欠き凹部を有し、該切欠き凹部に調理用具を載置する、調理用具スタンド本体を備えることを特徴とする調理用具スタンド。
【請求項4】前記前後側板の少なくとも一方には、調理用具スタンドを遊挿するための孔部を有する請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の調理用具スタンド。
【請求項7】前記底部に着脱自在に被着される蓋部材を更に備える請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の調理用具スタンド。
【請求項8】前記蓋部材は、上板部と、該上板部に対して垂直に立設した一対の側板部と、前記上板部に対して傾斜して開いた一対の斜板部とから形成されている請求項7に記載の調理用具スタンド。
【請求項9】前記側板部の少なくとも一方の上部に切欠き凹部を備えた請求項8に記載の調理用具スタンド。
【請求項10】前記上いた部の上面が、凹設して形成された凹設部を有する請求項8又は9に記載の調理用具スタンド。
【請求項11】前記蓋部材が、弾性変形可能な軟質材で一体に形成されている請求項7乃至10のうちのいずれか1項に記載の調理用具スタンド。
【請求項12】前記軟質材は、熱可塑性エラストマーである請求項11に記載の調理用具スタンド。以上別紙原告商品正面 背面右側面 左側面平面 底面正面斜視 背面斜視底面斜視 本体正面斜視トレイ正面斜視 トレイ背面斜視以上別紙被告商品正面 背面右側面 左側面平面 底面正面斜視 背面斜視底面斜視 本体正面斜視トレイ正面斜視 トレイ背面斜視以上
出典: 令和2年(ワ)第15955号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →