📜 判決文全文
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第1控訴の趣旨
1原判決を次のとおり変更する。
2主文第1項ないしと同旨
3被控訴人は、別紙物件目録記載3ないし8の各マッサージ機を製造し、販売し、又は販売の申出をしてはならない。
4被控訴人は、別紙物件目録記載3ないし8の各マッサージ機を廃棄せよ。
5被控訴人は、控訴人に対し、15億円及び別紙請求額一覧の表1の「請求額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで「遅延損害金利率(年)」欄記載の各割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1事案の要旨本件は、発明の名称を「椅子式施療装置」とする特許第4504690号(以下「本件特許A」といい、本件特許Aに係る特許権を「本件特許権A」という。)、発明の名称を「椅子式マッサージ機」とする特許第5162718号(以下「本件特許B」といい、本件特許Bに係る特許権を「本件特許権B」という。)及び特許第4866978号(以下「本件特許C」といい、本件特許Cに係る特許権を「本件特許権C」という。)の特許権者である控訴人が、被控訴人による別紙物件目録記載1ないし12の各マッサージ機(以下「被告各製品」と総称し、それぞれを同目録の番号に応じて、「被告製品1」などという。)の製造、販売等が本件特許権AないしCの侵害に当たる旨主張して、被控訴人に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、被告各製品の製造、販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の一部として、15億円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、被告各製品は、本件特許AないしCに係る発明の技術的範囲に属さないとして、その余の点について判断することなく、控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は、被告製品1ないし8について本件特許権A及びCに係る請求を棄却した部分について、控訴の趣旨(ただし、遅延損害金請求については当審における拡張分を含む。)の限度で、原判決を不服として、本件控訴を提起した。また、控訴人は、当審において、平成27年4月12月以前の損害に係る部分の予備的請求として、不当利得返還請求を追加する訴えの変更をした。
2前提事実(証拠の摘示のない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)当事者
ア控訴人は、医療機器、健康機器、家庭用電気機械器具等の製造販売等を目的とする株式会社である。
イ被控訴人は、電気マッサージ器、美容体育機器、電気用品等の製造販売等を目的とする株式会社である。本件特許A
ア東芝テック株式会社は、平成16年1月15日、本件特許Aに係る特許出願(特願2004-7782号。以下「本件出願A」という。)をした(乙A1)。その後、控訴人は、本件出願Aに係る特許を受ける権利の譲渡を受け、平成18年10月11日付けで、その旨の出願人名義変更届をした(乙A2)。控訴人は、平成22年4月30日、本件特許権Aの設定登録(請求項の数1)を受けた(甲1、2)。
イ本件特許Aの特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本件発明A」という。)。
【請求項1】座部と、該座部の後部に取り付けられた背凭れとを備え、前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ、前記背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた椅子式施療装置であって、利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けたことを特徴とする椅子式施療装置。
ウ本件発明Aを構成要件に分説すると、次のとおりである。
【本件発明A】A座部と、該座部の後部に取り付けられた背凭れとを備え、B前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ、C前記背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられたD椅子式施療装置であって、E利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けたFことを特徴とする椅子式施療装置。
本件特許C
ア控訴人及びしげるテック株式会社(旧商号「京和装備株式会社」。以下「しげるテック」という。)は、平成18年8月11日に出願した特許出願(特願2006-220454号。以下「本件親出願」又は「原出願」という。乙C8)の一部を分割して、平成20年10月27日、本件特許Cに係る特許出願(特願2008-276064号。以下「本件出願C」という。)をした(乙C9)。控訴人及びしげるテックは、平成23年2月8日付けの拒絶理由通知(以下「本件拒絶理由通知」という。乙C11)を受けたため、同年5月9日付けで、特許請求の範囲及び明細書について手続補正(以下「本件補正」という。乙C13)をした後、同年6月1日、特許査定(乙C14)を受けた。その後、控訴人は、しげるテックから、本件出願Cに係る特許を受ける権利の譲渡を受け、同年7月28日付けで、その旨の出願人名義変更届をした(甲C68、69(枝番のあるものは枝番を含む。特に断りのない限り、以下同じ。))。控訴人は、同年11月25日、本件特許権Cの設定登録(請求項の数5)を受けた(甲5、6)。
イ本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、次のとおりである(以下、請求項の番号に応じて、請求項1に係る発明を「本件発明C-1」などという。)。
【請求項1】座部及び背凭れ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘掛部を有する椅子式マッサージ機において、前記肘掛部に、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ、前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に空洞部の先端部の上方を塞ぐ形態で手掛け部が設けられており、前記肘掛部が、前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部と、後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え、それぞれの施療部に膨縮袋が夫々設けられている事を特徴とする椅子式マッサージ機。【請求項2】前記肘掛部は、中部に前記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部によりコ型に形成された施療部を備えており、前記底面部と前記手掛け部とでは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面が異なっており、底面部の載置面よりも手掛け部の載置面の方が高い位置に形成されている事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。【請求項3】前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられており、外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着すると共に、前記底面部の外側立上り壁側に、もう一つの膨縮袋の外側立上り壁側の縁部を止着している事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。【請求項4】前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止着して構成した事を特徴とする請求項3記載の椅子式マッサージ機。
【請求項5】前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するようにした事を特徴とする請求項1乃至4記載の椅子式マッサージ機。
ウ本件発明C-1ないしC-5(以下、これらを併せて「本件各発明C」という。)を構成要件に分説すると、次のとおりである。【本件発明C-1】A座部及び背凭れ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘掛部を有する椅子式マッサージ機において、B前記肘掛部に、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ、C前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、D前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に空洞部の先端部の上方を塞ぐ形態で手掛け部が設けられており、E前記肘掛部が、E-1前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部と、E-2後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え、Fそれぞれの施療部に膨縮袋が夫々設けられているG事を特徴とする椅子式マッサージ機。【本件発明C-2】H前記肘掛部は、中部に前記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部によりコ型に形成された施療部を備えており、I前記底面部と前記手掛け部とでは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面が異なっており、底面部の載置面よりも手掛け部の載置面の方が高い位置に形成されているJ事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。【本件発明C-3】K前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられており、L外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着すると共に、前記底面部の外側立上り壁側に、もう一つの膨縮袋の外側立上り壁側の縁部を止着しているM事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。【本件発明C-4】N前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止着して構成したO事を特徴とする請求項3記載の椅子式マッサージ機。【本件発明C-5】P前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するようにしたQ事を特徴とする請求項1乃至4記載の椅子式マッサージ機。被控訴人の行為等
ア被控訴人は、平成22年4月30日以降、被告製品1の製造、販売、輸出を行い、被告製品2ないし8の製造、販売を行っていた。このうち、被告製品1は、海外向け製品で、輸出期間は平成26年5月から令和3年3月までであり、被告製品2は、日本国内向け製品で、平成19年12月から平成22年3月まで製造され、製造終了後も平成28年10月まで販売されていた(乙C31、C47ないしC49)。イ被告製品1及び2は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の1及び2記載のとおりであり、同1記載のaないしd、f、同2記載のa、d、f、g、i、pの構成を有する。被告製品3、5及び8は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第2の1記載のとおりであり、同2記載のaないしd、fのとおりの構成を有する。被告製品4、6及び7は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第3の1記載のとおりであり、同2記載のaないしd、fのとおりの構成を有する。
ウ被告製品1ないし8は、本件発明Aの構成要件A、D及びFをいずれも充足する。被告製品1及び2は、本件発明C-1の構成要件A、D、F及びG、本件発明C-2の構成要件I、本件発明C-5の構成要件Pをいずれも充足する。
3争点
⑴ 本件特許A関係
ア被告製品1ないし8の本件発明Aの技術的範囲の属否(争点1-1)
イ本件特許Aに係る無効の抗弁の成否(争点1-2)AS-878に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本件発明Aの新規性欠如(無効理由1)FMC-350に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本件発明Aの新規性欠如(無効理由2)明確性要件違反(無効理由3)本件特許C関係
ア被告製品1及び2の本件各発明Cの技術的範囲の属否(争点2-1)構成要件充足性(争点2-1-1)a本件発明C-1及びC-2の構成要件充足性(争点2-1-1-1)b本件発明C-3ないしC-5の構成要件充足性(争点2-1-1-2)均等論(争点2-1-2)
イ本件特許Cに係る無効の抗弁の成否(争点2-2)乙C19を主引用例とする本件各発明Cの進歩性欠如(無効理由1)明確性要件違反(無効理由2)特許法17条の2第3項の補正要件違反(無効理由3)本件発明C-2に係るサポート要件違反(無効理由4)
ウ被控訴人が賠償又は返還すべき控訴人の損害額等(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1争点1-1(被告製品1ないし8の本件発明Aの技術的範囲の属否)について(本件特許A関係)次のとおり原判決を訂正し、当審における当事者の補充主張を付加するほか、原判決の別紙「本件特許権A関係の請求に関する事実及び理由」の第2の1記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決の訂正
ア原判決9頁3行目を「1争点1-1(被告製品1ないし8の本件発明Aの技術的範囲の属否)」と改め、同頁6行目から16行目までを次のとおり改める。
「被告製品1ないし8の構成は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の1、第2の2、第3の2記載のとおりである。以下のとおり、被告製品1ないし8は、構成要件B、C及びEを充足するから、本件発明Aの技術的範囲に属する。」
イ原判決9頁18行目を「ア構成要件Bの充足」と、同頁19行目の「意義」を「「尻用エアバッグ」の意義」と、同頁23行目の「本件明細書A」を「本件出願Aの願書に添付した明細書(以下、図面を含めて「本件明細書A」という。甲2)と改め、10頁1行目から3行目までを次のとおり改める。
「被控訴人の主張について被控訴人は、構成要件Bの「腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ」との構成は、「腿用エアバッグ」があるときは、その「腿用エアバッグ」は、「尻用エアバッグ」と同時制御されていることを要すると解される旨主張する。しかしながら、構成要件Bは、「腿用エアバッグ」が腿をマッサージする機能を有することについて言及しているだけであって、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)には、「腿用エアバッグ」と「尻用エアバッグ」との連動ないし同時制御に係る記載はなく、また、本件明細書Aの記載を見ても、「腿用エアバッグ」が「尻用エアバッグ」と同時制御されることは予定されていないから、被控訴人の上記主張は失当である。小括以上のとおり、被告製品1ないし8は、本件発明Aの「尻用エアバッグ」を備えているから、構成要件Bを充足する。」
ウ原判決10頁4行目を「イ構成要件Cの充足」と、同頁5行目の「意義」を「「腰用施療子」の意義」と改め、同頁12行目の「及びE」を削り、同頁17行目の「「腰用施療子」(構成要件C及びE)」を「構成要件C」と改める。
エ原判決11頁15行目の「している。」を「している(甲A1、A2、A17)。」と、同頁24行目の「されている。」を「されている(甲A7、A8、A18)。」と、12頁5行目の「されている。」を「されている(甲A1、A4、A19)。」と、同頁12行目の「されている。」を「されている(甲A7、A9、A20)。」と、同頁19行目の「されている。」を「されている(甲A7、A9、A21)。」と、同頁末行の「されている。」を「されている(甲A1、A6、A22)。」と改める。
オ原判決13頁5行目から25行目までを削る。
カ原判決14頁7行目を「ア構成要件Bの非充足」と、同頁8行目の「意義」を「「尻用エアバッグ」の意義」と改め、同頁20行目の「及びE」を削る。
キ原判決16頁8行目から10行目までを次のとおり改める。「「前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ」の意義等構成要件Bの「腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ」との構成は、その文言から、「腿用エアバッグ」が設けられている場合には、「腿用エアバッグ」は、単に膨らむだけでなく、「尻用エアバッグ」とともに、利用者の腰の高さ位置を徐々に高くすることに寄与しなければならないと理解される。また、本件明細書Aの記載から、「腿用エアバッグ」があるときは、その「腿用エアバッグ」は、「尻用エアバッグ」と同時制御されていることを要することが理解される。しかるところ、被告製品1ないし8における「腿用エアバッグ」は、「尻用エアバッグ」の膨張による利用者の身体の上方への持ち上げという形での「徐々に高くしながら」する腰の位置の移動に寄与するような膨張をするわけではないから、上記構成を備えていない。
小括以上によれば、被告製品1ないし8は、いずれも構成要件Bを充足しない。」
ク原判決16頁11行目を「イ構成要件Cの非充足」と、同頁12行目の「意義」を「「腰用施療子」の意義」と改め、同頁末行の「及びE」を削る。
ケ原判決17頁13行目の「「腰用施療子」(構成要件C及びE)」を「構成要件C」と改める。
ア構成要件Eのクレーム解釈の誤り原判決は、本件明細書Aの記載(【0001】ないし【0007】)を参酌すると、本件発明Aは、体格が小さいなどの理由から利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合には、利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができないことから、尻用エアバッグを膨らませることにより利用者の腰の高さ位置を徐々に高くするなどの調整をして、利用者の腰部に対して十分なマッサージを行おうとするものであると述べた上で、このような本件発明Aの技術的意義に鑑みると、構成要件Eの「利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けた」(構成要件E)とは、「尻用エアバッグ」につき、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させる制御手段を設けたことを意味するものと解されると判断した。しかしながら、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)には、「前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」することは記載されているが、それを超えて、利用者の腰の高さ位置の変化量、変化の程度を規定する記載はない。次に、本件明細書Aの【0001】ないし【0007】には、本件発明Aの技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段及び発明の作用効果が記載されているが、尻用エアバッグによる利用者の腰の高さ位置の変化量、変化の程度については、何ら記載がなく、本件明細書A全体を見ても記載も示唆もない。また、本件明細書Aの【0007】の「利用者の腰の高さ位置を徐々に調整できるので、腰部に対して十分な施療を行うことができる。」との記載は、腰の高さ位置を徐々に調整することによって、調整をしない場合よりも、腰部に対して十分な施療を行うことができる効果が得られる旨を記載したものであり、腰の高さ位置の変化量や変化の程度は問題としていないことに鑑みると、本件発明Aの技術的意義は、腰の高さ位置を徐々に高くして調整するという「構成」を備えることで、そのような調整をしない椅子式施療装置に比して、腰部に対して十分な施療を行うことができるという「作用効果」を奏することにあるというべきである。
さらに、利用者の腰の位置と腰用施療子の位置の不一致の程度は様々であり、そのような不一致を解消する程度を数値などで特定することは不可能であることからすると、原判決が述べる「利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度」が具体的にいかなる程度であるか不明であり、本件発明Aの技術的範囲を適切に画定するものとはいえない。以上によれば、構成要件Eの「前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」するとは、その文言どおり、単に、尻用エアバッグを膨らませることによって、腰の空間的位置が上方向に徐々に変位していることをいい、利用者の腰の高さ位置の変化量や変化の程度は問題にならないと解すべきであるから、原判決の上記判断は誤りである。
ア構成要件Eのクレーム解釈の誤りの主張に対し原判決は、構成要件Eの「前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら」という機能的な動作態様の記載から、その意味が一義的に明らかではないため、本件明細書Aの記載(【0001】ないし【0007】)を参酌して、その意味を明らかにしたものであり、ごく一般的なクレーム解釈手法を採るものであって、原判決のクレーム解釈に控訴人主張の誤りはない。
イ構成要件Eの非充足原判決は、被告製品1ないし3、5ないし8に係る尻用エアバッグの膨張による腰の高さ位置の変化を確認する試験について、尻用エアバッグが膨張したことにより被験者の腰の高さ位置が高くなった程度は、控訴人に最大限有利に考えても、16㎜又は32㎜であるが、人間の一般的な体格等を踏まえると、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置との間に不一致がある場合に、腰部に十分なマッサージを行うために解消されるべき不一致の程度は32㎜を超えると考えられるとして、被告製品1ないし3、5ないし8についての構成要件Eの充足性を否定したものであり、極めて至当な認定判断である。
控訴人は、人体の腰部には多数の施療対象点があり(甲A14ないし16)、これらの施療対象点を的確に押圧施療することにより十分なマッサージ効果が得られることからすると、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置の不一致の程度が16㎜又は32㎜の範囲に収まる場合が当然に想定されるとして、被告製品1ないし3、5ないし8は、「尻用エアバッグ」を膨らませることによって、利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させるものであるから、構成要件Eを充足する旨主張する。しかしながら、例えば、被告製品1及び2についてみると、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の図3に矢印で示されている「腰用エアバッグ」は、背もたれに固定されて動かない腰用エアバッグであり、その縦横長は、260㎜×120㎜であること(乙A34)に照らすと、たかだか16㎜又は32㎜程度の上下の移動では、体格差がある様々な利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが常に一致して、不一致が解消されるなどということはない。また、人体の腰部には多数の施療対象点があるとの点は、本件明細書Aの記載に基づかないものであり、失当である。したがって、控訴人の上記主張は理由がない。
無効理由1(AS-878に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本件発明Aの新規性欠如)
アAS-878について控訴人は、本件出願Aの出願前の平成15年7月、製品名「FUJIIRYOKICYBER-RelaxS.O」・型番「AS-878」のマッサージチェア(以下、単に「AS-878」という。)を販売していた(乙A42、A43)。AS-878は、別紙4の図1及び2に示すように、①座部と当該座部の後部に背もたれ部を備えた椅子本体を有するマッサージチェアであり、座部の左右方向の両端部に肘掛部を、座部の前端の下方に脚部を備えている、②椅子本体の背もたれ部に、身長方向(上下方向)に移動する機械式施療子であるもみ玉が設けられ、もみ玉は、利用者の腰の位置から首の位置まで身長方向に移動すること、身長方向の移動範囲の特定の位置でもみ動作やたたき動作を行うこと、身長方向に移動しながらもみ動作やたたき動作を行うことが可能である、③椅子本体の座の座面上面の利用者の尻が位置する部分に、上方へ膨張し、臀部底面を押圧してマッサージする尻エアーバッグが、座の座面上を左右方向に延在して1個設けられている、④尻エアーバッグの前方には、利用者の大腿部をマッサージするももエアーバッグが設けられ、座の座面上を左右方向に延在し、左右の両太ももを1個のエアーセルでマッサージをし、さらに、背もたれ部には腰部に対して、前方に膨縮してマッサージする腰エアーバッグが設けられている(乙A42、A44、A45)。また、AS-878は、「自動コース」の「腰コース」を選択すると、特定の時間帯において、尻エアーバッグの膨張動作と腰位置でのもみ玉のたたき動作が並行して行われ、このとき、少なくとも15㎜は腰の高さ位置が高くなっており、「尻用エアバッグの膨張により利用者の腰の高さ位置が高くなることが特段の困難を伴うことなく直接確認できる最中に、腰用施療子により腰部を施療」している(乙A45、A48)。前記及びによれば、AS-878により実施された発明(AS-878に係る発明)は、本件出願Aの出願前に公然実施されていたものであり、次のとおりの構成を有する。
25a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b座部には、腿をマッサージする、ももエアーバッグ、および尻をマッサージする尻エアーバッグが設けられ、c背もたれ部には、身長方向に移動するもみ玉が設けられ、当該もみ玉は身長方向の移動範囲に利用者の腰の位置を含んで移動するdマッサージチェアであって、e「自動コース」の「腰コース」において、利用者の腰を施療する際に、尻エアーバッグを膨らませる工程と、身長方向の移動範囲において利用者の腰に位置したもみ玉の作動状態(もみ動作及びたたき動作)とを同時に発現させる制御手段を設けたfマッサージチェア。
イ本件発明AとAS-878に係る発明の同一性AS-878に係る発明の構成aないしfは、本件発明Aの構成要件AないしFの構成にそれぞれ相当するものであり、AS-878に係る発明は、本件発明Aの上記構成を全て備えているから、本件発明Aは、AS-878に係る発明(公然実施発明)と同一の発明である。
そうすると、本件特許Aには、特許法29条1項2号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。無効理由2(FMC-350に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本件発明Aの新規性欠如)
アFMC-350について被控訴人は、本件出願Aの出願前の平成14年12月頃、製品名「FAMILYMEDICALCHAIRi.1」・型番「FMC-350」のマッサージチェア(以下、単に「FMC-350」という。)を販売していた(乙A17、A19ないしA24、A27、A28、A35)。前記と証拠(乙A26、A35ないしA41)によれば、FMC-350により実施された発明(FMC-350に係る発明)は、本件出願Aの出願前に公然実施されていたものであり、次のとおりの構成を有する。a座と、該座の後部に取り付けられた背凭れとを備え、b座には、腿をマッサージする太もも用エアーセル、および尻をマッサージする尻用エアーセルが設けられ、c背凭れには、身長方向に移動するもみ玉が設けられ、当該もみ玉は身長方向の移動範囲に利用者の腰の位置を含んで移動するdマッサージチェアであって、e「自動コース」の「メディカルコース」のうち、「腰・筋肉疲労改善コース」において、利用者の腰を施療する際に、二位置切替三方弁を開の位置にして尻用エアーセルを膨らませる工程と、身長方向の移動範囲において利用者の腰に位置したもみ玉の作動状態(もみ動作及び叩き動作)とを同時に発現させる制御手段を設けたfマッサージチェア。
イ本件発明AとFMC-350に係る発明の同一性FMC-350に係る発明の構成aないしfは、本件発明Aの構成要件AないしFの構成にそれぞれ相当するものであり、FMC-350に係る発明は、本件発明Aの上記構成を全て備えているから、本件発明Aは、FMC-350に係る発明(公然実施発明)と同一の発明である。そうすると、本件特許Aには、特許法29条1項2号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。無効理由3(明確性要件違反)本件発明Aの構成要件Eの「利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら」にいう「徐々に」とは、どの程度の時間を掛ける必要があるのかが明確でないため、本件発明Aの外延が不明確である。
3争点2-1(被告製品1及び2の本件各発明Cの技術的範囲の属否)について(本件特許C関係)次のとおり原判決を訂正し、当審における当事者の追加主張を付加するほか、原判決の別紙「本件特許権C関係の請求に関する事実及び理由」の第2の1記載のとおりであるから、これを引用する。原判決の訂正
ア原判決148頁6行目を「争点2-1(被告製品1及び2の本件各発明Cの技術的範囲の属否)(本件特許C関係)」と改め、同頁8行目から11行目までを次のとおり改める。「被告製品1及び2の構成被告製品1及び2の構成は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の2記載のとおりである。」
イ原判決148頁14行目を「争点2-1-1-1(本件発明C-1及びC-2の構成要件充足性)」と、同頁24行目の「存在すること」を「備えられていなければならないこと」と改め、同頁末行の「そうすると、」の後に「構成要件B及びCの記載から読み取れることは、「空洞部」が、施療者の手部を含む前腕部を肘掛部の内部に挿入保持するように外側立上り壁、内側立上り壁及び底面部の3要素から形成されていることだけであるから、」を加える。
ウ原判決149頁3行目の「本件明細書C」を「本件出願Cの願書に添付した明細書(以下、図面を含めて「本件明細書C」という。甲6)と改め、同頁10行目の「【0046】」の後に「、【図8】」を加える。
エ原判決150頁2行目の「本件」から3行目の「という。)」までを「本件親出願(乙C8)」と改め、同頁17行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「e原判決の判断の誤り原判決は、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づく解釈として、①構成要件Cの記載によれば、「外側立上り壁」、「内側立上り壁」及び「底面部」の3要素により形成された部分をもって成るものが「空洞部」であり、「空洞部」に「外側立上り壁」、「内側立上り壁」及び「底面部」が存在しない部分が許容されると解されず、「空洞部」全体にわたって「内側立上り壁」が存在することを要する、②構成要件Dの記載によれば、「空洞部の先端部」に「内側立上り壁の…前端部」が存在することは明らかであるところ、「内側立上り壁の…前端部」という記載は、更に「空洞部の先端部」以外にその後方部分にも「内側立上り壁」が存在することを示唆するものと理解される、③構成要件Bの記載によれば、「前腕挿入開口部」は、「空洞部」の一部ではなく、「空洞部」とは別の「肘掛部」の構成部分でありつつ、「空洞部」に連続して設けられた部分であると解され、また、「前腕挿入開口部」と「空洞部」から成る「肘掛部」中における「前腕挿入開口部」と「空洞部」の相対的な位置関係は、「空洞部」が前部に、「前腕挿入開口部」が後部に位置すると解され、さらに、「前腕部を挿入保持する」ように「空洞部」が構成される、④構成要件E、E-1、E-2の記載によれば、「前腕挿入開口部」が「内側後方から施療者の前腕部を挿入するための」部分であるところ、そこに位置する施療部は「底面部」と「外側立上り壁」によりL型に形成されていることから、当該施療部には「内側立上り壁」が存在しないと解されること、「前腕挿入開口部から延設して…設けられ」ている「空洞部」が、「肘掛部」中の別の構成部分であることに鑑みると、「内側立上り壁」の有無が「空洞部」と「前腕挿入開口部」とを画するものであるとの示唆を看取することもでき、そもそも、「前腕挿入開口部」につき、「内側後方から施療者の前腕部を挿入するための」ものと特定されていること自体、「前腕挿入開口部から延設して…設けられ」た「空洞部」の内側側方からは、「空洞部」に「施療者の前腕部を挿入する」ことができないことを示唆するものと解される、⑤他方、請求項1の記載から、「空洞部」中に「内側立上り壁」が存在しない部分があるとの示唆を読み取ることはできないとして、本件発明C-1の「空洞部」(構成要件B、C)とは、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいうと解される旨判断した。
しかしながら、①及び⑤については、構成要件B及びCから読み取れる事項は、「該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部」が「外側立上り壁」、「内側立上り壁」及び「底面部」という3要素から形成されていることであり、他方で、「空洞部」のどの部分に、「外側立上り壁」、「内側立上り壁」及び「底面部」を設けるべきかについては、請求項1には何ら記載がない。「空洞部」が上記3要素から成ることと、上記3要素をどのように形成するかは別問題であるから、「空洞部」に「外側立上り壁」、「内側立上り壁」及び「底面部」が存在しない部分が許容されると解されないとの原判決の判断には、論理の飛躍がある。②については、構成要件Dには、「空洞部の先端部」以外の後方部分における「内側立上り壁」の範囲については記載も示唆もなく、また、構成要件Dの記載は、「空洞部の先端部」とその後方部分の一部に形成されている構成も、本件発明C-1の「空洞部」に該当すると解釈することと矛盾しないから、構成要件Dから「内側立上り壁」が「空洞部」全体に及ぶべきことを読み取ることはできない。③については、構成要件Bの記載によれば、「前腕挿入開口部」は「肘掛部」の「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」の部材であり、「空洞部」は「肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するため」の部材であると定義されるところ、いずれも「前腕」を「挿入」する機能を実現する部材であることで共通することからすると、「前腕挿入開口部」と「空洞部」は、「前腕部を挿入する部分」において重なることが示唆されているから、両者に厳密な線引きをすべき理由はない。また、仮に構成要件Bの記載について原判決の解釈を前提としても、「内側立上り壁」が「空洞部」の一部に形成されている構成であっても、「肘掛部」に「空洞部」と「前腕挿入開口部」とが別構成として設けられ、「肘掛部」において「空洞部」が前部に、「前腕挿入開口部」が後部に位置する構成とすることもできるから、本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものでなければならないという結論が論理必然的に導き出されるわけではない。④については、構成要件E、E-1、E-2は、「肘掛部」中における「前腕挿入開口部」と「空洞部」の位置関係等を直接規定したものではなく、また、構成要件E-2から読み取れる事項は、「前腕挿入開口部」に位置する施療部が底面部と外側立上り壁によりL型に形成されているということだけであり、そのことから直ちに、「内側立上り壁」の有無が「空洞部」と「前腕挿入開口部」とを画することを看取できるものではない。したがって、原判決の挙げる①ないし⑤は、本件発明C-1の「空洞部」(構成要件B、C)は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものと解釈することの根拠となるものではないから、原判決の上記判断は誤りである。⒝ 次に、原判決は、本件発明C-1の「空洞部」(構成要件B、C)とは、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいうと解されることは、本件明細書Cの記載及び本件特許Cの出願経過からも裏付けられると述べ、具体的には、①本件明細書C記載の本件発明C-1の技術的意義に鑑みると、本件発明C-1は、肘掛部の長さ方向全域に「外側立上り壁」と「内側立上り壁」が形成された椅子式マッサージ機を前提として、肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入可能となるように「内側立上り壁」を廃した「前腕挿入開口部」を設けたと認められるから、そのような肘掛部の「内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部」と、そこから「延設して肘掛部の内部に…設けられ」ている「空洞部」とは、「内側立上り壁」の有無により画されるものと理解されるし、「手掛け部」を設けたのは手部及び前腕部の広範を同時にマッサージするために肘掛部の前端部にまで「内側立上り壁」が形成されていることを踏まえたものである以上、本件発明C-1における「肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」た「空洞部」の「内側立上り壁」は、手部及び前腕部の広範を同時にマッサージすることができるように、「空洞部」全体にわたって存在することが想定されているといえる、②本件親出願の明細書(乙C8)の【0046】、【0047】及び図14は、本件明細書Cの【0046】、【0047】及び図14と同様に、前腕部施療機構の中部に「内側立上り壁」が形成されていない実施例に関する記載であるところ、これらは、本件出願Cの出願に当たり、本件親出願の請求項からの変更の根拠として挙げられていない、本件補正時に提出された平成23年5月9日付け意見書(以下「本件意見書」という。乙C12)において、控訴人は、本件各発明Cが、「肘掛部の長さ方向全域に前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機」に関する発明であり、「施療者の肘関節付近にまで左右一対の立上り壁が存在することによる施療者の肘関節付近の圧迫による不快感を解消し、更に前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行う事ができるようにした施療機を提供するもので」あるとした上で、「空洞部の先端部」に設けた「手掛け部」に関しては、そこに「内側立上り壁」が存在することを前提とした説明をしつつ、「前腕挿入開口部」に関しては、そこには「内側立上り壁」がない形状にしたとする説明をしている、他方、請求項2、すなわち肘掛部の中部に「前記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部によりコ型に形成された施療部」を設けることについても説明しているが、そこで言及されている本件明細書Cの記載のうち、関係するのは【0046】のみである、本件拒絶理由通知に示された「引用文献2」(乙C19)と本件補正後の発明(本件発明C-1及びC-2)との相違について、「引用文献2」に開示された前腕部施療部は「肘挿入用凹溝」であり、その断面形状は略横向き「凹」字状であるのに対し、本件補正後の発明においては、前腕挿入開口部に位置する施療部は「底面部」及び「外側立上り壁」により形成された断面略「L型」であり、また、手掛け部が形成される空洞部に位置する施療部は、「底面部」、「外側立上り壁」、「内側立上り壁」及び「手掛け部」に囲われた形状(実施の形態では「ロ型」)であるため、その構成が相違する旨説明している、断面が略「コ」字状の前腕部施療部の問題点として、前腕挿入開口部においては、上面に位置する部分が腕部の載脱をスムーズに行う上で障害となり、手掛け部においては「内側立上り壁」が存在しないため、施療者の体重を掛ける上で不安が残ることを指摘している、こうした説明内容に加え、本件補正により「前記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部によりコ型に形成された施療部を備え」る請求項2(本件発明C-2)を請求項1の従属項として追加したにもかかわらず、当該発明における上記略「コ」字状の前腕部施療部の問題点の有無等に関する説明が見当たらないことに鑑みると、本件補正における控訴人の説明は、請求項2の追加にかかわらず、本件発明C-1の「空洞部」につき、その全体にわたって「内側立上り壁」が存在する構成を前提としていたと理解される、③本件明細書Cの【0046】及び図14の記載が本件親出願からの分割出願(本件出願C)や補正(本件補正)にもかかわらず一貫して存在する点については、本件発明C-1に係る特許請求の範囲の請求項1の記載自体から「空洞部」につき、その全体にわたって「内側立上り壁」が存在する構成と理解されることに鑑みると、分割出願や補正による本件特許Cの発明の内容の変化に応じてこれらの記載が補正等されなかった結果にすぎないと見るべきである旨判断した。しかしながら、①については、本件明細書Cには、本件発明C-1の一実施形態(本件発明C-2の実施例)として、肘掛部の中部に外側立上り壁、手掛け部、底面部よりコ型に形成された施療部を設けたマッサージ機の記載があり(【0046】、図14)、図14では、コ型に形成された施療部、すなわち、内側立上り壁が存在しない部分が空洞部(62a)と図示されており、また、別の実施形態を示す図8においても、内側立上り壁が存在しない部分が空洞部(62a)と図示されている。これらの記載を参酌すれば、本件発明C-1の「空洞部」は、肘掛部中の内側立上り壁が存在する部分に限られるわけではなく、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えることを要しないことは明らかである。また、本件発明C-1は、肘掛部の長さ方向全域に立上り壁を設けることによる不都合(㋐上腕部内側の肘関節付近を圧迫し不快感を与える、腕部の載脱行為を妨げる、快適な起立及び着座を妨げるという不都合)を解決することを課題とし(【0005】ないし【0008】)、㋐及びの課題は、前腕挿入開口部の内側立上り壁を廃したことにより、の課題は、肘掛部に手掛け部を設けたことにより解決したものであり、それを超えて、「内側立上り壁」の有無が「空洞部」と「前腕挿入開口部」とを画し、空洞部はその全体にわたって内側立上り壁を備えるものであるという「空洞部」が備えるべき構成を導くことはできない。さらに、本件明細書Cの【0016】には、底面部及び外側立上り壁の二面において膨縮袋を備えることで前腕部に対するマッサージを実施することができる旨が記載されていることに照らすと、手部及び前腕部の広範を同時にマッサージするためには、「底面部」及び「外側立上り壁」の二面が存在すれば足り、「内側立上り壁」が「空洞部」の全体にわたって存在することは想定されていない。次に、②及び③については、本件親出願の分割出願として本件出願Cを出願するに際し、本件親出願の明細書(乙C8)の【0046】、【0047】及び図14を分割要件を満たすことの根拠として挙げられていないからといって、本件特許Cの出願経過において、本件発明C-1の「空洞部」をその全体にわたって「内側立上り壁」が存在する構成に限定したという控訴人の意思が客観的に表されているとはいえない。むしろ、控訴人は、本件意見書において、請求項1及び2に係る本件補正の根拠として、本件出願Cの願書に最初に添付した明細書(以下「本件出願Cの当初明細書」という。乙C9)の【0046】を明確に挙げていること、当該段落は本件明細書Cの【0046】と同じであり、「内側立上り壁」が備えられていない部分を「空洞部(62a)」として指し示した「図14」の構成を説明していることからすると、「空洞部」についてその全体にわたって「内側立上り壁」が存在することを要しないことを前提としていたことは明らかであり、本件明細書Cの【0046】及び図14の記載が存在することは本件特許Cの発明の内容の変化に応じてこれらの記載が補正等されなかった結果にすぎないとの原判決の③の判断は誤りである。
また、被控訴人が②で指摘する本件意見書における説明は、「空洞部」と「内側立上り壁」の関係については何ら言及されておらず、控訴人が、空洞部をその全体にわたって「内側立上り壁」が存在する構成に限定する意思を客観的に表明しているということはできない。
したがって、原判決の挙げる①ないし③は、本件発明C-1の「空洞部」(構成要件B、C)は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものと解釈することを裏付けとなるものではないから、原判決の上記判断は誤りである。」
オ原判決150頁19行目の「以下の図」の後に「(「別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載1参照)」を加え、同頁23行目から24行目にかけての「外側側面部」を「外側壁面部」と、同頁24行目の「内側側面部」を「内側壁面部」と改め、同頁末行に行を改めて次のとおり加える。「別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載1において、被告製品1及び2の「空洞部」として特定された部分は、本件発明C-1の「空洞部」(構成要件B、C)に相当する。仮に本件発明C-1の「前腕挿入開口部」と「空洞部」とが重なり合わない別構成であると解するとしても、同別紙記載1のとおり、被告製品1及び2の腕ユニットである「肘掛部」には、その「後部」に内側後方から施療者の前腕部を挿入するための「開口部」が存在する。被告製品1及び2の「開口部」は、本件発明C-1の「前腕挿入開口部」(構成要件B)に相当する。また、被告製品1及び2の「肘掛部」には、その「前部」から「中部」にかけて、「開口部」から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための「空洞部」が存在し、かかる「空洞部」は「外側壁面部」、「内側壁面部」及び「底面部」から形成されているから、被告製品1及び2の「空洞部」は、本件発明C-1の「空洞部」(構成要件B、C)に相当する。」
カ原判決154頁13行目の「腕ユニットの中部には」を「腕ユニットは、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載1のとおり、前部・中部・後部に分けることができ、その中部には」と改め、同頁21行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「カ小括以上のとおり、被告製品1及び2は、構成要件B、C、E、E-1及びE-2を充足するから、本件発明C-1の技術的範囲に属し、また、構成要件Hを充足するから、本件発明C-2の技術的範囲に属する。」
キ原判決154頁23行目から155頁9行目までを次のとおり改める。「被告製品1及び2の構成の主張に対し被告製品1及び2が控訴人主張の構成b、c、e、e-1、e-2、h、jないしo、qを有することは否認する。」
ク原判決155頁10行目を「本件発明C-1及びC-2の構成要件充足性の主張に対し」と、同頁末行の「本件各発明C」を「本件発明C-1」と改める。
ケ原判決156頁4行目の「本件各発明C」を「本件発明C-1」と、同頁7行目の「分割出願時の補正」を「本件補正」と改め、同頁14行目末行に行を改めて次のとおり加える。
「e控訴人の主張について本件発明C-1の「空洞部」(構成要件B、C)のクレーム解釈に係る原判決の判断の誤りをいう控訴人の主張は、いずれも理由がない。原判決が判示するとおり、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載それ自体から、本件発明C-1の「空洞部」が後方にある「挿入開口部」から延設されて隣接し、「手部を含む前腕部」を挿入できるものであって、「外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」ている必要があることは明らかである。控訴人は、本件明細書Cの【0016】において、底面部及び外側立上り壁の二面において膨縮袋を備えることで前腕部に対するマッサージを実施することができる旨が記載されていることを根拠に「内側立上り壁」が「空洞部」の全体にわたって存在することは想定されていない旨主張するが、【0016】は、「前腕挿入開口部」についての記載であり、「空洞部」に関する記載ではない。⒝ 原判決が判示するとおり、本件明細書Cに【0046】や図14が存在することは、本件親出願の分割出願である本件出願Cや本件補正による本件特許Cの発明の内容の変化に応じてこれらの記載が補正等されなかった結果にすぎない。控訴人は、本件出願Cの出願時に提出された上申書(以下「本件上申書」という。乙C10)において、本件明細書Cの【0046】や図14が本件親出願の請求項1からの変更箇所についての根拠とされていないことについて合理的な説明をしていない。また、控訴人が指摘する本件意見書(乙C12)の記載は、構成要件Cの追加変更に関する根拠を示しているのではなく、本件明細書Cの【0046】が、「前記肘掛部が、前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部と、後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え」(構成要件E、E-1、E-2)という本件補正の根拠として使用されているにすぎないから、【0046】の記載のうち、「コ型施療部69a」に関する記載は、本件補正の「根拠」として機能していない。
さらに、控訴人が論拠とする図8は、肘掛け部のうち、前腕挿入開口部に当たる位置における膨縮袋の配設を示した断面説明図であって、図8における「62a」との記載は、「空洞部62a」の「後方位置」にある「前腕挿入開口部」を示すに当たり、「空洞部62a」を仮想線で示したものにすぎないから、控訴人が主張するような、「空洞部」に「内側立上り壁」を備えない部分があることを示したものではない。」
コ原判決156頁16行目から17行目までを次のとおり改める。「被告製品1及び2は、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載2に示すように、手部又はその一部に内側立上り壁が存在するものの、前腕部には内側立上り壁が存在しないから、前腕部の一部にまで及ぶ「内側立上り壁」が存在する「空洞部」(構成要件B、C)を備えていない。」
サ原判決158頁16行目の「(以下」から17行目末尾までを「(乙C19)」と、同頁18行目の「乙C19発明」を「乙C19記載の発明」と改める。
シ原判決160頁11行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「カ小括以上のとおり、被告製品1及び2は、構成要件B、C、E、E-1、E-2及びHを充足しないから、本件発明C-1及びC-2の技術的範囲に属さない。」当審における当事者の追加主張
被告製品1においては、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載3のとおり、外壁エアバッグ1が突出部に、被告製品2においては、同別紙記載5のとおり、外壁エアバッグ1及び2が突出部にそれぞれ止着されている。上記各突出部は、外側壁面部の内側に設けられたものであり、外側壁面部の一部をなし、「外側立上り壁」(構成要件K)に該当する。そして、被告製品1の外壁エアバッグ1と被告製品2の外壁エアバッグ1及び2は、外側壁面部の存在により施療者の腕を略斜め上方向から施療するから、外側壁面部の「下部」において止着されているといえる。したがって、被告製品1及び2は、「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着する」(構成要件L)に相当する構成を備えているから、構成要件K及びLを充足する。また、前述のとおり、被告製品1及び2は本件発明C-1の構成要件を全て充足するから、構成要件Mも充足する。以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C-3の構成要件を全て充足する。
10b被告製品2については、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載5及び6に示すように、外壁エアバッグ1及び2は、突出部の頂面に止着されているが、前記aと同様の理由により、突出部は、本件発明C-3の「外側立上り壁」(構成要件K)に含まれず、また、突出部の頂面は、同別紙記載6のとおり、外側壁面部を構成する外壁と上壁のうち、外壁の「中央部」付近に位置しているから、外壁エアバッグ1及び2は、構成要件Lの「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着する」との構成を備えていない。cそして、被告製品1及び2が本件発明C-1の構成要件B、C、E、E-1、E-2を充足しないことは、前述のとおりであるから、被告製品1及び2は、本件発明C-3の構成要件をいずれも充足しない。前記と同様の理由により、被告製品1及び2は、本件発明C-4の構成要件N及びOをいずれも充足しない。被告製品1及び2が本件発明C-1の構成要件B、C、E、E-1、E-2を充足しないことは、前述のとおりであるから、被告製品1及び2は、本件発明C-5の構成要件Qを充足しない。
第1要件(相違部分が本質的部分でないこと)本件発明C-1は、肘掛部の長さ方向全域に前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた従来技術には、施療者の肘関節付近にまで立上り壁が形成されることにより、①上腕部内側の肘関節付近を内側立上り壁が圧迫し、施療者に不快感を与える、②前腕部施療機構における腕部の載脱行為を妨げる、③肘掛部の前端部の上面が開口されており、起立及び着座の際に体重を掛けることが困難であるといった課題があったことから、かかる課題を解決し、「前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに行うよう構成すると共に、前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行う事」を目的とするものである(本件明細書Cの【0005】ないし【0008】)。
しかるところ、本件相違部分は、本件発明C-1の上記課題や目的と何ら関係がなく、本件発明C-1の本質的部分ではないから、被告製品1及び2は、第1要件を充足する。
第2要件(置換可能性)本件発明C-1は、「着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、前記内側立上り壁による前腕部内側の摺擦を回避しながら前記手掛け部に体重を掛けて行うことができる。」という作用効果を奏するところ(本件明細書Cの【0014】)、本件相違部分に係る本件発明C-1の構成を被告製品1及び2の構成と置き換えたとしても、本件発明C-1の上記作用効果と同一の作用効果を奏する。したがって、被告製品1 及び2は、第2要件を充足する。
第3要件(置換容易性)本件相違部分は内側立上り壁が空洞部の一部にのみ備えられている点にあるところ、内側立上り壁の長さをどのようにするかは設計的事項にすぎないから、本件相違部分に係る本件発明C-1の構成を被告製品1及び2の構成と置き換えることは、容易に想到することができたものといえる。したがって、被告製品1及び2は、第3要件を充足する。
第1要件の主張に対し本件発明C-1の本質的部分は、施療者の肘関節付近の圧迫による不快感を解消するために、「施療者の肘関節付近を前腕挿入開口部として、底面部と外側立上り壁によりL型に構成し、その部分の内側立上り壁をなくし(構成要件E-2)、前腕挿入開口部に延設する(連続して設けられる)空洞部を外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部から形成する(構成要件C)」という特徴構成を具備していること、すなわち、「肘掛部の長さ方向に延びる内側立上り壁が施療者の手部から前腕部の肘関節付近の手前にまでわたって存在すると共に、施療者の肘関節付近(前腕挿入開口部に位置する施療部)において内側立上り壁が存在しない構成であること」である。しかるところ、被告製品1及び2の構造は、「空洞部において、手部を除き前腕を挿入保持するための部分に内側立上り壁が備えられていない」という構造であり、本件相違部分は、本件発明C-1の本質的部分の相違である。したがって、被告製品1及び2は、第1要件を充足しない。
第2要件の主張に対し被告製品1及び2において、本件発明C-1の作用効果を奏するために必要な前腕部施療機構の構成である、手部を除く前腕部に相当する部分には「内側立上り壁」が設けられていない以上、肘掛部の長さ方向に形成された左右一対の立上り壁を用いて手部を除き前腕部をマッサージすることができない。したがって、被告製品1及び2は、本件発明C-1の目的を達することはできず、同一の作用効果を奏するものとはいえないから、第2要件を充足しない。
第3要件の主張に対し本件相違部分は、設計的事項にとどまらないから、被告製品1及び2は、第3要件を充足しない。
第4要件(容易推考性)被告製品1及び2は、本件出願Cの出願前に頒布された刊行物である乙C19(特開2005-287831号公報)及び乙C20(特開2005-28045号公報)に記載された発明から、容易に推考することができたものであるから、第4要件を充足しない。
第5要件(意識的除外等の特段の事情)「空洞部」が「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」(構成要件C)との構成は、本件出願Cの際に追加変更された構成であり、構成要件Cの上記追加変更により、「空洞部」に「内側立上り壁」を備えない部分がある構成が、外形的、客観的にみて意識的に除外されたことが明らかである。
したがって、被告製品1及び2は、本件出願Cの出願手続において、本件発明C-1の特許請求の範囲から意識的に除外されたものであり、本件発明C-1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものといえない特段の事情が存するから、被告製品1及び2は、第5要件を充足しない。
ア乙C19記載の発明本件出願Cの出願前に頒布された刊行物である乙C19の記載(【0021】ないし【0023】、【0070】ないし【0073】、【0077】、【0078】、図16、17、20、22、28)によれば、乙C19には、次のとおりの発明(以下「乙C19発明」という。)が記載されている。【乙C19発明】a座部3a及び背凭れ部5aを有する椅子本体2aと、該椅子本体2aの両側部に肘掛部6aを有する施療機1aにおいて、b肘掛部6aに、肘部施療部623aに対応して肘挿入用凹溝61aが開口している施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部6aの内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための肘挿入用凹溝61aが設けられ、c肘挿入用凹溝61aは、外面立上り部と底面部と上面部とから形成され、d外面立上り部の上面前端部に肘挿入用凹溝61aの先端部の上方を塞ぐ形態で上面部が設けられており、e肘掛部6aが、e-1前部に底面部と外面立上り部と上面部とに囲われ、肘挿入用凹溝61aに位置する手部施療部621aに対応する部分と、e-2後部に底面部と外面立上り部によりL型に形成され、前腕挿入開口部に位置する肘部施療部623aに対応する部分とを備え、f手部施療部621a、前腕部施療部622a及び肘部施療部623aに膨縮袋が夫々設けられているg事を特徴とする施療機1a。
イ本件発明C-1の容易想到性本件発明C-1と乙C19発明との対比本件発明C-1と乙C19発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。【一致点】「a座部及び背凭れ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘掛部を有する施療機において、b肘掛部に、肘部施療部に対応して肘挿入用凹溝が開口している施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための肘挿入用凹溝が設けられ、c肘挿入用凹溝は、外面立上り部と底面部と上面部とから形成され、d外面立上り部の上面前端部に肘挿入用凹溝の先端部の上方を塞ぐ形態で上面部が設けられており、e肘掛部が、e-1前部に底面部と外面立上り部と上面部とに囲われ、肘挿入用凹溝に位置する手部施療部に対応する部分と、e-2後部に底面部と外面立上り部によりL型に形成され、前腕挿入開口部に位置する肘部施療部に対応する部分とを備え、f手部施療部、前腕部施療部及び肘部施療部に膨縮袋が夫々設けられているg事を特徴とする施療機。」である点。【相違点】本件発明C-1と乙C19発明との相違点は、構成要件の分説に従えば、以下のとおり、相違点1ないし4となるが、実質的には、本件発明C-1の「空洞部」は、「内側立上り壁」を有しているのに対し、乙C19発明の「肘挿入用凹溝61a」は、「内側立上り壁」を有していない点で相違するという点に集約される(以下、かかる相違点を「本件相違点」という。)。(相違点1)本件発明C-1は、構成要件Cにおいて「空洞部は、肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」ており、空洞部が内側立上り壁を有しているのに対して、乙C19発明は、肘挿入用凹溝61aが、外面立上り部と底面部と上面部とから構成され、内側立上り壁を有していない点。(相違点2)本件発明C-1は、構成要件Dにおいて「前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に空洞部の先端部の上方を塞ぐ形態で手掛け部が設けられて」いるのに対して、乙C19発明は、外面立上り部の上面前端部に肘挿入用凹溝61aの先端部の上方を塞ぐ形態で上面部が設けられているものの、肘挿入用凹溝61aが内側立上り壁を有していない点。(相違点3)本件発明C-1は、構成要件E-1において「前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部」が構成されているのに対して、乙C19発明は、手部施療部621aに対応する部分において、肘挿入用凹溝61aが、底面部と外面立上り部と上面部とを有しているものの、内側立上り壁を有していない点。(相違点4)本件発明C-1は、構成要件Bにおいて「前記肘掛部に、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ」ているのに対して、乙C19発明は、肘部施療部623aに対応して肘挿入用凹溝61aが開口している施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部に、施療者の前腕部が内側後方から挿入されるか否かが明記されていない点。乙C20記載の発明本件出願Cの出願前に頒布された刊行物である乙C20(特開2005-28045号公報)の記載(請求項1、【0003】、【0004】、【0029】ないし【0031】、【0034】、【0035】、【0043】、【0064】、図1、2、7ないし12)によれば、乙C20には、次のとおりの発明(以下「乙C20発明」という。)が記載されている。「肘掛け部7の施療者の手に対応する部分に、内側後方から施療者の手を挿入するための後側の開口27と、該後側の開口27から延設して施療者の手部を挿入保持するためのトンネル状支持体22が設けられ、施療者の手に対応して肘掛け部7に設けられたトンネル状支持体22は、肘掛け部7の幅方向左右に夫々設けた左右の側面部24、24と底面となる肘掛け部上面7aとから形成され、左右の側面部24、24を繋ぐ上面にトンネル状支持体22の上方を塞ぐ形態で上面部25が設けられており、肘掛け部7が、前部に肘掛け部上面7aと左右の側面部24、24と上面部25とに囲われ、トンネル状支持体22に位置する施療部と、トンネル状支持体22にエアセル33、34、35が設けられている」マッサージ機。相違点の容易想到性乙C20発明においては、左右の側面部24、24、上面部25及び肘掛け部上面7aにより、トンネル状支持体22が形成されているところ、乙C20発明のトンネル状支持体22は、本件発明C-1の「空洞部」に、乙C20発明の左右の側面部24、24は、本件発明C-1の「外側立上り壁」及び「内側立上り壁」に、乙C20発明の肘掛け部上面7aは、本件発明C-1の「底面部」にそれぞれ相当するから、乙C20発明の上記トンネル状支持体22は、「内側立上り壁」を備え、本件相違点に係る本件発明C-1の構成を有している。
そして、乙C19発明と乙C20発明とは、「椅子型マッサージ機に関する発明」という技術分野、「手に効果的な施療を施す」という課題、乙C19発明では肘部挟持機構62a を有する肘挿入用凹溝61a により、手部に対しても圧迫施療、指圧施療及び揉み施療を効果的に施し、乙C20発明ではエアセル33、34、35を有するトンネル状支持体22により手を確実にマッサージする効果を有するという作用効果や機能の点で共通すること、トンネル状支持体22を、乙C20発明のように底面部(肘掛け部上面7a)に対して外側立上り壁、内側立上り壁(側面部24、24)、上面部(上面部25)を設けて手部を四方向で囲むか、乙C19発明のように底面部に対して外側立上り壁、上面部を設け手部を三方向で囲むかは、本件出願Cの出願前に共に公知の構造であり、当業者にとって選択的な構造であったことからすると、当業者は、乙C19及びC20に基づいて、乙C19発明の肘挿入用凹溝61において、乙C20発明の構成を適用する動機付けがあるといえるから、本件相違点に係る本件発明C-1の構成とすることを容易に想到することができたものである。
ウ本件発明C-2ないしC-5の容易想到性本件発明C-2について本件発明C-2と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本件発明C-2の「前記底面部と前記手掛け部とでは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面が異なっており、底面部の載置面よりも手掛け部の載置面の方が高い位置に形成されている」との構成(構成要件I)及び「請求項1記載の椅子式マッサージ機」の構成(構成要件J)を備えていない点で相違する。しかるところ、構成要件Jに係る相違点が容易想到であることは、前記イのとおりである。そして、前記イのとおり、乙C20発明は、「左右の側面部24、24を繋ぐ上面にトンネル状支持体22の上方を塞ぐ形態で上面部25が設けられており、肘掛け部7が、前部に肘掛け部上面7aと左右の側面部24、24と上面部25とに囲われ」ているから、肘掛け部上面7aよりもトンネル状支持体22の上面部25の方が高い位置に形成されており、構成要件Iに係る本件発明C-2の構成に相当する構成を有するところ、乙C20発明の構成e、e1、e2は構成要件Iに係る本件発明C-2の構成に相当するものであり、乙C19発明に乙C20発明の構成を適用する動機付けがあることは、前記イのとおりであるから、当業者は、乙C19及びC20に基づいて、乙C19発明において、構成要件Iに係る本件発明C-2の構成とすることを容易に想到することができたものである。本件発明C-3について本件発明C-3と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本件発明C-3の「前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられており」との構成(構成要件K)、「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着すると共に、前記底面部の外側立上り壁側に、もう一つの膨縮袋の外側立上り壁側の縁部を止着している」との構成(構成要件L)及び「請求項1記載の椅子式マッサージ機」の構成(構成要件M)を備えていない点で相違する。しかるところ、構成要件Mに係る相違点が容易想到であることは、前記イのとおりである。そして、構成要件K及びLに係る本件発明C-3の構成は、乙C21(特開2003-153970号公報)の【0023】、【0025】、【0027】、図7ないし9等及び乙C22(特開2003-319990号公報)の【0032】ないし【0034】、【0036】ないし【0041】、図1、2ないし5、6等に開示されている。乙C19発明と乙C21及びC22記載の発明とは、「椅子型マッサージ機」という技術分野、「手に効果的な施療を施す」という課題、その作用機能において共通するから、乙C19発明に乙C21及びC22記載の構成を適用する動機付けがある。したがって、当業者は、乙C19ないしC22に基づいて、乙C19発明において、構成要件K及びLに係る本件発明C-3の構成とすることを容易に想到することができたものである。本件発明C-4について本件発明C-4と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本件発明C-4の「前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止着して構成した」との構成(構成要件N)及び「請求項3記載の椅子式マッサージ機」の構成(構成要件O)を備えていない点で相違する。しかるところ、相違点Nに係る本件発明C-4の構成は、本件発明C-3の構成要件K及びLの構成と実質的に相違するものではない。そして、構成要件Oに係る相違点が容易想到であることは、前記のとおりであるから、当業者は、乙C19ないしC22に基づいて、乙C19発明において、構成要件Nに係る本件発明C-4の構成とすることを容易に想到することができたものである。本件発明C-5について本件発明C-5と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本件発明C-5の「前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するようにした」との構成(構成要件P)及び「請求項1乃至4記載の椅子式マッサージ機」との構成(構成要件Q)を備えていない点で相違する。
しかるところ、構成要件Qに係る相違点が容易想到であることは、前記ないし及び前記イのとおりである。そして、構成要件Pに係る本件発明C-5の構成は、乙C20に記載があり(【0017】、【0023】ないし【0026】、【0027】、図4ないし6等)、また、本件出願Cの出願当時、周知の構成であったところ(例えば、乙C23(特開平10-179675号公報)、乙C24(特開2005-177279号公報)、乙C19発明に乙C20発明の構成を適用する動機付けがあることは、前記イのとおりであるから、当業者は、乙C19、C20及び本件出願Cの出願当時の周知技術に基づいて、乙C19発明において、構成要件Pに係る本件発明C-5の構成とすることを容易に想到することができたものである。
エ小括以上によれば、本件各発明Cは、乙C19ないしC22及び本件出願Cの出願当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許Cには、特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。無効理由2(明確性要件違反)本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載によれば、本件発明C-1の椅子式マッサージ機は、肘掛部に、「前腕挿入開口部」と、前腕挿入開口部から延設・連続して肘掛部の内部に「空洞部」が設けられていること(構成要件B)、「空洞部」は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成されること(構成要件C)、「前部」に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、「空洞部」に位置する施療部が設けられていること、「後部」に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、「前腕挿入開口部」に位置する施療部とを備えること(構成要件E-1及びE-2)、本件明細書Cの【0046】及び図14には、「外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」た空洞部は「前部」にのみ存在し、「前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され」た挿入開口部は「後部」に存在することが記載されていることからすると、「前部」には、内側立上り壁を有する「空洞部」が存在し、「後部」には、内側立上り壁を有しない「前腕挿入開口部」が存在するものとして、本件発明C-1の「空洞部」と「前腕挿入開口部」とは、その領域が区別されている。一方、本件明細書Cの【0046】及び図14の記載を根拠に、本件発明C-1の「空洞部」は、外側立上り壁と内側立上り壁と底面部を備える箇所が一部でもあれば足り、内側立上り壁を備えない箇所をも含めて「空洞部」と解釈されるとするならば、「空洞部」と「前腕挿入開口部」との分水嶺が極めて不明確となる。そうすると、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、不明確であり、特許法36条6項2号の要件(明確性要件)に適合せず、また、本件発明C-1を発明特定事項として直接又は間接に引用する本件発明C-2ないしC-5の特許請求の範囲(請求項2ないし5)の記載も、これと同様であるから、本件特許Cには、同号に違反する無効理由(同法123条1項4号)がある。無効理由3(特許法17条の2第3項の補正要件違反)本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいい、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味するものと解される。本件出願Cの当初明細書(乙C9)記載の実施例等には、肘掛部の「中部」に内側立上り壁を備えない構成としつつ、「前部」の内側立上り壁、外側立上り壁、底面部を備える空洞部においては手部のみを施療できる構成しか開示がなく、「中部」を「コ型」と構成しつつ、内側立上り壁、外側立上り壁、底面部から形成される「空洞部」において、「手部を含む前腕部」を挿入保持できる構成については記載も示唆もない。しかるところ、本件補正は、「中部」に内側立上り壁を備えない「コ型」と形成された施療部を備えた本件発明C-2(請求項2)を追加する補正事項を含むものであるから(乙C12、C13)、本件補正は、新規事項を追加するものであって、特許法17条の2第3項の要件に適合しない。したがって、本件特許Cには、同項に違反する無効理由(同法123条1項1号)がある。無効理由4(本件発明C-2に係るサポート要件違反)本件発明C-2の特許請求の範囲の記載(請求項2)から、本件発明C-2は、肘掛部の「中部」をコ型に構成し、「前部」には底面部と外側立上り壁、内側立上り壁から形成される「空洞部」を備えており、当該「空洞部」は、手部を含む前腕部を挿入保持でき、「前腕部」をも施療できるものであることを理解できる。また、本件発明C-2の構成要件Jで引用する請求項1(本件発明C-1)の「空洞部」は、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味する。一方で、本件明細書Cの発明の詳細な説明には、「中部」がコ型の構成は開示されているものの、底面部、外側立上り壁、内側立上り壁の三面を含む空洞部である「前部」においては、「手部」のみを挿入保持でき、「手部」を施療するための膨縮袋を備える実施例のみが記載されているにとどまり、「前部」において、「前腕部」を挿入保持でき、膨縮袋などにより「手部」を含む「前腕部」を施療できる旨の記載も示唆もない。そうすると、本件明細書Cの発明の詳細な説明の記載及び本件出願Cの出願当時の技術常識から、本件発明C-2の課題を解決できると認識することができないから、本件発明C-2は、特許法36条6項1号の要件(サポート要件)に適合しない。
したがって、本件補正(乙C13)は、本件出願Cの出願当初明細書の記載の範囲内のものであり、新規事項を追加するものではないから、無効理由3は理由がない。無効理由4に対し本件発明C-2は、本件明細書Cの記載から、当業者がその課題を解決できると認識できるものであり、サポート要件に適合するから、無効理由4は理由がない。
ア特許法102条2項の適用被控訴人は、被告製品1及び2の輸出又は販売により、本件特許権Cを侵害したから、これにより控訴人が被った損害を賠償する義務がある。特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102条2項の適用が認められると解すべきであり、同項の適用に当たり、特許権者において、特許発明を実施していることを要件とするものではない。そして、特許法102条2項により推定される損害の性質は、特許権者の売上減少による逸失利益であるから、侵害品の存在により売上げが減少するという関係にある製品(需要者が共通する製品、同じ需要が向く製品。以下「競合品」という場合がある。)を特許権者が販売していれば、特許権者に損害が発生したことが基礎づけられ、かかる事情があるといえる。しかるところ、被告製品1及び2は、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」であり、このようなマッサージ機の購入を希望する需要者は、前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機であれば、いずれも比較の対象とするから、かかるマッサージ機は、被告製品1及び2と需要者が共通し、同じ需要が向く製品に該当し、競合品に当たると解すべきである。控訴人は、平成23年1月1日から令和3年12月31日までの間、別紙14のとおり、●●●●●●●●●の海外の市場向けに、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」であるEC-2700、EC-2800、EC-3700、EC-3800、EC-3850、EC-3900、JP-1000、JP-1100、JP-870、Premium4.0、Premium4D、Premium4S及び4D-970(以下、これらを併せて「控訴人製品1」という。)を販売した(甲C8ないしC17、C65)。控訴人製品1は、海外向け製品である被告製品1の競合品である。なお、控訴人が海外向け製品を譲渡・輸出する可能性がある国・地域は、特定の国・地域に限定されているわけではなく、日本から全世界に向けた譲渡・輸出の可能性がある。しかも、日本の特許権の効力が及ぶのは、日本の領域内のみであることからすると、問題とすべきは、日本国内から海外の譲渡・輸出行為における控訴人製品1と被告製品1との競合であり、日本の領域外の個々の国・地域の市場における競合ではないから、控訴人と被控訴人がそれぞれ海外のどの国・地域に向けて製品を譲渡・輸出しているかは、特許法102条2項の適用の可否には影響しないと解すべきである。次に、控訴人は、平成23年11月25日以降、日本国内において、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」であるAS-760、AS-830、AS-840、AS-1000及びAS-1100(以下、これらを併せて「控訴人製品2」という。)を販売した(甲C3ないしC7、C57)。控訴人製品2は、被告製品2の競合品である。したがって、本件においては、特許法102条2項の適用が認められるべきである。この点に関し、被控訴人は、①特許権者に、侵害者による特許権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するというためには、特許権者が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏する代替競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)であって、かつ、侵害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品を販売していることを要すると解すべきである、②控訴人製品1及び2は、本件各発明Cの作用効果を奏するものではない、③また、控訴人製品1及び2は、大阪地方裁判所に係属中の被控訴人を「原告」、控訴人を「被告」とする特許権侵害訴訟(大阪地方裁判所平成29年(ワ)第7384号事件。以下「別件訴訟」という。)において被控訴人が請求理由として主張する被控訴人保有の特許第4617275号(以下「別件特許2」という。乙C156、C157)及び特許第5009445号(以下「別件特許3」という。乙C154、C155)の侵害品である、④したがって、控訴人製品1及び2は、特許権者が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏する競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)ではなく、また、侵害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品であるとはいえないから、本件においては、上記事情は存在せず、特許法102条2項の適用要件を欠く旨主張する。しかしながら、特許権者の製品が侵害品との競合品といえるためには、両製品の需要者が共通すれば足り、特許権者の製品が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏するものである必要はない。また、本件各発明Cの作用効果に係る腕部の載脱、起立及び着座がしやすいかという要素は、需要者が製品を選択する際に考慮する要素ではあるが、椅子式マッサージ機の需要者自体を分ける要因ではない。さらに、本件各発明Cの作用効果を奏する製品であることを要求することは、特許法102条2項の適用要件として特許発明の実施品であることを要することに等しいから、妥当でない。次に、控訴人製品1及び2は、そもそも別件特許2及び3のいずれの侵害品でもない。また、特許権侵害訴訟において、他人の特許権を侵害しているとしてその製造、販売等の差止めが認められるのは、将来における製造、販売分のみであり、特許権者の競合品が事後的に他人の侵害品であると判断されたとしても、現に、当該競合品が市場に流通したという事実が認められる以上は、侵害者の侵害品に向けられていた需要が当該競合品に向かうという関係性が認められるから、侵害者による特許権侵害行為により特許権者に損害が発生したこと、すなわち、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在することを否定することはできない。さらに、特許権者が他人の特許を実施したことにより得た利益は、事後的に当該他人との間で調整を図れば足りることである。したがって、被控訴人の上記主張は、その前提において、失当である。
イ被控訴人の利益(限界利益)売上高a平成23年11月から令和3年3月までの期間の被告製品1及び2の売上高は、別紙8のとおり、被告製品1については合計●●●●●●●●●●●●円、被告製品2については合計●●●●●●●●●円(ただし、返品及び値引き分を除く。)である(乙C47)。また、上記期間の被告製品1及び2の販売数量(輸出台数又は販売台数。以下同じ。)は、別紙9のとおり、被告製品1については合計●25●●●●●台、被告製品2については合計●●台(ただし、返品●台分を除く。)である(乙C47)。bこの点に関し、被控訴人は、被告製品1の売上高から、「部品費等」及び「マーケティングサポート費用」を控除すべきである旨主張する。しかしながら、被控訴人主張の「部品費等」は、瑕疵ある製品に対するアフターサービスに関する費用であり、被告製品1の売上高とは関係がない。また、被控訴人主張の「マーケティングサポート費用」は、被控訴人内部で「値引き」として計上しているものにすぎず、被告製品1の売上高と関係がないのみならず、その算定方法に合理的根拠がない。したがって、被控訴人の上記主張は失当である。
経費被控訴人は、被告製品1について、①仕入(上海買入)費用、②材料費、③製造ロス費、④大山工場組立費用、⑤製造物流費、⑥デザイン費用、⑦歩積金、⑧WEEE、⑨認証、⑩商標登録等、⑪L/C ユーザンスが、被告製品2について、①仕入(上海買入)費用、②材料費、③製造ロス費、④大山工場組立費用、⑤製造物流費、⑥デザイン費用、⑦配送費用及び組立費用が、それぞれ被告製品1及び2の製造・輸出又は製造・販売に直接関連して追加的に必要となった経費である旨主張する。被控訴人の上記主張のうち、被告製品1については、①、②及び⑤を、被告製品2については、①、②、⑤及び⑦をそれぞれ売上高から控除すべき経費として認めるが、以下のとおり、その余は争う。a被告製品1及び2関係③製造ロス費については、被控訴人が製造の過程で発生する不良品の割合を●%と仮定した帳簿上の金額であって、その金額が実際に支出されたことが立証されていないのみならず、被告製品1及び2を1台輸出又は販売するごとに追加的に必要となる費用でない。④大山工場組立費用については、その金額が実際に支出されたことが立証されていないのみならず、固定費としての人件費であって、被告製品1及び2の製造に従事する従業員の担当業務の具体的内容や従事状況が明らかでない以上、被告製品1及び2を1台輸出又は販売するごとに追加的に必要となる費用であるとはいえない。
5⑥デザイン費用については、被控訴人提出の業務委託契約書(乙C150)、仕訳日記帳(乙C151)、計算シート(乙C152)は内部資料にすぎないこと、請求書等の支出を示す客観的裏付けが提出されていないことからすると、その金額が実際に支出されたことが立証されていない。また、上記業務委託契約書7条には●●●●●●●●10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との記載があることに照らすと、デザインのロイヤリティ料率に関する合意があるはずであるが、当該合意に関する証拠が提出されていないため、上記計算シートにおいてロイヤリティ料率が●●●%として計算されていることの根拠も不明である。
15b被告製品1関係⑦歩積金、⑧WEEE、⑨認証、⑩商標登録等、⑪L/C ユーザンスは、いずれも、客観的な資料を正確に反映したものではなく、実際に支出された金額を示したものではない。また、⑦歩積金は、被控訴人において会計上積み立てられた金額にすぎないこと、⑧WEEEは、被控訴人の製品一般にかかる抽象的なリサイクル費用であること、⑨認証は、被告製品1について1度取得すればよいこと、⑩商標登録等は、被告製品1の製造又は販売に紐づいて増減するようなものではないこと、⑪L/C ユーザンスは、被控訴人が任意に選択した決済手段であって、被告製品1の製造、輸出と関連性のない営業外費用であることなどからすると、いずれも、被告製品1を1台製造、輸出するごとに追加的に必要となる費用ではない。限界利益額a被控訴人が被告製品1の輸出及び被告製品2の国内販売により受けた利益額は、別紙10の「利益額」欄記載のとおり、前記aの売上高から前記の経費を控除後の合計●●●●●●●●●●●●円である。bところで、消費税法基本通達5-2-5柱書及びによれば、「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は、資産の譲渡等の対価に該当するものとされていることからすれば、特許法102条2項の「侵害の行為により利益を受けているとき」にいう「利益」には消費税相当分も含まれると解すべきである。このことは、侵害行為の態様が輸出行為である場合でも変わりはなく、特許権者が特許権侵害による損害の填補を受けるためには、課税されるであろう消費税相当分についても、上記「利益」に該当するというべきである。そして、資産の譲渡等の時期は、特許権侵害行為時であるから、平成23年11月25日から平成26年3月31日までの期間の消費税率は5%、同年4月1日から令和元年9月30日までの期間の消費税率は8%、同年10月1日以降の消費税率は10%となる。
そうすると、被控訴人が被告製品1の輸出及び被告製品2の国内販売に係る侵害行為により受けた特許法102条2項の利益額(限界利益額)は、別紙10の「限界利益額(消費税相当分を含む)」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円となり、上記利益額は、同項により、控訴人の受けた損害額と推定される(以下、この推定を「2項推定」という場合がある。)。
ウ推定覆滅事由の主張に対し被控訴人は、①特許発明が被告製品1及び2の部分のみに実施されていること、②市場における競合品の存在、③市場の非同一性、④被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、⑤被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)は、2項推定の覆滅事由に該当する旨主張するが、以下のとおり、いずれも理由がない。特許発明が被告製品1及び2の部分のみに実施されていることについてa本件各発明Cの技術的意義は、従来の椅子式マッサージ機が有していた左右一対の立上り壁が存在することにより手部及び前腕部の広範を同時にマッサージできるという従来技術の利点を活かしながら、外側立上り壁と底面部とでL字に構成される前腕部挿入開口部を設けることにより、従来の椅子式マッサージ機が有していた立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもたらす要因を解消し、腕部の載脱をスムーズに行うよう構成するとともに、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるようにしたことにある(本件明細書Cの【0005】ないし【0008】、【0013】)。また、本件発明C-5の技術的意義は、背もたれ部のリクライニング動作に連動して肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動することにより、背もたれ部のリクライニング角度に関係なく、肘掛部に設けた前記前腕部施療機構における前腕部の位置が可及的に変わらないようにする事ができ、安定した前腕部に対するマッサージを行う事ができるようにしたことにある(【0018】)。本件各発明Cの作用効果は、少なくとも前腕部施療機構の一部に内側立上り壁が存在することを前提として、マッサージ機の快適な使用を実現することにある。
椅子式マッサージ機においてどの部位に対応したマッサージが可能であるかは需要者が製品選択において特に着目する点であり、被告製品1及び2のカタログでは、本件各発明Cの構成及び作用効果が訴求されている。例えば、被告製品1のカタログ(乙C40)には、肘掛部において内側立上り壁が設けられていること、前腕部挿入開口部が設けられていること、肘掛部全体にエアセルが設けられていること、肘掛部が背もたれ部のリクライニング動作に連動して前後方向に移動することが写真で明確に示されており、内側立上り壁を設けつつ、スムーズな腕部の載脱が可能である構成であることを一見して認識することができ、また、被告製品1が手部及び前腕部の広範を同時にマッサージできることが文章(2頁)で説明されている。被告製品2のカタログ(乙C54)も、これと同様である。そして、手部及び前腕部の広範に同時にマッサージを行う椅子式マッサージ機の購入を希望する需要者は、上記カタログの記載も踏まえて、被告製品1及び2の購入を決定するから、本件各発明Cに顧客吸引力が認められることは明らかである。
したがって、本件各発明Cが被告製品1及び2の部分のみに実施されているものであるとしても、2項推定の覆滅事由に該当しない。bこの点に関し、被控訴人は、本件発明C-1及びC-2の作用効果は、公知技術である乙C19記載のマッサージ機の構成によって奏するものであり、「内側立上り壁」の構成は、上記作用効果とは関係がない、控訴人自身が本件各発明Cの実施品を販売していないなどとして、本件各発明Cの技術的価値ないし技術的意義はほとんどない旨主張する。しかしながら、乙C19記載のマッサージ機は、内側立上り壁を一切廃したものであって、少なくとも前腕部施療機構の一部に内側立上り壁が存在することを前提としている本件各発明Cの上記作用効果を奏するものではない。また、控訴人が本件各発明Cを実施するか否かは種々様々な事情を考慮したうえでの経営戦略に関わるものであるから、控訴人が本件各発明Cを実施していないことをもって直ちに本件各発明Cの技術的意義が低いなどとはいえない。
したがって、被控訴人の上記主張は失当である。市場における競合品の存在について被控訴人は、被控訴人の製造する他の製品やパナソニック株式会社(以下「パナソニック」という。)、大東電機工業株式会社(以下「大東電機」という。)等の他の競合者の製品を列挙し、被告製品1及び2の販売がされなかったとしても、国内及び海外の市場において、その需要は他社の競合品に向かい、控訴人製品1及び2に向くという関係にはないから、このような他社の競合品の存在は、2項推定の覆滅事由に該当する旨主張する。しかしながら、被控訴人が挙げる他社製品の中には、被告製品1と同時期に販売されていたのか不明な海外向け製品、日本から海外への輸出品とはいえない製品、被告製品2と販売時期の重なりがない国内向け製品、価格が高額(30万円弱ないし40万円超)であるため被告製品2と競合するとはいえないものなど、被告製品1及び2の輸出又は販売がなかったとしても需要が向かないと考えられるものが含まれているから、被控訴人の上記主張は失当である。市場の非同一性についてa被告製品1について日本の特許権の効力が及ぶのは、日本の領域内のみであるから、市場の同一性について問題とすべきは、日本国内から海外への譲渡・輸出行為における控訴人製品1と被告製品1との競合であり、控訴人と被控訴人がそれぞれ海外のどの国・地域に向けて製品を譲渡・輸出しているかは、影響しないと解すべきである。また、控訴人は、平成23年1月1日から令和3年12月31日までの間、別紙14のとおり、●●●●●●●●●の海外の市場向けに、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」を販売しており、日本国内における海外顧客に向けた製品の輸出・販売という市場だけでなく、仕向国(地域を含む。以下同じ。)ごとの輸出・販売先の海外市場も共通している。したがって、被告製品1と控訴人製品1の市場が異なるとの被控訴人の主張は理由がない。
10b被告製品2について控訴人製品2は、控訴人のホームページや家電量販店の通販サイト等から購入できるところ、殆どの需要者は、「マッサージ機」の購入を検討する際、通販サイト等を利用し、その中で正規品と中古品・B級品を比較し、最終的に購入する商品を決定することからすれば、通販サイト等で控訴人製品2を購入できる以上は、被告製品2と控訴人製品1及び2の市場は共通している。したがって、被告製品2の市場と控訴人製品2の市場が異なるとの被控訴人の主張は理由がない。被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)について控訴人は、「マッサージチェアのパイオニア的メーカー」として知られていること(乙C50)、マッサージチェアの市場シェアは、控訴人、被控訴人及びパナソニックで3分されており、平成29年以降は、控訴人が販売台数によるシェアで約50%、販売金額によるシェアで40%超を獲得していること(乙C51、C52)、被控訴人が受賞しているグッドデザイン賞は控訴人も受賞しており(甲C59)、被控訴人のみがデザイン性に優れたマッサージチェアを製造販売しているとは認識されていないこと、控訴人と被控訴人は、米国におけるマッサージ機市場において主要な日本のマッサージ機メーカーであり、いずれも当該市場におけるマーケットリーダーであると位置づけられていること(甲C43)、米国における被控訴人のブランド力が控訴人に比して高いということもできないことに鑑みると、被控訴人が自社のブランド力の根拠として列挙する事情の多くは控訴人にも該当するものであり、2項推定を覆す程度に、被控訴人のブランド力が高いとはいえない。次に、被控訴人が指摘する専門家による監修や著名人による宣伝、電光掲示板での広告掲載等は、控訴人を含む他のマッサージ機メーカーも実施しており(甲C60ないしC63)、特段珍しいものではなく、通常の広告宣伝活動の範疇を超えるものではない。また、被控訴人は、ニューヨークのタイムズスクエアにある電光掲示板に被告製品1の広告を掲載することについて、多額の広告費を投入していることが格別の営業努力であるなどと主張する。
しかし、多額の費用を投じた広告宣伝が必ずしも需要者の購買動機に結びつくとは限らないし、多くの需要者の目に触れるという点では、電光掲示板への広告掲載はテレビCMの放映等と変わりはなく、米国における被控訴人の営業努力は通常の範囲を超えたものとはいえないから、被控訴人の主張は理由がない。
被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)について被控訴人は、被告製品1に関し、デザインに関する賞を受賞しているなどと主張する。しかし、前記のとおり、米国のマッサージ機市場において、控訴人と被控訴人は共にマーケットリーダーと位置づけられており、被控訴人が米国において賞を受賞していることは、米国における被控訴人のブランド力に何ら影響を与えていないこと、そもそも、需要者がマッサージチェアを選択する際にチェックする要素として被控訴人自らが列挙している項目には、マッサージ機のデザインは含まれていないことに照らすと、被告製品1のデザインには顧客吸引力は認められない。
また、被告製品1及び2が被控訴人保有の特許や意匠等の実施品であるとしても、そのことから直ちに2項推定の覆滅が認められるものではなく、当該特許や意匠等の実施が被告製品1及び2の売上げに貢献していることを具体的に主張立証されなければならないが、そのような主張立証はされていない。
さらに、被控訴人は、本件各発明Cには顧客吸引力がないなどと主張するが、被告製品1及び2のカタログに、本件各発明Cの構成及び作用効果が訴求されていること、本件各発明Cが顧客吸引力を有していることは、前記aのとおりであるから、被控訴人の上記主張は失当である。
エまとめ以上によれば、控訴人の特許法102条2項に基づく損害額は、別紙10の「限界利益額(消費税相当分を含む)」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円である。控訴人は、上記損害額の一部である別紙請求額一覧の表1記載の「請求額内訳」欄の「被告製品1に係る損害額」欄及び「被告製品2に係る損害額」欄記載の各金額(合計●●●●●●●●円)を請求する。
オ推定覆滅部分に係る特許法102条3項に基づく損害額(予備的主張)仮に控訴人主張の覆滅事由による推定の覆滅が認められる場合には、当該覆滅部分に係る損害について特許法102条3項に基づく実施料相当額の損害賠償を請求することができると解すべきである。
特許法102条3項は、自ら特許発明を実施していない特許権者においても実施料相当額の損害賠償請求を認めることを前提として、現に無許諾で侵害品が販売されたことを損害(侵害者から得べかりし実施料の喪失)発生の基礎として捉えて実施料相当額の損害を算定する規定である。一方、同条2項の推定が覆滅されるのは、侵害行為がなければ特許権者が販売することができたとする製品との因果関係であり、理論上は推定が覆滅される部分に相応する販売数量を想定することができるから、当該部分の数量についてライセンス機会の喪失を理由に同条3項の損害額を請求できるとする基礎がある。特許法等の一部を改正する法律(令和元年法律第3号。以下「令和元年改正特許法」という場合がある。)により、同条1項が改正されたが、これは、知的財産権には、権利者が自ら実施すると同時に、権利をライセンスして利益を得ることができるという性質があることに鑑み、売上減少による逸失利益(同項1号)のみならず、ライセンス機会の喪失による逸失利益(同項2号)についても特許権者が受けた損害の額とすることを明確にし、従前議論のあった同条1項と同条3項のいわゆる重畳適用を肯定したものである。この趣旨は、同条2項と同条3項の関係にも妥当する。特許法102条2項と同条3項との重畳適用が認められることは、覆滅事由の内容により異なるものと解すべきではない。競合品の存在、市場の非同一性、ブランド力を理由とする覆滅事由は、侵害品に向かっていた需要が全て特許権者の製品に向かうわけではないから、特許権者の売上減少による逸失利益が認められないことを理由とするものであるが、他方で、現実には推定覆滅部分に係る数量分の侵害品も販売されているのであり、その分についてはライセンス機会の喪失による逸失利益を観念できる。
また、特許発明が侵害品の一部のみに実施されていること、侵害品の性能を理由とする覆滅事由は、需要を形成する一要因にすぎず、侵害品に向かっていた事情が全て特許権者の製品に向かうかどうかを判断する一要素であるから、上記市場の非同一性等を理由とする覆滅事由と区別する理由はない。そして、覆滅事由ごとに特許法102条3項の適用の有無を区別することは、実施料率の算定が煩雑になり妥当でない。そもそも製品の需要形成には様々な要因が複合的に絡み合っており、覆滅事由ごとに覆滅割合を認定して当該覆滅部分にライセンス機会の喪失による逸失利益が認められるか否かを認定判断することは実際上困難である。したがって、推定覆滅部分については全体として特許法102条3項の適用を認めた上で、各覆滅事由に係る事情は実施料相当額の算定において考慮されるべきである。本件においては、後記アと同様の理由により、推定覆滅部分に係る被告製品1及び2の売上高に10%を乗じた額に消費税相当分を加算した額を特許法102条3項に基づく損害額として請求できるというべきである。特許法102条3項に基づく損害額ア株式会社帝国データバンク作成の「平成21年度特許庁財産制度問題調査研究報告書知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」(以下「本件報告書」という。甲C18、C19、乙C39)の表Ⅲ-10には、「国内企業のロイヤルティ料率」に関するアンケート結果として、産業分野を「一般機械」とするロイヤルティ料率は4.2%(「各国市場料率データ・日本」)と記載されている。また、表Ⅲ-11には、1997年から2008年までの産業分野を「機械」とする「司法決定によるロイヤルティ料率」は平均値4.4%、中央値5.0%、最高値10%(件数25件)、表Ⅲ-12には、2004年から2008年までの産業分野を「機械」とする「司法決定によるロイヤルティ料率」は平均値3.9%、最大値10.0%、最小値1.0%(件数12件)と記載されている。さらに、椅子式マッサージ機である被告製品1及び2は、医療機器であるところ、特許権の技術分野別のロイヤルティ料率では、「医療機器」の技術分野についての実施料率は、平均5.0%、最大値14.5%と記載されている(本件報告書の表2-2)。ところで、前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機において、前腕部施療機構に前腕部をスムーズに載脱できること、前腕部の広範囲に対する効果的・安定的なマッサージを行うことができることは顧客の商品選択に影響する重要な要素であり、本件各発明Cは大きな価値を有するものであって、被告製品1及び2の売上げ及び利益への貢献が大きい。また、控訴人は、競業者に対しライセンスを許諾しない方針を有しているから、控訴人が被控訴人に対して本件各発明Cの実施許諾を行う場面を想定した場合、業界水準の実施料率での実施許諾を行うことはあり得ず、極めて高い実施許諾料を設定せざるを得ない。さらに、特許権侵害をした者に対して事後的に定められる実施料率は、通常の実施料率に比べて自ずと高額となるべきである。その他本件に現れた諸事情を総合考慮すると、上記実施料率は、10%を下らない。そして、前記イbと同様の理由により、被告製品1及び2の売上高に10%を乗じた額に消費税相当額を加算した額を特許法102条3項の損害額として請求できるというべきである。
⑴ 特許法102条2項に基づく損害額の主張に対し
ア特許法102条2項の不適用特許権の侵害により特許権者に損害が発生していることが、特許法102条2項の適用要件であり、特許権者に損害が発生しているというためには、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する必要がある。
そして、かかる事情が存在するというためには、特許権者が特許発明の実施品に相当する製品、すなわち当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏する代替競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)であって、かつ、侵害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品を販売していることを必要とすると解すべきである。
また、仮に特許権者の製品が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏する代替競合品に当たらない場合には、市場が侵害品と特許権者の製品に二分されているような特殊な事情があることを必要とすると解すべきである。a被告製品1について、被控訴人は、国ごとに当該国所在の被控訴人とは別法人の代理店から注文を受け、当該代理店に輸出しており、輸出後の販売は、当該代理店のそれぞれが独立した行為として行っており、被控訴人は関与していない。また、被告製品2は、平成22年3月に生産を終了し、終了後は、家電量販店での販売は行われず、本件特許権Cの設定登録日(平成23年11月25日)以降は、「B級品」や処分品として販売されていた。そして、控訴人製品2のうち、AS-760、AS-1000、AS-1100は、被告製品2と販売時期が異なるから、いずれも被告製品2の代替競合品とはいえない。b控訴人製品1及び2の前腕施療機構の構成は、内側立上り壁のないコ字状の肘掛部又は肘掛部の左右全域にわたって一対の内側立上り壁が設けられ、凹状に形成された肘掛部であり(甲C3ないしC17)、控訴人製品1及び2は、いずれも本件各発明Cと同様の作用効果を奏する製品ではない。また、控訴人製品1及び2は、本件出願Cの出願前から販売されていた肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構のある周知な構成の製品にすぎず(乙C206ないしC211等)、市場が、被告製品1及び2と控訴人製品1及び2に二分されているような状況にはなかった。控訴人製品1のうち、EC-2700、EC-2800、EC-3700、JP-1000、JP-1100、Premium4S及び控訴人製品2は、いずれも被控訴人保有の別件特許2又は別件特許3の侵害品であるから、本来であれば販売も輸出もできなかった製品である。そうすると、これらの製品は、市場で自由に販売できるものではなく、被告製品1及び2の輸出又は販売がなければ、輸出又は販売できたであろうという関係性はないから、代替競合品であるとはいえない。
したがって、本件においては、特許法102条2項は適用されない。
イ被控訴人の利益(限界利益)売上高a控訴人主張の被告製品2の売上高、被告製品1及び2の各販売数量は、いずれも認めるが、被告製品1の売上高は否認する。
25b被控訴人は、被告製品1について、米国の販売代理店と被控訴人間の覚書(乙C130)に基づいて、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(乙C131ないしC134)。かかる費用は、販売価格の実質的な値引きに当たる。
また、被控訴人は、被告製品1について、海外の代理店に輸出販売する際、販促目的で、販売単価に販売数量を乗じた売上げから製品1台当たり「マーケティングサポート費用」名目での値引きを行っており、海外の代理店からは、値引き後の代金の支払を受けている(乙C46、C47、C131、C136等)。
したがって、被告製品1の売上高には、「部品費等」及び「マーケティングサポート費用」は含まれないと解すべきであり、これらは、別紙8の「売上高」欄の「被告製品1」欄記載の金額から控除すべきであるから(控除額の内訳は、乙C47の末尾添付の「値引きの内訳」のとおり)、被告製品1の売上高は、別紙11の「売上高」欄の「被告製品1」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円となる。経費被告製品1及び2の輸出又は販売に直接関連して追加的に必要となった経費は、以下のとおりである(乙C129、C205、C273)。a被告製品1 合計●●●●●●●●●●●●円① 仕入(上海買入)費用 ●●●●●●●●●●●●円② 材料費 ●●●●●●●●●●●円③ 製造ロス費 ●●●●●●●●円④ 大山工場組立費用 ●●●●●●●●●●●円⑤ 製造物流費 ●●●●●●●●●●●円⑥ デザイン費用 ●●●●●●●●円⑦ 歩積金 ●●●●●●●●●円⑧ WEEE ●●●●●●●●●円⑨ 認証 ●●●●●●●●●円⑩ 商標登録等 ●●●●●●●●円⑪ L/C ユーザンス ●●●●●●●●●円b被告製品2 合計●●●●●●●●●円① 仕入(上海買入)費用 ●●●●●●●●●円② 材料費 ●●●●●●●●円③ 製造ロス費 ●●●●●●円④ 大山工場組立費用 ●●●●円⑤ 製造物流費 ●●●●●●●円⑥ デザイン費用 ●●●●●●●円⑦ 配送費用及び組立費用 ●●●●●●●●円c補足説明被告製品1及び2関係③ 製造ロス費製造過程で一定数の不良品の発生が避け難いことから、一定割合の金額を経費として計上しているものであり、製造原価の一種である。④ 大山工場組立費用仕掛品に部品を組み立てて完成するための人件費であり、一定額の加工費レートに対し、製品ごとにあらかじめ定まる組み立てに要する時間を乗じて算出している。⑥ デザイン費用被告製品1及び2のプロダクトデザインを有名デザイナーであるAに外注した費用である。デザイン費用は、被告製品1及び2のそれぞれの本社仕切価格に対して、予め合意した料率を乗じ、算出されている。⒝ 被告製品1関係⑦ 歩積金製品の販売地域における営業活動・販促活動等の諸費用に充てることを目的とする費用であって、米国FDA(米国食品医薬品局)における登録更新費用、香港における広告費用・サービスセンター設置に係る費用、EU低電圧指令による取扱説明書の言語追加費用、米国向け製品の不具合対応費用、米国及びドイツ向け製品に搭載した「モーター」「プーリー」を販売代理店に供給する費用に充てられている(乙C140ないしC145、C173ないしC183)。⑧ WEEE電気電子機器廃棄物の再利用やリサイクルに要する費用(英国での登録・更新費用等)であって、製品単価に上乗せして回収している(乙C140ないしC145、C187ないしC190)。⑨ 認証輸出先の国における認証(CD-LVD認証、CD-EMC認証、cTUYus認証)を受けるために要した費用である(乙C141ないしC145、C193ないしC196)。
20⑩ 商標登録等輸出先の国における商標や特許、意匠の出願・登録・維持等に要する費用である(乙C140ないしC145、C197、C198)。⑪ L/Cユーザンス海外代理店等との間における信用状取引(L/C(LetterofCredit)決済)の銀行手数料(信用状確認手数料、信用状通知手数料)である(乙C140ないしC145、C199、C200、C202、C204)。限界利益額a被控訴人が被告製品1の輸出により受けた利益額(限界利益額)は、別紙11の「限界利益額」欄の「被告製品1」欄記載のとおり、前記bの売上高から前記aの経費を控除後の合計●●●●●●●●●●●●円である。一方、被告製品2については、同別紙の「限界利益額」欄の「被告製品2」欄記載のとおり、前記aの売上高から前記bの経費を控除すると、マイナスとなるから、被告製品2の国内販売に係る利益額(限界利益額)は、ゼロである。そうすると、被控訴人は、被告製品の販売により「利益」(特許法102条2項)を受けているといえないから、被告製品2の国内販売に係る損害については、同項を適用することはできない。
15bこの点に関し、控訴人は、消費税法基本通達5-2-5柱書及びによれば、「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は、資産の譲渡等の対価に該当するものとされていることからすれば、特許法102条2項の「侵害行為により利益を受けているとき」にいう「利益」には消費税額相当分も含まれると解すべきである旨主張する。しかしながら、輸出取引については消費税が免除されているところ(消費税法7条1項1号)、被告製品1は輸出製品である。被控訴人は、被告製品1の輸出による販売に関し、そもそも販売先(海外販売代理店)から消費税相当額を収受していない。
また、消費税は、課税事業者に対して、年度末で締めて、翌年の通知される納税時期に、その課税売上高に対して課された消費税と材料仕入れ等により支払った消費税を相殺し、相殺後の差額を課税事業者が納付する制度であり、販売先から当該販売金額に応じて収受した消費税相当額は、課税事業者の利益になることが制度上予定されている性質のものではないし、消費税相当額は、侵害者が不法行為により得た利益でもない。さらに、上記基本通達は、単に損害賠償金を受け取った者に対して消費税の納税義務が発生することを説明したものにすぎず、仮に控訴人が本件訴訟に係る損害賠償金について納税義務を課せられるとしても、納税義務が発生するのは、損害賠償金の受領時以後のことであり、不法行為の発生時ではない。したがって、消費税相当額は、特許法102条2項の「侵害の行為により利益を受けているとき」にいう「利益」に含まれると解することはできないから、控訴人の上記主張は理由がない。
ウ推定覆滅事由控訴人主張の2項推定は、以下のとおりの覆滅事由により、全部覆滅される。特許発明が被告製品1及び2の部分のみに実施されていることa被告製品1及び2は、いずれもマッサージ機能を有する背もたれ、座、上腕ユニット、前腕ユニット、フットレストから構成され、肩、背、腰、腕(上腕及び前腕)、脚(ふくらはぎ及び足裏)を対象としてマッサージを行う椅子式マッサージ機である(甲7、8)。しかるところ、本件各発明Cは、椅子式マッサージ機のうち、「前腕部をマッサージする前腕施療機構」に関する発明であり、マッサージの対象となる部位は、前腕部のみに限定されており、しかも、本件各発明Cの技術的意義は、前腕部に関する構造及び作用効果に限定されているから、本件各発明Cは、被告製品1及び2の部分のみに実施されている。b本件明細書Cには、本件発明C-1及びC-2は、施療者の肘関節付近にまで内側立上り壁が形成されていること及び肘掛部の前端部の上面部が開口されていることという従来技術の構成の有する課題(【0005】ないし【0017】、図18ないし20)に対し、①前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行う事ができる(【0013】)、②着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、前記内側立上り壁による前腕部内側の摺擦を回避しながら手掛け部に体重を掛けて行うことができる(【0014】)、③空洞部において、各膨縮袋により施療者の手部を上下に挟圧するマッサージを実施する事ができる(【0015】)、④空洞部の後方位置に設けられた外側立上り壁及び底面部でL型に形成された前腕挿入開口部でも前腕部に対するマッサージを実施する事ができる(【0016】)という作用効果を奏することが記載されている。一方で、本件発明C-1及びC-2の①ないし④の作用効果は、本件出願Cの出願前の公知技術である乙C19記載の構成(【0073】、図16、17、20)によって奏すること、本件発明C-1及びC-2と乙C19記載のマッサージ機とは、本件発明C-1及びC-2が前腕を含まない手部に「内側立上り壁」の構成を有するのに対し、乙C19記載のマッサージ機が上記構成を有していないという点でのみ相違するが、この「内側立上り壁」の構成は、上記①ないし④の作用効果とは関係がなく、技術的価値ないし技術的意義はほとんどない。控訴人自身も、本件各発明Cの実施品を販売しておらず、乙C19記載のマッサージ機と同じ「コ」の字状の肘挿入用溝を有する製品又は「凹」の字状の肘挿入用溝を有する製品を販売しているにとどまる。したがって、本件発明C-1及びC-2の①ないし④の作用効果は、顧客吸引力を有するものではなく、本件各発明Cの技術的意義は、公知技術と差がない。c需要者が椅子式マッサージ機を選択するに当たり着目する要素は、①マッサージ機能、②便利な機能や装備、③サイズや重量等である(乙C50)。①のマッサージ機能は、例えば、部位(自分がマッサージしたい部位に対応した製品であるか)、もみ位置自動調整(使用者の体格に合わせて、もみ玉やローラーの位置を自動調整する機能があるか)、自動コース数(疲労回復、リラックス、ストレッチなど、使用者の目的に合わせてマッサージメニューを組み合わせた自動コースを何種類搭載しているか)である。②の便利な機能や装備は、例えば、フットレスト付き(脚部のマッサージ機能を備えているか)、電動リクライニング(リラックスした姿勢でマッサージを受けるため、背もたれの角度を電動で変えることができる機能を備えているか)、リモコン収納(子どものいたずらや誤操作を防ぐために、付属のリモコンをひじかけなど本体に収納できるか)、キャスター(重量のあるマッサージ機でもスムーズに移動できるように、チェアの下に車輪が備わっているか)、タイマー(使いすぎを防ぐため、マッサージの時間を指定して、指定した時間が経過すると自動で電源がオフになる機能があるか)、液晶パネルリモコン(稼働状態などを表示する液晶パネルを搭載しているか)、折りたたみ収納(大型のマッサージ機を省スペースで収納するため、背もたれなどを折りたたんでコンパクトに収納できるか)、ヒーター機能(寒い季節でも快適にマッサージ機を使用できるように、マッサージ機本体を電熱で暖めることができるか)である。③のサイズや重量は、例えば、マッサージチェアはサイズが大きくなるので、設置場所や保管場所のスペースに合わせて、最適なサイズや重量がどのようなものかである。これらの要素は、本件各発明Cの作用効果とは関係がないから、本件各発明Cは、被告製品1及び2の購買動機の形成に寄与していない。d以上のとおり、本件各発明Cは被告製品1及び2の部分のみに実施されており、また、本件各発明Cには顧客吸引力を有する作用効果がなく、被告製品1及び2の購買動機の形成に寄与していないから、本件各発明Cが被告製品1及び2の部分のみに実施されていることは、2項推定の覆滅事由に該当する。市場における競合品の存在a株式会社矢野経済研究所の調査によると、国内のマッサージチェアの市場規模は、平成28年(2016年)時点において、出荷台数ベースで約43万台、金額ベースで約567億円であり、控訴人、パナソニック、大東電機及び被控訴人の4社が、出荷台数で78.1%、金額ベースで82.6%のシェアを占めていた(乙C51)。また、平成26年度(2014年度)から令和元年度(2019年度)にかけて、販売台数ベースで約10万台から約5万台、金額ベースで約240億円から約130億円で推移し、控訴人が販売台数ベースで31.6%から52.8%、金額ベースで33.0%から43.9%のシェアを、被控訴人が販売台数ベースで16.5%から33.5%、金額ベースで22.6%から31.9%のシェアを、パナソニックが販売台数ベースで24.1%から34.8%、金額ベースで30.9%から40.0%のシェアを占め、控訴人が占めるシェアと拮抗していた(乙C52)。
25b控訴人以外の多くのメーカー(パナソニック等)は、本件出願Cの出願前から、国内市場において、控訴人主張の競合品である「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」(コの字状の肘挿入用溝を有する製品又は凹の字状の肘挿入用溝を有する製品)を製造販売し、また、海外にも輸出している(乙C79ないしC81等)。特に、米国では、「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」として、控訴人及び被控訴人のほかに、控訴人の別会社であるLITEC久工及びDr.Fuji(10機種)、大崎マッサージチェア(控訴人がOEM供給)(39機種)、パナソニック(6機種)、フジタ(Fujita)(12機種)、インフィニティ(Infinity)(19機種)、KYOTA(5機種)の製品も販売されており、被告製品1と販売期間の重なる「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」製品に占める控訴人製品1及び2の割合は94機種中7機種にすぎない(甲C39ないしC41、C43、乙C268等)。したがって、仮に被告製品1及び2が販売されなかったとしても、国内及び海外の市場において、消費者、取引者(海外の代理店を含む。)の需要は、他社の競合品に向くことは明らかであり、控訴人製品1及び2に向くという関係性はないから、このような他社の競合品の存在は、2項推定の覆滅事由に該当する。市場の非同一性a被告製品1について被告製品1は、輸出品であり、海外の市場で需要があるからこそ、日本での輸出及びそれに伴う販売があることからすると、被告製品1の市場は、海外の市場である。仕向国に対する輸出は、当該仕向国の仕様の製品として輸出され、電圧仕様が各国で異なるほか、製品に必要な認証や許可も各国で異なり(例えば、乙C239ないしC244)、現地のメーカーの競合品の販売状況も異なること、被控訴人が被告製品1の輸出により受けた利益は、輸出先の仕向国の市場機会を利用したものであることからすると、被告製品1と控訴人製品1の市場の同一性の範囲は、仕向国ごとに考えるべきである。控訴人の主張するような日本国内限りで完結した仕向国の国枠を外した海外全般の輸出市場なるものは存在しない。そして、控訴人主張の別紙14によれば、控訴人製品1については、仕向国に1桁又は2桁の台数しか輸出実績のないような製品が多く、また、被告製品1の仕向国と一部は共通するが、異なる国も多い。このように被告製品1の仕向国と控訴人製品1の仕向国が異なることは、市場が同一でないこと、すなわち、市場で競合しないことを意味するから、2項推定の覆滅事由に該当する。b被告製品2について被告製品2は、もともと家電量販店において販売されていた製品であるが、平成22年3月に生産を終了し、終了後は、家電量販店での販売は行われず、本件特許権Cの設定登録日(平成23年11月25日)以降は、被控訴人の自社の通販サイトで、「B級品」や処分品として、大幅に値引きして販売されていた。一方、控訴人製品2は、家電量販店を主要な販売先とするものであり、被告製品2とは市場が異なる。
このように被告製品2の市場と控訴人製品2の市場が異なることは、2項推定の覆滅事由に該当する。被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)被控訴人は、マッサージチェア業界を長年にわたり牽引してきた老舗であり、トップクラスのシェアを競う業界のリーディングカンパニーであって、そのブランド力が確立されている(乙C50ないしC52、C61)。特に、米国における被控訴人のブランド力は、絶大であり、被控訴人の製品(「Inadachair」)は、様々な賞を受賞している(乙C65ないしC68)。米国への被告製品1の輸出は、被控訴人のブランド力によるところが大きい。また、被控訴人は、著名な鍼灸師の監修を受けたり、コラボ商品を販売したり、タレントを起用した宣伝をしたり、店頭で特別の説明員が付き添うなど、被告製品1及び2を含む被控訴人取扱製品について独自の宣伝広告を行ってきた(乙C63、C64、C70等)。例えば、米国では、平成26年9月にニューヨークのタイムズスクエアにある電光掲示板(ThomsonReutersBuilding)で被告製品1の広告画像を大撮するなど(乙C69)、巨額の広告費を投じ(乙C161)、強力な宣伝広告活動を展開してきた。このように被告製品1に関しては、競業他社にはできない格別の営業努力を行ってきた。被告製品1及び2の輸出又は販売には、被控訴人独自のブランド力や通常の範囲を超えた宣伝広告が寄与しているから、かかる控訴人の営業努力は、2項推定の覆滅事由に該当する。被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)a被告製品1は、ボタンをクリックするだけで、16の異なる事前にプログラムされたマッサージコース、操作が簡単で、操作に手動が必要な複雑なリモコンのない簡便さや、世界的に有名なデザイナーAの協力による受賞歴のあるデザイン、特に独自の身体スキャン技術で体を測定し、指圧点を検知してユーザ自身の背中の形状に合わせたマッサージ機能(乙C40)などが、訴求ポイントとなっている。また、被控訴人は、被告製品1の訴求ポイントに係る特許を多数保有し(乙C222ないしC238)、さらには、被告製品1のデザインは多数の国で意匠登録されており(乙C213ないし221)、デザインが優れていることが輸出に貢献している。一方で、被告製品1のカタログには、本件各発明Cの特徴である内側立上り壁の存在によるアームレストの機能や構成に関する記載はなく、本件各発明Cの作用効果は、被告製品1の顧客吸引力に寄与していない。
5b被告製品2は、「手技・指圧ひきもみ機能」、「フルアーム機能」、「全身ストレッチ機能」、「新ゆらぎ機能」、「ヤングプログラム」の新機能やデザイン性、特に体型により異なる指圧ポイントを光センサーで自動的に検索し各部位の筋肉と指圧ポイントを効果的に施療するメディカルプログラム、シーソー式4つ玉ユニット&超スローシステムやブランコ式エアー押し出しメカによるマッサージ機能(乙C54)が、訴求ポイントとなっている。被控訴人が被告製品2の訴求ポイントに係る特許を多数保有していること、被告製品2のデザインが優れていることが被告製品2の販売に貢献していることは、被告製品1と同様である。
一方で、被告製品2のカタログには、本件各発明Cの特徴である内側立上り壁の存在によるアームレストの機能や構成に関する記載はなく、本件各発明Cの作用効果は、被告製品2の顧客吸引力に寄与していない。cしたがって、前記a及びbの被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)は、2項推定の覆滅事由に該当する。まとめ以上のとおりの覆滅事由により、2項推定は全部覆滅されるというべきである。仮に2項推定の覆滅が一部にとどまるとしても、その覆滅割合は99.5%ないし99.9%である。
エ推定覆滅部分に係る特許法102条3項に基づく損害額(予備的主張)について特許法102条1項2号は、特許権者の実施相応数量を超える数量又は特定数量について、別途ライセンスが観念できる場合には実施料相当額を特許権者の損害として認めている。同項において、特許権者が自己実施できたと推定される部分(1号)とは別にライセンスをし得た部分(2号)とを区別し観念できるのは、同項が、侵害者の販売する「数量」に基づいて、権利者の逸失利益に係る損害額を算定する方法を採用しているからにほかならない。すなわち、当該損害額算定の評価の枠組みから漏れた数量部分につき、権利者が自己実施とは別にライセンスをし得たという余地があるので、同条3項の重畳適用を許したにすぎない。
他方、同条2項は、侵害者の「利益」を権利者の逸失利益と推定する損害額算定方法をとっており、同項の推定が覆滅されるのは、最終計算の結果としての損害額であり、計算過程の途中数値である侵害品の数量の一部が計算の基礎から除かれるわけではない。したがって、同項の推定を覆滅する過程において、権利者のライセンスの機会の喪失による逸失利益をも含む全ての逸失利益が評価し尽されているというべきであるから、推定覆滅部分に対して同条3項を適用することは、権利者の損害の二重評価となり、許されない。同条1項2号が新設された令和元年改正特許法において、同条2項について実施料相当額の損害が明文において規定されなかったのは、このような趣旨によるものと解される。仮に推定覆滅部分について特許法102条3項の重畳適用が認められる場合が理論的にあり得るとしても、推定覆滅部分全てに一律に重畳適用が肯定されるべきではなく、覆滅事由の内容を踏まえて、権利者がライセンスをし得たか否か(ライセンス機会があったか否か)という同項の重畳適用の基礎があるか検討する必要がある。実施能力を理由とする数量的な推定覆滅部分については同条3項の重畳適用の基礎があるとしても、それ以外の推定覆滅部分については同項の重畳適用の基礎はない。そして、本件の覆滅事由に係る推定覆滅部分については、以下のとおり、本件特許権Cのライセンスをし得たと解する余地はないから、重畳適用は認められない。
a「特許発明が侵害品の部分のみに実施されていること」を覆滅事由とする推定覆滅部分は、特許発明が貢献又は寄与していない部分であるから、そもそも特許権の保護範囲に含まれず、特許権者がライセンスをし得たものとはいえない。当該部分について特許法102条3項の重畳適用を認めることは、特許権の保護範囲外の損害を認めることになり、損害填補の趣旨に反するものである。
b「市場における競合品の存在」を覆滅事由とする推定覆滅部分は、侵害品が存在しない場合において、当該侵害品に向かっていた需要は、特許権者の製品ではなく、他社の競合品へ向かっていたと考えられる部分である。そもそも、当該他社に対するライセンスの機会というのは、このようなライセンスを特許権者が現実に行っていれば、競合の程度問題として覆滅事由において評価されている事項である。競合品が存在したことを覆滅事由とする推定覆滅部分には、権利者において、ライセンスを現実に行う余地はないため、ライセンス機会はない。
20c「市場の非同一性」を覆滅事由とする推定覆滅部分は、被告製品1については、海外市場で被告製品1(海外輸出製品)の販売がなかったならば、控訴人において逸失利益が生じていたであろうという事情がないことによるものである。すなわち、輸出に際して海外市場の事業者から受け取る対価は、あくまで海外市場に基づく利益であり、このような海外市場における利益まで特許法102条2項の推定が及ぶものと解し、日本国内の特許権に基づいて独占することは、特許権の保護範囲を逸脱しており、法が予定していないものである。海外市場における販売をも見据えて(仕向国で対応特許権を登録取得しておくなど対応を行い)、仕向国における特許権に基づきライセンスする場合はあっても、日本国の特許権に基づいて当該仕向国への輸出行為のみを切り取り、ライセンスする場合は現実に考え難く、ライセンスによる実施料相当額の得べかりし利益を得られなかったとは言い難い。d「被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)」を覆滅事由とする推定覆滅が認められるためには、通常の範囲を超える格別の工夫や営業努力をしたという程度まで達する必要があり、このような営業努力は特許権の保護範囲に含まれないから、推定覆滅が認められた以上は、当該推定覆滅部分は、特許法102条2項において評価し尽されるというべきである。したがって、仮に侵害者に対してライセンスがされていればその実施料相当額について侵害者に支払義務があることを前提としても、当該実施料相当額は同条3項のみの適用によって評価され、同条2項と3項が重畳適用されることはないものと解するのが相当である。
e「被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)」を覆滅事由とする推定覆滅部分は、侵害品において特許権者の特許発明以外の性能が優れており、これにより製品の付加価値が上がり、他の製品よりも利益を乗せて売ることができたという部分であり、当該部分は、特許権の保護範囲に含まれないから、特許法102条2項と3項の重畳適用を認める合理性はない。仮に本件において特許法102条3項の重畳適用が認められる推定覆滅部分があるとしても、当該推定覆滅部分に係る実施料率は、後記と同様の理由により、0.5%に満たないというべきである。特許法102条3項に基づく損害額の主張に対し控訴人の主張は争う。椅子式マッサージ機に関する特許は、民生品に関するものであるから、その実施料率は、医療機器の分類中の最小値付近(例えば、本件報告書の表2-2記載の最小値0.5%)と捉えるのが合理的である。
加えて、前記ウで述べたように、本件各発明Cの技術的意義が乏しいこと、本件各発明Cの作用効果は、公知技術により既に奏していたものであり(控訴人主張の「前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機において、前腕部施療機構に前腕部をスムーズに載脱できること、前腕部の広範囲に対する効果的・安定的なマッサージを行うことができること」との作用効果も、これと同様である。)、本件各発明Cの特徴的構成部分である「内側立上り壁」を備えることによる技術的な作用効果は皆無であるから、他の競合品による代替可能性も高いこと、本件各発明Cの特徴的構成部分及び作用効果の被告製品1及び2の売上げ及び利益に対する貢献度も皆無か又は極めて乏しいことなどに鑑みると、特許法102条3項に基づく損害額の算定の基礎となる実施料率は、0.5%にすら満たないというべきである。弁護士費用について控訴人の主張は争う。消滅時効
ア控訴人の被控訴人に対する平成27年4月12日以前の本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権は、本件訴訟の提起時点(平成30年4月13日)で、控訴人が損害及び加害者を知った時から、3年の消滅時効期間が経過していたから、改正前民法724条前段所定の消滅時効が完成していた。すなわち、①被告製品1及び2の販売や機能に関する情報は、被控訴人のウェブサイトで閲覧又はダウンロードできるカタログや取扱説明書のほか、家電量販店などにおける販促活動、その他の宣伝広告活動(カタログ)によって、誰でも容易に知り得る情報であること、②控訴人と被控訴人は、マッサージ機業界においてシェア上位を競い合う競業者であり、互いの製品の動向(構造、機能等)に常に関心を有しており、平成21年から平成24年頃にも、多数のマッサージ機、多数の特許権を対象として複数の特許権侵害訴訟や特許無効審判等を経験した関係にあることからすると、控訴人が、被控訴人の新製品動向やその機能に関し、逐次に調査検討していたといえること、③控訴人が平成28年12月9日に被控訴人に対しクロスライセンスの対象として提示したリスト(乙C43の2)及び控訴人が被控訴人に送付した平成29年1月31日付け「知的財産の取り扱いについて」と題する書面(乙C44)において、本件特許Cが挙げられていたことからすると、控訴人がその当時被告製品1及び2について本件各発明Cの技術的範囲の属否について検討していたことは明らかであること、④控訴人が、平成20年5月に被告製品2の製造、販売等が開始されてから僅か5か月後に、本件出願Cの出願(分割出願)をしたことは、控訴人が被告製品2の発売の事実を知って、これを技術的範囲に含めるように特許請求の範囲を設定して本件出願Cの出願(分割出願)をしたことが推察されることを総合すると、控訴人は、被告製品1及び2の製造、販売、輸出の開始後まもない頃、被告製品1及び2の製造、販売、輸出等の事実及びその構造・機能等を認識し、被告製品1及び2が本件各発明Cの技術的範囲に属することを認識していたというべきであるから、控訴人の被控訴人に対する本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権は、本件訴訟の提起時点(平成30年4月13日)で、控訴人が損害及び加害者を知った時から3年の消滅時効期間が経過し、消滅時効が完成していた。
イ被控訴人は、令和4年8月23日の当審第1回弁論準備手続期日において、控訴人に対し、控訴人の被控訴人に対する平成27年4月12日以前の本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権について、消滅時効を援用した。不当利得返還請求(予備的請求)の主張に対し控訴人の主張は争う。
第4 当裁判所の判断
1争点1-1(被告製品1ないし8の本件発明Aの技術的範囲の属否)について(本件特許A関係)
⑴ 本件明細書Aの記載事項について
ア本件明細書A(甲2)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし6については別紙2を参照)。【技術分野】【0001】本発明は椅子式施療装置に係り、特に利用者の腰を施療するのに好適な椅子式施療装置に関する。
【背景技術】【0002】椅子式施療装置は、座部と、この座部の後部にリクライニング可能に取り付けられた背凭れとを備え、利用者は、この椅子式施療装置に腰掛けた状態で施療行為を受けることができる。このような椅子式施療装置において、座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグが設けられ、また背凭れには、首・肩をマッサージする首・肩用エアバッグ、背中をマッサージする背中用エアバッグ、および腰をマッサージする腰用エアバッグが設けられ、これら各エアバッグを膨縮させて利用者の各部位に対してマッサージを行うようになっている(・・・)。【発明が解決しようとする課題】【0003】しかしながら、上記従来の技術では、腰用エアバッグは背凭れに固定され、上下方向に高さ位置を調整することができない構成であるため、例えば体格の小さな利用者が座った場合、その利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致せず、利用者は腰とは異なる部位(例えば、腰よりも上部の背中側)をマッサージされることになり、意図する部位に十分なマッサージを受けることができない。【0004】本発明の課題は、腰部に対してマッサージによる十分な施療を行うことのできる椅子式施療装置を提供することにある。【課題を解決するための手段】【0005】上記課題を解決するために、本発明では、尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を調整できるようにした。例えば、本発明は、座部と、該座部の後部に取り付けられた背凭れとを備え、前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ、前記背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた椅子式施療装置であって、利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けたことを特徴としている。【0006】上記構成によれば、体格の小さな利用者が座った場合に、尻用エアバッグに空気を供給して尻用エアバッグを膨らますと、利用者は尻部が持ち上げられ、これにより、利用者の腰の位置は徐々に高くなる。その結果、利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが一致して、利用者が意図する部位に十分なマッサージを行うことができる。【発明の効果】【0007】本発明によれば、利用者の腰の高さ位置を徐々に調整できるので、腰部に対して十分な施療を行うことができる。【実施例1】【0009】図1は、実施例1による椅子式施療装置1の外観を示した斜視図である。この椅子式マッサージ装置1は、肘掛け兼用の脚2、脚2に支持された座部3、座部3の後部にリクライニング可能に装着された背凭れ4、および座部3の前側下部に装着された足載せ台5を備えている。【0010】背凭れ4の上部には、首・肩用施療子として、首・肩用エアバッグ6R、6L(Rは右側の部品を、Lは左側の部品をそれぞれ示す。以下同じ。)と、揉み球7R、7Lとが設けられている。エアバッグ6R、6Lは空気が給排気されて膨縮動作を繰り返し、揉み球7R、7Lはエアバッグ6R、6Lの膨縮動作に伴って、利用者の首・肩に対するマッサージを行う。【0011】背凭れ4の高さ方向中央には、背中用施療子として背中用エアバッグ8R、8Lが設けられている。これらエアバッグ8R、8Lは空気が給排気されて膨縮動作を繰り返し、利用者の背中に対するマッサージを行う。【0012】背凭れ4の下部には、腰用施療子として腰用エアバッグ9R、9Lが設けられている。これらエアバッグ9R、9Lも空気が給排気されて膨縮動作を繰り返し、利用者の腰に対するマッサージを行う。【0013】また、座部3には、背凭れ4に近い側に尻用エアバッグ10が、背凭れ4から遠い側に腿用エアバッグ11がそれぞれ設けられ、尻用エアバッグ10は利用者の尻に対するマッサージを行い、腿用エアバッグ11は利用者の腿に対するマッサージを行う。【0014】さらに、足載せ台5の前側には左右に脚配設溝5R、5Lが形成され、このうち脚配設溝5Rの両側には脚用エアバッグ12R、12Rが、また脚配設溝5Lの両側には脚用エアバッグ12L、12Lがそれぞれ対向配置されている。【0015】なお、図1において、符号13は、希望するマッサージを利用者が設定入力するためのリモコンである。
【0016】図2は、上記各エアバッグの動作を制御するための制御系統図である。【0017】首・肩用エアバッグ6R、6Lには空気ホース14が、背中用エアバッグ8R、8Lには空気ホース15が、腰用エアバッグ9R、9Lには空気ホース16がそれぞれ接続されている。空気ホース14、15、16は1つに合流して空気ホース17の一端に結合され、この空気ホース17の他端は上半身ポンプ18の吐出側に接続されている。【0018】尻用エアバッグ10には空気ホース19が、腿用エアバッグ11には空気ホース20が、脚用エアバッグ12R、12Lには空気ホース21がそれぞれ接続されている。空気ホース19、20、21は1つに合流して空気ホース22の一端に結合され、この空気ホース22の他端は下半身ポンプ23の吐出側に接続されている。【0019】空気ホース14、15、16の途中には電磁弁(分配弁)24、25、26がそれぞれ設けられ、また空気ホース19、20、21の途中には電磁弁(分配弁)27、28、29がそれぞれ設けられている。なお、電磁弁24、25、26および電磁弁27、28、29は三方弁で構成されている。【0020】また、制御手段として制御回路30が設けられ、この制御回路30は、上半身ポンプ18、下半身ポンプ23、電磁弁24、25、26、および電磁弁27、28、29にそれぞれ電気的に接続されている。また、制御回路30にはリモコン13も電気的に接続されている。なお、制御回路30はマイコンで構成され、座部3(図1参照)の下側に配置されている。【0021】次に、上記構成の椅子式施療装置1の作用について説明する。【0022】利用者が椅子式施療装置1に腰掛けて、利用者の腰の高さが腰用エアバッグ9R、9Lの位置に一致すれば問題はなく、利用者はリモコン13を操作して腰用エアバッグ9R、9Lを作動させることにより、腰に対するマッサージを受けることができる。【0023】しかし、体格の小さな利用者が座った場合は、利用者の腰の位置と腰用エアバッグ9R、9Lの位置とが一致しないため、利用者は腰に対する十分なマッサージを受けることができない。【0024】このようなとき、利用者はリモコン13を操作して高さ位置調整モードに設定する。高さ位置調整モードが設定されると、制御回路30は、図3に示すように、例えば時刻t1において、下半身ポンプ23を作動させるとともに電磁弁27を制御して、下半身ポンプ23で圧縮された空気を尻用エアバッグ10に流入させる。これにより、尻用エアバッグ10を膨らませて、利用者は腰用エアバッグ9R、9Lに対して腰の位置を調整する。【0025】そして時刻t1から所定時間経過して時刻t2になったとき、制御回路30は、電磁弁27を制御し電磁弁27を閉にして、尻用エアバッグ10の膨らんだ状態を保持するとともに、下半身ポンプ23の作動を停止させる。【0026】その後、制御回路30は、時刻t3において、上半身ポンプ18を作動させるとともに、電磁弁26を制御して、上半身ポンプ18で圧縮された空気を腰用エアバッグ9R、9Lに流入させて腰用エアバッグ9R、9Lを膨らます。【0027】次に、制御回路30は、時刻t4において、電磁弁26を制御して電磁弁26を閉にし、腰用エアバッグ9R、9Lの膨らんだ状態を保持するとともに、上半身ポンプ18の作動を停止させる。さらに、時刻t5において、電磁弁26を制御して腰用エアバッグ9R、9L内の圧縮空気を外部に排気させ、腰用エアバッグ9R、9Lを縮ませる。
【0028】そして、上記時刻t3~t5の動作を繰り返すことにより、利用者の腰に対するマッサージを行う。【0029】腰に対するマッサージを停止させるときは、利用者がリモコン13に対して停止の操作を行うことにより、腰に対するマッサージが終了し、制御回路30は、時刻t6において、電磁弁27を制御し尻用エアバッグ10内の圧縮空気を外部に排気させ、尻用エアバッグ10を縮ませる。【0030】本実施例によれば、利用者の腰の位置と腰用エアバッグ9R、9Lの位置とを一致させることができ、利用者は腰に対する十分なマッサージを受けることができる。【0031】図4は本実施例の変形例である。この変形例では、尻用エアバッグ10と共に腿用エアバッグ11を膨縮させるようにしている。すなわち、腿用エアバッグ11を、尻用エアバッグ10と同様に、時刻t1において膨らませ、時刻t6において縮ませている。腰用エアバッグ9R、9L、上半身ポンプ18、および下半身ポンプ23に対する制御は図3の場合と同様である。【0032】この変形例によれば、尻用エアバッグ10と共に腿用エアバッグ11を膨らませるようにしているので、腰用エアバッグ9R、9Lに対して利用者をより確実に持ち上げることができる。【実施例2】【0033】図5は実施例2を示している。本実施例では、尻用エアバッグ10を徐々に膨らますようにしている。実施例1では、電磁弁27を開にしたとき、下半身ポンプ23からの圧縮空気を尻用エアバッグ10に一気に流入させていたが、本実施例では、時刻t1において電磁弁27を開にしたときに、下半身ポンプ23からの圧縮空気が尻用エアバッグ10に徐々に流入するように電磁弁27の開度を制御する。そして、尻用エアバッグ10に圧縮空気が徐々に流入しているときに、腰用エアバッグ9R、9Lを作動させる。また、下半身ポンプ23は時刻t5’まで作動させ、時刻t5’において、電磁弁27を制御して尻用エアバッグ10の膨らんだ状態を保持する。【0034】本実施例によれば、利用者は徐々に持ち上げられている最中に、腰用エアバッグ9R、9Lによって腰がまんべんなくマッサージされることになり、腰部近傍に対する充分なマッサージを受けることができる。【0035】また、利用者は、所定量持ち上げられた後(つまり時刻t5’から時刻t6の間)、実施例1の場合と同様なマッサージを受けることができる。
【0036】図6は本実施例の変形例である。この変形例では、図5の場合と同様、尻用エアバッグ10と共に腿用エアバッグ11を徐々に膨張させるようにしている。腰用エアバッグ9R、9L、上半身ポンプ18、および下半身ポンプ23に対する制御は図4と同様である。
イ前記アの記載事項によれば、本件明細書Aには、本件発明Aに関し、次のような開示があることが認められる。腿をマッサージする腿用エアバッグ、尻をマッサージする尻用エアバッグが設けられた座部と、この座部の後部にリクライニング可能に取り付けられた、首・肩をマッサージする首・肩用エアバッグ、背中をマッサージする背中用エアバッグ、腰をマッサージする腰用エアバッグが設けられた背凭れとを備え、各エアバッグを膨縮させて利用者の各部位に対してマッサージを行うことができる椅子式施療装置においては、従来、腰用エアバッグは背凭れに固定され、上下方向に高さ位置を調整することができない構成であるため、腰部に対して意図する部位に十分なマッサージを受けることができないという問題があった(【0002】、【0003】)。「本発明」は、腰部に対してマッサージによる十分な施療を行うことのできる椅子式施療装置を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段として、座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ、背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた椅子式施療装置であって、利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けるという構成を採用した(【0004】、【0005】)。
これにより、「本発明」は、尻用エアバッグに空気を供給して尻用エアバッグを膨らますと、利用者は尻部が持ち上げられ、利用者の腰の高さ位置を徐々に高くなるよう調整できるので、腰部に対して十分な施療を行うことができるという効果を奏する(【0006】、【0007】)。被告製品1及び2の構成要件充足性について
ア被告製品1及び2の構成被告製品1及び2が、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の1記載のとおりの構成及び記載のaないしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。そして、上記認定事実と証拠(甲7、甲A1、A2、A17、乙A8、A9)によれば、被告製品1及び2は、別紙1の図3記載の「尻用エアバッグA」が、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押圧すること、「Seat」エアーコース/「座」エアーコース利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くすることができることが認められる。そうすると、被告製品1及び2は、次のaないしfの構成を有することが認められる。a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられ、c前記背もたれ部には、腰用エアバッグが設けられたdマッサージチェアであって、e「Seat」エアーコース/「座」エアーコース利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰用エアバッグを作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
イ構成要件Bの充足性被告製品1及び2が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。本件発明Aの構成要件B(「前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ」)の記載から、少なくとも「座部」に「尻をマッサージする尻用エアバッグ」が設けられていれば、構成要件Bを充足するものと解される。そして、被告製品1及び2の構成bによれば、被告製品1及び2の尻用エアバッグAは、「座部」に設けられた「尻をマッサージする」エアバッグであり、構成要件Bの「尻用エアバッグ」に相当するから、被告製品1及び2は、構成要件Bを充足するものと認められる。これに対し、被控訴人は、①本件発明Aの構成要件Bの「腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ」との構成は、「腿用エアバッグ」が設けられている場合には、「腿用エアバッグ」は、単に膨らむだけでなく、「尻用エアバッグ」とともに、利用者の腰の高さ位置を徐々に高くすることに寄与しなければならないと理解される、②被告製品1及び2の「腿用エアバッグ」は、「尻用エアバッグ」の膨張による利用者の身体の上方への持ち上げという形での「徐々に高くしながら」する腰の位置の移動に寄与するような膨張をするわけではないから、被告製品1及び2は、構成要件Bを充足しない旨主張する。しかしながら、構成要件Bの文言から、少なくとも「座部」に「尻をマッサージする尻用エアバッグ」が設けられていれば、構成要件Bを充足するものと解されることは、前記のとおりである。そして、被控訴人の上記主張は、構成要件Bに記載のない「腿用エアバッグ」の動作に係る構成を発明特定事項に加えて解釈するものであって、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づかないものであるから、その前提において採用することができない。なお、被控訴人は、本件発明Aの「尻用エアバッグ」は、腰を施療する際に、尻部をマッサージして利用者を上方に押し上げる方向に膨張して利用者の腰の高さ位置を高くできる構成であることが必須である旨主張するが、この点は、被告製品1及び2の構成要件Eの充足性の問題であるので、ここでは検討しない。
ウ構成要件Cの充足性本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載から、構成要件Cの「前記背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた」にいう「腰用施療子」は、「背凭れ」に設けられた腰を施療(マッサージ)する部分であることを理解できる。一方で、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)には、「腰用施療子」を特定の構成のものに限定する記載はない。次に、本件明細書Aには、「腰用施療子」について定義した記載はない。
また、本件明細書Aには、「腰用施療子」に関し、実施例1として、「背凭れ4の下部には、腰用施療子として腰用エアバッグ9R、9Lが設けられている。これらエアバッグ9R、9Lも空気が給排気されて膨縮動作を繰り返し、利用者の腰に対するマッサージを行う。」(【0012】)、「本実施例によれば、利用者の腰の位置と腰用エアバッグ9R、9Lの位置とを一致させることができ、利用者は腰に対する十分なマッサージを受けることができる。」(【0030】)、実施例2として、「本実施例によれば、利用者は徐々に持ち上げられている最中に、腰用エアバッグ9R、9Lによって腰がまんべんなくマッサージされることになり、腰部近傍に対する充分なマッサージを受けることができる。」(【0034】)との記載があり、図1には、腰用エアバッグ9R、9Lが示されている。一方で、本件明細書Aには、「腰用施療子」を腰用エアバッグ9R、9Lの構成のものに限定する記載はない。以上の本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Aの記載によれば、構成要件Cの「腰用施療子」は、「背凭れ」に設けられた腰を施療(マッサージ)する部分をいい、特定の構成のものに限定されないと解される。そして、被告製品1及び2の構成cの「腰用エアバッグ」は、「背もたれ部」に設けられた腰をマッサージするエアバッグであり、構成要件Cの「腰用施療子」に相当するから、被告製品1及び2は、構成要件Cを充足するものと認められる。これに対し、被控訴人は、本件発明Aの「腰用施療子」は、背凭れの定位置にあるものを意味し、身長方向に移動可能なものは「腰用施療子」には該当しないと解されるところ(【0012】、【0022】、【0023】、図1等)、被告製品1及び2は、身長方向に移動可能な「もみ玉」も備えており、「もみ玉」の位置を利用者の腰の位置と一致させ、腰部の意図する部位にマッサージを行うものであるが、この「もみ玉」は「腰用施療子」に該当しないから、構成要件Cを充足しない旨主張する。しかしながら、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Aの記載によれば、構成要件Cの「腰用施療子」は、「背凭れ」に設けられた腰を施療(マッサージ)する部分をいい、特定の構成のものに限定されないと解されること、被告製品1及び2は、構成cの「腰用エアバッグ」を備えており、これが「背もたれ部」に設けられた腰をマッサージするエアバッグであり、構成要件Cの「腰用施療子」に相当することは前記のとおりであるから、被控訴人の上記主張は採用することができない。
エ構成要件Eの充足性「利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けた」(構成要件E)の意義についてa本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載から、構成要件Eの「制御手段」は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、「腰用施療子を作動させ」て、腰を施療する制御を行うことを理解できる。一方で、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)には、利用者の腰の高さ位置の変位量や変位の程度等を特定する記載はない。
次に、前記イ認定のとおり、本件明細書Aには、本件発明Aに関し、従来の椅子式施療装置においては、腰用エアバッグは背凭れに固定され、上下方向に高さ位置を調整することができない構成であるため、腰部に対して意図する部位に十分なマッサージを受けることができないという問題があったことから(【0002】、【0003】)、本件発明Aは、腰部に対してマッサージによる十分な施療を行うことのできる椅子式施療装置を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段として、座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ、背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた椅子式施療装置であって、利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けるという構成を採用し(【0004】、【0005】)、これにより、尻用エアバッグに空気を供給して尻用エアバッグを膨らますと、利用者は尻部が持ち上げられ、利用者の腰の高さ位置を徐々に高くなるよう調整できるので、腰部に対して十分な施療を行うことができるという効果を奏すること(【0006】、【0007】)の開示がある。また、本件明細書Aには、構成要件Eの「制御手段」に関し、「図2は、上記各エアバッグの動作を制御するための制御系統図である。」(【0016】)、「首・肩用エアバッグ6R、6Lには空気ホース14が、背中用エアバッグ8R、8Lには空気ホース15が、腰用エアバッグ9R、9Lには空気ホース16がそれぞれ接続されている。空気ホース14、15、16は1つに合流して空気ホース17の一端に結合され、この空気ホース17の他端は上半身ポンプ18の吐出側に接続されている。」(【0017】)、「尻用エアバッグ10には空気ホース19が、腿用エアバッグ11には空気ホース20が、脚用エアバッグ12R、12Lには空気ホース21がそれぞれ接続されている。空気ホース19、20、21は1つに合流して空気ホース22の一端に結合され、この空気ホース22の他端は下半身ポンプ23の吐出側に接続されている。」(【0018】)、「また、制御手段として制御回路30が設けられ、この制御回路30は、上半身ポンプ18、下半身ポンプ23、電磁弁24、25、26、および電磁弁27、28、29にそれぞれ電気的に接続されている。また、制御回路30にはリモコン13も電気的に接続されている。なお、制御回路30はマイコンで構成され、座部3(図1参照)の下側に配置されている。」(【0020】)、「図5は実施例2を示している。本実施例では、尻用エアバッグ10を徐々に膨らますようにしている。実施例1では、電磁弁27を開にしたとき、下半身ポンプ23からの圧縮空気を尻用エアバッグ10に一気に流入させていたが、本実施例では、時刻t1において電磁弁27を開にしたときに、下半身ポンプ23からの圧縮空気が尻用エアバッグ10に徐々に流入するように電磁弁27の開度を制御する。そして、尻用エアバッグ10に圧縮空気が徐々に流入しているときに、腰用エアバッグ9R、9Lを作動させる。また、下半身ポンプ23は時刻t5’まで作動させ、時刻t5’において、電磁弁27を制御して尻用エアバッグ10の膨らんだ状態を保持する。」(【0033】)、「本実施例によれば、利用者は徐々に持ち上げられている最中に、腰用エアバッグ9R、9Lによって腰がまんべんなくマッサージされることになり、腰部近傍に対する充分なマッサージを受けることができる。」(【0034】)、「また、利用者は、所定量持ち上げられた後(つまり時刻t5’から時刻t6の間)、実施例1の場合と同様なマッサージを受けることができる。」(【0035】)との記載がある。上記記載と図2及び5によれば、本件明細書Aには、制御手段30は、下半身ポンプ23からの圧縮空気が尻用エアバッグ10に徐々に流入するように電磁弁27の開度を制御し、尻用エアバッグ10に圧縮空気が徐々に流入しているときに、腰用エアバッグ9R、9Lを作動させる制御を行うこと、この制御により、利用者は尻用エアバッグ10が膨らんで尻部が徐々に持ち上げられている最中に、腰用エアバッグ9R、9Lによって腰がまんべんなくマッサージされることになり、腰部近傍に対する充分なマッサージを受けることができることの開示があることが認められる。一方で、本件明細書Aには、制御手段30の制御による利用者の腰の高さ位置の変位量や変位の程度等に関する記載はなく、また、上記制御によって利用者の腰の高さと腰用エアバッグ9R、9Lの位置の不一致を是正した具体例や腰部近傍に対するマッサージ効果がどの程度のものであるのかを具体的に示した記載もない。以上の本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Aの記載によれば、構成要件Eの「制御手段」は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであれば、利用者の腰の高さ位置の変位量及び変位の程度やその制御による具体的な効果を特定のものに限定するものではないものと解される。bこれに対し、被控訴人は、構成要件Eの「前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら」という機能的な動作態様の記載から、その意味が一義的に明らかではないため、本件明細書Aの記載(【0001】ないし【0007】)を参酌すると、構成要件Eは、「尻用エアバッグ」につき、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させる制御手段を設けたことを意味するものと解すべきである旨主張する。しかしながら、前記aで説示したとおり、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)には、構成要件Eの「制御手段」の制御による利用者の腰の高さ位置の変位量や変位の程度等を特定する記載はなく、本件明細書Aの記載も、これと同様である。また、本件明細書Aの記載全体をみても、本件発明Aにより体格差がある様々な利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが常に一致して不一致が解消されるとの記載はなく、そのような示唆もない。したがって、構成要件Eの「制御手段」は、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させる制御を行うものであることが必須であるとはいえないから、被控訴人の上記主張は採用することができない。
被告製品1及び2についてa被告製品1及び2の構成eによれば、被告製品1及び2は、「Seat」エアーコース/「座」エアーコース利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰用エアバッグを作動させる制御手段(構成e)を備えるものであり、この制御手段は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであり、構成要件Eの「制御手段」に相当するから、被告製品1及び2は、構成要件Eを充足するものと認められる。bこれに対し、被控訴人は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の
第1の図3に矢印で示されている「腰用エアバッグ」は、背もたれに固定されて動かない腰用エアバッグであり、その縦横長は、260㎜×120㎜であること(乙A34)に照らすと、たかだか16㎜又は32㎜程度の上下の移動では、体格差がある様々な利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが常に一致して、不一致が解消されるなどということはないから、被告製品1及び2は、構成要件Eを充足しない旨主張する。しかしながら、前記で説示したとおり、構成要件Eの「制御手段」は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであれば、利用者の腰の高さ位置の変位量及び変位の程度やその制御による具体的な効果を特定のものに限定するものではないものと解され、また、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させる制御を行うものであることが必須であるとはいえない。
そして、腰の位置が16mm 程度上昇することも、構成要件Bの「腰の高さ位置を…高くし」に含まれるというべきであるから、被控訴人の上記主張は採用することができない。
オまとめ以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明Aの構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。被告製品3の構成要件充足性について
ア被告製品3の構成被告製品3が、別紙1の第2の1記載のとおりの構成及び2記載のaないしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。
上記認定事実と証拠(甲9、甲A1、A3、A7、A8、A11、A18、乙A10)によれば、被告製品3においては、別紙1の図6記載の「尻用エアバッグA」は、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押圧すること、「クイックコース」又は「体幹トレーニングコース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させることができることが認められる。そうすると、被告製品3は、次のaないしfの構成を有することが認められる。a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられ、c前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェアであって、e「クイックコース」又は「体幹トレーニングコース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm15程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
イ構成要件充足性被告製品3が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。
そして、被告製品3の構成bの「尻用エアバッグA」は構成要件Bの「尻用エアバッグ」に、構成cの「もみ玉」は構成要件Cの「腰用施療子」に相当するものと認められるから、被告製品3は、構成要件B及びCを充足するものと認められる。被告製品3は、「クイックコース」又は「体幹トレーニングコース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(構成e)を備えるものであり、この制御手段は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであり、構成要件Eの「制御手段」に相当するものと認められる。
そうすると、被告製品3は、構成要件Eを充足するものと認められる。これに反する被控訴人の主張は採用することができない。以上によれば、被告製品3は、本件発明Aの構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。被告製品4の構成要件充足性
ア被告製品4の構成被告製品4が、別紙1の第3の1記載のとおりの構成及び2記載のaないしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。上記認定事実と証拠(甲11、乙A7、A15)によれば、被告製品4は、座部上面から立ち上がる施療板の内側面に配置され、施療板の下部の一端を支点として施療板を反力受けとして内側方に膨張し、臀部側面を挟持する「尻用エアバッグC」を有することが認められるが、尻用エアバッグC及び背もたれ部のもみ玉が同時に動作すること及び尻用エアバッグCが膨らむことによって利用者の腰の高さ位置が高くなることを認めるに足りる証拠がない。
そうすると、被告製品4は、次のaないしdの構成を有することが認められる。a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグCが設けられ、c前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェア。
イ構成要件充足性被告製品4の構成は、前記アのとおりであり、構成要件Eに相当する構成を有すると認めることはできない。
したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告製品4は本件発明Aの技術的範囲に属さない。被告製品5の構成要件充足性
ア被告製品5の構成被告製品5が、別紙1の第2の1記載のとおりの構成及び2記載のaないしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。上記認定事実と証拠(甲12、甲A1、A4、A19、乙A11、A16)によれば、被告製品5においては、別紙1の図6記載の「尻用エアバッグA」が、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押圧すること、「ストレッチコース」、「ストレス解消コース」又は「カラダのばしコース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に32mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させることができることが認められる。そうすると、被告製品5は、次のaないしfの構成を有することが認められる。
20a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられ、c前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェアであって、e「ストレッチコース」、「ストレス解消コース」又は「カラダのばしコース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に32mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
イ構成要件充足性被告製品5が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。そして、被告製品5の構成bの「尻用エアバッグA」は構成要件Bの「尻用エアバッグ」に、構成cの「もみ玉」は構成要件Cの「腰用施療子」に相当するものと認められるから、被告製品5は、構成要件B及びCを充足するものと認められる。被告製品5は、「ストレッチコース」、「ストレス解消コース」又は「カラダのばしコース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に32mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(構成e)を備えるものであり、この制御手段は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであり、構成要件Eの「制御手段」に相当するものと認められる。そうすると、被告製品5は、構成要件Eを充足するものと認められる。これに反する被控訴人の主張は採用することができない。
以上によれば、被告製品5は、本件発明Aの構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。被告製品6の構成要件充足性
ア被告製品6の構成被告製品6が、別紙1の第3の1記載のとおりの構成及び2記載のaないしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。上記認定事実と証拠(甲13、甲A7、A9、A20、乙A12)によれば、尻用エアバッグB(座部上面に配置され、内側方に膨張し、臀部側面を押圧するもの。以下同じ。)を膨らませながら、もみ玉が作動することが認められ、被告製品6に人形を載せて作動させ、これを撮影した動画(甲A9)では、利用者の腰の高さ位置を示す目印が数ミリ程度移動していることを目視できるものの、同動画からは、上記目印の移動が、もみ玉の動きに応じた上体の動きを反映したことによるものか、尻用エアバッグが膨らむことによって腰の位置の変化したことによるものかが明らかではなく、尻用エアバッグBが膨らむことによって利用者の腰の高さ位置が高くなることを認めるに足りない。
そうすると、被告製品6は、次のaないしfの構成を有することが認められる。a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグBが設けられ、c前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェアであって、e「ストレッチ運動コース」、「ロッキング&マッサージコース」又は「クイックマッサージコース」利用中に、尻用エアバッグBを膨らませながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
イ構成要件充足性被告製品6の構成は前記アのとおりであり、尻用エアバッグBを膨らませながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(e)を備えているものの、「尻用エアバッグを膨らませて」「利用者の腰の位置を徐々に高くする」(構成要件E)に相当する構成を有すると認めることはできないから、被告製品6は、構成要件Eを充足しない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告製品6は本件発明Aの技術的範囲に属さない。被告製品7の構成要件充足性
ア被告製品7の構成被告製品7が、別紙1の第3の1記載のとおりの構成及び2記載のaないしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。上記認定事実と証拠(甲14、甲A1、A7、A10、A21、乙A13)によれば、尻用エアバッグBを膨らませながら、もみ玉が作動することが認められ、被告製品7により利用者が施療を受ける様子を撮影した動画(甲A10)では、利用者の腰の高さ位置を示す目印が数ミリ程度移動していることを目視できるものの、同動画からは、上記目印の移動が、もみ玉の動きに応じた上体の動きを反映したことによるものか、尻用エアバッグが膨らむことによって腰の位置の変化したことによるものかが明らかではなく、尻用エアバッグBが膨らむことによって利用者の腰の高さ位置が高くなることを認めるに足りない。そうすると、被告製品7は、次のaないしfの構成を有することが認められる。a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグBが設けられ、c前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェアであって、e「全身疲労回復コース」、「肩・筋肉疲労改善コース」、「腰・筋肉疲労改善コース」、「全身クイックコース」、「腰集中コース」又は「骨盤おしりコース」利用時に、尻用エアバッグBを膨らませながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
イ構成要件充足性被告製品7の構成は前記アのとおりであり、尻用エアバッグBを膨らませながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(e)を備えているものの、「尻用エアバッグを膨らませて」「利用者の腰の位置を徐々に高くする」(構成要件E)に相当する構成を有すると認めることはできないから、被告製品7は、構成要件Eを充足しない。
したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告製品7は本件発明Aの技術的範囲に属さない。被告製品8の構成要件充足性
ア被告製品8の構成被告製品8が、別紙1の第2の1記載のとおりの構成及び2記載のaないしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。上記認定事実と証拠(甲15、甲A1、A6、A22、乙A14)によれば、被告製品8においては、別紙1の図6記載の「尻用エアバッグA」が、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押圧すること、「おしり快適コース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させることができることが認められる。そうすると、被告製品8は、次のaないしfの構成を有することが認められる。a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられ、c前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェアであって、e「おしり快適コース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
イ構成要件充足性被告製品8が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。
そして、被告製品8の構成bの「尻用エアバッグA」は構成要件Bの「尻用エアバッグ」に、構成cの「もみ玉」は構成要件Cの「腰用施療子」に相当するものと認められるから、被告製品8は、構成要件B及びCを充足するものと認められる。被告製品8は、「おしり快適コース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(構成e)を備えるものであり、この制御手段は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであり、構成要件Eの「制御手段」に相当するものと認められる。そうすると、被告製品8は、構成要件Eを充足するものと認められる。これに反する被控訴人の主張は採用することができない。以上によれば、被告製品8は、本件発明Aの構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。
小括以上のとおり、被告製品1ないし3、5及び8は、本件発明Aの技術的範囲に属するが、被告製品4、6及び7は、本件発明Aの技術的範囲に属さない。
2争点1-2(本件特許Aに係る無効の抗弁の成否)について(本件特許A関係)無効理由1(AS-878に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本件発明Aの新規性欠如)について
アAS-878に係る発明の公然実施の有無について証拠(乙A42、A43)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、本件出願Aの出願前の平成15年7月以降、日本国内において、AS-878を販売していたこと、AS-878は、別紙4の図1及び2に示すような構成を有することが認められる。そして、当業者は、AS-878を外部から観察し、又は実際に使用し、その動作を確認及び分析することにより、AS-878の構成及び機能を知り得る状況にあったものと認められるから、AS-878に係る発明は、本件出願前に公然実施されていたものと認められる。
イAS-878に係る発明の内容について前記アの認定事実と証拠(乙A42、A45、A48)及び弁論の全趣旨によれば、ASA-878に係る発明として、次の構成を有する発明を認定することができる。
20a座部と、背もたれ部とを備え、b座部には、腿をマッサージするエアーバッグ及び尻をマッサージするエアーバッグ(尻用エアバッグ)が設けられ、c背もたれ部には、腰を施療することができるもみ玉及びエアーバッグ(腰用エアバッグ)が設けられたdマッサージチェアであってe「自動コース」の「腰コース」により利用する場合、尻用エアバッグが2秒程度かけて膨らんで利用者の腰の位置を少なくとも15mm程度上げながら、同時に、もみ玉が腰の位置で作動する制御を行う制御手段を設けたfマッサージチェア。
これに対し、控訴人は、AS-878に係る動画(乙A45、A48)では、利用者の腰の位置が上下方向に変位しているようにも見受けられるが、これは、利用者の肩から首にかけてのラインの角度の変位に伴うものであって、利用者の身体全体が略垂直に上がっているからではなく、上記動画から、腰用施療子が動作していること及び腰位置が上昇していることを客観的に確認することができないとして、AS-878が前記の構成eの制御手段を有することの立証はない旨主張する。しかし、乙A48の動画によると、尻エアーバッグの膨張及び収縮による座部の位置の変化に応じて腰の位置が変動し、少なくとも15mm 程度は高くなっていることが認められ、この変化は利用者の肩から首にかけてのラインの角度の変異が反映されたものとは認められない。また、分解したAS-878の動作を撮影した動画(乙A45)によると、尻用エアバッグが膨張するとき、同時にもみ玉が利用者の腰の位置で動作していることが認められる。そうすると、AS-878において、尻用エアバッグが膨らんで腰の位置を上げると同時に、利用者の腰の位置で、もみ玉が作動しているということができるから、AS-878は、前記の構成eの制御手段を有するものと認められる。したがって、控訴人の上記主張は理由がない。
ウ本件発明AとAS-878に係る発明との同一性本件発明AとAS-878に係る発明を対比すると、AS-878に係る発明の構成の尻用エアバッグ及びもみ玉はそれぞれ本件発明Aの「尻用エアバッグ」及び「腰用施療子」に相当し、AS-878に係る発明の構成aないしd及びfは、本件発明Aの構成要件AないしD及びFの構成に相当するものと認められる。そして、AS-878に係る発明では、「尻用エアバッグが2秒程度かけて膨らんで利用者の腰の位置を少なくとも15mm 程度上げながら、同時に、もみ玉が腰の位置で作動する」制御を行う制御手段(構成e)を有するところ、尻用エアバッグが2秒程度かけて膨らむことにより利用者の腰の位置を15mm 程度上げており、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の位置を徐々に高く」しながら、同時に、腰用施療子を作動させる制御手段が設けられていると認められるから、AS-878に係る発明は、本件発明Aの構成要件Eの構成を備えるものと認められる。そうすると、AS-878に係る発明は本件発明Aの構成要件AないしFの構成を全て備えるから、本件発明Aは、AS-878に係る発明と同一の発明であると認められる。
これに反する控訴人の主張は採用することができない。小括以上によれば、被控訴人主張の無効理由1は理由があるから、その余の点について判断するまでもなく、控訴人は、被控訴人に対し、本件特許権Aに基づいて権利行使することができない(特許法104条の3第1項、123条1項2号、29条1項2号)。
3争点2-1(被告製品1及び2の本件各発明Cの技術的範囲の属否)について(本件特許C関係)
⑴ 本件明細書Cの記載事項について
ア本件明細書C(甲6)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし4、6ないし20については別紙3を参照)。【技術分野】【0001】本発明は、肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機に関するものである。【背景技術】【0002】従来の、座部と背凭れ部、そして該座部の左右両側に肘掛部を設けた椅子式マッサージ機において、肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて、着座した施療者の腕部をマッサージする形態のものは既に存在し、市場では商品化されている。
【0003】例えば、図19に示すような、前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機が開示されている。すなわち、手揉機能付施療機1として、肘幅方向両側に各々立上り壁211・211を設けた肘掛部21を椅子本体2の両側に設けており、その肘掛部21の各立上り壁211・211間に人体手部を各々嵌脱自在で該人体手部に膨縮施療を付与し得るよう、圧縮空気給排気手段を配設して成り、施療者が着座状態で人体手部を両肘掛部21・21上面部に安定的に保持させて、人体手部及び腕部を効率良く空圧施療する事ができるよう構成したものである。尚、肘掛部21の前側上面部は、立上り壁211が形成されておらず、平坦になっている。【0004】さらに、前述したような左右一対の立上り壁を左右の肘掛部の長さ方向全域に夫々設けた形態のものを図20に示す。すなわち、凹部の内壁に、人体の肢体を挿入するための空間を設けるように空気袋を夫々取着して施療部を形成し、空気袋に空気を給排気して空気袋を膨張及び収縮させる給排気装置を連通して設けてなるエアーマッサージ機3を、椅子20の肘掛けの上部全域に設けた構成である。【発明が解決しようとする課題】【0005】ところで、従来の図20に示すような、肘掛部の長さ方向全域に前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機は、手部及び前腕部の広範を同時にマッサージする事ができて便利であるが、施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成されているため、図18に示すように、上腕部内側の肘関節付近を施療者側である内側立上り壁623が圧迫して、施療者に不快感を与えたり、また、前腕部施療機構における腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があった。特に、施療者の身長が低くて小柄である程、内側立上り壁623による圧迫が大きくなると考えられる。【0006】また、着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、通常は肘掛部の前端部を手で掴んで体重を掛けるのであるが、図20に示す形態の椅子式マッサージ機は、肘掛部の前端部にまで左右の立上り壁が形成されているため、肘掛部の前端部の上面部が開口された形態となり、そのような部分に体重を掛ける事は困難であった。【0007】一方で、左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機において、図19に示すような肘掛部の前側上面部に該立上り壁が形成されず、平坦になった部分を有する構成のものに関しては、該平坦になった部分を手掛け部として体重を掛ける事ができるのであるが、左右一対の立上り壁間に形成される凹部の底面部と、該手掛け部の平坦になった部分とが同じ高さの同面であるため、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際、前述した図18に示すのと同様、内側立上り壁623によって上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、その付近と共に前腕部の内側が摺擦されながら、凹部から腕部が離脱する事になり、この場合も施療者に対して不快感を与えるものとなると考えられ、解決すべく問題となっていた。【0008】そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、施療者の腕部に対し、前腕部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもたらす要因を解消し、前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに行うよう構成すると共に、前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行う事ができるよう構成した椅子式マッサージ機を提供する事を目的とするものである。【課題を解決するための手段】【0009】すなわち、本発明の椅子式マッサージ機は、座部及び背凭れ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘掛部を有する椅子式マッサージ機において、前記肘掛部に、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ、前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に空洞部の先端部の上方を塞ぐ形態で手掛け部が設けられており、前記肘掛部が、前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部と、後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え、それぞれの施療部に膨縮袋が夫々設けられたものとしている。【0010】また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部を、前記空洞部の後方位置に設けられた外側立上り壁及び底面部で形成し、前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられたものとしている。
【0011】さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止着して構成したものとしている。【0012】また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するようにしたものとしている。【発明の効果】【0013】よって、本発明の椅子式マッサージ機は、前記肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を有しており、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられており、前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、且つ、前記空洞部の前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に手掛け部が設けられており、前記手掛け部の下面部及び前記空洞部の底面部における上面部に膨縮袋が夫々設けられたものとしているため、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行う事ができる。【0014】すなわち、着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、前記内側立上り壁による前腕部内側の摺擦を回避しながら前記手掛け部に体重を掛けて行うことができる。【0015】加えて、前記空洞部において、前記各膨縮袋により施療者の手部を上下に挟圧するマッサージを実施する事ができる。
【0016】また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部を、前記空洞部の後方位置に設けられた外側立上り壁及び底面部で形成し、前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられたものとしているため、空洞部の後方位置でも前腕部に対するマッサージを実施する事ができる。【0017】さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止着して構成したものとする事により、外側立上り壁及び前腕挿入開口部の底面部の二面において、挟圧マッサージを実施する事ができる。【0018】また、前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するように構成する事により、背凭れ部のリクライニング角度に関係なく、肘掛部に設けた前記前腕部施療機構における前腕部の位置が可及的に変わらないようにする事ができ、安定した前腕部に対するマッサージを行う事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】【0019】以下に、本発明の椅子式マッサージ機を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。図1は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す斜視図であり、図2は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用時の斜視図であり、図3及び図4は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用時の右側面図であり、図5は本発明の椅子式マッサージ機における背凭れ部の一実施形態を示す横断面説明図であり、図6は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実施形態を示す使用時の平面説明図であり、図7乃至図12は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図であり、図13乃至図16は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実施形態を示す斜視説明図であり、図17は、本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用時の部分正面説明図であり、図18乃至図20は従来技術を示す参考図である。
【0020】すなわち、本発明の椅子式マッサージ機は、図1乃至図3の実施形態で示したように、施療者の臀部または大腿部が当接する座部11a、及び施療者の背部が当接する背凭れ部12aを有する椅子本体10aと、該椅子本体10aの両側部に肘掛部14aを有する椅子式マッサージ機1aであり、前記背凭れ部12aは、座部11aの後側にリクライニング可能に連結されると共に、座部11aの前側に上下方向へ揺動可能に連結した足載せ部13aを設け、また、背凭れ部12aの左右両側に前方に向かって突出した側壁部2aを夫々配設している。【0021】図1に示すように、前記背凭れ部12aには、その中央部に左右一対の施療子31aを備えた昇降自在の施療子機構3aを設けている。該施療子機構3aは、背凭れ部12aの内部左右に設けた左右一対のガイドレール32aに沿って背凭れ部12aの上端から下端にかけて昇降するようにしている。【0022】前記施療子機構3aは、モータ等を駆動源として前記左右一対の施療子31aを作動させる機械式のマッサージ機構であり、前記背凭れ部12aに凭れた施療者の首部、背部、腰部、臀部等の背面全域を、たたき、揉み、ローリング、振動、指圧などの多様な形態で施療するようにしたものである。
【0023】また、前記椅子式マッサージ機1aの各所定の位置には、空気の給排気により膨縮を繰り返す事が可能な膨縮袋4aを夫々埋設している。該膨縮袋4aは、エアーコンプレッサー及び各膨縮袋4aに空気を分配するための分配器等からなる空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行うようにしており、該空気給排装置42aは前記座部11aの下部空間に配備している。【0024】前記空気給排装置42aによる前記各膨縮袋4aの膨縮動作によって、施療者の所定の施療部位を押圧、指圧等を実施する事ができるものであり、また、複数の膨縮袋4aを対となるよう対設させた場合には、挟圧等の施療も行う事ができ、更に、各膨縮袋4aを膨張状態に保つようにした場合は、施療者の所定の部位を一定の時間保持する事も可能としている。【0025】また、前記椅子式マッサージ機1aには、前記背凭れ部12aの左右上部及び左右下部に夫々膨縮袋4aを適宜に適数設けられるものであり、これら膨縮袋4aを適位置に配設することより、施療者の背中及び腰部を押圧、または左右両側から挟圧するような施療を行うよう構成することができる。【0026】また、前記座部11aには、後部側に臀下部用、また腿部用の膨縮袋4aを夫々埋設して、主に下方から上方に押圧する施療を行うようにしている。【0030】本発明の椅子式マッサージ機1aは、図1及び図6に示すように、前記肘掛部14aに、前記肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部61aを有しており、また、該前腕挿入開口部61aから延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕部を挿入保持するための空洞部62aを設けている。【0031】さらに、前記椅子式マッサージ機1aは、前記空洞部62aの内部壁面621aの各所に施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構6aを設けて構成している。【0032】前記空洞部62aは、前記肘掛部14aの幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aと、底面部624aとから形成しており、該外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aの前記各内部壁面621aに、前腕部施療機構6aを設けている。尚、適宜底面部624aにも該前腕部施療機構6aを設ける事ができる。【0033】前記底面部624aは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面として形成されている。該底面部624aに手部や前腕部を載置した状態で、前腕部施療機構6aによる施療を実施できるようにしている。【0034】前記前腕部施療機構6aは、前記膨縮袋4aからなる形態のものでもよく、図6及び図7に示すように、施療者の手部と前腕部に対し夫々挟圧マッサージが行えるように、前記空洞部62aの長さ方向前後に左右一対の膨縮袋4a・4aを夫々設ける事ができる。すなわち、空洞部62aの長さ方向前側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、手部に対応し、また空洞部62aの長さ方向後側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、前腕部に対応するよう構成する事ができる。
【0035】さらに、手部に対応した前記左右一対の膨縮袋4aと、前腕部に対応した左右一対の前記膨縮袋4aとを、同時に、または交互に膨縮させるようにする事により、変化に富んだマッサージが実現できる。【0036】前記肘掛部14aの上面部には、前記空洞部62aを隔てて施療者の前腕部を載置しうるための載置面63aが形成されている。よって、施療者が前腕部施療機構6aによる施療を所望しない時に、該載置面63aに前腕部を載置しておく事ができる。該載置面63aは、前記底面部624aの位置より高いので、身長の高い施療者にとって便利な肘掛けとなる。【0037】図1に示すように、前記肘掛部14aには、前記外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aの上面前端部に、着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、体重を掛けるための手掛け部65aを設けている。すなわち、前記空洞部62aの先端部の上方を塞ぐような形態に手掛け部65aを形成している。【0038】また、図17に示すように、前記底面部624aと前記手掛け部65aとの各載置面は異なり、底面部624aよりも手掛け部65aの載置面の方が高い位置に形成されているため、施療者が着座状態から立ち上がろうとして、手掛け部65aを掴む際、既に前腕部は底面部624aから上方へ移動し、また、前記空洞部62aから脱出しているため、図18に示す従来の構成のように、前記内側立上り壁623aによる前腕部内側の摺擦を回避する事ができる。【0039】さらに、図13に示すように、前記手掛け部65aの下面部及び前記底面部624aの上面部に、前記膨縮袋4aを夫々設けて、手部を上下に挟圧するよう構成する事も可能である。【0040】このような、前記前腕部施療機構6aにおける手部に対する上下挟圧動作と、前述したような手部に対する左右からの挟圧動作とを、同時に、または交互に行うことにより、変化に富んだマッサージが可能となる。【0041】また、図13に示すように、前記底面部624aにおいて、手部に対応した前記左右一対の膨縮袋4aの他にも前腕部に対応した左右一対の前記膨縮袋4aの位置に、適宜前記膨縮袋4aを設ける事ができる。【0042】前腕部に対応した前記各左右一対の膨縮袋4aと、それに対応するよう底面部624aに設けられた膨縮袋4aとを、同時に、または交互に行うことにより、変化に富んだマッサージが可能となる。或いは、左右一対の膨縮袋4aを膨張保持させた状態で、底面部624aに設けられた膨縮袋4aを上方へ膨張させる事により、前腕部を安定させた状態で圧迫感のあるマッサージを実施する事ができる。【0043】また、図13に示すように、前記空洞部62aにおいて前腕部に対応した前記各膨縮袋4aよりも後方である位置に、前記膨縮袋4aを設けてもよい。この後方の位置に、前腕挿入開口部61aを設けているため、前記内側立上り壁623aは形成されていないが、図8に示すように、前記外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、互いに対設するよう膨縮袋4a・4aを設ける事ができる。【0044】この場合、図8に示すように、前記外側立上り壁622aの下部において、膨縮袋4aの下部の縁部41aを止着すると共に、前記底面部624aの外側立上り壁622a側に、もう一つの膨縮袋4aの外側立上り壁622a側の縁部41aを止着して構成してもよい。これにより、外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、挟圧マッサージを実施する事ができる。【0045】図13に示す前記前腕部施療機構6aは、前部に口型施療部66a、中部に凹型施療部67a、後部にL型施療部68aを夫々備えた構成にしたものを例示している。すなわち、口型施療部66aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a及び内側立上り壁623a、手掛け部65aにより口型に囲われた施療部であり、凹型施療部67aは、底面部624aと外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aにより凹型に形成する施療部であり、L型施療部68aは、底面部624aと外側立上り壁622aとによりL型に形成する施療部である。【0046】図14に示す形態は、前部に口型施療部66a、中部にコ型施療部69a、後部にL型施療部68aを夫々備えたものである。該コ型施療部69aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a、手掛け部65aによりコ型に形成する施療部となる。【0047】この形態は、特に前腕部の中腹に対する上下方向の挟圧を可能としている。また、手掛け部65aの面積が大きくなるため、施療者が手掛け部65a上面部に手を置いて起立または着座がし易くなる。【0048】また、図15に示すのは、前部及び中部に口型施療部66a、後部にL型施療部68aを夫々備えた構成であり、特に前腕部の中腹に対する施療をさらに充実させる形態のものである。【0049】図9に示すのは、前記口型施療部66aに設けた前記膨縮袋4aの、他の配置形態である。すなわち、下部を底辺とし上部を頂点とする三角型の空洞部62aの内面に夫々膨縮袋4aを設けている。このように構成する事により、図9に示すように手のひらを下にして載置したり、または図10に示すように手部を縦にして載置したりする事ができ、施療者の好みに応じられる。【0050】または、図11に示すように、前記空洞部62aを口型に形成すると共に、三角型になるよう複数の膨縮袋4aを連結し、膨縮袋4aで形成した三角型の内部に手部や前腕部を挿入する事も可能である。この場合、口型に形成した空洞部62aの内部で、自由に手部や前腕部を回転する事ができ、施療者は好みの姿勢で施療を受ける事ができる。【0051】或いは、口型に形成した空洞部62aの内部に、輪型の膨縮袋4aを設けてもよい。該輪型の膨縮袋4aは、図12に示すように手部や前腕部の周部を隈無く挟圧する事ができる。【0052】また、図4に示すように、前記肘掛部14aは、椅子本体10aに対して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部12aのリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部12aのリクライニング動作に連動して前記肘掛部14aが椅子本体10aに対して前後方向に移動するようにしている。【0053】すなわち、前記肘掛部14aの下部に前後方向に回動するための回動部141aを設けると共に、肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成している。【0054】または、図示しないが、前記回動部141aの代わりに、ガイドレールなどを採用した水平スライド機構を設けて、前記肘掛部14a全体が前記背凭れ部12aのリクライニング動作と連動して、水平にスライド移動するようにしてもよい。【0055】図1に示すように、前記空洞部62aの先端部には、前腕部施療機構6aを含めた全マッサージ機構の動作を停止するための安全停止スイッチ64aを備えている。該安全停止スイッチ64aを備える事により、例えば、施療者が前記椅子本体10aから即座に離れて避難する必要が生じるなどの緊急事態において、前記膨縮袋4aの挟圧により施療者の身体、または手腕や脚などの肢体が拘束されていたとしても、指先で安全停止スイッチ64aを操作して、直ちに膨縮袋4aの内部気圧を緩和させて、身体や肢体を離脱する事ができる。【0056】前記椅子式マッサージ機1aの操作を行うため、図1に示すように、リモートコントローラ等の操作部5aを前記背凭れ部12aの左右にある前記各側壁部2aのうち、片側前方に備えており、該操作部5aによって、電源の入切、前記施療子機構3aや前記空気給排装置42a及び各前記膨縮袋4aによる施療の種類や強度等の選択、また、前記背凭れ部12aのリクライニングや前記足載せ部13aの上下動の調節等、椅子式マッサージ機1aの全ての機能に対する操作を行うようにしている。尚、操作部5aの操作は、図示しないが、液晶画面等の操作表示部や操作ボタン、またはダイヤル等の操作指示部等で行うようにしてもよい。【0057】また、図16に示すように、前記空洞部62aの先端部に、前記操作部5aとは別に、操作具51aを取り付けて、操作部5aで行う操作を該操作具51aにて行い得るよう構成する事ができる。
【0058】前記操作具51aは、施療者が手部にて操作し易いレバー511a及び実行ボタン512aを備えたスティック方式のものを採用できる。該レバー511aは、前後方向または左右方向に動かすか、或いは四方または八方など、周囲に動かす事により、選択操作する事ができる形態のもので、前記操作部5aの前記液晶画面を確認しながら選択を行い、次いで実行ボタン512aを押して決定する事ができる。【0059】尚、前記操作具51aは、施療者の腕部の長さの違いに対応するため、前後にスライド調節するためのスライド調節手段513aを備えてもよい。該スライド調節手段513aは、図示しないが摺動レール及び摺動部材から構成する事ができる。また、必要に応じて、前記操作具51aに前記安全停止スイッチ64aを配備してもよい。【0060】さらに、前記操作部5aまたは前記操作具51aによる前記椅子式マッサージ機1aの操作に伴う制御は、電子制御であり、また、予めプログラムされたデータに基づく動作や、施療者が任意に入力したプログラムデータに基づいて動作するようにしてもよい。【0061】前記椅子式マッサージ機1aに関しては、これまで主に椅子型のものを示したが、これに限らず、例えば、他に少なくとも施療者の臀部または大腿部が当接する座部と施療者の背部が当接する背凭れ部を設けてなるマット型やベッド型にも上記の構成を適用する事ができ、そのような形態の場合は、該背凭れ部または座部の左右両側に、前述した前腕部施療機構6aを設けて構成する事ができる。
イ前記アの記載事項によれば、本件明細書Cには、本件発明C-1に関し、次のような開示があることが認められる。施療者の腕部をマッサージする前腕部施療機構として肘掛部の長さ方向全域に左右一対の立上り壁を設けた、従来の椅子式マッサージ機においては、施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成されているため、上腕部内側の肘関節付近を施療者側である内側立上り壁が圧迫して、施療者に不快感を与えたり、前腕部施療機構における腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があり、また、肘掛部の前端部にまで左右の立上り壁が形成されているため、肘掛部の前端部の上面部が開口された形態となり、着座した施療者が立ち上がる際又は着座する際、そのような部分に体重を掛けることは困難であるという問題があった(【0002】、【0004】ないし【0006】)。
一方で、肘掛部の前側上面部は立上り壁が形成されておらず、平坦になった部分を有する前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた、従来の椅子式マッサージ機においては、施療者が着座状態で人体手部を両肘掛部上面部に安定的に保持させることができるが、左右一対の立上り壁間に形成される凹部の底面部と、手掛け部としての平坦になった部分が同じ高さの同面であるため、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際、内側立上り壁によって上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、その付近と共に前腕部の内側が摺擦されながら、凹部から腕部が離脱する事になり、施療者に対して不快感を与えるという問題があった(【0003】、【0007】)。
「本発明」は、前記の問題点を解消し、施療者の腕部に対し、前腕部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもたらす要因を解消し、前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに行うよう構成すると共に、前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行うことができるよう構成した椅子式マッサージ機を提供することを目的とし、上記椅子式マッサージ機を提供することを課題とするものであり、その課題を解決するための手段として、「本発明」の椅子式マッサージ機は、前記肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を有しており、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられており、前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、且つ、前記空洞部の前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に手掛け部が設けられており、前記手掛け部の下面部及び前記空洞部の底面部における上面部に膨縮袋が夫々設けられたものとする構成を採用した(【0008】、【0013】)。
これにより「本発明」は、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効果を奏する(【0013】、【0014】)。争点2-1-1-1(本件発明C-1及びC-2の構成要件充足性)について
ア被告製品1及び2の構成被告製品1及び2が別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の2記載のとおりの構成及び記載のa、d、f、gの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。前記の認定事実と証拠(甲7、8、乙C15ないしC17、C25、C40)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1及び2は、次のaないしg の構成を有することが認められる。a座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に腕ユニットを有するマッサージチェアにおいて、b腕ユニットの内側後方から施療者の前腕部を挿入するための開口部が設けられ、該開口部から延設して腕ユニットの内部に手部を含む前腕部を挿入保持するための空間(前腕保持部)が設けられ、c前腕保持部は、腕ユニットの幅方向外側に設けられた外側壁面部及び底面部を有し、前部には、さらに腕ユニットの幅方向内側に設けられた内側壁面部を有し、d前腕保持部の前部には、内側壁面部と前記外側壁面部の上方に先端部上方を塞ぐ形態でアームレスト(レスト部)が設けられており、e腕ユニットが、e-1前部に底面部と外側壁面部と内側壁面部とアームレストとに囲われ、前腕保持部に位置する施療部と、e-2後部に底面部と外側壁面部により略L型に形成され、開口部に位置する略L型施療部とを備え、f前部には手プレスユニット(エアバッグ)、後部には前腕プレスユニット(エアバッグ)がそれぞれ設けられたgマッサージチェア。
イ被告製品1及び2の本件発明C-1の構成要件充足性「空洞部」(構成要件B、C)についてa被告製品1及び2が本件発明C-1の構成要件A、D、F及びGを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から、本件発明C-1の「空洞部」は、「肘掛部」に「前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するため」に設けられ(構成要件B)、「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」ていること(構成要件C)を理解できる。そして、「手部を含む前腕部」にいう「前腕」は、一般に、肘から手首までの部分(乙C6)を、「手部」にいう「手」は、一般に、手首から先の部分(乙C7)を意味する。一方で、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)には、「空洞部」を形成する「内側立上り壁」が空洞部の長さ方向全域に設けられる必要があることを規定した記載はない。次に、前記イ認定のとおり、本件明細書Cには、本件発明C-1に関し、施療者の腕部をマッサージする前腕部施療機構として肘掛部の長さ方向全域に左右一対の立上り壁を設けた、従来の椅子式マッサージ機においては、施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成されているため、上腕部内側の肘関節付近を施療者側である内側立上り壁が圧迫して、施療者に不快感を与えたり、前腕部施療機構における腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があり、また、肘掛部の前端部にまで左右の立上り壁が形成されているため、肘掛部の前端部の上面部が開口された形態となり、着座した施療者が立ち上がる際又は着座する際、そのような部分に体重を掛けることは困難であるという問題があり(【0002】、【0004】ないし【0006】)、また、肘掛部の前側上面部は立上り壁が形成されておらず、平坦になった部分を有する前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた、従来の椅子式マッサージ機においては、施療者が着座状態で人体手部を両肘掛部上面部に安定的に保持させることができるが、左右一対の立上り壁間に形成される凹部の底面部と、手掛け部としての平坦になった部分が同じ高さの同面であるため、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際、内側立上り壁によって上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、その付近と共に前腕部の内側が摺擦されながら、凹部から腕部が離脱する事になり、施療者に対して不快感を与えるという問題があったことから(【0003】、【0007】)、本件発明C-1は、施療者の腕部に対し、前腕部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもたらす要因を解消し、前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに行うよう構成すると共に、前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行うことができるよう構成した椅子式マッサージ機を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段として、前記肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を有しており、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられており、前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、且つ、前記空洞部の前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に手掛け部が設けられており、前記手掛け部の下面部及び前記空洞部の底面部における上面部に膨縮袋が夫々設けられたものとする構成を採用し(【0008】、【0013】)、これにより、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効果を奏すること(【0013】、【0014】)の開示がある。
また、本件明細書Cには、「空洞部」に関し、「本発明の椅子式マッサージ機1aは、図1及び図6に示すように、前記肘掛部14aに、前記肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部61aを有しており、また、該前腕挿入開口部61aから延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕部を挿入保持するための空洞部62aを設けている。」(【0030】)、「さらに、前記椅子式マッサージ機1aは、前記空洞部62aの内部壁面621aの各所に施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構6aを設けて構成している。」(【0031】)、「前記空洞部62aは、前記肘掛部14aの幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aと、底面部624aとから形成しており、該外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aの前記各内部壁面621aに、前腕部施療機構6aを設けている。尚、適宜底面部624aにも該前腕部施療機構6aを設ける事ができる。」(【0032】)、「前記前腕部施療機構6aは、前記膨縮袋4aからなる形態のものでもよく、図6及び図7に示すように、施療者の手部と前腕部に対し夫々挟圧マッサージが行えるように、前記空洞部62aの長さ方向前後に左右一対の膨縮袋4a・4aを夫々設ける事ができる。すなわち、空洞部62aの長さ方向前側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、手部に対応し、また空洞部62aの長さ方向後側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、前腕部に対応するよう構成する事ができる。」(【0034】)、「図1に示すように、前記肘掛部14aには、前記外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aの上面前端部に、着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、体重を掛けるための手掛け部65aを設けている。すなわち、前記空洞部62aの先端部の上方を塞ぐような形態に手掛け部65aを形成している。」(【0037】)、「また、図13に示すように、前記空洞部62aにおいて前腕部に対応した前記各膨縮袋4aよりも後方である位置に、前記膨縮袋4aを設けてもよい。この後方の位置に、前腕挿入開口部61aを設けているため、前記内側立上り壁623aは形成されていないが、図8に示すように、前記外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、互いに対設するよう膨縮袋4a・4aを設ける事ができる。」(【0043】)、「図13に示す前記前腕部施療機構6aは、前部に口型施療部66a、中部に凹型施療部67a、後部にL型施療部68aを夫々備えた構成にしたものを例示している。すなわち、口型施療部66aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a及び内側立上り壁623a、手掛け部65aにより口型に囲われた施療部であり、凹型施療部67aは、底面部624aと外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aにより凹型に形成する施療部であり、L型施療部68aは、底面部624aと外側立上り壁622aとによりL型に形成する施療部である。」(【0045】)、「図14に示す形態は、前部に口型施療部66a、中部にコ型施療部69a、後部にL型施療部68aを夫々備えたものである。該コ型施療部69aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a、手掛け部65aによりコ型に形成する施療部となる。」(【0046】)、「また、図15に示すのは、前部及び中部に口型施療部66a、後部にL型施療部68aを夫々備えた構成であり、特に前腕部の中腹に対する施療をさらに充実させる形態のものである。」(【0048】)との記載がある。そして、図8には、内側立上り壁が存在せず、外側立上り壁622a及び底面部624aによりL型に形成された空間に空洞部を表す符号「62a」が示されており、また、図14には、内側立上り壁が存在せず、底面部624a、外側立上り壁622a及び手掛け部65aによりコ型に形成された空間に空洞部を表す符号「62a」が示されている。一方で、本件明細書Cには、「空洞部」を形成する「内側立上り壁」が空洞部の長さ方向全域に設けられる必要があることについての記載や示唆はなく、かえって、上記のとおり、施療者の腕部をマッサージする前腕部施療機構として肘掛部の長さ方向全域に左右一対の立上り壁を設けた、従来の椅子式マッサージ機には、施療者側の内側立上り壁が上腕部内側の肘関節付近を圧迫して、施療者に不快感を与えたり、前腕部施療機構における腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があることの開示がある。以上の本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載を総合すれば、本件発明C-1の「空洞部」は、「肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成」され、かつ、「前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持」する部分であるが、その長さ方向全域に内側立上り壁が存在することを必須のものとするのではなく、その長さ方向の一部に内側立上り壁が存在する構成のものも、「空洞部」に該当するものと解される。bこれに対し、被控訴人は、①本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から、本件発明C-1の「空洞部」が後方にある「挿入開口部」から延設されて隣接し、「手部を含む前腕部」を挿入できるものであって、「外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」ている必要があるから、本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいい、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものをいう、②本件明細書Cの記載によれば、内側立上り壁と外側立上り壁に蓋をする形で設けることにより、「起立及び着座時の内側立上り壁による前腕部の摺擦を回避する」ものであるから、本件発明C-1の「空洞部」は、少なくとも前腕部の一部にまで「内側立上り壁」が及んでいなければならない、③本件出願Cに係る本件補正によって、本件発明C-1の「空洞部」は、「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」たものに限定され、本件明細書Cの図14の「コ型」の形態の肘掛部は、本件発明C-1の「空洞部」に含まれない構成となったが、他方で、本件明細書Cに【0046】の記載や図14が存在するのは、本件上申書(乙C10)及び本件意見書(乙C12)の記載に照らすと、本件出願Cの出願又は本件補正の際に、補正等がされなかった結果にすぎないし、また、図8における「62a」との記載は、「空洞部62a」の「後方位置」にある「前腕挿入開口部」を示すに当たり、「空洞部62a」を仮想線で示したものにすぎないから、「空洞部」に「内側立上り壁」を備えない部分があることを示したものではないなどとして、本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいい、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味する旨主張する。しかしながら、①及び②については、前記aで説示したとおり、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載から、本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいうものと解することはできないし、また、施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味すると解することもできない。次に、③については、控訴人及びしげるテックが本件出願Cの出願時に提出した本件上申書(乙C10)には、「変更箇所においては、原出願の分割直前の明細書の[0032]、[0033]、[0034]、[0037]及び図面[図1]~[図4]、[図6]、[図7]、[図13]、[図16]に記載された事項に基づく発明を新たに追加記載したものである」との記載があるところ、本件上申書は、本件出願Cが分割の実体的要件を満たすことを説明すること等を目的とするものであって、本件出願Cに係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないこと、上記記載部分は、本件出願Cの特許請求の範囲、明細書又は図面に記載された事項が、原出願の分割直前の特許請求の範囲、明細書又は図面に記載された事項の範囲内にあることを説明したものと認められ、上記記載部分に掲げられていない明細書の段落や図面に記載された実施例について本件出願Cに係る特許発明の技術的範囲から除外する意思が表れているとはいえない。また、本件補正によって、空洞部の一部をコ型施療部とする構成を有する本件発明C-2の特許請求の範囲(請求項2)を追加し、さらに、本件補正と同時に提出した本件意見書(乙C12)において、請求項1の補正内容に関し、「「肘掛部が、前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部と、後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え」ることは、本願明細書の【0045】及び【0046】欄に記載しています」と述べて、本件明細書Cの【0046】を引用して本件補正が新規事項の追加には当たらない旨を説明していることに鑑みると、控訴人が、本件補正によって、本件発明C-1の特許請求の範囲から、空洞部の一部にのみ内側立上り壁が存在する実施態様を意識的に除外したものと認めることはできない。そうすると、本件特許Cの出願経過を考慮しても、本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいうものと解すべき理由はない。以上によれば、被控訴人の上記主張は採用することができない。cそこで、被告製品1及び2が本件発明C-1の「空洞部」を有するかどうか検討する。被告製品1及び2は、前記アのaないしgの構成を有するところ、被告製品1及び2の「腕ユニット」、「外側壁面部」、「内側壁面部」、「底面部」、「アームレスト(レスト部)」及び「(手・前腕)プレスユニット」は、本件発明C-1の「肘掛部」、「外側立上り壁」、「内側立上り壁」、「底面部」、「手掛け部」及び「膨縮袋」にそれぞれ相当するものと認められる。
そして、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の図4及び5の写真に示すように、被告製品1及び2の構成bの「前腕部を挿入するための開口部から延設して腕ユニットの内部に手部を含む前腕部を挿入保持するための空間(前腕保持部)」(別紙1の図5記載の点線⒞付近から前方(点線方向)部分)は、全体にわたって底面部と外側立上り壁が存在し、その前部には、内側立上り壁も存在し、底面部と外側立上り壁と内側立上り壁と先端部上方を塞ぐアームレストによりロ型の空間が形成されていることが認められる。そうすると、被告製品1及び2の前腕保持部は、全体にわたって底面部と外側立上り壁が存在し、「前腕部を挿入するための開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持」する部分であって、その前部は、「肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成」され、その長さ方向の一部に内側立上り壁が存在するから、本件発明C-1の「空洞部」に相当するものと認められる。これに反する被控訴人の主張は採用することができない。
「前腕挿入開口部」(構成要件B)についてa本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から、本件発明C-1の「前腕挿入開口部」は、「肘掛部」に「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」に設けられた開口部であって、「前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するため」の「空洞部」が設けられていること(構成要件B)を理解できる。そして、「延設」とは、「延ばし設けること」を意味することに照らすと、「前腕挿入開口部から延設して」とは、「前腕挿入開口部」を起点として延ばし設けられていることを理解できるから、本件発明C-1の「空洞部」は、「前腕挿入開口部」を起点とするものであり、「前腕挿入開口部」は「空洞部」の一部を構成することを理解できる。次に、本件明細書Cには、「前腕挿入開口部」に関し、「本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部を、前記空洞部の後方位置に設けられた外側立上り壁及び底面部で形成し、前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられたものとしているため、空洞部の後方位置でも前腕部に対するマッサージを実施する事ができる。」(【0016】)、「本発明の椅子式マッサージ機1aは、図1及び図6に示すように、前記肘掛部14aに、前記肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部61aを有しており、また、該前腕挿入開口部61aから延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕部を挿入保持するための空洞部62aを設けている。」(【0030】)、「また、図13に示すように、前記空洞部62aにおいて前腕部に対応した前記各膨縮袋4aよりも後方である位置に、前記膨縮袋4aを設けてもよい。この後方の位置に、前腕挿入開口部61aを設けているため、前記内側立上り壁623aは形成されていないが、図8に示すように、前記外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、互いに対設するよう膨縮袋4a・4aを設ける事ができる。」(【0043】)との記載があり、また、図6には、空洞部62aの後方において、前腕挿入開口部61aが存在することが示されている。
上記記載によれば、本件明細書Cには、「前腕挿入開口部」は、「空洞部の後方」において「外側立上り壁及び底面部で形成」され、「空洞部」の一部を構成することの開示があることが認められる。以上の本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載によれば、本件発明C-1の「前腕挿入開口部」は、「肘掛部」に「内側後方から施療者の手部を含む前腕部を挿入するため」に設けられた開口部であって、「空洞部」の一部を構成する部分であるものと解される。bそして、被告製品1及び2の構成bの「開口部」(別紙1の図5記載の点線⒞付近)は、「肘掛部」に「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」に設けられた開口部であって、「空洞部」の一部を構成する部分であるから、本件発明C-1の「前腕挿入開口部」に相当するものと認められる。cこれに対し、被控訴人は、被告製品1及び2の開口部は、内側側方から施療者の前腕部を挿入するものであり、「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」に設けられた開口部とはいえないから、本件発明C-1の「前腕挿入開口部」に当たらない旨主張する。しかしながら、被告製品1及び2は、「腕保持部の前部には、内側壁面部と前記外側壁面部の上方に先端部上方を塞ぐ形態でアームレスト(レスト部)が設けられて」(構成d)いるため、構成bの「開口部」に「腕ユニットの側方から手部を含む前腕部を挿入する場合においても、内側後方から前方に向けて、手部を含む前腕部を挿入する動作を伴うから、構成bの「開口部」は、「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」に設けられた開口部に相当するものである。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。構成要件B及びCの充足性以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C-1の「空洞部」及び「前腕挿入開口部」を備えるから、構成要件B及びCを充足する。構成要件E-1及びE-2の充足性被告製品1及び2の「腕ユニット」、「外側壁面部」、「内側壁面部」、「底面部」、「アームレスト(レスト部)」、「前腕保持部」及び「開口部」は、本件発明C-1の「肘掛部」、「外側立上り壁」、「内側立上り壁」、「底面部」、「手掛け部」、「空洞部」及び「前腕挿入開口部」に相当することは、前記及び認定のとおりである。そうすると、被告製品1及び2の構成e-1の「腕ユニット」の「前部に底面部と外側壁面部と内側壁面部とアームレストとに囲われ、前腕保持部に位置する施療部」及び構成e-2の「腕ユニット」の「後部に底面部と外側壁面部により略L型に形成され、開口部に位置する略L型施療部」は、本件発明C-1の構成要件E-1(「前記肘掛部」の「前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部」)の構成及び構成要件E-2(「後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部及び構成要件E-2」)の構成にそれぞれ相当するものと認められる。これに反する被控訴人の主張は採用することができない。まとめ以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C-1の構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。
ウ被告製品1及び2の本件発明C-2の構成要件充足性被告製品1及び2が本件発明C-1の構成要件を全て充足することは、前記イ認定のとおりであり、また、被告製品1及び2が本件発明C-2の構成要件Iを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。
証拠(甲7、8、乙C15ないしC17、C25、C40)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1及び2は、「腕ユニットは、中部に、底面部と外側壁面部と、後方に向かうにしたがって幅の狭くなるアームレストにより、略コ型に形成された施療部」との構成(構成h)を有することが認められる。
本件発明C-2の特許請求の範囲(請求項2)の記載から、構成要件Hの「施療部」は、「肘掛部」の「中部」に「前記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部によりコ型に形成された」構成であることを理解できる。
一方で、本件発明C-2の特許請求の範囲(請求項2)には、「コ型」の施療部を形成する底面部、外側立上り壁及び手掛け部の形状を規定する記載はない。また、本件明細書Cには、「図14に示す形態は、前部に口型施療部66a、中部にコ型施療部69a、後部にL型施療部68aを夫々備えたものである。該コ型施療部69aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a、手掛け部65aによりコ型に形成する施療部となる。」(【0046】)、「この形態は、特に前腕部の中腹に対する上下方向の挟圧を可能としている。また、手掛け部65aの面積が大きくなるため、施療者が手掛け部65a上面部に手を置いて起立または着座がし易くなる。」(【0047】)との記載があるが、特許請求の範囲(請求項2)の記載と同様に、「コ型」の施療部を形成する底面部、外側立上り壁及び手掛け部の形状を特定の形状のものに限定する記載はない。そして、被告製品1及び2の「腕ユニット」、「底面部」、「外側壁面部」及び「アームレスト」は、本件発明C-2の「肘掛部」、「底面部」、「外側立上り壁」及び「手掛け部」にそれぞれ相当することからすると、被告製品1及び2の構成hの「略コ型に形成された施療部」は、構成要件Hの「施療部」に相当するものと認められる。これに反する被控訴人の主張は採用することができない。
以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C-2の構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。争点2-1-1-2(本件発明C-3ないしC-5の構成要件充足性)について
ア被告製品1の本件発明C-3及びC-4の構成要件充足性被告製品1が本件発明C-1の構成要件を全て充足することは、前記イ認定のとおりである。証拠(甲7、8、乙C15、C16、C40)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1は、次のk及びlの構成を有することが認められる。k開口部の外側壁面部及び底面部の二面において互いに対設する位置に、外側壁面部側に外壁エアバッグ1及び外壁エアバッグ2が、底面部側に底壁エアバッグがそれぞれ設けられており、l外側壁面部の内側面に形成された突出部の頂面に外壁エアバッグ1の下部の縁部を止着するとともに、底面部の外側壁面部側に、外壁エアバッグ2及び底壁エアバッグの外側壁面部側の縁部を止着している。a本件発明C-3の特許請求の範囲(請求項3)の記載から、本件発明C-3の「外側立上り壁」(構成要件K)とは、肘掛部の幅方向外側に設けられた壁であると解される。また、構成要件Lの「前記外側立上り壁の下部」とは、外側立上り壁の全体を上下方向に観察した場合の下半分の位置を指すものと解される。b被告製品1は、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載3のとおり、外側立上り壁に当たる「外側壁面部」に外壁エアバッグ1が、底面部に底壁エアバッグが設けられており、外側壁面部の内側面に形成された突出部の頂面に外壁エアバッグ1の下部の縁部が止着されているところ(構成k、l)、「突出部」は外側壁面部の内側面に設けられた膨らみのある部分であって、その位置関係及び形状から、「外側立上り壁」の一部を構成するものと評価できる。そして、突出部の頂面は、内側立上り壁の下端ではないものの、外側立上り壁の全体を上下方向に観察した場合の下半分すなわち下部に位置するということができるから、外側立上り壁の下部に外壁エアバッグ1の下部の縁部が止着されているといえる。また、底面部の外側立上り壁にもう一つの膨縮袋である底壁エアバッグの外側壁面部側の縁部が止着されている。そうすると、被告製品1は、本件発明C-3の構成要件K及びLを充足する。cこれに対し、被控訴人は、①被告製品1は、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載3に示すように、底壁エアバッグの縁部と外壁エアバッグ2の縁部は、底面部の外側壁面部側の箇所に止着され、また、外壁エアバッグ1は、突出部の頂面に止着されており、外側壁面部自体には止着されておらず、突出部は、外側壁面部と内部壁面とからなるものではないから、本件発明C-3の「外側立上り壁」(構成要件K)に含まれない、②突出部の頂面は、同別紙記載4のとおり、外側壁面部を構成する外壁と上壁のうち、外壁の「中央部」付近に位置しているから、外壁エアバッグ1は、構成要件Lの「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着する」との構成を備えておらず、また、外壁エアバッグ2も、底面部に止着されているから、上記構成を備えていないとして、被告製品1は、本件発明C-3の構成要件K及びLを充足しない旨主張する。
しかしながら、前記bの認定に照らし、被控訴人の上記主張は採用することができない。以上によれば、被告製品1は、本件発明C-3の構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。また、被告製品1は、前記と同様の理由により、本件発明C-4の構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。
イ被告製品2の本件発明C-3及びC-4の構成要件充足性被告製品2が本件発明C-1の構成要件を全て充足することは、前記イ認定のとおりである。証拠(甲8、乙C15ないしC17、C25)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品2は、次のk’及びl’の構成を有することが認められる。k’開口部の外側壁面部及び底面部の二面において互いに対設する位置に、外側壁面側に外壁エアバッグ1及び外壁エアバッグ2が、底面部側に底壁エアバッグが設けられているが、外壁エアバッグ1、外壁エアバッグ2及び底壁エアバッグはいずれも、前腕の延出方向に沿って二分割されており、l’外側壁面部の内側面に形成された突出部の頂面に外壁エアバッグ1及び外壁エアバッグ2の下部の縁部を止着するとともに、底面部の外側壁面部側に、底壁エアバッグの外側壁面部側の縁部を止着している。a被告製品2の構成k’及びl’の「突出部」は、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載5のとおり、外壁エアバッグ1及び2が突出部にそれぞれ止着されている。そして、上記突出部は、外側立上り壁に相当する「外側壁面部」の内側面に形成された膨らみのある部分であって、「外側立上り壁」の一部を構成するものと認められるから、突出部の頂面は「外側立上り壁の下部」に当たる。そうすると、被告製品2は、本件発明C-3の構成要件K及びLを充足する。bこれに対し、被控訴人は、被告製品2は、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載5及び6に示すように、外壁エアバッグ1及び2は、突出部の頂面に止着されているが、突出部は、本件発明C-3の「外側立上り壁」(構成要件K)に含まれず、また、突出部の頂面は、同別紙記載6のとおり、外側壁面部を構成する外壁と上壁のうち、外壁の「中央部」付近に位置しているから、外壁エアバッグ1及び2は、構成要件Lの「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着する」との構成を備えていないとして、被告製品2は、本件発明C-3の構成要件K及びLを充足しない旨主張する。しかしながら、前記aの認定に照らし、被控訴人の上記主張は採用することができない。以上によれば、被告製品2は、本件発明C-3の構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。また、被告製品2は、前記と同様の理由により、本件発明C-4の構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。
ウ被告製品1及び2の本件発明C-5の構成要件充足性被告製品1及び2が本件発明C-1の構成要件を全て充足することは、前記イ認定のとおりであり、また、被告製品1及び2が本件発明C-5の構成要件Pを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。そうすると、被告製品1及び2は、本件発明C-5の構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。小括以上のとおり、被告製品1及び2は、本件各発明Cの技術的範囲に属する。
4争点2-2(本件特許Cに係る無効の抗弁の成否)について(本件特許C関係)無効理由1(乙C19を主引用例とする本件各発明Cの進歩性欠如)について
ア乙C19の記載事項について乙C19(特開2005-287831号公報)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし3、16ないし21、36ないし38については別紙6を参照)。a【特許請求の範囲】【請求項1】座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の背凭れ部両側に、施療者両脇部を両側から挟持状に保持して施療し得る脇部保持手段、或いは施療者両脇部を保持して上方へ持上げ可能に保持し得る脇部持上手段の少なくとも一以上を配備した事を特徴とする施療機。
【請求項2】座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の両肘掛部の内側に肘挿入用凹溝を備えると共に、各肘挿入用凹溝に、肘部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備した事を特徴とする施療機。b【技術分野】【0001】本発明は、人体に対して様々な施療を快適に実施する事ができるようにした椅子式の施療機に関するものである。【背景技術】【0002】従来から、人体の様々な部位を施療する事ができる施療機として、例えば図36及び図37に示したような椅子や、図38に示したような手揉機能付施療機がある。【0003】図36及び図37に示した椅子は、座部11と起伏可能な背凭れ部12と挿入用凹溝28を左右に夫々備えた足載部3と座部11左右に配置された肘掛部11cとを有する椅子本体2において、座部11と背凭れ部12と足載部3の左右に配置された挿入用凹溝28とには、それぞれ空気供給装置4から給排気される圧縮空気により膨縮する膨縮袋16~20、26、27が夫々備えており、背凭れ部12においては主に人体の胴部裏側を施療する事ができ、また足載部3では主に脹ら脛部を施療でき、座部11においては主に大腿部を夫々施療する事ができるように構成している。【0004】また、前記背凭れ部12には、背もたれ部12が起立位置から座面に対して略150度の角度で倒れる起倒範囲では人体の脇の下に引っ掛ることがなく、背もたれ部12が前記略150を超えて倒れた時に人体の脇の下に引っ掛ることができるようにすべく、背もたれ部12の下部寄りに配設された係合凸部51が設けられており、背もたれ部12が略150度以上倒された時点から、脇係合凸部51が着座者の脇の下に引っ掛って、下腿が足載せ台3に拘束された着座者をその頭部方向に引っ張るように構成し、ストレッチ作用をも実施する事ができるようにしている。(特許文献1)【0005】また、図38に示したような手揉機能付施療機は、前記椅子のような人体の胴部や脚部の施療の他に、人体腕部或いは肘部を施療可能なものとしたものであり、該手揉機能付施療機は、背凭れ部と座部と肘掛部21とからなる椅子本体2の該肘掛部21に、それぞれ上面外側に立上り壁211を設けると共に該立上り壁211及び肘掛部21の上面に空気供給装置4により膨縮する膨縮袋12を夫々配設しており、肘掛部21の上面に載置された人体腕部或いは肘部を挟持状に保持しつつ膨縮袋12にて施療を実施するように構成している。(特許文献2)【発明が解決しようとする課題】【0006】ところで、上記特許文献1のような従来の椅子は、施療者の脇の下位置で施療動作を行なわない一対の係合凸部が背凭れ部表面両側の固定位置で常時突出状に配置されているため、背凭れ部を後方へ倒伏させて係合凸部による脇部持上げを行う時以外には邪魔で不要なものであり、しかも、施療者が着座した場合に、背中の位置がこの背凭れ部の中央部に位置するよう着座した場合は問題ないのであるが、施療者が不意に背凭れ部の中央から外れて係合凸部上に凭れてしまった場合には、該凸部が人体背部或いは腰部等に激突して痛み等による不快感を与えたり大怪我をしたりする可能性が高いものである。このような可能性は、特に骨粗鬆症等の多い高齢者にとっては、最も危険度の高いものである。【0007】また、特許文献1のような従来の椅子は、一対の係合凸部が背凭れ部表面両側の固定位置で常時突出状に配置されている為、見栄えが悪くデザイン上の問題においても芳しくないものであり、しかも、係合凸部は施療者の座高の違いによっても適応できないものであり、座高が長身の施療者にとっては該凸部の脇部における引っ掛かり具合が甘くなり、逆に座高が短身の施療者にとっては引っ掛かり具合が強すぎて不具合を生じるという問題もある。【0009】次に、上記特許文献2のような従来の手揉機能付施療機は、椅子本体肘掛部の上面に人体腕部或いは肘部を挟持状に保持して施療を実施するための立上り壁を設けているので、腕部或いは肘部に心地良い施療が行なえるのであるが、腕部或いは肘部の施療を望まない場合や肘掛部に肘を単に載せたい場合には、これが邪魔になって不快感を与える可能性があり、また、見栄えも悪くデザイン上の問題もあった。【0010】本発明は上記各種の問題点に鑑みて、各問題点を解消すると共に各施療者の個人差にも適応できる施療を行なわせ、且つ、更なる新規の施療効果や利便性を有する優れた施療機を提供する事を目的とするものである。c【課題を解決するための手段】【0011】すなわち、本発明の請求項1の施療機は、座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の背凭れ部両側に、施療者両脇部を両側から挟持状に保持して施療し得る脇部保持手段、或いは施療者両脇部を保持して上方へ持上げ可能に保持し得る脇部持上手段の少なくとも一以上を配備した事を特徴とするものである。
【0012】また、本発明の請求項2の施療機は、座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の両肘掛部の内側に肘挿入用凹溝を備えると共に、各肘挿入用凹溝に、肘部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備した事を特徴とするものである。d【発明の効果】【0018】よって、本発明の請求項1の施療機では、座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体の背凭れ部両側に、施療者両脇部を両側から挟持状に保持して施療し得る脇部保持手段、或いは施療者両脇部を保持して上方へ持上げ可能に保持し得る脇部持上手段の少なくとも一以上を配備したものであるため、脇部保持手段によって施療者の両胴部乃至両脇部を安定させた状態で効果的に保持して胴部乃至脇部の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を施す事ができると共に、脇部持上手段によって安定させた状態で施療者の両胴部乃至両脇部を上方へ保持するよう持上げて肩部の持上げ施療をも施す事ができ、しかもこれによる上半身のストレッチ作用をも同時にもたらす事ができる。【0021】本発明の請求項2の施療機は、座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体の両肘掛部の内側に、肘挿入用凹溝を備えると共に各肘挿入用凹溝に肘部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備したものであるため、施療者が肘部や腕部及び手部の施療を施したい場合には、肘挿入用凹溝内に施療者の肘部や腕部及び手部を挿入して、肘部挟持手段による安定した施療部位の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を効果的に施す事ができる。【0022】また、本発明の請求項2の施療機は、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備えているので、従来のように肘掛部上部に肘や腕を持上げて施療する必要が無く、リラックスした姿勢で肘部や腕部及び手部の施療部位の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を適宜に施療できる。【0023】更に、本発明の請求項2の施療機は、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備えており、肘掛部上部には従来の立上り壁のような障害となるものを設けていないため、施療者が単に肘掛部に肘部を載置させたい場合においても、通常の椅子と同様にリラックスした着座姿勢で肘部や腕部及び手部を載置させる事ができる。e【0036】図1乃至図3は、本発明の施療機1aに使用される椅子本体2aの一実施形体を示したものであり、該椅子本体2aは、施療者が着座する座部3aと、該座部3a後方に配備され、進退機構51aの進退動作に連動して起倒自在に移動する背凭れ部5aが取り付けられており、且つ前記座部3aの前方下部には足載部4aが進退機構41aの進退動作と連動して出没自在に取付けられ、前記座部3aの左右両側には肘掛部6aを夫々設けて椅子型に形成されたものとしている。
【0070】図16乃至図21は、他の実施形態を示したものであり、本発明の施療機1aの前記椅子本体2aの背凭れ部5aに、前記脇部保持機構53a及び前記脇部持上機構54aを設けると共に、椅子本体2aの左右に夫々設けられた肘掛部6aの内側に各々肘挿入用凹溝61aを設けると共に背凭れ部5a左右には、上腕肩部挿入用凹溝63aを夫々設けたものを例示している。【0071】前記各肘挿入用凹溝61aには、施療者の肘部や腕部及び手部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)を配備しており、図17に示すように施療者が肘部や腕部及び手部の施療を所望する際に該肘挿入用凹溝61aに肘部等の施療部位を挿入するだけで施療を受けられるように構成している。【0072】前記肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)は、各肘挿入用凹溝61aに、空気供給装置7aにより膨縮する膨縮袋等を配置しており、その膨縮は上記と同様に、操作リモコン8aや肘掛部6aの内部に設けている制御回路84aにより制御されるようにしており、肘部挟持機構62aにより、図20に示すような肘部や腕部及び手部等の周部を挟圧保持または挟圧膨縮して心地よい施療を施す事ができる。【0073】図16及び図17は、前記肘部挟持機構62aが、手部を施療する手部施療部621aと、前腕部を施療する前腕部施療部622aと、肘周部を施療する肘部施療部623aとに分割して配備された肘部挟持機構62aである場合を例示しており、施療者が所望する施療部位に応じて夫々が前記制御回路84aにより制御され、挟圧反復膨縮やアトランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持等の膨縮動作を実施するようにする事ができ、施療者の受ける施療が最適な効果をもたらすものとなるよう、例えば、適宜の設定プログラムや入手プログラムによる設定施療コースや選択施療コースに基づき制御回路84aで制御され、挟圧反復膨縮やアトランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持等の膨縮動作を自動実行或いは選択実行させる事ができる。
【0074】図21に示すように、施療者肘部を前記肘挿入用凹溝61aに挿入すると共に、前記肘部挟持機構62aにて施療者肘部を膨縮保持した状態を保ちながら、前記背凭れ部5aを後方へ倒伏させた場合、図中の延び分Wで表すように、その延び分Wの範囲で施療者の腕部全体をストレッチする事ができ、また、前記脇部保持機構53aや前記脇部持上機構54aと併用すれば、各機構62a・53a・54aの各作用に加えてこれらの相乗効果を有する各種施療作用をもたらす事ができる。【0075】また、上記したように、図16乃至図20には、前記背凭れ部5aの左右両側の施療者上腕部及び肩部付近に位置する前記上腕肩部挿入用凹溝63aが夫々設けられており、該上腕肩部挿入用凹溝63aには、施療者上腕部及び肩部付近を挟持状に保持して施療し得る上腕肩部挟持機構64a(上腕肩部挟持手段)を配備しており、図17に示すように、施療者が上腕部または肩部付近の施療を所望する際に該上腕肩部挟持機構64aの上腕肩部挿入用凹溝63aに上腕部または肩部付近を挿入するだけで施療を受けられるよう構成している。【0076】前記上腕肩部挟持機構64a(上腕肩部挟持手段)は、該上腕肩部挿入用凹溝63aに前記空気供給装置7aにより膨縮する膨縮袋等を配置したものであり、図18に示すように、上腕部の周部または肩部付近を挟圧保持または挟圧膨縮施療を実施する事ができる。【0077】図16及び図17に示す実施形態では、前記上腕肩部挟持機構64aを、施療者肩付近を施療する肩部施療部641aと、施療者上腕部を施療する上腕部施療部642aとに分割した上腕肩部挟持機構64aを例示しており、これにおいても、施療者が所望する施療部位に応じて夫々が前記制御回路84aにより制御され、挟圧反復膨縮やアトランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持等の膨縮動作を実施するようにする事ができ、施療者の受ける施療が最適な効果をもたらすものとなるよう、例えば、適宜の設定プログラムや入手プログラムによる設定施療コースや選択施療コースに基づき制御回路84aで制御され、挟圧反復膨縮やアトランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持等の膨縮動作を自動実行或いは選択実行させる事ができるようにしている。【0078】尚、前記肘部挟持機構62a及び前記上腕肩部挟持機構64aを利用しない場合においては、通常の椅子と同様に肘掛部6aの上部や背凭れ部5a前面には突出物や突出壁がないため邪魔になる事はなく、上面に施療者の肘部を容易に載置してリラックスできると共に、施療者の背部に当接して不快感を与えたり着座時に衝撃を与えたりする事もなく、見栄えが良く綺麗な状態で維持されるものでる。前記の記載事項によれば、乙C19には、次のような開示があることが認められる。a施療者の脇の下位置で施療動作を行なわない一対の係合凸部が背凭れ部表面両側の固定位置で常時突出状に配置されている従来の椅子式の施療機は、係合凸部が人体背部或いは腰部等に激突して痛み等による不快感を与えたり、大怪我をしたりする可能性が高い、見栄えが悪くデザイン上の問題においても芳しくない、係合凸部は施療者の座高の違いによっても適応できないなどの問題があり、また、椅子本体肘掛部の上面に人体腕部或いは肘部を挟持状に保持して施療を実施するための立上り壁を設けている従来の手揉機能付施療機は、腕部或いは肘部の施療を望まない場合や肘掛部に肘を単に載せたい場合には、立上り壁が邪魔になって不快感を与える可能性があり、見栄えも悪くデザイン上の問題もあった(【0002】ないし【0007】、【0009】)。b「本発明」は、前記各種の問題点に鑑み、各問題点を解消すると共に各施療者の個人差にも適応できる施療を行わせ、かつ、更なる新規の施療効果や利便性を有する優れた施療機を提供することを目的とし、課題とするものであり、この課題を解決するための手段として、「本発明」の請求項2の施療機は、座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の両肘掛部の内側に肘挿入用凹溝を備えると共に、各肘挿入用凹溝に、肘部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備した構成を採用した(【0010】、【0012】)。これにより「本発明」の請求項2の施療機は、施療者が肘部や腕部及び手部の施療を施したい場合には、肘挿入用凹溝内に施療者の肘部や腕部及び手部を挿入して、肘部挟持手段による安定した施療部位の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を効果的に施すことができ、また、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備えているので、従来のように肘掛部上部に肘や腕を持上げて施療する必要が無く、リラックスした姿勢で肘部や腕部及び手部の施療部位の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を適宜に施療でき、さらに、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備えており、肘掛部上部には従来の立上り壁のような障害となるものを設けていないため、施療者が単に肘掛部に肘部を載置させたい場合においても、通常の椅子と同様にリラックスした着座姿勢で肘部や腕部及び手部を載置させることができるという効果を奏する(【0021】ないし【0023】)。
イ乙C20の記載事項について乙C20(特開2005-28045号公報)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし12については別紙7を参照)。【特許請求の範囲】【請求項1】座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、前記座部の側方に備わった肘掛け部と、前記肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるように前記肘掛け部から立設されたトンネル状支持体と、前記トンネル状支持体の内面に設けられて膨張・収縮するマッサージ用エアセルと、を備えていることを特徴とするマッサージ機。【技術分野】【0001】本発明は、マッサージ機、マッサージ具及びマッサージ方法に関するものである。
【背景技術】【0002】マッサージ機には、空気の給排により膨張・収縮するエアセルを備えた空気式のものが存在する。エアセルは、椅子の背もたれ部、座部、又は脚載部に配置されるのが一般的である。
特許文献1には、空気によって伸縮する蛇腹状の伸縮筒を肘掛け上部に配置したものが記載されている。この場合、被施療者の手を上方に押圧することになる。【発明が解決しようとする課題】【0003】手は、胴体に比べて軽いため、肘掛けから上方に向けて押圧すると、手が上方に逃げて十分なマッサージ感が得られないことがある。そこで、本発明の課題は、手を確実にマッサージすることにある。【課題を解決するための手段】【0004】本発明は、座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、前記座部の側方に備わった肘掛け部と、前記肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるように前記肘掛け部から立設されたトンネル状支持体と、前記トンネル状支持体の内面に設けられて膨張・収縮するマッサージ用エアセルと、を備えていることを特徴とするマッサージ機である。肘掛け部にトンネル状支持体が設けられているため、手を簡単にトンネル状支持体内部にいれることができる。そして、トンネル状支持体の内部に入れられた手に対してトンネル状支持体内面に設けられたエアセルによってマッサージを行うため、手の逃げが防止され、手を確実にマッサージすることができる。【0005】前記トンネル状支持体は、前後方向両側が開口しており、後方の開口から手を挿入可能であって、前方の開口から指先を出すことが可能であるのが好ましい。この場合、指先をトンネル状支持体の前方から出すことができるため、指先が自由となって拘束感を低減させることができる。【0006】前記マッサージ用エアセルは、膨張することにより手を前記肘掛け部に押し付け可能であるのが好ましい。トンネル状支持体の内面から肘掛け部に押し付けるようにマッサージすることで、簡単な構成で手の逃げを防止でき確実なマッサージが行える。【0007】前記肘掛け部には、前記マッサージ用エアセルによって押し付けられた手に対して指圧を行う指圧子が設けられているのが好ましい。エアセルによる押付力を利用して指圧を行うことで、手に対する効果的な指圧が行える。【0008】前記肘掛け部には、前記マッサージ用エアセルによって押し付けられた手に対して振動マッサージを施す振動発生装置が設けられているのが好ましい。エアセルによって押し付けられたときに振動を発生すると振動が効率よく手に伝達され、振動マッサージ効果が高まる。【0009】前記トンネル状支持体は、トンネル状の外側部材と、前記外側部材の内側であって当該外側部材との間に空間を保って設けられた内側部材と、を備え、前記マッサージ用エアセルは、前記内側部材に取り付けられ、前記外側部材と前記内側部材との間の空間は、当該マッサージ用エアセルへ空気を供給するための配管が設置される配管用空間であるのが好ましい。この場合、エアセルへの配管を通すためのスペースがトンネル状支持体内に確保できる。【0010】前記トンネル状支持体は、前後移動可能に設けられているのが好ましい。トンネル状支持体が前後移動可能であれば、被施療者の所望の位置等に適宜位置を変更することができる。
トンネル状支持体は、肘掛け部に対して相対移動可能であってもよいし、トンネル状支持体が設けられた肘掛け部が、座部に対して相対移動可能であってもよい。【0011】より具体的には、前記肘掛け部は、前記背もたれ部が後方に倒れると連動して後方移動し、前方に起きあがると連動して前方移動するように設けられ、前記肘掛けの前記前後移動によって前記トンネル状支持体が前後移動するのが好ましい。背もたれ部が後方に倒れると、手の位置も後方になるため、背もたれ部の起伏(リクライニング)に連動して肘掛け部を前後移動させることで、背もたれ部のリクライニングにかかわらずマッサージ位置を略一定に保つことができる。
【0012】前記トンネル状支持体は、その前後方向長さが、被施療者の手首より先だけが内部に位置する程度に設定されており、前記マッサージ用エアセルが手のひら又は手の甲のマッサージ用とされているのが好ましい。【0013】他の観点からみた本発明は、肘掛け部を有する椅子型のマッサージ機であって、肘掛け部の上方に、空気の給排によって膨張収縮するエアセルを備え、前記エアセルは、下方へ膨張することにより、前記肘掛け部に載せた手に対して前記肘掛け部に押し付けるように設けられていることを特徴とする。エアセルが肘掛け部に向かって下方へ膨張して、手を肘掛け部に押し付けることで、肘掛け部によって手の逃げを防止しつつエアセルによる押圧が行える。【0014】手用マッサージ具に係る本発明は、椅子の肘掛け部に装着して用いられる手用マッサージ具であって、前記肘掛け部に装着されて、当該肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるトンネル状支持体と、前記トンネル状支持体の内面に設けられ、膨張・収縮することで手に対するマッサージを行うエアセルと、を備えていることを特徴とする手用マッサージ具。この場合、トンネル状支持体に設けられたエアセルによって手を逃がすことなく、確実にマッサージを行える。【発明を実施するための最良の形態】【0016】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、椅子型のマッサージ機1を示している。この椅子型マッサージ機1は、座部2と、座部2の後部に配置された背もたれ部3と、座部の前部に配置された脚載部4と、を有する椅子本体5を具備している。
【0020】座部2の左右両側には、肘掛け部7、7が配置されており、被施療者は、手を肘掛け部7、7に載せてリラックスすることができる。肘掛け部7は、その後部が背もたれ部3の左右側面に取り付けられており、座部2の左右両側方位置において前方に延設されている。肘掛け部7は、その後部が背もたれ部3内部において背もたれ部としての骨格をなす背もたれフレーム(図示省略)に対して枢着されており、左右方向の軸9まわりに回動自在である。つまり、肘掛け部7は、その後部が回動基部となっている。一方、肘掛け部7の前部は、他所に取り付けられておらず、回動自由端となっている。したがって、肘掛け部7は、回動基部(軸9)を中心に回動することができ、図1及び図2のようにその前部が略前方を向いた状態や、図3のように、その前部が上方に向くように後方に回動して起き上がった状態をとることができる。なお、左右の肘掛け部7、7は、それぞれ独立して回動可能であるが、両者7、7が一体的に回動してもよい。また、一方の肘掛け部7だけが回動可能であってもよい。【0021】回動基部(軸9)を中心とした肘掛け部7の後方回動の範囲は、図1及び図2のように、肘掛け部7が座部2の側方に位置している状態(=
第1位置)から、図3のように肘掛け部7が(起き上がった)背もたれ部3の側方に位置している状態(=第2位置)に制限されている。
【0022】
第1位置が、肘掛け部7の通常の使用位置である。第1位置にある肘掛け部7には、被施療者が手を載せることができる。一方、肘掛け部7が邪魔な場合や、被施療者が座部2の側方から着座又は離座したい場合(以下、座部側方からの着座又は離座を「側方着離座」という)には、図3に示すように、肘掛け部7を第2位置まで回動させることで、座部2の側方に側方着離座にとって邪魔な肘掛け部7が存在しない状態となり、被施療者は楽に側方着離座を行うことができる。【0023】図4及び図5に示すように、自由端である肘掛け部7の前部は、ガイド機構11によって支持されており、このガイド機構11が、背もたれ部3のリクライニングに連動した肘掛け部7の移動をガイドしている。ガイド機構11は、座部2の側部に設けられたガイド体12と、当該ガイド体12によってガイドされるように肘掛け部7に設けられた被ガイド部13と、を有して構成されている。なお、肘掛け部7は、自重によって前部が下方回動するように設けられているため、肘掛け部7を自重に逆らって持ち上げない限り、ガイド体12と被ガイド部13との接触は自然に維持される。また、肘掛け部7は、自重によって前部が下方回動するのに代えて又は加えて、バネ等の付勢具によって下方回動するように付勢されていてもよい。
【0026】図6のように、背もたれ部3を後方に倒すと、軸9を介して背もたれ部3に取り付けられている肘掛け部7は、前部が前方を向いたまま背もたれ部3に引っ張られて後方に移動する。このとき、肘掛け部7は、背もたれ部3に対して回動自在であり、肘掛け部7の前部は、ローラ12によって前後動自在に支持されているだけであるため、肘掛け部7の後方移動は妨げられない。また、背もたれ部3が倒れることで、軸9の位置も下方に移動するため、肘掛け部7は全体的に(特に、後側が)下方にも移動する。【0028】被ガイド部13は、後側が上下に厚肉であり、前側が薄肉となっており、当接ガイド面13aは、前方上向きに傾斜している。このため、肘掛け部7が後方移動して、当接ガイド面13aの前部がローラ12と当接すると、肘掛け部7の前部がやや下がり、横臥状態において、被施療者が手を置き易くなる。肘掛け部7の上面7aは、前後移動の全範囲において、常に座部上面2aよりも上方に位置している。このため、被施療者は、着座状態であっても横臥状態であっても適切な状態で手をおくことができる。【0029】図7~図12は、左右の肘掛け部7にそれぞれ設けられた手用マッサージ具20を示している。なお、手用マッサージ具20は、一方の肘掛け部7だけに設けられていても良い。このマッサージ具20は、手首よりも先の部分(hand)をマッサージするのに適したものであり、特には、手首より先であって指を除く部分をマッサージするのに適したものであり、肘掛け部7に載せた手を入れることができるトンネル状の支持体22を有している。なお、マッサージ具20を手首よりも肩側の部位へのマッサージ用としてもよい。【0030】トンネル状支持体22は、肘掛け部7の幅方向両側に位置して肘掛け部7上方に延びる側面部24と、肘掛け部7の上方で左右の側面部24、24を繋ぐ上面部25と、を備えている。支持体上面部25は、肘掛け部上面7aとの間に手を入れることができる程度の高さに配置されている。また、左右の側面部24の間の間隔は、それらの間に手を入れることができる程度に設定されている。ここでは、側面部24と上面部25とは連続した円弧形状として形成されて支持体22全体がアーチ状となっており、両者24、25の境界がはっきりしないが、両者24、25の境界がわかるような形状であってもよい。
【0031】支持体22は、前後方向(肘掛け部7の長手方向)両側27、28が開口しており、後側の開口27から手を支持体22内側に挿入させることができ、前側の開口28から挿入した手(指先)を出すことができる。支持体22は、手の甲(手のひら)がその内部に位置し、手首よりも肩側及び指先は、支持体22外に位置する程度の前後方向長さに設定されており、手の甲又は手のひらをマッサージするのに適した大きさとなっている。また、支持体22は、肘掛け部7に手を置いたときに手の甲又は手のひらがくる位置、すなわち肘掛け部7の前部に取り付けられている。
【0032】支持体22は、肘掛け部7の前端よりもやや後方に位置して支持体22の前側開口28から出した指先を肘掛け部上面7aに載せることが可能となっている。また、前側開口28から出た指の指関節を内側に曲げることができるようなっている。つまり、肘掛け部7の上面7aの前端は、下方に傾斜した下方傾斜面7bとなっており、下方傾斜面に指を置くことで指を曲げてリラックスした状態で手のひら又は手の甲へのマッサージを受けられるようになっている。また、肘掛け部7の前端に、下方傾斜面7bがなくとも、支持体22内部に手のひら又は手の甲を位置させつつ、指を前側開口28から出した場合に、指の根元位置を載せることができ、かつ肘掛け部7前端よりも指先が前方に位置するように支持体22の位置が設定されていれば、指を曲げることはできる。いずれの場合でも、指が曲げられる位置に支持体22が設けられていることで、リラックスした状態で手へのマッサージが受けられる。【0033】支持体22は、外側に位置する外側部材30と、当該外側部材30よりも内側に位置する内側部材31との組み合わせによる内外2重構造となっている。外側部材30は、樹脂又は金属などの硬質の材料によって形成されている。また、外側部材30は、アーチ状に形成されており、マッサージ具20の最表面に位置する部材であるため化粧カバーとしての機能を持っている。また、外側部材30は、マッサージ具20全体を肘掛け部7へ取り付けるための取付部材としての機能を持っており、外側部材30の下部30a、30bは肘掛け部7の下部へ向けて内側に延設されており、これらの下部30a、30bがネジなどの固定具(図示省略)によって肘掛け部7に固定される。【0034】内側部材31は、樹脂又は金属などの硬質の材料によって形成されており、外側部材30との間に空間が形成されるように配置されており、その両下端が外側部材30の内面に取り付けられている。アーチ状の内側部材31の内面には、空気の給排によって膨張収縮して手を押圧するエアセル33、34、35が設けられている。エアセルとしては、内側部材31の頂部付近に取り付けられた第1エアセル(上エアセル)33と、内側部材31の左右の側面付近に取り付けられた第2エアセル(側部エアセル)34、35とが備わっている。
【0035】図10に示すように、第1エアセル33は、下方に向けて膨張するように設けられており、手を下方に押圧することができる。第2エアセル34、35は、第1エアセル33と一部重複して配置されており、下部が取付具(ネジ、ピン等)によってそれぞれ内側部材31に取り付けられている。第2エアセル34、35の上部は内側部材31に取り付けられておらず膨張自由端となっている。このため、第2エアセル34、35は、下部より上部の方が大きく膨張する。なお、第2エアセル34、35のエアセル側部は、膨張量が大きくなるように蛇腹状に形成されている。第2エアセル34、35は、手を左右から下方に押圧することができる。また、図10に示すように、第1エアセル33と第2エアセルとを同時に膨張させると、下方への押圧量を大きくすることができる。【0041】肘掛け部上面7aのうち、支持体22によって形成されたトンネルの底面となる範囲には、手に振動マッサージを施すための振動発生装置48が設けられている。この振動発生装置48は、肘掛け部上面7aが凹状形成され、肘掛け部内部に埋設されている。振動発生装置48は、肘掛け部上面7aに対して突出する指圧子49を備えており、支持体22内部に入れられた手には、この指圧子49を介して振動が局所的に伝えられる。図9に示すように、指圧子49は、肘掛け部7の左右幅方向中央位置に対して左右方向に偏って配置されている。具体的には、肘掛け部7の左右幅方向中央位置に対して座部2寄りの位置(左手用の肘掛け部7であれば右側;右手用の肘掛け部7であれば左側)に偏倚して配置されている。指圧子49が中央位置に対して座部2寄りに偏倚していることで、手のひらにある経穴である「労宮」乃至その近傍(手のひらの親指寄りの範囲)を確実に指圧することができる。【0042】なお、手の広い範囲にまんべんなく振動を与えたい場合には、指圧子49はなくともよい。また、指圧子49は、振動が発生していないときにも、手に指圧を施すことができる。【0043】図11及び図12に示すように、支持体22によって形成されたトンネルの底面となる肘掛け部上面7aには、手のひらが下向きにして載置される。このように肘掛け部上面7aは、略平坦な手のひら載置面となっている。手のひら載置面7aの上方に間隔をおいて配置されている内側部材31(支持体22)に設けられているエアセル33、34、35が下方へ向けて膨張すると(図12参照)、当該エアセル33、34、35は手の甲に当接して手(ハンド)を手のひら載置面7aに押し付けながら押圧マッサージを行う。手を載置面7aに押し付けながらマッサージするため、手の逃げが防止される。エアセル33、34、35によって手を下方へ押圧することで、肘掛け部上面7aとの間との間で手を上下から挟んでマッサージすることができる。すなわち、手の上下方向挟持マッサージが行える。【0064】なお、エアセルとしては、内側部材31(支持体22)と別体である必要はなく、内側部材31(支持体22)内面と、当該内側部材31(支持体22)内面に張り付けられた布体とによって囲まれた空間に空気が給排されることによって前記布体が膨張・収縮するものであってもよい。また、支持体22の前後方向長さは、任意に設定できる。マッサージ部位も手のひらや手の甲に限られず、指又は手首より片側の範囲もマッサージできるものであってもよい。また、支持体22に設けられるエアセルの配置・数は、適宜変更可能である。
ウ本件発明C-1の容易想到性について前記アの乙C19の記載事項によれば、乙C19には、被控訴人主張の乙C19発明(前記第3の4の(被控訴人の主張)のア)が記載されていることが認められる。そこで、本件発明C-1と乙C19発明とを対比すると、本件発明C-1の「空洞部」は、「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」る(構成要件C)のに対し、乙C19発明の「肘挿入用凹溝61a」は、「外面立上り部と底面部と上面部とから形成され」(構成c)、「内側立上り壁」が存在しないものと認められるから、両発明は、少なくとも、乙C19発明が本件発明C-1の「空洞部」における「内側立上り壁」の構成を備えていない点(以下「相違点α」という。)で相違する。被控訴人は、①乙C20発明のマッサージ機のトンネル状支持体22は、左右の側面部24、24、上面部25及び肘掛け部上面7aにより形成されているところ、左右の側面部24、24は、本件発明C-1の「外側立上り壁」及び「内側立上り壁」に、肘掛け部上面7aは、本件発明C-1の「底面部」にそれぞれ相当するから、乙C20発明のマッサージ機は、相違点αに係る本件発明C-1の構成(「空洞部」における「内側立上り壁」)を有している、②乙C19発明と乙C20発明とは、「椅子型マッサージ機に関する発明」という技術分野、「手に効果的な施療を施す」という課題、乙C19発明では肘部挟持機構62a を有する肘挿入用凹溝61a により、手部に対しても圧迫施療、指圧施療及び揉み施療を効果的に施し、乙C20発明ではエアセル33、34、35を有するトンネル状支持体22により手を確実にマッサージする効果を有するという作用効果や機能の点で共通すること、トンネル状支持体22を、乙C20発明のように底面部(肘掛け部上面7a)に対して外側立上り壁、内側立上り壁(側面部24、24)、上面部(上面部25)を設けて手部を四方向で囲むか、乙C19発明のように底面部に対して外側立上り壁、上面部を設け手部を三方向で囲むかは、本件出願Cの出願前に共に公知の構造であり、当業者にとって選択的な構造であったことからすると、当業者は、乙C19及びC20に基づいて、乙C19発明の肘挿入用凹溝61において、乙C20発明の構成を適用する動機付けがあるといえるから、相違点αに係る本件発明C-1の構成とすることを容易に想到することができた旨主張する。しかしながら、被控訴人の主張は、以下のとおり理由がない。a前記イの乙C20の記載事項によれば、乙C20には、被控訴人主張の乙C20発明(前記第3の4の(被控訴人の主張)のイ)が記載されていることが認められる。乙C20には、トンネル状支持体22に関し、「前記肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるように前記肘掛け部から立設されたトンネル状支持体」(請求項1)、「前記トンネル状支持体は、前後方向両側が開口しており、後方の開口から手を挿入可能であって、前方の開口から指先を出すことが可能であるのが好ましい。」(【0005】)、「前記トンネル状支持体は、トンネル状の外側部材と、前記外側部材の内側であって当該外側部材との間に空間を保って設けられた内側部材と、を備え」(【0009】)、「前記トンネル状支持体は、その前後方向長さが、被施療者の手首より先だけが内部に位置する程度に設定されており、前記マッサージ用エアセルが手のひら又は手の甲のマッサージ用とされているのが好ましい。」(【0012】)、「手用マッサージ具に係る本発明は、椅子の肘掛け部に装着して用いられる手用マッサージ具であって、前記肘掛け部に装着されて、当該肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるトンネル状支持体と、前記トンネル状支持体の内面に設けられ、膨張・収縮することで手に対するマッサージを行うエアセルと、を備えていることを特徴とする手用マッサージ具。この場合、トンネル状支持体に設けられたエアセルによって手を逃がすことなく、確実にマッサージを行える。」(【0014】)、「このマッサージ具20は、手首よりも先の部分(hand)をマッサージするのに適したものであり、特には、手首より先であって指を除く部分をマッサージするのに適したものであり、肘掛け部7に載せた手を入れることができるトンネル状の支持体22を有している。」(【0029】)、「トンネル状支持体22は、肘掛け部7の幅方向両側に位置して肘掛け部7上方に延びる側面部24と、肘掛け部7の上方で左右の側面部24、24を繋ぐ上面部25と、を備えている。支持体上面部25は、肘掛け部上面7aとの間に手を入れることができる程度の高さに配置されている。また、左右の側面部24の間の間隔は、それらの間に手を入れることができる程度に設定されている。ここでは、側面部24と上面部25とは連続した円弧形状として形成されて支持体22全体がアーチ状となっており、両者24、25の境界がはっきりしないが、両者24、25の境界がわかるような形状であってもよい。」(【0030】)との記載がある。上記記載及び図1、7ないし12によれば、乙C20記載のトンネル状支持体22は、肘掛け部7に立設され、その内部に施療者の「手」を挿入保持するためのものであり、肘掛け部7の幅方向両側に位置して肘掛け部7上方に延びる側面部24と、肘掛け部上面7aと、肘掛け部7の上方で左右の側面部24、24を繋ぐ上面部25とを備え、左右の側面部24、24は「外側立上り壁」及び「内側立上り壁」に、肘掛け部上面7aは「底面部」にそれぞれ相当することが認められる。そうすると、乙C20記載のトンネル状支持体22は、「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」た構成(構成要件C)を有するものといえるから、相違点αに係る本件発明C-1に相当する構成(「空胴部」における「内側立上り壁」)を有するものと解される。b乙C19の請求項2、【0012】、【0070】、図16、17及び20の記載から、乙C19発明は、乙C19の請求項2(「座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の両肘掛部の内側に肘挿入用凹溝を備えると共に、各肘挿入用凹溝に、肘部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備した事を特徴とする施療機。」)記載の発明の一実施形態であることを理解できる。乙C19には、「肘挿入用凹溝」に関し、「図16乃至図21は、他の実施形態を示したものであり、…椅子本体2aの左右に夫々設けられた肘掛部6aの内側に各々肘挿入用凹溝61aを設けると共に…を夫々設けたものを例示している。」(【0070】)、「前記各肘挿入用凹溝61aには、施療者の肘部や腕部及び手部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)を配備しており、図17に示すように施療者が肘部や腕部及び手部の施療を所望する際に該肘挿入用凹溝61aに肘部等の施療部位を挿入するだけで施療を受けられるように構成している。」(【0071】)、「前記肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)は、各肘挿入用凹溝61aに、空気供給装置7aにより膨縮する膨縮袋等を配置しており、…肘部挟持機構62aにより、図20に示すような肘部や腕部及び手部等の周部を挟圧保持または挟圧膨縮して心地よい施療を施す事ができる。」(【0072】)との記載がある。また、図20には、肘掛部6aの内側において、外面立上り部と底面部と上面部とから形成され、三方向が囲まれた、コ字状の肘挿入用凹溝61aが示されている。しかるところ、乙C19には、コ字状の肘挿入用凹溝61aにおいて内側立上り壁を設けることについては記載も示唆もない。かえって、乙C19には、「上記特許文献2のような従来の手揉機能付施療機は、椅子本体肘掛部の上面に人体腕部或いは肘部を挟持状に保持して施療を実施するための立上り壁を設けているので、腕部或いは肘部に心地良い施療が行なえるのであるが、腕部或いは肘部の施療を望まない場合や肘掛部に肘を単に載せたい場合には、これが邪魔になって不快感を与える可能性があり、また、見栄えも悪くデザイン上の問題もあった。」(【0009】)との記載があり、図38には肘掛部の上面に立上り壁211を設けた従来の手揉機能付施療機が示されていること、「本発明の請求項2の施療機は、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備えており、肘掛部上部には従来の立上り壁のような障害となるものを設けていないため、施療者が単に肘掛部に肘部を載置させたい場合においても、通常の椅子と同様にリラックスした着座姿勢で肘部や腕部及び手部を載置させる事ができる。」(【0023】)との記載があることからすると、乙C19には、請求項2記載の発明は、従来の手揉機能付施療機の肘掛部上部に設けられた立上り壁が、単に肘掛部に肘部を載置させたい場合に邪魔になって不快感を与える可能性があり、見栄えも悪くデザイン上の問題もあったため、手揉機能付施療機において、肘掛部に立上り壁を設けることなく、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備える構成を採用したことの開示があることが認められる。次に、乙C20には、「マッサージ機には、空気の給排により膨張・収縮するエアセルを備えた空気式のものが存在する。エアセルは、椅子の背もたれ部、座部、又は脚載部に配置されるのが一般的である。
特許文献1には、空気によって伸縮する蛇腹状の伸縮筒を肘掛け上部に配置したものが記載されている。この場合、被施療者の手を上方に押圧することになる。」(【0002】)、「手は、胴体に比べて軽いため、肘掛けから上方に向けて押圧すると、手が上方に逃げて十分なマッサージ感が得られないことがある。そこで、本発明の課題は、手を確実にマッサージすることにある。」(【0003】)、「本発明は、座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、前記座部の側方に備わった肘掛け部と、前記肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるように前記肘掛け部から立設されたトンネル状支持体と、前記トンネル状支持体の内面に設けられて膨張・収縮するマッサージ用エアセルと、を備えていることを特徴とするマッサージ機である。肘掛け部にトンネル状支持体が設けられているため、手を簡単にトンネル状支持体内部にいれることができる。そして、トンネル状支持体の内部に入れられた手に対してトンネル状支持体内面に設けられたエアセルによってマッサージを行うため、手の逃げが防止され、手を確実にマッサージすることができる。」(【0004】)との記載がある。上記記載から、乙C20には、空気によって伸縮する蛇腹状の伸縮筒を肘掛け上部に配置した手をマッサージする従来のマッサージ機においては、被施療者の手を上方に押圧することになり、手が上方に逃げて十分なマッサージ感が得られないことがあるという問題があったため、その問題を解決するための手段として、乙C20記載のマッサージ機は、トンネル状支持体を備えた構成を採用し、これにより、手の逃げが防止され、手を確実にマッサージすることができるという効果を奏することの開示があることが認められる。一方で、乙C19発明の肘挿入用凹溝61aは、肘掛部の内側に設けられ、三方向が囲まれた、コ字状の構成であるため、肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)の膨縮袋の膨縮により、手が上方に逃げて十分なマッサージ感が得られないといった問題が生じるものと認めることはできない。また、乙C19発明の肘挿入用凹溝61aは、三方向が囲まれた、コ字状であって、施療者側の内側が開放され、「施療者が肘部や腕部及び手部の施療を所望する際に該肘挿入用凹溝61aに肘部等の施療部位を挿入するだけで施療を受けられるように構成」されていること(【0071】)を理解できるから、肘挿入用凹溝61aの全部又は一部において4方向を囲む構成とする動機付けは見いだせない。以上によれば、乙C19及びC20に接した当業者が、乙C19発明の肘挿入用凹溝61aにおいて、乙C20記載のトンネル状支持体22の構成を適用して、内側立上り壁を設けて手部を四方向で囲む構成とする動機付けがあるものと認めることはできないから、相違点αに係る本件発明C-1の構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。
したがって、被控訴人の前記主張は理由がない。以上のとおり、相違点αに係る本件発明C-1の構成を容易に想到することができたものとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、当業者は、乙C19及びC20に基づいて、本件発明C-1を容易に想到することができたものと認められない。
エ本件発明C-2ないしC-5の容易想到性について本件発明C-2ないしC-5は、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載を直接又は間接に発明特定事項(構成要件J、M、O及びQ)に含むものである。しかるところ、本件発明C-1を容易に想到することができたものと認められないことは、前記ウのとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、当業者は、乙C20ないしC22及び本件出願Cの出願当時の周知技術に基づいて、本件発明C-2ないしC-5を容易に想到することができたものと認められない。これに反する被控訴人の主張は理由がない。
オ小括以上によれば、被控訴人主張の無効理由1は理由がない。無効理由2(明確性要件違反)について被控訴人は、①本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載によれば、本件発明C-1の「空洞部」と「前腕挿入開口部」とは、「前部」に内側立上り壁を有する「空洞部」が存在し、「後部」に内側立上り壁を有しない「前腕挿入開口部」が存在するものとして、その領域が区別されている、②仮に本件明細書Cの【0046】及び図14の記載を根拠に、本件発明C-1の「空洞部」は、外側立上り壁と内側立上り壁と底面部を備える箇所が一部でもあれば足り、内側立上り壁を備えない箇所をも含めて「空洞部」と解釈されるとするならば、「空洞部」と「前腕挿入開口部」との分水嶺が極めて不明確となるから、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、不明確であり、明確性要件に適合せず、本件発明C-2ないしC-5の特許請求の範囲(請求項1)の記載も、これと同様である旨主張する。しかしながら、前記3イaのとおり、本件発明C-1の「前腕挿入開口部」は、「肘掛部」に「内側後方から施療者の手部を含む前腕部を挿入するため」に設けられた開口部であって、「空洞部」の一部を構成する部分であるものと解される。そして、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)には、肘掛部に「前腕挿入開口部」と「空洞部」が設けられていること、「前腕挿入開口部」が「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」のものであり、「空洞部」が「前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するため」のものであることが特定されており、「前腕挿入開口部」及び「空洞部」の内容は、明確である。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができないから、無効理由2は理由がない。無効理由3(特許法17条の2第3項の補正要件違反)について被控訴人は、①本件発明C-1の「空洞部」は、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味する、②本件出願Cの当初明細書(乙C9)記載の実施例等には、肘掛部の「中部」に内側立上り壁を備えない構成としつつ、「前部」の内側立上り壁、外側立上り壁、底面部を備える空洞部においては手部のみを施療できる構成しか開示がなく、「中部」を「コ型」と構成しつつ、内側立上り壁、外側立上り壁、底面部から形成される「空洞部」において、「手部を含む前腕部」を挿入保持できる構成については記載も示唆もない、③本件補正は、「中部」に内側立上り壁を備えない「コ型」と形成された施療部を備えた本件発明C-2(請求項2)を追加する補正事項を含むものであるから(乙C12、C13)、本件補正は、新規事項を追加するものであって、特許法17条の2第3項の要件に適合しないから、本件特許Cには、同項に違反する無効理由がある旨主張する。しかしながら、前記3イbで説示したとおり、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載から、本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいうものと解することはできないし、また、施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味すると解することもできないから、被控訴人の上記主張は、その前提(上記①)を欠くものであって、採用することができない。したがって、被控訴人主張の無効理由3は理由がない。無効理由4(本件発明C-2に係るサポート要件違反)について被控訴人は、①本件発明C-2の特許請求の範囲の記載(請求項2)から、本件発明C-2は、肘掛部の「中部」をコ型に構成し、「前部」には底面部と外側立上り壁、内側立上り壁から形成される「空洞部」を備えており、当該「空洞部」は、手部を含む前腕部を挿入保持でき、「前腕部」をも施療できるものであることを理解できる、②構成要件Jで引用する請求項1(本件発明C-1)の「空洞部」は、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味する、③本件明細書Cの発明の詳細な説明には、「中部」がコ型の構成は開示されているものの、底面部、外側立上り壁、内側立上り壁の三面を含む空洞部である「前部」においては、「手部」のみを挿入保持でき、「手部」を施療するための膨縮袋を備える実施例のみが記載されているにとどまり、「前腕部」を挿入保持でき、膨縮袋などにより「手部」を含む「前腕部」を施療できる旨の記載も示唆もない、④そうすると、本件明細書Cの発明の詳細な説明の記載及び本件出願Cの出願当時の技術常識から、本件発明C-2の課題を解決できると認識することができないから、本件明細書Cの発明の詳細な説明の記載はサポート要件に適合しない旨主張する。しかしながら、前記3イbで説示したとおり、本件発明C-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載から、本件発明C-1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいうものと解することはできないし、また、施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味すると解することもできないから、被控訴人の上記主張は、その前提(上記②)を欠くものであって、採用することができない。したがって、被控訴人主張の無効理由4は理由がない。小括以上によれば、被控訴人主張の無効理由1ないし4はいずれも理由がないから、被控訴人の無効の抗弁の主張は理由がない。
5争点3(被控訴人が賠償又は返還すべき控訴人の損害額等)について(本件特許C関係)
⑴ 被控訴人による被告製品1及び2の輸出又は販売について
ア証拠(甲C20ないしC37、乙C212、C273)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、平成26年5月から令和3年3月までの間、米国、カナダ、英国、ドイツ、ロシア、南アフリカ、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、オーストラリア、ベトナム、フィリピン、韓国等を仕向国として、別紙9の「被告製品1」欄記載のとおり、被告製品1を合計●●●●●●台輸出したこと、仕向国別の輸出台数は、別紙15の「被告製品1(台)」欄記載のとおりであることが認められる。
イ証拠(乙C31、C47、C246)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、平成23年11月25日から平成28年10月までの間、日本国内において、インターネット通販等で、別紙9の「被告製品2」欄記載のとおり、被告製品2を合計●●台販売したこと(返品●台分を除く。)が認められる。
ウ前記3のとおり、被告製品1及び2は、本件各発明Cの技術的範囲に属するから、被控訴人による被告製品1及び2の輸出又は販売は、本件特許権Cの侵害行為に該当する。特許法102条2項に基づく損害額について
ア特許法102条2項の適用の可否について特許権者が特許権侵害を理由に民法709条の不法行為に基づく損害賠償を請求する場合には、特許権者において、侵害者の故意又は過失、自己の損害の発生、侵害行為と損害との間の因果関係及び損害額を立証する必要があるところ、特許法102条2項は、特許権者が故意又は過失により自己の特許権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者が受けた損害の額と推定すると規定している。この規定の趣旨は、特許権者による損害額の立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の損害額と推定し、これにより立証の困難性の軽減を図ったものであり、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許権者がその侵害行為により損害を受けたものとして、特許法102条2項の適用が認められると解すべきである(
知的財産高等裁判所平成25年2月1日特別部判決、
知的財産高等裁判所令和元年6月7日特別部判決参照)。そして、同項の規定の趣旨に照らすと、特許権者が、侵害品と需要者を共通にする同種の製品であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品(以下「競合品」という場合がある。)を輸出又は販売していた場合には、当該侵害行為により特許権者の競合品の売上げが減少したものと評価できるから、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものと解するのが相当である。また、かかる事情が存在するというためには、特許権者の製品が、特許発明の実施品であることや、特許発明と同様の作用効果を奏することを必ずしも必要とするものではないと解すべきである。aこれを本件についてみると、①前記3によれば、本件明細書Cには、本件各発明Cの技術分野は、椅子式マッサージ機のうち、「肘掛部に前腕部施療機構を有する椅子式マッサージ機に関するもの」であること(【0001】)、市場において商品化されている、座部の左右両側に設けた肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて、着座した施療者の腕部をマッサージする形態の従来の椅子式マッサージ機においては、前腕部施療機構として肘掛部に設けた内側立上り壁によって、上腕部内側の肘関節付近を圧迫したり施療者に不快感を与えたり、腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があり、また、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際、内側立上り壁によって上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、施療者に対して不快感を与えるという問題があったところ、本件各発明Cは、上記問題点を解決し、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効果を奏すること(【0002】ないし【0008】、【0013】)が開示されていること、②椅子式マッサージ機において、どの部位に対応したマッサージが可能であるかという点は、需要者が製品選択において特に着目する点の一つであること(乙C50)に鑑みると、椅子式マッサージ機の需要者には、肘掛部に前腕部施療機構を備え、着座した施療者の前腕部をマッサージする機能を欲する需要者と、そのような機能を必ずしも欲しない需要者が存在するものと認められる。b証拠(甲11ないし17、38ないし41、甲C8ないしC17、C20、C65)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、平成23年1月1日から令和3年12月31日までの間、●●●●●●●●●●25●●●●●●●●を仕向国として、別紙14のとおり、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」である控訴人製品1(EC-2700、EC-2800、EC-3700、EC-3800、EC-3850、EC-3900、JP-1000、JP-1100、JP-870、Premium4.0、Premium4D、Premium4S及び4D-970)を輸出したこと、このうち、平成26年から令和3年までの間における被告製品1と共通の仕向国への輸出台数は、別紙15の「控訴人製品1(台)」欄記載のとおり、合計●●●●台であることが認められる。本件において、特許権者の製品と侵害品が市場において侵害者の侵害行為がなければ輸出することができたという競合関係にあるかどうかは、仕向け先の当該仕向国における市場ごとに判断するのが相当である。これに反する控訴人の主張は採用することができない。そして、上記認定事実と前記アの認定事実によれば、①控訴人は、平成26年から令和3年までの間、別紙15の「控訴人製品1(台)」欄記載のとおり、被告製品1と共通の仕向国●●●●●●●●へ、控訴人製品1を合計●●●●台輸出したこと、②控訴人製品1は、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」である点において、被告製品1と需要者を共通にする同種の製品であって、施療者の前腕部をマッサージできるという機能が共通することに鑑みると、控訴人製品1は、上記共通の仕向国の各市場において、被告製品1が輸出されなければ輸出することができたという競合関係にある製品(競合品)であることが認められるから、控訴人製品1について、控訴人に、被控訴人による本件特許権Cの侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものと認められる。
したがって、被告製品1の輸出に係る控訴人の損害額の算定に関しては、特許法102条2項が適用される。c次に、証拠(甲C3ないしC7、C56、C57、乙C55ないしC59)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、平成23年1月1日から令和3年12月31日までの間、日本国内において、別紙16記載のとおり、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」である控訴人製品2(AS-760、AS-830、AS-840、AS-1000及びAS-1100)合計●●●●●●●を販売したことが認められる。上記認定事実と前記イの認定事実によれば、控訴人製品2は、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」である点において、被告製品2と需要者を共通にする同種の製品であって、施療者の前腕部をマッサージできるという機能が共通することに鑑みると、控訴人製品2は、市場において、被告製品2が販売されなければ販売することができたという競合関係にある製品(競合品)であることが認められるから、控訴人製品2について、控訴人に、被控訴人による本件特許権Cの侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものと認められる。したがって、被告製品2の販売に係る控訴人の損害額の算定に関しては、特許法102条2項が適用される。
これに対し、被控訴人は、①特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するというためには、特許権者が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏する代替競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)であって、かつ、侵害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品を販売していることを必要とすると解すべきである、②控訴人製品1及び2の前腕施療機構の構成は、内側立上り壁のないコ字状の肘掛部又は肘掛部の左右全域にわたって一対の内側立上り壁が設けられ、凹状に形成された肘掛部であって、控訴人製品1及び2は、いずれも本件各発明Cと同様の作用効果を奏するものではないから、代替競合品であるとはいえないし、また、控訴人製品1のうち、EC-2700、EC-2800、EC-3700、JP-1000、JP-1100、Premium4S及び控訴人製品2は、いずれも被控訴人保有の別件特許2又は別件特許3の侵害品であり、本来であれば販売も輸出もできなかった製品であるから、被告製品1及び2の輸出又は販売がなければ、輸出又は販売できたであろうという関係性はない、③したがって、本件においては、控訴人に上記①の事情が存在しないから、特許法102条2項の適用は認められない旨主張する。しかしながら、特許権者が、侵害品と需要者を共通にする同種の製品であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品(競合品)を輸出又は販売していた場合には、特許権者に、侵害者による特許権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものと認められ、かかる事情が存在するというためには、特許権者の製品が、特許発明の実施品であることや、特許発明と同様の作用効果を奏することを必ずしも必要とするものではないことは、前記で説示したとおりである。
また、控訴人製品1及び2が被控訴人の別件特許2及び3の侵害品であることが特許権侵害訴訟の判決により確定しているものではないのみならず、上記の競合品が事後的に他人の侵害品であると判断されたとしても、現に、当該競合品が市場において侵害品と同じ時期に流通していた事実が認められる以上は、侵害者の侵害品に向けられていた需要が当該競合品に向かうという関係性が認められるから、特許権者に、侵害者による特許権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在することを否定することはできない。したがって、被控訴人の上記主張は、その前提において採用することができない。
イ被控訴人の利益(限界利益)被告製品1関係a売上高について乙C47によれば、平成23年11月から令和3年3月までの期間の被告製品1の売上高は、別紙8の「被告製品1」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円であることが認められる。
10⒝ この点に関し、被控訴人は、被告製品1の売上高から、「部品費等」及び「マーケティングサポート費用」を控除すべきである旨主張する。しかしながら、被控訴人主張の部品費等は、商品販売後に初期不良に対応するための部品の価格相当額及びこれを郵送するための国際郵便EMSの費用であるというのであるから、アフターサービスに関する費用に相当するものであり、被告製品1の売上高そのものとは関係がない。また、被控訴人主張のマーケティングサポート費用は、被控訴人が、米国の販売店が米国内において様々な販促を行うための費用をサポートするために、被控訴人内部の会計処理上「値引き」として計上しているというのであるから、販売促進費用に相当するものであり、被告製品1の売上高そのものとは関係がない。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。b経費について被控訴人は、被告製品1について、①仕入(上海買入)費用(●●●●●●●●●●●●円)、②材料費(●●●●●●●●●●●円)、③製造ロス費(●●●●●●●●円)、④大山工場組立費用(●●●●●●●●●●●円)、⑤製造物流費(●●●●●●●●●●●円)、⑥デザイン費用(●●●●●●●●円)、⑦歩積金(●●●●●●●●●円)、⑧WEEE(●●●●●●●●●円)、⑨認証(●●●●●●●5●●円)、⑩商標登録等(●●●●●●●●円)、⑪L/C ユーザンス(●●●●●●●●●円)は、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費(合計●●●●●●●●●●●●円)である旨主張する。被控訴人主張の①仕入(上海買入)費用、②材料費及び⑤製造物流費が、控除すべき経費に当たること(以上、合計●●●●●●●●●●●●円)は、当事者間に争いがない。そこで、以下において、被控訴人主張の③製造ロス費、④大山工場組立費用、⑥デザイン費用、⑦歩積金、⑧WEEE、⑨認証、⑩商標登録等、⑪L/C ユーザンスが、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるどうかについて判断する。
③ 製造ロス費について一般に、製造過程において不良品が生じることは不可避といえることからすると、実質的に製造原価の一部と評価することができるから、製造ロス費(●●●●●●●●円)(乙C129、C140ないしC145、C273)は、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認められる。
④ 大山工場組立費用について被控訴人の主張によれば、被控訴人の従業員の人件費であるが、大山工場に勤務する被控訴人従業員の業務の具体的内容や被告製品1の製造に関する従事状況は明らかでないことに照らすと、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認めることはできない。
⑥ デザイン費用について被控訴人がデザイン費用(●●●●●●●●円)を支出したことを客観的に裏付ける証拠はなく、また、被告製品1を1台製造、輸出するごとに必要な費用であるか明らかでないから、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認めることはできない。
10⑦ 歩積金についてまず、被控訴人が主張する1台当たりの歩積金の額は、被控訴人内部で便宜的に割り付けた金額であるものと認められ(乙C140ないしC145)、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となったものということはできない。
次に、被控訴人が歩積金から支出したとする取扱説明書作成費用のうち、平成28年3月頃支出分の被告製品1に係る●●●●●●●円(4製品分の翻訳代の4分の1に当たる●●●●●●●円及び被告製品1に係るinDesign 編集代●●●●●●●円の合計額)(乙C182、C183)は、平成27年度の被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認められる。このほか、被控訴人がアメリカ食品医薬品局(FDA)に支払った金員(乙C173ないしC177)については、被告製品1の製造、輸出のためのみに支出されたものであるか明らかではなく、被控訴人が歩積金から支出したとするその余の費用についても、これと同様であるから、いずれも被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となったものと認めることはできない。
⑧ WEEEについてWEEEは、英国の廃電気・電子機器リサイクル指令による英国政府への登録費用であり、被控訴人が英国に向けて被告製品1を輸出するに当たり、輸出総重量に応じて、法令上負担しなければならない費用であることからすると(乙C189、C190)、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認められる。そして、被控訴人が被告製品1の合計●●●台に応じたWEEEとして●●●●●●●米国ドル(●●●●●●●円・為替レート1米国ドル約106円で計算)を支払ったこと(乙C189)からすると、1台当たり●●●円(●●●●●●●円÷●●●)と認めるのが相当である。そうすると、被控訴人主張のWEEEの金額(●●●●●●●15●●円)のうち、●●●●●●●円(別紙15記載の「英国」への輸出台数●●●台×●●●円)の限度で、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認められる。
⑨ 認証について被控訴人主張の認証(●●●●●●●●●円)については、被控訴人が被告製品1を輸出先の仕向国で販売するために必要となるCB-LVD、CB-EMC等の認証を取得するため、平成26年3月頃、●●●●●●●●●米国ドル(●●●●●●●●円・為替レート1米国ドル102.86円で計算)を支払ったことが認められるが(乙C193ないしC196)、これを超える金額を支払ったことを客観的に裏付ける証拠はない。そうすると、被控訴人主張の認証の金額のうち、●●●●●●●●円の限度で、平成26年度の被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認められる。
⑩ 商標登録等について被告製品1を1台製造、輸出するごとに必要な費用であるものと認められないから、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認めることはできない。
⑪ L/Cユーザンスについて被告製品1を1台製造、輸出するごとに必要な費用であることを認めるに足りる証拠はないから、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認めることはできない。⒝ 以上によれば、被告製品1については、別紙17記載2のとおり、①仕入(上海買入)費用(●●●●●●●●●●●●円)、②材料費(●●●●●●●●●●●円)、③製造ロス費(●●●●●●●●円)、⑤製造物流費(●●●●●●●●●●●円)、⑦歩積金(●●●●●●●円)、⑧WEEE(●●●●●●●円)、⑨認証(●●●●●●●●円)の合計●●●●●●●●●●●●円が被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認められる。これに反する被控訴人及び控訴人の主張はいずれも採用することができない。c限界利益額について前記a及びbによれば、被控訴人が被告製品1の輸出により得た限界利益額は、別紙17記載2⑴の「限界利益額」欄記載のとおり、前記aの売上高合計●●●●●●●●●●●●円から前記bの経費合計●●●●●●●●●●●●円を控除後の合計●●●●●●●●●●●●円である。⒝ この点に関し、控訴人は、消費税法基本通達5-2-5柱書及びによると、「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は、資産の譲渡等の対価に該当するものとされていることからすれば、特許法102条2項の「侵害の行為により利益を受けているとき」にいう「利益」には消費税相当分も含まれると解すべきであり、このことは、侵害行為の態様が輸出行為である場合でも変わりはないから、限界利益の額に消費税相当分を加算すべきである旨主張する。しかしながら、輸出取引については消費税が免除されているところ(消費税法7条1項1号)、輸出製品である被告製品1は消費税の課税対象とならず、被控訴人は、被告製品1の譲渡等の際に消費税相当額の支払を受けるものではなく、「侵害の行為により利益を受け」るものではないから、控訴人の上記主張は採用することができない。被告製品2関係a売上高について被告製品2の値引き額及び返品に対する返金額は、被告製品2の販売に対する対価とはいえないから、被告製品2の売上高に含まないと認めるのが相当である。そして、乙C47によれば、平成23年11月から令和3年3月までの期間の被告製品2の売上高は、別紙8の「被告製品2」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●円であることが認められる。
25b限界利益額について被控訴人は、被告製品2について、①仕入(上海買入)費用(●●●●●●●●●円)、②材料費(●●●●●●●●円)、③製造ロス費(●●●●●●円)、④大山工場組立費用(●●●●円)、⑤製造物流費(●●●●●●●円)、⑥デザイン費用(●●●●●●●円)、⑦配送費用及び組立費用(●●●●●●●●円)は、被告製品2の製造、販売に直接関連して追加的に必要となった経費(合計●●●●●●●●●円)である旨主張する。しかるところ、①仕入(上海買入)費用、②材料費、⑤製造物流費及び⑦配送費用及び組立費用(以上、合計●●●●●●●●●円)が、被告製品2の製造、販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たることは、当事者間に争いがない。そうすると、被告製品2の売上高●●●●●●●●●円(前記a)よりも控除すべき経費(合計●●●●●●●●●円)が多いから、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人が被告製品2の販売により得た限界利益額は、ゼロである。
まとめ以上によれば、被控訴人が被告製品1の輸出により得た限界利益額は、●●●●●●●●●●●●円であり、この限界利益額は、特許法102条2項により、控訴人が受けた損害額と推定される(以下、この推定を「本件推定」という。)。一方、被控訴人が被告製品2の販売により得た限界利益額は、ゼロであるから、同項の推定は及ばない。
ウ推定の覆滅について被控訴人は、①特許発明が被告製品1の部分のみに実施されていること、②市場における競合品の存在、③市場の非同一性、④被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、⑤被告製品1の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)は、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張するので、以下において判断する。a特許発明が被告製品1の部分のみに実施されていること被告製品1は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の図1ないし5に示すように、座部と座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備える椅子本体と、椅子本体の両側に腕ユニット(レスト部)とを有するマッサージチェアである。座部には、利用者の腿をマッサージする腿用エアバッグ、尻をマッサージする尻用エアバッグ、背もたれ部には、利用者の腰を施療する腰用エアバッグが設けられており、腕ユニットには内側後方から施療者の前腕を挿入するための開口部があり、開口部から延設して腕ユニットの内側に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための前腕保持部を有し、また、腕ユニットは、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、背もたれ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背もたれ部のリクライニング動作に連動して腕ユニットが椅子本体に対して前後方向に移動することができる。
証拠(乙C40、C54)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1は、独自の赤外線スキャン技術で体を測定し、指圧ポイントの特定の場所にマッサージをする機能(指圧点探知)、子供を対象とした「ヤングコース」プログラム機能、ボタンをクリックするだけで、16の異なる事前にプログラムされたマッサージセッション及び様々な手動マッサージの組合せを選択できる機能(準備書面(被控訴人第17回)の別紙2-1、2)を有し、「マッサージ機構」として、首(指圧・ひきもみ)、肩(バリエーション指圧・もみ玉マッサージ)、腕(フルアーム機能)、背中(もみ玉マッサージ)、サイドプレス(エアー指圧)、座面(エアー&バイブ)、腰(もみ玉とエアー指圧)、ふくらはぎ(エアー指圧)、足先(エアー指圧)の機構を備えていることが認められる。⒝ 本件明細書Cの記載によれば、本件各発明Cの技術的意義は、座部の左右両側に設けた肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて、着座した施療者の腕部をマッサージする形態の従来の椅子式マッサージ機においては、前腕部施療機構として肘掛部に設けた内側立上り壁によって、上腕部内側の肘関節付近を圧迫したり施療者に不快感を与えたり、腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があり、また、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際、内側立上り壁によって上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、施療者に対して不快感を与えるという問題があったところ、本件各発明Cは、上記問題点を解決し、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効果を奏することにある(前記アa)。そうすると、本件各発明Cは、椅子式マッサージ機の構造のうち、「肘掛部の前腕部施療機構」に関する発明であり、被告製品1においては、「腕ユニット」(肘掛部)及びアームレスト(手掛け部)に係る部分のみに実施されていることが認められる。⒞ 証拠(乙C50)及び弁論の全趣旨によれば、需要者が椅子式マッサージ機を選択するに当たり着目する要素は、①マッサージ機能(例えば、自分がマッサージしたい部位に対応した製品であるか、使用者の体格に合わせて、もみ玉やローラーの位置を自動調整する機能があるか、使用者の目的に合わせてマッサージメニューを組み合わせた自動コースを何種類搭載しているかなど)、②便利な機能や装備(例えば、脚部のマッサージ機能、電動リクライニング機能、リモコン収納、キャスター、タイマー、液晶パネルリモコン、折りたたみ収納、ヒーター機能を備えているか)③サイズや重量(例えば、設置場所や保管場所のスペースに合わせて、最適なサイズや重量がどのようなものか)、④デザイン等であることが認められる。しかるところ、本件各発明Cの前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効果は、椅子式マッサージ機の基本的な機能であるマッサージ機能そのものではなく、「腕部」のマッサージを行う際の付随的なものにすぎない。また、被告製品1のカタログ(乙C40)及び被告製品1と同様の構成の被告製品2のカタログ(乙C54)においても、被告製品1及び2が、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができる効果を奏することは、紹介されていない。以上を総合すると、本件各発明Cの技術的意義は高いとはいえず、被告製品1の購買動機の形成に対する本件各発明Cの寄与は限定的であるというべきであるから、被控訴人が被告製品1の輸出により得た限界利益額(前記イ)には、本件各発明Cが寄与していない部分を含むものと認められる。したがって、本件各発明Cが被告製品1の部分のみに実施されていることは、本件推定の覆滅事由に該当するものと認められる。b市場における競合品の存在被控訴人は、控訴人以外の多くのメーカー(パナソニック等)は、本件出願Cの出願前から、被告製品1の競合品である「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」を海外に輸出しており(乙C79ないしC81等)、特に、米国では、控訴人及び被控訴人のほかに、控訴人の別会社であるLITEC久工及びDr.Fuji(10機種)、大崎マッサージチェア(控訴人がOEM供給)(39機種)、パナソニック(6機種)、フジタ(Fujita)(12機種)、インフィニティ(Infinity)(19機種)、KYOTA(5機種)の製品も販売されており、被告製品1と販売期間の重なる「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」製品に占める控訴人製品1の割合は94機種中7機種にすぎないこと(甲C39ないしC41、C43、乙C268等)からすると、被告製品1が販売されなかったとしても、海外の市場において、消費者、取引者(海外の代理店を含む。)の需要は、控訴人製品1ではなく、他社の競合品に向くことは明らかであるから、このような他社の競合品の存在は、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張する。そこで検討するに、乙C79ないしC81から、控訴人のほか、パナソニック及び大東電機が、肘掛部に前腕部施療機構を有する椅子式マッサージ機を海外に輸出し、パナソニックの製品は、米国、カナダ、香港において販売され、大東電機の製品は中国の現地法人が販売していることが認められる。また、株式会社矢野経済研究所の「セルフケア健康機器の市場実態と将来展望2017年版」(乙C51)には、海外展開では、パナソニックや控訴人、被控訴人などは、中国などアジアへの展開に力を入れていること、大東電機は欧米や中国でOEM展開を行っていることなどの記載がある。さらに、甲C43には、2014年(平成26年)から2018年(平成30年)までの期間の米国における高級マッサージチェア市場において、控訴人、被控訴人、大崎マッサージチェア及びパナソニックが主要なベンダーであることが記載されている。しかしながら、本件においては、平成26年から令和3年までの間の被告製品1が輸出された米国その他の各仕向国の市場における椅子式マッサージ機のシェア、控訴人以外の他社(国内外のメーカー)の「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」製品の販売状況等を認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると、被控訴人主張の他社の競合品の存在は、被告製品1の限界利益額と控訴人の受けた損害額との間の相当因果関係を否定すべき事情に当たるとはいえないから、本件推定の覆滅事由に該当するものと認めることはできない。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。c市場の非同一性前記ア及び前記アbの認定事実を総合すると、別紙15のとおり、平成26年5月から令和3年3月までの間、被告製品1は、米国等の17の国・地域を仕向国として輸出され、その輸出台数は●●●●●●台であること、控訴人製品1は、同期間において、被告製品1と共通の仕向国へ輸出され、その輸出台数は●●●●台であること、被告製品1の上記輸出台数のうち、控訴人製品1が輸出されていない仕向国へ輸出されたものは●●●●台であることが認められる。しかるところ、控訴人製品1が輸出されていない上記仕向国のそれぞれの市場においては、控訴人製品1は、被告製品1の輸出がなければ輸出することができたという競合関係があるということはできず、被告製品1が輸出されることによって控訴人製品1の売上げが減少するという関係になかったというべきであるから、被告製品1と控訴人製品1は、仕向国が異なる限度で、市場が同一でなかったものと認められる。以上によれば、平成26年5月から令和3年3月までの間に輸出された被告製品1のうち、控訴人製品1が輸出されていない仕向国への輸出分(合計●●●●台)があることは、本件推定の覆滅事由に該当するものと認められる。d被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)について証拠(乙C51、C62、C67、C69)によれば、①被控訴人が、平成16年には価格ベースで15%のシェアを占めるなど日本のマッサージチェア業界における大手企業であること(乙C51)、②平成16年ないし18年に被告製品1以外の被控訴人の製品が日本国内でグッドデザイン賞を受賞し(乙C62)、米国でもエキサイト賞の受賞歴(乙C67)があること、③平成26年9月にニューヨークのタイムズスクエアに設置された電光掲示板において、被控訴人の米国現地代理店が米国において急成長している企業5000社に選ばれた旨の広告をしたこと(乙C69)が認められる。他方で、控訴人と被控訴人は、米国におけるマッサージ機市場においてマーケットリーダーであると位置づけられていること(甲C43)、控訴人も、平成15年にグッドデザイン賞を受賞していること(甲C59)が認められる。
そうすると、上記①ないし③の事情から、被控訴人のブランド力や被告製品1の宣伝広告が、被告製品1の購買動機の形成に寄与したとまで認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、被控訴人主張の営業努力(ブランド力、宣伝広告)は、本件推定の覆滅事情に該当するものと認めることはできない。
20e被告製品1の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)について被控訴人は、被告製品1は、ボタンをクリックするだけで、16の異なる事前にプログラムされたマッサージコース、操作が簡単で、操作に手動が必要な複雑なリモコンのない簡便さや、世界的に有名なデザイナーAの協力による受賞歴のあるデザイン、特に独自の身体スキャン技術で体を測定し、指圧点を検知してユーザ自身の背中の形状に合わせたマッサージ機能(乙C40)などが訴求ポイントとなっていること、被控訴人は、被告製品1の訴求ポイントに係る特許を多数保有していること(乙C222ないしC238)、被告製品1のデザインは多数の国で意匠登録されており(乙C213ないしC221)、デザインが優れていることからすると、被告製品1の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)は、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張する。そこで検討するに、被告製品1のカタログ(乙C40)には、「デザイン」に関し、「受賞歴のあるデザイン世界的に有名なデザイナーAがBの指圧マッサージの専門家と協力して、DreamWaveを開発しました。その結果、革新とデザインで数々の賞を受賞した美しい椅子が生まれました。」との記載(準備書面(被控訴人第17回)の別紙2-1、2)がある。また、被告製品1と同様の構成の被告製品2のカタログ(乙C54)には、被告製品2の写真に「多機能性インテリアとして自然な存在感で置かれるようデザインをされています」などの記載がある。しかしながら、上記各カタログの記載及び前記d認定の被控訴人の受賞歴、被控訴人主張の意匠登録の事実を勘案しても、被告製品1のデザインが被告製品1の購買動機の形成に寄与したとまで認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。また、被控訴人主張の被告製品1に係る機能等が被告製品1の購買動機の形成に寄与したことを認めるに足りる証拠はない。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。以上のとおり、本件各発明Cは、椅子式マッサージ機の構造のうち、「肘掛部の前腕部施療機構」に関する発明であり、被告製品1においては、「腕ユニット」(肘掛部)及びアームレスト(手掛け部)に係る部分のみに実施されていること、平成26年5月から令和3年3月までの間に輸出された被告製品1のうち、控訴人製品1が輸出されていない仕向国への輸出分(合計●●●●台)があること(市場の非同一性)は、本件推定の覆滅事由に該当すること、本件各発明Cの前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効果は、椅子式マッサージ機の基本的な機能であるマッサージ機能そのものではなく、「腕部」のマッサージを行う際の付随的なものであり、また、本件各発明Cの技術的意義は高いとはいえず、被告製品1の購買動機の形成に対する本件各発明Cの寄与は限定的であること、控訴人製品1が輸出されていない仕向国への輸出分(合計●●●●台)は、被告製品1の輸出台数(●●●●●●台)の7%に相当することを総合考慮すると、被告製品1の購買動機の形成に対する本件各発明Cの寄与割合は1割と認めるのが相当であり、上記寄与割合を超える部分については、被告製品1の限界利益額と控訴人の受けた損害額との間に相当因果関係がないものと認められる。したがって、本件推定は、上記限度で覆滅されるものと認められるから、特許法102条2項に基づく控訴人の損害額は、別紙17記載3の「推定覆滅後の額」欄記載のとおり、被告製品1の限界利益額の1割に相当する合計●●●●●●●●●●●円と認められる。
エ推定覆滅部分に係る特許法102条3項に基づく損害額(予備的主張)について特許法102条3項は、特許権者は、故意又は過失により自己の特許権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができると規定し、同条5項本文(令和元年改正特許法による改正前の同条4項本文)は、同条3項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げないと規定している。そして、特許権は、特許権者の実施許諾を得ずに、第三者が業として特許発明を実施することを禁止し、その実施を排除し得る効力を有すること(特許法68条参照)に鑑みると、特許法102条3項は、特許権者が、侵害者に対し、自ら特許発明を実施しているか否か又はその実施の能力にかかわりなく、特許発明の実施料相当額を自己が受けた損害の額の最低限度としてその賠償を請求できることを規定したものであり、同項の損害額は、実施許諾の機会(ライセンスの機会。以下同じ。)の喪失による最低限度の保障としての得べかりし利益に相当するものと解される。
一方で、特許法102条2項の侵害者の侵害行為による「利益」の額(限界利益額)は、侵害品の価格に販売等の数量を乗じた売上高から経費を控除して算定されることに照らすと、同項の規定により推定される特許権者が受けた損害額は、特許権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた実施品又は競合品の売上げの減少による逸失利益に相当するものと解される。特許権者は、自ら特許発明を実施して利益を得ることができると同時に、第三者に対し、特許発明の実施を許諾して利益を得ることができることに鑑みると、侵害者の侵害行為により特許権者が受けた損害は、特許権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた実施品又は競合品の売上げの減少による逸失利益と実施許諾の機会の喪失による得べかりし利益とを観念し得るものと解される。そうすると、特許法102条2項による推定が覆滅される場合であっても、当該推定覆滅部分について、特許権者が実施許諾をすることができたと認められるときは、同条3項の適用が認められると解すべきである。そして、特許法102条2項による推定の覆滅事由には、同条1項と同様に、侵害品の販売等の数量について特許権者の販売等の実施の能力を超えることを理由とする覆滅事由と、それ以外の理由によって特許権者が販売等をすることができないとする事情があることを理由とする覆滅事由があり得るものと解されるところ、上記の実施の能力を超えることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、特許権者は、特段の事情のない限り、実施許諾をすることができたと認められるのに対し、上記の販売等をすることができないとする事情があることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、当該事情の事実関係の下において、特許権者が実施許諾をすることができたかどうかを個別的に判断すべきものと解される。これを本件についてみるに、前記ウ認定の本件推定の覆滅事由は、特許発明が被告製品1の部分のみに実施されていること及び市場の非同一性であり、いずれも特許権者の実施の能力を超えることを理由とするものではない。
しかるところ、市場の非同一性を理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、被控訴人による被告製品1の各仕向国への輸出があった時期において、控訴人製品1は当該仕向国への輸出があったものと認められないことから、当該仕向国のそれぞれの市場において、控訴人製品1は、被告製品1の輸出がなければ輸出することができたという競合関係があるとは認められないことによるものであり(前記ウc)、控訴人は、当該推定覆滅部分に係る輸出台数について、自ら輸出をすることができない事情があるといえるものの、実施許諾をすることができたものと認められる。一方で、本件各発明Cが侵害品の部分のみに実施されていることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、その推定覆滅部分に係る輸出台数全体にわたって個々の被告製品1に対し本件各発明Cが寄与していないことを理由に本件推定が覆滅されるものであり、このような本件各発明Cが寄与していない部分について、控訴人が実施許諾をすることができたものと認められない。そうすると、本件においては、市場の非同一性を理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分についてのみ、特許法102条3項の適用を認めるのが相当である。aこれに対し、控訴人は、特許発明が侵害品の一部のみに実施されていることを理由とする覆滅事由は、需要を形成する一要因にすぎず、侵害品に向かっていた事情が全て特許権者の製品に向かうかどうかを判断する一要素であるから、市場の非同一性等を理由とする覆滅事由と区別する理由はないこと、覆滅事由ごとに特許法102条3項の適用の有無を区別することは、実施料率の算定が煩雑になり妥当でなく、そもそも製品の需要形成には様々な要因が複合的に絡み合っており、覆滅事由ごとに覆滅割合を認定して当該覆滅部分にライセンス機会の喪失による逸失利益が認められるか否かを認定判断することは実際上困難であることからすると、本件各発明Cが侵害品の部分のみに実施されていることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分についても、特許法102条3項の適用を認めるべきである旨主張する。しかしながら、前記で説示したとおり、上記推定覆滅部分は、個々の被告製品1に対し本件各発明Cが寄与していないことを理由に本件推定が覆滅されるものであり、このような本件各発明Cが寄与していない部分について、控訴人が実施許諾をすることができたものとは認められないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
bまた、被控訴人は、①特許法102条1項において、特許権者が自己実施できたと推定される部分(1号)とは別にライセンスをし得た部分(2号)とを区別し観念できるのは、同項が、侵害者の販売する「数量」に基づいて、権利者の逸失利益に係る損害額を算定する方法を採用しているからであり、他方で、同条2項は、侵害者の「利益」を権利者の逸失利益と推定する損害額算定方法をとっており、同項の推定が覆滅されるのは、最終計算の結果としての損害額であり、計算過程の途中数値である侵害品の数量の一部が計算の基礎から除かれるわけではなく、同項の推定を覆滅する過程において、権利者のライセンスの機会の喪失による逸失利益をも含む全ての逸失利益が評価し尽されているというべきであるから、推定覆滅部分に対して同条3項を適用することは、権利者の損害の二重評価となり、許されない、②同条1項2号が新設された令和元年改正特許法において、同条2項について実施料相当額の損害が明文において規定されなかったのは、このような趣旨によるものと解される、③仮に推定覆滅部分について同条3項の重畳適用が認められる場合が理論的にあり得るとしても、被告製品1について、「市場の非同一性」を理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分につき、輸出に際して海外市場の事業者から受け取る対価は、あくまで海外市場に基づく利益であり、このような海外市場における利益まで特許法102条2項の推定が及ぶものと解し、日本国内の特許権に基づいて独占することは、特許権の保護範囲を逸脱しており、法が予定していないものであり、また、日本国の特許権に基づいて仕向国への輸出行為のみを切り取り、ライセンスする場合は現実に考え難く、ライセンスによる実施料相当額の得べかりし利益を得られなかったとは言い難いとして、本件推定の推定覆滅部分については、同条3項を適用することはできない旨主張する。しかしながら、①及び②については、前記で説示したとおり、特許権者は、自ら特許発明を実施して利益を得ることができると同時に、第三者に対し、特許発明の実施を許諾して利益を得ることができることに鑑みると、侵害者の侵害行為により特許権者が受けた損害は、特許権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた実施品又は競合品の売上げの減少による逸失利益と実施許諾の機会の喪失による得べかりし利益とを観念し得るものと解されるところ、特許法102条2項の規定により推定される特許権者が受けた損害額は、特許権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた実施品又は競合品の売上げの減少による逸失利益に相当するものであるのに対し、同項による推定の推定覆滅部分について、特許権者が実施許諾をすることができたと認められるときは、特許権者は、売上げの減少による逸失利益とは別に、実施許諾の機会の喪失による実施料相当額の損害を受けたものと評価できるから、特許権者の損害を二重に評価することにはならない。また、同条1項2号が新設された令和元年改正特許法において、同条2項について、同条1項2号と同様の法改正がされなかったからといって直ちに同条2項による推定の推定覆滅部分について同条3項の適用を否定すべき理由にはならないというべきである。次に、③については、前記のとおり、市場の非同一性を理由とする推定覆滅部分に係る輸出台数について、控訴人は本件特許権Cの実施許諾をすることができたものと認められる。
したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。そこで、市場の非同一性を理由とする本件推定の覆滅事由に係る推定覆滅部分について、特許法102条3項に基づく損害額について判断する。
①株式会社帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」(本件報告書)の「1.技術分類別ロイヤルティ料率(国内アンケート調査)」の「アンケート調査結果」には、「特許権におけるロイヤルティ料率の平均値について、全体では3.7%となった。」(50頁)、表Ⅱ―3に、「個人用品または家庭用品」が平均3.5%、最大値7.5%、最小値0.5%(件数13)、「器械」が平均3.5%、最大値9.5%、最小値0.5%(件数63)(52頁)、「4.司法決定によるロイヤルティ料率」の表Ⅲ―12には、「産業別司法決定ロイヤルティ料率(2004年~2008年)」について「産業分野」を「機械」とする司法決定によるロイヤルティ料率は平均値3.9%、最大値10.0%、最小値1.0%(件数12)(109頁)との記載があること、②前記ウのとおり、本件各発明Cは、椅子式マッサージ機の構造のうち、「肘掛部の前腕部施療機構」に関する発明であり、被告製品1の部分のみに実施されていること、本件各発明Cの前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効果は、椅子式マッサージ機の基本的な機能であるマッサージ機能そのものではなく、「腕部」のマッサージを行う際の付随的な効果であり、また、本件各発明Cの技術的意義は高いとはいえず、被告製品1の購買動機の形成に対する本件各発明Cの寄与は限定的であること、③実施許諾をするに当たり消費税相当額を含めて実施許諾料を定める場合があり得ること、その他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、上記推定覆滅部分に係る特許法102条3項に基づく損害額は、被告製品1の売上高に実施料率1%を乗じた額と認めるのが相当である。そして、前記ウ及び別紙8によれば、上記推定覆滅部分に相当する被告製品1の売上高は、被告製品1の輸出台数の7%に相当する●●●25●●●●●●●●円(●●●●●●●●●●●●円×7%。小数点以下四捨五入。以下同じ。)であることが認められるから、特許法102条3項に基づく損害額は、別紙17記載3の「覆滅部分の実施料相当額」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●円(●●●●●●●●●●●円×1%)となる。これに反する控訴人及び被控訴人の主張はいずれも採用することができない。
オまとめ以上によれば、被告製品1についての控訴人の特許法102条2項に基づく損害額及び同項の推定覆滅部分に係る同条3項に基づく損害額の合計額は、別紙17記載3の「損害額(合計)」欄記載のとおり、●●●●●10●●●●●●円となる。特許法102条3項に基づく損害額について
ア被告製品1について前記エの認定事実によれば、控訴人の特許法102条3項に基づく損害額は、被告製品1の売上高に実施料率1%を乗じた額と認めるのが相当である。そうすると、控訴人の特許法102条3項に基づく損害額は、別紙17記載4の「被告製品1」の「実施料相当額」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●円となる。これに反する控訴人及び被控訴人の主張はいずれも採用することができない。前記オ認定の控訴人の特許法102条2項に基づく損害額及び同項の推定覆滅部分に係る同条3項に基づく損害額の合計額●●●●●●●●●●●円は、前記認定の控訴人の同条3項に基づく損害額●●●●●●●●●円よりも高いから、被告製品1に係る控訴人の損害額は、上記合計額となる。
イ被告製品2について被告製品2は、被告製品1と同様の構成を有することに鑑みると、被告製品2についての控訴人の特許法102条3項に基づく損害額は、被告製品1と同様に、被告製品2の売上高に実施料率1%を乗じた額と認めるのが相当である。
そうすると、控訴人の特許法102条3項に基づく損害額は、別紙17記載4の「被告製品2」の「実施料相当額」欄記載のとおり、合計●●●●●●●円となる。これに反する控訴人及び被控訴人の主張はいずれも採用することができない。
弁護士費用について控訴人の被告製品1に係る損害額(前記オ)及び被告製品2に係る損害額(前記イ)の合計額は、別紙17記載5の「損害額小計」欄記載のとおり、●●●●●●●●●●●円となる。そして、本件事案の性質・内容、本件の認容額、原審及び当審の審理経過等諸般の事情を斟酌すると、被控訴人の本件特許権Cの侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額は、別紙17記載5の「弁護士費用」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●円と認めるのが相当である。消滅時効の成否について被控訴人は、控訴人は、被控訴人による被告製品1及び2の製造、販売、輸出の開始後間もない頃、被告製品1及び2の製造、販売、輸出等の事実及びその構造・機能等を認識し、被告製品1及び2が本件各発明Cの技術的範囲に属することを認識していたから、控訴人の被控訴人に対する平成27年4月12日以前の本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権は、本件訴訟の提起時点(平成30年4月13日)で、控訴人が損害及び加害者を知った時から3年の消滅時効期間が経過し、消滅時効により消滅した旨主張する。そこで検討するに、不法行為に基づく損害賠償請求権は、「損害及び加害者を知った時」から3年が経過したとき、時効により消滅するが(改正前民法724条)、「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味し、「被害者が損害を知った時」とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解される(最高裁平成8年
第2607号同14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。これを本件についてみると、控訴人が、被告製品1及び2について、その販売等の開始後間もなく、本件各発明Cの技術的範囲に属することを知っていたことを認めるに足りる証拠はない。この点に関し、被控訴人は、控訴人において被告製品1及び2が本件各発明Cの技術的範囲に属していることを知っていたことは明らかである事情として、控訴人と被控訴人の従前からの関係に照らせば、控訴人は、被控訴人の製品動向や機能に関し常に関心を有し、調査検討をしていたと考えられること、控訴人と被控訴人との間で平成28年に行われていたクロスライセンス契約締結に向けた交渉において、控訴人が、対象となる特許権リストに本件特許Cを挙げていたこと、控訴人が、被告製品2の製造販売等の開始(平成20年5月)から5か月後に本件特許Cに係る分割出願(本件出願C)をしたことなどを挙げるが、仮にこれらの事情が認められるとしても、そのことから直ちに控訴人において被告製品1及び2が本件各発明Cの技術的範囲に属することを知っていたと認めるには足りず、被控訴人の主張は単なる憶測にとどまるものというべきである。また、この点は措くにしても、証拠(甲C50ないしC52、乙C43ないしC45)によると、上記交渉において、平成28年12月9日に控訴人が提示した特許権リストに本件特許Cが記載されていることが認められるものの、その後、被控訴人が、双方が提示した特許権リストについて、双方で対象と思われる製品を指定して技術的範囲の属否検討を行うことを提案したのに対し、控訴人が、平成29年1月31日、「当初から一件一件の属否論、無効論を行うことは想定しておりません。」と属否について検討することを否定する回答をし、結局、クロスライセンスの契約締結には至らなかったことが認められる。このような経緯に照らすと、控訴人が、被告製品1及び2につき、本件各発明の技術的範囲の属否検討を行ったと認めることはできないから、被控訴人の上記主張はいずれにしても採用することができない。したがって、控訴人の被控訴人に対する平成27年4月12日以前の本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権が時効により消滅したとの被控訴人の主張は理由がない。小括以上によれば、本件における控訴人の損害額は、別紙17記載5の「合計」欄記載のとおり、合計3億9154万9273円となる。よって、控訴人は、被控訴人に対し、本件特許権Cの侵害による不法行為に基づく損害賠償として3億9154万9273円及び別紙認容額一覧の「認容額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで「遅延損害金利率(年)」欄記載の各割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
第5 結論
知的財産高等裁判所特別部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官菅野雅之
裁判官本多知成
裁判官東海林 保
裁判官勝又来未子別紙物件目録
1製品名INADADREAMWAVE型番HCP-110015
2製品名ファミリーメディカルチェアSOGNO型番FMC-10000
3製品名ファミリーメディカルチェアルピナス型番FMC-LPN10000
4製品名ファミリーメディカルチェアダブル・エンジンユニバーサル型番FMC-WU100
5製品名ファミリーメディカルチェア3S匠型番FMC-S8100
6製品名ファミリーイナダチェアユメロボ型番FIC-R10015
7製品名ファミリーメディカルチェア3A型番FMC-9200
8製品名ファミリーメディカルチェアX.1型番FMC-730
9製品名ファミリーメディカルチェア3S型番FMC-S33010製品名ファミリーメディカルチェアエスボディ型番FDX-S30011製品名ファミリーメディカルチェアネセサ型番FMC-N23012製品名ファミリーメディカルチェアルピナスライト型番FMC-LPN9000(別紙1)被告製品1ないし8説明書
第1被告製品1及び2について
1本件特許A関係被告製品1及び2の説明
ア被告製品1は、図1及び図2に示すように、座部と、当該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備えたマッサージチェアである。図3に示すように、座部には、利用者の腿をマッサージする腿用エアバッグ、及び尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられており、また、背もたれ部には、利用者の腰を施療する腰用エアバッグが設けられている。尻用エアバッグAは、座部上面に、左右に分離して配置され、上方へ膨張し、臀部底面を押圧する(甲9、乙A10)。被告製品2は、被告製品1と同様の構成を有する。
イ被告製品1の制御手段による動作は、「Manual Selection Mode」(自由選択コース)中の「Seat」(座)エアーコース、被告製品2の制御手段による動作は「自由選択コース」中の「座」エアーコースにおいて発現する。控訴人主張の被告製品1及び2の構成a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられ、c前記背もたれ部には、腰用エアバッグが設けられたdマッサージチェアであって、e利用者の腰を施療する際に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、腰用エアバッグを作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
2本件特許C関係被告製品1及び2の説明被告製品1は、図1に示すように、座部と背もたれ部を備える椅子本体と、椅子本体の両側に腕ユニット(レスト部)とを有するマッサージチェアである。図4及び5に示すように、腕ユニットには内側後方又は側方から施療者の前腕を挿入するための開口部があり、開口部から延設して腕ユニットの内側に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空間を有する。被告製品2は、被告製品1と同様の構成を有する。
控訴人主張の被告製品1及び2の構成
ア本件発明C-1との関係における構成a座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に腕ユニットを有するマッサージチェアにおいて、b腕ユニットに、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための開口部と、該開口部から延設して腕ユニットの内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ、c空洞部は、腕ユニットの幅方向左右にそれぞれ設けた外側壁面部及び内側壁面部と底面部とから形成され、d外側壁面部及び内側壁面部の上面前端部に空洞部の先端部の上方を塞ぐ形態でレスト部が設けられており、e腕ユニットが、e-1前部に底面部と外側壁面部と内側壁面部とレスト部とに囲われ、空洞部に位置するロ型施療部と、e-2後部に底面部と外側壁面部によりL型に形成され、開口部に位置するL 型施療部とを備え、fそれぞれの施療部にエアセルがそれぞれ設けられているgことを特徴とするマッサージチェア。
イ本件発明C-2との関係における構成h腕ユニットは、中部に底面部と外側壁面部とレスト部によりコ型に形成されたコ型施療部を備えており、i底面部とレスト部とでは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面が異なっており、底面部の載置面よりもレスト部の載置面の方が高い位置に形成されているjことを特徴とする前記ア記載のマッサージチェア。
ウ本件発明C-3との関係における構成k開口部の外側壁面部及び底面部の二面において互いに対設する位置に各々エアセル1及びエアセル2が設けられており、l外側壁面部の下部において、エアセル1の下部の縁部1を止着するとともに、底面部の外側壁面部側に、エアセル2の外側壁面部側の縁部2を止着しているmことを特徴とする前記ア記載のマッサージチェア。
エ本件発明C-4との関係における構成n開口部の外側壁面部の下部において、エアセル1の下部に形成された縁部1を止着するとともに、開口部の底面部における外側壁面部側に他方のエアセル2に形成された縁部2を外側壁面部側に止着して構成したoことを特徴とする前記ウ記載のマッサージチェア。
オ本件発明C-5との関係における構成p腕ユニットは、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、背もたれ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背もたれ部のリクライニング動作に連動して腕ユニットが椅子本体に対して前後方向に移動するようにしたqことを特徴とする前記アないしエ記載のマッサージチェア。
〔図1〕被告製品1及び2(前面斜視図)背もたれ部腕ユニット座部(レスト部)〔図2〕被告製品1〔図3〕被告製品1〔図4〕被告製品1〔図5〕被告製品1
第2被告製品3、5及び8について(本件特許A関係)
1被告製品3、5及び8の説明被告製品5は、座部と、当該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備えたマッサージチェアである。図6に示すように、座部には、利用者の腿をマッサージする腿用エアバッグ、及び尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられており、また、背もたれ部には、利用者の腰を施療するもみ玉が設けられている。尻用エアバッグAは、座部上面に、左右に分離して配置され、上方へ膨張し、臀部底面を押圧する(乙A11、A16)。被告製品3及び8は、被告製品5と同様の構成を有する(甲9、乙A10、A14、A16)。被告製品3の制御手段による動作は、「メインコース」中の「クイックコース」及び「プロフェッショナルコース」中の「体幹トレーニングコース」、被告製品5の制御手段による動作は、「自動コース」中の「ストレッチコース」及び「ストレス解消コース」並びに「お好みコース」中の「カラダのばしコース」、被告製品8の制御手段による動作は、「メディカルコース」中の「おしり快適コース」において発現する。
2控訴人主張の被告製品3、5及び8の構成a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられ、c前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェアであって、e利用者の腰を施療する際に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、もみ玉を作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。〔図6〕被告製品
第3被告製品4、6及び7について(本件特許A関係)
1被告製品4、6及び7の説明被告製品7は、座部と、当該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備えたマッサージチェアである。図7に示すように、前記座部の左右両側には、利用者の尻をマッサージすることができる尻用エアバッグBが設けられており、また、図8に示すように、背もたれ部には、利用者の首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられている。尻用エアバッグBは、底面部の左右各端に分離して設けられ、座面上部に配置され、内側方に膨張し、臀部側面を挟持する(甲14、乙A13)。被告製品4及び6は、被告製品7と同様の構成を有する(乙A7、A12、A15。ただし、被告製品4の尻用エアバッグの形状を除く。)。被告製品4の制御手段による動作は、「メディカルコース」中の「全身コース」、「腰集中コース」、「求心コース」及び「遠心コース」、被告製品6の制御手段による動作は、「メディカルコース」中の「ストレッチ運動コース」、「ロッキング&マッサージコース」及び「クイックマッサージコース」、被告製品7の制御手段による動作は、「メディカルコース」中の「全身疲労回復コース」、「肩・筋肉疲労改善コース」及び「腰・筋肉疲労改善コース」、「クイックコース」中の「全身クイックコース」及び「腰集中コース」並びに「快適コース」中の「骨盤おしりコース」において発現する。
2控訴人主張の被告製品4、6及び7の構成a座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、b前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグBが設けられ、c前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられたdマッサージチェアであって、e利用者の腰を施療する際に、尻用エアバッグBを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、もみ玉を作動させる制御手段を設けたfことを特徴とするマッサージチェア。
〔図7〕被告製品7〔図8〕被告製品7(別紙2)本件明細書A【図1】【図2】【図3】【図4】【図5】【図6】(別紙3)本件明細書C【図1】 【図2】【図3】 【図4】【図6】 【図7】【図8】 【図9】【図10】 【図11】【図12】 【図13】【図14】 【図15】【図16】 【図17】【図18】 【図19】【図20】(別紙4)AS-878〔図1〕斜視図〔図2〕座の写真(シートカバー無)(別紙5)主張図面(被告製品1及び2)
1腕ユニット(控訴人主張)外側壁面部内側壁面部開口部空洞部
2乙C16(被控訴人作成の「実機検証報告書」)の【写真6】(被控訴人主張)
3被告製品1の肘掛部の各エアバッグの止着箇所の拡大図(控訴人・被控訴人主張)
4被告製品1の肘掛部の断面図(被控訴人主張)
5被告製品2の肘掛部の各エアバッグの止着箇所の拡大図(なお、図においては外壁エアバッグ1、2が突出部の頂面よりも下方で止着されているが、実際は突出の頂面に止着されている。下記6についても同じ。)(控訴人・被控訴人主張)
6被告製品2の肘掛部の断面図(被控訴人主張)(別紙6)乙C19【図1】 【図2】【図3】【図16】【図17】【図18】 【図19】【図20】 【図21】【図36】 【図37】【図38】(別紙7)乙C20【図1】 【図2】【図3】 【図4】【図5】 【図6】【図7】 【図8】【図9】 【図10】【図11】 【図12】
出典: 令和2年(ネ)第10024号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →