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判例調査 繊維

商標権(第25類 被服)

10.0% 認定料率
事件番号 令和2年(ワ)第23616号
判決日 2022/12/08
裁判所 東京地裁
認容額 322万1,388円(使用料相当額292万1,388円+弁護士費用30万円)

📋 判決要旨

判決日: 2022年12月8日 | 裁判所: 東京地裁 | 料率: 仮処分前10%・仮処分後20%(商標法38条3項・第25類被服)


英国ファッションブランド「BOY LONDON」の商標権侵害事件。原告(英国Anglo Franchise Ltd.)が、被告(PAGE-ONER株式会社)による「BOY LONDON」商標の無断使用に対し損害賠償・差止めを請求した。原告は38条2項の適用も主張したが、日本での販売を担っていたボーイロンドン(HK)は独占的通常使用権者に当たらないと判断され(他にAMC International Ltd.も日本向けに販売していたため)、また原告自身も日本で商品を販売していないことから、いずれも否定された。38条3項で算定。原告が訴訟に先立ち販売差止の仮処分決定を得たにもかかわらず、被告はその後も販売を継続したため、裁判所は仮処分前後で侵害態様が異なるとして料率を二段階に設定した。差止請求は認容(被告の店舗閉鎖等の主張にかかわらず、ウェブ販売の容易性と仮処分後の販売継続の悪質性を考慮)。


料率の決め方:(商標法38条3項)

  • 📊 基準: 被服分野のロイヤルティ料率 — 平均4.9%、最大7.5%(乙33)(※数値は[経産省2010年調査報告書](https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/guideline/list15.html)の値と一致し、同調査に基づくものと推定される)
  • 📈 仮処分前10%: その他本件に現れた諸事情を考慮し、相場上限(7.5%)を超えて認定
  • 📈 仮処分後20%: 裁判所の差止命令後も販売を継続した悪質性を加算し、仮処分前の倍額に設定
  • 原告の「使用料率20%以上」主張: 原告は他社とのライセンス契約(甲52)から算出した実質約31%を根拠に主張したが、同契約は最低保証額+超過分7%の構成であり、実質料率は売上高次第で変動する → 売上規模の異なる他社の実績は本件の基準として不適切と判断
  • 結論: 仮処分前10%、仮処分後20%

認容額322万1,388円(使用料相当額292万1,388円+弁護士費用30万円)。

📜 判決文全文

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原告の主張
被告の主張
裁判所の判断
▼ 判決文全文(クリックで折りたたみ)
主文
1被告は、原告に対し、322万1388円及びこれに対する令和2年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2被告は、別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を、別紙被告商品目録記載の商品又はその包装に付してはならない。

3被告は、別紙被告商品目録記載の商品又はそれらの包装に別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供してはならない。

4被告は、別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を付した洋服、コート、セータ一類、ワイシャツ類、下着、スカーフ、ネクタイの宣伝用ウェブサイトに、別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を付した製品を、販売のために展示してはならない。

5被告は、商品に関する広告、価格を内容とする情報に、別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を付して電磁的方法により提供してはならない。

6被告は、別紙被告商品目録記載の商品又はそれらの包装に別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を付した商品を廃棄せよ。

7原告のその余の請求をいずれも棄却する。

8訴訟費用及び調停費用は、これを11分し、その7を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

9この判決は、第1項ないし第5項に限り、仮に執行することができる。10 原告のために、この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。事実及び理由
第1 請求の趣旨
1被告は、原告に対し、2200万円及びこれに対する令和2年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2主文第2項ないし第6項と同旨3被告は、「ANGLOFRANCHISE」の商号を使用し、同商号を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入し、若しくは電気通信回線を利用して提供してはならない。
第2 事案の概要
1第1事件は、「ボーイロンドン」のブランド名で衣料品等の製造販売を業とする原告が、被告において、別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)を販売するに当たり別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章(以下「被告標章1」ないし「被告標章3」といい、併せて「被告標章」という。)を使用することが、原告の有する商標権を侵害し、また、被告が、被告のホームページにおいて原告の商号である「ANGLOFRANCHISE」(以下「被告表示」という。)を使用することが、不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するとして、民法709条並びに商標法38条2項又は3項及び不正競争防止法5条2項に基づき、2200万円(損害賠償金2000万円及び弁護士費用200万円の合計額)及びこれに対する不法行為の日の後である令和2年10月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

第2事件は、原告が、被告に対し、商標法36条1項及び2項に基づき、被告標章の使用の差止め及び被告標章を付した被告商品(以下「被告製品」という。)の廃棄等を求めるとともに、不正競争防止法3条1項及び2項に基づき、被告表示の使用の差止め等を求めた事案である。なお、当裁判所は、差止請求及び廃棄請求と損害賠償請求が別々に提起されている本件訴訟及び和解の経緯に照らし、可能な限り早期解決を図る観点から、原告の商標に関する差止請求及び廃棄請求に関する部分を認容し、損害賠償請求に関する部分を350万円の限度で認容する旨の決定(民事調停法17条)をしたところ、被告は異議の申立てをしなかったものの、原告が異議の申立てをしたことから、上記決定は、その効力を失った。

2前提事実(証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に断らない限り、証拠番号は第1事件の証拠番号であり、枝番を含むものとする。)

⑴ 当事者ア原告は、英国のロンドンに本社を置く民間有限会社であり、「ボーイロンドン」のブランド名による衣料品等の製造販売を主な業としている。(甲1、弁論の全趣旨)

イ被告は、インターネット等による通信販売及び日用雑貨品等の販売等を業とする日本の株式会社である。

⑵ 原告の商標権及び商号ア原告は、別紙商標権目録記載1ないし3の各商標権(以下「原告商標1」ないし「原告商標3」といい、併せて「原告商標」という。)を有している。

イ原告の商号は、「ANGLOFRANCHISE」である。(甲1、弁論の全趣旨)

⑶ 被告標章の使用被告は、遅くとも平成31年2月頃から、「BOYLONDON日本公式通販サイト」との名称でインターネット上にウェブサイトを開設し、同ウェブサイト等を通じて、被告製品を販売した。

⑷ 被告表示の使用被告は、「ANGLOFRANCHISE」という名称(被告表示)を被告のホームページに掲載し、公式にライセンス契約をしている旨をプレスリリースで宣伝した。

⑸ 被告標章と原告商標との対比被告標章1ないし3は、それぞれ原告商標1ないし3と同一又は類似である。

⑹ 原告商標の指定商品と被告商品との対比被告商品は、原告商標の指定商品に含まれる。

⑺ 仮処分決定原告は、平成31年4月3日、本件訴訟提起に先立ち、被告に対し、被告標章を被告商品又はその包装に付してはならないこと、当該商品等を譲渡等してはならないこと、被告標章を付した製品を宣伝用ウェブサイトに販売のために展示してはならないこと、広告等に被告標章を付して電磁的方法により提供してはならないこと、「ANGLOFRANCHISE」の商号を使用し、同商号を使用した商品を譲渡等してはならないこと、以上を求める仮処分命令の申立てをしたところ(当庁平成31年(ヨ)第22040号)、当庁は、令和元年12月5日、当該申立てを認容する決定(以下「本件仮処分決定」という。)をした。(甲16、当裁判所に顕著な事実)

⑻ 調停に代わる決定当裁判所は、令和4年7月22日、本件を民事調停に付した上で(当庁令和4年(メ)第10015号)、同調停事件について、同年8月3日、民事調停法17条により調停に代わる決定(以下「本件調停に代わる決定」という。)をしたところ、被告は異議を申し立てなかったものの、原告が異議を申し立て、同決定はその効力を失った。(当裁判所に顕著な事実)

3争点

⑴ 不正競争行為の成否(争点1)

⑵ サブライセンスの成否(争点2)

⑶ 並行輸入の成否(争点3)

⑷ 商標法38条2項の適用の可否(争点4)

⑸ 損害額(争点5)

⑹ 差止めの必要性(争点6)
第3 争点に関する当事者の主張
👤 原告の主張
1争点1(不正競争行為の成否)について(原告の主張)別紙原告商品等表示目録記載の「ANGLOFRANCHISE」(以下「原告表示」という。)は、原告が1989年から使用している商号である。そして、ボーイロンドンは、「世界的に有名となったブランド」(乙5の2)であるが、原告表示(ANGLOFRANCHISE)をインターネット上で検索すると、「BOYLONDON」と紐付いた情報が検索結果として表示されることから、原告表示は、「BOYLONDON」と強く結び付けられる商号として、周知又は著名な商品等表示に該当する。また、被告は、原告表示を自らのウェブサイトで使用し、正式にライセンスを受けている旨プレスリリースしている。このような被告による原告表示の使用は、需要者をして、原告と被告が同一の営業主体であるか、又は、原告の商品と被告商品とが同一の出所を示すものと誤信させるものであるから、原告の商品又は営業と混同を生じさせるものであり、不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争行為に当たる。
👤 被告の主張
(被告の主張)原告表示が、周知又は著名であることは争う。原告表示の検索結果において、「BOYLONDON」に関連するウェブサイトが列挙されるとしても、原告表示がボーイロンドンと何らかの関係がある可能性を示すにすぎない。被告が、自らのウェブサイト上に原告表示を記載したのは、被告が「ANGLOFRANCHISE」からライセンスを受けていることを示すためである。また、原告と被告は全く別の会社であるから、両社間において、営業又は商品の主体に混同が生じることはない。
👤 被告の主張
2争点2(サブライセンスの成否)について(被告の主張)被告は、以下に述べるとおり、真の商標権者であるボーイロンドンインターナショナルエルエルシー(以下「ボーイロンドンインターナショナル社」という。)からサブライセンスを受けていた。

⑴ 原告は、1992年12月29日、米国において、商標「BOYLONDON」(以下「本件米国商標」という。)の登録を受けた。本件米国商標の商標権は、1994年5月6日、原告から、BLUSCorporation(以下「BLUS社」という。)に譲渡され、最終的に、1998年12月7日、アングロフランチャイズ社(米国)に譲渡された。そして、原告が、「BOYLONDON」の商標権を譲渡するに当たり、商標権とは分離して商品販売権のみを保持し続ける合意がされることは考えられないから、本件米国商標の商標権を譲渡したことで、米国における「BOYLONDON」の商品販売権も譲渡したことは明らかである。加えて、1999年4月に、アングロフランチャイズ社(米国)が、全世界的な「ボーイロンドン」商標・事業権を買収したとの報道がされたことも考慮すれば、「BOYLONDON」に関する全世界の商品販売権(商標権その他の知的財産権を含む。以下同じ。)は、アングロフランチャイズ社(米国)に譲渡されているものと認められ、当該商品販売権には、原告商標1も含まれるから、原告商標1は、アングロフランチャイズ社(米国)に帰属したということができる。ボーイロンドンインターナショナル社の所有者兼代表取締役であるAは、1990年代後半、アングロフランチャイズ社(米国)を買収し、「BOYLONDON」に関する全世界の商品販売権を有することとなった(以下「本件商品販売権の集約」という。)。すなわち、この時点で、「BOYLONDON」に関する全世界の商品販売権は、実質的にA及びその所有会社であるボーイロンドンインターナショナル社等が所有することとなった。他方、本件米国商標は、2003年10月4日に登録を抹消されていたため、2004年2月10日、ボーイロンドンインターナショナル社の所有者であるAが、米国において「BOYLONDON」に関する商標を出願して登録を受け、その後、当該商標権をボーイロンドンインターナショナル社に譲渡した。

更にその後、ボーイロンドンインターナショナル社は、モンゴル及びベトナムにおいて「BOYLONDON」についての商標登録を受けた。なお、日本では「BOYLONDON」の商品について事業展開の優先度が低かったため、登録商標の移転手続が後回しになり、形式的な名義人は原告のままとなっている。

原告は、1993年に休眠会社となって以降、2015年度まで資産状態に一切変動がなく、事業実態が存在せず、2020年に至っても、従業員が1名しかいない形骸化した会社である。しかるに、原告は、実質的な代表者の交代を契機に、日本における原告商標1が原告の名義のままとなっていたことを奇貨として、原告商標2及び3の出願・登録を行い、被告に対して権利行使を行ったものである。

⑵ ボーイロンドンインターナショナル社(A)は、2018年6月11日、ジャアングループ株式会社(以下「ジャアングループ」という。)との間で、「BOYLONDON」に関する商品化ライセンス契約を締結した。同ライセンス契約は、ライセンスの対象地域を日本、米国、ベトナム及びモンゴルとするものであり、日本における「BOYLONDON」に関する一切の商標もライセンスの対象となる。

そして、ジャアングループは、上記商品化ライセンス契約に基づき、被告に対し、日本における「BOYLONDON」商品の販売及び商標の使用についてサブライセンスをした。

⑶ 以上のとおり、原告は、「BOYLONDON」に関する商品販売権をアングロフランチャイズ社(米国)に譲渡したことにより、原告商標1に係る権利を喪失している。

また、原告商標2及び3については、本件商品販売権の集約後に出願されているところ、原告自身が譲渡した事業に係る商標と同一・類似の商標を出願することは、公序良俗に反するものであり、原告商標2及び3は無効理由を有する登録商標である。さらに、上記のとおり正当なサブライセンスを受けた被告に対し、原告商標2及び3に基づき権利行使をすることは、権利の濫用に当たり認められない。
👤 原告の主張
(原告の主張)原告は、以下に述べるとおり、アングロフランチャイズ社(米国)及びボーイロンドンインターナショナル社に対して原告商標の譲渡を行っておらず、全世界に関する商品販売権の譲渡も行っていないから、被告が「BOYLONDON」のサブライセンスを受けているという被告の主張は、前提を欠くものであり、失当である。

⑴ 被告は、原告が「BOYLONDON」に関する商品販売権をアングロフランチャイズ社(米国)に売却したと主張するものの、このような取引は、取締役会の決定を要するほど重要なものであるにもかかわらず、被告は、取締役会議事録などの資料はもとより、売買契約書さえ提出していないから、売却の事実は認められない。

⑵ 原告商標の譲渡について、被告は、本件米国商標の譲渡を根拠として挙げるものの、本件で問題となっているのは、日本における商標であり、仮に米国における商標である本件米国商標について、ジャアングループに対する使用許諾があったとしても、それによって日本での使用が認められるものではない。

また、原告からBLUS社への本件米国商標の譲渡については、確かに1994年5月6日付けで記録されているものの、当該手続は、同年1月27日付けの書面に基づいて行われたものであるところ、BLUS社の設立は同年3月5日であり、書面作成時にはBLUS社は存在していないなど、本件米国商標の譲渡に関する被告の主張には、事実に反する点が多々含まれる。
👤 被告の主張
3争点3(並行輸入の成否)について(被告の主張)被告が販売していた商品のうち、米国で製造されたものは、①ボーイロンドンインターナショナル社が、米国において保有する商標を付したものであるが、②同社は、原告商標の真の権利者であるから、その商標は、原告商標と同一の出所を表示するものであるといえ、③同社は、当該商品の品質管理を直接的に行い得る立場にあり、その商標が保証する品質と原告商標が保証する品質には実質的に差異がないといえるから、被告が、それらの商品を輸入販売する行為は、真正商品の並行輸入として、商標権侵害の実質的違法性を欠くものである。
👤 原告の主張
(原告の主張)真正商品の並行輸入に該当するためには、輸入元の外国における商標権者と日本の商標権者が同一又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得る関係にあることが必須の前提条件である。本件においては、日本における原告商標の商標権者は原告であり、原告とボーイロンドンインターナショナル社とは異なる法人であるし、経済的に同一人と同視し得るような関係にもないから、上記前提条件は満たされない。また、原告は、米国で製造される商品の品質管理を行うことはできないから、上記被告の主張の③も、失当である。したがって、並行輸入の抗弁は成り立たない。
👤 原告の主張
4争点4(商標法38条2項の適用の可否)について(原告の主張)

⑴ 商標法38条2項が設けられた趣旨目的は、特許法102条2項と同様に、侵害行為がなかったならば権利者が得られたであろう利益という仮定の事実に基づく推論という事柄の性質上、侵害行為との因果関係の存在、損害額算定の基礎となる各種の数額等を証明することに困難を生じる場合が多いことから、侵害行為により侵害行為者が得た利益の額を被害者の逸失利益額と推定することによって権利者の損害証明の方法の選択肢を増やして被害の救済を図るとともに、侵害行為者に推定覆滅のための証明をする余地を残して、権利者に客観的に妥当な逸失利益の回復を得させる点にあるものと解される。この点において、独占的通常使用権者は、登録商標の使用による市場利益を独占し得る地位にあることにおいて商標権者や専用使用権者と異ならないから、独占的通常使用権の侵害による損害の賠償請求の場合においても、商標法38条2項を類推適用し得ると解するのが相当である。

⑵ 原告は、ボーイロンドン(HK)が大多数の株式を保有する、ボーイロンドン(HK)の子会社であり、原告とボーイロンドン(HK)は、Bが直接・間接に支配するグループ会社でもある。

原告は、2013年にボーイロンドン(HK)が設立されて以来、同社に原告商標の使用を許諾しており、日本への「BOYLONDON」関連商品の販売は、専らボーイロンドン(HK)が担ってきた。

そうすると、ボーイロンドン(HK)が日本における「BOYLONDON」関連商品の独占的な販売権者であり、原告商標の独占的通常使用権者であったことは明らかであるから、ボーイロンドン(HK)については、日本における原告商標の独占的通常使用権者として商標法38条2項の類推適用がある。

⑶ そして、ボーイロンドン(HK)は、2022年3月8日、同社が日本における本件商標権侵害に関し独占的通常使用権者として被告に対して有する損害賠償請求権一切を原告に譲渡した。したがって、原告は、被告に対して、本件商標権侵害に関し独占的通常使用権者としての損害賠償請求権を有する。

⑷ また、上記ボーイロンドン(HK)の損害賠償請求権と選択的に、原告固有の商標法38条2項に基づく損害賠償も請求する。
👤 被告の主張
(被告の主張)

⑴ 独占的通常使用権者は、債権的請求権を有するにすぎないところ、商標法38条1項ないし3項の規定は、商標権者等が登録商標の使用権を物権的権利として専有し、何人に対してもこれに基づく権利を自ら行使することができることを前提として、商標権者等の権利行使を容易にするために設けられた規定であるから、独占的通常使用権者の損害についてこれらの規定を類推適用することはできない。そうすると、仮にボーイロンドン(HK)が独占的通常使用権者であるとしても、ボーイロンドン(HK)の損害賠償請求権について商標法38条2項は類推適用されない。

⑵ また、そもそも以下のとおり、ボーイロンドン(HK)は原告商標の独占的通常使用権者ではない。

すなわち、日本国内において原告商標を付した原告の商品の販売を行っていた会社につき、原告は従前、原告、アイゴールド、永和インターナショナル及びAMCInternationalLtd.である旨主張していたにもかかわらず、突如として、日本における「BOYLONDON」関連商品の販売は、専らボーイロンドン(HK)が担ってきたなどと主張を変遷させており、当該主張の信用性は皆無である。

また、原告とボーイロンドン(HK)との間にライセンス契約書はなく、原告がボーイロンドン(HK)からライセンス料を一切受け取っていないことも、ボーイロンドン(HK)が原告商標の独占的通常使用権者ではないことを示している。

⑶ 原告は、1993年に休眠会社となって以降、2015年度まで資産状態に一切変動がなく、2020年に至っても、従業員が1名しかいない形骸化した会社である。実際に、原告は、被告が被告製品を販売していた期間、日本において洋服等の販売をしていないから、侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情等、損害の発生の基礎となる事情は存在しない。したがって、原告固有の商標法38条2項に基づく損害賠償請求も認められない。
👤 原告の主張
5争点5(損害額)について(原告の主張)

⑴ 商標法38条2項に基づく損害額ア2019年12月3日までの心斎橋店、ECモール及びラフォーレ原宿における被告製品の粗利は、●(省略)●である。

イ被告は、同月4日以降は、心斎橋店において被告製品の販売を中止したと主張するが、被告が同月28日時点においても、被告製品を大量に販売していたことは、証拠(甲22、54)から明らかである。それにもかかわらず、被告が同月4日以降の売上情報を開示していないこと、年末に向けての商戦で同月後半の売上げはそれ以前と比べて飛躍的に増えていると考えられることなどに照らせば、同月4日以降の心斎橋店の推計利益(粗利)は、●(省略)●と推計すべきである。

ウ被告は、心斎橋店において、1か月当たり●(省略)●万円を売り上げてきた実績があるから、被告の日本公式ストアにおける2019年2月15日から同年5月末日の間の売上額も、1か月当たり●(省略)●を下回らないというべきである。そうすると、同期間の日本公式ストアにおける売上額の合計は、●(省略)●×3.5か月)を下らない。そして、同期間の粗利は、被告製品の平均粗利率である49.5%を乗じた●(省略)●を下回らない。

エ以上によれば、被告が被告製品の販売により得た利益は、2019年12月3日までの心斎橋店、ECモール及びラフォーレ原宿の粗利が●(省略)●、同月4日以降の心斎橋店の粗利が●(省略)●、同年2月15日から同年5月末日までの日本公式ストアの粗利が●(省略)●であるから、合計●(省略)●を下回らない。そして、原告は、被告の侵害行為によって、本件訴訟を提起することを余儀なくされたところ、これに要する弁護士費用は200万円を下らない。

オ被告は、損害の推定覆滅事情を挙げるが、以下に述べるとおり、いずれも失当である。すなわち、全世界的なブランドであるBOYLONDONについて、販売店舗の地理的な商圏は無関係であるし、被告による被告製品の広告宣伝は、通常行われる広告宣伝の域を出ていない。また、原告はボーイロンドン(HK)から損害賠償請求権を譲り受けているから、原告が同社からライセンス料を受け取っているか否かは、推定の覆滅に影響しない。

⑵ 商標法38条3項に基づく損害額ア原告が他社と締結したライセンス契約(甲52)及び被告製品の売上げに係る資料に基づいてロイヤルティ額を計算すると、被告製品については、売上高の約31%に相当する金額がロイヤルティ額となる。したがって、商標法38条3項の使用料率は、販売額の20%を下回らないというべきであり、本件仮処分決定後の販売については、販売額の100%をもって使用料相当額とすべきである。そして、本件仮処分決定前の被告製品の売上額が約●(省略)●と推定され、同決定後の売上額が約●(省略)●と推定されることからすれば、商標法38条3項により算定される原告の損害額は、少なくとも1600万円となる。(計算式)●(省略)●=1600万円イ原告は、被告の侵害行為によって、本件訴訟を提起することを余儀なくされたところ、これに要する弁護士費用は160万円を下らない。
👤 被告の主張
(被告の主張)

⑴ 商標法38条2項に基づく損害額ア被告代表者は、2019年12月3日までに、心斎橋店の従業員に対して、「BOYLONDON」の商品の販売をやめるように指示しているから、同日に同商品の販売は停止している。実際に、日報(心斎橋店の売上げに係る資料)には、同日までの販売実績しか載っていない。

仮に、心斎橋店の従業員が、被告代表者の指示に反して「BOYLONDON」の商品を販売していたとしても、2019年12月における心斎橋店の全ての商品の売上高は、●(省略)●であるから(乙38の3)、同月における心斎橋店の被告製品の売上高は、最大でも●(省略)●である。

イ被告製品の限界利益は、粗利●(省略)●から直接経費●(省略)●を差し引いた、●(省略)●である。

ウ ①原告の商品と被告製品との販売態様等の相違、②被告による被告製品の広告宣伝、③原告はライセンス料を受け取っていないことからすれば、被告製品の販売によって原告の利益が減少したという関係になく、損害の推定は、少なくとも99%は覆滅されるべきである。

すなわち、①原告の商品は、ウェブサイト上で販売されていなかったのに対し、被告製品はウェブサイト上で販売されていた上、販売店舗の地理的な商圏も全く異なっていた。また、②被告は、被告製品の街頭広告を設置するなど、被告製品について広く広告宣伝を行っていた。さらに、③原告は、ボーイロンドン(HK)からライセンス料を受け取っていないから、原告の商品がいくら売れても、原告に利益は一切発生しない。

したがって、損害の推定は少なくとも99%は覆滅されるべきである。

⑵ 商標法38条3項に基づく損害額被服の分野における商標のロイヤルティ料率は、平均4.9%であり、最小値は0.5%であるから(乙33)、原告商標の使用料率は、多くとも0.5%である。

また、原告がライセンス料の実績として提出するライセンス契約書(甲52)は、ライセンシーも不明で信用性がないものであるから、使用料相当額を根拠付けるものとはいえない。
👤 原告の主張
6争点6(差止めの必要性)について(原告の主張)被告は、本件仮処分決定後も、店舗又はウェブサイトにおいて被告製品の販売を継続していたから、今後も販売を再開するおそれが高く、仮に一時的に被告標章の使用を中止していたとしても、被告製品の販売を再開することは容易である。

したがって、差止めの必要性が認められる。
👤 被告の主張
(被告の主張)被告は、既に被告標章の使用及び被告製品の販売をやめている。また、被告製品を販売していた店舗に係る契約は解約されているから、当該店舗において販売を再開することは不可能である。さらに、商標権侵害の問題が発生してから、ジャアングループとの関係が悪化したので、そもそも被告製品を仕入れることが不可能である。

これに対し、原告は、被告が、本件仮処分決定後も、被告製品の販売を継続していたと主張するものの、被告代表者は、遅くとも、本件仮処分決定の前である令和元年12月3日には、被告の従業員に対し、「BOYLONDON」に係る商品の販売停止を指示しており、実際にも、同日までの売上げしか報告されていない。

そして、被告は、被告標章の使用及び被告製品の譲渡等の差止めを認める内容の本件調停に代わる決定に対し、異議を申し立てなかったのであるから、被告において、被告標章の使用や被告製品の販売等を再開する意思がないことは明らかである。

したがって、販売停止から約2年9か月経過した現時点において、被告が被告標章の使用や被告製品の販売等を再開するおそれは皆無であり、差止めの必要性は認められない。
第4 当裁判所の判断
1争点1(不正競争行為の成否)について原告は、原告表示(ANGLOFRANCHISE)をインターネット上で検索すると、「BOYLONDON」と紐付いた検索結果が表示され、被告もウェブサイト上に原告表示を記載していることなどからすれば、原告表示は「BOYLONDON」と強く結び付けられるものとして、周知又は著名な商品等表示に該当すると主張する。

そこで検討するに、証拠(甲15、20、21)及び弁論の全趣旨によれば、グーグル検索において「ANGLOFRANCHISE」を入力すると、「ANGLOFRANCHISE」に関する検索結果のほかに、「BOYLONDON」に関する検索結果が表示されること、また、画像検索部分において、一部「BOYLONDON」の標章の画像が表示されること、被告のウェブサイトにおいて、被告は、「BOYLONDONの商標権&ライセンスを所有している企業『AnglofranchiseLtd.』より、正式に日本国内での販売許可を得ている唯一の企業」と表示していること、以上の事実が認められる。上記認定事実によれば、仮に「BOYLONDON」という標章に周知又は著名な出所識別機能があるとしても、検索サイトにおいて「ANGLOFRANCHISE」と「BOYLONDON」が併せて表示される事実は、「ANGLOFRANCHISE」と「BOYLONDON」が何らかの関係がある可能性を示唆するにとどまり、これを超えて、「ANGLOFRANCHISE」についても同様に、「BOYLONDON」と同程度の周知又は著名な出所識別機能があることまでを認めることはできない。そして、被告のウェブサイトの記載によっても、上記認定事実によれば、被告のウェブサイトにおける原告表示の記載は、単に「ANGLOFRANCHISE」からライセンスを受けている旨の事実を示すものにすぎず、需要者にとって「ANGLOFRANCHISE」の標章自体が周知又は著名であることを直接裏付ける事情とはいえない。その他に、本件全証拠を改めて検討しても、原告表示が周知又は著名な商品等表示であることを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、原告の主張は、採用することができない。

2争点2(サブライセンスの成否)について

⑴ 認定事実後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

ア原告は、1992年12月29日、米国において、商標「BOYLONDON」(本件米国商標)の登録を受け、1994年5月6日に、同商標をBLUS社に譲渡した。その後、再び原告が本件米国商標を取得したが、1998年に、同商標をアングロフランチャイズ社(米国)に譲渡し、その旨登録された。その後は、同社が同商標を所有し続けたが、同商標の登録は、2003年10月4日に抹消された。(乙6ないし8、弁論の全趣旨)

イ原告は、1993年度は、年間を通して休眠状態であり、その後も、2013年度や2014年度などに、会計処理上「休眠会社」に振り分けられることがあった。(乙3、13、14、弁論の全趣旨)

ウ韓国経済新聞は、1999年4月5日、Aが経営するアングロフランチャイズ社(米国)が、全世界の「ボーイロンドン」の商標権及び事業権を買収したと報道した。(乙5)

エアングロフランチャイズ社(米国)の所有者であるAは、本件米国商標が2003年10月4日に登録抹消されたのを受け、2004年2月10日、アメリカにおいて「BOYLONDON」に関する商標を出願して登録を受け、その後、ボーイロンドンインターナショナル社に同商標を譲渡した。(乙4、5、10、弁論の全趣旨)ボーイロンドンインターナショナル社は、2008年にモンゴルにおいて、2010年にベトナムにおいて、それぞれ「BOYLONDON」の商標を登録した。(乙11、12、弁論の全趣旨)

⑵ 被告は、ボーイロンドンインターナショナル社の所有者兼代表取締役であるAが、アングロフランチャイズ社(米国)を買収し、「BOYLONDON」に関する全世界の商品販売権を有することとなったところ(本件商品販売権の集約)、被告は、ボーイロンドンインターナショナル社から「BOYLONDON」のライセンスを受けたジャアングループとの間で、日本における「BOYLONDON」商品の販売及び商標の使用についてサブライセンス契約を締結しているから、日本における「BOYLONDON」の流通及び販売について合法的な権限を有している旨主張する。

そこで検討するに、被告の上記主張は、アングロフランチャイズ社(米国)が、全世界における「BOYLONDON」に関する商品販売権を原告から取得したことを前提事実とするものであるため、この点につき検討する。

上記認定事実によれば、原告は、自身が所有していた本件米国商標を、1994年5月6日にBLUS社に譲渡したことが認められるものの、当該譲渡は、飽くまで米国における商標「BOYLONDON」の譲渡にとどまるものであり、その他に、全世界における「BOYLONDON」に関する商品販売権を原告が譲渡したとの被告の主張を裏付ける契約書等の客観的証拠はなく、被告主張に係る上記前提事実を認めるに足りない。もっとも、上記認定事実によれば、韓国経済新聞は、Aが経営するアングロフランチャイズ社(米国)が、全世界の「ボーイロンドン」の商標権及び事業権を買収したと報道した事実が認められるものの、その報道を客観的に裏付ける譲渡契約書、譲渡代金の振込記録その他の客観的証拠が提出されていない。のみならず、証拠(乙4〔11頁~12頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、Aが全世界の商品販売権を取得した時期につき、当のAは、1991年であると陳述しているのに対し、被告は、1990年代後半頃であると主張しているのであるから、Aの陳述と被告の主張は、それ自体整合するものではない。しかも、上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、全世界の商品販売権を購入した当時のアングロフランチャイズ社(米国)の所有者又は経営者につき、韓国経済新聞は、Aであると報道するのに対し、被告は、Cであると主張しているのであるから、韓国経済新聞の報道と被告の主張も、それ自体整合するものではない。これらの事情の下においては、上記の報道の一事によって、アングロフランチャイズ社(米国)が、「BOYLONDON」につき日本を含む全世界的な商標権を取得したことを推認するに足りず、その他の本件証拠を精査しても、上記事実を認めるに足りない。そして、上記において説示したところを踏まえると、原告において1998年における本件米国商標の譲渡等をめぐる真相又は実情(上記ア)を具体的に明らかにしようとしない事情をも十分考慮しても、少なくとも本件証拠上は、被告主張に係る前提事実を認めるに足りず、被告の主張は、その前提を欠く。また、被告は、原告商標2及び3について、原告が権利行使をすることは、公序良俗に反する上、権利の濫用に当たると主張するものの、いずれも上記前提事実を前提とする主張であるから、その理由がないことは、上記と同様である。

したがって、被告の主張は、いずれも採用することができない。

3争点3(並行輸入の成否)について被告は、被告が販売していた商品のうち米国で製造されたものについては、真正商品の並行輸入に当たり、商標権侵害としての実質的違法性を欠くと主張する。

しかしながら、上記にいう並行輸入に該当するためには、少なくとも、外国における商標権者と日本の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が日本の登録商標と同一の出所を表示するものであることが必要であるところ(最高裁平成14年(受)第1100号同15年2月27日第一小法廷判決・民集57巻2号125頁参照)、被告は、日本における「BOYLONDON」の商標権者がボーイロンドンインターナショナル社であることを前提として、上記にいう要件を満たすと主張するものであり、その理由がないことは、前記2と同様である。したがって、被告の主張は、採用することができない。

4争点4(商標法38条2項の適用の可否)について

⑴ ボーイロンドン(HK)について原告は、日本における原告商標の独占的通常使用権者であるボーイロンドン(HK)から、同社が被告に対して有する損害賠償請求権を譲り受けた旨主張して、同社に商標法38条2項の類推適用があることを前提として、同項に基づく請求をしている。そこで、ボーイロンドン(HK)に商標法38条2項を類推適用できるか否かについて検討すると、証拠(甲40ないし42、49)によれば、ボーイロンドン(HK)が原告商標を付した原告の商品を日本向けに販売していることは認められるものの、ボーイロンドン(HK)以外にAMCInternationalLtd.も、日本向けに「BOYLONDON」商品の販売を行っていることが認められる(甲36)。そのため、ボーイロンドン(HK)は、原告商標の独占的通常使用権者には当たらないというべきである。そうすると、ボーイロンドン(HK)が日本における原告商標の独占的通常使用権者であることを前提に、同社に商標法38条2項が類推適用できるという原告の主張は、その前提を欠く。したがって、原告の主張は、採用することができない。

⑵ 原告自身について原告は、原告自身にも商標法38条2項が適用されると主張するが、原告自身においてボーイロンドン(HK)が日本における原告商標の独占的通常使用権者である旨主張しているとおり、原告は、原告商標を付した商品を日本において販売していないのであるから、原告の主張は、商標法38条2項を適用する前提を欠く。したがって、原告の主張は、採用することができない。

5争点5(損害額)について

⑴ 商標法38条3項に基づく損害額ア被告製品の売上高証拠(乙34ないし37)及び弁論の全趣旨によれば、本件仮処分決定前の被告製品の売上高は、心斎橋店において●(省略)●、ECモール及びラフォーレ原宿において●(省略)●であることが認められる。したがって、被告製品の売上高は、合計●(省略)●と認めるのが相当である。

また、証拠(甲18、22ないし25、54、乙38の3)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件仮処分決定後も、被告製品の販売を続けたところ、2019年12月の心斎橋店の全商品の売上高は、●(省略)●であることが認められることからすると、同決定後の被告製品の売上高は、弁論の全趣旨を踏まえ、●(省略)●と認めるのが相当である。これに対して、原告は、日本公式ストアの推定売上高は、●(省略)●円を下回らないと主張するが、証拠(乙36、37)及び弁論の全趣旨によれば、日本公式ストアの売上高は●(省略)●であり、当該売上高は上記ECモールの売上高に含まれるといえる。したがって、原告の主張は、採用することができない。

他方、被告は、心斎橋店の売上高は、証拠(乙34及び35)によれば、●(省略)●であると主張するが、売上高をまとめた乙34の集計には漏れが認められることを踏まえると(甲56、弁論の全趣旨)、原告の集計結果である●(省略)●と認めるのが相当である。したがって、被告の主張は、採用することができない。

イ実施料率証拠(乙33)及び弁論の全趣旨によれば、一般的な被服のロイヤルティ料率は、平均が4.9%、最大で7.5%であることが認められ、その他本件に現れた諸事情を考慮して、弁論の全趣旨を踏まえ、本件における実施料率を算定すれば、本件仮処分決定前は10%の限度で、同決定後は、同決定後も被告製品の販売を続けたという侵害態様の悪質性を考慮して20%の限度で、それぞれ認めるのが相当である。

これに対して、原告は、原告が他社と締結したライセンス契約(甲52)に基づいてロイヤルティ額を計算すると、被告製品については、売上高の約31%に相当する金額がロイヤルティ額となるから、使用料率は20%を下回らないと主張する。しかしながら、証拠(甲52)及び弁論の全趣旨によれば、上記ライセンス契約は、年間の最低ロイヤルティ料5万6000米ドル、最低使用料超過部分のロイヤルティ料率を7%と定めるものであるから、全体のロイヤルティ料率は、売上高によって左右されるものとなる。そうすると、売上高の規模を異にする上記他社のロイヤルティ額は、本件に適切ではなく、原告の主張は、上記認定を左右するものとはいえない。したがって、原告の主張は、採用することができない。

ウまとめ以上によれば、商標法38条3項による損害額は、本件仮処分決定前の売上高である●(省略)●に使用料率10%を乗じた●(省略)●(小数点以下四捨五入)と、決定後の売上高である●(省略)●に使用料率20%を乗じた●(省略)●との合計額である292万1388円と算定される。また、本件事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に鑑みると、これと相当因果関係にあると認められる弁護士費用相当損害額は、30万円と認めるのが相当である。そうすると、原告の損害額は、合計322万1388円と認められる。

⑵ 民事訴訟法248条の適用の可否原告は、被告からの資料の開示が不十分であることなどから、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとして、民事訴訟法248条を適用して損害額を認定するべきであると主張する。しかしながら、上記において説示したところを踏まえると、被告が原告に開示等した資料によれば、損害額を立証することが極めて困難であるとはいえない。したがって、原告の主張は、採用することができない。

⑶ 被告の過失の有無被告は、被告製品を日本国内において販売するに際し、ジャアングループより、同社は「日本におけるBoyLondonに関する流通及び販売に関する合法的な権限を付与されている。」と記載された確認書(乙16)を受け取っているから、商標権侵害について過失がないと主張する。しかしながら、同確認書は、本件仮処分決定に係る申立ての後に作成されたものであり(前提事実⑺、乙16)、同確認書を受け取ったことによって無過失が推認されるものでもなく、その他の証拠を精査しても、被告製品を販売していた当時、被告が商標権侵害について過失がなかったということはできない。

したがって、被告の主張は、採用することができない。

6争点6(差止めの必要性)について被告は、被告製品を販売していた店舗に係る契約が解約されたことなどから、被告製品の販売再開は不可能であるし、被告においてその意思がないことは、被告が、本件調停に代わる決定に対して異議を申し立てなかったことからも明らかであって、差止めの必要性は認められないと主張する。

しかしながら、店舗での販売をせずとも、ウェブサイトでの販売は可能かつ容易である上、被告が、本件仮処分決定後も被告製品の販売を続けていた事情その他に本件に現れた諸事情を踏まえると、被告は上記決定に対し異議を申し立てずこれを真摯に受け入れる姿勢を示したのであり、上記において説示した侵害態様の悪質性が相当程度低減している事情を十分に斟酌しても、なお差止めの必要性があるものと認めるのが相当である。したがって、被告の主張は、採用することができない。
第5 結論
よって、原告の各請求については、主文記載の限度で認容し、その余をいずれも棄却することとし、仮執行宣言については、廃棄請求に付するのは相当でなくその余の限度で付することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官中島基至
裁判官古賀千尋
裁判官國井陽平(別紙)商標権目録1登録番号 第4169226号出願日 平成4年7月22日登録日 平成10年7月24日商品及び役務の区分第25類指定商品 洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、下着、スカーフ、ネクタイ、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)2登録番号 第5704331号出願日 平成26年4月11登録日 平成26年9月26日商品及び役務の区分第14類指定商品 宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品、キーホルダー、宝石箱、記念カップ、記念たて、身飾品、貴金属製靴飾り、時計商品及び役務の区分第18類指定商品 かばん金具、がま口口金、蹄鉄、皮革製包装用容器、愛玩動物用被服類、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄商品及び役務の区分第25類指定商品 被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、仮装用衣服商品及び役務の区分第35類指定役務 織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、広告業、マーケティング、広告・事業の管理及び運営並びに一般事務処理に関する情報の提供(オンラインによるものを含む。)、インターネット上の広告スペースの貸与、インターネットを通じたオンラインによる商品の通信販売の取次ぎ、インターネット上におけるオンラインでの商業情報要覧の提供、フランチャイズの運営に関する助言、経営の診断又は経営に関する助言、市場調査又は分析、商品の販売に関する情報の提供、輸出入に関する事務の代理又は代行、コンピューターによるオンラインでの商品の受注事務の代行、インターネット・携帯電話を利用した通信販売の注文・受付・配送に関する事務処理代行、広告用具の貸与3登録番号 第5802810号出願日 平成26年4月11 日登録日 平成27年10月30日商品及び役務の区分第14類指定商品 宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品、キーホルダー、宝石箱、記念カップ、記念たて、身飾品、貴金属製靴飾り、時計商品及び役務の区分第18類指定商品 かばん金具、がま口口金、蹄鉄、皮革製包装用容器、愛玩動物用被服類、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄商品及び役務の区分第25類指定商品 被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、仮装用衣服商品及び役務の区分第35類指定役務 織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、身の回り品(傘を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、広告業、マーケティング、広告・事業の管理及び運営並びに一般事務処理に関する情報の提供(オンラインによるものを含む。)、インターネット上の広告スペースの貸与、インターネットを通じたオンラインによる商品の通信販売の取次ぎ、インターネット上におけるオンラインでの商業情報要覧の提供、フランチャイズの運営に関する助言、経営の診断又は経営に関する助言、市場調査又は分析、商品の販売に関する情報の提供、輸出入に関する事務の代理又は代行、コンピューターによるオンラインでの商品の受注事務の代行、インターネット・携帯電話を利用した通信販売の注文・受付・配送に関する事務処理代行、広告用具の貸与(別紙)被告標章目録123(別紙)被告商品目録フーディー、ティーシャツ、スウェットシャツ、クロップトップ、ジャケット、ブルゾン、パーカー、ジョガー、レギンス、トレーニングパンツ、帽子、洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、下着、スカーフ、ネクタイ(別紙)原告商品等表示目録ANGLOFRANCHISE

出典: 令和2年(ワ)第23616号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →

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