商標の区分(第◯類)をどう考えるか|45のジャンルと優先順位の決め方ガイド

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「第◯類ってそもそも何?」「何類を取ればいいのか毎回迷う」──そんな方向けに、この記事では商標の区分(第◯類)の考え方を、できるだけざっくり・実務寄りに整理します。

細かいルールは奥が深いのですが、まずは次の3つのポイントを押さえておくと、自分の中で区分を検討するときの整理がぐっと楽になります。

  1. 世の中のすべての商品・サービスは、あらかじめ「45個の区分」に整理されている
  2. 区分はざっくり言えば「大まかなジャンル」であって、その区分(ジャンル)の中で指定した商品・役務に権利が及ぶ
  3. 「どの区分を取るか」より前に、「自分は何を、誰に、どんな形で提供するのか」を整理することが大事

この記事では、この3つの軸をベースに、自社のビジネスに照らして「どの区分を、どこまで押さえるか」を考えるための目安を解説していきます。

1. 区分とは?──「世の中の全商品・全サービスを45個の大きなジャンルに分けたもの」

商標出願をする際には、「どんな名前やロゴを、どんな商品・サービスについて独占的に使いたいか」を指定する必要があります。

このときに使うのが区分(第◯類)です。区分は、特許庁が用意している「商品・サービスの分類表」の中で、世の中にある商品・サービスを45個のグループ(第1類〜第45類)に分けたそれぞれのグループ名だと思ってください。

わかりにくいかもしれませんが、次の2点だけ押さえておけばOKです。

  • 世の中のすべての商品・サービスは、特許庁の分類表の中で、いずれかの区分(第1類〜第45類)に分類されている
  • 商標出願では、その中から自社の商品・サービスに当てはまる区分(第◯類)を選んで指定する

つまり区分とは、世の中の全商品・全サービスを45個の大まかなジャンルに分けたものであり、その中から「どのジャンルについて権利を取りたいか」を選ぶ作業が、区分の検討だと考えるとイメージしやすいと思います。

よく出てくる区分の例

ざっくりしたイメージとしては、次のような感じです(実際にはもっと細かい定義があります)。

区分ざっくりしたイメージよく出てくる例
第9類ソフトウェア・機械・電子機器などアプリ、ソフトウェア、計測機器、電子機器 など
第35類広告・販売・小売・マーケティングオンラインショップの運営、マーケ支援、店舗の小売サービス など
第41類教育・セミナー・コンテンツ配信オンライン講座、セミナー、スクール、会員制コミュニティ など
第42類IT・システム開発・SaaS提供などクラウドサービス、SaaS、システム開発・保守 など

実務では、「自社がどのビジネスモデルか」によって、どの区分を重視するかが変わってきます。

2. 区分と「指定商品・指定役務」の関係

区分が「大まかなジャンル」だとすると、そのジャンルの中で名前やロゴを「どの商品・サービスに使うのか」を具体的に書き出したものが指定商品・指定役務です。

たとえば、第35類ひとつを取るにしても、

  • オンラインショップの運営
  • 商品の販売に関する情報提供
  • マーケティングの助言・コンサルティング

といったように、同じ第35類でも名前やロゴを「どんな商品・サービスについて使うのか」をどう書くかによって、指定商品・指定役務の内容が変わります。

区分の検討では、

  • どの区分(ジャンル)に入る商品・サービスか
  • その区分(ジャンル)の中で、どのような表現で自社の商品・サービス(役務)を指定するか

という「ジャンルの選び方」と「ジャンルの中身(指定商品・指定役務)の書き方」の両方を考えることになります。

3. よくある勘違いと、考え方の目安

勘違い①:区分をたくさん取れば、とにかく強い権利になる?

「区分を広く取れば安心」と考えがちですが、使う予定がない区分を広げすぎると、コストだけが増えてしまうこともあります。

実務的には、

  • 現在の事業の柱になっている商品・サービス
  • 今後1〜2年で具体的に展開する見込みが高いもの

を中心に、区分と指定商品・役務を組み立てることが多くなります。

勘違い②:区分が違えば、どんな同名サービスでもOK?

「区分が違えば同じ名前を使える」という説明を見かけることもありますが、実際にはもう少し慎重な判断が必要です。

たとえば、

  • 第35類(広告・販売)と第42類(SaaS)など、実務上は密接に関連している分野もある
  • 区分が違っても、実質的に似たサービスとして扱われるケースがある

といった事情があるため、「区分が違う=必ず大丈夫」ではありません。実務では、事業の中身やターゲットを踏まえて、どこまでが同じ・似ていると見なされるかを検討していきます。

勘違い③:ITサービスはとりあえず第9類を取ればいい?

SaaS・クラウドサービスなどでは、第9類(ソフトウェア)と第42類(SaaS・システム提供)が混在しやすい分野です。

たとえば、

  • パッケージソフトを販売するイメージが強い場合:第9類のソフトウェア関連を重視
  • クラウド上で利用させるサービスとしての側面が強い場合:第42類のSaaS関連を重視

といったように、ビジネスモデルによって重心が変わります。どちらを中心に考えるべきか迷う場合は、サービスの提供形態と今後の展開を整理した上で、弁理士に相談すると判断しやすくなります。

4. 区分検討の前に、自社で整理しておきたいこと

どの区分(第◯類)で出願するかは、最初から決め切る必要はありません。次のような「事業の中身」を整理した結果として区分の候補が見えてくるものです。

  • 今、実際に提供している商品・サービスの一覧
  • それぞれを、どのような形で提供しているか
    (例:ECで販売/サブスク提供/対面コンサル/オンライン講座 など)
  • 今後1〜2年で追加・拡張する予定のサービス
  • どのサービス名・ブランド名を「事業の柱」として育てたいか

これらを整理したうえで、出願前の準備資料チェックリスト(名前・ロゴ・商標編)のようなシートに落とし込んでおくと、区分や指定商品・役務を検討するときの土台になります。

5. ざっくり優先順位を決めるときの考え方

予算の都合で、「取りたい区分・サービスをすべて一度に出願する」のが難しいケースも多いと思います。その際は、次のような観点で優先度をつけていくことが多いです。

  • 売上・利益へのインパクト:どのサービスが売上の柱になっているか
  • ブランドとしての重要度:会社名・屋号、メインブランドかどうか
  • 露出の大きさ:広告・PR・展示会・メディア露出が多いものか
  • 競合状況:類似サービスや類似ネーミングが多い分野かどうか

「会社名」「事業の柱となるサービス名」「将来の展開を見据えて押さえておきたいブランド名」といった順番で、第一陣・第二陣のように出願を分ける進め方もよくあります。

6. よくある質問

Q1. 区分はいくつくらい取るのが一般的ですか?

業種や事業規模によってさまざまですが、中小企業やスタートアップでは、1〜3区分程度から始めるケースが多い印象です。
会社名・屋号と、事業の柱となるサービス名のための区分を中心に、予算や今後の展開を踏まえて検討していきます。

Q2. 区分が違えば、どんな同名サービスでも問題ありませんか?

いいえ、区分が違っても、実質的に似たサービスとして扱われるケースがあります。
特に、IT・オンラインサービスなどでは、35類・42類のように実務上密接に関連する区分も多いため、「区分が違えば必ず安心」というものではありません。

Q3. ITサービスの場合、第9類と第42類のどちらを重視すべきですか?

ビジネスモデルによって重心が変わります。
パッケージソフトの販売に近い形なら第9類、クラウド上のサービス提供としての側面が強いなら第42類を中心に検討することが多いです。実際には両方を組み合わせるケースもあります。

Q4. 出願後に、別の区分を追加したくなったらどうなりますか?

すでに出願した出願に後から区分を追加することはできません。別の区分をカバーしたい場合は、新たに追加で出願する必要があります。
そのため、最初の出願時点で「押さえておきたい範囲」をどこまで含めるかを検討しておくことが大切です。

7. まとめ:区分は「45個の大きなジャンル」。大事なのは事業の中身を言葉にすること

商標の区分は、

  • 世の中のすべての商品・サービスを、45個の大まかなジャンルに分けたものであり
  • その中から、自社の商品・サービスが当てはまるジャンル(区分:第〇類)を選択する

一方で、実務で本当に大切なのは、次のような点を整理しておくことです。

  • 自社はどんな商品・サービスを扱っているのか
  • それをどのような形で提供しているのか(販売・サブスク・講座・コンサルなど)
  • その中で、どの名前・ロゴを「事業の柱」として育てたいのか

こうした「事業の中身」が整理できていれば、どの区分を選ぶかや、指定商品・指定役務をどう書くかも決めやすくなります。

この記事と、出願前の準備資料チェックリスト(名前・ロゴ・商標編)を組み合わせて、まずは自社のブランドをどう守りたいのかを整理してみていただければと思います。

関連リンク

あわせて次のページもご覧いただくと、商標出願の全体像と準備の流れを整理しやすくなります。

次の一歩

この記事を読んでみて、「うちの事業ではどの区分を、どこまで取るべきか」で迷われた場合は、次のページも参考になります。

この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。