商標を貸している相手が大手企業であったり、無断使用している相手が自社より規模が大きい場合、「ライセンス料(使用料)の見直し」や「無断使用の指摘」はハードルが高く感じられるものです。「波風を立てて取引が停止したら困る」「関係を悪化させたくない」という心理から不当に安いライセンス料やブランドの無断使用を黙認しているケースもあります。
このような力関係に差がある状況で、感情論や漠然とした相場感で交渉するのは危険です。まず必要なのは、商標権の価値を客観的な“数字”で可視化することです。現在のライセンス料は料率(%)に換算して妥当なのか? 無断使用された期間の「使用料相当額」はいくらになるのか?第三者に説明可能で裏付けのある手法を用いてこれらを算出することで、「現状維持」か「交渉」など、今後の現実的な選択肢が見えてきます。
あなたの現在の状況は、次のどちらに近いでしょうか。①「ライセンス契約はあるが、料率が安すぎる気がする」、あるいは②「契約がないのにブランド名が使われている(無断使用)」。置かれている状況によって、計算すべき「金額」や「料率」も、取るべきアプローチも変わります。
そこでこの記事では、商標価値評価の1つの手法である「RFR法(ロイヤルティ免除法)」の考え方を用いて、(1) 現行の料率(%)の妥当性、(2) 無断使用された“過去分”の対価、(3) 今後の進め方(現状維持/交渉/正式評価)を判断するためのヒントをお伝えします。
あなたはどちらのタイプですか?
まずは、ご自身の状況に近いものを選んでください。それぞれの状況に合わせた「数字の整理の仕方」と、具体的な「解決事例」をご用意しました。
① ライセンス契約はあるが、使用料が安すぎる気がする
「大手メーカーに商標を貸しているが、提示された%や金額が妥当かわからない」という方はこちら。👉 【実例】その商標使用料、安すぎませんか?平均3%に対し「0.6%」だった事例と対策
② 契約がない/あるいは範囲を逸脱し、無断使用が続いている
「自社より規模の大きい会社にブランド名を使われているが波風を立てるのが怖くて言い出せない」という方はこちら。 👉 【事例】商標の無断使用で解決金はいくら?使用料相当額で交渉方針を固めたケース
「大手との取引」は自社の信用に:だからこそ言いにくいジレンマ
大手企業との取引がある場合、それは単なる売上以上に、自社にとって大きな「信用」や「箔」になります。「あの有名企業と取引がある」という事実は、他社への営業においても強力な武器になるでしょう。
しかし、その「つながり」が重要であればあるほど、逆に身動きが取れなくなってしまいます。「条件交渉をして、この関係が切れたら困る」という不安から、相場より安いライセンス料であっても、飲み込んでしまう。これは経営判断として、非常に悩ましいところだと思います。
一方で、契約のない「無断使用」の場合も、相手が自社より規模感が多い相手だと別の恐怖が働きます。取引がないとはいえ、「大大きな相手に波風を立てて、法的な争いやトラブルに巻き込まれるのが怖い」という心理です。力関係(規模の差)の前に、泣き寝入りを選んでしまうケースもあるかもしれません。
ただ、もし「我慢するしかない」と思い込んでいるなら、少しだけ視点を変えてみてください。「関係の維持」と「正当な対価」はやり方次第で両立可能です。これを実現するために必要なのは、相手の担当者が社内で説明できる「材料」を渡すことです。
大手企業ほど、個人の感情や「なんとなく」の理由でお金を動かすことはできません。しかし逆に言えば、会計や法務の観点から「適正な評価額(根拠)が出ているのに、無視するとコンプライアンス上のリスクがある」という状況や、「この金額なら妥当である」と社内稟議を通せるだけの客観的なレポートがあれば、話は別です。
感情的に権利を主張するのではなく、相手が社内手続きを進めやすいような「数字の根拠」をこちらから整備してあげる。これが、波風を立てずに状況を動かすための、現実的なアプローチの1つです。
「本来いくらが妥当か」を客観的な数字で明らかにする
では、相手が社内で説明できるだけの「客観的な数字」を具体的にどう算出すればよいのでしょうか。基本となるのは、「RFR法(ロイヤルティ免除法)」という評価手法です。名前は難しそうですが、発想自体は極めてシンプルです。
「もし自社がその商標を持っていなかったら、普通はいくら払って借りるか?」
この問いを数字に落とし込むために、業界の相場や利益率などのデータを使って、『本来あるべき料率(%)』や『具体的な金額』を算出します。
当事務所では、このRFR法(ロイヤルティ免除法)をもとに現状を整理する「無料相談(30分)」を行っています。本格的な評価に入る前の事前診断として、主に以下の点をクリアにします。
- 11万円の正式な価値評価を行い、交渉のための「根拠資料」を作る価値があるか
- 料率(%)に直したとき、業界相場から大きく外れていないか
- 無断使用の場合、「過去分」をいくらとして整理するのが妥当か
RFR法のロジックの正当性や、なぜ商標価値が事業判断の強力な根拠になるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。 👉 簡易RFRによる商標価値評価が事業判断の根拠になる理由
次の一歩は2通り:状況に合わせて使い分ける
数字などを整理した結果、進むべき道は大きく2つに分かれます。
- 「安すぎる」場合:適切な「料率・相場」を算出し、関係性を維持したまま契約を見直すための交渉設計を行います。
- 「無断使用」の場合:「使用料相当額」を過去に遡って算出し、相手に是正を求めるための方針を整理します。
よくある質問
Q. 無料相談の結果、やはり相手との関係が怖いので「交渉しない」という選択もできますか?
もちろんです。無料相談の目的は、まず「現状(損をしている金額)」を正しく知ることです。知った上で「今回は見送る」という判断をされる経営者様もいらっしゃいます。無理に交渉を勧めることはありません。
Q. ライセンス契約を交わしていないのですが、相談できますか?
はい、可能です。「口約束だけでロゴを使わせている」「昔からの付き合いで、なんとなく黙認している」といったケースこそ、むしろ早めにご相談ください。書面がないと使用範囲や対価が曖昧になりやすく、将来的なトラブルのリスクが非常に高いためです。
Q. 相手が大企業ですが、揉め事にはなりませんか?
もっとも重視するのは『関係維持』です。いきなり相手に交渉を仕掛けるのではなく、まずは「客観的な根拠」を整理します。その上で、もし伝える場合も「角が立たない伝え方」を慎重に検討します。ご自身が納得するまで無理に動くことはありませんので、ご安心ください。
まとめ:商標を「ただの権利」で終わらせず、実用的な「道具」として活用する
商標は、登録して終わりではありません。事業の中で「活用」されてこそ意味を持ちます。
「作る(権利化)」だけで満足せず、「守る(範囲外の使用や無断使用の是正)」を行い、「活かす(正当な対価を得て利益に変える)」こと。この3つが揃うと、商標が単なる「権利」の枠を超え、ビジネスを有利に進めるための「実用的な道具」として活用できます。
相手が大手や規模が大きい会社だからと諦めてしまう必要はありません。まずは「数字」で現状を把握することで関係を維持したまま対等に向き合うための、現実的な選択肢が見えてきます。
まずは、その漠然としたモヤモヤを「客観的な数値」に変えるところから始めてみませんか?あなたのブランドの価値を正しく言語化するお手伝いをします。
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この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)














