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主 文
1被告らは、原告に対し、連帯して、1582万6201円及びこれに
対する令和6年9月20日から支払済みまで年3分の割合による金員
を支払え。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用はこれを50分し、その1を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。
4この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
第1 請求
1被告パナソニックハウジングソリューションズ株式会社は、別紙物件目録記載の製品を製造し、販売し、貸し渡し、又は販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2被告ケイミュー株式会社は、別紙物件目録記載の製品を販売し、貸し渡し、又は販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
3被告らは、第1項及び前項の製品を廃棄せよ。
4被告パナソニックハウジングソリューションズ株式会社は、別紙物件目録1ないし6記載の製品の製造のための金型を廃棄せよ。
5被告らは、原告に対し、連帯して、4億4163万2754円及びこれに対する令和6年9月20日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1本件は、発明の名称を「サイフォン雨樋システム」とする特許(特許第6784708号。以下「本件特許1」といい、本件特許1に係る特許権を「本件特許権1」という。)及び「排水部材及び雨樋」とする特許(特許第7239774号。以下「本件特許2」といい、本件特許2に係る特許権を「本件特許権2」という。)の特許権者である原告が、被告らが製造、販売等する別紙物件目録記載の各製品(以下、同別紙に記載した名称に従い「被告製品1-1」などといい、これらを併せて「被告製品」という。)が本件特許権1及び2を侵害すると主張して、被告らに対し、特許法100条1項に基づく被告製品の製造、販売等の差止めを、同条2項に基づく被告製品の廃棄を、民法719条、709条に基づく損害賠償及びこれに対する令和6年9月20日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の各支払を、それぞれ求めるとともに、被告パナソニックハウジングソリューションズ株式会社(以下「被告パナソニック」という。)に対し、特許法100条2項に基づく製造用金型の廃棄を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)
⑴ 当事者
ア原告は、建築、土木、車両、電子機器等各産業向けプラスチック製品の製造、販売等を業とする会社である。
イ被告パナソニックは、暮らしに関わる住宅設備、建材等の製造販売、エンジニアリング事業等を業とする会社である。
ウ被告ケイミュー株式会社(以下「被告ケイミュー」という。)は、屋根材、外壁材等の製造販売事業、雨樋の販売事業等を業とする会社である。
⑵ 本件各特許
ア本件特許1(甲1、3)(ア) 原告は、以下の本件特許1を有している(本件特許1に係る願書に添付された明細書の記載及び図面を「本件明細書1」という。)出願番号特願2018-1274号発明の名称サイフォン雨樋システム出願日平成30年1月9日登録日令和2年10月27日特許番号特許第6784708号(イ) 本件特許1に係る特許請求の範囲の記載は、別紙「特許請求の範囲」1-1及び1-2記載のとおりである(以下、本件特許1の特許請求の範囲に記載された発明を総称して「本件発明1」といい、請求項1に記載された発明を「本件発明1-1」などという。)。
イ本件特許2(甲2、4)(ア) 原告は、以下の本件特許2を有している(本件特許2に係る願書に添付された明細書の記載及び図面を「本件明細書2」という。)出願番号特願2022-140664号発明の名称排水部材及び雨樋原出願日平成30年6月22日出願日令和4年9月5日登録日令和5年3月6日特許番号特許第7239774号(イ) 本件特許2に係る特許請求の範囲の記載は、別紙「特許請求の範囲」2-1ないし2-9記載のとおりである(以下、本件特許2の特許請求の範囲に記載された発明を総称して「本件発明2」といい、請求項1に記載された発明を「本件発明2-1」などという。)。
⑶ 構成要件の分説本件発明1及び2を構成要件に分説すると、次のとおりとなる(以下、分説した構成要件をその符号に従い「構成要件1-1-A」などという。)
ア本件発明1-11-1-A軒樋と、1-1-B前記軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒状部を備え、且つサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部と、1-1-C前記サイフォン発生部を有する雨樋上流部の下流側に一端が接続された第1エルボと、1-1-D前記第1エルボの他端に一端が接続された呼び樋と、1-1-E前記呼び樋の他端に一端が接続された第2エルボと、1-1-F前記第2エルボの他端に一端が接続された竪樋と、1-1-Gを備えたサイフォン雨樋システムであって、1-1-H前記第1エルボ及び前記第2エルボはそれぞれ、1-1-H-1管軸を含む平面における断面で見たときに、内周側の内壁面及び外壁面の曲率半径が64mmよりも大きく125mmよりも小さく、且つ、開口面積が50c㎡以上である曲管部と、1-1-H-2前記曲管部の両端に設けられた受け口と、を備え、1-1-I前記呼び樋の長さは0mより大きく、且つ2.0m以内である1-1-Jことを特徴とするサイフォン雨樋システム。
イ本件発明1-21-2-A軒樋と、1-2-B前記軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒状部を備え、且つサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部と、1-2-C前記サイフォン発生部を有する雨樋上流部の下流側に一端が接続された第1エルボと、1-2-D前記第1エルボの他端に一端が接続された呼び樋と、1-2-E前記呼び樋の他端に一端が接続された第2エルボと、1-2-F前記第2エルボの他端に一端が接続された竪樋と、1-2-Gを備えたサイフォン雨樋システムであって、1-2-H前記第1エルボ及び前記第2エルボはそれぞれ、1-2-H-1管軸を含む平面における断面で見たときに、内周側の内壁面及び外壁面の曲率半径が64mmよりも大きく125mmよりも小さく、且つ、開口面積が50c㎡以上である曲管部と、1-2-H-2前記曲管部の両端に設けられた受け口と、を備え、1-2-I前記竪樋の一端と他端との間の一か所以上の合流位置で前記竪樋に合流管が交差し、1-2-J前記竪樋の一端と最も上流側の合流位置との距離は2.0m以上である1-2-Kことを特徴とするサイフォン雨樋システム。
ウ本件発明2-12-1-A底面に貫通穴が形成された軒樋と、前記貫通穴の下面に接続された竪樋継手を介して前記軒樋と接続された竪樋と、を備えた雨樋に設けられる排水部材であって、2-1-B前記貫通穴に挿入されて落し口部を形成する円筒状の筒部と、2-1-C前記筒部の上端から径方向の外側に延びる板状の鍔部と、2-1-D前記落し口部の上方に配置される蓋部材と、2-1-E前記鍔部の上面と前記蓋部材の下面の外周部とを連結する複数の縦リブと、を有し、2-1-F前記蓋部材と前記鍔部との間に流入開口が形成され、2-1-G前記筒部、前記鍔部、前記蓋部材および前記縦リブは一体的に形成され、2-1-H前記筒部と前記蓋部材の中心軸は鉛直方向に一致し、2-1-I前記筒部の外面には、前記竪樋継手の内面に形成された雌ねじと螺合可能な雄ねじが形成され、2-1-J前記蓋部材は前記中心軸の方向から見たときに円形であり、2-1-K前記複数の縦リブは、前記中心軸の方向から見たときに前記鍔部上に周方向に配置され、かつ、前記縦リブは径方向に延びる板状に形成され、2-1-L前記落し口部の開口面積は、30cm2以上190cm2以下である2-1-M排水部材。
エ本件発明2-22-2-A底面に貫通穴が形成された軒樋と、前記貫通穴の下面に接続された竪樋継手を介して前記軒樋と接続された竪樋と、を備えた雨樋に設けられる排水部材であって、2-2-B前記貫通穴に挿入されて落し口部を形成する円筒状の筒部と、2-2-C前記軒樋の底面に設置される鍔部と、2-2-D前記落し口部の上方に配置される蓋部材と、2-2-E前記鍔部の上面と前記蓋部材の下面の外周部とを連結する複数の縦リブと、を有し、2-2-F前記蓋部材と前記鍔部との間に流入開口が形成され、2-2-G前記筒部と前記鍔部との間の接続部は曲面で形成され、2-2-H前記筒部、前記鍔部、前記蓋部材および前記縦リブは一体的に形成され、2-2-I前記筒部の外面には、前記竪樋継手の内面に形成された雌ねじと螺合可能な雄ねじが形成され、2-2-J前記複数の縦リブは、下端が前記接続部に設けられ、かつ、前記縦リブは径方向に延びる板状に形成され、2-2-K前記落し口部の開口面積は、30cm2以上190cm2以下である2-2-L排水部材。
オ本件発明2-32-3-A前記筒部の上端は前記軒樋の底面よりも下にあり、2-3-B前記縦リブの下端は前記筒部の上端と前記軒樋の底面との間にある、2-3-C請求項1または2に記載の排水部材。
カ本件発明2-42-4-A前記蓋部材は、前記底面からの高さが軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍である2-4-Bことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の排水部材。
キ本件発明2-52-5-A前記蓋部材の下面には、誘導ガイドが形成され、2-5-B前記誘導ガイドは円錐状である2-5-Cことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の排水部材。
ク本件発明2-62-6-A前記蓋部材は、断面視形状で下に凹んだ形状である、2-6-B請求項1ないし4のいずれか1項に記載の排水部材。
ケ本件発明2-72-7-A軒樋と、2-7-B前記軒樋の底面に設置された請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排水部材と、2-7-C前記軒樋の底部から下方に突出した前記筒部に接続される竪樋継手と、2-7-D前記竪樋継手に接続された第1エルボと、2-7-E前記竪樋継手に前記第1エルボを介して接続される呼び樋と、2-7-F前記呼び樋に接続された第2エルボと、2-7-G前記呼び樋に前記第2エルボを介して接続される竪樋と、を備える雨樋であって、2-7-H前記竪樋の長さは2.0m以上である2-7-Iことを特徴とする雨樋。
コ本件発明2-82-8-A前記第1エルボおよび前記第2エルボは、曲管部の両端に設けられた受け口を有し、2-8-B前記第1および第2エルボの管軸を含む断面で見たときの前記曲管部の内周側の内壁面の曲率半径は少なくとも64mmより大きく、且つ125mmよりも小さい2-8-Cことを特徴とする、請求項7に記載の雨樋。
サ本件発明2-92-9-A前記呼び樋の長さは0m以上2.0m以下である2-9-Bことを特徴とする、請求項7または8に記載の雨樋。
⑷ 本件発明の概要(甲3、4、弁論の全趣旨)
ア本件発明1本件発明1は、雨樋の排水能力を高めるためのサイフォン雨樋システムに関するものであり、雨水を円滑に流下させるエルボ及びサイフォン雨樋システムの提供を目的とする。雨樋とは、屋根の軒先から流れ落ちる雨水を受け止め、地上へと流し込むものであり、排水部材のほか、軒樋、呼び樋、竪樋、連結管、エルボ等の複数の部材の組合せにより構成される。
イ本件発明2本件発明2は、雨樋の部材として用いられる排水部材に関するものであり、コストを抑え、作業性に優れた簡単な構造で、優れたサイフォン性能を発揮する排水部材を提供することを目的とする。本件発明2のうち、本件発明2-1ないし2-6は排水部材に関するものであり、本件発明2-7ないし2-9はその排水部材を用いた雨樋システムに関するものである。
⑸ 被告製品の概要(甲5ないし7、弁論の全趣旨)
ア「大型雨とい高排水システム」被告らが提案する「大型雨とい高排水システム」とは、サイフォン現象を連続的に発生させることで、排水能力を従来よりも大幅に向上させることができる排水システムであり、専用部材と既存部材を組み合わせるシステムである。被告製品1ないし13は、いずれも「大型雨とい高排水システム」の構成部材である。
イ被告製品1ないし3被告製品1ないし3は自在ドレン(高排水用)であり、「大型雨とい高排水システム」の専用部材である。被告製品1-1、2-1及び3-1は自在ドレン(高排水用)の上部材であり、被告製品1-2、2-2及び3-2は自在ドレン(高排水用)の下部材である。なお、被告製品1-1、2-1及び3-1は、本訴訟係属中に設計変更がされており、令和6年9月21日以降は設計変更後の製品が製造、販売されている(以下、特に断らない限り、被告製品1ないし3は、設計変更前の製品をいうものとする。)。
被告製品1の製品図面及びその外観は、図のとおりである。被告製品1ないし3は、サイズ(仕様)の違いにより特定されており、その形状はいずれも同様である。
ウ被告製品4ないし6被告製品4ないし6は90°大曲エルボLLである。被告製品4ないし6は、サイズ(仕様)の違いにより特定されており、その形状はいずれも同様である。「大型雨とい高排水システム」においては、90°大曲エルボLLのほか、45°エルボ45L、SソケットDVSSが用いられる場合があり、これらの形状は、図のとおりである。
エ被告製品7ないし12被告製品7ないし12は軒樋及びその構成部材である。被告製品7ないし9は前高タイプの軒樋である。被告製品7ないし9は、サイズ(仕様)の違いにより特定されており、その形状はいずれも同様である。被告製品7-1と7-2は、伸縮継手の有無により、被告製品8-1ないし8-6は、軒継手、伸縮継手及び2重パッチン軒継手の組合せにより、被告製品9-1と9-2は、伸縮継手の有無により、それぞれ特定されている。被告製品10ないし12は折版タイプの軒樋である。被告製品10、11及び12は、サイズ(仕様)の違い及び形状(浅型・深型)により特定されている。被告製品10-1と10-2、11-1と11-2、12-1と12-2は、伸縮継手の有無により、それぞれ特定されている。
オ被告製品13被告製品13は谷コイル(箱とい用加工材料)である。被告製品13-1と13-2はサイズ(仕様)の違いにより特定されている。
カ被告システム被告システムは、その構成部材の組合せにより、「大型雨とい高排水システム」の構成を特定したものである。「大型雨とい高排水システム」の「部材・施工組立図」は次のとおりであり、同システムの代表的な組立て方法として、①合流がない場合、②合流がある場合、③貫通管を使って合流させる場合がある(甲6の2)。被告システム1ないし6は、その番号を「α-β-γ」と表示した場合、αはエルボの形状及びサイズに基づき、βは上記①~③の組立て方法に基づき、γはその余の部材の構成に基づいてそれぞれ特定されている。被告システム7は、被告システム2-2-γ、2-3-γ、3-2-γ及び3-3-γの構成部材から「庇とい」を除いたものである。【部材・施工組立図】
⑹ 被告らの行為(争いがない)
ア被告パナソニックは、被告製品1ないし3、7ないし13を製造し、被告製品1ないし13の販売又は販売の申出をしている。
イ被告ケイミューは、被告製品1ないし13の販売又は販売の申出をしている。
⑺ 先行文献等
ア本件特許1の特許出願の出願日(平成30年1月9日)より前に、以下の公刊物等が存在していた。原告が作成した「エスロン大型用総合資料」という名称のパンフレット(平成19年3月頃作成。乙A21。以下、当該パンフレットを「乙A21文献」といい、同文献に記載された発明を「乙A21発明」という。)
イ本件特許2の分割出願に係る出願遡及日(平成30年6月22日)より前に、以下の公刊物が存在していた。発明の名称を「ANIMPROVEDROOFDRAINAGEOUTLET」とする国際公開(WO2010/110744A1。公開日平成22年9月30日。乙A25。以下「乙A25公報」といい、同公報に記載された発明を「乙A25発明」という。)
⑻ 仮処分命令の申立て原告は、令和5年12月28日、当庁に対し、被告製品の製造、販売等の差止めなどを求める仮処分を申し立て(当庁令和5年(ヨ)第30402号)、当庁は、令和6年9月20日、被告らに対し、被告製品1-1、2-1及び3-1の製造、販売等の差止めを命ずる仮処分命令を発した(当裁判所に顕著な事実)。
3争点
⑴ 本件発明1
ア構成要件充足性(争点1)(ア) 被告システム2、3及び7は「サイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部」(構成要件1-1-B、1-2-B)を備えているか(争点1-1)(イ) 被告システム2、3及び7は「呼び樋の長さは0mより大きく、且つ2.0m以内」(構成要件1-1-I)であるか(争点1-2)(ウ) 被告システム2、3及び7は「竪樋の一端と最も上流側の合流位置との距離は2.0m以上」(構成要件1-2-J)であるか(争点1-3)
イ無効事由の有無(争点2)乙A21発明に基づく進歩性の欠如(争点2)
⑵ 本件発明2
ア構成要件充足性(争点3)(ア) 被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は「蓋部材」(構成要件2-1-D、2-2-D)に当たるか(争点3-1)(イ) 被告製品1-1、2-1及び3-1の縦リブは「前記鍔部の上面と前記蓋部材の下面の外周部とを連結」(構成要件2-1-E、2-2-E)し、「中心軸の方向から見たときに前記鍔部上に周方向に配置され」(構成要件2-1-K)るか(争点3-2)(ウ) 被告製品1-1、2-1及び3-1の筒部と落とし口対向部の中心軸は「鉛直方向に一致」(構成要件2-1-H)しているか(争点3-3)(エ) 被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は「中心軸の方向から見たときに円形」(構成要件2-1-J)であるか(争点3-4)(オ) 被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は「底面からの高さが軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍」(構成要件2-4-A)であるか(争点3-5)(カ) 被告システム1ないし7は「排水部材」(構成要件2-7-B)を備えるか(争点3-6)(キ) 被告システム1ないし7は「竪樋の長さは2.0m以上」(構成要件2-7-H)であるか(争点3-7)(ク) 被告システム1ないし7は「呼び樋の長さは0m以上2.0m以下」(構成要件2-9-A)であるか(争点3-8)
イ無効事由の有無(争点4)(ア) 乙A25発明に基づく無効事由の有無a本件発明2-1について(争点4-1)b本件発明2-2について(争点4-2)c本件発明2-3について(争点4-3)d本件発明2-4について(争点4-4)e本件発明2-5について(争点4-5)f本件発明2-6について(争点4-6)(イ) 乙A21発明及び乙A22発明に基づく無効事由の有無a本件発明2-7について(争点4-7)b本件発明2-8について(争点4-8)c本件発明2-9について(争点4-9)(ウ) サポート要件違反の有無(争点4-10)(エ) 実施可能要件違反の有無(争点4-11)
⑶ 侵害主体性〔本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9〕(争点5)
⑷ 不法行為該当性〔本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9〕(争点6)
⑸ 間接侵害の成否(争点7)
ア本件発明1(ア) 被告製品2及び3による間接侵害の成否(争点7-1)(イ) 被告製品5及び6による間接侵害の成否(争点7-2)(ウ) 被告製品9、12及び13による間接侵害の成否(争点7-3)
イ本件発明2-7ないし2-9(ア) 被告製品1ないし3による間接侵害の成否(争点7-4)(イ) 被告製品4ないし6による間接侵害の成否(争点7-5)(ウ) 被告製品7ないし13による間接侵害の成否(争点7-6)
⑹ 損害額(争点8)
第3 争点に関する当事者の主張
⑴ 乙A21発明の構成乙A21発明は、以下の構成をそれぞれ開示している(以下、ア記載の発明を「乙A21発明①」、イ記載の発明を「乙21発明②」という。)。
ア乙A21発明①1-A’ のきといとして使用可能な大型角といと、1-B’ 前記大型角といの底面に形成された排水口を貫通する筒状部を備えた自在ドレンと、1-C’ 前記自在ドレンを有する雨とい上流部の下流側に一端が接続された一つ目の90°LLエルボと、1-D’ 前記90°LLエルボの他端に一端が接続された呼び樋と、1-E’ 前記呼び樋の他端に一端が接続された二つ目の90°LLエルボと、1-F’ 前記二つ目の90°LLエルボの他端に一端が接続されたたてといと、1-G’ を備えた雨といシステムであって、1-H1'前記一つ目の90°LLエルボ及び前記二つ目の90°LLエルボはそれぞれ、曲管部と、1-H2’前記曲管部の両端に設けられた受け口と、を備え、1-J’ ることを特徴とする雨といシステム。
イ乙A21発明②2-A’ のきといとして使用可能な大型角といと、2-B’ 前記大型角といの底面に形成された排水口を貫通する筒状部を備えた自在ドレンと、2-C’ 前記自在ドレンを有する雨とい上流部の下流側に一端が接続された一つ目の90°LLエルボと、2-D’ 前記90°LLエルボの他端に一端が接続された呼び樋と、2-E’ 前記呼び樋の他端に一端が接続された二つ目の90°LLエルボと、2-F’ 前記二つ目の90°LLエルボの他端に一端が接続されたたてといと、2-G’ を備えた雨といシステムであって、2-H1'前記一つ目の90°LLエルボ及び前記二つ目の90°LLエルボはそれぞれ、曲管部と、2-H2’前記曲管部の両端に設けられた受け口と、を備え、2-I’ 前記たてといの一端と他端との間の一か所以上の合流位置で前記たてといに合流管が交差し2-J’ 前記たてといの一端と最も上流側の合流位置との距離は2.0m以上である2-K’ ことを特徴とする雨樋システム。
⑵ 一致点及び相違点
ア乙A21発明と本件発明1-1及び1-2は、以下の相違点を除き、一致する。
(ア) 相違点1-1本件発明1-1及び1-2は、集水口にサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部を設けるのに対し、乙A21発明①及び乙A21発明②は、集水口に自在ドレンを設ける点(イ) 相違点1-2本件発明1-1は、エルボの曲率半径及び開口面積、呼び樋の長さの範囲が、本件発明1-2は、エルボの曲率半径及び開口面積が、それぞれ特定されているのに対し、乙A21発明①及び乙A21発明②は、上記特定がない点
イ原告の主張について原告は、乙A21発明は、サイフォン現象が生じ得ない雨樋システムである一方、本件発明1-1及び本件発明1-2は、サイフォン雨樋システムであることが相違点であると主張する。しかしながら、流量係数を0.6として排水能力を計算することとされていることをもって、乙A21発明の自在ドレンがサイフォン現象を発生し得ないように設計されているとする原告の主張は理由がなく、乙A21発明もサイフォン現象が発生し得るのであるから、この点の構成は一致点である。
また、原告は、乙A21発明は、自在ドレンの存在及びこれと接続された90°LLエルボとの組合せを有しない一方、本件発明1-1及び本件発明1-2は、自在ドレンとこれに接続された第1エルボを有する点が相違点であると主張する。しかしながら、乙A21文献に開示されている「じょうご」は、自在ドレンと同様に、軒樋から竪樋に雨水を落とし込むための「落とし口部品」であり、かつ、エルボに接続するから、乙A21発明が上記構成を有するという認定に誤りはなく、この点の構成は一致点である。
⑶ 相違点に関する容易想到性
ア乙A22発明を副引用例とする無効事由(ア) 相違点1-1について本件明細書1の段落【0067】の記載によれば、どのような構造であるとしても、集水口に満水状態で流入可能であればサイフォン発生部に相当するものである。そして、乙A21発明においても、排水口が満水状態になることがあり、かつ、サイフォン現象が生じることは実験の結果(乙A12)からも明らかであるから、当該相違点は実質的な相違点であるとはいえない。
(イ) 相違点1-2についてAにおいて施工された物件(平成10年2月24日竣工。乙A22。以下、当該物件を「乙A22物件」といい、乙A22物件において公然実施された雨樋システムに係る発明を「乙A22発明」という。)は、スラブ上面に設けられた排水溝に排水口が形成され、排水口をドレンが貫通しており、当該ドレンに排水管が接続され、エルボ、呼び樋、エルボ、竪樋の順で接続されている。また、乙A22発明は、サイフォン現象が生じるから、排水口は本件発明1の「集水口」に、ドレンは「サイフォン発生部」にそれぞれ相当し、かつ、曲管部の曲率半径及び開口面積、呼び樋の長さは、本件発明1の規定する数値の範囲内のものである。
そして、雨樋システムにサイフォン現象を利用すると排水量を増大させる利点があることは周知であり、乙A22発明における曲管部の曲率半径及び開口面積、呼び樋の長さの構成が乙A21発明と異質のものであるともいえないから、当業者が、乙A21発明に高排水性を持たせるためにサイフォン現象を利用することとし、乙A22発明における曲管部の曲率半径及び開口面積、呼び樋の長さを適用することは、容易なことであったといえる。
イ先行論文(乙A23文献、乙A24文献)を踏まえた無効事由(ア) 相違点1-1について2009年に発表された「Cavitation,aerationandnegativepressuresinsiphonicroofdrainagesystems」(サイフォン式屋根排水システムにおけるキャビテーション、通気及び負圧)と題する論文(乙A23。以下「乙A23文献」という。)は、①屋根からの排水システムは、システム全体にわたって大気圧を維持する従来からの排水システムと、サイフォン現象を利用したサイフォン式の排水システムが存在していること、②サイフォン式の排水システムは1970年代に最初に開発されたが、高効率の排水が可能であることから、同論文が発出された2010年頃には、世界中の多くの建物に設置されるようになっていること、③サイフォン式の排水システムでは、いわゆる大曲エルボを用いた方が流量を増加させることができる点で望ましいことが開示されている。
そして、乙A21発明には、従来からの排水システムであるか、サイフォン式の排水システムであるかの特定はない一方、サイフォン式の排水システムが高効率のために2010年頃には世界中の建物で利用されるようになっていたことからすれば、出願当時の当業者であれば、乙A21発明においてサイフォン現象を利用することは、適宜なし得た設計事項である。
(イ) 相違点1-2について乙A21発明に開示されている100サイズ又は125サイズによる排水システムは、本件発明1の規定するエルボの曲率半径及び開口面積の数値範囲に含まれるから、実質的な相違点ではない。そして、呼び樋の長さについてみると、平成15年に発表された「新排水システムの開発と実用化研究(第4報)サイホン起動に関する考察」と題する論文(乙A24。以下「乙A24文献」という。)には、呼び樋が長くなるのに比例してサイフォンが起動する時間も長くなることが示されているから、呼び樋の長さが短い方が有利であることが示されているものと理解できる。また、本件発明1-1における「2.0m」という数値に臨界的な意義があるわけではない。したがって、乙A21発明の呼び樋の長さを2.0m以内とすることは、当事者が適宜なし得た設計事項である。
⑴ 相違点被告らが自認する相違点に加え、以下の点も相違点となる。
ア相違点1-3乙A21発明は、サイフォン現象が発生し得ない従来型の排水システムであるのに対し、本件発明1-1及び1-2は、サイフォン雨樋システムである点
イ相違点1-4乙A21発明は、自在ドレン及びこれに接続された一つ目の90°LLエルボを有しないのに対し、本件発明1-1及び1-2は、自在ドレン及びこれと接続された第1エルボの存在を前提とする点
⑵ 相違点に関する容易想到性
ア乙A22発明を副引用例とする無効事由乙A21発明は、流量係数Cを0.6とするものであり、サイフォン現象が発生し得ないように設計された実施品であるから、相違点1-1が実質的な相違点ではないとする被告らの主張は、誤りである。
また、被告らが提出する乙A22号証は信用性を欠き、そもそも乙A22発明を認定することはできないから、相違点1-2に乙A22発明の構成を適用する前提を欠く。また、エルボの曲率半径及び開口面積、呼び樋の長さに関する特定は、流れる雨水の流速を低下させない作用効果を生じさせるという技術的意義を有するものであるから、上記数値による特定を有する乙A22発明が、乙A21発明と異質なものとはいえないとする被告らの主張は、理由がない。
さらに、乙A21文献は、自在ドレンと組み合わせられる90°LLエルボが記載されていないから、被告らの主張は、乙A21発明に「前記自在ドレンを有する・・接続された90°LLエルボ」を組み合わせた後、更にその発明に「呼び樋」の構成を組み合わせるという、いわゆる容易の容易をいうものであり、失当である。
イ先行論文(乙A23文献、乙A24文献)を踏まえた無効事由乙A21発明は、上記のとおり、流量係数Cを0.6とするものであり、サイフォン現象が発生し得ないように設計された実施品である。そして、乙A23文献の記載を考慮しても、乙A21発明にサイフォン式排水システムを適用することの動機付けとはならないから、相違点1-1が実質的な相違点ではないとはいえない。また、相違点1-2に係る構成は、流速を低下させないという作用効果が生じるものであるから、当該構成を当業者が適宜選択する程度の事項であるということはできない。また、①乙A24文献は、集合住宅における浴槽やトイレ等の排水システムを想定していると考えられること、②乙A24文献は、満流排水を前提としている一方、乙A21発明は、雨といの流量係数を0.6とする満流排水ではない状態を前提としており、両者は技術的思想を異にしていること、③乙A24文献には、排水口から開放端までは単管であり、他の排水管との合流はないと記載されているのに対し、乙A21発明に記載されている接続例には他の横管が接続されていることから、両者は設計思想も異にしていること、④乙A24文献には、小口径を必須の構成とすることが記載されているのに対し、乙A21発明は最小呼び径が50mmであり、両者は、前提とする呼び径の大きさを異にしていること、以上によれば、乙A24文献の記載内容を考慮しても、当該相違点が容易想到であるとはいえない。
⑴ 被告製品1-1、2-1及び3-1は、落とし口部の上方に対向して配置され、水平方向に延びるフランジ状の平板部と、この平板部の内周側から下方に向かって縮径するように延びるテーパー部と、このテーパー部の下端から下方に向かって延びる円筒部とを有する落とし口対向部を有する。そして、当該構成は、構成要件2-1-D及び2-2-Dの「前記落し口部の上方に配置される蓋部材」に該当する。
⑵ 被告らは、被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部の一部であるテーパー部は、本件特許2では「蓋部材」とは異なる「誘導ガイド」と捉えられているとして「蓋部材」には該当しないと主張するが、本件特許2の請求項5の記載を踏まえても、これらが別部材でなければならないと解釈する根拠はない。
また、被告らは、「蓋部材」とはその直径が落し口部の外径の直径より大きく、落し口部の開口を覆い塞ぐものでなければならないと限定解釈するが、特許請求の範囲の記載に反する上、本件発明2の技術的意義を誤解したものであるから、理由がない。
さらに、被告らは、「蓋部材」とは優れたサイフォン効能を発揮させる部材に限定解釈されるとして、中心の穴から空気を吸い込む漏斗状の形状である被告製品の落とし口対向部はこれに該当しないと主張するが、本件明細書2の記載によれば、「蓋部材」の断面視形状として漏斗状も想定されていることは明らかであるし、本件発明2は、単なる開口と比較して優れたサイフォン性能を発揮する排水部材を提供することを目的とするものではないから、単なる開口との比較を行う被告パナソニック実施の実験(乙A12)は、意味がない。
⑴ 被告製品1-1、2-1及び3-1のテーパー部は、「誘導ガイド」であって「蓋部材」に該当しない。
⑵ また、本件明細書2の記載によれば、「蓋部材」はその直径が落し口部の開口外径の直径より大きく、落し口部の開口を覆い塞ぐものであると解すべきである。しかしながら、被告製品1-1、2-1及び3-1の平板部の直径は落とし口部の開口外径の直径よりも短く、平板部と落とし口部の間には隙間が空いていること、円筒部には直径約13mmの穴が開いていることからすれば、被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は、落とし口部の開口を覆い塞いでいないから、「蓋部材」に該当しない。
⑶ さらに、本件発明2の作用効果からすると、「蓋部材」は、空気を吸い込まず、優れたサイフォン性能を発揮する部材でなければならない。しかしながら、被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は漏斗状になっており、中心の穴から空気を吸い込むことがあるし、被告パナソニック実施の実験(乙A12)によっても、単なる開口よりサイフォン現象が優れているともいえないから、「蓋部材」に該当しない。
⑴ 被告製品1-1、2-1及び3-1は、鍔部の上面と落とし口対向部の下面の外周部とを連結する5枚の縦リブを有しており、縦リブは、その一部が鍔部上にあるから、当該構成は、構成要件2-1-E、2-2-E、2-1-Kに該当する。これに対し、被告らは、被告製品1-1、2-1及び3-1の縦リブが3つの部材から構成されるものであるかのように恣意的に分割するが、これらは一体を成す部材である。
⑵ 被告らは、「縦リブ」が鍔部上にのみ存在していなければならないと主張する。しかしながら、「前記鍔部の上面と前記蓋部材の下面の外周部とを連結」(構成要件2-1-E、2-2-E)し、「前記中心軸の方向から見たときに前記鍔部上に周方向に配置され」(構成要件2-1-K)との特許請求の範囲の記載からすれば、「縦リブ」が鍔部上のみに存在していなければならないとの限定は読み取れない。また、「縦リブ」は、排水部材を容易に軒樋に装着することができるという作用効果や、整流効果により雨水が空気を吸い込むことをより確実に抑制するという作用効果があるところ、これらの作用効果を奏するのは、「縦リブ」が落とし口部の開口に重ならないように設けられる構成に限られるものではない。
⑴ 被告製品1-1、2-1及び3-1のうち、原告が縦リブと呼称する部分は、構成要件2-1-E、2-2-Eの「縦リブ」とは異なり、下図記載のとおり、分割板、渦流防止部材、流入促進部の3つの異なる部材から構成されるものである。
⑵ 本件発明2の「縦リブ」は、「前記鍔部の上面と前記蓋部材の下面の外周部とを連結」する構成(構成要件2-1-E、2-2-E)のほか、「前記中心軸の方向から見たときに前記鍔部上に周方向に配置され」るとする構成(構成要件2-1-K)及び本件明細書2(段落【0017】)の記載によれば、中心軸の方向から見たときに鍔部上にのみ配置されるものに限られると解すべきである。
そして、分割板は、落とし口対向部と連結しておらず、渦流防止部材は、鍔部に連結していないから、いずれも鍔部の上面と蓋部材の下面の外周部とを連結する構成を有しない。仮に、分割板と渦流防止部材を一体として捉えた場合であっても、これらは落とし口部の開口に重なるため、鍔部上のみに存在するとはいえなくなるから、中心軸の方向から見たときに鍔部上にのみ配置される構成を有しない。
⑴ 被告製品1-1、2-1及び3-1の筒部と落とし口対向部の中心軸は鉛直方向に一致しているから、当該構成は、構成要件2-1-Hに該当する。
⑵ 被告らは、鉛直方向とは水平面と垂直であることをいうと解されるところ、水勾配が付された場合には筒部と落とし口対向部の中心軸は鉛直方向にならないと主張する。しかしながら、「筒部」は、軒樋の底面に形成された貫通穴に挿入されて、落し口部を形成するものであり(構成要件2-1-A、2-1-B)、「蓋部材」は、「筒部」により形成された落し口部の上方に配置されるものであること(構成要件2-1-D)からすれば、「筒部」と「蓋部材」の中心軸は、「筒部」が挿入される軒樋の底面に対して、鉛直方向に一致することを意味する。そして、軒樋に僅かな勾配を付すこと(水勾配)は技術常識であるところ、このような場合に、被告らが主張するように地面に対する鉛直方向であると理解すると、全ての排水システムがこれに該当しない結果となって不合理である。したがって、水勾配が設置される通常の設置方法においては、被告製品1-1、2-1及び3-1の筒部と落とし口対向部の中心軸は、軒樋の底面に対して鉛直方向となるから、構成要件2-1-Hを充足する。
⑴ 被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は中心軸の方向から見たときに円形であるから、当該構成は、構成要件2-1-Jに該当する。
⑵ 被告らは、落とし口対向部が、円形ではなく円環状であると主張するが、円環状であっても、「中心軸の方向から見たときに円形」であることに変わりはない。
⑴ 被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は、底面からの高さが軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍であるから、当該構成は、構成要件2-4-Aに該当する。
⑵ 被告らは、被告製品1-1、2-1及び3-1の円筒部の最も下に位置する部分は、軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍に含まれない旨主張する。しかしながら、本件明細書2の段落【0044】の記載によれば、構成要件2-4-Aの「前記蓋部材は、前記底面からの高さが軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍である」との要件は、サイフォン発生のためには流入開口より軒樋内の水位が高くなる必要があることに鑑み、蓋部材の高さを軒樋内の最大水位よりも低いものとするため、流入開口を構成する蓋部材の最大の高さを規定したものであると解される。そうすると、蓋部材の高さは、その最大の高さが、軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍の高さとされていれば足りるものといえる。したがって、円筒部の最も下に位置する部分の高さを問題とする被告らの主張には、理由がない。
⑴ 新規性がないこと乙A25発明は、以下のとおり、本件発明2-1の構成を全て開示しているから、本件発明2-1は、新規性欠如の無効事由を有する。なお、何らかの相違点があるとしても、設計上の微差であるにすぎないから、進歩性の欠如の無効事由を有する。
すなわち、乙A25発明は、底面に貫通穴が形成された金属雨樋120と、前記貫通穴の下面に接続された挿口77を介して前記金属雨樋120と接続された竪樋78とを備えた屋根樋に設けられる装置95であるところ、金属雨樋120は「軒樋」に、挿口77は「竪樋継手」に、屋根樋は「雨樋」に、装置95は「排水部材」に、それぞれ相当するから、構成要件2-1-A、2-1-Mに相当する構成を開示している。そして、乙A25発明は、前記貫通穴に挿入されて排水管11を形成する下方突出部160の円筒状の部位と、前記筒状の部位の上端から径方向の外側に延びる板状をした略水平方向の部位と、前記排水管11の上方に配置されるバッフル60と、前記略水平方向の部位の上面と前記バッフル60の下面の外周部とを連結する複数の直立部155とを有するところ、排水管11は「落し口部」に、下方突出部160の円筒状の部位は「円筒状の筒部」に、略水平方向の部位は「鍔部」に、バッフル60は「蓋部材」に、直立部155は「縦リブ」に、それぞれ相当するから、構成要件2-1-Bないし2-1-Eに相当する構成を開示している。その他に、次のとおり、乙A25発明は、各構成要件の構成を開示している。雨樋15から流入する水は、バッフル60と、下方突出部160における略水平方向の部位の間を通って、竪樋78内に流入するから、乙A25発明は、構成要件2-1-Fに相当する構成を開示している。バッフル60とベースクランプ65は、中心軸が一致しており、一体的に形成されるところ、バッフル60は「蓋部材」に相当し、ベースクランプ65は「円筒状の筒部」、「鍔部」、「縦リブ」に相当する部位を有する部材であるから、乙A25発明は、構成要件2-1-G及び2-1-Hに相当する構成を開示している。ベースクランプ65と挿口77とは、ねじで係合させても良いとされているところ、ベースクランプ65は「円筒状の筒部」に、挿入口77は「竪樋継手」に、それぞれ相当するから、乙A25発明は、構成要件2-1-Iに相当する構成を開示している。バッフル60は円形であり、直立部155は、鍔部に相当するベースクランプの略水平部位上に周方向に配置され、さらに、径方向に延びる板状であるから、乙A25発明は、構成要件2-1-J及び2-1-Kに相当する構成を開示している。乙A25発明は、挿口の直径が77mmと103mmである場合に安定した排水が行われるところ、これらの場合の排水部材の開口面積は、それぞれ47cm²又は83cm²であるから、構成要件2-1-Lに相当する構成を開示している。510
⑵ 原告の主張に対する反論
ア構成要件2-1-A原告は、本件発明2-1が「軒樋…を備えた雨樋に設けられる排水部材」(構成要件2-1-A)を備えるのに対し、乙A25公報の図2の説明に用いられる“a reinforced concrete (RC) gutter120”は鉄筋コンクリート(RC)の側溝を意味するから、乙A25発明は「軒樋…を備えた雨樋に設けられる排水部材」に係る構成を開示していない旨主張する。しかしながら、原告が指摘する図2の実施例は、一部の実施例にすぎないから、乙A25公報において一般化できるものではない。そして、他の実施例には、屋根からの雨水を“a metal gutter 120”が受け取る旨の記述があり、この場合には、“gutter”は屋根に取り付けられた軒樋を意味している。したがって、乙A25発明は、構成要件2-1-Aの「軒樋…を備えた雨樋に設けられる排水部材」に相当する構成を開示している。また、原告は、本件発明2-1が「貫通穴の下面に接続された竪樋継手」(構成要件2-1-A)を備えるのに対し、乙A25発明の挿口77は貫通穴の下面に「接続」されていない旨主張する。しかしながら、乙A25公報の図3から細部の構成を確定的に読み取ることはできないし、原告が大きな隙間として指摘する黒く塗りつぶされた箇所は雨水が流出しないように密閉するための構成を示していると解されるから、金属雨樋120と挿口77とは密閉状態で「接続」された構成となっている。したがって、乙A25発明は、構成要件2-1-Aの「貫通穴の下面に接続された竪樋継手」に相当する構成を開示している。
イ構成要件2-1-E、2-1-K原告は、①本件発明2-1の「縦リブ」は、鍔部の上面と蓋部材の下面の外周部とを連結しているのに対し、乙A25発明は上記構成を備えておらず、②同発明の「縦リブ」は、整流効果を生じさせるものである一方、乙A25発明は、二相流を生じさせることを特徴としており、直立部155は整流効果を生じさせてはならないものであるから、「縦リブ」に該当しない旨主張する。しかしながら、乙A25発明は上記構成を備えているし、同発明が二相流によるサイフォン現象のみを用いた発明であるとする原告の主張は、前提を誤っている。したがって、乙A25発明は、構成要件2-1-E、2-1-Kに相当する構成を開示している。
ウ構成要件2-1-G原告は、本件発明2-1がコストを抑え作業性に優れた構造とするために「前記筒部、前記鍔部、前記蓋部材および前記縦リブは一体的に形成される」(構成要件2-1-G)のに対し、乙A25公報には上記構成が開示されていない旨主張する。しかしながら、同公報には、下方突出部160がベースクランプ65と一体の部材である旨の記載があるほか、これらを含む排水口装置95が一体成形され得る旨の記載がある。したがって、乙A25発明は、構成要件2-1-Gに相当する構成を開示している。
⑴ 相違点があること
ア構成要件2-1-A乙A25公報の図2の説明に用いられる “a reinforced concrete (RC)gutter120”は、鉄筋コンクリート(RC)の側溝を意味するところ、同公報中の“gutter”は、いずれも「側溝」を意味するから、乙A25発明は「軒樋…を備えた雨樋に設けられる排水部材」(構成要件2-1-A)に相当する構成を開示していない。また、乙A25公報の図3には、側溝120と挿口77の上面との間に大きな隙間があるから、挿口77は「貫通穴の下面に接続」(構成要件2-1-A)されていない。
イ構成要件2-1-E、2-1-K乙A25発明のベースクランプ65の直立部155、220、250は、バッフル60の下面の外周部には存在せず、バッフル60の「下面の外周部」(構成要件2-1-E)と、下方突出部160の水平方向の部位の上面とを連結していない。
そして、本件発明2-1の「縦リブ」は、整流効果を持たせるものを意味すると解される一方、乙A25発明は、二相流(同発明でいう二相流とは、管路断面を満たすような大きな砲弾型の気泡と、小気泡を含む液体部分が交互に存在するスラグ流をいう。)を生じさせることにより空気が排水管に入るようにしていることを発明の特徴としており、直立部155は、かえって整流効果を生じさせるものであってはならないから、「縦リブ」(構成要件2-1-E、2-1-K)に係る構成を開示していない。
ウ構成要件2-1-G乙A25公報には、バッフル60とベースクランプ65は一体的に形成されるものとは記載されていないから、乙A25発明には、構成要件2-1-Gに係る構成は開示されていない。
⑵ 容易想到性に関する主張本件発明2-1は、雨水が空気を吸い込むことをより確実に抑制することで優れたサイフォン現象を生じさせるための構成を備えているのに対し、乙A25発明は、敢えて空気を吸い込ませるために二相流を生じさせる構成を採用しているから、課題解決のための技術的思想が根本的に相違しており、当業者が、乙A25発明を出発点として、構成要件2-1-E及び2-1-Kに相当する構成を想到することはない。
⑴ 一致点及び相違点本件発明2-2の構成のうち、構成要件2-2-G、2-2-Jを除き、本件発明2-1に関する主張と同様である。そして、乙A25発明の「筒部」に相当するベースクランプ65における下方突出部160の円筒状の部位と、「鍔部」に相当する略水平方向の部位は曲面で形成されているから、乙A25発明は、構成要件2-2-Gに相当する構成を開示している。
一方、本件発明2-2の「縦リブ」は、下端が筒部と鍔部との間の接続部に設けられるのに対し(構成要件2-2-J)、乙A25発明の「縦リブ」に相当する直立部155の下端は、曲面で形成された下方突出部160の円筒状の部位と略水平方向の部位の接続部位に設けられていない。したがって、乙A25発明は、構成要件2-2-J(「複数の縦リブは、下端が前記接続部に設けられ」)に相当する構成を有しない点が相違点である。
⑵ 相違点に関する容易想到性上記相違点は、本件特許2の分割出願前である平成22年9月16日に国際公開された発明の名称を「WATERDRAINASSEMBLY,INPARTICULARFORSIPHONICROOFDRAINAGESYSTEMS」(特にサイフォン式屋根排水システム用の排水アセンブリ)とする国際公開公報(WО2010/103370A1。乙A26。以下「乙A26公報」といい、同公報に記載された発明を「乙A26発明」という。)に記載されており、乙A25発明と乙A26発明は、屋根樋に設置する排水部材である点で同じ技術分野に属し、また、サイフォン現象を利用した良好な排水部材を提供するという課題も共通するから、相違点に係る乙A26発明の構成を、乙A25発明に適用することは当業者にとって容易である。そして、乙A25発明の直立部155と、乙A26発明のブレード41(下図参照)は、共に蓋部材を支持するための部材であり、サイフォン現象を向上させるために排水を整流させる目的を有するものであるから、両者の組合せに阻害要因はない。また、上記目的によれば、乙A26発明のブレード41の下端の設定位置を参照して、直立部155の下端の位置を設定することが、乙A25発明の機能を損なうものでもない。
⑴ 本件発明2-2の構成のうち、構成要件2-2-G、2-2-Jを除き、本件発明2-1に関する主張と同様である。
⑵ そして、乙A25発明の直立部155の下端部は、ベースクランプ65の略水平部位上に配置されており、曲面で形成された筒部と鍔部との間の「接続部に設けられ」(構成要件2-2-J)に相当する構成を開示しているとはいえないことは、被告らが自認するとおりである。
上記の相違点につき、被告らは、乙A26発明に記載されており、乙A25発明と乙A26発明は屋根樋に設置する排水部材である点で同じ技術分野に属し、また、サイフォン現象を利用した良好な排水部材を提供するという課題も共通するなどとして、相違点に係る乙A26発明の構成を乙A25発明に適用して本件発明2-2を行うことは当業者にとって容易であると主張する。しかしながら、乙A25発明は、乱流を発生させて、空気と水の二相流を生じさせる排水原理を採用とすることを技術的特徴としており、直立部155は、整流効果をもたせるものであってはならない。これに対し、乙A26発明は、管を満水状態にさせて排水システムを効率的に動作させるものとされており、複数のブレード41は、渦の形成を回避するものであるから、整流効果を有するものである。したがって、当業者が、直立部155に替えて、乙A26発明のブレード41を乙A25発明に適用することに動機付けられることはなく、かえって乙A25発明に乙A26発明のブレード41を適用することには、阻害要因がある。
⑴ 一致点及び相違点本件発明2-3の構成のうち、構成要件2-3-A、2-3-Bを除き、本件発明2-1、2-2に関する主張と同様である。
そして、乙A25発明の下方突出部160の上端は、金属雨樋120の底面より下にあるから、乙A25発明は構成要件2-3-A(「前記筒部の上端は前記軒樋の底面よりも下にあり」)に相当する構成を有する。一方、乙A25発明の直立部155は、ベースクランプの略水平部位上に配置されるから、直立部155の下端は軒樋に相当する金属雨樋120の上面に位置する。したがって、乙A25発明は、構成要件2-3-B(「前記縦リブの下端は前記筒部の上端と前記軒樋の底面との間にある」)に相当する構成を有しない点が相違点である。
⑴ 本件発明2-3の構成のうち、構成要件2-3-A、2-3-Bを除き、本件発明2-1、2-2に関する主張と同様である。
⑴ 一致点及び相違点本件発明2-4の構成のうち、構成要件2-4-Aを除き、本件発明2-1ないし2-3に関する主張と同様である。そして、乙A25公報の表1、2には“water depth beyond 250 consideras failure”(水深が250を超えると機能停止とみなされる)と注意書が記載されていることからすると、この250mmが最大水位に相当する。そして、バッフル比が3.0~4.5におけるバッフルの高さは、30~50mmとされており、上記最大水位の0.12~0.2倍であるから、乙A25発明は、構成要件2-4-A(前記蓋部材は、前記底面からの高さが軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍である)に相当する構成を有する。
⑵ 相違点に関する容易想到性仮に、乙A25発明が構成要件2-4-Aに相当する構成を有しないとしても、平成17年に発行されたサイフォン式ルーフドレインの米国機械学会における規格に関する文書(乙A27。以下「乙A27文献」という。)には、迅速なプライミング(サイフォン状態とする)のために、バッフルの高さは最小限に抑える必要があるとされている一方で、定常状態を達成するためにバッフルの周囲及び上部に一定の水の層が必要であるとされていることからすると、この記載に接した当業者であれば、蓋部材の高さを最大水位との関係において一定程度以上低く設定するから、最大水位の0.1~0.5倍という範囲は、当然に設定される範囲である。そして、本件発明2-4における蓋部材の高さが軒樋の最大水位の0.1~0.5倍であることについては臨界的な意義があるわけではなく、低すぎても高すぎても好ましくないという中から選択された数値であるにすぎない。乙A27文献には、正にそのような思想が開示されているといえるから、仮に乙A25発明が構成要件2-4-Aの構成を有しないとしても、乙A27文献に開示された思想を乙A25発明に適用することは、当業者にとって容易である。
⑴ 本件発明2-4の構成のうち、構成要件2-4-Aを除き、本件発明2-1ないし2-3に関する主張と同様である。
⑵ 乙A27文献には、バッフルの高さは最小限に抑える必要があることや、バッフル周囲及び上部に一定の水の層が必要であることは記載されているものの、軒樋内の最大水位と蓋部材の底面からの高さの関係性は記載も示唆もされていない。したがって、乙A27文献が構成要件2-4-Aに相当する構成を開示している旨の被告らの主張には理由がない。
⑴ 一致点及び相違点本件発明2-5の構成のうち、構成要件2-5-A、2-5-Bを除き、本件発明2-1ないし2-4に関する主張と同様である。そして、乙A25公報の図1から図4までによれば、蓋部材に相当するバッフル25、60の下面には、何も形成されていない。したがって、乙A25発明は、構成要件2-5-A(「蓋部材の下面には、誘導ガイドが形成され」)、2-5-B(「前記誘導ガイドは円錐状である」)に相当する構成を有しない点が相違点である。
⑵ 相違点に関する容易想到性当該相違点は、本件特許2の分割出願前である平成21年6月11日に公表された発明の名称を「雨樋組立体」とする公表特許公報(特表2009-522479号公報。乙A28。以下「乙A28公報」といい、同公報に記載された発明を「乙A28発明」という。)に記載されている。そして、乙A25発明と乙A28発明は、屋根の樋からサイフォン現象を利用して排水するための部材に関するものである点で同じ技術分野に属し、また、雨樋と排水口との間の90°大曲エルボLLに関する点で課題も共通するから、相違点に係る乙A28発明の構成を乙A25発明に適用することは、当業者にとって容易である。また、乙A28発明の下方表面232の形状が円錐状であることは、乙A28公報の段落【0041】に「水を下に向けるよう、水流の方向を水平から変更するのを助ける。」旨の説明がされ、【図6】に水を下方に誘導するような円錐形で描かれていることからすれば、明らかである。
⑴ 本件発明2-5の構成のうち、構成要件2-5-A、2-5-Bを除き、本件発明2-1ないし2-4に関する主張と同様である。
⑵ 乙A28公報の【図6】を見ても、その立体形状は不明であり、その効果からすれば板状である可能性が高いから、下方表面232が「略円錐状」であるものとは認められない。また、乙A25発明は樋についての記載がなく、安定した二相流を生じさせるためのものであるから、乙A28発明と技術分野が共通するとはいえないし、乙A25発明が90°大曲エルボLLを備えるともいえないから、相違点に係る乙A28発明の構成を乙A25発明に適用することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
⑴ 一致点及び相違点本件発明2-6の構成のうち、構成要件2-6-Aを除き、本件発明2-1ないし2-4に関する主張と同様である。そして、乙A25文献の図において、蓋部材に相当するバッフル25、60等は平板であるか、又は上に凸の形状で示されている。したがって、乙A25発明は、構成要件2-6-A(「蓋部材21は、断面視形状で下に凹んだ形状である」)に相当する構成を有しない点が相違点である。
⑴ 本件発明2-6の構成のうち、構成要件2-6-Aを除き、本件発明2-1ないし2-4に関する主張と同様である。
⑵ 乙A25発明は樋についての記載がなく、安定した二相流を作るためのものであることから、乙A29発明と技術分野が共通するとはいえない。また、乙A25発明のバッフルに乙A29発明の水抜け筒を設けようとした場合、乙A25発明のバッフル比を特定する直径としてどの値を採用するかが不明となるし、水抜け筒のテーパー面が整流作用を生じさせることから、安定した二相流を作る乙A25発明と異なる構成が得られることになる。したがって、乙A25発明に乙A29発明の水抜け筒を採用することに当業者が動機付けられることはなく、乙A25発明に乙A29発明の水抜け筒を採用することには、阻害要因がある。
そして、乙A25発明は、任意の構成の雨樋システムに組み込まれても使用可能な排水口装置に関するものである。
そうすると、乙A21発明又は乙A22発明に対し、乙A25発明を適用することは、当業者の設計事項にすぎないから、本件発明2-7は進歩性がない。
また、乙A21発明は、従来型の排水システム(重力流)である一方、乙A25発明の排水口装置は、「加圧流」に該当する二相流のシステムにおいて用いるものであるから、乙A21発明に乙A25発明の排水口装置を単純に組み込んで用いることは不可能であり、当業者がそのような使用方法に動機付けられることはない。
⑵ 乙A21発明は、自在ドレンの存在及びこれと接続された90°エルボLLとの組合せを有しないから、乙A25発明を適用したとしても、本件発明2-8の構成には至らない。また、乙A22発明に用いられる配管は金属製であって受け口を必要としない上、受け口を用いて樋に接続することが慣用手段であることの証拠はないから、乙A22発明に乙A25発明を適用することはできない。
⑵ 本件発明2-9は、本件発明2-7及び2-8の呼び樋の長さについて特定したものである。
⑵ 本件発明2-9が特定する呼び樋の長さは、雨水を満水状態で円滑に流下させるという技術的意義を有するから、乙A21発明の構成を変更することが設計事項であるとはいえない。また、呼び樋の長さを2.0m以下とすれば、満水状態になって二相流の発生が妨げられるから、乙A22発明と乙A25発明の組合せには、阻害要因がある。
⑴ 要旨施工業者(板金工事店、施工店、工務店、ビルダー等を含む。以下同じ。)が、被告らの推奨する方法により「大型雨とい高排水システム」を施工した場合には、被告システムは、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の構成要件を充足する。そして、被告らは、被告システムを構成する部材の販売等にとどまらず、これらを組み合わせた「大型雨とい高排水システム」の販売活動も行っているから、上記部材の販売等は、被告システムの販売等として評価すべきである。少なくとも、被告らが、施工業者に対して、被告システムを構成する4種類の部材(①被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)、②被告製品7ないし13のエアロアイアン前高、エアロアイアン折版又は谷コイルのいずれか、③被告製品4ないし6の90°大曲エルボLL又は45°エルボ45Lのいずれか、④ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管))を、まとめて販売等した場合には、施工業者が被告らの推奨する方法による施工を行い、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する被告システムを完成させることが当然予定されているから、被告らは、当該部材を販売等したことにより、本件特許権1及び2を侵害する被告システムを販売等したものと評価すべきである。
⑵ 被告らの販売態様被告らは、パンフレットやウェブサイト(甲5ないし7)のほか、代理店等に対する販促資料(甲14)の配布等を通じて、「大型雨とい高排水システム」とは、専用部材である自在ドレン(高排水用)やスライドS(高排水用)に、既存部材である軒樋や竪樋を組み合わせることで排水能力が従来品より向上するシステムであると説明して、施工業者に対し、専用部材の使用や施工上のポイントの遵守を求め、システムとしての施工を推奨している。そして、被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)を納品する際に同梱する書面(甲15)にも、軒樋(被告製品7ないし13)、90°大曲エルボLL(被告製品4ないし6)及びカラービニルパイプ(JIS管)を用いた施工例を記載し、竪樋や呼び樋の長さを具体的に指示している。また、排水システムにおいては、施工業者よりもメーカーのほうが自社製品を用いた排水システムの適否を判断することができるため、メーカーが排水計算サービスを提供することがある。被告らにおいても、被告パナソニックのウェブサイト(甲16)や排水能力計算書の提供(甲17等)を通じて、当該サービスを提供している。排水能力計算書の提供を通じて、施工業者と詳細なやり取りを行い、被告パナソニックが「大型雨とい高排水システム」の配管を指示した例(乙A53)もある。そして、外観意匠の観点からも、施工業者は、一つの建築物件で用いる雨樋部材を、同一のメーカーにおいて販売する色調の同じ部材で揃えることが通常であるから、被告らが販売する専用部材を購入すれば、雨樋を構成する他の部材も全て被告らが販売する同一の色調の部材で統一されることになる。この点につき、被告らは、「大型雨とい高排水システム」の専用部材である自在ドレン(高排水用)の販売時期に合わせて、色調を合わせた90°大曲エルボLL及びカラービニルパイプ(JIS管)のカラーバリエーションを追加しており、構成部材が一体として用いられることを前提としていることは明らかである。さらに、原告が実施した代理店に対するアンケート結果(甲31ないし36)によっても、被告らが「大型雨とい高排水システム」の販売活動を行っていることが裏付けられている。その中でも、被告ケイミューは、代理店向けのカタログ(甲37)において、「大型雨とい高排水システム」の設計サポートとして、コストを削減する軒樋、竪樋の仕様まで提案しているのであるから、部材の販売にとどまらず、「大型雨とい高排水システム」としての販売活動を行っていることは明らかである。のみならず、被告らは、施工の元請会社に対し、水漏れの5年品質保証を行っている。当該保証書の発行は、「技術・施工資料」に従って設計・施工された物件を対象とするものであり、「大型雨とい高排水システム」が採用された物件及び当該物件で用いられる部材がその対象となることは明らかである。
⑶ 本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属しない組合せが想定できないこと
ア施工業者が、被告システムを構成する上記4種類の部材を購入した場合には、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属しない態様で施工することは考えられない。すなわち、被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)と、被告製品4ないし6の90°大曲エルボLL又は45°エルボ45Lを組み合わせた典型的な例として、被告らが提示するものは、以下のA~Iのとおりである。A及びIの態様は、エルボを用いずに直管で接続される構成であるところ、施工現場単位で考えた場合、90°大曲エルボLL又は45°エルボ45Lを購入した施工業者が、エルボを使用することなく、A及びIの態様のみで施工することはない。C、D及びFの態様は、竪樋継手と第1エルボとの間にビニルパイプを挟む構成であるところ、自在ドレン(高排水用)(下)はエルボと直接接続される仕様(エルボカン合)となっていることから、自在ドレン(高排水用)と90°大曲エルボLL又は45°エルボLを同時に購入した場合には、この態様による施工は想定されない。しかも、この態様は、竪樋を安定的に支持することが困難になることや資材コストがかさむことからしても望ましくない施工態様でもある。仮に当該態様で施工されることがあり得たとしても、自在ドレンとビニルパイプが一体として、「サイフォン発生部を有する雨樋上流部の下流側」(構成要件1-1-C、1-2-C)に該当し、本件発明1の構成要件を充足するほか、「竪樋継手に接続された第1エルボ」(構成要件2-7-D)、「竪樋継手に…第1エルボを介して接続される呼び樋」(構成要件2-7-E)は、ビニルパイプを挟む構成を排除していないから、本件発明2の構成要件も充足する(文言に該当しない場合には均等侵害である。)。Gの態様は、排水桝からの水の跳ね出しを低減するために、排水枡の手前で90°LL大曲エルボを用いる構成であるところ、この構成は原告が有する別の特許権を侵害するものであり、被告の近時のパンフレット(甲6の2、93)でも推奨されていないから、施工業者が当該態様で施工することは考えられない。また、地中の配管工事は、雨樋の設置工事とは異なる時期になされるから、雨樋の設置工事で用いる他の構成部材と90°大曲エルボLLが同時に購入された場合には、90°大曲エルボLLが地中で用いられることはない。Hの態様は、どのような施工態様であるかが判然とせず、被告らが提示する施工例は信用性がないから、そもそも考慮する必要はない。B及びEの態様のうち、被告システムの構成部材を購入した施工業者が、被告らのパンフレット(甲6の2)や「施工上のポイント」と題する書面(甲15)に推奨された方法に反する態様で施工することはないから、②-1-2、③-1-3の態様により施工されることはない。以上によれば、被告システムを構成する4種類の部材をまとめて購入した施工業者は、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属するBの②-1-1、Eの③-1-1及び③-1-2の態様による施工を行うことが当然予定されているから、上記4種類の部材を販売等することは、本件特許権1及び2を侵害する被告システムを販売等することにほかならない。
イ裁判所の求釈明を踏まえ、被告ケイミューが実施した調査(以下「本件調査」という。)の結果によれば、被告システムを構成する4種類の部材(①被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)を1個、②被告製品7ないし13の軒樋のいずれかを1個、③被告製品4ないし6の90°大曲エルボLL又は45°エルボ45Lのいずれかを2個、④ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)を含み、かつ、⑤SソケットDVSSを含まないもの。)を同時に販売する13件の取引のうち、施工業者が本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する態様で施工していないことが立証されているものは、1件も存在しない。したがって、被告システムを構成する上記4種類の部材をまとめて販売等した場合には、侵害態様で施工されることが当然予定されているというべきである。
⑷ 被告らによる実施行為
ア譲渡等の申出被告らは、被告パナソニックのウェブサイト(甲6の2)や販促資料(甲14)において、「大型雨とい高排水システム」の組立例を示しており、これを単なる一例であるということはできないから、被告らは、被告システムの構成部材を譲渡する意思を示し、かつ、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する構成部材の組立てを紹介又は推奨することにより、被告システムの営業活動を行っている。そして、被告システムは実際に国内に流通しており、被告システムの構成部材がまとめて販売され、実際に被告らが推奨するとおりに組み立てられている可能性が高い。以上によれば、被告らは、特許権を侵害する被告システムの譲渡又は貸渡の申出を行ったといえる。
イ譲渡等被告らは、被告システムの構成部材を施工業者に直接又は代理店を通じて販売しているところ、上記のとおり、被告システムの構成部材を購入した施工業者が当該構成部材を組み立てて被告システムを完成させることを当然予定しているから、施工業者に対し、被告ら単独又は代理店と共謀して、特許権を侵害する被告システムの譲渡又は貸渡を行ったものといえる。
⑴ 被告らの主張の要旨被告らは、被告システムを構成する部材を販売等しているにすぎず、被告システムを販売等していない。すなわち、被告システムを構成する部材は、通常排水用の製品と組み合わせるなど侵害用途以外にも用い得るものであるし、代理店が在庫として保管することもあるから、必ずしもそれ自体が組み合わされて使用されるとはいえない。仮に組み合わせたとしても、被告システムと異なる構成で施工されることがあり得るから、被告システムの部材をまとめて購入した施工業者が被告システムを完成させることが当然予定されているとはいえない。したがって、被告らは、被告ら単独又は代理店と共同して、被告システムの譲渡等又は譲渡等の申出をしているとはいえない。
⑵ 被告らの販売態様
ア被告らは、被告システムを構成する部材を個別に販売等しているにすぎない。そもそも、被告らが用いる受発注画面に「大型雨とい高排水システム」といったシステム単位での発注を可能とする選択肢はなく、当該システム単位での注文番号や型番も割り振られていない。被告製品1ないし13を購入する販売店や代理店は、被告パナソニックのカタログ又は積算資料に掲載されている部材の中から購入を希望する部材を特定し、数量を自由に指定することが可能であり、特定の組合せや施工方法を前提としなければ購入できないといった制限はない。このように、被告パナソニックのカタログや販促資料に記載されている施工例は、組合せの一例にすぎない。
イそのほかに、原告は、被告らの販売態様を根拠として、被告らが被告システムを販売等している旨主張するが、いずれも理由がない。
まず、被告らが排水計算サービスを提供していることは、被告システムを販売等していることの根拠にはならない。すなわち、ウェブサイト上の排水計算サービスである「アイアン雨とい排水計算システム」(甲16)は、通常排水用のものであるし、施工業者の求めに応じて個別に提供する排水能力計算書(甲17等)では、排水能力を確認するために必要な情報は、竪樋と軒樋に関する情報のみであるから、被告システムを販売等していると評価する根拠とはならない。そもそも、排水能力計算書の提供を通じて、被告らが施工業者と直接やり取りをすることは例外的であるし、提供した排水能力計算書のとおりに発注されるとも限らないから、被告らが、施工業者による施工の内容を把握しているとはいえない。
また、外観意匠の観点も、被告らが被告システムを販売等していることの根拠とはならない。一般的に、軒樋と竪樋の色調を必ずしも統一する必要はない上、高排水の雨樋が設置される工場や倉庫は、さほど外観が重視されないから、色調が類似する他社の部材同士が組み合わされることもあり得る。
さらに、被告パナソニックが提供する品質保証(甲38)は、各部材が組み合わされたシステム全体に対するものではなく、あくまで個別の部材に関するものであるから、被告パナソニックは、「大型雨とい高排水システム」に関するものとして当該保証をしたことはない。
⑶ 被告システム以外の部材の組合せが想定できること
ア雨樋システムは、様々な部材の組合せで構成されるところ、被告らが販売等する部材は、通常排水用の製品や、各メーカーが製造・販売するJIS規格に沿った他社製品と組み合わせることが可能である。また、呼び樋や竪樋がどのような長さで施工されるかは、現場を踏まえた施工業者の独自の判断に基づくものである。したがって、被告らが、施工業者に対し、被告システムの部材を販売等したとしても、実際に被告システムの部材として用いられるかどうか、更に特定の位置及び数量で組み合わせて施工されるかどうかは、施工業者の選択に左右されることになる。
ウそもそも、被告らが、被告システムを構成する4種類の部材をまとめて販売等したとしても、代理店が在庫として一定期間保管することがあるから、被告システムを構成する態様で組み合わせられるとは限らない。そして、裁判所の求釈明を踏まえ、被告ケイミューが実施した本件調査によれば、令和2年4月1日から令和6年6月末日までの期間において、非住宅用雨樋部材の発注(30万2075件)のうち、被告システムを構成する4種類の部材(①被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)を1個、②被告製品7ないし13の軒樋のいずれかを1個、③被告製品4ないし6の90°大曲エルボLL又は45°エルボ45Lのいずれかを2個、④ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)を含み、かつ、⑤SソケットDVSSを含まないものをいう。)を同時に販売する取引は13件にとどまる。そして、当該13件の中には、特定の現場で使用することを想定せずにサンプルとして発注したというものや、購入した部材を下流の事業者にまとめて販売していないというものがあった。そうすると、被告らは、被告システムを構成する部材を個別に販売等しているにとどまり、まとめて販売等したとしても、実際の施工現場において、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する被告システムを構成する組合せで施工されることが当然予定されているとはいえない。
⑴ 特許法101条1号被告製品2及び3の自在ドレン(高排水用)は、「大型雨とい高排水システム」の専用部材であるから、被告システム2、3及び7の生産にのみ用いる物である。したがって、被告らが被告製品2及び3を製造、販売等する行為は、本件特許権1を侵害するものとみなされる。
⑵ 特許法101条2号被告製品2及び3は、いずれもサイフォン現象を発生させるものであるから、サイフォン雨樋システムを提供するという本件発明1の課題の解決に不可欠なものである。そして、原告は、被告パナソニックに対し、令和3年6月30日付けで「大型雨とい高排水システム」が本件特許権1を侵害することを通知(以下「本件通知」という。)したから、被告パナソニックは、本件特許権1の存在及び被告製品2及び3が本件発明1の実施に用いられるものであることを認識しており、同社を通じて、被告ケイミューも認識していた。したがって、被告らが被告製品2及び3を製造、販売等する行為は、本件特許権1を侵害するものとみなされる。
⑴ 特許法101条1号被告製品2及び3は、被告システム2、3及び7以外の雨樋システムであっても使用することができる。現に、被告パナソニックのウェブサイトに記載されている組合せ例やカタログの施工例にも、被告システム2、3及び7以外の構成が記載されている。したがって、被告製品2及び3は、本件発明1以外にも使用できるものであり、このような用途は、経済的、商業的ないしは実用的観点からみても合理的なものであるといえるから、間接侵害は成立しない。
⑵ 特許法101条2号
ア本件発明1の特徴的な部分は、構成要件1-1-H-1、1-2-H-1、構成要件1-1-I、1-2-Iであるところ、被告製品2及び3は、課題解決に不可欠なものであるとはいえない。
イ排水部材は、各メーカーが本件特許1の出願前から製造販売していたものであり、被告製品2及び3は、被告システム2、3及び7を構成する雨樋システム以外の用途に用いることが可能であるから、汎用品である。
ウ被告らは、施工業者による具体的な施工態様を把握していないから、被告製品2及び3が被告システム2、3及び7を構成する特定のパターンで用いられることにつき、その具体的認識はない。
⑴ 特許法101条1号被告製品5及び6の90°大曲エルボLLは、かさばって建物への収まりが悪いことから、通常排水用のシステムに使用されることは稀である。また、ねずみ色以外の色調の製品は耐候性仕様になっており、その中でもアイボリー、ココアブラウン、グレー及びミルクホワイトの各色は、「大型雨とい高排水システム」と時期を合わせて発売され、同システムのカタログにしか掲載されていない。したがって、少なくとも、被告製品5及び6のねずみ色及びシルバーグレー以外(アイボリー、ココアブラウン、グレー及びミルクホワイト)の色調の製品は、「大型雨とい高排水システム」の専用部材であるといえるから、被告システム2、3及び7の生産にのみ用いる物である。
⑵ 特許法101条2号
ア本件明細書1の記載(段落【0013】【0015】)等からすれば、本件発明1の技術的特徴部分は、サイフォン発生部で発生したサイフォン現象によって雨水が満水状態で雨樋上流部に接続される第1エルボの一端から曲管部に流入するという構成にあるというべきところ、被告製品5及び6は、他の部材と機能的な一体性を有して、上記構成を直接もたらす特徴的な部品を構成するものといえるから、「発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たる。
イ被告製品5及び6のねずみ色及びシルバーグレー以外の色調の製品は、専ら「大型雨とい高排水システム」の用途のために製造され、被告らのみが取り扱っているから、「日本国内において広く一般に流通しているもの」ではない。また、被告製品5及び6は、間接侵害の対象物とすることが取引の安定性の確保の観点から好ましくないとされる規格品、普及品であるともいえず、さらに、90°大曲エルボLLは、JIS規格適合品であるが、JIS規格は受け口の寸法を定めるものにすぎない。
ウそして、被告らの販売態様からすれば、施工業者の少なくとも例外的とはいえない範囲の者が、被告製品5及び6を用いて被告システム2、3及び7に利用する蓋然性が高い状況が現に存在し、被告らは、その利用を認識、認容していたといえる。少なくとも、本件通知を受領した後は、被告らは、本件特許権1の存在並びに被告製品5及び6が本件発明1の実施に用いられるものであることを認識していた。
エしたがって、被告らが被告製品5及び6を販売等する行為は、本件特許権1を侵害するものとみなされる。
⑴ 特許法101条1号被告製品5及び6は、通常排水用のシステムにも使用されることがある。また、被告製品5及び6のねずみ色及びシルバーグレー以外の色調の製品が、被告らのカタログにしか掲載されていないことは、被告システム2、3及び7の生産にのみ用いる物であることの根拠にならない。
⑵ 特許法101条2号
ア被告製品5及び6は、本件特許1の出願前から存在する部材であるところ、本件発明1が開示する特徴的な技術手段とは無関係に存在していたものであるから、それ自体が新たに本件発明1の開示する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的なものに当たるものとはいえない。そして、本件発明1の特徴的部分は、第1エルボの一端が呼び樋を介して曲管部に接続することにあるわけではなく、曲管部及び呼び樋が構成要件1-1-H-1、1-2-H-1、構成要件1-1-I、1-2-Iの各構成を有することにあるから、被告製品5及び6が本件発明1の特徴的部分を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な部品であるとはいえず、「発明による課題の解決に不可欠なもの」には該当しない。
イまた、被告製品5及び6は、JIS規格適合品であり、当然に被告システム2、3及び7の構成以外にも用いることは可能であり、かつ、被告ら以外を通じての製造販売もなされているから、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品であるというべきである。したがって、被告製品5及び6は、汎用品に該当する。
ウそして、被告らは、施工業者による具体的な施工態様を把握していないから、被告製品5及び6が被告システム2、3及び7を構成する特定のパターンで用いられることにつき、その具体的認識はなく、施工業者のうち、例外的とはいえない範囲の者が被告製品5及び6を本件発明1の構成要件を充足する雨樋システムに利用する蓋然性が高いといえる状況も存在しない。
⑵ また、被告製品9、12及び13は、間接侵害の対象物とすることが取引の安定性の確保の観点から好ましくないとされるような規格品、普及品であるとはいえない。
⑶ そして、軒樋の販売額の相当部分が高排水システムのものであると考えられることからすれば、施工業者の少なくとも例外的とはいえない範囲の者が、被告製品9、12及び13を用いて被告システム2、3及び7に利用する蓋然性が高い状況が現に存在し、被告らは、その利用を認識、認容していたといえる。少なくとも、本件通知を受領した後は、被告らは、本件特許権1の存在並びに被告製品9、12及び13が本件発明1の実施に用いられるものであることを知っていた。
⑷ したがって、被告らが被告製品9、12及び13を製造、販売等する行為は、本件特許権1を侵害するものとみなされる。
⑴ 被告製品9、12及び13は、本件特許1の出願前から存在する部材であるところ、本件発明1が開示する特徴的技術手段とは無関係に存在していたものであるから、それ自体が新たに本件発明1の開示する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的なものに当たるものとはいえない。そして、本件発明1の技術的課題を解決するために不可欠な構成は、構成要件1-1-H-1、1-2-H-1、構成要件1-1-I、1-2-Iであるところ、被告製品9、12及び13はこのいずれとも関係がない。したがって、被告製品9、12及び13は、本件発明1の課題解決に不可欠なものであるとはいえない。
⑵ また、被告製品9、12及び13は、被告システム2、3及び7の構成以外にも用いることは可能であり、かつ、被告ら以外を通じての製造販売もなされているから、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品というべきである。したがって、被告製品9、12及び13は、汎用品に該当する。
⑶ そして、被告らは、施工業者による具体的な施工態様を把握していないから、被告製品9、12及び13が被告システム2、3及び7を構成する特定のパターンで用いられることにつき、その具体的認識はなく、施工業者のうち、例外的とはいえない範囲の者が被告製品9、12及び13を本件発明1の構成要件を充足する雨樋システムに利用する蓋然性が高いといえる状況も存在しない。
⑴ 特許法101条1号被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)は、「大型雨とい高排水システム」の専用部材であるから、被告システムの生産にのみ用いる物である。したがって、被告らが被告製品1ないし3を製造、販売等する行為は、本件特許権2を侵害するものとみなされる。
⑵ 特許法101条2号被告製品1ないし3は、コストを抑え、作業性に優れた簡単な構造で、優れたサイフォン性能を発揮することができる排水部材を提供するという本件発明2の課題の解決に不可欠なものである。そして、原告は、本件通知を受領したのであるから、被告パナソニックは、本件特許権2の登録時には、本件特許権2の存在及び被告製品1ないし3が本件発明2の実施に用いられるものであることを知っており、同社を通じて、被告ケイミューも知っていた。したがって、被告らが被告製品1ないし3を製造、販売等する行為は、本件特許権2を侵害するものとみなされる。
⑴ 特許法101条1号被告製品1ないし3は、本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属しない雨樋システムであっても使用することができる。現に、被告パナソニックのウェブサイトに記載されている組合せ例やカタログの施工例にも、本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属しない構成が記載されている。したがって、被告製品1ないし3は、本件発明2-7ないし2-9以外にも使用できるものであり、このような用途は、経済的、商業的ないしは実用的観点からみても合理的なものであるため、間接侵害は成立しない。
⑵ 特許法101条2号本件発明2の特徴的な部分は、排水部材である。そして、被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)が、本件発明2の「排水部材」に該当しないことは、上記10記載のとおりである。したがって、被告製品1ないし3が「課題の解決に不可欠なもの」であるとはいえない。
⑴ 特許法101条1号被告製品4ないし6の90°大曲エルボLLのうち、ねずみ色及びシルバーグレー以外の色調の製品は、「大型雨とい高排水システム」の専用部材であるから、被告システムの生産にのみ用いる物である。したがって、被告らがこれらの製品を販売等する行為は、本件特許権2を侵害するものとみなされる。
⑵ 特許法101条2号
ア被告製品4ないし6は、コストを抑え、作業性に優れた簡単な構造で、優れたサイフォン性能を発揮することができる排水部材を提供するという本件発明2の課題の解決に不可欠なものである。
イ被告製品4ないし6のねずみ色及びシルバーグレー以外の色調の製品は、専ら「大型雨とい高排水システム」の用途のために製造され、被告らのみが取り扱っているから、「日本国内において広く一般に流通しているもの」ではない。また、被告製品4ないし6は、間接侵害の対象とすることが取引の安定性の確保の観点から好ましくないとされる規格品、普及品であるともいえない。
ウそして、被告らの販売態様からすれば、施工業者の少なくとも例外的とはいえない範囲の者が、被告製品4ないし6を用いて被告システムに利用する蓋然性が高い状況が現に存在し、被告らは、その利用を認識、認容していたといえる。少なくとも、本件通知を受領した後は、被告パナソニックは、本件特許権2の登録時には、本件特許権2の存在及び被告製品4ないし6が本件発明2の実施に用いられるものであることを知っており、同社を通じて、被告ケイミューも知っていた。
エしたがって、被告らが被告製品4ないし6を販売等する行為は、本件特許権2を侵害するものとみなされる。
⑴ 特許法101条1号被告製品4ないし6は、通常排水用のシステムに使用されることがある。また、ねずみ色及びシルバーグレー以外の色調の製品が、被告らのカタログにしか掲載されていないことは、被告システムの生産にのみ用いる物であることの根拠とはならない。
⑵ 特許法101条2号
ア被告製品4ないし6は、本件特許2の出願前から存在する部材であるところ、本件発明2が開示する特徴的な技術手段とは無関係に存在していたものであるから、それ自体が新たに本件発明2の開示する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的なものに当たるとはいえない。そして、本件発明2の特徴的部材は、排水部材であって、被告製品4ないし6は、排水部材ではない。したがって、被告製品4ないし6は、「課題の解決に不可欠なもの」であるとはいえない。
イまた、被告製品4ないし6は、JIS規格適合品であり、当然に被告システムの構成以外にも用いることは可能であり、かつ、被告ら以外を通じての製造販売もなされているから、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品というべきである。したがって、被告製品4ないし6は、汎用品に該当する。
ウそして、被告らは、施工業者による具体的な施工態様を把握していないから、被告製品4ないし6が被告システムを構成する特定のパターンで用いられることにつき、その具体的認識はなく、施工業者のうち、例外的とはいえない範囲の者が被告製品4ないし6を本件発明2の構成要件を充足する雨樋システムに利用する蓋然性が高いような状況も存在しない。
⑴ 被告製品7ないし13は、コストを抑え、作業性に優れた簡単な構造で、優れたサイフォン性能を発揮することができる排水部材を提供するという本件発明2の課題の解決に不可欠なものである。
⑵ また、被告製品7ないし13は、間接侵害の対象とすることが取引の安定性の確保の観点から好ましくないとされるような規格品、普及品であるとはいえない。
⑶ そして、軒樋の販売額の相当部分が高排水システムのものであることからすれば、施工業者の少なくとも例外的とはいえない範囲の者が、被告製品7ないし13を用いて被告システムに利用する蓋然性が高い状況が現に存在し、被告らは、その利用を認識、認容していたといえる。少なくとも、本件通知を受領した後は、被告パナソニックは、本件特許権2の登録時には、本件特許権2の存在及び被告製品7ないし13が本件発明2の実施に用いられるものであることを知っており、同社を通じて、被告ケイミューも知っていた。
⑷ したがって、被告らが被告製品7ないし13を製造、販売等する行為は、本件特許権2を侵害するものとみなされる。
⑴ 被告製品7ないし13は、本件特許2の出願前から存在する部材であるところ、本件発明2が開示する特徴的な技術手段とは無関係に存在していたものであるから、それ自体が新たに本件発明2の開示する特徴的技術手段を直接特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的なものに当たるものとはいえない。そして、本件発明2の特徴的部材は、排水部材であって、被告製品7ないし13は、排水部材ではない。したがって、被告製品7ないし13は、「課題の解決に不可欠なもの」であるとはいえない。
⑵ 被告製品7ないし13は、被告システムの構成以外にも用いることは可能であり、かつ、被告ら以外を通じての製造販売もなされているから、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品というべきである。したがって、被告製品7ないし13は、汎用品に該当する。
⑶ 被告らは、施工業者による具体的な施工態様を把握していないから、被告製品7ないし13が被告システムを構成する特定のパターンで用いられることにつき、その具体的認識はなく、施工業者のうち、例外的とはいえない範囲の者が被告製品7ないし13を本件発明2の構成要件を充足する雨樋システムに利用する蓋然性が高いような状況も存在しない。
32争点8(損害額)侵害論に関する心証開示を踏まえ、損害論の審理をした部分に限り、以下記載する。
⑴ 本件特許権2の侵害に関する損害額原告が受けた損害の額は、以下のアないしウ記載のとおりである。なお、原告は、ア及びイによって推定される金額のうち、最も高い金額を選択的に主張する。
ア特許法102条2項に基づく請求(ア) 被告らが得た利益の額被告製品1ないし3の製造及び販売等によって、被告らが得た限界利益の額は、●(省略)●円である。
(イ) 推定覆滅事由が存在しないことa競合品の存在通常排水用の排水部材は、排水性能が大きく異なるから、被告製品1ないし3の競合品とはならない。そして、通常排水用の排水部材を、高排水システムが採用されている現場に使用するためには、竪樋の本数を増やすか、あるいは、竪樋や軒樋のサイズを大きくする必要があるから、1つのドレン及びそれに対応する軒樋及び竪樋等に高い排水性能が求められる物件や、竪樋の位置や本数が限定される物件には適用できない。そもそも、高排水用の排水部材と、通常排水用の排水部材とは、価格が大きく異なるから、競合品として比較されることもない。b被告製品の他の特徴被告らが主張する被告製品1-1、2-1及び3-1の特徴のうち、ネジ無し部、羽根及び漏斗部、屈曲凹部の各構成が、その売上げに貢献していることの主張立証はない。
c本件発明2の寄与被告らは、本件発明2に係る構成のうち、蓋部材を軒樋の底面から所定の高さの位置に設定し、かつ、蓋部材を縦リブを介して一体に設けた装着筒を竪樋継手に嵌合するという点は、その技術的意義が乏しいと主張しつつ、設計変更後も縦リブを維持しているから、縦リブによる整流効果が必要であると考えていることは明らかである。また、本件発明2に係る構成のうち、落し口部の開口面積を大きくし、縦リブに整流効果を持たせることにしたという点は、断面積が従来のものとは異なる大きな流量で安定して排水できるところに特徴があり、その技術的意義が乏しいとはいえない。
(ウ) 小括したがって、特許法102条2項に基づく請求額は、被告らが得た限界利益の額(●(省略)●円)に、弁護士費用相当額(10%)である●(省略)●円を加えた●(省略)●円である。
イ特許法102条3項に基づく請求(ア) 売上額被告製品1ないし3の売上額は、●(省略)●円である。
(イ) 実施料率大型建造物用の高排水システムは、原告と被告らが市場を2分しており、同システムを構成する部材に関する実施料率の相場は存在しない。そして、本件発明2は、コストを抑え、作業性に優れた簡単な構造で、優れたサイフォン現象を発揮することができる排水部材を提供するものであるから、重要な価値を有するとともに、その実施品が売上及び利益に貢献する度合いも高い。そのほかに、被告らが本件発明2の存在を認識しても、なお被告製品1ないし3の販売を続けていたことなどの事情をも併せて考慮すれば、その実施料率は50%を下らないというべきである。
(ウ) 小括したがって、特許法102条3項に基づく請求額は、売上額(●(省略)●円)に実施料率(50%)を乗じた金額(●(省略)●円)に、弁護士費用相当額(10%)である●(省略)●円を加えた●(省略)●円である。
ウ民法709条に基づく請求原告と被告らが製造販売する大型建造物用の高排水システムは、構成部材とシステムの基本構成及び目的が共通するほか、部材の品揃え、商流、販促活動の態様、価格も共通している。そして、被告製品1ないし3を購入した需要者は、高排水システムを構成するドレン以外の部材も、被告らが販売する部材を購入するといえる。そうすると、原告は、被告製品1-1、2-1、3-1の直接侵害及び間接侵害によって、上記各製品に対応する原告製品(ドレン)のみならず、原告が製造する高排水システムの構成部材全てを販売する機会をも喪失したというべきである。
具体的には、原告は、別紙(709条に基づく損害賠償請求額一覧(弁護士費用を除く))記載の金額に弁護士費用相当額(10%)をそれぞれ加算した金額を損害額として主張する。
⑵ 共同不法行為に基づく損害額
ア主張の枠組み原告が受けた損害の額は、以下のイ及びウ記載のとおりである。なお、原告は、イ及びウによって推定される金額のうち、最も高い金額を選択的に主張する。
イ特許法102条2項に基づく請求原告は、被告らが施工業者に対する部材の販売によって得た限界利益の額と、施工業者が生産によって得た限界利益の額の合算値が、特許法102条2項による損害の額であると主張する。
(ア) 主位的主張a被告らが部材の販売によって得た利益の額高排水用ドレンが侵害態様のシステムに用いられる場合において、高排水用ドレン1個当たりにつき、被告らが当該システムを構成する部材の販売によって得られる平均的な限界利益の額を算出し(①)、ⓐ被告らが侵害期間中に販売した高排水用ドレンの総数とⓑ高排水用ドレンが侵害態様のシステムに用いられる割合を乗じて得られた数量(②)を、上記限界利益の額(①)に乗じて得られた金額を、被告らが部材の販売によって得た利益の額として主張する。
具体的には、上記①(高排水用ドレン1個当たり被告らが部材の販売により得られる限界利益の額)は、調査嘱託の結果及び証拠(甲164)によれば、別紙(102条2項主位的主張)記載のとおりである。また、上記②のⓐ(被告らが侵害期間中に販売した高排水用ドレンの総数)は、侵害期間に応じ、令和5年3月6日以降の期間(本件特許1及び2を侵害している期間であり、以下「侵害期間A」という。)につき、被告製品1が●(省略)●個、同2が●(省略)●個、同3が●(省略)●個であり、令和3年2月1日から令和5年3月5日までの期間(本件特許1のみを侵害している期間であり、以下「侵害期間B」という。)につき、被告製品2が●(省略)●個、同3が●(省略)●個である。そして、上記②のⓑ(高排水用ドレンが侵害態様で用いられる割合)は、侵害期間Aにつき80%を下らず、侵害期間Bにつき16%を下らない。
以上によれば、被告らが部材の販売によって得た利益の額(主位的主張)は、1億3898万2478円である。
b施工業者が生産によって得た利益の額高排水用ドレンが侵害態様のシステムに用いられる場合において、高排水用ドレン1個当たりにつき、施工業者が得られる平均的な限界利益の額を算出し(①)、ⓐ被告らが侵害期間中に販売した高排水用ドレンの総数とⓑ高排水用ドレンが侵害態様のシステムに用いられる割合を乗じて得られた数量(②)を、上記限界利益の額(①)に乗じて得られた金額を、施工業者が生産によって得た利益の額として主張する。
具体的には、上記①(高排水用ドレン1個当たり施工業者が生産により得られる限界利益の額)は、施工業者が侵害態様のシステムの生産によって得た高排水用ドレン1個当たりの平均受注金額(被告製品1:10万6578円、同2:24万4692円、同3:26万3068円)に、施工業者の限界利益率である20%を乗じて得られた金額である。そして、上記②のⓐ(被告らが侵害期間中に販売した高排水用ドレンの個数)及び上記②のⓑ(高排水用ドレンが侵害態様で用いられる割合)は、上記a記載のとおりである。以上によれば、施工業者が生産によって得た利益の額(主位的主張)は、1億9704万0400円である。
(イ) 予備的主張1a被告らが部材の販売によって得た利益の額①調査嘱託に「施工あり」と回答があった物件については、当該回答から、侵害態様のシステムに用いられた部材の数量を特定した上、各部材の限界利益率を乗じて算出された金額を、被告らが部材の販売によって得た利益の額とし、②原告が独自に調査した結果、侵害態様のシステムに被告製品1ないし3が用いられていることが判明した物件(甲179。以下「原告調査物件」という。)については、高排水用ドレンが侵害態様のシステムに用いられる場合において、高排水用ドレン1個当たり、被告らが当該システムを構成する部材の販売により得られる限界利益の額(②-1)に、原告調査物件に用いられた高排水用ドレンの数量(②-2)を乗じて得られた金額を、被告らが部材の販売によって得た利益の額として主張する。
具体的には、上記①(調査嘱託に回答があった物件から被告らが得た限界利益の額)については、後記(ウ)a記載のとおりである。また、上記②(原告調査物件から被告らが得た限界利益の額)については、上記②-1(高排水用ドレン1個当たり被告らが部材の販売により得られる限界利益の額)は、別紙(102条2項予備的主張①)記載のとおりであり、上記②-2(原告調査物件に用いられた高排水用ドレンの数)は、被告製品1につき3個、同2につき49個、同3につき7個である。以上によれば、被告らが部材の販売によって得た利益の額(予備的主張1)は、1243万0503円である。
b施工業者が生産によって得た利益の額高排水用ドレンが侵害態様のシステムに用いられる場合において、高排水用ドレン1個当たりにつき、施工業者が得られる限界利益の額を算出し(①)、これに、調査嘱託の回答から認められる侵害態様のシステムに用いられた高排水用ドレンの個数と、証拠(甲179)から認められる原告調査物件に用いられた高排水用ドレンの個数を合算した数量(②)を乗じて得られた金額を、施工業者が生産によって得た利益の額として主張する。
具体的には、上記①(高排水用ドレン1個当たり施工業者が生産により得られる限界利益の額)については、上記(ア)b記載のとおりであり、上記②(調査嘱託に回答があった物件と原告調査物件に用いられた高排水用ドレンの個数)は、被告製品1につき81個、同2につき147個、同3につき144個である。以上によれば、施工業者が生産によって得た利益の額(予備的主張1)は、1649万6875円である。
(ウ) 予備的主張2a被告らが部材の販売によって得た利益の額調査嘱託に「施工あり」と回答があった物件につき、当該回答から、侵害態様のシステムに用いられた部材の数量を特定した上で、各部材の限界利益率を乗じて算出された金額を、被告らが部材の販売によって得た利益の額として主張する。
具体的には、別紙(102条2項予備的主張②)記載のとおりである。以上によれば、被告らが部材の販売によって得た利益の額(予備的主張2)は、1081万8726円である。
b施工業者が生産によって得た利益の額調査嘱託の回答から認められる受注金額である●(省略)●円に、施工業者の限界利益率(20%)を乗じて得られた金額を、施工業者が生産によって得た利益の額として主張する。以上によれば、施工業者が生産によって得た利益の額(予備的主張2)は、●(省略)●円である。
ウ特許法102条3項に基づく請求(ア) 施工業者の売上額a主位的主張につき、施工業者が侵害態様のシステムの生産によって得た高排水用ドレン1個当たりの平均受注金額(被告製品1:10万6578円、被告製品2:24万4692円、被告製品3:26万3068円。上記イ(ア)b参照)に、被告らが侵害期間中に販売した高排水用ドレンの総数(侵害期間Aにつき、被告製品1が●(省略)●個、同2が215●(省略)●個、同3が●(省略)●個であり、侵害期間Bにつき、被告製品2が●(省略)●個、同3が●(省略)●個。上記イ(ア)a参照)と高排水用ドレンが侵害態様に用いられる割合(侵害期間Aにつき80%、侵害期間Bにつき16%。上記イ(ア)a参照)を乗じて得られた金額である9億9594万1422円が、施工業者の売上額である。
b予備的主張1につき、上記a記載の施工業者の高排水用ドレン1個当たりの平均受注金額に、調査嘱託に回答があった物件と原告調査物件に用いられた高排水用ドレンの個数(被告製品1につき81個、被告製品2につき147個、被告製品3につき144個。上記イ(イ)b参照)を乗じて得られた金額である8248万4375円が、施工業者の売上額である。
c予備的主張2につき、上記イ(ウ)b記載のとおり、調査嘱託の回答から認められる受注金額である●(省略)●円が、施工業者の売上額である。
(イ) 実施料率高排水システムの市場は、原告と被告らが二分しており、実施許諾の実績がない。そして、原告が製造販売する高排水システムは、配管を拡大することなく排水効率を向上させることが高く評価されているところ、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9は、この点に直接寄与するシステム全体に関するものであるから、その重要性は高い。そして、被告らは、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9を侵害する高排水システムの販売により多額の利益を得ており、施工業者も当該システムの利用により、売上げに対して少なくとも24.8%のコスト削減を行うことができているから、いずれも多大な利益を得ている。上記の事情に加え、当事者間の関係、交渉経緯、侵害プレミアムの存在等に鑑みれば、施工業者に対するライセンス料が35%を下ることはない。
(ウ) 小括以上によれば、主位的主張に係る実施料相当額は、3億4857万9498円、予備的主張1に係る実施料相当額は、2886万9531円、予備的主張2に係る実施料相当額は、728万8863円である。
エ結論以上に消費税相当額(10%)を加算し、さらにこれに対する弁護士費用相当額(10%)を加算すると、原告の主張する損害額は、別紙(共同不法行為に基づく請求額一覧表)記載のとおりである。
⑴ 本件特許権2の侵害に関する損害額
ア特許法102条2項に基づく請求(ア) 被告らが得た限界利益の額原告主張の金額を争わない。なお、被告らは、ドレンの上部材である被告製品1-1、2-1及び3-1と、ドレンの下部材である被告製品1-2、2-2、3-2を必ずセットで販売しており、上記限界利益の額は、ドレンの下部材を販売して得た金額を含むものである。
(イ) 推定覆滅事由が認められることa競合品の存在高排水システムを採用するか、通常排水のシステムを採用するかは、建物の構造や施主又は施工業者の希望を踏まえて検討されるものである。そして、高排水用のドレンと通常排水用のドレンは、それぞれ互換性があり、販売価格にも有意な差はない。そのため、通常排水用の排水部材も、被告製品1ないし3の競合品になるというべきである。b被告製品の他の特徴被告製品1-1、2-1及び3-1は、その下部の外側にネジ無し部があり、施工時の螺合作業の作業性が向上している。また、被告製品1-1、2-1及び3-1は、複数の羽根と漏斗部を有しており、整流効果、排水機能の低下を抑制している。これらは、いずれも被告が有する特許技術であり、被告製品1-1、2-1及び3-1は、その実施品である。c本件発明2の寄与本件発明2は、ドレンの上部材に関する発明であるから、被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)の売上げの一部にのみ寄与している。そして、本件発明2の技術的特徴のうち、蓋部材を軒樋の底面から所定の高さの位置に設定し、かつ、蓋部材を縦リブを介して一体に設けた装着筒を竪樋継手に嵌合する構成は、取付作業を簡単にするものであるにとどまり、競合品にも、ドレンの上部材に取手として持って回す構成が存在しているから、その技術的価値は低い。また、本件発明2の技術的特徴のうち、落とし口部の開口面積を大きくし、縦リブに整流効果を持たせることとする構成は、単にサイズを大きくしたことを意味するにとどまるし、縦リブの存在はサイフォン現象の発生に必須であるとはいえないから、その技術的価値は低い。
d小括以上によれば、原告主張の推定損害額は、9割以上が覆滅されるべきである。
イ特許法102条3項に基づく請求(ア) 売上額原告主張の売上額は争わない。なお、被告らは、ドレンの上部材である被告製品1-1、2-1及び3-1と、ドレンの下部材である被告製品1-2、2-2、3-2をセットで販売しており、上記売上額は、ドレンの下部材を販売して得た金額を含むものである。
(イ) 実施料率昭和63年度から平成10年度における「プラスチック板・棒・管・継手・異形押出製品製造技術」を含む「プラスチック製品」に関する技術の実施料率のイニシャル有りの平均値は3.0%、イニシャル無しの平均値は3.9%である。また、本件発明2は、ドレンの上部材に関するものであるし、その技術的意義が乏しいことからすると、侵害品のうち本件発明2が寄与する程度は低い。したがって、実施料率は1%とすべきである。
ウ民法709条に基づく請求高排水システムと通常排水のシステムのいずれを採用するかは、建物の構造や施主又は施工業者の希望を踏まえて決せられるものであり、両者は代替関係にある。また、原告が製造販売する高排水システムの構成部材と、被告らが製造販売する高排水システムの構成部材が混在して使用される例は存在しており(乙A66)、被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)を購入した需要者が、雨樋を構成するその他の部材についても、必ず被告らが製造販売する部材を購入するとは限らない。以上のほか、被告システムを構成するその他の部材(軒樋)の性能が高いこと、原告の売上げの減少が認められないこと、原告の製造及び販売余力が立証されていないことなどからすれば、需要者は、被告製品1ないし3がなければ、原告が製造販売するドレン及びその他の高排水システムの構成部材を購入するとは認められない。したがって、民法709条に基づく請求は認められない。
⑵ 共同不法行為に基づく損害額
ア特許法102条2項について(ア) 被告らが施工業者に対する部材の販売によって得た利益は、被告らが共同不法行為者としての責任を負うにとどまる以上、特許法102条2項所定の「利益」に含まれない。また、原告は、調査嘱託申立書において、施工業者の得た利益の額を主張しないと記載していたのであるから、前言を翻して、これを主張することは許されない。
(イ) 上記の点を措いたとしても、主位的主張、予備的主張1及び予備的主張2のいずれも憶測を重ねるものであって、いずれも根拠がない。また、予備的主張1及び2につき、原告調査物件(7社8件)のうち、被告らが被告システムを構成する4種類の部材を販売したことを確認できているのは1件のみであるほか、調査嘱託の回答があった物件(11社22件)のうち、被告らが上記4部材を販売したことを確認できているのも4件のみである。さらに、上記物件には、原告が製造販売するドレンを使用したことが設計図面から見受けられるものや、通常排水用のドレンを使用したことが見受けられるものも存在する。そうすると、これらを含めて、侵害態様のシステムが施工されていることを前提とする原告の主張は、失当である。
イ特許法102条3項について(ア) 調査嘱託の回答があった物件のうち、被告らが上記4部材を販売したことが確認できていない物件、排水能力計算書を提供していない物件、排水能力計算書を提供したものの、通常排水を推奨した物件がある。これらについては、売上額の算定から除外されるべきである。そうすると、調査嘱託の回答があった物件のうち、排水能力計算書を提供し、かつ、上記4部材を販売したことが確認できる物件は存在しないから、そもそも実施料相当額の損害は存在しない。
(イ) 平成4年度から平成10年度までにおける「建設技術」に関する技術の実施料率の平均値(乙A69の1)がイニシャル無しで約3.5%、「令和6年度知的財産のライセンスに関する調査報告」における「建造物」に関する特許権の実施料率の平均値が約3.2%であること、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9には継手の曲率半径や呼び樋の長さに施工条件があることからすれば、実施料率はせいぜい1%である。
第4 当裁判所の判断
1本件発明1及び2の内容
⑴ 本件明細書1の内容
ア技術分野「本発明は、サイフォン雨樋システムに関する。」(段落【0001】)
イ背景技術「…雨樋は、軒樋、集水器、呼び樋、竪樋、連結管、エルボ継手、チーズ継手(以下、それぞれの継手を単に、エルボやチーズという)等の部材が複数組みあわされて構成される。近年、雨樋の排水能力を高めるために、竪樋の内部を満水状態にすることによって、水の吸引作用(所謂、サイフォン現象)を発生させ、排水量を飛躍的に増大させるサイフォン雨樋システムが提案されている。」(段落【0002】)「例えば、特許文献1に開示されたサイフォン式雨水排水装置では、軒先に取り付けられた軒樋の底部に、サイフォン管の上端が接続される。このサイフォン管は、家屋の外壁材に沿って縦方向に設けられ、3~13cm2の開口面積を有する。」(段落【0003】)
ウ発明が解決しようとする課題「サイフォン雨樋システムにおいて雨水を縦引きから横引きにする部分(又は、雨水を横引きから縦引きにする部分)には、各種の樋や連結部材同士を接続するための継手としてエルボが用いられる。従来規格化されているエルボとしては、例えば90°曲がりエルボ(所謂、DL)、がある。」(段落【0005】)「しかしながら、90°曲がりエルボの内周側の内壁部の曲率半径は0mmであって、内周側の内壁部は直角に形成されている。そのため、サイフォン雨樋システムに90°曲がりエルボを使用すると、直角に形成された内周側の内壁部で雨水の流速が低下するという問題があった。また、雨水を縦引き及び横引きする際に、呼び樋や竪樋が短すぎると、雨水の流速が低下するという問題があった。雨水の流速が低下すると、サイフォン雨樋システムの排水能力が低下し、雨樋にサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部で雨水が溢れ出しかねない。」(段落【0006】)「本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、雨水を円滑に流下させるエルボ及びサイフォン雨樋システムを提供する。」(段落【0007】)「本発明のサイフォン雨樋システムは、上述のエルボを第1エルボ及び第2エルボのそれぞれとして備えたサイフォン雨樋システムであって、前記サイフォン発生部を有する雨樋上流部の下流側に前記第1エルボの一端が接続され、前記第1エルボの他端に、前記第1エルボを流下した雨水を横引きする呼び樋の一端が接続され、前記呼び樋の他端に前記第2エルボの一端が接続され、前記第2エルボの他端に、前記第2エルボを流下した雨水を縦引きする竪樋の一端が接続され、前記竪樋の他端は前記竪樋より大きな幅を有する排水機構に接続され、前記呼び樋の長さは0mより大きく、且つ2.0m以内であり、前記竪樋の長さは2.0m以上であることを特徴とする。」(段落【0012】)「上述のサイフォン雨樋システムによれば、サイフォン発生部で発生したサイフォン現象によって雨水が満水状態で雨樋上流部に接続される第1エルボの一端から曲管部に流入した際に、雨水が内壁面の内周面側で滞ることなく、軒樋及び軒樋より下流側の部分に向かって円滑に流れる。また、第1エルボ及び第2エルボの曲管部の曲率半径や、横引きされる雨水の流下距離と竪樋の上流側の端部から最も上流側の合流位置までの流下距離が上記の範囲内になることで、サイフォン発生部から竪樋の下流側の端部までの間のサイフォン作用が途切れ難く、良好に維持される。このことによって、サイフォン発生部から第1エルボに流入した雨水が継手や樋部材の内壁面で滞ることなく、内壁部で雨水の流速が低下しない。」(段落【0015】)
エ発明を実施するための形態「(第1実施形態)図1に示すように、本発明を適用した第一実施形態のサイフォン雨樋システム101は、略水平になるよう軒先に固定された軒樋10、軒樋10の下流側に接続されたエルボ(第1エルボ)114、エルボ114の下流側の端部と接続された呼び樋16、呼び樋16の下流側の端部16aと接続されたエルボ(第2エルボ)118、エルボ118の下流側の端部18bと接続された竪樋20、を備える。」(段落【0021】)「…軒樋10は、上方に向けて開口し、D1方向に延在する。軒樋10は、D1方向に直交する断面視において、底部10bと、底部10bの幅方向(図1のD2方向)の両側から上方に立ち上がる側壁10s、10sとを有する。…」(段落【0022】)「底部10bのD1方向(長手方向)の所定の位置には、底部10bを貫通する集水口12が形成されている。…」(段落【0023】)「集水口12には、サイフォン雨樋システム101にサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部50が設けられる。…」(段落【0024】)「図4に示すように、エルボ114は、曲管部132と、曲管部132の両端に設けられた受け口30A、30Bとを備える。…」(段落【0031】)「曲管部132の管軸Aを含む断面(平面、図4の紙面)で見たときの曲管部132の内周側の内壁面133の曲率半径R1及び外壁面134の曲率半径R2は、少なくとも64mmより大きく、且つ125m〔ママ〕よりも小さい。受け口30Aから流入した雨水Wの流速を低下させず、雨水Wをより円滑に流動させる点をふまえたうえで、曲率半径R1、R2は、収まりや輸送などの点からは64mmよりも大きく、且つ90mmよりも小さいことが好ましく、排水性能の点からは80mmよりも大きく、且つ100mmよりも小さいことが好ましい。」(段落【0032】)「…曲管部132の開口面積は、50mm2以上150mm2以下が好ましく、65mm2以上125mm2以下がより好ましく、75mm2以上100mm2以下がさらに好ましい。距離H及び直径D、Eをそれぞれ前述の範囲内に設定することによって、上述した内壁面133の曲率半径を達成しつつ、排水に最低限必要な流量及びエルボ114の寸法を確保し、サイフォン雨樋システム101の収まりを良くすることができる。」(段落【0035】)「…エルボ114の受け口30Bには、呼び樋16の上流側の端部16aが接続される。呼び樋16は、エルボ114を流下した雨水Wを横引きする部材であり、D2方向に沿って伸びる、又は下流側に進むほどD2方向から離れるようにわずかに離れる直管である。端部16aから呼び樋16の下流側の端部16bまでの長さF1は、0mより大きく、2.0m以下であり、0.6m以上1.5m以下が好ましく、0.6m以上1.0m以下がより好ましい。長さG1が前述の範囲内であることによって、エルボ114から流下した雨水が満水状態で円滑に流下する。」(段落【0041】)「エルボ118の受け口30Bには、竪樋20の上流側の端部20aが接続される。竪樋20は、エルボ118を流下した雨水Wを縦引きする部材であり、D3方向(鉛直方向及びその逆の方向)に沿って延びる直管である。竪樋20の下流側の端部20bは、地面Gに接続され、地中に埋設された公知の集水マス(排水機構)180に接続される。集水マス180は、連結管182を介して、下水管184等の排水構造に接続される。集水マス180は、竪樋20より大きな幅を有する。端部20aから端部20bまでの長さF2は、2.0m以上であり、3.0m以上が好ましく、4.0m以上がより好ましい。長さF2が前述の範囲内であることによって、竪樋20におけるサイフォン現象が良好に発生及び維持される。」(段落【0043】)「図15に示すように、第二実施形態のサイフォン雨樋システム102は、サイフォン雨樋システム101の構成に加え、竪樋20の下流側に接続される竪樋21及び合流管28と、竪樋20、21及び合流管28を連結するチーズ140とを備える。…竪樋20、21を一つの竪樋としてまとめると、サイフォン雨樋システム102では、竪樋20、21のうちの上流側の竪樋20の端部(一端)20aと下流側の竪樋21の下流側の端部(他端)21bとの間の合流位置X1でこれらの竪樋20、21に合流管28が交差する。端部20aから合流位置X1までの距離F3は、2.0m以上である。」(段落【0059】)「第二実施形態のエルボ114、118は、第一実施形態のエルボ114、118と同様の構成を備えるので、同様の作用効果が得られる。…図13に示す自然流下状態と図14に示すサイフォン発生状態との移り変わりがあっても、エルボ114でのサイフォン作用を途切れさせずに(図13及び図14)、良好に維持できる。従って、第二実施形態のエルボ114、118及びサイフォン雨樋システム102によれば、雨水を円滑に流下させることができる。」(段落【0062】)1015
⑵ 本件明細書2の内容
ア技術分野「本発明は、排水部材及び雨樋に関する。」(段落【0001】)。
イ背景技術「…雨樋システムには、住宅などの外観を損なうことなく単位時間当たりの排水量を増加させて、大雨時でも好適に雨水を排水管に排出できるようにすることが求められている。そこで、軒樋で処理できる水の流量を増やすには、軒樋自体の断面寸法を大きくしたり、呼び樋や竪樋の口径の拡大、本数の増加を図る必要がある。しかし、これらは、コストの上昇、見栄えの低下といった問題がある。」(段落【0002】)「そこで、口径の拡大や本数を増やすことがなく排水処理量を増加させる雨樋装置として、例えば特許文献1に記載されているような竪樋及び呼び樋の開口面積を適正な寸法とすることで大雨のときにサイフォン作用により大量の雨水を極めて効率良く排水できるサイフォン式排水装置が知られている。特許文献1の排水装置は、軒樋の下面側でサイフォン管の上端部に渦流防止部材を取り付け、渦流による空気の吸い込みをなくすことで、サイフォン作用による排水の安定性を図る構成となっている。」(段落【0003】)
ウ発明が解決しようとする課題「しかしながら、上述した特許文献1に示すような従来のサイフォン式排水装置では、サイフォン管の上端部に渦流防止部材(排水部材)を取り付ける構造となっているが、軒樋の底面近傍に手を差し込んで取り付けることとなり、作業性の点で課題があった。また、渦流防止部材を竪樋の管内面に沿わせた形状となるため、例えば軒樋から流入した異物が渦流防止部材で詰まったときに取り外し作業がし難く、作業にかかる手間と時間を要することから、その点で改善の余地があった。また、竪樋の開口面積が20cm2以下と小さいため、サイフォン作用を利用しても最大排水流量は十分ではなかった。しかも、竪樋の口径毎に適合する排水部材を用意する必要があることから、経済性の点で課題があり、軒樋や竪樋の大きさに対応して現場で簡単に調整することで、好適なサイフォン性能をもたせることが求められていた。」(【段落0005】)「そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、コストを抑え、作業性に優れた簡単な構造で、優れたサイフォン性能を発揮することができる排水部材を提供することを目的としている。」(【段落0006】)
エ発明を実施するための形態「雨樋1は、…軒樋10と、軒樋10の底面10aに形成される円形の貫通穴10bに呼び樋12を介して接続された竪樋11と、を有している。呼び樋12は、軒樋10に設けられたサイフォンドレン部材2から流下した雨水Wを水平に導水するもので、一端側が第1エルボ12Aによって竪樋継手13を介して軒樋10の下面10cに接続され、他端側が第2エルボ12Bによって竪樋11の上端に接続されるようになっている。…」(段落【0025】)「…図5乃至図7に示すように、サイフォンドレン部材2は、板状に形成された蓋部材21と、落し口部20を有して竪樋11…に嵌合される装着筒22と、蓋部材21と装着筒22とを接続し、上面視で落し口部20に重ならない位置で周方向に間隔をあけて配置された複数の縦リブ23と、を備えている。…」(段落【0034】)「…蓋部材21は円盤状に形成され、装着筒22は筒状に形成されていて、これらの各中心軸は共通軸上に配置され、鉛直方向に一致している。…」(段落【0035】)「装着筒22は、落し口部20を形成する筒部22Aと、筒部22Aの上端から径方向の外側に延びる板状の鍔部22Bと、を有している。…落し口部20の開口面積A1は筒部22Aの内径(落し口部20の開口外径R1)を直径とした面積に相当する。本実施の形態においては、開口面積A1は20cm2以上300cm2以下とされ、30cm2以上190cm2以下が好ましく、40cm2以上100cm2以下がより好ましい。…」(段落【0036】)「装着筒22において、落し口部20に相当する筒部22Aと、鍔部22Bとが連設される内面側の接続部分22aは、テーパー面、或いは曲面に形成されたベルマウス形状をなしている。…筒部22Aは、軒樋10の貫通穴10b(図7参照)に上方から貫通され、竪樋継手13の内側に挿入された状態で配置される。なお、筒部22Aの外周面には、図示しない雄ねじが形成されていてもよい。この場合には、装着筒22を回転させることで竪樋継手13の内面に形成される雌ねじ…に筒部22Aの雄ねじを螺合させて締め込むことで装着することができる。」(段落【0037】)「…蓋部材21の外周縁21aと鍔部22Bの外周縁22cとの間に形成される部分が、軒樋10に溜まった雨水Wが落し口部20の開口に流入する流入開口2Aとなる。…」(段落【0038】)「複数の縦リブ23は、…装着筒22の鍔部22Bの上面22dと、蓋部材21の下面21cの外周部とを連結している。…」(段落【0039】)「なお、サイフォン作用発生のためには流入開口2Aより軒樋10内の水位が高くなる必要があるため、蓋部材21の高さHは軒樋10内の最大水位よりも低い必要がある。安定的なサイフォン作用発生のため、蓋部材21の高さHは、軒樋10内の最大水位の0.1~0.5倍の高さであることが好ましく、0.2~0.45倍の高さであることがより好ましい。…」(段落【0044】)「また、蓋部材21には、図5乃至図7に示すように、下面21cの平面視中央部においてドレン軸O(蓋中心)に向かうに従い漸次下方に延びる曲線を有する複数の誘導ガイド25がドレン軸Oから径方向に向けて放射状に延びて設けられている。誘導ガイド25は、軒樋10内の雨水Wを流入開口2Aから落し口(落し口部20の開口)へ誘導するためのものである。」(段落【0047】)「…蓋部材21を軒樋10の底面10aからの所定の高さHの位置に設定するという構成となる。そのため、蓋部材21を軒樋10の上側から取り付ける作業となり、軒樋10の下面10c(図1参照)側における作業を低減することができ、蓋部材21の取り付け、取り外しにかかる手間や時間を低減することができる。…」(段落【0054】)「また、本実施の形態のサイフォンドレン部材2では、蓋部材21を縦リブ23を介して一体的に設けた装着筒22を竪樋11上に設けられる竪樋継手13に対して嵌合することで、蓋部材21を所定の位置に配置することができる。そして、蓋部材21の下面21c側で軒樋10の底面10aとの間に好適な大きさの流入開口2Aが形成され、サイフォンドレン部材2の取り付け作業を容易に行うことができる。しかも、本実施の形態のサイフォンドレン部材2では、雨水Wを落し口に流入させるための流入開口2A部分に縦リブ23が設けられているので、この縦リブ23に整流効果をもたせることが可能であり、雨水Wが空気を吸い込むことをより確実に抑制することができる。」(段落【0058】)
2争点1-1(被告システム2、3及び7は「サイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部」(構成要件1-1-B、1-2-B)を備えているか)
⑴ 特許請求の範囲の記載によれば、構成要件1-1-B、1-2-Bの「サイフォン発生部」は、「軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒状部」という構造と、「サイフォン現象を発生させる」という機能によって特定されている。そして、本件明細書1には、「サイフォン発生部50の構成は、上述のサイフォンドレン部材51、52に限定されず、雨水を集水口12に満水状態で流入させることができる構成であればよく、例えば、特開2012-132192に記載されたような水を貯留させる水溜め容器によってサイフォンを発生させる部材などが挙げられる。(中略)任意の部材を設けなくとも雨水が集中口12に満水状態で流入可能であれば、集水口12がサイフォン発生部として機能し得る。」(段落【0067】)という記載があることが認められる。上記構成要件の文言及び本件明細書1の記載によれば、構成要件1-1-B、1-2-Bにおける「サイフォン発生部」とは、軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒状部を備え、雨水を集水口に満水状態で流入させ、サイフォン現象を発生させるものをいうと解するのが相当である。
⑵ これを被告製品2-1及び3-1についてみると、証拠(甲7)によれば、被告製品2-1及び3-1(上記前提事実⑸参照)は、軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒部と、筒部の上端から径方向の外側に伸びる板状の鍔部を備えていることからすると、その構造に照らし、雨水を集水口に満水状態で流入させることができるものと認められる。
現に、被告らの実験結果(乙A12)によれば、被告製品2-1においてサイフォン現象が生じていることが確認されており、これと同様の構成を有する被告製品3-1においてもサイフォン現象が生じるものと認められる。
したがって、被告製品2-1及び3-1は、軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒部を備え、雨水を集水口に満水状態で流入させ、サイフォン現象を発生させるものであるから、被告システム2、3及び7は、構成要件1-1-B、1-2-Bの「サイフォン発生部」を充足する。
⑶ これに対し、被告らは、本件明細書1の段落【0017】には「サイフォン現象が良好に発生する」と記載されているとして、「サイフォン発生部」(構成要件1-1-B、1-2-B)とは、通常の開口では発生しないような良好なサイフォン現象を発生させるものに限られる旨主張する。しかしながら、上記構成要件は、「サイフォン現象を発生させる」と規定するにとどまり、当該現象が「良好」であると限定するものではない。のみならず、被告ら指摘に係る本件明細書1の段落【0017】を検討しても、「上述の構成によれば、軒樋によって集水口に集められた雨水が軒樋の底面と蓋部材の上面との間に導かれ、集水口及び第1エルボに満水状態で流入するので、サイフォン現象が良好に発生する。」と記載されており、雨水を集水口に満水状態で流入させる構成による効果を指摘するものにすぎず、上記の記載を全体としてみれば、本件発明1の構成が、通常の開口に比べて良好なサイフォン現象を発生させるものに限られる趣旨をいうものとまで解することはできない。したがって、「サイフォン発生部」(構成要件1-1-B、1-2-B)が通常の開口に比べて良好なサイフォン現象を発生させるものに限られるという被告らの主張は、採用することができない。
3争点1-2(被告システム2、3及び7は「呼び樋の長さは0mより大きく、且つ2.0m以内」(構成要件1-1-I)であるか)証拠(甲7)によれば、被告らが販売しているビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)は、VP100につき3.0m、VP125につき4.0mのものであることが認められる。そして、被告パナソニックのホームページ(甲6の2)に記載された「サイホン発生のポイント(施工制約)」には、「高排水システムの設計・施工上のポイントを部位毎にまとめています。必ずお読みください。お守りいただけない場合、排水能力が得られず、オーバーフローを引き起こすおそれがあります。」という注意喚起がされた上、呼び樋部の偏芯距離につき、「自在ドレンとたてといの偏芯距離は1m以内にしてください。」と記載されている。その他に、販促資料(甲14)のほか、施工業者に対し被告製品1ないし3の納品時に同梱される説明書面(甲15)にも同旨の記載があることが認められる。そうすると、施工業者が被告ら推奨に係る態様で上記ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)を用いた施工をした場合には、被告システム2、3及び7の呼び樋の長さは1.0m以内となるから、構成要件1-1-Iの「呼び樋の長さが0mより大きく、且つ2.0m以内」を充足することになる。
4争点1-3(被告システム2、3及び7は「竪樋の一端と最も上流側の合流位置との距離は2.0m以上」(構成要件1-2-J)であるか)上記3記載のとおり、被告らが販売しているビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)は、VP100につき3.0m、VP125につき4.0mのものであることが認められる。
そして、被告パナソニックのホームページ(甲6の2)に記載された「サイホン発生のポイント(施工制約)」には、「高排水システムの設計・施工上のポイントを部位毎にまとめています。必ずお読みください。お守りいただけない場合、排水能力が得られず、オーバーフローを引き起こすおそれがあります。」という注意喚起がされた上、竪樋の長さにつき、「パイプ(JIS管)の垂直部(ストレート部)の長さ高排水VP1006m以上※ 高排水VP1258m以上」、「※高排水VP100で、十分な排水能力を得るには、8m以上にしてください(6m以上8m未満の場合は8m以上のときに比べて排水能力が少し低くなります。)」と記載されている。その他に、販促資料(甲14)のほか、施工業者に対し被告製品1ないし3の納品時に同梱される説明書面(甲15)にも同旨の記載があることが認められる。そうすると、施工業者が被告ら推奨に係る態様で上記ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)を用いた施工をした場合には、被告システム2、3及び7の竪樋の長さは6.0m以上になるから、構成要件1-2-Jの「竪樋の一端と最も上流側の合流位置との距離は2.0m以上」を充足することになる。
5小括(本件発明1の充足論)以上によれば、被告システム2、3及び7は、施工業者が被告ら推奨に係る態様(上記3及び4)で施工した場合には、本件発明1の技術的範囲に属するものといえる。
6争点2(乙A21発明に基づく進歩性の欠如)
⑴ 認定事実証拠(乙A21)及び弁論の全趣旨によれば、乙A21発明は、以下の構成を有することが認められる。
ア乙A21発明①1-A’ のきといとして使用可能な大型角といと、1-B’ 前記大型角といの底面に形成された排水口を貫通する筒状部を備えた自在ドレンと、1-C’ 前記自在ドレンを有する雨とい上流部の下流側に一端が接続された一つ目の90°LLエルボと、1-D’ 前記90°LLエルボの他端に一端が接続された呼び樋と、1-E’ 前記呼び樋の他端に一端が接続された二つ目の90°LLエルボと、1-F’ 前記二つ目の90°LLエルボの他端に一端が接続されたたてといと、1-G’ を備えた雨といシステムであって、1-H1’前記一つ目の90°LLエルボ及び前記二つ目の90°LLエルボはそれぞれ、曲管部と、1-H2’前記曲管部の両端に設けられた受け口と、を備え、1-J’ ることを特徴とする雨といシステム。
イ乙A21発明②2-A’ のきといとして使用可能な大型角といと、2-B’ 前記大型角といの底面に形成された排水口を貫通する筒状部を備えた自在ドレンと、2-C’ 前記自在ドレンを有する雨とい上流部の下流側に一端が接続された一つ目の90°LLエルボと、2-D’ 前記90°LLエルボの他端に一端が接続された呼び樋と、2-E’ 前記呼び樋の他端に一端が接続された二つ目の90°LLエルボと、2-F’ 前記二つ目の90°LLエルボの他端に一端が接続されたたてといと、2-G’ を備えた雨といシステムであって、2-H1’前記一つ目の90°LLエルボ及び前記二つ目の90°LLエルボはそれぞれ、曲管部と、2-H2’前記曲管部の両端に設けられた受け口と、を備え、2-I’ 前記たてといの一端と他端との間の一か所以上の合流位置で前記たてといに合流管が交差し2-J’ 前記たてといの一端と最も上流側の合流位置との距離は2.0m以上である2-K’ ことを特徴とする雨樋システム。
⑵ 相違点の認定
ア乙A21発明の自在ドレンは、「大型角といの底面に形成された排水口を貫通する筒状部を備え」るものであり(前記1-B’、2-B’)、当該構成は、本件発明1のサイフォン発生部が「軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒状部を備え」るという構成(構成要件1-1-B、1-2-B)に相当するものといえる。その上で、本件審理の経過に鑑み、乙A21発明の自在ドレンが本件発明1の「サイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部」に相当するかどうかという中核的争点につき、まず検討することとする。証拠(甲3、乙A23、乙A56)及び弁論の全趣旨によれば、排水システムには、システム内の大気圧を維持する従来の排水システム(通常排水)と、システム内の空気を排出してサイフォン現象を利用するサイフォン式の排水システムが存在することが認められ、この点については、技術常識として当事者間に争いがない。
そして、証拠(甲18、甲54、乙A21)及び弁論の全趣旨によれば、乙A21文献(甲54、乙A21)は、「たてといの排水能力」を計算するに当たり、トリチェリーの式(V2=√2gh)に基づくC・A・√2ghという計算式を使用して、その流量係数Cを「0.6」と記載していること、被告パナソニックが施工業者に対して提供した排水計算書(甲18)には、「大型雨とい高排水システムは通常の排水計算式が当てはまらないため、対応投影面積に対して当社実験から導き出した値を表示しています。ただし、高排水システムの設計基準を満たしていない場合の排水能力は従来の雨とい排水計算と同じ考え方となります。」とした上、通常の排水計算式として、「■たてとい排水量の計算式(通常)Q=C・A・√2gh(中略)C=流量係数〔=0.6〕」と記載されていることが認められる。上記認定事実によれば、乙A21文献に記載された乙A21発明は、流量係数を「0.6」とする従来の排水システム(通常排水)であり、サイフォン式の排水システムとは異なるものと認めるのが相当である。したがって、本件発明1と乙A21発明は、本件発明1は、サイフォン雨樋システムであり、集水口にサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部を設けているのに対し(構成要件1-1-B、1-1-C、1-1-G、1-1-J、同1-2-B、1-2-C、1-2-G、1-2-K)、乙A21発明は、雨樋システムであり、集水口に自在ドレンを設けているが、サイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部を設けるものではないという点(以下「相違点1-5」という。)において相違するものと認められる。
その他にも、乙A21文献には、エルボの曲率半径及び開口面積、呼び樋の長さの範囲を特定する構成は開示されていないため、本件発明1(構成要件1-1-H-1、1-1-I、同1-2-H-1)は、エルボの曲率半径及び開口面積、呼び樋の長さの範囲を特定しているのに対し、乙A21発明は、そのような特定がないという点(相違点1-2)においても明らかに相違する。
イなお、原告は、乙A21文献には、自在ドレンの存在及び90°LLエルボとの組合せが開示されておらず、乙A21発明は、構成要件1-1-B及び1-1-Cの「サイフォン発生部」、同1-1-Cの「サイフォン発生部を有する…接続された第1エルボ」に相当する構成を有しないという点(相違点1-4)も相違点であると主張する。しかしながら、乙A21文献(54ないし59頁)には、「のきとい」、「落し口部品」、「たてとい部品」、「たてとい」として自在ドレン及びエルボ(DV)を含む組合せが記載されているものと認められることからすると、自在ドレンの存在及び90°LLエルボとの組合せが開示されているといえる。したがって、この点に関する原告の主張は、採用の限りではない。
⑶ 相違点に対する容易想到性本件審理の経過に鑑み、まず相違点1-5について判断すると、乙A21発明は、従来の排水システム(通常排水)として設計されており、サイフォン式の排水システムとは技術的思想を異にするものである。そうすると、乙A21発明をサイフォン式の排水システムに変更することは、乙A21発明の技術的思想そのものを変更することになるといえるため、明らかに動機付けを欠くものといえ、その他に、上記変更を行うことを動機付ける根拠もない。したがって、相違点1-5は、乙A21発明に基づき、当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。そして、この理は、相違点1-2についても異なるところはない。
⑷ 被告らの主張に対する判断
ア被告らは、本件明細書1の段落【0067】の記載によれば、サイフォン発生部は、構造を問わず、集水口に満水状態で流入可能であれば足り、乙A21発明においても、集水口が満水状態になり、サイフォン現象が生じ得ることは、実験の結果(乙A12)からも明らかである旨主張する。しかしながら、集水口に満水状態で流入可能であり、結果として、サイフォン現象が生じることがあるとしても、乙A21発明は、従来の排水システム(通常排水)として設計されており、サイフォン式の排水システムとは技術的思想を異にするものであることは、前記において説示したとおりである。そうすると、乙A21発明の自在ドレンは、「サイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部」であるということはできず、被告らの主張は、前記判断を左右するものとはいえない。
イ被告らは、乙A23文献に基づき、サイフォン式の排水システムは高効率の排水が可能であり、2010年頃には世界中の多くの建物に設置されるようになっていたから、当業者であれば、乙A21発明においてサイフォン現象を利用することは、適宜なし得た設計事項である旨主張する。しかしながら、乙A21発明は、従来の排水システム(通常排水)として設計されており、サイフォン式の排水システムとは技術的思想を異にするものであることは、上記において繰り返し説示したとおりである。そうすると、被告らの主張は、本件発明1の技術的思想を正解するものとはいえず、前記判断を左右するものとはいえない。
ウその他に、被告らの主張を検討しても、被告らの主張は、本件発明1の技術的思想を正解しないものに帰する。したがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。
⑸ 小括(本件発明1の無効論)以上によれば、本件発明1は、進歩性欠如の無効事由があるとはいえない。その他に、被告らの主張立証を改めて検討しても、上記における説示を踏まえると、被告らの主張は、引用発明の技術的思想を正解しないものに帰し、いずれも採用することができない。
7争点3-1(被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は「蓋部材」(構成要件2-1-D、2-2-D)に当たるか)
⑴ 証拠(甲7)によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1は、落とし口部の上方に対向して配置され、水平方向に延びるフランジ状の平板部と、この平板部の内周側から下方に向かって縮径するように延びるテーパー部と、このテーパー部の下端から下方に向かって延びる円筒部とを有する落とし口対向部を備えていることが認められ、この構成を有すること自体は、当事者間に争いはない。そして、構成要件2-1-D、2-2-Dの「蓋部材」は、特許請求の範囲の記載上、「落し口部の上方に配置される」ものとされており、その余の限定はされていない。また、本件明細書2の記載によれば、「鉛直方向の上方から見て落し口部の開口を塞ぐように配置される形状であれば良い」(段落【0081】)との記載があるものの、第1実施例における【表1】のケース1及び【表2】のケース11によれば、落し口部の開口を完全に塞ぐように配置されていない形状についても、これを完全に塞ぐように配置された形状と同様に、サイフォン現象が生じていることが確認されている(段落【0068】)。上記構成要件及び本件明細書2の各記載によれば、構成要件2-1-D、2-2-Dにいう「蓋部材」は、落し口部の開口を完全に塞ぐように配置されていない形状も含むものであり、落し口部の上方に配置されれば足りるというべきである。これを被告製品1-1、2-1及び3-1についてみると、上記認定事実によれば、その落とし口対向部は、落とし口部の開口を完全に塞ぐように配置されていないものの、落とし口部の上方に配置されているものと認められる。そうすると、被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は、構成要件2-1-D、2-2-Dの「蓋部材」を充足するものといえる。
⑵ これに対し、被告らは、「蓋部材」とはその直径が落し口部外径の直径より大きく、落し口部の開口を覆い塞ぐものに限られると主張するものの、上記において説示したところを踏まえると、採用することができない。
また、被告らは、「蓋部材」は単なる開口よりも優れたサイフォン効能を発揮させる部材でなければならず、被告製品1-1、2-1及び3-1はこれに該当しないと主張する。しかしながら、本件発明2-1、2-2の特許請求の範囲及び本件明細書2の各記載には、被告ら主張に係る限定がされているものと認めることはできず、被告らの主張は、採用の限りではない。
さらに、被告らは、被告製品1-1、2-1及び3-1のテーパー部は「誘導ガイド」(本件特許2の請求項5)に当たるから、「蓋部材」には該当しないと主張する。しかしながら、上記にいう「誘導ガイド」は、本件発明2-2ではなく、本件特許2の請求項5で特定される構成にすぎず、仮に、同請求項5の記載をみても「前記蓋部材の下面には、誘導ガイドが形成され」と記載されるにとどまることからすると(甲4)、「誘導ガイド」は、「蓋部材」の一部として構成され得るものと認めるのが相当である。そうすると、被告らの主張は、「誘導ガイド」の構成を正解するものとはいえない。
したがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。
8争点3-2(被告製品1-1、2-1及び3-1の縦リブは「前記鍔部の上面と前記蓋部材の下面の外周部とを連結」(構成要件2-1-E、2-2-E)し、「中心軸の方向から見たときに前記鍔部上に周方向に配置され」(構成要件2-1-K)るか)
⑴ 証拠(甲7、14)によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1の整流板(原告が同製品における縦リブと呼称する部分をいう。以下同じ。)は、落とし口対向部のうち平板部の下面に接続しており、当該下面の接続部分は、上記落とし口対向部の下面の外周部に位置するものと認められる。そして、証拠(甲7、14)によれば、整流板は、同製品の鍔部の上面と接続しているものと認められる。そうすると、被告製品1-1、2-1及び3-1の構成のうち、構成要件2-1-E、2-2-Eの「縦リブ」に相当する整流板は、「鍔部の上面」と、「蓋部材」に相当する落とし口対向部の「下面の外周部」とを連結していることからすると、被告製品1-1、2-1及び3-1は、構成要件2-1-E、2-2-Eを充足するものといえる。また、証拠(甲7、14)によれば、整流板は、中心軸の方向から見たときに前記鍔部上に周方向に配置されていることが認められることからすると、構成要件2-1-Kを充足するものといえる。したがって、被告製品1-1、2-1及び3-1は、本件発明2の構成要件2-1-E、2-2-E及び2-1-Kを充足するものと認めるのが相当である。
⑵ これに対し、被告らは、被告製品1-1、2-1及び3-1の整流板が3つの部材(分割板、流入促進部、渦流防止部材)に分かれることを前提として、分割板のうち鍔部上にある部分は落とし口対向部と連結しておらず、渦流防止部材は鍔部に連結していないから、構成要件2-1-E、2-2-Eを充足しない旨主張する。しかしながら、本件発明2の構成要件及び本件明細書2の各記載を踏まえても、被告ら主張に係る「分割板」、「流入促進部」、「渦流防止部材」という概念が使用されていないことからすると、少なくとも構成要件充足性を検討するに当たっては、被告製品1-1、2-1及び3-1の整流板を上記にいう3つの概念で区分するのは相当ではない。のみならず、被告パナソニックの販促資料(甲14)によっても、被告パナソニックは、整流板を上記3つの概念で区別していないのであるから、取引の実情等を踏まえても、被告らの主張は、独自の見解というほかない。
また、被告らは、「縦リブ」は「鍔部上にのみ」配置されるものであると解した上で、被告製品1-1、2-1及び3-1の整流板は、落とし口部の開口に重なり「鍔部上のみ」に配置されていないため、「縦リブ」に該当しない旨主張する。しかしながら、特許請求の範囲の記載上、被告ら主張に係る限定はされていない。そして、本件明細書2(段落【0034】)には「上面視で落し口部20に重ならない位置で周方向に間隔をあけて配置された複数の縦リブ23」という記載が認められるものの、他方、本件明細書2(段落【0083】)には「縦リブ23の形状、数量についても本実施の形態に限定されることはなく」と記載されていることからすれば、本件発明2の上記認定に係る技術的特徴に鑑みても、「縦リブ」は、蓋部材を下方から支持し、雨水を整流する機能を有しているものであれば足り、必ずしも鍔部の真上にある構成に限定されるものとはいえない。そうすると、被告らの主張は、前記判断を左右するものとはいえない。
したがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。
9争点3-3(被告製品1-1、2-1及び3-1の筒部と落とし口対向部の中心軸は「鉛直方向に一致」(構成要件2-1-H)しているか)
⑴ 構成要件2-1-Hは、筒部と蓋部材の中心軸は「鉛直方向に一致」と規定しているところ、本件明細書2(段落【0032】)には、「上下方向D3(鉛直方向及びその逆の方向)」と記載されており、「鉛直方向」という文言は、上下方向と同義のものとして使用され、必ずしも重力方向と完全に一致することまでを意味するものではない。そして、証拠(甲41、52)及び弁論の全趣旨によれば、軒樋は、下方に接続される各部材を通じて地中の排水管に向けて排水するため、上流側から下流側に向けて一定程度の勾配が付くことは技術常識であると認められることからすれば、排水部材が軒樋上に設置される場合には、軒樋に付された上記勾配により、その中心軸が重力方向と完全に一致しなくなることが通例であることは、当業者が当然に理解するものといえる。
そうすると、本件発明2の構成要件2-1-Hでいう「鉛直方向」とは、重力方向に完全に一致することを意味するものではなく、同構成要件でいう「前記筒部と前記蓋部材の中心軸は鉛直方向に一致し」とは、筒部と蓋部材の中心軸がそれぞれ上下方向に延びる軸として同一直線上にあることを意味するものと解するのが相当である。
⑵ これを本件についてみると、証拠(甲7)によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1の筒部と、落とし口対向部の中心軸は一致しており、水勾配が付された軒樋に設置された場合であっても、筒部と落とし口対向部の中心軸は、それぞれ上下方向に延びる軸として同一直線上にあるものと認められる。したがって、被告製品1-1、2-1及び3-1の筒部と、「蓋部材」に相当する落とし口対向部の中心軸は「鉛直方向に一致」するものであるから、構成要件2-1-Hを充足する。
10争点3-4(被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は「中心軸の方向から見たときに円形」(構成要件2-1-J)であるか)
⑴ 証拠(甲7、10)によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は、中心軸の方向から見たときに円形であると認められるから、構成要件2-1-Jを充足する。
⑵ これに対し、被告らは、被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部の中心に穴が空いていることをもって円環状であると主張するものの、構成要件2-1-Jには、中心軸の方向から見て穴がない形状であるとする特定はないから、同構成要件にいう「円形」が円環状を除く構成であると解することはできず、被告らの上記主張は、採用の限りではない。
11争点3-5(被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部は「底面からの高さが軒樋内の最大水位の0.1~0.5倍」(構成要件2-4-A)であるか)
⑴ 構成要件2-4-Aの「軒樋内の最大水位」とは、本件明細書2の段落【0044】において「軒樋10内の最大水位は、軒樋の前壁15または後壁16のうち、底面14からの高さが低い方の高さのことをいう。」と定義されていることからすれば、軒樋の前壁又は後壁のうち底面からの高さが低い方の高さをいうものと解するのが相当である。
⑵ 証拠(甲6、7)によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1と組み合わせることが可能な軒といエアロアイアン(被告製品7ないし12)及びその各最大水位は、被告製品1-1と対応可能な被告製品7ないし12につき、被告製品7(90mm)、8(120mm)、9(150mm)、10(120mm)、11(150mm)、12(150mm)であること、被告製品2-1及び3-1と対応可能な被告製品9及び12につき、被告製品9(150mm)、12(150mm)であること、谷コイル(被告製品13)の場合の最大水位は、被告製品1-1につき100mm以上、同2-1につき150mm以上、同3-1につき200mm以上であること、以上の事実が認められる。他方、被告パナソニックのカタログ(甲7)には、被告製品1-1、2-1及び3-1の整流板上端から軒樋底面までの高さが記載されているものの、構成要件2-4-Aの「蓋部材」に相当する被告製品1-1、2-1及び3-1の落とし口対向部から軒樋底面までの高さは記載されておらず、その他にこの点を認めるに足りる的確な主張立証はない。そうすると、被告製品1-1、2-1及び3-1が、被告製品7ないし13と組み合わされた場合、その落とし口対向部から軒樋底面までの高さが上記認定に係る最大水位の0.1倍~0.5倍であると認めることはできないから、被告製品1-1、2-1及び3-1は、構成要件2-4-Aを充足するとはいえない。
12争点3-6(被告システム1ないし7は「排水部材」(構成要件2-7-B)を備えるか)被告システム1ないし7は、いずれも被告製品1-1、2-1及び3-1の自在ドレン(高排水用)を用いるものである。そして、被告製品1-1、2-1及び3-1が本件発明2-1ないし2-3、2-5及び2-6の技術的範囲に属する排水部材であることは、上記7ないし11において説示したとおりである。したがって、被告システム1ないし7は、構成要件2-7-Bの「請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排水部材」を充足する。
13争点3-7(被告システム1ないし7は「竪樋の長さは2.0m以上」(構成要件2-7-H)であるか)証拠(甲7)によれば、被告らが販売しているビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)は、VP75及びVP100につき3.0m、VP125につき4.0mのものであることが認められる。
そして、被告パナソニックのホームページ(甲6の2)に記載された「サイホン発生のポイント(施工制約)」には、「高排水システムの設計・施工上のポイントを部位毎にまとめています。必ずお読みください。お守りいただけない場合、排水能力が得られず、オーバーフローを引き起こすおそれがあります。」という注意喚起がされた上、竪樋の長さについて、「パイプ(JIS管)の垂直部(ストレート部)の長さ高排水VP・VU753m以上高排水VP1006m以上※ 高排水VP1258m以上」、「※高排水VP100で、十分な排水能力を得るには、8m以上にしてください(6m以上8m未満の場合は8m以上のときに比べて排水能力が少し低くなります。)」と記載されている。また、販促資料(甲14)のほか、施工業者に対し被告製品1ないし3の納品時に同梱される説明書面(甲15)にも、竪樋の長さは3m以上必要となる旨の記載があることが認められる。そうすると、施工業者が被告ら推奨に係る態様で上記ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)を用いた施工をした場合には、被告システム1ないし7の竪樋の長さは3.0m以上になるから、構成要件2-7-Hの「竪樋の長さは2.0m以上」を充足することになる。
14争点3-8(被告システム1ないし7は「呼び樋の長さは0m以上2.0m以下」(構成要件2-9-A)であるか)上記13に説示したとおり、被告らが販売しているビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)は、VP75及びVP100につき3.0m、VP125につき4.0mのものであることが認められる。そして、被告パナソニックのホームページ(甲6の2)に記載された「サイホン発生のポイント(施工制約)」には、「高排水システムの設計・施工上のポイントを部位毎にまとめています。必ずお読みください。お守りいただけない場合、排水能力が得られず、オーバーフローを引き起こすおそれがあります。」という注意喚起がされた上、呼び樋部の偏芯距離について、「自在ドレンとたてといの偏芯距離は1m以内にしてください。」と記載されている。その他に、販促資料(甲14)のほか、施工業者に対し被告製品1ないし3の納品時に同梱される説明書面(甲15)にも同旨の記載があることが認められる。そうすると、施工業者が被告ら推奨に係る態様で上記ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)を用いた施工をした場合には、被告システム1ないし7の呼び樋の長さは1.0m以内となるから、構成要件2-9-Aの「呼び樋の長さは0m以上2.0m以下」を充足することになる。
15小括(本件発明2の充足論)以上によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1は、本件発明2-1ないし2-3、2-5及び2-6の技術的範囲に属するものであるといえる。
また、施工業者が被告ら推奨に係る態様(上記13及び14)で施工した場合には、被告システム1ないし3及び7は、本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に、被告システム4ないし6は、本件発明2-7及び2-9の技術的範囲に、それぞれ属するものであるといえる。
16争点4-1(乙A25発明に基づく無効事由の有無〔本件発明2-1〕)
⑴ 認定事実
ア乙A25発明の内容証拠(甲68、乙A25)及び弁論の全趣旨によれば、乙A25公報には、以下の記載があることが認められる。
(ア) 技術分野屋根、特に雨樋に用いられる排水口装置に関する発明である。
(イ) 背景技術屋根排水の設計は、以下の2つのカテゴリーに大別される。1)重力式流れ-設計原理が大気圧での流れに基づいている。2)加圧式流れ-流れが大気圧よりも大きな正圧又は負圧にさらされ、重力だけで提供できる流量よりも高い流量が提供される。屋根の排水設計のうち、加圧式流れでは、配管が水で充填され、システムがフルボアの状態で動作するときに水頭が最大になる。他方、低充水率及び非フルボアの状態では、一般的に不安定な状態が発生する。従来の加圧式流れを用いるシステムでは、設計者はフルボア流量を目指し、空気が雨水の排水管に入らないようにすることを重要な基準としていた。それゆえ、このようなシステムでは、低流量でもフルボア流量が得られるように、あるいは、低流量でも重力式流れを用いるシステムとして稼働するように、ある程度の保守性をもって設計される。したがって、加圧式流れを使用しながらも、複雑かつ広範な設計を必要としないシステムが開発されれば有利である。
(ウ) 発明を実施するための形態本発明は、加圧式排水システム用の排水口装置を含む。本発明に係る排水口装置は、二相流での使用に適している。図2及び図3は、2つの排水口装置55、95の事例を示す。図3に示す第一の事例では、挿口77が金属雨樋120に取り付けられている。装置95は、実質的に雨樋の流れ領域内に位置し、屋根からの雨水を受け取り、これを雨樋から竪樋78内に導く。図2に示す第二の事例は、鉄筋コンクリート(RC)側溝用であり、同様の挿口77が側溝80内の所定の位置に鋳込まれている。バッフル60は、ベースクランプ65に取り付けられている。ベースクランプは、花型の配置に見えるように、延びた突起にトグル145を備えた略円形である。トグル145は、バッフル60のディスク125の直径に基づいて、所望のバッフル比を達成するために、排水口装置に適切な高さを提供するように設計された直立部155に形成されている。ベースクランプ65は、図6A及び図6Bに示すような挿口と嵌合するように下方に突出する部分に形成されたコネクタ165を更に含む。下方突出部分160は、雨樋内の実質的に水平方向から縦樋の実質的に下方向に流れを導くための滑らかだが急な表面を含む。5装置は、挿口77内に嵌合して排水口装置を形成する。設置を容易にするために、圧入配置で挿口77と係合する。装置を挿口77に嵌合する他の手段は、ねじ山の配置、又はバヨネット嵌合などの回転圧入嵌合などのこれらの代替手段の組み合わせを含めて使用することができる。挿口内の圧力変動は、加圧された二相流を誘発するプラグ流れの生成を促進することが分かった。このために、圧力変動は、装置/挿口内に乱流を引き起こす装置を組み込むことで達成することができる。図2並びに図3に示す装置及び図4ないし図6に分解された形で示す装置は、水の流れを装置の中心で衝突させて乱流を発生させ、プラグ流れを生成する、放射状フィンを備えた装置を示す。更なる例又は代替例として、図7、図8及び図9は、乱流を誘発するように配置された乱流誘発部材の代替実施形態を示す。図7は、バッフルから流れ200内へ下方に突出する1つ以上の突起195を有する、排水装置185の1つを示す。図8の実施形態では、直立部220は、放射状に突出して、水が装置内に放射状に流れることを可能にするものではなく、この場合、直立部220は角度が付けられている。
イ乙A25発明の構成上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、乙A25公報には、次のような構成が開示されていることが認められる。〔構成25A〕底面に貫通穴が形成された金属雨樋120と、前記貫通穴の下面に接続された挿口77を介して前記金属雨樋120と接続された竪樋78と、を備えた屋根樋に設けられる排水口装置95であって、〔構成25B〕前記貫通穴に挿入されて排水管11を形成する下方突出部160の円筒状の部位と、〔構成25C〕前記円筒状の部位の上端から径方向の外側に延びる板状をした略水平方向の部位と、〔構成25D〕前記排水管11の上方に配置されるバッフル60と、〔構成25E〕前記略水平方向の部位の上面と前記バッフル60の下面の外周部とを連結する複数の直立部155と、を有し、〔構成25F〕前記金属雨樋120から流入する水は、前記バッフル60と、前記下方突出部160における前記略水平方向の部位の間を通って、前記竪樋78内に流入し、〔構成25G〕前記バッフル60と前記ベースクランプ65は、単一の射出成形部材として成形され、〔構成25H〕前記バッフル60と前記ベースクランプ65は、中心軸が一致しており、〔構成25I〕前記ベースクランプ65の円筒部の部位に、前記挿口77とねじで係合するねじ山が形成され、〔構成25J〕前記バッフル60は、円形であり、〔構成25K〕前記直立部155は、前記ベースクランプ65の略水平方向の部位上に周方向に配置され、さらに、径方向に延びる板状であり、〔構成25L〕前記ベースクランプ65の円筒状の部位の開口面積は、47㎠、又は83㎠である〔構成25M〕排水口装置95
⑵ 事実認定の補足説明及び新規性の判断
ア構成25E、構成25Kについて(ア) 原告は、乙A25発明の複数の直立部155、220、250は、バッフル60の下面の外周部には存在せず、バッフル60の下面の外周部と、下方突出部160の水平方向の部位の上面とを連結していないから、乙A25発明は、構成25Eを有するものとはいえず、本件発明2-1-Eに係る構成を開示していない旨主張する。
そこで検討するに、乙A25公報の図4Bによれば、バッフル60の下面の外周部に「略三角形の突起」が設けられていることが認められる。そして、乙A25公報には「図4、図5及び図6に分解された形で示す装置は・・・放射状フィンを備えた装置を示す。」との記載があることが認められる。上記「略三角形の突起」の形状及び上記公報の記載によれば、上記「略三角形の突起」と複数の直立部155、220、250とは、一体となって「放射状フィン」を構成しているものと認めるのが相当である。そうすると、乙A25発明の直立部155、220、250は、略三角形の突起と一体となって、バッフル60の下面の外周部と、下方突出部160の水平方向の部位の上面とを連結しているといえるから、構成25Eを有するものと認められる。また、乙A25公報の図5Aによれば、直立部が、中心軸の方向からみて、径方向に延びる板状であり、かつ、下方突出部160の上部鍔状部分に周方向に配置されているから、構成25Kを有するものと認められる。
したがって、乙A25発明は、本件発明2-1-E、2-1-Kに相当する上記構成を開示するものと認められる。15(イ) 原告は、本件明細書2の記載によれば、本件発明2の「縦リブ」は「整流効果を持たせるもの」を意味するものであるから、整流効果を持たない乙25発明の直立部155、220、250は、「縦リブ」(構成要件2-1-E、2-1-K)に係る構成を備えているものとはいえないと主張する。しかしながら、構成要件2-1-E及び2-1-Kは、「縦リブ」と規定するにとどまり、これに整流効果を持たせるものとまで規定するものではなく、乙A25発明の「放射状フィン」が本件発明2の「縦リブ」と同一の構成を備えることは、上記において説示したとおりであり、原告の主張は、上記判断を左右するものとはいえない。のみならず、乙A25発明の「放射状フィン」の機能をみたとしても、乙A25公報の「水の流れを装置の中心で衝突させて乱流を発生させ、プラグ流れを生成する、放射状フィン」との記載によれば、「放射状フィン」は、水流が装置の中心を向くように水流を整えるものであるから、その構成自体の機能は、水流を整える点において本件発明2の「縦リブ」と必ずしも相違するものではない。
(ウ) 原告は、本件発明2の「縦リブ」は、雨水が空気を吸い込むことを確実に抑制する機能を有するのに対し、乙A25発明の「直立部155」は、当該機能を有するものではなく、空気を巻き込む二相流を生じさせる構成であるから、「直立部155」は、本件発明2の「縦リブ」(構成要件2-1-E、2-1-K)に係る構成を備えているとはいえないと主張する。しかしながら、特許請求の範囲の記載は「縦リブ」の構成を空気の吸い込みを抑制する機能を有するものに限定していないことに加え、「縦リブ」の上記機能は、雨水の量が、サイフォン現象が発生する水量を上回ることを前提としたものであり、例えば、本件明細書1の段落【0056】、【図13】に示されているように、雨水の量が少なく、その水深が蓋部材の高さを下回る場合には、空気の吸い込みを抑制することができない。そうすると、「縦リブ」の上記機能は、雨水の量次第で生じる機能をいうものにすぎないのであるから、「縦リブ」が、雨水が空気の吸い込むことを抑制する機能を備えるものであるとはいえず、原告の主張はその前提を欠くというべきである。
(エ) したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
イ構成25Aについて(ア) 原告は、乙A25公報の図3によれば、金属雨樋120と挿口77の間には大きな隙間があり、挿口77は、「貫通穴の下面に接続」されていないから、本件発明2-1-Aに相当する構成を開示していないと主張する。しかしながら、本件発明2-1-Aには、挿口77に相当する「竪樋継手」が「貫通穴の下面に接続された」と記載されているにとどまり、直接接続されている構成に限定するものではないから、他の部材等を介在させて接続された構成を含むものと解するのが相当である。そして、乙A25公報には、細部の構成まで直ちに読み取ることができないものの、「図3に示す第一の事例では、挿口77が金属雨樋120に取り付けられている。」と記載されているから、何らかの部材を介在させるなどして、少なくとも挿口77が金属雨樋120の下面に接続されている構成が開示されているものといえる。
(イ) 原告は、乙A25公報の図2の説明として用いられる「a reinforcedconcrete (RC) gutter120」は、側溝を意味するものであるから、同公報中の「gutter」は、いずれも側溝を意味するものであり、乙A25発明は「屋根樋に設けられる装置」(構成25A)であるとは認められず、本件発明2-1-Aの「雨樋に設けられる排水部材」に相当する構成を開示していないと主張する。そこで検討すると、「gutter」とは、一般に雨樋、側溝のいずれの意味も有するところ、原告が指摘するとおり、乙A25公報の図2の実施例に用いられている「a reinforced concrete (RC) gutter120」は、鉄筋コンクリート(RC)製の側溝であると理解できる。しかしながら、乙A25公報には、図3の実施例の説明として、「Thusthe device 95 substantially falls within the flow area of thegutter so as to receive the run off from the roof and direct thisfrom the gutter into the downpipe 78.」(装置95は、実質的に「gutter」の流れ領域内に位置し、屋根からの雨水を受け取り、これを「gutter」から竪樋78内に導く。)との記載があり、この場合にいう「gutter」という単語が、屋根からの雨水を受け取る雨樋を示すものとして用いられていることは明らかである。そうすると、乙A25公報中の「gutter」の用法は、上記の場合には「雨樋」を意味するものであることからすると、乙A25発明は「屋根樋に設けられる装置」を開示するものであり、本件発明2-1-Aの「雨樋に設けられる排水部材」という構成を開示しているものと認められる。
(ウ) そして、〔構成25A〕のその余の構成には争いがないから、乙A25発明には本件発明2-1-Aに相当する構成が開示されているというべきである。
(エ) したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
ウ構成25G原告は、乙A25公報の各図には、下方突出部160が、ベースクランプ65とは別部材であることが示されているから、ベースクランプ65とバッフル60とが一体的に形成されていない旨主張する。
しかしながら、乙A25公報には、ベースクランプ65は「下方に突出する部分」に形成されたコネクタ165を含む旨の記載があり、コネクタ165は下方突出部160に設けられているのであるから、下方突出部160はベースクランプ65に含まれる部材であると認めるのが相当である。また、乙A25公報には、「前記装置は、uPVC、HDPEを含む適切な材料の単一の射出成形部材から製造されてもよい。」という記載があるところ、ここでいう「前記装置」が排水口装置95をいうことは明らかであるから、これに含まれる下方突出部160とベースクランプ65も一体的に成形されたものも開示しているといえる。
そして、〔構成25G〕のその余の構成には争いがないから、乙A25発明には構成要件2-1-Gに相当する構成が開示されているといえる。
したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
⑶ 小括以上によれば、本件発明2-1は、乙A25発明と同一であり、新規性を欠くものといえる。
17争点4-2(乙A25発明に基づく無効事由の有無〔本件発明2-2〕)
⑴ 副引例に係る認定事実(乙26発明の内容)
ア技術分野特にサイフォン式屋根排水システム用の排水アセンブリに関する。
イ背景技術サイフォン式排水システムは、真空を発生させて雨水を吸引し、高速で排水することにより、全容量、つまり100%の充水率で動作する。サイフォン式システムにおいて使用される排水アセンブリには、全容量条件下で空気の侵入を防止し、管を完全に充填する渦防止インサートが設置される。渦防止インサートは、重力排水アセンブリの典型的な現象である、管内に大量の空気を運ぶ渦の形成を防止するため、サイフォン式排水アセンブリの重要な要素である。降雨強度が低く、屋根の表面に蓄積された雨水が渦防止インサートを完全に浸すのに十分でない場合、空気の導入が防止されないため、サイフォン式排水システムは、従来の重力システムとして動作する。強度が全容量レベル(設計ステップ中に定義される)に達し、水が渦防止インサートを完全に覆う場合、空気の導入が防止され、管路に流入する水により真空が発生して、排水の流れが大幅に加速される傾向がある。現在知られているサイフォン式排水システムは、特に効率、簡略化、寸法、構造及び取付の費用対効果の点で、更に改良する必要がある。
ウ発明の開示本発明による排水アセンブリは、簡単であり、実装及び取付の費用対効果が高く、サイズが小さく、十分に効果的であり、特に、本発明の排水アセンブリは、設計上の降雨条件下で、それが挿入される排水システムが常に全断面で(すなわち、管路が完全に水で満たされた状態で)効果的に動作することを保証して、排水アセンブリによるパイプ内への空気の導入を回避し、水の流れ内の気泡の形成を制限するか又は完全に防止することができる。
エ発明を実施するための最良の形態図1及び図2において、符号1は、特に建物の屋根のサイフォン式排水システムに属する排水アセンブリを表し、システム全体は、図示されないが、知られているように、一般的に建物の屋根に取り付けられる複数の排水アセンブリと、各排水アセンブリを建物の外側の主要な排水管路に接続する様々なサイズ及び形状のパイプ及び管寄せとを含む。排水アセンブリ1は、屋根要素、例えば、屋根、樋など(図示せず)に取り付けられることを意図する。排水アセンブリ1は、本質的に軸A(使用時に実質的に垂直である)に沿って延び、ベース本体2、連結フランジ3、渦防止カバー4、上部グリッド5及び接続スリーブ6を含む。連結フランジ3は、排水アセンブリ1を屋根要素に取り付けるために使用され、様々なタイプの、例えば異なる材料でコーティングされた屋根要素に取り付けることを可能にし、特に、フランジ3は、シート26に挿入され、屋根要素のプラスチックシース、ビチューメンなどの防水シート(図示せず)又は金属シートをフランジ3と部分9との間にクランプすることにより本体2の連結部分9に連結されるように成形される。渦防止カバー4は、排水アセンブリ1に入る水中での渦の形成と排水アセンブリ1への空気の導入を防止するように成形される。カバー4は、上部ディスク40と、ディスク40の底面42から突出する複数のブレード41とを含み、水を本体2内に運ぶため、渦の形成を回避する。ブレード41は、軸Aを中心として半径方向に配置され、互いに角度的に離間される。
ア本件発明2-2と乙A25発明を対比すれば、少なくとも、乙A25発明の直立部155の下端が、ベースクランプ65における曲面で形成された下方突出部160の円筒状の部位と、略水平方向の部位との接続部位に設けられているものとは認められないところ、乙A25発明に構成要件2-2-Jに相当する当該構成が開示されていないことは、当事者間においても争いがない。そして、被告らは、上記相違点に係る構成について、乙A26公報に記載された乙A26発明を適用することにより、容易想到である旨主張するため、本件審理の経過に鑑み、まず上記主張について判断する。
イ上記16⑴アにおいて認定した事実によれば、乙A25発明は、放射状フィンを通って装置の内側に導かれた水流を、装置の中心で衝突させて乱流を発生させ、更にこれに加えて突起や直立部という乱流を引き起こす装置を組み込むことによって、挿口内の圧力変動を引き起こし、雨水を加圧された二相流として竪樋内に導くという技術的思想に基づく排水口装置である。これに対し、上記認定事実によれば、乙A26発明は、上部ディスクとその底面から突出するブレードとを備えた渦防止インサートを設置することで、管路が完全に水で満たされた状態にして、水の流れ内の気泡の形成を制限又は完全に防止するという技術的思想に基づく排水アセンブリである。そうすると、乙A25発明と乙A26発明は、前者では水流を乱すように衝突させたり乱流を引き起こしたりするための突起や直立部を設けるのに対して、後者では水流を乱さないようにするためにブレードを設けるものであるから、雨水を加圧するための技術的アプローチが真逆ともいえるものであり、両発明は、明らかに技術的思想を異にするものである。したがって、当業者が、乙A25発明における突起や直立部について、乙A26発明におけるブレードの設置位置に係る構成を適用する動機付けを欠くことは明らかである。以上によれば、上記相違点に係る構成は、乙A25発明から容易想到であるということはできず、本件発明2-2は、進歩性を欠くものと認めることはできない。
18争点4-3(乙A25発明に基づく無効事由の有無〔本件発明2-3〕)
⑴ 本件発明2-3と乙A25発明を対比すると、少なくとも、乙A25発明の直立部155の下端は、下方突出部160の円筒状の部位の上端と金属雨樋120の底面との間にあるものとは認められないことからすると(上記16⑴認定事実ア及びイ)、乙A25発明は、構成要件2-3-Bに相当する構成を開示していない。
⑵ そして、被告らは、上記相違点に係る構成について、乙A26公報に記載された乙A26発明の構成を適用することにより、容易想到である旨主張するものの、乙A25発明と乙A26発明は、技術的アプローチが異なる発明であり、当業者が、乙A25発明における直立部の構成について、乙A26発明におけるブレードの設置位置に係る構成を適用する動機付けを欠くことは、上記17において説示したとおりである。したがって、上記相違点に係る構成は、乙A25発明から容易想到であるということはできず、本件発明2-3は、進歩性を欠くものと認めることはできない。
19争点4-5(乙A25発明に基づく無効事由の有無〔本件発明2-5〕)
⑴ 本件発明2-5と乙A25発明を対比すると、少なくとも、乙A25発明のバッフル60の下面には、円錐状の誘導ガイドが形成されているものとは認められないことからすると(上記16⑴認定事実ア及びイ)、乙A25発明には、構成要件2-5-A及び2-5-Bに相当する構成が開示されているとはいえない。そして、被告らは、上記相違点に係る構成につき、乙A28公報に記載された乙A28発明を適用することにより、容易想到である旨主張するため、以下検討する。
⑵ 乙A28公報の段落【0041】【図5】及び【図6】の記載によれば、乙A28発明の渦巻減少部材224、226の下方表面232は、円錐状であると認められることからすると、乙A28発明は、上記相違点に係る構成を一応開示しているものといえる。
もっとも、乙A28公報の段落【0041】には、「渦巻減少部材224、226のそれぞれは、その下側の中央部分にプロファイル化された下方表面を有する(中略)。プロファイル化された下方表面232は、水が吸水口216、220内に向けられるときの渦巻の形成を最小限化するために、水を主吸水口216又は副吸水口220で下に向けるよう、水流が吸水口236に進入するときに、水流の方向を水平から変更するのを助ける。」と記載されていることが認められる。上記の記載によれば、乙A28発明の渦巻減少部材は、設置することにより渦巻きの形成を最小限化するという技術的意義を有するものであることが認められる。
これに対し、乙A25発明は、上記17において説示したとおり、放射状フィンを通って装置の内側に導かれた水流を装置の中心で衝突させて乱流を発生させることにより、雨水を加圧された二相流として竪樋内に導くという技術的思想に基づく排水口装置である。
そうすると、乙A25発明に対し、「渦巻きの形成を最小限化する」という技術的意義を有する乙A28発明の渦巻減少部材の構成を適用すると、水流を乱したり乱流を発生させたりすることが妨げられることになるから、当該構成を適用することには阻害要因があるというべきである。
したがって、上記相違点に係る構成は、乙A25発明から容易想到であるということはできず、本件発明2-5は、進歩性を欠くものと認めることはできない。
20争点4-6(乙A25発明に基づく無効事由の有無〔本件発明2-6〕)
⑴ 本件発明2-6と乙A25発明を対比すると、少なくとも、乙A25発明のバッフル60は、断面視形状で下に凹んだ形状であるものとは認められないことからすると(上記16認定事実⑴ア及びイ)、乙A25発明には、構成要件2-6-Aに相当する構成が開示されているとはいえない。そして、被告らは、上記相違点に係る構成につき、乙A29公報に記載された乙A29発明を適用することにより、容易想到である旨主張するため、以下検討する。
⑵ 乙A29公報の段落【0023】及び【図2(b)】の記載によれば、落ち葉止め部27の上端部に設けられる水抜け部は、断面視形状で下に凹んだ形状であることが認められることからすると、乙A29発明は、上記相違点に係る構成を一応開示しているものといえる。
もっとも、乙A25発明の排水口装置は、上記17において説示したとおり、水の流れを装置の中心で衝突させて乱流を発生させ、プラグ流れを生成するための装置であり、バッフル60と下方突出部160の略水平方向の部位の間の空間にあるバッフル60の下面の形状は、上記乱流の発生に重要な影響を与えるものである。このような重要な影響に鑑みると、バッフル60の下面の形状は、上記乱流の発生を妨げないものである必要があるため、乙A25公報においても、水平とするか、又は水の流れに対して垂直に衝突する突起を複数設けるかのいずれかの構成のみが開示されている。
そうすると、乙A25発明のバッフル60の下面の形状を、乙A29発明の水抜け部の形状に変更する動機付けはなく、仮に動機付けがあったとしても、乙A29発明が有する上記構成に変更した場合、上記乱流の発生を妨げないものとなるかどうかについては何ら立証されていないのであるから、当該変更には阻害要因があるというべきである。
したがって、上記相違点に係る構成は、乙A25発明から容易想到であるということはできず、本件発明2-6は、進歩性を欠くものと認めることはできない。
21争点4-7、4-8及び4-9(乙A21発明及び乙A22発明に基づく無効事由の有無〔本件発明2-7、2-8及び2-9〕)
⑴ 乙A21発明を主引用例とする無効事由
ア乙A21発明と本件発明2-7を対比すると、乙A21発明は「請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排水部材」を有しているものとは認められないことからすると、乙A21発明には、構成要件2-7-Bに相当する構成が開示されているものとはいえない。そして、被告らは、上記相違点に係る構成につき、乙A21発明に対し、乙A25発明を適用することにより(上記16参照)、容易想到である旨主張するため、以下検討する。
イ乙A21発明は、サイフォン現象の発生を意図して設計されていない従来型の排水システムであるのに対し(上記6参照)、乙A25発明は、雨水を加圧された二相流として竪樋内に導くという技術的思想に基づく排水口装置であり、サイフォン現象の発生を前提とするものであるから(上記16参照)、従来型の排水システムとは異なる技術的思想に基づくものである。
そうすると、乙A21発明の「自在ドレン」に接した当業者がこれとは技術的思想を異にする乙A25発明の装置に変更する動機付けを欠くというべきである。
したがって、上記相違点に係る構成は、乙A21発明から容易想到であるということはできず、本件発明2-7は、進歩性を欠くものと認めることはできない。
⑵ 乙A22発明を主引用例とする無効事由
ア乙A22発明と本件発明2-7を対比すると、乙A22発明は「請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排水部材」を有しているものとは認められないことからすると、乙A22発明には、構成要件2-7-Bに相当する構成が開示されているものとはいえない。そして、被告らは、上記⑴と同様に、乙A22発明に対し、乙A25発明を適用することにより、容易想到である旨主張するため、以下検討する。
イ実験報告書(乙A22の1)は、乙A22物件と類似の排水部材等を用いた実験の結果であるにすぎず、乙A22発明がサイフォン現象を生じさせるものであるとまで認めるに足りない。仮に、乙A22発明が特定の条件下においてサイフォン現象を生じさせるものであったとしても、少なくとも、乙A22発明がサイフォン現象の発生を意図して設計されたものであるということはできず、その他にこの点に関する主張立証はない。そうすると、乙A22発明は、サイフォン現象の発生を意図して設計されたものであるかどうかは不明であるというほかない。他方、上記⑴において説示したとおり、乙A25発明は、雨水を加圧された二相流として竪樋内に導くという技術的思想に基づく排水口装置であり、サイフォン現象の発生を前提とするものであるから、サイフォン現象の発生を意図して設計されたものかどうかが不明な乙A22発明とは異なる技術的思想によるものである。そうすると、乙A22発明の排水部材に接した当業者がこれと技術的思想が同じであるか直ちに不明な乙A25発明の装置に変更する動機付けを欠くというべきである。したがって、上記相違点に係る構成は、乙A22発明から容易想到であるということはできず、本件発明2-7は、進歩性を欠くものと認めることはできない。
⑶ 小括以上によれば、乙A21発明又は乙A22発明に接した当業者において、これらの発明に乙A25発明を適用して本件発明2-7の「雨樋」に想到するのは、容易であるということはできない。そして、本件発明2-8及び2-9は、いずれも本件発明2-7の「雨樋」を構成要件とするものであるから(構成要件2-8-C、2-9-B)、上記「雨樋」が容易想到でない以上、容易想到であるとはいえない。
22争点4-10(サポート要件違反の有無)
⑴ 認定事実本件明細書2には、以下のとおりの記載がある。
ア「蓋部材の軒樋の底面からの高さが10mmより小さい場合には落ち葉などの異物が流入開口部分で詰まり易くなるうえ、流入開口面積が小さくなることから、所望の排水流量を確保することができない。また、蓋部材の軒樋の底面からの高さが50mmを超える場合には、サイフォンの発生に必要な雨水の水位が上がりすぎてしまい、空気を吸い込みやすくなるためサイフォンが発生し難くなり、排水性能が低下する。そのため、上述したような蓋部材の高さを10~50mmの範囲とすることが好適である。」(段落【0009】)
イ「第2実施例では、表3に示すように、15種の異なる形状の排水部材のケース(A、B、C、D、E、G、H、T、V、F、S、W、X、既存)において、底面幅150mmの軒樋を使用し、軒樋に流量4リットル/sec、5リットル/sec、及び6リットル/sec(降雨100mm/hに相当)の水を流し、落し口部の開口中心から軒樋の延長方向で150mmの位置で水位を測定するとともに、各ケースにおいてサイフォン現象、排水性能、騒音、成形・組立のしやすさ等の評価項目を確認して評価した。」(段落【0071】)【段落0072】【表3】「各ケースにおける排水部材の構成、形状は、表3に示す通りである。具体的には、各排水部材で蓋直径(mm)、蓋部材の軒樋の底面からの高さ(mm)、縦リブのリブ数(枚)、縦リブのリブ幅(mm)、装着筒の接続部分の曲率半径(mm)、誘導ガイドの形状を変えたものである。なお、リブ幅は、蓋部材の中心から外周に向かう方向の幅である。また、落し口部34の開口外径は75mmに設定した。表3において、誘導ガイドは、円錐形状のものを「R」とし、上述した実施の形態のような放射状のものを「放射状」とし、誘導ガイドが無いものを「なし」としている。ここで、ケースGの形状は、上述した実施の形態のサイフォンドレン部材2に相当している。」(段落【0073】)「図11は、第2実施例の実験結果を示しており、各ケースの水位(mm)を示している。図11に示す実験の結果、ケースC、D、E、G、H、Tの排水部材では、水位、サイフォン現象、排水性能の点で安定した状態であることが確認できた。一方で、ケースA、B、V、F、S、W、X、既存の排水部材の場合には、水位が40mmを超えて高く不安定な状態であった。さらに、ケースGの排水部材は、上述した評価項目において総合的に優れていることが確認できた。」(段落【0074】)「(略)蓋直径は130mmが好ましく、蓋部材の軒樋の底面からの高さは35mmが好ましい。縦リブのリブ数に関しては、6枚が好ましく、4枚(ケースA)が若干悪く、8枚(ケースE)が若干良い。リブ幅では、25mmが好ましく、ケースBのように55mmと大きい場合には水位が高くなった。また、装着筒の接続部分の曲率半径は、15mmが好ましい。さらに、誘導ガイドの形状としては、ケースGのように放射状のものが静音、渦防止、水溜り防止に有利になることが確認できた。」(段落【0075】)
ア被告らは、本件発明2に係る特許請求の範囲の記載をみると、縦リブの数や幅、蓋部材の直径や高さについて、何ら限定が付されていない発明が記載されている一方、本件明細書2(段落【0009】、【0071】ないし【0075】)の記載によれば、上記諸条件によって優れたサイフォン現象が生じない場合があるから、本件明細書2の発明の詳細な説明に、当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載されているとはいえない旨主張する。
イ特許法36条6項1号は、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなければならない旨規定しており、いわゆるサポート要件を定めている。特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。
ウこれを本件についてみると、本件明細書2には、従来技術では、竪樋の開口面積が20cm2以下と小さく、サイフォン作用を利用しても最大排水流量が十分ではなかったという課題に鑑み(段落【0005】)、実施例の排水部材には、流入開口部分に縦リブが設けられており、この縦リブの整流効果により雨水が空気を吸い込むことをより確実に抑制できること(段落【0058】)などの記載があることが認められる。これらの記載によれば、本件発明2は、従来技術と比較して優れたサイフォン現象を発生させるための構成として、構成要件2-1-L、2-2-K(「前記落し口部の開口面積は、30cm2以上190cm2以下である」)、同2-1-E、2-2-E(「前記鍔部の上面と前記蓋部材の下面の外周部とを連結する複数の縦リブと、を有し」)、同2-1-F、2-2-F(「前記蓋部材と前記鍔部との間に流入開口が形成され」)を備え、もって上記課題を解決するものであることは、当業者において優に認識できるものといえる。そして、本件明細書2記載の第2実施例に関する実験結果(段落【0074】、図11)によれば、蓋直径、蓋高さ、リブ数、リブ幅、装着筒の曲率半径、誘導ガイドの形状の諸条件にかかわらず、上記構成を備えるいずれのパターン(段落【0072】【表3】のAないしX)であっても、少なくとも既存(従来技術)の排水部材を用いた場合よりも、当業者において優れたサイフォン現象を生じさせるものであると十分に認識することができる。そうすると、本件発明2の記載は、本件明細書2の記載により当業者が本件発明2の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めるのが相当である。したがって、被告らの主張は、採用することができない。
エその他に、本件明細書2には、本件発明2の課題として、コストを抑え、作業性に優れた簡単な構造であることも挙げられているところ(段落【0006】)、本件明細書2の記載(段落【0005】【0054】【0058】)によれば、本件発明2が構成要件2-1-D、2-2-D、2-1-E、2-2-E、2-1-F、2-2-F、2-1-G、2-2-H、2-1-I、2-2-Iを備えることにより、当業者において上記課題を解決することができるものと優に認識し得るものといえる。
オ以上によれば、本件発明2は、サポート要件を満たすものといえるから、被告らの主張は、いずれも採用することができない。
23争点4-11(実施可能要件違反)
⑴ 認定事実本件明細書2には以下のとおり記載がある。
ア「第1実施例は、上述の実施の形態の蓋部材21に相当する蓋部材21を使用し、その蓋部材21における軒樋31の底面31aからの高さ、蓋部材21の直径を変化させてサイフォンを発生させた実験を行い、排水状態を確認した。」(段落【0062】)
イ「図10には、本第1実施例で使用した実験装置を示している…表1は、
第1実施例における開口外径R1が75mmの実験の条件と実験結果を示している。表2は、第1実施例における開口外径R1が100mmの実験の条件と実験結果を示している。」(段落【0063】)
ウ「表1及び表2に示すように、実験の結果、ケース1~18で蓋部材30の高さHを変えた全て(5~60mmの高さの位置)において、サイフォン現象が生じていることを確認できた。」(段落【0068】)
エ「表1及び表2において、一点鎖線で囲まれた範囲では、蓋部材30の高さと蓋直径のバランスが良いため水位が低く保たれることが確認できた。特に、太線で囲まれた範囲では…流入開口に流入する水流と蓋部材30の高さ、蓋直径のバランスが良いため水位が低く保たれ、良好なサイフォン現象となることが確認できた。」「一方、蓋部材30の高さが大きく(本実験で40mmを超える場合)、蓋直径が小さい(本実験で95mmより小さい場合)場合には…軒樋31内の水位が蓋部材30よりも低くなり、サイフォン作用が発生しにくい可能性があることが確認された。」「また、蓋部材30の高さが小さく(本実験で30mmより小さい場合)、蓋直径が大きい(本実験で155mmより大きい場合)場合には、図9(c)に示すように、流入開口から流入する水流が蓋部材30に衝突する割合が大きくなるため水流が乱れてサイフォン性能を低下させ、また、開口面積が小さいため流量が低くなる可能性があることが確認された。」(段落【0069】)【表1】【表2】
ア特許法36条4項1号が実施可能要件を定める趣旨は、明細書の発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には、発明が公開されていないことに帰し、発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからである。そして、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(同法2条3項1号)、物の発明について上記の実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用等することができることを要するものと解するのが相当である。
イこの点につき、被告らは、本件明細書2記載の第1実施例に関する実験結果(【表1】【表2】)について、軒樋の底面からの高さが5mmの場合においては、全て水位が100で一定する結果となっており、上記高さが10mmや60mmの場合においても、水位が100となるものが多数認められる結果となっているのに、この点に関する説明がないことから、上記実験結果は、その実施内容が不明であり、本件明細書2は、本件発明2を実施できる程度の記載がなされていないと主張する。
ウしかしながら、本件明細書2には、上記実験が蓋部材の直径と軒樋の底面からの設置高さを変えた場合の水位に関するものであること(段落【0062】【0067】)や、上記実験で使用した装置の形態(段落【0063】【図10】)が示されている。そして、上記装置の形態によれば、同実験は、軒樋31の高さを超えて水位を測定することができないものであることが容易に理解することができる。そうすると、本件明細書2記載の実験結果(【表1】【表2】)のうち、水位が「100」となっている箇所は、水位が軒樋31の高さを超えるなどして測定することができない場合を意味することは、本件明細書2に接した当業者にとって明らかである。また、本件明細書2(段落【0069】【表1】【表2】)には、水位が低く保たれ、良好なサイフォン現象が発生する範囲も明確に示されている。これらの事情を踏まえると、本件明細書2に接した当業者は、第1実施例に関する実験結果から、排水能力を高めることができる蓋部材の直径と軒樋底面からの設置高さの組合せを十分理解することができるから、上記当業者は、本件明細書2の発明の詳細な説明の記載に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明2に係る排水部材を生産し、使用等することができるものといえる。以上によれば、本件発明2は、実施可能要件を満たすものと認めるのが相当である。
24小括(本件発明2の無効論)以上によれば、本件発明2-1は、乙A25発明と同一であり、新規性欠如の無効事由がある一方、本件発明2-2、2-3及び2-5ないし2-9は、進歩性欠如、サポート要件違反又は実施可能要件違反の無効事由があるとはいえない。その他に、当事者双方の主張立証を改めて検討しても、上記における説示を踏まえると、上記判断とは異なる主張は、引用発明の技術的思想及び構成を正解しないものに帰し、いずれも採用することができない。
25争点5(侵害主体性〔本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9〕)
⑴ 認定事実
ア被告らによる販売態様(ア) 受発注の方法a被告ケイミューは、代理店から、FAX送信又は「K-ing」と題するオンライン受発注システム(以下「本件受発注システム」という。)を通じて、被告製品1ないし13の発注を受けている。そして、発注は、FAX送信の場合には、被告ケイミューが本件受発注システムに転記した時点で、本件受発注システムによる場合には代理店が直接入力した時点で、被告ケイミューから被告パナソニックに対する発注が行われたものとして取り扱われる。なお、本件受発注システムを利用して、被告製品1ないし13の発注を行う場合には、被告パナソニックのカタログや積算資料に記載されている品番及び数量を個別に入力することになる。(以上につき、甲6の3、乙A9ないし乙A11、弁論の全趣旨)b被告らが販売する被告製品1ないし13の多くは、代理店を通じて、施工業者に販売されるが、施工業者を兼ねる代理店も存在しており、被告らが施工業者に対し、直接販売することもある(甲72、甲73、弁論の全趣旨)。
(イ) カタログ、ホームページ、販促資料、同梱書面等の内容a被告パナソニックが令和2年3月に刊行した「大型雨とい高排水システム」のカタログには、「大型雨とい高排水システムとは、『大型雨といエアロアイアン・谷コイル』と…『カラービニルパイプ(JIS管)』を『自在ドレン(高排水用)』などの専用部材を用いて組み合わせるシステムです。サイホン現象を連続的に発生させることで、対応軒系列の排水能力を最大限に高めることができます。」と記載されており、専用部材として、自在ドレン(高排水用)(被告製品1ないし3)、既存部材として、エアロアイアン前高/折版(被告製品7ないし12)、谷コイル(被告製品13)などが挙げられている(甲5)。b被告パナソニックが令和4年6月に刊行した「大型雨とい高排水システム」と題するカタログには、前記前提事実⑸記載の「部材・施工組立図」が掲載されている。また、その注意書として、「必ず高排水用の専用部材をご使用ください。排水能力が得られず、オーバーフローを引き起こすおそれがあります。」、「自在ドレンは専用部材をご使用ください。◎自在ドレン(高排水用) ×自在ドレン(従来品)」、「エルボで曲げて落とす場合は、大曲エルボや45°エルボをご使用ください。◎90°大曲エルボLL、◎45°エルボ45L、◎SソケットDVSS ×90°エルボDL」などと記載されている。(以上につき、甲13)c被告パナソニックのホームページには、上記aと同様の内容が掲載されている。また、「サイホン発生のポイント(施工制約)」として、上記bと同様の「部材・施工組立図」が掲載されており、「各部の設計・施工ポイント」として、「❷呼びとい部の偏芯距離について」、「自在ドレンとたてといの偏芯距離は1m以内にしてください」、「❸たてといの長さについて」、「たてといの最小長さは(ストレート部)はサイズ毎に設定した長さをお守りください」、「高排水VP・VU753m以上高排水VP1006m以上、高排水VP1258m以上」などと記載されている。(以上につき、甲6)d被告パナソニックの「大型建造物用雨仕舞商品大型雨とい高排水システムについて」と題する販促資料には、「大型雨とい高排水システムの概要 ■サイホン発生のポイント」として、「①専用の自在ドレンを使用」、「②偏芯距離は1m以内」、「③大曲りエルボを使用」、「④たてとい長さは3m以上 … ⇒サイホン発生」などと記載されている。また、「サイホン発生の条件」として、「以下をお守りいただけない場合、排水能力が得られず、オーバーフローの可能性があります」という注意書が冒頭に掲げられた上、上記bと同様の「部材・施工組立図」(抜粋)を掲載し、「必ず高排水用の専用部材をご使用下さい」、「たてといの長さは連続して3m以上確保してください」、「偏芯距離は1m以内としてください」などと記載されている。(以上につき、甲14)e被告パナソニックは、被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)の納品時に、購入者に対し、「施工上のポイント」と題する書面(甲15)を同梱している。当該書面の冒頭には、「施工上のお願い」として、「大型雨とい高排水システムは大型雨とい、または谷コイル、…カラービニルパイプ(JIS管)と専用部材の組み合わせによってサイホン現象を安定的に発生させ、排水能力を向上させる仕組みです。必ず高排水用の専用部材をご使用いただき、施工上のポイントに記載の内容をお守りください。排水能力が得られずオーバーフローを引き起こすおそれがあります。」と記載されている。また、「設計・施工条件」として、上記bと同様の「部材・施工組立図」(抜粋)が掲載されており、その直下には「!必ず守る」、「エルボで曲げて落とす場合は大曲エルボや45°エルボを使用する90°エルボDLを使用すると排水能力が得られず、オーバーフローにより建物を傷めるおそれがあります。」と記載されているほか、「サイホン発生のポイント」として、「以下をお守りいただけない場合、排水能力が得られず、オーバーフローにより建物を傷めるおそれがあります」、「自在ドレンは専用品をご使用ください」、「たてといの長さは連続して3m以上確保してください」、「偏芯距離は1m以内としてください」と記載されている。(以上につき、甲15)(ウ) 排水計算サービス等a被告パナソニックのホームページには、降雨量(屋根奥行、落し口一ヶ所当たりの軒といの長さ、降雨強度)、軒とい排水量(排水有効断面積、水勾配)、たてとい排水量(排水有効断面積)という所定の条件を入力すると、選択した商品が排水能力を満たしているか否かを案内する排水計算システムが提供されている(甲16、甲66、弁論の全趣旨)。
b上記のほか、被告パナソニックは、希望する施工業者に対し、排水能力計算書を提供している。当該排水能力計算書の提供に当たり、施工業者から施工物件の図面が提供されることがあり、被告パナソニックが、施工業者に対し、具体的な構成を提案することもあった。(以上につき、甲17ないし23、甲113ないし117、乙A52、乙A53、乙A68)c被告ケイミューは、代理店向けのカタログにおいて、「大型雨とい高排水システム」の設計サポート体制として、「ご依頼条件で排水能力計算を対応必要情報『物件図面』『建設予定地』『使用商品』など」、「+コスト削減などのご要望に合わせ、軒とい・たてといの仕様をご提案」などと記載している(甲37)。
(エ) 品質保証被告パナソニックは、被告パナソニックが発行した「技術・施工資料」に従って設計施工された物件に限り、「本体、および付属品の材質に起因する水漏れがないこと」を、施工完了後、5年間保証している(甲38、甲119、甲170)。
イ被告ケイミューによる本件調査の結果(弁論の全趣旨)(ア) 裁判所の求釈明と本件調査の内容被告ケイミューは、裁判所の求釈明を受けて、以下の①ないし④の各部材(以下、これらを総称して「4部材」という。)を同時に販売した場合(以下に個数を定めた場合には当該個数。ただし、⑤の部材を販売した場合を除く。)であり、かつ、現実には、施工業者が当該組合せをセットとして本件発明を実施しない割合及びその根拠を調査した。(部材の性質) (部材)① 自在ドレン(高排水用)被告製品1~31個② DV継手、カラーDV継手被告製品4~62個45°エルボ45L2個③ 軒系列部材 被告製品7~13④ ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)⑤ SソケットDVSS(イ) 調査の結果令和2年4月1日から令和6年6月30日までの間における被告ケイミューの非住宅用雨樋部材の取引全体(30万2075件)のうち、自在ドレン(高排水用)を含む件数は2226件である。このうち、上記4部材を含み、かつ、SソケットDVSS(⑤)を含まない取引の件数は43件であり、自在ドレン(高排水用)(①)とDV継手、カラーDV継手(②)の割合が1:2の割合のものは13件であった。上記13件のうち、4件は施工業者が購入し、いずれも上記4部材を【B】の態様で組み合わせて施工したとするものである(ただし、うち3件は提出された設計図面に原告製ドレンの型番が記載されている。)。また、9件は代理店が購入し、❶代理店から購入した施工業者が【B】又は【C】の態様で組み合わせて施工したとするものが4件、回答なしとするものが1件あり、❷代理店が施工業者に対して個別に販売したとするものが3件、❸上記4部材を個別に利用した(サンプル用に購入)とするものが1件である。【C】【B】
ウ弁護士会照会の結果(甲122、126ないし148、167)(ア) 照会の内容原告は、令和6年10月22日、施工業者54社に対し、要旨、以下の内容の弁護士会照会を実施し、35社から回答を受けた。
① 令和2年10月以降に、大型雨とい高排水システムについて、以下のA又はBの態様で部材を組み合わせて施工した経験の有無A:軒といに高排水ドレンが設置され、高排水ドレンに90°大曲エルボLL、呼びとい、90°大曲エルボLL及びたてといが順に接続されている組合せB:軒といに高排水ドレンが設置され、高排水ドレンに45°エルボ、呼びとい、45°エルボ及びたてといが順に接続されている組合せ② A又はBの態様で施工した施工現場名とその住所、A又はBの別③ A又はBの態様で組み合わせることを採用した経緯④ 被告ら等から説明を受けたとする場合には、その詳細⑤ 被告パナソニックが提供する排水計算サービスを受けたとする場合には、その詳細(設計図面の提供の有無、助言や示唆の有無等)(イ) 照会の結果このうち、A又はBの態様で施工したことがあると回答した照会先は17社(施工物件単位では31物件)あった。上記各態様で組み合わせた経緯として、①被告ら等から説明を受けたとする照会先が3社(13件)、②被告らのホームページ、パンフレットを見たとする照会先が13社(24件)、③被告パナソニックが提供する排水計算サービスを受けたとする照会先が5社(8件)あった(複数回答あり)。
エ裁判所による調査嘱託の結果(甲176、甲177、甲180、調査嘱託の結果、弁論の全趣旨)(ア) 調査嘱託の内容当裁判所は、令和7年3月7日、別紙記載の嘱託先に対し、別紙記載の嘱託事項に係る調査嘱託を採用した。また、当庁令和5年(ワ)第70403号事件(以下「別件事件」という。)につき、同事件の審理を担当する裁判所は、上記嘱託先に対する調査嘱託を採用した。
(イ) 調査嘱託の結果当裁判所の採用した調査嘱託の結果に加え、別件事件における調査嘱託の結果を含めた関係証拠(甲122、甲126、甲128ないし130、甲169、甲176、甲177、甲180)によれば、嘱託事項⑴のA及びBの態様で施工された物件の施工日、施工の仕様、受注金額等は別紙嘱託結果一覧表記載のとおりである。
ア前記5及び15によれば、被告製品1ないし13は、その組合せによっては、本件発明1及び2-7ないし2-9の技術的範囲に属する直接侵害品を構成する場合があるといえる。しかしながら、上記認定事実によれば、上記直接侵害品を完成させるのは、飽くまで施工業者であり、被告らは、上記直接侵害品の販売又は販売の申出(以下、併せて「販売等」という。)をするものではなく、被告製品1ないし13につき、個別の部品として販売等をしているにすぎないことが認められる。
そうすると、被告らが被告製品1ないし13を販売等する行為は、間接侵害を構成する場合があるのは格別、直接侵害を構成するものと認めることはできない。
イこれに対し、原告は、被告らが、直接侵害品を構成する4部材を同時に販売等した場合(①被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)、②被告製品4ないし6の90°大曲エルボLL、45°エルボ45LのDV継手、カラーDV継手、③被告製品7ないし13の軒系列部材、④ビニルパイプ・カラービニルパイプ(JIS管)をいい、⑤SソケットDVSSを同時に販売等した場合を除く。)には、上記4部材が施工業者において直接侵害品となる施工態様で組み合わされるのであるから、被告システムの販売等は、直接侵害を構成する旨主張する。
しかしながら、上記において説示したとおり、被告らは部品を販売するにすぎず、直接侵害品を完成させるかどうかは、専ら施工業者が施工現場の状況に応じて判断するものであり、被告らにおいて上記施工業者を管理支配する関係があることも認めるに足りないことからすると、上記4部材の販売等をもって直接侵害をいう原告の主張は、失当というほかない。念のため、争点整理の経過等を踏まえ、上記4部材が同時に販売等された場合についてみると、上記認定事実⑴イのほか、証拠(乙A11、乙A50)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1ないし13は、飽くまで部品として扱われており、購入した施工業者や代理店が在庫として保持したり、個別に用いたりすることがあることが認められる。そうすると、上記4部材を同時に販売等した場合であっても、これらが一つの施工現場で必ずしも使用されるものと認めるに足りず、施工業者において直接侵害品となる施工態様で組み合わされるとする原告の主張は、その前提を欠く。しかも、仮に一つの施工現場で使用されたとしても、証拠(甲18、甲19、甲22、甲113、甲115、乙A52〔枝番6、7、14、15、17、19、20、23、26、29、30及び34に限る。〕、乙A53〔枝番8及び9に限る。〕)及び弁論の全趣旨によれば、大型高排水システムを導入する通常の物件(工場、倉庫等)においては、当該物件で組み上げられる雨樋が一つであるとは限らず、同時に販売等された上記4部材が同じ物件の異なる雨樋に使用されることも認められる。このような観点からしても、上記4部品が施工業者において直接侵害品となる施工態様で組み合わされるとする原告の主張は、重ねてその前提を欠く。のみならず、仮に同時に販売等された上記4部材が一つの雨樋に用いられる場合についてみても、証拠(乙A49)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品4ないし6の90°大曲エルボLLや、45°エルボ45Lは、排水部材と呼び樋との間を接続する用途にとどまらず、建物の形状や設置場所に応じて、雨水を落とす位置を調整する用途や(下記F-2)、障害物を避ける用途(下記D-1、F-4、H-3)に使用されることがあるものと認められる。このような場合には、被告製品4ないし6の90°大曲エルボLLが、
第1エルボの他端に一端が接続された呼び樋の長さが2.0m以内ではない雨樋(下記F-4)に用いられることにより、本件発明1の構成要件1-1-Iや本件発明2の構成要件2-9-Aを充足しなくなったり、呼び樋に第2エルボを介して接続される竪樋の長さが2.0m以上ではない雨樋(下記F-2)に用いられることにより、構成要件2-7-Hを充足しなくなったり、第2エルボの他端に一端が接続された竪樋の一端と最も上流側の合流位置との距離が2.0m以上ではない雨樋(下記H-3)に用いられることにより、本件発明1の構成要件1-2-Jを充足しなくなったり、45°エルボ45Lが、呼び樋に第2エルボを介して接続される竪樋の長さが2.0m以上ではない雨樋(下記D-1)に用いられることにより、構成要件2-7-Hを充足しなくなったりすることも、十分に想定されるべきものといえる。そうすると、被告らの販売等に係る上記4部材が、同時に一つの雨樋に用いられたとしても、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属しない態様で施工されることがあると認めるのが相当である。したがって、上記4部品が施工業者において直接侵害品となる施工態様で組み合わされるとする原告の主張は、更に重ねてその前提を欠く。
これらの事情を踏まえると、上記4部材が同時に販売等された場合であっても、施工業者が必ず本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する態様により施工するものとはいえず、原告の主張は、その前提を欠く。その他に、原告は、被告らが被告製品1ないし13を組み合わせた「大型雨とい高排水システム」の販売活動を行っているなどとして直接侵害を主張するものの、上記において説示したところを踏まえると、原告の主張は、直接侵害の判断手法を正解しないもの、又は上記認定に係る取引の実情等とは異なる前提に立つものに帰する。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
【D-1】【F-2】【H-3】【F-4】
ウ以上によれば、被告らによる被告製品1ないし13の販売等が、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する被告システムの販売等であるということはできず、本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の直接侵害を構成するものとはいえない(なお、本件全証拠によっても、被告らが本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する被告システムを製造、貸渡し又は貸渡の申出をしていることを認めることはできない。)。
26争点6(不法行為該当性)
⑴ 施工業者による生産行為証拠(甲176、177、180)、調査嘱託の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件調査嘱託に回答した施工業者は、(別紙)嘱託結果一覧表の「仕様」欄記載の施工を行い、その結果として同別紙「該当する発明」欄記載の発明の技術的範囲に属する雨樋を生産したものと認められる。
また、証拠(甲179)及び弁論の全趣旨によれば、本件調査嘱託の対象となった施工業者は、上記のほか、(別紙)原告調査物件一覧表の「仕様」欄記載の施工を行い、その結果として同別紙「該当する発明」欄記載の発明の技術的範囲に属する雨樋を生産したものと認められる。
⑵ 被告らによる共同不法行為の成否
ア前記前提事実⑸⑹並びに上記25⑴認定事実ア及び弁論の全趣旨によれば、被告らは、上記生産に係る雨樋の構成部材である被告製品1ないし13を販売し、このうち被告製品1ないし3の自在ドレン(高排水用)は、「大型雨とい高排水システム」の専用部材として、専ら被告らにおいて販売するものであることが認められる。そして、上記25⑴認定事実アによれば、被告らは、上記自在ドレン(高排水用)の納品時に同梱される書面において、「必ず高排水用の専用部材をご使用いただき、施工上のポイントに記載の内容をお守りください。排水能力が得られずオーバーフローを引き起こすおそれがあります。」、「以下をお守りいただけない場合、排水能力が得られず、オーバーフローにより建物を傷めるおそれがあります。」などという注意書を付して、施工業者に対し、本件発明1の構成要件1-1-H-1、1-2-H-1、本件発明2の構成要件2-8-Bの曲率半径と開口面積を充足する90°大曲エルボLLの使用、本件発明1の構成要件1-1-I、本件発明2の構成要件2-9-Aを充足する呼び樋部の偏芯距離による施工、本件発明1の構成要件1-2-J、本件発明2の構成要件2-7-Hを充足する竪樋の長さによる施工などをそれぞれ推奨していることが認められる。上記認定事実によれば、被告らは、自在ドレン(高排水用)の販売等によって、上記⑴記載の施工業者が生産した直接侵害品(被告システム)を構成するために必要不可欠な重要部材を販売等した上、当該自在ドレン(高排水用)の納品時の同梱書面において、施工業者に対し、特許権侵害を未然に防止する措置を一切とらず、かえって、直接侵害を構成する施工態様を推奨していたことが認められる。その他に、被告らは、上記同梱書面のみならず、被告パナソニックのホームページや販促資料においても、「大型雨とい高排水システム」を宣伝、広告し、直接侵害を構成する施工態様を随所で推奨していたことが認められる。これらの被告システムに必要不可欠な重要部材(自在ドレン(高排水用))の販売等及び上記の推奨の態様を踏まえると、被告らは、施工業者が直接侵害品である被告システムを生産することを容易にしたことが認められ、被告らには、少なくとも条理上の注意義務に違反したものとして、過失を認めるのが相当である。したがって、被告らには、上記⑴記載に係る施工業者の生産行為につき、幇助の共同不法行為が成立する(なお、本件全証拠によっても、被告らが上記生産行為に対する教唆行為をしていることを認めることはできない。)。
イこれに対し、被告らは、幇助による共同不法行為が成立するのは、被告パナソニックが提供する排水計算サービスを通じて、施工態様を認識したにもかからず、助言等をした場合に限られる旨主張するものの、被告システムに必要不可欠な重要部材である自在ドレン(高排水用)の販売等及び上記の推奨の態様を踏まえると、被告ら主張に係る上記場合に限られず、幇助の共同不法行為が成立するものと認めるのが相当である。
また、被告らは、証拠(乙A68)によれば、被告パナソニックが排水計算サービスを提供した物件の中には、通常排水を推奨したものがあり、この場合には幇助による共同不法行為が成立しない旨主張する。しかしながら、被告ら指摘に係る物件を検討しても、そもそも排水能力計算書を作成していないもの(別紙嘱託結果一覧表の物件番号⑲)や、同一の施工物件の異なる建物(屋根)の雨樋について通常排水を推奨したもの(同物件番号⑧、⑰)や、落とし口の数次第では通常排水であっても高排水であっても、排水可能であると回答したもの(同物件番号⑮)にすぎず、必ずしも通常排水を推奨したものとはいえない。そうすると、被告らの主張は、被告システムに必要不可欠な重要部材である自在ドレン(高排水用)の販売等及び上記の推奨の態様を踏まえると、上記判断を左右するものとはいえない。したがって、被告らの主張は、採用することができない。
27争点7-1、7-2及び7-3(被告製品2、3、5、6、9、12及び13による間接侵害の成否〔本件発明1〕)
⑴ 被告製品2及び3
ア特許法101条1号該当性特許法101条1号は、特許権の効力の実効性を確保する観点から、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為に限り特許権の侵害とみなすものである。そうすると、同号に規定する「物の生産にのみ用いる物」とは、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い行為に限定した趣旨目的に鑑みると、経済的、商業的又は実用的な他の用途がない物をいうと解するのが相当である。これを本件についてみると、証拠(甲6の2)によれば、被告パナソニックのカタログには、「大型雨とい高排水システム」の「部材・施工組立図」として、被告製品2及び3を90°大曲エルボLLで曲げて竪樋に接続しない複数の施工例が記載されている。そうすると、被告製品2及び3は、本件発明1の技術的範囲に属しない構成で用いられることがあり、その用途は、被告パナソニックのカタログに記載されている以上、経済的、商業的又は実用的なものであるといえる。したがって、被告製品2及び3は、本件発明1の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)であると認めることはできない。
イ特許法101条2号該当性特許法101条2号は、特許権の効力の実効性を確保する観点から、非侵害の用途に用いられる物の生産等であっても、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為に限り特許権の侵害とみなすものであり、特許権の効力の不当な拡張とならないように、当該発明という観点からみて重要な物の生産等に適用範囲を限定するものである。そうすると、同号に規定する「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い行為に限定した趣旨目的に鑑みると、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物をいうと解するのが相当である。
これを被告製品2及び3についてみると、特許請求の範囲の記載は、排水部材に相当する「サイフォン発生部」(構成要件1-1-B、1-2-B)につき、「軒樋の底面に形成された集水口を貫通する筒状部」という構造と、「サイフォン現象を発生させる」という機能を規定するにとどまり、雨樋に用いられる排水部材であれば通常有する上記構造のほかには、「サイフォン発生部」の構成を具体的に特定するものではないことからすると、「サイフォン発生部」自体の構成に特徴があるとはいえない。そして、本件明細書1には、「サイフォン雨樋システムに90°曲がりエルボを使用すると、直角に形成された内周側の内壁部で雨水の流速が低下するという問題があった。また、雨水を縦引き及び横引きする際に、呼び樋や竪樋が短すぎると、雨水の流速が低下するという問題があった。雨水の流速が低下すると、サイフォン雨樋システムの排水能力が低下し、雨樋にサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部で雨水が溢れ出しかねない。」(段落【0006】)、「本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、雨水を円滑に流下させるエルボ及びサイフォン雨樋システムを提供する。」(段落【0007】)、「上述のサイフォン雨樋システムによれば、サイフォン発生部で発生したサイフォン現象によって雨水が満水状態で雨樋上流部に接続される第1エルボの一端から曲管部に流入した際に、雨水が内壁面の内周面側で滞ることなく、軒樋及び軒樋より下流側の部分に向かって円滑に流れる。また、第1エルボ及び第2エルボの曲管部の曲率半径や、横引きされる雨水の流下距離と竪樋の上流側の端部から最も上流側の合流位置までの流下距離が上記の範囲内になることで、サイフォン発生部から竪樋の下流側の端部までの間のサイフォン作用が途切れ難く、良好に維持される。このことによって、サイフォン発生部から第1エルボに流入した雨水が継手や樋部材の内壁面で滞ることなく、内壁部で雨水の流速が低下しない。」(段落【0015】)という記載があることが認められる。上記各記載によれば、本件発明1は、サイフォン発生部で発生したサイフォン現象によって満水状態で流入した雨水について、これを円滑に流下させるための構成を新たに開示するものであり、「サイフォン発生部」自体は、上記構成を特徴付ける特有の構成であるとはいえない。
そうすると、排水部材である被告製品2及び3は、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物であるということはできない。したがって、被告製品2及び3は、本件発明1の「発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)であると認めることはできない。
ウ小括したがって、被告製品2及び3の製造、販売等が、本件特許権1の間接侵害を構成するものとはいえない。
⑵ 被告製品5及び6
ア認定事実(ア) 被告パナソニックは、被告製品4ないし6につき、ねずみ、グレー、ミルクホワイト、シルバーグレー、ココアブラウン(ただし、ココアブラウンは被告製品4に限る。)及びアイボリーの色調の製品を販売している(甲7)。株式会社クボタケミックス(以下「クボタケミックス」という。)は、被告製品4及び5のシルバーグレーの色調の製品を販売するほか、被告パナソニックが販売する上記製品の一部を受注生産の方法により製造、販売している(甲43)。
(イ) 被告パナソニック及びクボタケミックスは、「大型雨とい高排水システム」の一部として販売される前(被告パナソニックにつき、本件特許1の出願日前である平成26年10月、クボタケミックスにつき、本件特許1の出願日前である平成18年10月)から、既に被告製品4ないし6のシルバーグレーの色調の製品を販売していた(乙A14〔枝番1、4〕、弁論の全趣旨)。被告パナソニックは、「大型雨とい高排水システム」をリリースする1か月前(令和2年3月)から、被告製品4に、新たな色調の製品(グレー、ミルクホワイト、ココアブラウン及びアイボリー)を追加し、「大型雨とい高排水システム」の専用部材である被告製品1(自在ドレン(高排水用))と同様の色調の製品を販売した(甲29)。被告パナソニックは、令和3年2月1日、被告製品2及び3(自在ドレン(高排水用))の新たな色調(ねずみ、ミルクホワイト、シルバーグレー及びアイボリー)の製品と共に、被告製品5及び6につき、新たな色調(ミルクホワイト、グレー及びアイボリー)の製品を追加した(甲30)。このうち、原告の製造販売する90°大曲エルボLLは、呼び径が100ミリメートル以上であり、かつ、曲率半径が64ミリメートルよりも大きく125ミリメートルよりも小さい(乙A14の3、乙A48)。
イ特許法101条1号該当性特許法101条1号に規定する「物の生産にのみ用いる物」とは、経済的、商業的又は実用的な他の用途がない物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。
これを被告製品5及び6についてみると、前記認定事実によれば、被告製品5及6の90°大曲エルボLLは、JIS規格適合品であり、シルバーグレーの色調の製品は、本件特許1の出願日前から、被告パナソニック及びクボタケミックスにより販売されていたことが認められる。そうすると、被告製品5及び6は、本件発明1の技術的範囲に属しない構成で用いられることがあり、その用途は、JIS規格適合品である以上、経済的、商業的又は実用的なものであるといえる。したがって、被告製品5及び6は、本件発明1の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)であると認めることはできない。
これに対し、原告は、被告製品5及び6のうち、グレー、ミルクホワイト、ココアブラウン及びアイボリーの色調の製品は、被告製品1ないし3(自在ドレン(高排水用))に合わせて販売されたものであるから、「大型雨とい高排水システム」以外の用途には使用されない旨主張する。
しかしながら、上記各色調の製品は、シルバーグレーの色調の製品と全く同一の構成であるから、シルバーグレーの色調の製品と同様に、「大型雨とい高排水システム」のほかに、経済的、商業的又は実用的な用途があるものといえる。のみならず、証拠(乙A16)及び弁論の全趣旨によれば、被告パナソニックは、「大型雨とい高排水システム」がリリースされる以前(平成26年10月)から、シルバーグレー以外の色調の軒樋を販売していたことが認められることからすると、シルバーグレー以外の色調の製品は、従来型の雨樋にも使用され得る部材として販売されているものと認めるのが相当である。したがって、原告の主張は、採用することができない。
ウ特許法101条2号該当性(ア) 発明の課題の解決に不可欠なもの特許法101条2号に規定する「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを被告製品5及び6についてみると、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載は、サイフォン雨樋システムに用いられるエルボにつき、「管軸を含む平面における断面で見たときに、内周側の内壁面及び外壁面の曲率半径が64mmよりも大きく125mmよりも小さく、且つ、開口面積が50c㎡以上である曲管部」(構成要件1-1-H-1、1-2-H-1)を備えるという具体的な構成を特定している。また、上記⑴に説示した本件明細書1の記載のほか、「サイフォン雨樋システムにおいて雨水を縦引きから横引きにする部分(又は、雨水を横引きから縦引きにする部分)には、各種の樋や連結部材同士を接続するための継手としてエルボが用いられる。従来規格化されているエルボとしては、例えば90°曲がりエルボ(所謂、DL)、がある。」(段落【0005】)との記載があることが認められる。上記特許請求の範囲の記載及び本件明細書1の記載によれば、本件発明1は、従来規格化されている90°曲がりエルボでは、直角に形成された内周側の内壁部で雨水の流速が低下するため、排水能力が低下しサイフォン発生部で雨水が溢れ出すおそれがあるという課題に対し、構成要件1-1-H-1、1-2-H-1に規定する曲率半径と開口面積を備えるエルボを用いることにより、雨水を円滑に流下させるという効果を実現するものであると認められる。他方、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載において特定されている上記構成が、JIS規格品である90°大曲エルボLLの規格に沿うものであることは当事者間に争いがないところ、上記認定事実によれば、90°大曲エルボLLは、従来から複数の業者により製造販売されている規格品、汎用品であると認められ、本件発明1が開示する特徴的技術手段とは無関係に存在していたものである。そうすると、その他の部品と組み合わせて顕著な効果を生じさせるのは格別、本件発明1に係る特許請求の範囲が規定するエルボの上記構成自体が、本件発明1が従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成に当たるものとはいえない。しかも、証拠(乙A21〔22頁〕)によれば、本件特許1の出願日前である平成26年10月には、雨樋システムにおいても、雨水を縦引きから横引きにする部分に用いられるエルボについて、90°大曲エルボLLを用いる構成が開示されていることが認められ、雨樋システムに、従来規格化されている90°曲がりエルボではなく、90°大曲エルボLLを用いることも、本件特許1の出願当時から既に行われていたものであるといえる。これらの事情の下においては、被告製品5及び6は、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物であると認めることはできない。したがって、被告製品5及び6は、本件発明1の「発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)であるということはできない。
(イ) 日本国内において広く一般に流通しているもの特許法101条2号の「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは、特注品ではなく、他の用途にも用いることができ、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品を意味するものと解するのが相当である。これを被告製品5及び6についてみると、上記認定事実によれば、被告製品5及び6は、本件特許1の出願日前から販売されていたJIS規格適合品であって、他社からも当該規格に沿った同種製品が多数販売されているほか、被告パナソニック及びクボタケミックスは、格別用途を指定することなく、これらを販売していることが認められる。上記認定事実によれば、被告製品5及び6は、特注品ではなく、他の用途にも用いることができ、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品であるというべきである。したがって、被告製品5及び6は、同号の「日本国内において広く一般に流通しているもの」であるといえる。
エ小括したがって、被告製品5及び6の販売等が、本件特許権1の間接侵害を構成するものとはいえない。
⑶ 被告製品9、12及び13特許法101条2号に規定する「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを本件についてみると、特許請求の範囲の記載は、軒樋につき、底面に集水口を形成するという構造を規定するにとどまり、雨樋に用いられる軒樋であれば通常有する上記構造のほか、軒樋の構成を具体的に特定していないのであるから、軒樋自体の構成に特徴があるとはいえない。そして、上記⑴において説示したとおり、本件発明1は、サイフォン発生部で発生したサイフォン現象によって満水状態で流入した雨水を円滑に流下させるための構成を、従来技術の課題を解決するものとして開示するものであるところ、軒樋は、雨水をサイフォン発生部である排水部材に集めるための部材であり、本件発明1において開示された上記構成に直接関連するものであるとはいえない。そうすると、軒樋及び谷コイルにすぎない被告製品9、12及び13は、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物とはいえない。したがって、被告製品9、12及び13は、本件発明1の「発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)であるということはできない。
以上によれば、被告製品9、12及び13の製造、販売等が、本件特許権1の間接侵害を構成するものとはいえない。
28争点7-4、7-5及び7-6(被告製品1ないし13による間接侵害の成否〔本件発明2-7ないし2-9〕)
⑴ 被告製品1ないし3
ア特許法101条1号該当性特許法101条1号に規定する「物の生産にのみ用いる物」とは、経済的、商業的又は実用的な他の用途がない物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを被告製品1ないし3についてみると、上記27において説示したところと同様に、被告製品1ないし3は、エルボに接続することなく、本件発明2の技術的範囲に属しない構成で用いられることがあり、その用途は、被告パナソニックのカタログに記載されている以上、経済的、商業的又は実用的なものであるといえる。したがって、被告製品1ないし3は、本件発明2-7ないし2-9の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)であると認めることはできない。
イ特許法101条2号該当性(ア) 発明の課題の解決に不可欠なもの特許法101条2号に規定する「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを被告製品1ないし3についてみると、特許請求の範囲の記載は、請求項1ないし6において排水部材の構成全体を具体的に特定していることからすると、排水部材の構成自体に特徴があるものと認められる。また、上記1において認定した本件明細書2の記載によれば、本件発明2は、①作業性に優れた構造を実現するという課題を解決するために、蓋部材を縦リブを介して一体的に設けた装着筒を竪樋上に設けられる竪樋継手に嵌合し、蓋部材を軒樋の底面からの所定の高さの位置に設定する構成とすることにより、排水部材の取り付けが、蓋部材を軒樋の上側から取り付ける作業となり、軒樋の下面側における作業を低減させ、もって、その取り付け作業を容易に行うことができるという効果を実現するほか、②優れたサイフォン性能を発揮するという課題を解決するために、落し口部の開口面積を大きくすることにより、最大排水流量を十分なものとし、流入開口部分を形成する縦リブを設け、縦リブに整流効果を持たせることにより、雨水が空気を吸い込むことを確実に抑制し、これらをもって優れたサイフォン性能を発揮するという効果を実現するものであると認められる。
上記認定に係る特許請求の範囲の記載及び本件明細書2に記載された技術的特徴によれば、本件発明2の従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物は、排水部材であるといえる。これを被告製品1ないし3についてみると、その上部材である被告製品1-1、2-1及び3-1は、蓋部材を軒樋の底面からの所定の高さの位置に設定することで取り付け作業を容易にするとともに、優れたサイフォン性能を発揮するという効果を直接もたらす排水部材であるといえることからすると、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物であると認めるのが相当である。他方、その下部材である被告製品1-2、2-2及び3-2は、その上部材との組み合わせには必要不可欠なものではあるものの、それ自体に特徴があるものとはいえず、上記特有の構成を直接もたらす特徴的な物であるということはできない。したがって、被告製品1ないし3のうち、被告製品1-1、2-1及び3-1に限り、本件発明2-7ないし2-9の「発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)であると認めるのが相当である。
(イ) 日本国内において広く一般に流通しているもの特許法101条2号の「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは、特注品ではなく、他の用途にも用いることができ、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品を意味するものと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを被告製品1-1、2-1及び3-1についてみると、証拠(甲6の2)によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1は、被告パナソニックの「大型雨とい高排水システム」の専用部材として販売されていることが認められる。そうすると、被告製品1-1、2-1及び3-1は、特注品であり、他の用途にも用いることができるものとはいえない。したがって、被告製品1-1、2-1及び3-1は、同号の「日本国内において広く一般に流通しているもの」であると認めることはできない。
(ウ) 発明が特許発明であること及びその物が発明の実施に用いられることを知りながらa発明が特許発明であることを知りながら証拠(甲6の2、甲11、甲12、甲45、甲48、乙A9ないし乙A11、丙2)及び弁論の全趣旨によれば、被告パナソニックは、令和3年6月30日付けで、原告から「大型雨とい高排水システム」が本件発明1を侵害する旨の通知(本件通知)を受け、それ以降、原告と交渉を継続していたこと、被告パナソニックと被告ケイミューは役員構成を一部共通にしており、「大型雨とい高排水システム」の構成部材は、被告ケイミューを通じて販売されていたこと、原告と被告らは「大型高排水システム」の市場をめぐって競合関係にあったこと、以上の事実が認められる。上記認定事実によれば、原告と被告パナソニックは、本件通知以降、「大型雨とい高排水システム」に関する交渉を継続していたのであるから、遅くとも本件特許2の登録日である令和5年3月6日には、本件発明2-7ないし2-9が特許発明であることを認識していたものと推認するのが相当であり、これを覆すに足りる証拠はない。そして、被告パナソニックと被告ケイミューとの上記認定に係る関係性に鑑みれば、被告ケイミューも、当時同様の認識を得ていたものと推認するのが相当である。これに対し、被告ケイミューは、メール(丙2)の内容を根拠として、被告ケイミューが本件発明2を認識したのは、令和5年6月30日である旨主張するものの、当該メールは担当者レベルのものにすぎず、上記説示に係る関係性に鑑みると、当該メールのみをもって、被告ケイミューが本件発明2を特許発明であると認識していなかったと認めるに足りないというべきである。したがって、被告ケイミューの主張は、採用することができない。bその物がその発明の実施に用いられることを知りながら特許法101条2号は、特許権の効力の実効性を確保する観点から、非侵害の用途に用いられる物の生産等であっても、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為に限り特許権の侵害とみなすものであり、特許権の効力の不当な拡張とならないように、当該発明という観点からみて重要な物の生産等に適用範囲を限定するものである。そうすると、同号に規定する「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」とは、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い行為に限定した趣旨目的に鑑みると、例外的とはいえない範囲の者においてその物を当該発明の実施に用いる蓋然性が高いことを認識していることをいうものと解するのが相当である。これを被告製品1ないし3についてみると、証拠(甲6の2、甲13ないし15)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1-1、2-1及び3-1は、本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属さない態様による用途もあるものの、被告らは、被告パナソニックのホームページや販促資料等において、「自在ドレンは専用部材をご使用ください」と記載した上、本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属する施工例を紹介していることが認められる。そうすると、被告らは、被告製品1-1、2-1及び3-1を購入する者に対し、自ら、本件発明2-7ないし2-9の実施に用いるように広く推奨していたのであるから、被告製品1-1、2-1及び3-1を購入する者のうち例外的とはいえない範囲の者において当該製品を本件発明2の実施に用いる蓋然性が高いことを認識していたものと認めるのが相当である。
ウ小括したがって、被告製品1-1、2-1及び3-1の製造、販売等は、本件特許権2の間接侵害を構成するものといえる。
⑵ 被告製品4ないし6
ア特許法101条1号該当性特許法101条1号に規定する「物の生産にのみ用いる物」とは、経済的、商業的又は実用的な他の用途がない物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを被告製品4ないし6についてみると、前記認定事実によれば、被告製品4ないし6の90°大曲エルボLLは、JIS規格適合品であり、シルバーグレーの色調の製品は、本件特許2の出願日前から、被告パナソニック及びクボタケミックスにより販売されていたことが認められる。そうすると、被告製品4ないし6は、本件発明2-7ないし2-9の技術的範囲に属しない構成で用いられることがあり、その用途は、JIS規格適合品である以上、経済的、商業的又は実用的なものであるといえる。したがって、被告製品4ないし6は、本件発明2-7ないし2-9の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)であると認めることはできない。
イ特許法101条2号該当性特許法101条2号に規定する「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを被告製品4ないし6についてみると、上記⑴において説示した本件発明2の技術的特徴によれば、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物は、排水部材であるといえるから、エルボである被告製品4ないし6は、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物とはいえない。そうすると、被告製品4ないし6は、本件発明2-7ないし2-9の「発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)であるということはできない。なお、本件発明2-8については、エルボの構成が具体的に特定されているものの、上記認定に係る技術的特徴のほか、本件明細書2にはエルボの構成についての記載がないことからすれば、上記の理は、本件発明2-8についても同様に当てはまるというべきである。
ウ小括したがって、被告製品4ないし6の販売等が、本件特許権2の間接侵害を構成するものとはいえない。
⑶ 被告製品7ないし13特許法101条2号に規定する「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物をいうと解すべきことは、前記において説示したとおりである。これを被告製品7ないし13についてみると、本件発明2に係る特許請求の範囲の記載は、軒樋の構成を具体的に特定していないから、軒樋自体の構成に特徴があるとはいえない。そして、上記⑴において説示した本件発明2の技術的特徴によれば、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段は、排水部材であるといえるから、軒樋又は谷コイルにすぎない被告製品7ないし13は、従来技術の課題を解決する特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす特徴的な物とはいえない。そうすると、被告製品7ないし13は、本件発明2-7ないし2-9の「発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)であるということはできない。したがって、被告製品7ないし13の製造、販売等が、本件特許権2の間接侵害を構成するものとはいえない。
29小括(間接侵害の成否)その他に、当事者双方の主張立証を改めて検討しても、本件発明1及び2の技術的特徴、各被告製品の構成、取引の実情等を踏まえると、当事者双方の主張は、前記判断を左右するものといえない。したがって、当事者双方の主張は、上記判断に抵触する限度で、いずれも採用することができない。
以上によれば、被告パナソニックによる被告製品1-1、2-1、3-1の製造、販売又は販売の申出、被告ケイミューによる同製品の販売又は販売の申出は、本件特許権2(本件発明2-7ないし2-9)の間接侵害を構成するものといえる。
30侵害論の総括以上によれば、①被告らには、施工業者が別紙(嘱託結果一覧表)及び別紙(原告調査物件一覧表)記載の物件を生産したことを幇助したことによる共同不法行為(民法719条2項)が成立するとともに、②被告パナソニックにあっては被告製品1-1、2-1、3-1を製造、販売又は販売の申出をしたことにつき、被告ケイミューにあっては同製品を販売又は販売の申出をしたことにつき、本件特許権2の直接侵害及び間接侵害が成立する(なお、本件全証拠によっても、被告らが被告製品1ないし13を貸渡し、又は貸渡の申出をしていることを認めることはできない。)。
なお、前記前提事実⑸イによれば、被告製品1ないし3は、本訴訟係属中に設計変更がされ、令和6年9月21日以降、設計変更後の製品が製造、販売されていることが認められる。そして、当該設計変更から相当の期間が経過しているところ、原告は、本件訴訟において、当該設計変更後の製品が本件発明2の技術的範囲に属するものとは主張しておらず、本件審理の経過及び被告らの訴訟追行の態度等に鑑みると、本件発明2の技術的範囲に属する構成に再度設計変更するおそれがあるものと認めるに足りない。これらの事情の下においては、設計変更前の被告製品の製造、販売等の差止め、当該製品及び製造用金型の廃棄の必要性があるものとはいえず、原告の差止請求及び廃棄請求は、いずれも理由がない。
31争点8(損害額)
⑴ 本件特許権2の侵害に基づく損害額
ア特許法102条2項に基づく損害額(ア) 被告らが受けた利益の額被告らが被告製品1ないし3の販売等によって得た限界利益の額は、●(省略)●円であることにつき、当事者間に争いがない。本件における限界利益の額は、被告製品1ないし3ではなく、被告製品1-1、2-1及び3-1に限り算出されるべきものであるが、この点に関する主張立証が一切ないため、当事者双方の主張及び弁論の全趣旨を踏まえ、被告製品1-1、2-1及び3-1の限界利益の額は、●(省略)●円であると推認し、当事者双方の主張立証を踏まえ、その覆滅事由において、被告製品1-2、2-2及び3-2に係る減額分を考慮するのが相当である。
(イ) 推定覆滅事由についてa特許法102条2項における推定の覆滅については、侵害者が主張立証責任を負うものであり、侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。そこで、被告らが主張する事情につき、以下検討する。
b被告らは、本件発明2を実施した部分が被告製品1ないし3の一部であり、売上げに貢献する他の特徴を有していることを推定覆滅事由として主張する。
そこで検討するに、被告パナソニックの販促資料(甲14)によれば、被告製品1ないし3は、①落し口を曲面で形成する「R形状」、②下端が接続部に設けられ、かつ、径方向に延びる板状に形成されている「整流板」、③複数の羽根の径方向内側端に連結され、上下方向に延び、下端が排水筒部の内部空間に向いている内側筒部と、その上端から連続して上側に向かって径方向に広がる漏斗部からなる「オーバーフロー筒」、④漏斗部下面の「流水ガイド」、⑤「エルボ嵌合」という、5つの特徴を有しており、これらの特徴により、排水能力を向上させ、顧客誘引力を高めているものと認められる。このうち、被告パナソニックが「軒樋用排水ドレン」に関して取得した特許に係る特許公報(乙A63)には、軒樋内の異物が外周部の開口を塞いだ場合でも排水効果の抑制を防止するという課題に対する解決手段として、②落し口付近での渦発生を抑制し流入性を向上する羽根(整流板に相当する。)、③異物が外周部の開口を塞いだ場合でも上側に向かって開口する漏斗部から排水可能な内側筒部(オーバーフロー筒に相当する。)が規定されており、被告製品1ないし3は、その実施品であることが認められる。そうすると、被告製品1ないし3が備える上記5つの特徴は、上記羽根に相当する②「整流板」に係る構成、上記内側筒部に相当する③「オーバーフロー筒」に係る構成は、その排水効果の抑制を防止するという技術的意義を有するものであり、上記5つの特徴の中でも大きな顧客誘引力を有するものと認められる。もっとも、本件発明2は、構成要件2-2-G(前記筒部と前記鍔部との間の接続部は曲面で形成され)、構成要件2-2-J(縦リブは、下端が…前記接続部に設けられ、かつ、径方向に延びる板状に形成され)の構成を有しているものと認められることからすると、被告製品1ないし3の有する上記5つの特徴のうち、①「R形状」に係る構成、②「整流板」に係る構成に寄与するものであるといえる一方、その他の特徴(③「オーバーフロー筒」に係る構成、④「流水ガイド」に係る構成、⑤「エルボ嵌合」に係る構成)に係る構成には、寄与しているものとはいえない。これらの事情を総合すると、本件発明2は、被告製品1ないし3の技術的特徴部分として顧客誘引力を有するもののうち、③「オーバーフロー筒」を含む複数の構成に寄与していないのであるから、当該事情は、推定覆滅事由として考慮されるべきである。これに対し、被告らは、上記のほか、被告製品1ないし3の下部外側に「ネジ無し部」があることや、その下側面に「屈曲凹部」があることも特徴である旨主張するものの、これらは販促資料に記載されておらず、顧客誘引力を有する構成であると認めるに足りないから、推定覆滅事由として考慮すべきものとはいえない。
c被告らは、競合品が存在することを推定覆滅事由として主張する。
そこで検討するに、証拠(甲160ないし甲162、乙A6、乙A60)及び弁論の全趣旨によれば、原告が大型高排水システム用の専用部材である高排水用ドレンを販売するほか、デンカアステック株式会社、タキロンシーアイ株式会社及び株式会社タニタハウジングウェアが通常排水用の排水部材を販売していることが認められる。
他方、原告と被告らが販売する大型高排水システムは、工場等の大型建造物を対象とするものである一方、通常排水のシステムは、住宅等を対象とするものであるから、両者の市場は異なるものの、両者の機能面における相違点は、排水能力の差異であり、必ずしも質的なものであるとはいえない。そして、建物全体の排水能力を上昇させることは、排水部材の性能のみならず、竪樋の本数を増やすことや軒樋の口径を大きくすることなどによっても可能であるから、建物の構造や施工条件によっては、被告製品と通常排水用の排水部材には代替性が認められる場合もあり、現に、被告らが提供する排水計算サービスにおいても、高排水システムを前提とする構成と通常排水を前提とする構成を選択的なものとして提案している例(甲18〔計算書⑤〕、甲22、乙A53の8)があることが認められる。
これらの事情を総合すると、原告と被告らが販売する大型高排水システム用の排水部材と通常排水用の排水部材に価格差があることを考慮しても、両者は市場において競合する部分もあると認めるのが相当であるから、当該事情は、その程度は限定的であるものの、推定覆滅事由として考慮されるべきものといえる。
d結論被告製品1ないし3のうち被告製品1-2、2-2及び3-2に係る構成部分が占める一定割合のほか、上記において説示した被告製品1ないし3に係る本件発明2以外の特徴、市場における競合品の存在等、本件に現れた一切の事情を考慮すると、推定が覆滅される割合は、5割とするのが相当である。
(ウ) 小括以上によれば、特許法102条2項に基づく原告の損害額(消費税相当額及び弁護士費用相当額を除く。)は、被告らが得た限界利益の額●(省略)●円から、その5割を控除した●(省略)●円であると認めるのが相当である。
イ特許法102条3項に基づく損害額被告らが、被告製品1ないし3の販売等によって得た売上額は、●(省略)●円であることにつき、当事者間に争いはない。そして、本件における売上額は、被告製品1ないし3ではなく、被告製品1-1、2-1及び3-1に限り算出されるべきものであるが、この点に関する主張立証が一切ないため、当事者双方の主張及び弁論の全趣旨を踏まえ、被告製品1-1、2-1及び3-1の売上額は、●(省略)●円であると推認し、当事者双方の主張立証を踏まえ、その実施に対して受けるべき料率において、被告製品1-2、2-2及び3-2に係る減額分を考慮するのが相当である。その上で、弁論の全趣旨のほか本件に顕れた全事情に鑑みれば、実施に対し受けるべき料率は、15%を超えるものとはいえないから、これに上記売上額を乗じた金額(●(省略)●円×15%=●(省略)●円)が、上記アによる損害額を超えるものと認めることはできない。
ウ原告の主張に対する判断原告は、被告製品1-1、2-1及び3-1を購入した需要者は、高排水システムを構成するその他の部材についても、被告らから購入するため、排水部材に対応する高排水システムの構成部材全てを販売する機会を喪失した旨主張し、民法709条に基づき、これに相当する損害の賠償を求めている。
しかしながら、被告らの侵害期間中において、原告の販売する高排水システムを構成する部材の売上げが、現実に減少したことを認めるに足りない。そして、高排水システムと通常排水用のシステムには代替性が認められる場合があること、被告らの販売する排水部材を購入した者が、必ず被告らが販売する高排水システムを構成する他の部材をも購入するものとは認められないことからすれば、仮に、原告の販売する高排水システムの構成部材の売上げが減少していることが認められたとしても、当該減少が、侵害行為に起因するものと認めることはできない。
したがって、民法709条に基づく原告の請求は、侵害行為との間の因果関係を欠くため、理由がない。
⑵ 共同不法行為に基づく損害額
ア特許法102条2項に基づく損害額(ア) 損害額の算定手法原告は、特許法102条2項に基づき、被告らが施工業者に対し、直接侵害品を構成する部材を販売したことによって得た限界利益の額と、施工業者が直接侵害品を生産したことによって得た限界利益の額の合計額が、原告の損害額として推定される旨主張する。
しかしながら、被告らは、共同不法行為においては、施工業者の生産行為を幇助したにとどまり、特許法102条2項にいう「侵害した者」に当たらないことからすると、被告らが直接侵害品を構成する部材を販売したことによって得た限界利益の額を、同項に規定する「利益」の額に含めることはできない。
したがって、施工業者が直接侵害品を生産したことによって得た限界利益の額に限り、以下検討する。
(イ) 施工業者が直接侵害品の生産によって得た利益の額a売上額当裁判所の採用した調査嘱託の結果に加え、別件事件における調査嘱託の結果を含めた関係証拠(甲122、甲126、甲128ないし130、甲169、甲176、甲177、甲180)によれば、施工業者が直接侵害品である別紙嘱託結果一覧表及び別紙原告調査物件一覧表記載の各物件の生産により得た売上額は、別紙嘱託結果一覧表の「受注金額」欄記載のとおりであり、その合計は、●(省略)●円であることが認められる(なお、本件全証拠によっても、上記金額を超えて、施工業者が上記各物件の生産によって得た売上額を認定するに足りない。)。これに対し、原告は、高排水用ドレンが侵害態様のシステムに用いられる場合、被告らが侵害期間中に販売した高排水用ドレン1個当たり、施工業者が得られる限界利益の額を算出した上、①主位的主張として、被告らが侵害期間中に販売した高排水用ドレンの個数と、高排水用ドレンが侵害態様に用いられる割合を乗じて得た数量を、上記限界利益の額に乗じて得られた金額を、②予備的主張1として、別紙嘱託結果一覧表「高排水ドレン数」欄記載の個数と、別紙原告調査物件一覧表「ドレン数」欄記載の個数を合算した数量を、上記限界利益の額に乗じて得られた金額を、施工業者が生産によって得た利益の額であるとしてそれぞれ主張する。しかしながら、施工業者は、被告システム以外の態様を含め、高排水用ドレンを様々な態様で使用することが認められることからすると、被告らが販売した高排水用ドレン1個当たりを基準として、施工業者が得た限界利益の額を算出する原告の方法は、明らかに取引の実態に沿うものとはいえず、算定方法として相当であるとはいえない。また、高排水用ドレンが侵害態様に用いられる割合は、限られたサンプルを基に算出されたものにすぎず、その数値に合理的な根拠があるとはいえない。したがって、上記にいう主位的主張、予備的主張1のいずれも採用することができない。以上によれば、施工業者が直接侵害品の生産によって得られた売上額は、●(省略)●円であると認めるのが相当である。
b限界利益率証拠(甲183、184)及び弁論の全趣旨によれば、令和7年3月に発表された中小企業実態基本調査における建設業の職別工事業(設備工事業を除く。)の売上高における売上原価の割合は、約74%であることが認められるところ、雨樋システムの施工は、上記「職別工事業」に含まれるものであり、これに対する格別の反証はない。これらの事情を踏まえると、上記施工における施工業者の限界利益率は、20%を下らないものと認めるのが相当である。
c結論以上によれば、施工業者が本件発明1及び本件発明2-7ないし2-9の直接侵害品の生産によって得た利益の額は、●(省略)●円(●(省略)●円×20%)であると認められる。
(ウ) 小括以上によれば、特許法102条2項に基づく損害額(消費税相当額及び弁護士費用相当額を除く。)は、●(省略)●円である。
イ特許法102条3項に基づく損害額上記ア記載のとおり、施工業者が直接侵害品の生産により得た売上額は、別紙嘱託結果一覧表の「受注金額」欄記載のとおりであり、その合計は、●(省略)●円であることが認められる。そして、本件に顕れた全事情に鑑みれば、その実施に対し受けるべき料率は、10%を超えるものとはいえないから、これに上記売上額を乗じた金額(●(省略)●円×10%=●(省略)●円)が、上記アによる損害額を超えるものとは認められない。
⑶ 結論以上によれば、本件特許権2の侵害及び共同不法行為により、原告の受けた損害額(消費税相当額及び弁護士費用相当額を除く。)は、1318万8501円であると認められる。
また、本件事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に鑑みると、これと相当因果関係があると認められる弁護士費用相当損害額としては、1318万8501円の約1割である131万8850円の限度で認めるのが相当である。なお、特許権侵害の損害額として認めた1318万8501円に限り、「その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの」(消費税基本通達5-2-5)として、消費税が課税されるものと認め、原告が主張する10%を乗じた131万8850円を消費税相当額の損害として認めることが相当である。
したがって、原告の被告らに対する損害賠償の額は、1582万6201円と認めるのが相当である。
第5 結論
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官中島基至
裁判官武富可南
裁判官坂本達也
出典: 令和5年(ワ)第70402号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →