📜 判決文全文
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主文
1被告は、原告に対し、1億3116万1399円及びこれに対する平成
年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の各請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は、これを20分し、その19を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
第1 請求
1請求等
⑴ 被告は、別紙対象製品目録記載の各製品(以下「各対象製品」という。)
を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し若しくは輸出し、又は、譲渡若しくは
貸渡しの申出をしてはならない。
⑵ 被告は、各対象製品を廃棄せよ。
⑶ 被告は、原告に対し、24億円及びうち21億円に対する平成30年11月1日から、うち3億円に対する令和2年2月1日から支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え。
⑷ 仮執行宣言
2答弁
⑴ 原告の各請求をいずれも棄却する。
⑵ 仮執行免脱宣言 3 第2事案の概要
本件は、原告が、被告に対し、
①被告による各対象製品の製造、譲渡、輸出及び譲渡の申出は、原告の有する
特許第4509578号の特許権(以下「本件特許権」という。)を侵害する
等と主張して、本件特許権による差止請求権(特許法100条1項)に基づき、
各対象製品の製造、譲渡等の差止めを、廃棄等請求権(同条2項)に基づき、
各対象製品の廃棄を求めるとともに、
②被告による各対象製品の製造、譲渡等により、原告は本件特許権を侵害され
損害を被り、又は、被告は法律上の原因なく原告の損失において利得したと主
張して、㋐主位的に、不法行為による損害賠償請求権(民法709条)に基づき、24億円及びうち21億円に対する不法行為より後の日である平成30年
11月1日から、うち3億円に対する同令和2年2月1日から支払済みまで平
成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払を求め、㋑予備的に、不当利得返還請求権(民法703条)に基づき、
億円及びうち17億5000万円に対する不当利得より後の日である平成年11月1日から、うち2億5000万円に対する同令和2年2月1日か
ら支払済みまで上記同様の年5分の割合による利息(民法704条)の支払を
求める事案である。
1前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証
拠は文末に括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)
⑴ 当事者
原告は、電磁波機器、通信機器、医療機器等の研究、試作、製造及び販売
等を目的とする株式会社である。
被告は、精密機械、工作機械及び各種専用機の製造修理及び販売等を目的とする株式会社である。 4 (本項につき、弁論の全趣旨)
⑵ 本件特許権
原告は、以下の本件特許権を有する。(争いがない事実)
登録番号特許第4509578号
出願日平成16年1月9日登録日平成22年5月14日
発明の名称レーザ加工方法及びレーザ加工装置
⑶ 特許請求の範囲の記載
本件特許権に係る特許(以下「本件特許」という。また、本件特許の願書
に添付した明細書及び図面を「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項8、11の記載は次のとおりである。(甲1、2)
【請求項8】第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射
し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対
象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記第1のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、
前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に
沿って移動させる移動手段と、
前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手
段と、
前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する
制御手段と、
を備え、
前記制御手段は前記集光点が前記加工対象物内部の所定の
位置に合う状態となる初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、 5 当該位置に前記レンズを保持した状態で前記第一のレーザ
光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記
レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前
記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部におい
て改質領域を形成し、
前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成され
た後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持
した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整
しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レン
ズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して改質領域を形成する、
レーザ加工装置。
【請求項11】前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された
後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持し
た状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズ
と前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させ
るように前記移動手段を制御して改質領域を形成し、
更に、前記制御手段は前記レンズを前記主面に向かう方向
に駆動させずに保持するように前記保持手段を制御すると共に、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って
相対的に移動させるように前記移動手段を制御する、請求
項8~10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
請求項8に係る発明(以下「本件発明1」という。)及び請求項11に係
る発明(「本件発明2」といい、本件発明1及び2を併せて「本件各発明」
という。)は次のとおり分説できる(以下、符号に応じて「構成要件1A」6 などという。)。
ア本件発明1
1A第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射
し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対
象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
1B前記第1のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレン
ズと、
1C前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿
って移動させる移動手段と、
1D前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、
1E前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制
御手段と、を備え、
1F前記制御手段は前記集光点が前記加工対象物内部の所定の位
置に合う状態となる初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、
1G当該位置に前記レンズを保持した状態で前記第一のレーザ光
を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レ
ンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記
移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、
1H前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された
後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持し
た状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整し
ながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させ7 るように前記移動手段を制御して改質領域を形成する、
1Iレーザ加工装置。
イ本件発明2
2A前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された
後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整し
ながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズ
と前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させ
るように前記移動手段を制御して改質領域を形成し、
2B更に、前記制御手段は前記レンズを前記主面に向かう方向に駆動させずに保持するように前記保持手段を制御すると共
に、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相
対的に移動させるように前記移動手段を制御する、
2C請求項8~10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
⑷ 事実経過アダイシングとは、半導体基板(半導体ウェハ)を切断してチップに分割
することをいう。
原告は、一定の条件でレーザ光をウェハ内部に集光してウェハ内部にお
いて加工層を形成し、その後ウェハに引っ張り応力を加え、ウェハ表面
に形成される集積回路に損傷を与えずに加工層を起点としてウェハを分割することを、ステルスダイシング( Stealth Dicing )と呼んでいた。
(甲3、弁論の全趣旨)
イ原告及び被告は、●(省略)● (甲5、6、乙1、弁論の全趣旨)
原告及び被告は、本件業務提携契約に基づき、原告が製造したSDエン
ジン(以下「原告エンジン」ということがある。)を被告に販売するなどの取引を行った。原告エンジンを用いて被告が製造、販売したSD装置に8 は、原告の許諾の下、原告の商号、「SDE」、「 Stealth Dicing
Engine inside!」との文字等が記載されている「SDEプレート」(以下
「本件プレート」という。)が貼付されていた。(甲12、弁論の全趣旨)
なお、原告は、被告のほか、株式会社ディスコ(以下「ディスコ社」と
いう。)にも原告エンジンを販売していた。(弁論の全趣旨)
ウ原告及び被告は、平成26年10月8日、打合せ(以下「10月8日打
合せ」という。)を行った。
被告は、平成27年頃から、独自に開発したSDエンジン(NS900、
以下「被告エンジンB」という。)を搭載したSD装置である別紙対象
製品目録記載1⑵Bの製品(以下「対象製品1⑵B」という。)を製造し、海外の法人に販売するようになった。
その後、原告が被告に上記の製造、販売の中止を求めたことがあったが、
被告はこれを中止しなかった。
一方、原告は、平成28年9月まで被告に原告エンジンを販売してい
たところ、被告は、これを用いてSD装置(型番:ML300Plus
Ⅲ、ML300PlusV、ML200PlusⅢ及びML200Pl
usV)を製造、販売していた。
本件業務提携契約は、●(省略)● に終了し、被告は、対象製品1⑵
Bの受注を中止した。
被告は、平成28年3月から平成30年8月まで、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載のとおり、いずれも海外の法人である三星電子株式会社
(以下「サムスン社」という。)、テキサスインスツルメント(以下
「TI社」という。)、SKハイニックス株式会社(以下「SKハイニ
ックス社」という。)、STATSチップPAC、シングネティクスに
対し、合計 ●(省略) ●台の対象製品1⑵Bを販売した。
(争いがない事実のほか、乙18~20、弁論の全趣旨) 9 エ被告は、平成29年12月14日に開催された展示会において、「ML
300EXSeries/ML200EX」と題し、「ML300E
X」、「ML300EXFH」及び「ML300EXFHWH」に
ついて「300mmウエーハに対応したレーザーダイシングマシン。適
応するアプリケーションに応じてローダ仕様を選択可能。」などと、
「ML200EX」について「200mmウエーハに対応したレーザー
ダイシングマシン」などと記載し、「ML200EX」との銘板が貼付
されたSD装置の写真を掲載したパネルを展示した。(甲10、弁論の
全趣旨)
オ被告は、被告エンジンBとは別にSDエンジン(以下「被告エンジンA」
という。)を開発し、本件業務提携契約終了後、これを搭載したSD装置
である別紙対象製品目録記載1⑴及び1⑵Aの製品(以下、順に「対象製
品1⑴」、「対象製品1⑵A」といい、対象製品1⑴、1⑵A及び1⑵B
を併せて「対象製品1」という。)の販売の申出を開始し、その後、これ
らを販売するようになった。(争いがない事実のほか、弁論の全趣旨)
被告は、平成30年3月以降、少なくとも合計●(省略)● 台の対象製
品1⑴及び1⑵Aを製造し、譲渡し、輸出し、譲渡の申出をした。
また、被告は、販売済みの対象製品1⑵Bについて、順次、搭載されて
いる被告エンジンBを被告エンジンAに交換する改造を行った。
被告は、令和3年12月をもって、対象製品1⑴及び1⑵Aの製造、販売等を終了した。
(争いがない事実のほか、乙126、131、132、弁論の全趣旨)
⑸ 対象製品1
ア対象製品1の基本的構成
対象製品1は、レーザ加工装置であり(構成要件1I)、加工用レーザ光を、加工対象物であるシリコンウェハの内部に集光点を合わせて主に10 シリコンウェハの裏面すなわち主面から照射し(例えば、NAND型フ
ラッシュメモリ又はDRAMが形成されたシリコンウェハを切断してメ
モリチップを切り出す加工を行う場合、シリコンウェハの表面にはメモ
リが形成されていることから、これとは反対側の裏面から加工用レーザ
光を入射させる。)、シリコンウェハ内部で加工用レーザ光の集光点を走査することにより、シリコンウェハの切断予定ライン(切断起点であ
るレーザ加工領域を形成するための加工用レーザ光の集光点を通過させ
ることを予定する所望のライン)に沿って、シリコンウェハの内部にレ
ーザ加工領域を形成する。
対象製品1は、筐体、ステージ(X、Y、θ軸)、搬送系、SDエンジン及び制御用ソフトウェアによって構成される。SDエンジンは、レー
ザ加工エンジンユニット、Z軸ステージ及びソフトウェア設計から成る。
対象製品1のレーザ加工エンジンユニットは、加工用レーザ光の光源、
加工用レーザ光をシリコンウェハに向けて集光する対物レンズ(構成要
件1B)、及び、加工用レーザ光を対物レンズに導く加工用レーザ光の光学系から成るレーザ照射機構と、測距用レーザ光の光源、シリコンウ
ェハの主面で反射された測距用レーザ光を検出する位置検出素子、及び、
測距用レーザ光をシリコンウェハの主面に照射し、シリコンウェハの表
面で反射された測距用レーザ光を位置検出素子の受光部に導く光学系か
ら成るオートフォーカス(AF)ユニットを含む。
ステージのうちX軸は、カッティングテーブルをX軸方向に移動するこ
とにより、その主面(加工用レーザ光の入射面)がXY平面と平行とな
るようにカッティングテーブルに支持、固定されたシリコンウェハを対
物レンズに対して移動(走査)させる、すなわち、シリコンウェハと対
物レンズとをシリコンウェハの主面に沿って相対的に移動させる(加工用レーザ光を照射しつつ上記走査をさせることにより、シリコンウェハ11 の内部で加工用レーザ光の集光点を走査させて、レーザ加工領域を形成
すなわちレーザ加工する。)(構成要件1C)。
レーザ加工エンジンユニットは、対物レンズ保持機構を備え、ピエゾア
クチュエータを駆動して、シリコンウェハの主面のうねり(反り)に合
わせて対物レンズの高さ(Z軸上の位置)を微調整することができ、したがって、対物レンズをシリコンウェハの主面に対して進退自在に保持
する(構成要件1D)。具体的には、Z軸ステージがZ軸方向に移動す
ることにより、シリコンウェハのXY平面上の所定の点(例えば、中心)
で加工用レーザ光の集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置
するように対物レンズの高さを調整(ハイト調整)する。その後、加工に当たり、対物レンズ保持機構において、対物レンズの走査中、AFユ
ニットにより測距用レーザ光の反射光に基づき対物レンズとシリコンウ
ェハの主面との距離(ないし上記の高さ調整時からの変位)を測定し、
同測定値に基づきピエゾアクチュエータを制御することによって、シリ
コンウェハの主面と対物レンズとの間の距離を一定に維持し、これにより加工用レーザ光の集光点を上記の高さ調整をした際の所定の深さに維
持する(オートフォーカス追従、以下「AF追従」という。)。
対象製品1は、制御機構を備え、ステージ及び対物レンズ保持機構の挙
動をコンピュータシステムによって制御する(構成要件1E)。
以上のとおり、対象製品1は、構成要件1Bから1E、1Iを充足する。
なお、ここで加工対象とされているシリコンウェハの厚さは、例えば7
75μm程度であり、そのうねり(反り)の程度は、概ね±3μmである。
(本項につき、争いがない事実のほか、甲13、乙29、弁論の全趣旨)
イ対象製品1⑵B
対象製品1⑵Bは、被告エンジンBを搭載した製品である。
対象製品1⑵Bは、AF追従が難しいシリコンウェハの端部(ウェハエ12 ッジ。面取り加工(ベベル加工)されシリコンウェハの端から0.5m
m程度丸みを帯びている場合と、面取り加工されていない場合とがあ
る。)から所定の距離の範囲においては、ピエゾアクチュエータを制御
し、AF追従を停止して対物レンズをシリコンウェハの所定の点で加工
用レーザ光の集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するような高さに調整された位置(前記ア)に固定する(ただし、わずかな上
下動を許容する。以下、AF追従を停止して対物レンズを固定すること
を「AF固定」という。)機能を有し、シリコンウェハの端部から所定
の距離の範囲においてAF固定の状態でレーザ加工を行った後に、AF
固定を解除して、AF追従の状態でレーザ加工を行う。すなわち、対象製品1⑵Bは、「シリコンウェハの所定の点で加工用レーザ光の集光点
がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するような高さに調整され
た位置」に、すなわち、「初期位置に」対物レンズを「保持」する(構
成要件1F、1G、1H、2A)。
また、対象製品1⑵Bは、AF追従の状態でのレーザ加工終了後、対物レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対物レ
ンズをAF追従を終了した時点又はそれより所定の距離戻った位置にお
ける高さに固定した状態で、カッティングテーブルをX軸方向に動かす。
(本項につき、争いがない事実のほか、乙54、弁論の全趣旨)
ウ対象製品1⑴及び1⑵A対象製品1⑴及び1⑵Aは、被告エンジンAを搭載した製品である。
対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、シリコンウェハの形状計測結果等
を基に算出した想定されるシリコンウェハの端部突入時のピエゾアクチ
ュエータの位置(以下「想定位置」という。)を規定し、これにより対
物レンズを保持する。また、対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、加工対象物の検出方法として、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェ13 ハである場合には、座標基準(エンコーダ基準)を採用し、あらかじめ
記憶させたシリコンウェハの中心の位置及び中心からの距離等を基にシ
リコンウェハの存在を推定し検出し、他方、加工対象物が面取り部分の
ないシリコンウェハである場合には、加工対象物の存在ないし位置を検
出する方法として照射した測距用レーザ光の反射光量によって加工対象物の端部などを検出する光量基準を採用し、シリコンウェハの現実の端
を検出する。
そして、対物レンズの走査が開始されてからシリコンウェハの端部まで
の範囲においては、ピエゾアクチュエータを想定位置に固定するよう制
御し、これにより対物レンズをAF固定する。次に、シリコンウェハの端部から所定の距離の範囲においては、想定位置の値、及び、現実のシ
リコンウェハの主面の高さと現実のピエゾアクチュエータとの距離の測
定値に一定の係数(0.8)を乗じた値(具体的には、計算式〔想定位
置の値+(現実のシリコンウェハの主面の高さの値-現実のピエゾアク
チュエータの位置の値)×0.8〕によって求められる値)に基づく、所定の上限値の範囲内の値(以下「制御指令値」という。)により、ピエ
ゾアクチュエータを制御し、その結果、シリコンウェハの端部から所定
の距離の範囲においては、対物レンズを緩やかなAF追従(以下「低追
従」という。)の状態で走査する(以下、対物レンズを低追従の状態で
走査する範囲を「低追従領域」という。)。低追従領域のうち、シリコンウェハの端部から一定の範囲においては加工用レーザ光を照射せず
(以下、レーザ加工を行わないシリコンウェハの端部から一定の範囲を
「非加工領域」という。)、この非加工領域を超えた時点で、対物レン
ズを低追従の状態で走査しながら加工用レーザ光を照射してレーザ加工
を開始する。更にその後(低追従領域を超えた時点で)、対物レンズを低追従の状態からAF追従の状態に切り替える。 14 また、対象製品1⑴及び1⑵Aは、AF追従の状態でのレーザ加工終了
後、対物レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、
対物レンズをピエゾアクチュエータが想定位置に固定されるよう制御し
た状態で保持し、カッティングテーブルをX軸方向に動かす。
もっとも、対象製品1 ⑴及び1⑵Aは、制御機構において、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)から、コンピュータのパラメータ
を調整してアプリケーションないしシステムを作成、調整することによ
り、加工対象物の存在ないし位置を検出する方法を選択したり、対物レ
ンズがシリコンウェハの外側の走査開始の待機位置(以下「走査開始待
機位置」という。)にあるときから加工用レーザ光を照射するよう設定したりすることが可能である。
被告は、低追従についての発明について特許権(特許第6481842
号、特許第6608519号)を有する。
(本項につき、争いがない事実のほか、乙60、61、64、弁論の全趣
旨)
⑹ 訴訟経過等
ア原告は、平成29年11月13日、被告に対し、原告はステルスダイシ
ングに関して日本国における150以上の特許権その他海外における多
数の特許権から成る特許ポートフォリオを有しており、被告によるSD
装置等の製造、販売等は、原告の上記特許ポートフォリオを侵害するなどとして、SD装置等の製造、販売等を中止するよう求めた。(甲9)
イ原告は、平成30年9月7日、被告によるSD装置等の製造、販売等に
関し、本件訴えを提起したほか、原告が有する特許第3935188号の
特許権及び特許第3990711号の特許権(以下、これらの特許権に係
る特許を順に、「188特許」、「711特許」という。)の侵害を理由とする訴え(
東京地方裁判所平成30年(ワ)第28929号、以下「別15 件訴訟1」という。)並びに特許第3867108号の特許権及び特許第
4601965号の特許権(以下、これらの特許権に係る特許を順に、
「108特許」、「965特許」という。)の侵害を理由とする訴え(同
平成30年(ワ)第28930号、以下「別件訴訟2」といい、別件訴訟
1及び2を併せて「各別件訴訟」という。)をそれぞれ提起した。
東京地方裁判所は、令和3年8月10日、別件訴訟1について、原告の
被告に対する188号特許及び711号特許に係る各特許権による差止請
求権及び廃棄請求権に基づく各対象製品を含む被告の製品についてその製
造、譲渡等の差止請求及び廃棄請求を認める旨の判決をした。被告は同判
決に対し控訴し、その後、原告は188号特許に係る特許権に関する訴えを取り下げ、令和4年9月5日、控訴を棄却する旨の判決がされた(知的
財産高等裁判所令和3年(ネ)第10101号)。
(本項につき、当裁判所に顕著な事実のほか、弁論の全趣旨)
ウ被告は、令和3年6月22日付けで、本件特許について特許無効審判を
請求した(無効2021-800050)が、審判請求は成り立たない旨の審決がされたことから、令和4年、同審決に対する訴えを提起した(知
的財産高等裁判所令和4年(行ケ)第10099号)。(乙76、122、
弁論の全趣旨)
2争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は次のとおりである。
① 被告が対象製品2を製造、販売等したか。
② 対象製品1⑵Bが本件各発明の技術的範囲に属するか。
③ 対象製品1⑴、1⑵A及び2が本件各発明の技術的範囲に属するか。
④ 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。
無効理由1サポート要件違反無効理由2明確性要件違反 16 無効理由3実施可能要件違反
⑤ 原告が被告に対し対象製品1⑵Bの製造等につき許諾を与えたか。
⑥ 被告が各対象製品を製造等するおそれがあるか。
⑦ 廃棄の必要があるか。
⑧ 原告の受けた損害又は損失及び額
⑨ 原告に過失があるか、また、これを考慮して損害賠償額を定めるべきか。
⑴ 争点①(被告が対象製品2を製造、販売等したか。)について
被告は、対象製品2を製造、販売等した。
(被告の主張)
対象製品2は存在しておらず、被告がこれを販売したことはない。
⑵ 争点②(対象製品1⑵Bが本件各発明の技術的範囲に属するか。)につい
て
対象製品1⑵Bは、構成要件1A、1F、1G及び1H並びに2A及び2Bをいずれも充足し、その他本件発明1の構成要件を充足するから、構成要
件2Cを充足し、本件各発明の技術的範囲に属する。
ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について
「改質領域」は、多光子吸収によって形成されるものに限定されない。
本件明細書の記載は、本件各発明の最良の実施形態に関するものである。
また、本件各発明は、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率
よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することを目
的とし、レンズの保持態様等により課題を解決するものであり、レーザ
加工により形成される改質領域が多光子吸収によるものか単光子吸収に
よるものかは発明の目的や課題解決手段とは無関係である。なお、現在の科学的知見によれば、レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせ17 て照射する(レーザ光のエネルギーを吸収させる)ことによる改質領域
の形成は、多光子吸収のみならずレーザ光の波長によっては単光子吸収
によってもされることがあるとされているが、当業者は、本件特許出願
当時、上記の改質領域の形成は多光子吸収によってされるものと理解し
ていた。したがって、本件明細書には同理解に従った記載がされているが、単光子吸収によって改質領域が形成される場合を排除する趣旨では
なく、上記場合も本件各発明の技術的範囲に含まれる。
対象製品1⑵Bは、レーザ光を加工対象物であるシリコンウェハの内部
に集光点を合わせて照射し、集光点を走査することによって、集光点及
びその上部に「改質領域を形成」する。
イレンズの保持態様(構成要件2B)について
「主面に向かう方向」及び「主面に沿って」は、主面に垂直及び水平な
方向を意味するにすぎず、レンズが加工対象物の上に存在することを要し
ない。
ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H「切断予定ラインの一端部」は、本件明細書において何ら限定されてお
らず、また、課題の解決という観点からも、対物レンズを初期位置に保
持する範囲はレーザ光のずれをもたらす加工対象物の形状変動全体を含
むのが望ましく、形状変動はシリコンウェハの面取り部分に限定されない(本件各発明はシリコンウェハのみを加工対象物として想定している
わけではない。)から、加工対象物において使用者が切断を所望、予定
するラインの一方の端部と理解すべきである。
対象製品1⑵Bは、初期位置保持領域において対物レンズを保持した状
態で加工用レーザを照射し加工対象物にレーザ加工を行うから、「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し」ている。 18 エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について
アプリケーション及びシステムの作成、調整は、パラメータの調整によ
ってされるところ、パラメータ調整が販売後にされることをもって、制
御手段が完成していないとはいえない。
したがって、対象製品1⑵Bは、「制御手段」を備える。
対象製品1⑵Bは、販売後、被告エンジンBを被告エンジンAに交換して
おり、現在、対象製品1⑵Bは存在しない。
対象製品1⑵Bは、構成要件1A、1F、1G及び1H並びに2A及び2
B、ひいては構成要件2Cを充足せず、したがって、本件各発明の技術的範囲に属しない。
ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について
「改質領域」とは、本件明細書の記載によれば、多光子吸収によって形
成されるものを意味する。
対象製品1⑵Bにおいては、多光子吸収によって加工領域が形成されることはないから、「改質領域」は形成されない。
イレンズの保持態様(構成要件2B)について
「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保持する…と共に…主面
に沿って相対的に移動させる」は、レンズが加工対象物の上にあること
を前提とする。
対象製品1⑵Bは、対物レンズがシリコンウェハ上にある間はAF追従
を行っており、対物レンズを保持していない。
ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H
「切断予定ラインの一端部」とは、シリコンウェハの面取り部分を意味するところ、面取り部分は一般に加工対象ではない。すなわち、面取り19 部分を有しないシリコンウェハは、本件各発明の課題に直面しておらず、
本件明細書にも記載はないから、本件各発明における加工対象物は面取
り部分を有するシリコンウェハに限定され、かつ「切断予定ラインの一
端部」とはシリコンウェハの面取り部分を意味すると理解すべきである。
また、本件明細書には、対物レンズの高さを初期位置に保持する制御を解除する時点については、反射光全光量基準で観測する方法しか開示さ
れていないから、同方法により観測した時点において上記制御を解除す
るものと理解すべきであり、結局「一端部」はシリコンウェハの面取り
部分を意味する。
対象製品1⑵Bは、シリコンウェハの端部においてAF固定制御を行っているが、当該部分においてレーザ加工をしておらず、シリコンウェハ
の面取り部分すなわち「切断予定ラインの一端部において改質領域を形
成し」ていない。
エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について
対象製品1⑵Bは、販売後に、客先においてアプリケーション及びシステムを作成、調整することにより、初めてAF追従に係る制御手段が完
成、実現する。そして、被告は、対象製品1⑵Bを海外の顧客にのみ販
売している。すなわち、対象製品1⑵Bの制御手段は国内では完成して
おらず、海外で初めて完成するから、対象製品1⑵Bは、国内に存在す
る限り、構成要件1F、1G、1H、2A及び2Bを充足しない。
⑶ 争点③(対象製品1⑴、1⑵A、2が本件各発明の技術的範囲に属する
対象製品1⑴、1⑵A及び2は、構成要件1A、1F、1G及び1H並び
に2A及び2Bをいずれも充足し、その他本件発明1の構成要件を充足するから、構成要件2Cを充足し、本件各発明の技術的範囲に属する。 20 ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について
「改質領域」は、多光子吸収によって形成されるものに限定されない
(前記⑵(原告の主張)ア)。
対象製品1⑴、1⑵A及び2は、レーザ光を加工対象物であるシリコン
ウェハの内部に集光点を合わせて照射し、集光点を走査することによって、集光点及びその上部に「改質領域を形成」する。
イ対物レンズの保持態様(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)に
ついて
レンズを「初期位置に」「保持」するとは、結果として得られる状態を
いうにすぎず、固定する制御をする場合に限定されない。また、「主面に向かう方向」及び「主面に沿って」は、主面に垂直及び水平な方向を
意味するにすぎず、レンズが加工対象物の上に存在することを要しない。
対象製品1⑴、1⑵A及び2は、対物レンズを初期位置に保持した状態
で切断予定ラインの一端部においてレーザ光を照射して改質領域を形成
するものであり、「初期位置に…レンズを保持」している。また、対象製品1⑴、1⑵A及び2は、加工対象物のレーザ加工終了後、対物レン
ズをAF追従が終了した時点等の高さに、「レンズを…主面に向かう方
向に駆動させずに保持」するとともに、「レンズと…加工対象物とを…
主面に沿って相対的に移動させる」。すなわち、シリコンウェハの端部
は欠けを防止するため面取りされて丸みを帯びていることから高低差が大きく、また、シリコンウェハの表面に積層部(機能素子)を構成する
際に使用した材料が主面(裏面)側に回り込んで堆積するなどしてAF
追従不可能な形状変更を来していることがあるため、シリコンウェハの
端部においてAF固定する機能なく加工を行うことは不可能であり、標
準的なAF追従開始位置はX軸座標5mm地点である。したがって、対象製品1⑴、1⑵及び2は、AF固定機能を有しているはずである。そ21 して、対象製品1⑴、1⑵A及び2は、AF低追従制御を行う際には、
所定の上限値の範囲内でピエゾアクチュエータを制御しているというの
であり、対物レンズと加工対象物との主面との間隔を目標距離に維持す
る制御を行わず(したがって、「…レンズと…主面との間隔を調整しな
がら保持するように…保持手段を制御し」(構成要件1H)ていない。)、実際にもX軸座標0から10mmの区間においては対物レンズ
の位置は変位しないよう制御されているから、同区間において初期位置
に対物レンズを保持しているというべきである。
ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H
及び2A)について「切断予定ラインの一端部」は、加工対象物において使用者が切断を所
望、予定するラインの一方の端部と理解すべきである(前記⑵(原告の
主張)イ)。また、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成
された後に」とは、対物レンズの高さを初期位置に保持する制御を解除
する時点を、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後」のどの時点とするかは特定していない。
対象製品1⑴、1⑵A及び2は、対物レンズが走査開始待機位置にある
ときから加工用レーザを照射することができ、加工対象物の端部を始点
とするあらかじめ設定された所定の距離の区間(典型的には5mm)に
おいてAF固定制御又はAF低追従制御をしてレーザ加工をすることができる。具体的には、対象製品1⑴、1⑵A及び2においては、加工対
象物の位置の検出方法として光量基準を選択し、かつ、対物レンズが走
査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射するよう設定する
ことが可能であり、これにより、面取り部分のあるシリコンウェハにつ
いて、光量基準によりシリコンウェハの端部として検出される実際のシリコンウェハの端部より内側の点まで、対物レンズを固定したまま加工22 用レーザ光を照射することができ、すなわち、シリコンウェハの一端部
においてAF固定制御をしてレーザ加工をすることができ、実際、主面
に近い深さ(少なくとも主面から約65μmの深さ)では面取り部分に
おいても改質領域の形成が可能である。なお、面取り部分のあるシリコ
ンウェハの加工において光量基準を選択することは例えば後工程請負業者の行う4分の1シリコンウェハ小片を用いた切断加工試験において実
用的であり、対象製品を購入した業者が自ら加工条件を調整、設定をす
ることは可能である。したがって、対象製品1⑴、1⑵A及び2は、
「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し」ている。
エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)についてパラメータ調整が追ってされることをもって、制御手段が完成していな
いとはいえない(前記⑵(原告の主張)ウ)。
したがって、対象製品1⑴、1⑵A及び2は、「制御手段」を備える。
対象製品1⑴及び1⑵Aは、構成要件1A、1F、1G及び1H並びに2A及び2B、ひいては構成要件2Cを充足せず、したがって、本件各発明の
技術的範囲に属しない。
ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について
「改質領域」とは、多光子吸収によって形成されるものを意味する(前
記⑵(被告の主張)ア)。
対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、多光子吸収によって領域が形成さ
れることはなく、すなわち改質領域は形成されない。
イレンズの保持態様(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)につい
て
レンズを「初期位置に」「保持」するとは、レンズを初期位置に固定することをいう。また、「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保23 持する…と共に…主面に沿って相対的に移動させる」は、レンズが加工
対象物にあることを前提とする。
対象製品1⑴ 及び1⑵Aは、シリコンウェハ端部から所定の距離の範囲
においてもAF追従を停止してAF固定することはなく、シリコンウェ
ハが存在する領域全体において対物レンズをシリコンウェハの主面に対して進退自在に保持しており、一定の領域において対物レンズを特定の
「初期位置に」「保持」するということはない。対象製品1⑴及び1⑵
Aは、シリコンウェハの端(ウェハエッジ)から所定の距離の範囲にお
いては、シリコンウェハの形状計測結果等から算定した測距用レーザ光
の集光点の高さの値と、対物レンズとシリコンウェハの主面との距離の測定値に一定の係数を乗じた値に基づいて、所定の上限値の範囲内でピ
エゾアクチュエータを制御しており、その結果、シリコンウェハの端部
から所定の距離の範囲においてはAF低追従を行う。そして、ピエゾア
クチュエータが対物レンズとシリコンウェハの主面との距離の測定値に
基づいて制御されることから明らかなように、シリコンウェハの端部から所定の距離の範囲においても、対物レンズを特定の位置に保持してお
らず、AF追従によって変位させており、変位量が小さいことから直ち
に固定しているということになるものではない。AF低追従制御におい
ては、対物レンズと主面との距離が所定の距離よりも長い場合には対物
レンズを下降させ、対物レンズと主面との距離が所定の距離よりも短い場合には対物レンズを上昇させるから、「…レンズと…主面との間隔を
調整しながら保持するように…保持手段を制御し」(構成要件1H)て
いるものであり、対物レンズを「初期位置に」「保持」していない。な
お、制御開始点付近では物理法則に従い動き出しの変位は小さくなるの
であり、制御開始点付近で対物レンズの変位量が小さくなることは技術上の制約から不可避である。また、対象製品1⑴及び1⑵Aは、対物レ24 ンズがシリコンウェハ上にある間はAF追従を行っており、対物レンズ
を保持していない。
ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H
「切断予定ラインの一端部」とは、シリコンウェハの面取り部分を意味するところ、面取り部分は一般に加工対象ではない(前記⑵(被告の主
張)イ)。
対象製品1⑴ 及び1⑵Aは、シリコンウェハの端部からAF低追従及び
AF追従制御を行っており、しかも、当該部分においてレーザ加工をし
ておらず、対物「レンズを保持した状態」でシリコンウェハの面取り部分すなわち「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し」てい
ない。対象製品1⑴ 及び1⑵Aにおいては、座標基準により加工対象物
の位置を検出するようアプリケーションを設定しており、これらにより
シリコンウェハを量産加工する際、光量基準を選択して面取り部分のあ
るシリコンウェハを加工することはなく、被告は利用者が独断でそのような設定をしている事実も認識していない。仮に、利用者が独断でその
ような設定をした場合には、そのような制御を行う製品を完成させたの
は利用者であって被告ではない。仮に、光量基準を選択し、かつ、対物
レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射するよ
う設定して、面取り部分を有するシリコンウェハを加工したとしても、
主面から遠い深さのみならず主面に近い深さでも面取り部分において改
質領域を形成することはできない。そもそも、対象製品1 ⑴及び1⑵A
においては、面取り部分を有するシリコンウェハ(厚さ775μm)に
ついて主面から約65μmという浅い部分にレーザ加工をすることはな
い。なお、被告は、対象製品1⑴ 及び1⑵Aにおいてアプリケーション設定を行う際には光量基準を用いているが、その際でも面取り部分を有25 しないシリコンウェハを用いて切断加工試験を行っている。
エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について
対象製品1⑴及び1⑵Aの制御手段は国内では完成しておらず、海外で
初めて完成するから、対象製品1⑴及び1⑵Aは、国内に存在する限り、
構成要件1F、1G、1H、2A及び2Bを充足しない。
⑷ 争点④(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められ
るか。)について
本件特許には、次のとおり無効理由があり、特許無効審判により無効にさ
れるべきものである。
ア無効理由1(サポート要件違反)
本件明細書では、改質領域の形成は多光子吸収によってされるとされ
ている一方、本件各発明は、改質領域の形成が単光子吸収によってされ
る場合も含むというのであるから、本件各発明は、本件明細書の発明の
詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
本件明細書では、加工対象物の端部にレンズを保持した状態でレーザ
光を照射する構成しか開示されていない一方、本件各発明は、加工対象
物の端部に改質領域を形成することを必須としておらず、加工対象物の
端部にレンズを保持した状態でレーザ光を照射しないもの、すなわち、
加工対象物の平面視中央部分のみに切断予定ラインを設定するもの等も含む内容となっていることから、本件各発明は、本件明細書の発明の詳
細な説明に記載したものであるとはいえない。本件明細書によれば、本
件各発明は、加工対象物の端部の形状変動による影響を排除して改質領
域を形成できるという効果を奏するものであるとされているところ、加
工対象物の端部に改質領域を形成することを前提としなければ、本件各発明の解決すべき課題を解決できると認識できない。 26
本件明細書では「切断予定ラインの一端部」は面取り部分であるとさ
れており、光量基準によってレンズを初期位置に保持した状態を解除す
べき「一端部」の終端を検知する方法しか記載されていないから、仮に
「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本件各
発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含むとすれば、本件各発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したもの
であるとはいえない。
イ無効理由2(明確性要件違反)
本件明細書には本件各発明の改質領域が多光子吸収によってされる旨記
載されている。本件各発明が単光子吸収によってされる場合も含むのであれば、本件明細書の記載内容と矛盾するものであり、本件各発明は、明確
であるとはいえない。
ウ無効理由3(実施可能要件違反)
仮に「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本
件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含むとすれば、本件明細書には、光量基準によってレンズを初期位置に保
持した状態を解除すべき「一端部」の終端を検知する方法しか記載され
ておらず、光量基準によっては任意の位置を選択して検出することはで
きないから、本件明細書は、当業者が、本件各発明の実施をすることが
できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。なお、
座標基準は当時知られていなかった。
ア無効理由1について
改質領域が多光子吸収によって形成されるか単光子吸収によって形成
されるかにかかわらず、本件明細書の記載により当業者が「加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレ27 ーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供する」という本件各
発明の課題を解決することができると認識できることは明らかである。
本件各発明は、加工対象物の端部に改質領域を形成することを必須と
しておらず、加工対象物の端部にレンズを保持した状態でレーザ光を照
射しないものも含む内容となっているが、加工対象物の端部の範囲内でレーザ照射をしない(切断予定ラインを設定しない)等という使い方は
非実用的であって通常想定されておらず、そのような極端な場合を前提
にサポート要件を議論すべきではない。また、加工対象物の端部の範囲
を超えた後でレーザ照射がされる場合であっても、本件各発明が集光点
のずれを極力少なくできることは明らかであるし、それにより加工対象物の端部の範囲を気にすることなくレーザ照射の開始位置を決定でき、
課題を解決することが可能である。
本件各発明においては、「切断予定ラインの一端部において改質領域
が形成された後に」レンズを初期位置に保持した状態が解除されるにす
ぎず、切断予定ラインの一端部の終端は検知する必要はなく、当業者が任意に決定し得るものである。本件各発明においては、加工対象物の位
置を検知する方法は何ら限定されていない。
イ無効理由2について
本件明細書の記載は、改質領域が多光子吸収のみによって形成されると
はしておらず、被告の主張は前提を欠く。
ウ無効理由3について
本件各発明においては、「切断予定ラインの一端部において改質領域が
形成された後に」レンズを初期位置に保持した状態が解除されるにすぎ
ず、切断予定ラインの一端部の終端は検知する必要はなく、当業者が任
意に決定し得るものである。本件各発明においては、加工対象物の位置を検知する方法は何ら限定されていない。 28 ⑸ 争点⑤(原告が被告に対し対象製品1⑵Bの製造等につき許諾を与えた
原告は、平成26年10月8日、被告に対し、●(省略)● 被告が開発、
製造したSDエンジンを搭載したSD装置すなわち対象製品1⑵Bを製造して販売することについて許諾を与えた(以下、被告が同日に被告が原告に対
してしたと主張する上記の内容の許諾を「本件許諾」という。)。
●(省略)● 原告が主張する合意内容は、およそ半導体製造装置の開発、
販売過程等から遊離した経済合理性等を全く無視したものとなっており不合
理である。また、本件業務提携契約は原告エンジンを搭載したSD装置に係るものであるのに対し、本件許諾は被告が製造するSDエンジンを搭載した
SD装置についてのものであって、合意の対象が異なるから、本件許諾は本
件業務提携契約の範囲外である。
仮に、本件許諾がサムスン社を顧客とするSD装置1台の製造、販売等に
関するものであったとしても、その1台の製造、販売等は、試作機及び顧客が試作機を評価した上で購入に至ったSD装置の製造、販売等を意味し、し
たがって、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号1の製造、販売については
許諾があった。一般に、試作機はそのままそれを販売の対象とする場合もあ
れば、サムスン社のように試作機は返却した上で試作機と同一の仕様の製品
を販売の対象とする場合もあり、両者を区別して前者のみに許諾を与えたものであると理解することは商慣習上あり得ない。
原告は、平成26年10月8日、被告に対し、●(省略)● その他、被告
が開発、製造したSDエンジンを搭載したSD装置すなわち対象製品1⑵B
の製造、販売を許諾したことはなく、原告が、被告が主張する本件許諾をしたことはない。 29 すなわち、被告からは ●(省略)●ステルスダイシング業界においては、
試作機は1台のみ提供するのが常識であり、また、紹介のみであれば1台提
供すれば十分であるから、平成26年10月8日にされた許諾の対象は●
(省略)● 別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号1の製造、販売については
許諾していない。
⑹ 争点⑥(被告が各対象製品を製造等するおそれがあるか。)について
被告は、今後も、対象製品1⑴、1⑵Aを製造等するおそれがあるのみな
らず、対象製品1⑵Bを現に使用している顧客から追加で発注を受けること
などにより、対象製品1⑵Bを製造等するおそれがある。
被告は、現在、各対象製品の製造等をしていない。被告は、被告エンジン
Aを独自に開発した上で対象製品1⑴、1⑵Aを製造等し、販売した対象製
品1⑵Bのエンジンも全て被告エンジンAに交換した上、さらに、その後、
対象製品1⑴、1⑵の製造等も中止したから、将来、各対象製品を製造等する可能性はない。
⑺ 争点⑦(廃棄の必要があるか。)について
本件特許権の侵害の予防のためには各対象製品の廃棄が必要である。
(被告の主張)
被告は各対象製品の製造等を終了しており、廃棄することのできる各対象
製品は存在しない。
⑻ 争点⑧(原告の受けた損害又は損失及び額)について
ア特許法102条2項の算定による損害額(主位的請求のうち選択的主張
①) 30 原告は、SD装置を販売していないが、SD装置を販売する業者に対し、
SD装置の部品である原告エンジンを販売し、その保守管理をすることに
より利益を得ているから、被告による各対象製品の販売がなければ、被告
と唯一の競争関係にあるディスコ社がSD装置を販売することができ、し
たがって、原告はディスコ社に対し原告エンジンを販売することができたから、原告はこれにより利益を受けることができた。
すなわち、被告とディスコ社は、海外及び国内において、ほぼ独占的に
SD装置を販売しているから、被告による各対象製品の製造、販売により、
ディスコ社の製造に係るSD装置の販売数量が減少し、その結果、原告の
ディスコ社に対する原告エンジンの販売数量が減少し、原告エンジンの販売に係る利益、販売後に必要となるLD(レーザダイオード)モジュール
の交換販売に係る利益、包括許諾により付加的に受領していた実施料相当
額の利益を得られなかった。また、より端的には、原告は、被告に対し原
告エンジンを販売していたところ、被告による被告エンジンA又はBを搭
載した各対象製品の販売により、原告の被告に対する原告エンジンの販売数量が減少し、原告エンジンの販売に係る利益を得られなかった。
原告は被告による合計●(省略)● 台の各対象製品の製造販売により損
害を受け、被告は各対象製品の製造販売により利益を受けたところ、同利
益の額が原告が受けた損害の額と推定される(特許法102条2項)。
各対象製品 ●(省略)● 台の製造、販売についての損害について各対象製品 ●(省略)● 台の限界利益の額は ●(省略)● 円であり、
このうちSDエンジンの貢献の割合は75%であるというべきであるか
ら、原告の損害額は ●(省略)● 円であると推定される。原告が本件訴
訟追行に要した弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法行為と
相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。したがって、
損害額の合計は ●(省略)● となる。 31 原告は、このうち24億円、及び、うち平成30年10月までの製造、
販売についての損害21億円に対する同年11月1日から支払済みまで、
うち同月以降の製造、販売についての損害3億円について令和2年2月
1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害についてa対象製品1⑵Bの売上額について
被告は、平成28年3月から平成30年8月まで、別紙対象製品1
⑵B売上一覧記載のとおり、合計 ●(省略)● 台の対象製品1⑵Bを
製造販売した。このうちRMモジュールと共に販売されたものについ
てRMモジュールを除いた本体金額は、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号 ●(省略)● 円とみるべきである。そうすると、 ●(省略)
●台分の売上額は合計 ●(省略)● 円となる。
b控除すべき経費等について
対象製品1⑵Bの限界利益率は、 ●(省略)● %であり、別紙対
象製品1⑵B売上一覧記載の ●(省略)● 台の限界利益の合計は ●(省略)● 円である。
c推定覆滅事由について
原告は、SD装置ではなくSDエンジンである原告エンジンを販売
しており、被告とは業態が異なるが、SDエンジンがSD装置の市場
価値を決定づけていることからすれば、SD装置の販売利益のうちSDエンジンの貢献の割合が75%であるというべきである。すなわち、
現在、量産されているシリコンウェハの切断装置はSD装置とブレー
ド装置の2種類のみであり、SD装置は、ブレード装置にない機能を
備えており、その販売価格もブレード装置の販売価格の数倍である。
このようなSD装置の価値はSDエンジンの価値そのものによる。
d小括 ●(省略)● 円 32 以上から、原告の損害額は標記額と推定される。
●(省略)● ×0.75=●(省略)●
e弁護士費用 ●(省略)● 円
原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち標記額は、被告の不
法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。
f合計 ●(省略)● 円
イ特許法102条1項の算定による損害額(主位的請求のうち選択的主張
②)
原告は、SD装置を販売していないが、SD装置を販売する業者に対し、
SD装置の部品である原告エンジンを販売し、その保守管理をすることにより利益を得ているから、被告による各対象製品の販売がなければ、
被告と唯一の競争関係にあるディスコ社がSD装置を販売することがで
き、したがって、原告はディスコ社に対し原告エンジンを販売すること
ができたから、原告はこれにより利益を受けることができた。
すなわち、被告とディスコ社は、海外及び国内において、ほぼ独占的にSD装置を販売しており、また、SD装置に搭載するSDエンジンは原
告のみが販売しているから、被告による対象製品の製造販売により、デ
ィスコ社が製造するSD装置の販売数量が減少し、その結果、原告のデ
ィスコ社に対する原告エンジンの販売数量が減少するのであって、SD
エンジンである原告エンジンの市場とSD装置である各対象製品の市場は競合する。
そして、原告は、被告による各対象製品の製造販売がなければ、原告エ
ンジン一式(SDエンジン本体、AFユニット及び対物レンズ)及び定
期メンテナンスに伴う交換部品(LDモジュール)を販売することがで
きたから、これらの単位数量当たりの利益の額に、被告が販売した各対象製品及び交換部品の数量を乗じて得た額が原告が受けた損害の額と推33 定される。
各対象製品 ●(省略)● 台の製造、販売についての損害について
被告による各対象製品 ●(省略)● 台の販売により原告が受けた損害
の額は16億3858万6218円であり、原告が本件訴訟追行に要し
た弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。したがって、損害額の合計
は18億6283万6218円となる。
のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害について
a別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号●(省略)● について
被告エンジンBに相当する原告が製造する原告エンジンは型番800DSであり、同一式の販売価格は ●(省略)● 円(SDエンジン本
体●(省略)● 円、AFユニット ●(省略)● 円、対物レンズ ●(省
略)●円の合計)であり、原価は●(省略)● 円(SDエンジン本体
●(省略)● 円、AFユニット ●(省略)● 円、対物レンズ ●(省略)
●円の合計)であるから、原告エンジン一式の単位数量当たりの利益の額は●(省略)● 円である。被告は、標記の●(省略)● 台を販売
した。
また、LDモジュールは ●(省略)● 交換する必要があり、SD装
置の使用期間は ●(省略)● であるから、原告は、SD装置1台当た
り●(省略)● 台のLDモジュールを販売することができた。原告エンジン型番800DSに対応するLDモジュールは1台当たり ●(省
略)●円であり、原価は●(省略)● 円であるから、単位数量当たり
の利益の額は ●(省略)● 円である。
以上から、被告による標記製品の販売により、原告が受けた損害額
は●(省略)● 円である。
●(省略)● 34 b別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号 ●(省略)● について
標記製品については、原告エンジン型番1000DSを前提に、同
一式の販売価格は ●(省略)● 円(SDエンジン本体●(省略)● 円、
AFユニット ●(省略)● 円、AFコントローラ ●(省略)● 円、A
F増設ユニット ●(省略)● 円、治具●(省略)● 円の合計)であり、
原価は●(省略)● 円(SDエンジン本体●(省略)● 円、AFユニ
ット●(省略)● 円、AFコントローラ ●(省略)● 円、AF増設ユ
ニット●(省略)● 円、治具●(省略)● 円の合計)であるから、原
告エンジン一式の単位数量当たりの利益の額は ●(省略)● 円である。
被告は、標記の●(省略)● 台を販売した。
また、LDモジュールは ●(省略)● 交換する必要があり、SD装
置の使用期間は ●(省略)● であるから、原告は、SD装置1台当た
り●(省略)● 台のLDモジュールを販売することができた。原告エ
ンジン型番1000DSに対応するLDモジュールは1台当たり ●
(省略)● 円であり、原価は●(省略)● 円であるから、単位数量当たりの利益の額は ●(省略)● 円である。
以上から、被告による標記製品の販売により、原告が受けた損害額
は●(省略)● 円である。
c小括 ●(省略)● 円以上から、原告の損害額は標記額となる。
d弁護士費用 1億2187万5000円
e合計 10億0157万6530円
ウ特許法102条3項の算定による損害額(主位的請求のうち選択的主張
③)
各対象製品 ●(省略)● 台の製造、販売についての損害について 35 各対象製品 ●(省略)● 台の売上額は ●(省略)● 円であり、本件特
許の実施料相当額はこの35%であるというべきであるから、原告の損
害額は●(省略)● 円となる。原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用
のうち2億2425万円は被告の不法行為と相当因果関係のある損害と
して被告が負担すべきである。したがって、損害額の合計は ●(省略)
●円となる。
のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害について
a実施料相当額 ●(省略)● 円
原告は、原告エンジン一式の製造についてはこれに関して原告が有
する一連の特許の使用許諾を一切せず、原告エンジンを購入する者に対してSD装置の製造について原告の有する特許の実施許諾をして利
益を得ていたから、原告が合意し得る本件特許の実施料相当額は、原
告エンジン一式及びLDモジュールの販売についての原告の利益額と
ライセンス料の合計であり、SD装置の販売価格の35%である。な
お、原告が訴えを提起しているのは、一連の特許のうちの本件特許を含む一部の特許に関してであり、訴訟が係属していない特許を考慮し
て実施料相当額を減額することはあり得ない。
被告は対象製品1⑵Bを●(省略)● 台販売し、このうちRMモジ
ュールを除いた際の本体金額は、別紙対象製品1⑵ B売上一覧記載番
号●(省略)● 円となる。
したがって、原告がこれに対し受けるべき金銭の額に相当する額は、
標記額である。
●(省略)● ×35%=●(省略)●
b弁護士費用 ●(省略)● 円
c合計 ●(省略)● 円エ民法709条における損害額(特許法102条の適用を主張しないもの。36 主位的請求のうち選択的主張④)
被告とディスコ社は、海外及び国内において、ほぼ独占的にSD装置を
販売しており、また、SD装置に搭載するSDエンジンは原告のみが販
売しているから、被告による対象製品の製造販売により、ディスコ社が
製造するSD装置の販売数量が減少し、その結果、原告のディスコ社に対する原告エンジンの販売数量が減少するのであって、SDエンジンで
ある原告エンジンの市場とSD装置である各対象製品の市場は競合し、
原告は、被告による各対象製品の製造販売がなければ、原告エンジン一
式(SDエンジン、AFユニット及び対物レンズ)及び定期メンテナン
スに伴う交換部品(LDモジュール)を販売することができ、SD装置の製造に対して関連特許の実施料(SD装置の販売価格の ●(省略)●
%相当額)を得られた。
各対象製品 ●(省略)● 台の製造、販売についての損害について
原告の逸失利益は、特許法102条1項により算定される損害額16
億3858万6218円(前記イ
)及び実施料相当額1億4100万円(●(省略)● )の合計17億7958万6218円である。原告が
本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法
行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。したが
って、損害額の合計は20億0383万6218円となる。
のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害についてa逸失利益 9億5470万1530円
原告の逸失利益は、8億7970万1530円(前記イc)に、関
連特許の実施料相当額7500万円を加えた標記額である。
b弁護士費用 1億2187万5000円
c合計 10億7657万6530円オ不当利得(予備的請求) 37 前記ウのとおり、被告は、本件特許の実施料相当額を法律上の原因なく
不当に利得し、原告はこれによって損失を被った。
各対象製品 ●(省略)● 台の製造、販売に係る損失の額は16億382
9万0800円であり(前記ウ
)、このうち対象製品1⑵Bの製造、
販売についての損失の額は9億1281万3219円(同イa)である。
ア特許法102条2項の算定による損害額について
被告による各対象製品の販売等がなければ、原告が利益を得られたとは
いえない。
すなわち、特許法102条2項が適用されるのは、同項に基づく推定を正当化できる場合、具体的には、特許権者等が少なくとも侵害品と代替
性がある競合品を販売している場合に限られる。同項の推定の基礎には、
侵害者が侵害品を販売して利益を得ていなければ特許権者は自己の製品
を販売してこれと同額の利益を得られたはずであるという一応の経験則
であるから、同項により推定される逸失利益は、侵害品と代替性があり市場で競合する製品の売上減少による逸失利益に限定される。原告は、
SDエンジンである原告エンジンを製造、販売するにすぎず、SD装置
の製造、販売は行っておらず、原告エンジンはSD装置の代替品として
用いることはできないのであるから、原告エンジンは各対象製品の代替
品ではなく、原告エンジンと各対象製品は市場において競合しないから、
各対象製品の売上額は同項による推定の基礎とはならない。
また、被告とディスコ社のSD装置の販売先は海外の者が大半であり、
海外には競合となるSD装置の製造販売事業者が存在するし、サムスン
社は複数の業者からSD装置を購入する体制を採用しているから、被告
によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン社がディスコ社からSD装置を購入し、翻って、原告がディスコ社に対し原告エンジンを販売38 できたとはいえない。さらに、被告によるSD装置の製造販売がなけれ
ば、TI社が被告のSD装置の代わりにディスコ社のSD装置を購入し
ていたともいえない。
仮に、本件において特許法102条2項が適用されるとしても、対象製
品1⑵Bの製造、販売により原告が受けた損害額は次のとおり算定され限界利益について
被告による対象製品1⑵Bの販売等がなければ原告が得られた利益は、
対象製品1⑵Bのうち被告エンジンBについての限界利益のみであるか
ら、これを原告が受けた損害額の算定の基礎とすべきである。具体的には、対象製品1⑵Bの販売価格が ●(省略)● 円であり、被告が原告か
ら原告エンジンを ●(省略)● 円で購入していたことを参考にして、対
象製品1⑵Bの限界利益の ●(省略)● %が被告エンジンBによるもの
と考えるべきである。
そして、別紙対象製品1⑵ B売上一覧記載番号 ●(省略)● の限界利益は●(省略)● 円であるから、被告エンジンBについての限界利益に
相当する額は、 ●(省略)● 円となる。
推定覆滅事由について
次の各事情を考慮すれば、被告エンジンBの限界利益に相当する額を算定の基礎とする場合にはその89%、対象製品1⑵Bの限界利益の額
を算定の基礎とする場合にはその97%について、少なくとも特許法1
02条2項の推定が覆滅されるというべきである。
まず、対象製品1⑵BはSD装置であるのに対し原告はSDエンジン
である原告エンジンを製造販売するにすぎず、その市場は同一ではないから、仮に、対象製品1⑵Bの販売による限界利益全額を原告が受けた39 損害額の基礎とする場合には、その●(省略)● %について推定が覆滅
される。なお、量産されているシリコンウェハの切断装置には、SD装
置、ブレード装置のほか、UVレーザを使用した装置も存在する。そも
そも、SD装置の販売価格をブレード装置の販売価格と比較することに
は何らの意味もない。
また、海外においては、複数の業者がSD装置を製造、販売しており、
半導体製造業者は複数の業者からSD装置を購入する体制を採用してい
るから、市場において競合品が存在している。
被告は、従来からの顧客に対し、築き上げてきた良好な関係や積極的
な営業活動を活かして、対象製品1⑵Bを販売するに至ったのであり、
このような被告の既存の顧客に対して、ディスコ社が原告エンジンを搭
載した製品を販売できたとは限らない。
対象製品1⑵Bには、シリコンウェハの透過率がほどよい、亀裂を生
むための力を内部に集約しやすい、デバイスへのダメージが少ない、加
工スピードを調整できるなど、ディスコ社の製品にはない特徴があり、
このような特徴は、被告が営業活動において強調してきた結果、顧客の
高い評価を受け、対象製品1⑵Bの販売につながった。したがって、デ
ィスコ社が対象製品1⑵Bの代わりに原告エンジンを搭載した製品を販
売できたとは限らない。
さらに、対象製品1⑵Bの販売等について、本件のほか、複数の特許権の侵害を理由とする各別件訴訟が係属しているところ、対象製品1⑵
Bが本件各発明以外の技術の特徴を備えていることは、推定覆滅事情と
して考慮されるべきである。
小括 ●(省略)● 円
以上を前提にすると、102条2項の算定による原告が受けた損害額は、せいぜい標記額である。 40 ●(省略)● ×11%≒●(省略)●
イ特許法102条1項の算定による損害額について
被告による各対象製品の販売等がなければ、原告が原告エンジンを販売することができたとはいえない。
すなわち、特許法102条1項は、特許権者が特許発明の実施品を市場
で独占的に販売することができる地位にあることから、侵害品の販売等
がなければ、これに代替する特許発明の実施品は特許権者のみが販売す
ることができたはずであるという理解を前提にした規定であり、したがって、同項1号にいう「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売す
ることができた物」とは、侵害行為がなければ販売することができたと
いえる程度に侵害品との代替性が認められる物でなければならない。そ
して、原告エンジンは各対象製品の代替品であることはできず、原告エ
ンジンと各対象製品は市場において競合しないから、各対象製品の販売等について同項を適用することはできない。
また、被告によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン社がディス
コ社からSD装置を購入し、翻って、原告がディスコ社に対し原告エンジ
ンを販売できたとはいえないし、被告によるSD装置の製造販売がなけれ
ば、TI社が被告のSD装置の代わりにディスコ社のSD装置を購入していたともいえない。
仮に、本件において特許法102条1項が適用されるとしても、対象製
品1⑵Bの製造、販売により原告が受けた損害額は次のとおり算定され
るべきである。
原告の利益について原告エンジンの販売による利益は立証されているとはいえない。被告41 は、原告から原告エンジンを ●(省略)● 円で購入していた。また、L
Dモジュールは、侵害品ではない上、交換は顧客の希望によるものであ
るから、その販売による利益は原告が受けた損害の算定の基礎に含める
べきではないし、その立証も不十分である。
原告のディスコ社に対する原告エンジンの販売台数は多く割引がされていると考えられるから、原告エンジンの販売価格は ●(省略)● 円で
あり、その原価は被告のレーザエンジンと同程度の●(省略)● 円であ
ると考えられるから、原告エンジンの限界利益は1台当たり ●(省略)
●円である。
●(省略)●実施相応数量について
被告が対象製品1⑵Bを販売した時期に、ディスコ社が被告の販売数
量と同数のSD装置を製造販売する実施の能力があったことは何ら立証
されていない。
原告が販売することができないとする事情等原告がディスコ社に販売した原告エンジンが本件各発明の実施品であ
るSD装置に搭載されていない場合には、本件各発明は原告エンジンの
売上げに貢献していないこと、対象製品1⑵Bの販売等について、本件
のほか、複数の特許権の侵害を理由とする不法行為による損害賠償請求
訴訟が2件係属しているところ、対象製品1⑵Bが本件各発明以外の技術に係る特徴を備えていることから、原告エンジンの販売による利益の
うち80%は、対象製品1⑵Bの販売等により原告が受けた損害の額と
することはできない。
また、市場の非同一性、競合品の存在、被告の営業努力、対象製品1
⑵Bの性能、本件各発明以外の技術に係る特徴など、原告が販売することができないとする事情があり、その数量は、対象製品1⑵Bの販売数42 量の約89%である●(省略)● 台を下らない。
小括 ●(省略)● 円
以上を前提にすると、102条1項の算定による原告が受けた損害額
は、せいぜい標記額である。
●(省略)● ×20%×●(省略)● -●(省略)● ×20%×●(省略)
●=●(省略)●
ウ特許法102条3項の算定による損害額について
対象製品1⑵Bの製造販売により原告が受けた損害額は次のとおり算定されるべきである。
実施料相当額について ●(省略)● 円
原告が本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金
銭は、対象製品1⑵Bの販売価格の ●(省略)● %である。
すなわち、まず、原告エンジン製造販売による原告の利益、LDモジュールの販売による利益は、実施料相当額の基礎とはならない。原告と
被告は、本件業務提携契約において、ステルスダイシングに関して原告
が有する ●(省略)● 件の特許権に係る各特許発明の実施料として、被
告が原告に対し被告製造に係るSD装置の販売価格の ●(省略)● %相
当額のロイヤリティを支払うことを合意し、その後、ロイヤリティの額はSD装置の販売価格の ●(省略)● %相当額に変更された。しかも、
同実施料は被告が製造するSD装置に本件プレートを貼付することの対
価でもあった。したがって、本件各発明の実施料に相当する額は、被告
が製造するSD装置の販売価格に、原告と被告が合意していた実施料率
●(省略)● %を特許権の数で除した前記割合を乗じた額を超えることはない。そうでなければ、特に、別件訴訟2の対象である965特許に43 係る特許発明と本件各発明はその構成要件が酷似しており、また、本件
各発明は各別件訴訟の対象である188特許及び108特許に係るシリ
コンウェハの内部に溶融処理領域を形成して割断するという内容の各特
許発明に付随するものにすぎないことから、被告は過大な損害賠償責任
を負うことになる。
このほか、実施料に相当する額を定める上では、次のような各事情が
考慮されるべきである。
SD装置の中心的特徴はレーザにより内部に切断の起点を形成すると
いう公知技術にある上、本件各発明は、被告が特許権を有する低追従と
いう技術に代替されるものであり、かつ、対象製品1⑵Bにおいて実際には使用されていなかったから、その価値は極めて低い。
被告は、昭和44年に日本で初めてダイシングマシンを、平成11年
に世界で初めてツインスピンドル方式のフルオートウェハダイシングマ
シンを開発したほか、プロービングマシンについて50%強という世界
一の占有率を誇るなど、半導体製造装置を幅広く製造し、原告との共同開発を開始する以前の段階で世界におけるダイシングマシンの製造につ
き占有率約30%を獲得しており、そのような中で、従来からの顧客に
対し、築き上げてきた良好な関係や積極的な営業活動を活かして、SD
装置を販売するに至った。また、対象製品1 ⑵Bは、シリコンウェハの
透過率がほどよい、亀裂を生むための力を内部に集約しやすい、デバイスへのダメージが少ない、加工スピードを調整できるなど、原告エンジ
ンより高性能な被告エンジンBを搭載しているほか、被告がレーザダイ
シング装置に関して有する ●(省略)● 件の特許権の一部に係る発明が
実施されている。
また、本件各発明は原告と被告との共同開発の中でされたものであり、
本件特許は共同出願されるべきものであった。さらに、10月8日打合44 せの際の原告の代表取締役副社長の言動は、被告をして対象製品1⑵B
の販売等について許諾を受けたと誤信させるものであったから、被告に
よる対象製品1⑵Bの販売等は原告の過失により招来されたものである。
そうすると、102条3項の算定による原告が受けるべき金銭の額に
相当する額は、標記額を超えることはない。
エ民法709条における損害額(特許法102条の適用を主張しないもの)
について被告によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン社がディスコ社か
らSD装置を購入し、翻って、原告がディスコ社に対し原告エンジンを販
売できたとはいえない。また、LDモジュールは、侵害品ではない上、交
換は顧客の希望によるものであり、被告によるSD装置の製造販売がなけ
れば、原告がLDモジュールを販売することができ、利益を得られたとはいえない。さらに、SD装置の製造についての関連特許の実施料は、原告
と許諾契約を締結した者から取得できるにすぎず、原告が被告によるSD
装置の製造販売により実施料相当額の損害を受けたとはいえない。
オ不当利得について
否認する。
⑼ 争点⑨(原告に過失があるか、また、これを考慮して損害賠償額を定める
べきか。)について
原告の代表取締役副社長は、平成26年10月8日、被告との間で、原告
が被告に対しSDエンジンの開発を了承し、被告が原告に対しロイヤリティを支払う旨の合意をしたため、被告はこの合意の存在を信じて対象製品1⑵45 Bの製造販売を行ったのであり、このような経緯に照らせば、被告が対象製
品1⑵Bの製造販売を行うに至ったことには原告の過失がある。したがって、
原告に過失があったことを考慮して損害賠償額を定めるべきである。
原告の代表取締役副社長が、平成26年10月8日、被告との間で、原告が被告に対しSDエンジンの開発を了承したことはない。
第3 当裁判所の判断
1本件各発明について
⑴ 本件明細書には、次のとおりの記載があり、また、別紙本件発明図面のと
おりの図面がある。(甲2)
【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、レーザ光を照射
することで加工対象物を加工するためのレーザ加工方法及びレーザ加工装
置に関する。
【背景技術】【0002】従来のレーザ加工技術には、加工対象物を加工す
るためのレーザ光を集光する集光レンズに対し、加工対象物の主面高さを測定する測定手段(接触式変位計や超音波距離計等)を所定の間隔をもっ
て並設させたものがある(例えば、下記特許文献1 …参照。)。このよう
なレーザ加工技術では、加工対象物の主面に沿ってレーザ光でスキャンす
る際に、測定手段により加工対象物の主面高さを測定し、その測定点が集
光レンズの直下に到達したときに、その主面高さの測定値に基づいて集光レンズと加工対象物の主面との距離が一定となるように集光レンズをその
光軸方向に駆動する。
【0003】また、主面が凸凹している加工対象物を加工する技術としては、
加工準備として、加工を施す部分全ての平面度を平面度測定手段(投光器
と反射光受光器とを有する平面度測定器)によって測定した後、測定した平面度に基づいて加工対象物を加工するものがある(例えば、下記特許文46 献2参照。)。
【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、
上記特許文献1に記載のレーザ加工技術においては、次のような解決すべ
き課題がある。すなわち、加工対象物の外側の位置からレーザ光の照射を
開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の
内側へと測定を行っていくことになる。そして、この測定によって得られ
た主面高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端
部においてレーザ光の集光点がずれる場合がある。
【0005】また、上記特許文献2に記載の技術を用いた場合には、加工対象物の主面の平面度を正確に把握できるのものの、加工準備と実際の加工
とで同じ部位を2度スキャンしなければならないため、時間がかかり加工
効率が低下する。
【0006】そこで本発明では、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光
点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】【0007】本発明者らは上記課題を解決す
るために種々の検討を行った。まず、加工用の第1のレーザ光と、加工対
象物の主面の変位を測定するための第2のレーザ光とを同一の軸線上で加
工対象物に向けて照射する加工方法について検討した。この検討内容について図10(A)~図10(C)を参照しながら説明する。
【0008】図10(A)では、ダイシングフィルム802に固定されてい
るシリコンウェハ800を、レーザユニット804からレーザ光を照射し
て加工する場合であって、加工準備段階を示している。レーザユニット8
04は、レーザ光をシリコンウェハ800に向けて集光するための集光レンズ804aと、集光レンズ804aを保持するためのレンズホルダ8047 4bと、レンズホルダ804bをシリコンウェハ800に対して進退自在
に保持するピエゾアクチュエータ804cと、を含む。レーザユニット8
04を含むレーザ加工装置にはこの他、レーザ光源といった部位があるが
それらの記載は省略する。図10(A)の状態で、加工用の第1のレーザ
光806及びシリコンウェハ800の主面800bの変位を測定するための第2のレーザ光808の照射を開始し、矢印Aの方向にシリコンウェハ
800が移動するようにシリコンウェハ800を載置しているステージ
(図示しない)を移動させる。シリコンウェハ800に第1のレーザ光8
06で加工しようとしているのは切断予定ライン800aに相当する位置
である。
【0009】シリコンウェハ800が図10(A)の矢印Aの方向に移動す
ると、図10(B)に示すように第1のレーザ光806及び第2のレーザ
光808の光軸がシリコンウェハ800と交差する位置になる。ピエゾア
クチュエータ804cは、第2のレーザ光808の反射光から検出される
非点収差信号が所定の値になるようにレンズホルダ804bをシリコンウェハ800に対して進退させる。従って、図10(B)の状態からは、ピ
エゾアクチュエータ804cが縮んでレンズホルダ804b及び集光レン
ズ804aは上昇する。しかしながら、シリコンウェハ800は図
(A)の矢印Aの方向に移動し続けているので、レンズホルダ804b及
び集光レンズ804aが所定の位置に上昇し、切断予定ライン800aにおいて第1のレーザ光806の集光点が合うまでにはタイムラグが発生す
る。また、非点収差信号も大きく振られることになって第1のレーザ光8
06の集光点がずれることにもなる。
【0010】従って、図10(C)に示すように、切断予定ライン800a
において第1のレーザ光806の焦点が合って安定状態になるまでの区間Bでは、切断予定ライン800aではない部分がレーザ加工されることに48 なる。例えば、シリコンウェハ800の厚みが100 μmであって、
mSの時間遅れが発生するものとすれば、加工速度が100mm/Sの
場合には区間Bの長さは理論上1.5mmとなる。
【0011】また、図10(A)~図10(C)では理想的に平面度の高い
シリコンウェハ800について考えたが、例えば端部が反りあがっている場合も考えられる。端部が反りあがっているシリコンウェハの例について
図11(A)~図11(C)を参照しながら説明する。
【0012】図11(A)では、ダイシングフィルム802に固定されてい
るシリコンウェハ810を、レーザユニット804からレーザ光を照射し
て加工する場合であって、加工準備段階を示している。レーザユニット804は図10(A)~図10(C)を参照しながら説明したものと同様で
ある。シリコンウェハ810は、その端部が反りあがっている。シリコン
ウェハ810の切断予定ライン810aは主面810bから等距離に位置
するように設定されている。
【0013】シリコンウェハ810が図11(A)の矢印Aの方向に移動すると、図11(B)に示すように第1のレーザ光806及び第2のレーザ
光808の光軸がシリコンウェハ810と交差する位置になる。ピエゾア
クチュエータ804cは、第2のレーザ光808の反射光から検出される
非点収差信号が所定の値になるようにレンズホルダ804bをシリコンウ
ェハ810に対して進退させる。従って、図11(B)の状態からは、ピエゾアクチュエータ804cが縮んでレンズホルダ804b及び集光レン
ズ804aは上昇する。しかしながら、シリコンウェハ810は図11
(A)の矢印Aの方向に移動し続けているので、レンズホルダ804b及
び集光レンズ804aが所定の位置に上昇し、切断予定ライン810aに
おいて第1のレーザ光806の集光点が合うまでにはタイムラグが発生する。また、シリコンウェハ810の端部が反りあがっているために、レン49 ズホルダ804b及び集光レンズ804aが所定の位置まで上昇する際に
は、図11(B)の点線Cの位置から主面810bの実際の位置に対する
ギャップが反映されてオーバーシュートを起こすことになる。
【0014】従って、図11(C)に示すように、切断予定ライン810a
において第1のレーザ光806の集光点が合って安定状態になるまでの区間Dでは、切断予定ライン800aではない部分がレーザ加工されること
になる。この区間Dの長さはオーバーシュートの分だけ図10(C)にお
ける区間Bの長さよりも長くなる傾向にある。そこで本発明者らは、加工
対象物の端部における処理に着目した。本発明はこれらの知見に基づいて
なされたものである。
【0023】本発明のレーザ加工装置は、第一のレーザ光を加工対象物の内
部に集光点を合わせて照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工
対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、第1のレー
ザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、加工対象物とレンズと
を加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、レンズを主面に対して進退自在に保持する保持手段と、移動手段及び保持手段それぞれの挙動
を制御する制御手段と、を備え、制御手段は集光点が加工対象物内部の所
定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持するように保持手段を
制御し、当該位置にレンズを保持した状態で第一のレーザ光を照射しなが
ら、制御手段は加工対象物とレンズとを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して切断予定ラインの一端部において改質領域を形
成し、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、制御
手段はレンズを初期位置に保持した状態を解除してレンズと主面との間隔
を調整しながら保持するように保持手段を制御し、レンズと加工対象物と
を主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して改質領域を形成する。 50 【0024】本発明のレーザ加工装置によれば、初期位置にレンズを保持し
た状態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成するので、加工
対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して改質領域を形成するこ
とができる。そして、切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し
た後にレンズを保持した状態を解除し、レンズの位置を調整しながら残部において改質領域を形成するので、加工対象物内部の所定の位置に改質領
域を形成することができる。
【0027】また、本発明のレーザ加工装置では、切断予定ラインの一端部
において改質領域が形成された後に、制御手段はレンズを初期位置に保持
した状態を解除してレンズと主面との間隔を調整しながら保持するように保持手段を制御し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動さ
せるように移動手段を制御して改質領域を形成し、更に、制御手段はレン
ズを主面に向かう方向に駆動させずに保持するように保持手段を制御する
と共に、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように
移動手段を制御することも好ましい。改質領域を形成した後にレンズを主面に向かう方向に駆動しないように保持するので、例えば、次の切断予定
ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能となる。
【発明の効果】【0031】本発明のレーザ加工方法及びレーザ加工装置に
よれば、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なく
しつつ効率よくレーザ加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】【0032】本発明の知見は、例示の
みのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮すること
によって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しな
がら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同
一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0033】本実施形態のレーザ加工装置について図1を参照しながら説明51 する。図1に示すように、レーザ加工装置1は、ステージ2(移動手段)
上に載置された平板状の加工対象物Sの内部に集光点Pを合わせて加工用
レーザ光L1(第1のレーザ光)を照射し、加工対象物Sの内部に多光子
吸収による改質領域Rを形成する装置である。ステージ2は、上下方向
及び左右方向への移動並びに回転移動が可能なものであり、このステージ2の上方には、主にレーザヘッドユニット3、光学系本体部4及び対物レ
ンズユニット5からなるレーザ出射装置6が配置されている。また、レー
ザ加工装置1は制御装置7(制御手段)を備えており、制御装置7はステ
ージ2及びレーザ出射装置6に対してそれぞれの挙動(ステージ2の移動、
レーザ出射装置6のレーザ光の出射等)を制御するための制御信号を出力する。
【0039】また、対物レンズユニット5は、光学系本体部4の下端部に着
脱自在に取り付けられている。 …この対物レンズユニット5の筐体41の
下端には、ピエゾ素子を用いたアクチュエータ43(保持手段)を介在さ
せて、軸線βに光軸が一致した状態で加工用対物レンズ42が装着されている。…
【0040】更に、対物レンズユニット5の筐体41内には、加工対象物S
の表面S1から所定の深さに加工用レーザ光L1の集光点Pを位置させる
べく、測距用レーザ光L2(第2のレーザ光)を出射するレーザダイオー
ド44と受光部45とが配置されている。測距用レーザ光L2はレーザダイオード44から出射され、ミラー46、ハーフミラー47…、…ダイク
ロイックミラー48により反射され…、軸線β上を下方に向かって進行し、
加工用対物レンズ42を通過して加工対象物Sの表面S1に照射される。
なお、加工用レーザ光L1はダイクロイックミラー48を透過する。
【0041】そして、加工対象物Sの表面S1で反射された測距用レーザ光L2の反射光は、加工用対物レンズ42に再入射して軸線β上を上方に向52 かって進行し、ダイクロイックミラー48により反射され…、ハーフミラ
ー47を通過して受光部45内に入射し、フォトダイオードを4等分して
なる4分割位置検出素子上に集光される。この4分割位置検出素子上に集
光された測距用レーザ光L2の反射光の集光像パターンに基づいて、加工
用対物レンズ42による測距用レーザ光L2の集光点が加工対象物Sの表面S1に対してどの位置にあるかを検出することができる。4分割位置検
出素子上に集光された測距用レーザ光L2の反射光の集光像パターンに関
する情報は、制御装置7に出力される。制御装置7はこの情報に基づいて、
アクチュエータ43に加工用対物レンズ42を保持する位置を指示する制
御信号を出力する。
【0042】制御装置7は物理的には、ステージ2及びレーザ出射装置6と
信号の授受を行うためのインタフェイスと、CPU(中央演算装置)と、
メモリやHDDといった記憶装置と、を備え、記憶装置に格納されている
プログラムに基づいてCPUが所定の情報処理を行い、その情報処理の結
果を制御信号としてインタフェイスを介してステージ2及びレーザ出射装置6に出力する。
【0043】 …制御装置7は機能的には、レーザ出射制御部701と、ステ
ージ移動制御部702と、アクチュエータ制御部703と、集光点演算部
704と、端部判断部705と、循環メモリ706(変位記憶手段)と、
を備える。レーザ出射制御部701は、加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光L2の出射を制御する信号をレーザヘッドユニット3のレーザヘ
ッド13及び対物レンズユニット5のレーザダイオード44にそれぞれ出
力する部分である。ステージ移動制御部702は、ステージ2の移動を制
御する制御信号をステージ2に出力する部分である。アクチュエータ制御
部703はアクチュエータ43の駆動を制御する制御信号を対物レンズユニット5のアクチュエータ43に出力する部分である。アクチュエータ制53 御部703は循環メモリ706にアクチュエータ43の移動量を格納する
部分でもある。この移動量は加工対象物Sの主面S1の変位に応じて変化
するので、主面S1の変位を表す量として捉えることもできる。集光点演
算部704は対物レンズユニット5の受光部45から出力される非点収差
信号に基づいて、加工対象物Sと測距用レーザ光L2の集光点との距離を算出する部分である。端部判断部705は受光部45が受光する光量に基
づいて、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に対応する位置にあ
るかどうかを判断する部分である。 …
【0044】以上のように構成されたレーザ加工装置1によるレーザ加工方
法の概要について説明する。まず、ステージ2上に加工対象物Sを載置し、
ステージ2を移動させて加工対象物Sの内部に加工用レーザ光L1の集光
点Pを合わせる。このステージ2の初期位置は、加工対象物Sの厚さや屈
折率、加工用対物レンズ42の開口数等に基づいて決定される。
【0045】続いて、レーザヘッド13から加工用レーザ光L1を出射する
と共に、レーザダイオード44から測距用レーザ光L2を出射し、加工用対物レンズ42により集光された加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光
L2が加工対象物Sの所望のライン(切断予定ライン)上をスキャンする
ようにステージ2を移動させる。このとき、受光部45により測距用レー
ザ光L2の反射光が検出され、加工用レーザ光L1の集光点Pの位置が加
工対象物Sの表面S1から常に一定の深さとなるようにアクチュエータ43が制御装置7によってフィードバック制御されて、加工用対物レンズ4
2の位置が軸線 β方向に微調整される。
【0046】従って、例えば加工対象物Sの表面S1に面振れがあっても、
表面S1から一定の深さの位置に多光子吸収による改質領域Rを形成する
ことができる。このように平板状の加工対象物Sの内部にライン状の改質領域Rを形成すると、そのライン状の改質領域Rが起点となって割れが発54 生し、ライン状の改質領域Rに沿って容易且つ高精度に加工対象物Sを切
断することができる。
【0047】本実施形態のレーザ加工装置1を用いるレーザ加工方法につい
てより具体的に説明する。このレーザ加工方法の説明では、レーザ加工装
置1の動作も併せて説明する。本実施形態のレーザ加工方法は、ウェハ状の加工対象物Sに対する加工用対物レンズ42の初期位置を設定する準備
工程と、加工用レーザ光L1を照射して改質領域を形成する加工工程とに
分けることができるので、準備工程及び加工工程についてそれぞれ説明す
【0048】(準備工程)まず、ウェハ状の加工対象物Sに対する加工用対物レンズ42の初期位置を設定する準備工程について説明する。
【0049】図3は加工対象物Sの平面図である。加工対象物Sにはn本の
切断予定ラインC1~Cnが設定されており、この切断予定ラインC1~
Cnそれぞれで順番にレーザ加工を行う。まず、最初の切断予定ラインC
1上の一点Q1において加工対象物Sの内部の所定の位置に集光点が合うようにステージ2(図1参照)の高さを調整する。その調整した高さを初
期位置として、切断予定ラインC1の延長上の点X1に加工用対物レンズ
42が位置するようにステージ2を移動させる。
【0050】より詳細に図4(A)~図4(C)を参照しながら説明する。
図4(A)~図4(C)は、図3のⅡ-Ⅱ断面を示す図である。尚、理解を容易にするために図4(A)~図4(C)においては断面を示すハッチ
ングを省略する。図4(A)に示すように、加工対象物Sはダイシングフ
ィルム2aを介してステージ2に吸着されて固定されている。ダイシング
フィルム2aはダイシングリング(図示しない)で固定されている。
【0051】図4(A)に示すように、加工対象物2の切断予定ラインC1上の一点Q1に対応する位置に加工用対物レンズ42が配置されるよう55 にステージ2が移動する。加工用対物レンズ42を保持しているアクチュ
エータ43は最も縮んだ状態から25 μm伸びた状態になる。この伸び量
25μmは、アクチュエータ43の最大伸び量50 μmの半分の量として
設定されている。この状態で観察用可視光の反射光のピントが合うように
ステージ2を上下させる。尚、ステージ2の上下動による誤差が大きい場合は、まずアクチュエータ43を所望の位置まで動かしてその時の非点収
差信号を記憶したら、いったんアクチュエータ43を元の位置まで戻し、
ステージ2を(大雑把に)移動させて、アクチュエータ43を先ほど記憶
した非点収差信号と合う位置に微調整させると良い。
【0052】続いて、図4(B)に示すように、図4(A)の状態からステージ2が更に所定の距離(以下、加工高さ)上昇して、加工対象物Sの表
面S1と加工用対物レンズ42との距離が図4(A)における距離から加
工高さ分だけ近づくように設定される。ここで、可視域のピント位置とレ
ーザ光の集光位置とが一致するものとすれば、加工用レーザ光L1は、加
工対象物Sの内部であって、その表面S1から加工高さと加工対象物Sのレーザ波長における屈折率との積の値に相当する位置に集光されることに
なる。例えば、加工対象物Sがシリコンウェハであってその屈折率が3.
6(波長1.06 μm)であり、加工高さが10 μmであれば、3.6×
10=36 μmの位置に集光されることになる。図4(B)に示す状態で
測距用レーザ光L2の反射光から非点収差信号を得て、この非点収差信号の値を基準値とする。
【0053】図4(B)に示す状態からそのままステージ2を移動させて、
加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の延長上の点X1に至った段
階で図4(C)に示すように待機状態となる。図4(B)及び図4(C)
に示す、鉛直方向における加工対象物Sに対する加工用対物レンズ42の位置が初期位置となる。 56 【0054】この準備工程におけるレーザ加工装置1の動作について …説明
する。制御装置7のステージ制御部702がステージ2に対して加工用対
物レンズ42がC1上の一点Q1に移動するように制御信号を出力する
(ステップS01)。この制御信号の出力に応じてステージ2が移動する。
更に制御装置7のアクチュエータ制御部703がアクチュエータ43に対して25 μm伸びるように制御信号を出力する(ステップS02)。この
制御信号の出力に応じてアクチュエータ43は25 μm伸びる。この状態
で可視観察光によってピントが合うようにステージ2を上下させ、その可
視観察光のピントが合う位置を設定し、加工用対物レンズ42及び加工対
象物Sは図4(A)で説明した状態になる(ステップS03)。
【0055】制御装置7のステージ移動制御部702がステージ2に対し
て所定の加工高さ(例えば、10μm)上昇するように制御信号を出力す
る(ステップS04)。この制御信号の出力に応じてステージは10 μm
上昇し、加工用対物レンズ42及び加工対象物Sは図4(B)で説明した
状態になる。
【0056】制御装置7のレーザ出射制御部701はレーザダイオード44
に対して測距用レーザ光L2を出射するように制御信号を出力する(ステ
ップS05)。この制御信号の出力に応じてレーザダイオード44は測距
用レーザ光L2を出射し、加工対象物Sの表面S1で反射された反射光は
受光部45の4分割位置検出素子が受光する。この受光に応じて出力される信号は集光点演算部704及び端部判断部705に出力される。
【0057】集光点演算部704はこの状態における非点収差信号の値を基
準値として保持する(ステップS06)。続いて、ステージ移動制御部7
02からステージ2に対して、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの切
断予定ラインC1の延長上のX1に対応する位置まで移動するように制御信号を出力する(ステップS07)。この制御信号の出力に応じてステー57 ジ2は移動し、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの切断予定ラインC
1の延長上のX1に対応する位置まで移動すると、ステージ移動制御部7
02からステージ2に対して移動を停止するように制御信号を出力する
(ステップS08)。
【0058】(加工工程)引き続いて、加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光L2を照射して改質領域を形成する加工工程について説明する。
【0059】図4(A)~図4(C)と同様に図3の Ⅱ-Ⅱ断面を示す図6
(A)~図6(C)を参照しながら説明する。尚、理解を容易にするため
に図6(A)~図6(C)においては断面を示すハッチングを省略する。
図6(A)は図4(C)の状態から引き続いて、切断予定ラインC1において加工用対物レンズ42が改質領域の形成を開始した状態を示している。
アクチュエータ43は図4(C)で設定された伸び量で固定されている。
図4(C)から図6(A)の状態に差し掛かる前に加工用レーザ光L1及
び測距用レーザ光L2が照射される。加工用対物レンズ42が図中矢印E
の方向に移動するようにステージ2が移動する。
【0060】測距用レーザ光L2はダイシングフィルム2aにおいては反射
率が低く反射される全光量は少ないが、加工対象物Sにおいては反射され
る全光量が増大する。すなわち、受光部45(図1参照)の4分割位置検
出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が多くなるので、
反射光の全光量が予め定められた閾値を超えた場合に加工対象物Sの切断予定ラインC1と加工用対物レンズ42が交差する位置にあるものと判断
できる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出す
る全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レ
ンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして
(図7(A)に相当する状態になってものとして)、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除して、所定の間隔ごと(例えば、各サ58 ンプリングポイントごと)に非点収差信号がステップS06で保持した基
準値となるようにアクチュエータ43の伸び量制御を開始する。従って、
加工用対物レンズ42が図6(A)中の矢印E方向に移動すると図6(B)
に示す状態になる。図6(B)に示すように、区間F(一端部)において
は一定の加工高さで改質領域Rが形成されることになる。この区間Fにおいて一定の加工高さで改質領域Rが形成されると、その後、加工用対物レ
ンズ42は切断予定ラインC1に沿って移動し、加工用レーザ光L1によ
って改質領域Rを形成する。この間、測距用レーザ光L2の反射光から得
られる非点収差信号が上記基準値となるようにアクチュエータ43が調整
される。
【0061】図6(B)に示す状態から更に加工用対物レンズ42が図6
(A)中矢印Eの方向に移動すると、図6(C)に示すように加工用対物
レンズ42は切断予定ラインC1の他端に差し掛かる。加工用対物レンズ
42が加工対象物Sから外れた位置に至ると、図6(A)を参照しながら
説明したのとは逆の状態となり、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が少なくなる。従
って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が
予め定められた閾値よりも小さくなった場合に、加工用対物レンズ42が
切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして(図6(C)
に相当する状態になってものとして)、その時点でのアクチュエータの伸び量を保持する。アクチュエータ43の伸び量を保持したまま加工用対物
レンズ42が図6(C)中のX2の位置に至るようにステージ2が移動し、
次の切断予定ラインC2の加工に備える(移行ステップ)。
【0062】尚、上述の説明で、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC
1の一端に相当する位置(図6(A))に到達したこと検出するために、
受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定59 められた閾値よりも大きくなったことに基づいたが、これに限られず他の
基準を適用することもできる。その一例を図7(A)~図7(B)を参照
しながら説明する。図7(A)は、縦軸に受光部45(図1参照)の4分
割位置検出素子が検出する全光量をとり、横軸に時間をとって、図6(A)
~図6(B)に相当する受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量の変化を記録した図である。この場合には上述の通り、予
め定められた閾値T 1を上回った時点で加工用対物レンズ42が切断予定
ラインC1の一端に相当する位置に到達したと判断している。
【0063】図7(A)のグラフから、所定の間隔ごと(例えば、各サンプ
リングポイントごと)に、後の全光量の値から前の全光量の値を差し引いた差分の変化量を算出し、縦軸に変化量をとって横軸に時間をとった図を
図7(B)に示す。この場合に、正のピークが現れている部分は、全光量
の変化が最も大きな点、すなわち加工対象物Sのエッジ中央付近に相当す
る部分であると考えられる。そこで、図7(A)に示す全光量が閾値T1
となった後であって、図7(B)に示す差分のピークの変化が収まった後にアクチュエータ43の追従を開始することもできる。
【0064】また、上述の説明で、加工用対物レンズ42が切断予定ライン
C1の他端に相当する位置(図6(C))にあること検出するために、受
光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定め
られた閾値よりも小さくなったことに基づいたが、これに限られず他の基準を適用することもできる。その一例を図8(A)~図8(B)を参照し
ながら説明する。図8(A)は、縦軸に受光部45(図1参照)の4分割
位置検出素子が検出する全光量をとり、横軸に時間をとって、図6(B)
~図6(C)の状態における受光部45(図1参照)の4分割位置検出素
子が検出する全光量の変化を記録した図である。この場合には上述の通り、
予め定められた閾値T2を下回った時点で加工用対物レンズ42が切断予60 定ラインC1の一端に相当する位置にあると判断している。
【0065】図8(A)のグラフから、所定の間隔ごと(例えば、各サンプ
リングポイントそれぞれ)に、後の全光量の値から前の全光量の値を差し
引いた差分の変化量を算出し、縦軸に変化量をとって横軸に時間をとった
図を図8(B)に示す。この場合に、負のピークが現れている部分は、全光量の変化が最も大きな点、すなわち加工対象物Sのエッジ(外縁)中央
付近に相当する部分であると考えられる。そこで、この部分に相当するア
クチュエータ43の伸縮量で固定することもできる。
【0067】この加工工程におけるレーザ加工装置1の動作について… 説明
する。尚、レーザ加工装置1のステージ2及び加工用対物レンズ42は、
図4(C)を参照しながら説明した状態にあるものとする。
【0068】制御部7のレーザ出射制御部701が、レーザヘッド13に対
して加工用レーザ光L1を出射するように、レーザダイオード44に対し
ては測距用レーザ光L2を出射するように、それぞれ制御信号を出力する
(ステップS11)。この制御信号の出力に応じて加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光L2がそれぞれ出射される。
【0069】制御装置7のステージ制御部702がステージ2に対して加工
用対物レンズ42が図6(A)の矢印E方向に移動するように制御信号を
出力する(ステップS12)。この制御信号の出力に応じてステージ2は
移動を開始する。
【0070】制御装置7の端部判断部705は、受光部45から出力される
信号に基づいて、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛か
ったかどうかを判断する(ステップS13)。端部判断部705は、加工
用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛かったと判断すると、ア
クチュエータ制御部703に対してアクチュエータ43の伸縮を開始して、
非点収差信号が保持している基準値に等しくなるように、制御信号を出力61 するように指示する指示信号を出力する。アクチュエータ制御部703は
アクチュエータ43に伸縮を開始して、非点収差信号が保持している基準
値に等しくなるための、制御信号を出力する(ステップS14)。この制
御信号の出力に応じてアクチュエータ43は加工対象物Sの表面S1の変
位に応じて伸縮して、測距用レーザ光L2の集光点位置が基準位置となるように加工用対物レンズ42を保持する。従って、加工対象物Sの表面S
1の変位に応じた位置に改質領域Rが形成される(図6(B)参照)。
【0071】端部判断部705は、受光部45から出力される信号に基づい
て、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの他端に差し掛かったかどうか
を判断する(ステップS15)。端部判断部705は、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛かったと判断すると、アクチュエータ
制御部703に対してアクチュエータ43の伸縮を停止する制御信号を出
力するように指示する指示信号を出力する。この指示信号の出力に応じて、
アクチュエータ制御部703はアクチュエータ43に対して伸縮を停止し
て保持状態とするための制御信号を出力する(ステップS16)。この制御信号の出力に応じてアクチュエータ43は伸縮を停止する。ステージ移
動制御部702は、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の延長線
上の点X2に差し掛かると、ステージ2に対して移動を停止するように制
御信号を出力する(ステップS17)。その後、循環メモリ706に格納
されているアクチュエータ43の伸縮量の内、最初の5チャネル分のメモリに格納されているアクチュエータ43の伸縮量の平均値を算出し、この
平均値となるようにアクチュエータ43の伸縮量を固定する(ステップS
18)。
【0072】上述した準備工程及び加工工程は、加工対象物Sの全ての切断
予定ラインC1~Cnそれぞれで行われ、切断予定ラインC1~Cnそれぞれに沿って改質領域Rが形成される。 62 【0073】本実施形態では、初期位置に加工用対物レンズ42を保持して
加工用レーザ光L1を照射してレーザ加工を開始するので、加工対象物S
の端部の形状変動の影響を極力排除することができる。
【0074】加工用対物レンズ42を初期位置に保持した状態で加工対象物
Sの端部に改質領域を形成した後に加工用対物レンズ42を保持した状態を解除して、加工用対物レンズ42と加工対象物Sとの距離が一定となる
ように調整しながら改質領域を形成するので、加工対象物Sの表面S1か
ら一定の距離隔てた位置に改質領域を安定して形成できる。
【0075】改質領域を形成した後に加工用対物レンズ42を加工対象物S
の主面S1に向かう方向に駆動しないように保持するので、次の切断予定ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能となる。
【0076】加工用対物レンズ42を駆動しないように保持した時点から所
定時間前に記憶したアクチュエータ43の伸縮量に基づいた位置となるよ
うに、次の切段予定ラインの準備ステップにおいて加工用対物レンズ42
の主面S1に対する位置を設定するので、次の切断予定ラインにおいても加工対象物Sの端部の形状変動による影響を極力排除できる。
【0077】切断予定ラインに沿って改質領域を安定して形成すること
ができるので、改質領域を形成した後にダイシングフィルム2aの拡張
等により加工対象物としてのウエハをチップ状に割断・分離する工程に
おいて、良好な切断品質で且つ大量のウエハを割断する場合でも常に安定してウエハの割断を行うことができる。
⑵ 本件明細書の記載によれば、本件各発明は次のような技術的意義を有する
ものと認められる。
本件各発明は、レーザ光を照射することで加工対象物を加工するためのレ
ーザ加工装置に関するものである(【0001】)。
従来のレーザ加工技術においては、加工対象物の外側の位置からレーザ光63 の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加
工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象
物の内側へと測定を行っていき、この測定によって得られた主面の高さの測
定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ
光の集光点がずれる場合がある(【0002】)。すなわち、加工対象物の外側から測定を開始した場合、集光レンズは加工対象物を検出した時点で上
昇するが、この間もレーザ光と加工対象物のその主面に沿った移動は継続し
ていることから、集光レンズが所定の位置に上昇し、切断予定ラインにレー
ザ光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズを所定
の位置に合わせるための信号が大きく振られることによってもレーザ光の集光点がずれるため、レーザ光の焦点が切断予定ラインに合って安定状態にな
るまでの間は、切断予定ラインではない部分が加工されることになる(【0
008】~【0014】)。このような問題点に対し、本件各発明は、加工
対象物の端部における処理に着目し、加工対象物の端部におけるレーザ光の
集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することを目的とする(【0006】【0014】)。
具体的には、本件各発明は、集光点が加工対象物内部の所定の位置に合う
状態となる初期位置にレンズを保持するように保持手段を制御し、当該位置
にレンズを保持した状態で第一のレーザ光を照射しながら、制御手段は加工
対象物とレンズとを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、切断予定ラインの
一端部において改質領域が形成された後に、制御手段はレンズを初期位置に
保持した状態を解除してレンズと主面との間隔を調整しながら保持するよう
に保持手段を制御し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動さ
せるように移動手段を制御して改質領域を形成するレーザ加工装置であり、
初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領64 域を形成するので、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して
改質領域を形成することができ、切断予定ラインの一端部において改質領域
を形成した後にレンズを保持した状態を解除し、レンズの位置を調整しなが
ら残部において改質領域を形成するので、加工対象物内部の所定の位置に改
質領域を形成することができる(【0023】【0024】)。また、さらに、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手
段を制御して改質領域を形成した後、レンズを主面に向かう方向に駆動させ
ずに保持するように保持手段を制御すると共に、レンズと加工対象物とを主
面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御することにより、例え
ば、次の切断予定ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能となる(【0027】)。
本件各発明により、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを
極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるという効果があり
(【0031】)、切断予定ラインに沿って改質領域を安定して形成するこ
とができるので、改質領域を形成した後にダイシングフィルムの拡張等により加工対象物としてのウェハをチップ状に割断、分離する工程において、良
好な切断品質でかつ大量のウェハを割断する場合でも常に安定してウェハの
割断を行うことができる(【0077】)。
2争点①(被告が対象製品2を製造、販売等したか。)について
被告は、平成29年12月14日に開催された展示会において、「ML300EXSeries/ML200EX」と題し、「ML200EX」につい
て「200mmウエーハに対応したレーザーダイシングマシン」などと記載す
るなどしたパネルを展示したことがあった(前記第2の1⑷エ)。
ここで、被告は、実際には型番中に「ML200EX」を含む製品すなわち
対象製品2を被告が製造、販売等したことはなく、イメージを示すために写真をデジタル加工するなどして上記パネルを作成したと主張する。上記展示会で65 上記パネルの展示はあったものの、そのこと以外に、対象製品2が現実に存在
し、被告がこれを製造、販売等をした事実をうかがわせる証拠はなく、被告が
対象製品2を製造、販売等したことを認めるに足りない。
3争点②(対象製品1⑵Bが本件各発明の技術的範囲に属するか。)について
⑴ 対象製品1⑵Bについてア被告は、平成28年3月から平成30年8月まで、別紙対象製品1 ⑵B
売上一覧記載のとおり、被告エンジンBを搭載した対象製品1⑵Bを製造、
販売した(前記第2の1⑷ウ)。被告は、その後、これらについて被告エ
ンジンBを被告エンジンAに交換する改造を行った(同オ)ため、被告エ
ンジンBを搭載した製品(対象製品1⑵B)は存在しなくなった。
しかし、上記改造が行われたのは製造、販売後なのであるから、被告は、
対象製品1
Bの製造、販売を行ったといえるのであり、それらを行わ
なかったことになるものではない。
イ対象製品1⑵Bは、シリコンウェハの端部から所定の距離の範囲におい
てAF固定の状態でレーザ加工を行った後に、AF固定を解除して、AF追従の状態でレーザ加工を行う。
具体的には、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェハである場合
には、加工対象物の位置の検出方法として座標基準を採用し、概要別紙対
象製品1動作態様記載1⑴のとおり、シリコンウェハの現実の端を検出し
た後、面取り部分(ベベル部分)を超えて所定距離進んだ時点で加工用レーザの照射を開始し、更に所定距離進んだ(シリコンウェハの中心からの
距離により推定された地点に到達した)時点でAF固定を解除し、AF追
従を行う。
また、加工対象物が面取り部分のないシリコンウェハである場合には、
加工対象物の位置の検出方法として光量基準を採用し、別紙対象製品1動作態様記載1⑵のとおり、シリコンウェハの現実の端を検出した後、加工66 用レーザ光の照射を開始し、その後、所定距離進んだ時点でAF固定を解
除し、AF追従を行う。
(弁論の全趣旨)
ウ被告は、対象製品1⑵Bの制御機構について、出荷前に、日本国内にお
いて、コンピュータのパラメータ設定により様々なアプリケーションを作成し、各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動きをさせる検
査を行い、海外の法人である各利用者(前記第2の1⑸ウ)に納品した後、
各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケーションを適用していた。
(弁論の全趣旨)
⑵ 改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)についてア特許請求の範囲においては、「改質領域」は「レーザ光を加工対象物の
内部に集光点を合わせて照射」(構成要件1A)することにより形成さ
れるものと記載されているが、その形成が多光子吸収によりされるなど、
その形成の態様について、限定する記載はない。
本件明細書には、レーザ光を加工対象物の内部に集光点をあわせて照射して改質領域を形成すること(【0023】等)が記載され、また、
「発明を実施するための最良の形態」として、レーザ光を加工対象物の
内部に集光点を合わせて照射することにより、多光子吸収による改質領
域を形成することが記載されている(【0033】【0046】)。も
っとも、上記【0033】【0046】は実施例の記載であるところ、
本件明細書には、本件各発明の改質領域の形成が多光子吸収によりされ
ることに限定される旨の記載やそのように限定されることを示唆する記
載はない。本件各発明は、「レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合
わせて照射し、…加工対象物の内部に改質領域を形成する」(【002
3】等)に当たり、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があるという従来のレーザ加工技術における課題を、レンズの位67 置を保持することなどにより解決し、加工対象物の端部におけるレーザ
光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことが
できるレーザ加工装置を提供することを目的とするものである(前記1
⑵)。本件各発明のこのような課題の解決との関係において、改質領域
の形成が多光子吸収によりされることに何らかの技術的意義がある旨の本件明細書の記載はないし、また、これを認めるに足りる証拠はない。
これらによれば、本件各発明の「改質領域」は、レーザ光を加工対象物
の内部に集光点を合わせて照射することによって形成されるものであれ
ば足り、「多光子吸収」によって形成されるものに限定されるとは解さ
れない。
イ対象製品1⑵Bは、シリコンウェハ内部で、加工用レーザ光の集光点を
走査することにより、シリコンウェハの内部にレーザ加工領域を形成す
る(前記第2の1⑸ア)。これは、「レーザ光を加工対象物の内部に集
光点を合わせて照射」することにより形成される加工領域すなわち「改
質領域」を形成するものといえる。
⑶ レンズの保持態様(構成要件2B)について
ア特許請求の範囲においては、「…加工対象物と…レンズとを加工対象物
の主面に沿って移動させる移動手段」(構成要件1C)と記載されてお
り、本件各発明の「移動手段」は、加工対象物とレンズとを加工対象物
の主面に沿って移動させるものであることが理解できる。また、特許請求の範囲においては、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形
成された後に、」「レンズを…初期位置に保持した状態を解除して…レ
ンズと…主面との間隔を調整しながら保持するように…保持手段を制御
し、…レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させるよ
うに…移動手段を制御して改質領域を形成し」(構成要件2A)、「更に、」「…レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保持するように68 …保持手段を制御すると共に、」「レンズと…加工対象物とを…主面に
沿って相対的に移動させるように… 移動手段を制御する」(構成要件2
B)と記載されており、「…後に」、「更に、」との文言から、本件発
明2において、「(レンズを初期位置に保持し、レンズと加工対象物と
を主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御した状態での)
切断予定ラインの一端部における改質領域の形成」(構成要件1G)、
「レンズと主面との間隔を調整しながら保持し、レンズと加工対象物と
を主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御した状態での
改質領域の形成」(構成要件2A)、「レンズを主面に向かう方向に駆
動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるような移動手段の制御」(構成要件2B)という各動
作は、時間的に、そこに記載された順に実行されるものと理解できる。
ここで、構成要件2Bには、「レンズを主面に向かう方向に駆動させず
に保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移
動させるような移動手段の制御」と同時に改質領域を形成することは記載されていない。
また、本件明細書には、移動手段である加工対象物が載置されたステー
ジ2が、加工工程において、加工対象物がレンズの直下にない範囲にお
いても、加工対象物とレンズとを移動させていることが記載されている
(【0033】【0059】)。また、本件明細書には、「レンズと主面との間隔を調整しながら保持し、レンズと加工対象物とを主面に沿っ
て相対的に移動させるように移動手段を制御した状態での改質領域の形
成」(構成要件2A)、「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保
持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動さ
せるような移動手段の制御」(構成要件2B)について、「改質領域を形成した後にレンズを主面に向かう方向に駆動しないように保持するの69 で、」「次の切断予定ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能と
なる。」(【0027】【0075】)、「加工用対物レンズ42が加
工対象物Sから外れた位置に至ると、…その時点でのアクチュエータの
伸び量を保持する。アクチュエータ43の伸び量を保持したまま加工用
対物レンズ42が図6(C)中のX2の位置に至るようにステージ2が移動し、次の切断予定ラインC2の加工に備える(移行ステップ)。」
(【0061】)と記載されており、「レンズを主面に向かう方向に駆
動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物を主面に沿って相対
的に移動させるような移動手段の制御」は、一つの切断予定ラインの加
工を終えて加工対象物がレンズの直下から外れた後、次の切断予定ラインの加工に備える際の動作として記載されている。
このような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば、本件発明2
における「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、
レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるような移動手
段の制御」(構成要件2B)は、加工対象物がレンズの直下にあることを前提とした動作であるとは解されず、構成要件2Bの「主面に向かう
方向」及び「主面に沿って」は、加工対象物に対して垂直方向及び水平
方向を意味するにとどまるというべきである。
イ対象製品1⑵Bは、AF追従の状態でのレーザ加工終了後、対物レンズ
がシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対物レンズをAF追従が終了した時点又はそれより所定の距離戻った位置における高
さに固定した状態で、カッティングテーブルをX軸方向に動かす(前記
第2の1⑸イ)から、「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保
持するように…保持手段を制御すると共に、…レンズと…加工対象物と
を…主面に沿って相対的に移動させるように…移動手段を制御する」ものといえる。 70 ⑷ 切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及
び2A)について
ア「切断予定ラインの一端部」(構成要件1G ,1H及び2A)について、
特許請求の範囲において、その「切断予定ライン」や「切断予定ライン
の一端部」がどのようなものであるのかを説明等する記載はない。
本件明細書には、「図10(A)の状態で、…シリコンウェハ800に
第1のレーザ光806で加工しようとしているのは切断予定ライン80
0aに相当する位置である。」、「切断予定ライン800aにおいて第
1のレーザ光806の集光点が合うまでにはタイムラグが発生する。ま
た、非点収差信号も大きく振られることになって第1のレーザ光806の集光点がずれることにもなる。」、「従って、図10(C)に示すよ
うに、切断予定ライン800aにおいて第1のレーザ光806の焦点が
合って安定状態になるまでの区間Bでは、切断予定ライン800aでは
ない部分がレーザ加工されることになる。」との記載があり(【000
8】~【0010】)、また、【図10】では、シリコンウェハの断面図においてそのシリコンウェハの中ほどの高さの部分に一直線に切断予
定ライン800aがあることや、その区間Bでは、シリコンウェハの高
さ方向においてその切断予定ライン800aと異なる部分が加工される
ことが示されており、【0012】~【0014】【図11】において
も同様の記載がある。これらによれば、「切断予定ライン」は、シリコンウェハにおいて、加工を予定する部分であって、シリコンウェハにお
いて、高さ方向において予定されている部分と異なる部分が加工される
ことについて切断予定ラインではない部分が加工されているとされてい
る。そうすると、これらの本件明細書の記載によれば、「切断予定ライ
ン」とは、加工対象物の内部の一定の加工高さすなわち予定する加工の深さにおける仮想線を意味していると理解できる。上記記載には、従来71 技術のレーザ加工装置においては、加工対象物の端部で「切断予定ライ
ン」にレーザ加工がされないことも説明されている。
また、本件明細書には、「受光部45(図1参照)の4分割位置検出素
子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、
加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして …、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解
除して、所定の間隔ごと(例えば、各サンプリングポイントごと)に非
点収差信号がステップS06で保持した基準値となるようにアクチュエ
ータ43の伸び量制御を開始する。従って、加工用対物レンズ42が図
6(A)中の矢印E方向に移動すると図6(B)に示す状態になる。図6(B)に示すように、区間F(一端部)においては一定の加工高さで
改質領域Rが形成されることになる。この区間Fにおいて一定の加工高
さで改質領域Rが形成されると、その後、加工用対物レンズ42は切断
予定ラインC1に沿って移動し、加工用レーザ光L1によって改質領域
Rを形成する。この間、測距用レーザ光L2の反射光から得られる非点収差信号が上記基準値となるようにアクチュエータ43が調整される。」
(【0060】)、「加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一
端に相当する位置(図6(A))に到達したこと検出するために、受光
部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定め
られた閾値よりも大きくなったことに基づいた」(【0062】)等と記載されている。本件各発明は、切断予定ラインの一端部において改質
領域が形成された後に、制御装置はレンズを初期位置に保持した状態を
解除するものであるところ(構成要件1H、2A)、上記では、加工対
象物の加工の開始に当たり、「区間F(一端部)」において、「一定の
加工高さで」(【0052】)すなわち予定する加工の深さで改質領域が形成された後、「検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きく72 なった場合に加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当
する位置にあるものとして」、その時点でアクチュエータの伸び量の保
持、すなわち、加工対象物の特定の箇所で集光点が加工対象物の内部の
所定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持した状態(【00
48】【0049】【0053】)が解除され、続いて切断予定ラインに沿って改質領域が形成されるとされている。したがって、ここでは、
予定する加工の深さで改質領域が形成された後に、加工用対物レンズが
切断予定ラインの一端に相当する位置にあることが記載されているとい
える。
そして、本件各発明の技術的意義は、集光点が加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ライ
ンの一端部において改質領域を形成した後に、初期位置にレンズを保持
した状態を解除してレンズと加工対象物の間隔を調整しながら改質領域
を形成することにより、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点の
ずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行い、切断予定ラインに沿って改質領域を安定して形成することを可能にするところにある(前
記1⑵)。本件明細書の前記記載によれば、本件各発明のレーザ加工装
置においては、加工対象物の加工の開始に当たり、初期位置にレンズを
保持した状態で加工を開始し、一定の加工高さすなわち予定する加工の
深さで改質領域が形成され、加工対象物の端部の形状変動による影響を受けなくなった時点で、「切断予定ラインの一端部」において改質領域
が形成されたものとして、初期位置にレンズを保持した状態を解除して、
レンズの位置を調整しながら残部において改質領域を形成するものと理
解できるところ、このように理解することは、本件各発明のレーザ加工
装置において加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行い、切断予定ラインに沿って改質73 領域を安定して形成することを可能にするという本件各発明の上記効果
を奏するものであり、上記の本件各発明の技術的意義に合致するものと
いえる。
したがって、これらの特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば、
「切断予定ライン」とは、加工対象物の内部の一定の加工高さすなわち予定する加工の深さにおける仮想線であり、本件各発明の「切断予定ラ
インの一端部」とは、加工対象物の加工の開始に当たり、レンズを一定
の位置(初期位置)に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する
加工の深さで改質領域が形成される部分を意味すると解すべきである。
イ被告は、「切断予定ラインの一端部」とは、シリコンウェハの面取り部分を意味すると主張する。
本件各発明は、従来のレーザ加工技術においては、加工対象物の外側の
位置からレーザ光の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面
に沿って移動させて加工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側か
ら測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていき、この測定によって得られた主面の高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、
加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があり、加工
対象物の外側から測定を開始した場合、集光レンズは加工対象物を検出
した時点で上昇するが、この間もレーザ光と加工対象物のその主面に沿
った移動は継続していることから、集光レンズが所定の位置に上昇し、
切断予定ラインにレーザ光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、
また、集光レンズを所定の位置に合わせるための信号が大きく振られる
ことによってもレーザ光の集光点がずれるため、レーザ光の焦点が切断
予定ラインに合って安定状態になるまでの間は、切断予定ラインではな
い部分が加工されることになるという問題点に対し、加工対象物の端部における処理に着目し、レンズを保持した状態で「切断予定ラインの一74 端部」において改質領域を形成した後に、レンズを保持した状態を解除
してレンズと主面との間隔を調整しながら改質領域を形成することによ
り、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して改質領域を
形成することができるという効果を実現するものである(前記1⑵)。
そして、加工対象物であるシリコンウェハに面取り部分があるか否かにかかわらず、加工対象物の外側から測定を開始した場合、集光レンズが
加工対象物を検出した後、所定の位置に上昇し切断予定ラインにレーザ
光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズを所
定の位置に合わせるための信号が大きく振られることによって、加工対
象物の端部においてレーザ光の集光点がずれるという問題点とこれに対する課題が存在する。
以上によれば、本件各発明における加工対象物は面取り部分のあるシリ
コンウェハに限定されず、「切断予定ラインの一端部」がシリコンウェ
ハの面取り部分を意味するとは解されない。本件各発明では、加工対象
物のシリコンウェハに面取り部分があるか否かにかかわらず、加工対象物に上記アのとおりの「切断予定ラインの一端部」が存在し得るといえ
ウ対象製品1⑵Bは、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェハであ
る場合には、シリコンウェハの現実の端を検出した後、面取り部分を超
えて所定距離進んだ時点で加工用レーザの照射を開始し、更に所定距離進んだ時点でAF固定すなわちシリコンウェハの所定の点で加工用レー
ザの集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するような高さ
に調整された初期位置に対物レンズを保持した状態を解除し、AF追従
を行う(前記第2の1⑸イ、前記⑴)。このような対象製品1
Bは、
面取り部分を超えシリコンウェハの主面が概ね水平(XY平面と平行)
となっている部分に到達した後に加工用レーザの照射を開始してAF固75 定を解除するまでの間、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコン
ウェハの内部の所定の深さに加工領域を形成する。
また、対象製品1⑵Bは、加工対象物が面取り部分のないシリコンウェ
ハである場合には、シリコンウェハの現実の端を検出した後、加工用レ
ーザ光の照射を開始し、その後、所定距離進んだ地点でAF固定すなわちシリコンウェハの所定の点で加工用レーザの集光点がシリコンウェハ
の内部の所定の深さに位置するような高さに調整された初期位置に対物
レンズを保持した状態を解除し、AF追従を行う(前記第2の1⑸イ、
前記⑴イ)。このような対象製品1
Bは、シリコンウェハの主面が概
ね水平となっている端部から加工用レーザ光の照射を開始してAF固定を解除するまでの間、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコンウ
ェハの内部の所定の深さに加工領域を形成する。
以上のとおり、対象製品1⑵Bは、加工対象物の加工の開始に当たり、
レンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する
加工の深さである所定の深さで改質領域を形成するから、「切断予定ラインの一端部」すなわち加工対象物の加工の開始に当たりレンズを一定
の位置に保持した状態で一定の高さすなわち予定する加工の深さで改質
領域が形成される部分において改質領域を形成する。
⑸ 制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について
被告は、対象製品1⑵Bの制御機構について、海外の法人である各利用者に納品した後、各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケーションを適
用していた(前記⑴ウ)。もっとも、対象製品1⑵Bは、出荷の時点で、制
御機構のパラメータ設定により、各駆動機構及び対物レンズ保持機構につい
て、シリコンウェハの端部から所定の範囲においてAF固定の状態でレーザ
加工を行った後にAF固定を解除してAF追従の状態でレーザ加工を行うという動き(同イ)を含む異なる動きをさせることができるものであり、実際、76 被告は、対象製品1⑵Bの出荷前に、日本国内において、様々なアプリケー
ションを作成して各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動きを
させる検査を行っていた(同ウ)。
したがって、被告が、対象製品1⑵Bについて、海外の法人に納品した後
に各アプリケーションを適用するという作業を行っていたとしても、対象製品1⑵Bは、出荷前に日本国内において完成していたものと認められ、本件
各発明の「制御手段」を備えるものと認められる。
⑹ 小括
以上によれば、対象製品1⑵Bは、構成要件1Bから1E、1Iを充足す
る(前記第2の1⑸ア)ほか、構成要件1A、1Fから1H、2Aから2Cをいずれも充足するから、本件各発明の技術的範囲に属する。
4争点③(対象製品1⑴ 及び1⑵Aが本件各発明の技術的範囲に属するか。)
について
⑴ 対象製品1⑴ 及び1⑵Aについて
ア対象製品1⑴ 及び1⑵Aは、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェハである場合には、加工対象物の位置の検出方法として座標基準を採
用し、また、加工対象物が面取り部分のないシリコンウェハである場合
には、加工対象物の位置の検出方法として光量基準を採用して、概要別
紙対象製品1動作態様記載2⑴及び ⑵のとおり、対物レンズの走査を開
始してから座標基準又は光量基準によって検出されるシリコンウェハの端部までの範囲においては、対物レンズをピエゾアクチュエータが想定
位置に固定されるよう制御した状態でAF固定し、その後、シリコンウ
ェハの端部から対物レンズを低追従の状態で走査し、非加工領域を超え
た時点で加工用レーザ光を照射してレーザ加工を開始し、その後、低追
従領域を超えた時点で対物レンズを低追従の状態からAF追従の状態に切り替える(前記第2の⑸ウ)。 77 イ対象製品1⑴及び1⑵Aは、対物レンズを低追従の状態で走査する場合
には、所定の上限値の範囲内で、計算式〔想定位置の値+(現実のシリ
コンウェハの主面の高さの値-現実のピエゾアクチュエータの位置の値)
×0.8〕によって求められる制御指令値により、ピエゾアクチュエータ
を制御する。(前記第2の1⑸ウ、争いがない事実、弁論の全趣旨)。
ウ被告は、対象製品1⑴及び1⑵Aについて、加工対象物が面取り部分の
あるシリコンウェハである場合には、加工対象物の検出方法として光量
基準を採用したり対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用
レーザ光を照射する設定をしたりした対象製品1⑴及び1⑵Aを製造、
販売していない。しかし、対象製品1⑴及び1⑵Aは、GUIからパラメータを調整してアプリケーションないしシステムを作成、調整するこ
とにより、加工対象物の存在ないし位置を検出する方法を選択したり、
対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射す
るよう設定したりすることが可能である(前記第2の1⑸ウ、弁論の全
趣旨)。
エ被告は、対象製品1⑴ 及び1⑵Aの制御機構について、出荷前に、日本
国内において、コンピュータのパラメータ設定により様々なアプリケー
ションを作成し、各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動
きをさせる検査を行い、国内及び海外の法人である各利用者に納品した
後、各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケーションを適用していた。(弁論の全趣旨)
⑵ 改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について
ア本件各発明において、「改質領域」はレーザ光を加工対象物の内部に集
光点を合わせて照射することにより形成されるものであり、「多光子吸
収」によって形成されるものに限定されない(前記3⑵ア)。
イ対象製品1⑴及び1⑵Aは、シリコンウェハ内部で加工用レーザ光の集78 光点を走査することによりシリコンウェハの内部にレーザ加工領域を形
成する(前記第2の1⑸ア)ところ、「レーザ光を加工対象物の内部に
集光点を合わせて照射」することにより形成される加工領域すなわち
「改質領域」を形成するものといえる。
⑶ 対物レンズの保持態様(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について
ア
特許請求の範囲には、「…レンズを…主面に対して進退自在に保持す
る保持手段」(構成要件1D)が「集光点が…加工対象物内部の所定の
位置に合う状態となる初期位置に」「レンズを保持する」よう制御され
ること(構成要件1F、1G、1H、2A)が記載されている。「保持」
とは、「たもちつづけること。手放さずに持っていること。」をいう
(乙27)から、「集光点が…加工対象物内部の所定の位置に合う状態
となる初期位置に」「レンズを保持する」とは、レンズを初期位置に保
ち続けることをいうものと理解できる。
本件明細書には、保持手段である加工用対物レンズが装着されたアクチュエータ(【0039】【0041】)が、加工の開始に当たっては
「図4(C)で設定された伸び量で固定されている」こと(【005
9】)や、加工用対物レンズが切断予定ラインの一端に相当する位置に
あるものと判断された時点で「伸び量の保持を解除」されること(【0
060】)が記載されており、ここでは、加工用対物レンズが装着されたアクチュエータの伸び量を固定、すなわち、加工対象物の主面に対し
て進退自在に保持された加工用対物レンズの(鉛直方向の)動きを固定
することにより、加工対象物の特定の箇所で集光点が加工対象物の内部
の所定の位置に合う状態となる鉛直方向における加工対象物に対する加
工用対物レンズの位置すなわち初期位置にレンズが保持される(【0048】【0049】【0053】)とされている。そして、本件各発明79 の技術的意義が、集光点が加工対象物内部の所定の位置に合う状態とな
る初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において
改質領域を形成した後に、初期位置にレンズを保持した状態を解除して
レンズと加工対象物の間隔を調整しながら改質領域を形成することによ
り、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行い、切断予定ラインに沿って改質領域を安
定して形成することを可能にするところにあること(前記1⑵)も踏ま
えると、本件各発明のレーザ加工装置においては、加工対象物の加工の
開始に当たり、「切断予定ラインの一端部」において改質領域が形成さ
れるまでの間、レンズの鉛直方向の位置が、加工対象物の特定の箇所で集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に、
維持されていると理解できる。
このような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば、「初期位
置に」「レンズを保持する」とは、加工対象物の特定の箇所で集光点が
加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる鉛直方向における加工対象物に対する加工用対物レンズの位置すなわち初期位置に、レンズを
保ち続ける、すなわち、レンズを実質的に固定することを意味すると解
すべきである。
対象製品1⑴、1⑵Aは、対物レンズを低追従の状態で走査する場合
には、所定の上限値の範囲内で、計算式〔想定位置の値+(現実のシリコンウェハの主面の高さの値-現実のピエゾアクチュエータの位置の値)
×0.8〕によって求められる制御指令値により、ピエゾアクチュエー
タを制御する(前記⑴ウ)。対象製品1⑴、1⑵ Aは、現実のシリコン
ウェハの主面の高さの値から求められる制御指令値により、すなわち、
現実のシリコンウェハの主面の高さに応じて、ピエゾアクチュエータの位置を制御し、これにより対物レンズの位置を保持しているのであり、80 その動きを制御する制御指令値に上限があるからといって、対物レンズ
を特定の位置に実質的に固定するよう保持しているとはいえない。
ここで、対象製品1⑴及び1⑵Aにより、面取り部分のない(研削し
た)シリコンウェハを加工する場合、一般にシリコンウェハの外縁が
(概ね3μm程度(前記第2の1⑸ア、弁論の全趣旨))反り上がっているため、シリコンウェハの端から10mm程度の区間では、制御指令
値は上限値で一定となり、その値は-0.2μmであるとされている。
もっとも、この場合でも、そもそも、前記のとおり、制御指令値は現実
のシリコンウェハの主面の高さに応じて前記計算式によって求められた
数値に基づくものである上、シリコンウェハの形状計測結果等を基に規定される想定位置の値はこれより小さく、現実のピエゾアクチュエータ
の位置の値は、制御指令値に一致するように制御され上昇することにな
る。実際、被告の行った実験によれば、想定位置の値は-1.2μmと
規定され、現実のピエゾアクチュエータの位置の値は、シリコンウェハ
の端から10mm程度の区間において約0.15μm程度上昇しており、
したがって、対物レンズの位置も上昇するよう保持される。このように、
制御指令位置が一定になることは直ちに対物レンズが特定の位置に固定
されることを意味しない。なお、本件各発明のレーザ加工装置や対象製
品1⑴、1⑵A等は、概ね±3μm程度のうねりのあるシリコンウェハ
の主面に沿って対物レンズを追従させようとするごく繊細な動きをするものであるから、対物レンズの位置を約0.15μm程度上昇させるこ
とをもって、対物レンズを特定の位置に実質的に固定する制御を行って
いると評価されるとはいえない。(以上につき、争いがない事実のほか、
乙24、29、30、弁論の全趣旨)
したがって、対象製品1⑴及び1⑵Aにおいて、低追従の状態は、
「初期位置に」「レンズを保持」しているとはいえない。 81
もっとも、対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物にかかわらずその
検出方法として光量基準を選択し、対物レンズが走査開始待機位置にあ
るときから加工用レーザ光を照射する設定をすることも可能であり(前
記⑴イ)、このような設定等をした上で、面取り部分のあるシリコンウ
ェハを加工する場合には、シリコンウェハの現実の端から光量基準によって検出されるシリコンウェハの主面が概ね水平となっている地点に到
達するまでの部分すなわちシリコンウェハの面取り部分においては、対
物レンズを想定位置にAF固定した状態、すなわち、「初期位置に」
「レンズを保持」した状態となる。
イ
本件発明2における「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させ
るような移動手段の制御」(構成要件2B)は、加工対象物がレンズの
直下にあることを前提とした動作であるとは解されない(前記3⑶ア)。
対象製品1⑴及び1⑵Aは、AF追従の状態でのレーザ加工終了後、
対物レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対物レンズを想定位置に固定されるよう制御した状態で、カッティングテ
ーブルをX軸方向に動かす(前記第2の1⑸ウ)から、「レンズを…主
面に向かう方向に駆動させずに保持するように…保持手段を制御すると
共に、…レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させる
ように…移動手段を制御する」ものといえる。
⑷ 切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H、
及び2A)について
ア「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加工の開始に当たり、
レンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する
加工の深さで改質領域が形成される部分を意味し、また、本件各発明における加工対象物は面取り部分のあるシリコンウェハに限定されない82 (前記3⑷ ア、イ)。
イ
対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物が面取り部分のあるシリコン
ウェハであっても面取り部分のないシリコンウェハであっても、対物レ
ンズの走査を開始してからシリコンウェハの端部までの範囲においては
ピエゾアクチュエータを想定位置に固定するよう制御して対物レンズをAF固定し、その後、シリコンウェハの端部から対物レンズを低追従の
状態で走査し、非加工領域を超えた時点で加工用レーザ光を照射してレ
ーザ加工を開始し、その後、低追従領域を超えた時点で対物レンズを低
追従の状態からAF追従の状態に切り替える(前記第2の1⑸ウ、前記
⑴ア)ところ、低追従の状態は初期位置にレンズを保持している状態であるとはいえない(前記⑶ ア
)から、レンズを一定の位置に保持した
状態でシリコンウェハの内部の一定の加工高さすなわち予定する加工の
深さに加工領域を形成することはない。
もっとも、対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物いかんにかかわら
ずその検出方法として光量基準を採用し、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射する設定をすることも可能であ
る。対象製品1
及び1
Aについて、このような設定等をした上で、
面取り部分のあるシリコンウェハを加工する場合には、シリコンウェハ
の現実の端から光量基準によって検出されるシリコンウェハの主面が概
ね水平となっている地点に到達するまでの部分すなわちシリコンウェハの面取り部分においては、対物レンズを想定位置にAF固定した状態で
加工用レーザ光が照射され、主面が概ね水平となっている地点から対物
レンズを低追従の状態で走査して加工用レーザ光が照射されることにな
る(前記⑶ア
)。
しかしながら、シリコンウェハの面取り部分は主面が水平ではないため、照射した加工用レーザ光は散乱してシリコンウェハの内部で適切に83 集光することが困難であり、仮に集光したとしても所望の深さより浅い
位置にしか集光しない。原告及び被告が行った各実験結果によれば、切
断予定ラインの深さをシリコンウェハの主面から65μm等の浅い位置
に設定した場合には、面取り部分の一部に加工領域が形成されることが
あるものの、加工領域は所望の予定する加工の深さ(65μm等)に水平に形成されることはなく、その深さより浅い位置において斜めに形成
される。他方、切断予定ラインをシリコンウェハの主面から65μm等
より深い部分に設定した場合には、面取り部分に加工領域は形成されな
かった。(以上につき、甲26、乙50、55、弁論の全趣旨)
これらによれば、対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物の検出方法として光量基準を採用し、対物レンズが走査開始待機位置にあるときか
ら加工用レーザ光を照射する設定をして、面取り部分のあるシリコンウ
ェハを加工したとしても、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコ
ンウェハの内部の予定する加工の深さに加工領域を形成するものである
と認めるには足りない。そうすると、対象製品1⑴及び1⑵Aは、上記設定をして、面取り部分のあるシリコンウェハを加工したとしても、上
記
アにいう「切断予定ラインの一端部」において改質領域を形成する
ものであると認めるに足りない。
及び
から、対象製品1⑴及び1⑵Aは、「切断予定ラインの
一端部」すなわち加工対象物の加工の開始に当たりレンズを一定の位置に保持した状態で一定の高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が
形成される部分において改質領域を形成するとは認められず、構成要件
1G,1H及び2Aを充足しない。
⑸ 小括
以上によれば、対象製品1⑴及び1⑵Aは、「切断予定ラインの一端部」
において改質領域を形成するとは認められず、構成要件1G、1H及び2A84 を充足せず、ひいては構成要件2Cも充足しないから、本件各発明の技術的
範囲に属しない。
5争点④(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められる
⑴ 無効理由1(サポート要件違反)についてア被告は、本件明細書では、改質領域の形成は多光子吸収によってされ
るとされている一方、本件各発明は、改質領域の形成が単光子吸収によ
ってされる場合も含むことを挙げて、本件各発明は本件明細書の発明の
詳細な説明に記載したものであるとはいえない旨主張する。
しかし、本件明細書の「多光子吸収」に関する記載は、一実施例を記載したにすぎないというべきものであり(前記3⑵ア)、本件明細書の
記載において、本件各発明における改質領域はレーザ光を加工対象物の
内部に集光点を合わせて照射することによって形成されることが前提と
されているといえる。本件各発明の「改質領域」が「多光子吸収」によ
って形成されるものに限定されないとしても、そのような本件各発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。
イ被告は、本件明細書では、加工対象物の端部にレンズを保持した状態で
レーザ光を照射する構成しか開示されていない一方、本件各発明は、加工
対象物の端部に改質領域を形成することを必須としていないことを挙げて、
本件各発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない旨主張する。
特許請求の範囲には、第一のレーザ光の照射を開始する時点を限定する
記載はない。
本件明細書には、加工対象物の外側から加工対象物の主面の高さの測定
を開始した場合に、集光レンズは加工対象物を検出した時点で上昇するが、この間もレーザ光と加工対象物のその主面に沿った移動は継続して85 いることから、集光レンズが所定の位置に上昇し、切断予定ラインにレ
ーザ光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズ
を所定の位置に合わせるための信号が大きく振られることによってもレ
ーザ光の集光点がずれるため、レーザ光の焦点が切断予定ラインに合っ
て安定状態になるまでの間は、切断予定ラインではない部分が加工されることになる等という問題点に対し、加工対象物の端部におけるレーザ
光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことが
できるレーザ加工装置を提供することが記載されている(【0004】
【0006】【0009】【0010】)。ここで、加工対象物の端部
におけるレーザ光の集光点のずれは、加工対象物の現実の端から一定の範囲において生じるものであって、加工対象物の現実の端からレーザ加
工を行わない場合であっても、レーザ光の集光点のずれを極力少なくし
つつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供する
という課題は存在し、本件明細書に、加工対象物の現実の端からレーザ
加工を行わない場合が排除されていることをうかがわせる記載はないから、本件明細書の記載には、加工対象物の現実の端からレーザ加工を行
わない場合も含まれているといえる。
さらに、レーザ光の集光点のずれが生じる加工対象物の現実の端から一
定の範囲を超えた部分においてレーザ光の照射を開始する場合であって
も、本件各発明のレーザ加工装置においては、レーザ光の集光点のずれが生じる上記の範囲においてはレンズが保持されているから、レーザ光
の照射を開始する時点にかかわらず、レーザ光の集光点のずれを極力少
なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提
供するという課題を解決することができるといえる。
したがって、本件各発明が加工対象物の端部に改質領域を形成することを必須としていないとしても、本件明細書の記載には、加工対象物の現86 実の端からレーザ加工を行わない場合も含まれているといえることなど
から、本件各発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであ
ると認められる。
ウ被告は、本件明細書では「切断予定ラインの一端部」は面取り部分であ
るとされており、光量基準によってレンズを初期位置に保持した状態を解除すべき「一端部」の終端を検知する方法しか記載されていないから、
仮に「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本
件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含
むとすれば、本件各発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載した
ものであるとはいえない旨主張する。
本件各発明における「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加
工の開始に当たり、アクチュエータの伸び量が固定された状態すなわち
レンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する
加工の深さで改質領域が形成される部分を意味し、加工対象物は面取り
部分のあるシリコンウェハに限定されない(前記3⑶ア)。また、本件各発明は、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後
に、…レンズを…初期位置に保持した状態を解除して」(構成要件1H)
とするにとどまり、「切断予定ラインの一端部」の終端を検知すること
を要件とするものではない。
また、本件明細書には、「発明を実施するための最良の形態」として、
「受光部45 …の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められ
た閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラ
インC1の一端に相当する位置にあるものとして …、その時点でのアク
チュエータ43の伸び量の保持を解除して、 …」(【0060】)等と
記載されており、ここでも「切断予定ラインの一端部」の終端を検知すること自体は記載されていない。 87 そうすると、本件各発明が、「切断予定ラインの一端部」の終端を検知
する手段以外の方法により「切断予定ラインの一端部において改質領域
が形成された後に、…レンズを…初期位置に保持した状態を解除」する
場合を含み、他方、本件明細書に、「切断予定ラインの一端部」の終端
を検知する手段が記載されていないとしても、上記のとおりの本件各発明の内容と本件明細書の記載に照らせば、本件各発明が発明の詳細な説
明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載され
た範囲を超えるものとは認められない。
⑵ 無効理由2(明確性要件違反)について
被告は、本件明細書には本件各発明の改質領域が多光子吸収によってされる旨記載されている一方、本件各発明が単光子吸収によってされる場合も含
むのであれば、本件明細書の記載内容と矛盾するものであり、明確であると
はいえない旨主張する。
しかし、本件明細書の記載によっても、本件各発明における改質領域はレ
ーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射することによって形成されることが前提とされているにとどまり(前記⑴イ)、本件各発明の「改質
領域」が「多光子吸収」によって形成されるものに限定されていないから、
本件各発明は明確であると認められる。
⑶ 無効理由3(実施可能要件違反)について
被告は、「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含む
とすれば、本件明細書には、光量基準によってレンズを初期位置に保持した
状態を解除すべき「一端部」の終端を検知する方法しか記載されておらず、
光量基準によっては任意の位置を選択して検出することはできないから、本
件明細書は、当業者が、本件各発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない旨主張する。 88 本件各発明における「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加工
の開始に当たり、アクチュエータの伸び量が固定された状態すなわちレンズ
を一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さ
で改質領域が形成される部分を意味し、加工対象物は面取り部分のあるシリ
コンウェハに限定されない(前記3⑶ア)。また、本件各発明は、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、…レンズを…初期位
置に保持した状態を解除して」(構成要件1H)とするにとどまり、「切断
予定ラインの一端部」の終端を検知することを要件とするものではない(前
記⑴ウ)。
そして、本件明細書には、「切断予定ラインの一端部」すなわちレンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さで
改質領域が形成される部分において、改質領域が形成された後に、初期位置
にレンズを保持した状態を解除する方法についての一実施例が示されており
(【0060】、前記⑴ウ)、この方法はシリコンウェハの面取り部分の有
無にかかわらず適用可能であると考えられる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明の属する技術
の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に
明確かつ十分に記載したものであるといえる。
⑷ 小括
以上から、本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。
6争点⑤(原告が被告に対し対象製品1⑵Bの製造等につき許諾を与えたか。)
について
⑴ 事実経過
前提事実、証拠(各項末尾に掲記のほか乙123、124。ただし、いずれも後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事89 実が認められる。
ア原告及び被告は、●(省略)●
イ原告と被告は、原告の電子管事業本部長であるA(以下「a」とい
う。)、被告の代表取締役社長であるB(以下「b」という。)において、
●(省略)●ウ本件業務提携契約締結後、被告は原告エンジンを用いてSD装置を製造、
販売したが、そのSD装置には、原告エンジンを用いたことを示す「SD
Eプレート」である本件プレートが貼付されていた。
原告は、平成16年、本件特許、965特許等に係る各発明について特
許出願をした。
エ ●(省略)●
(本項につき、乙14)
オ ●(省略)●
(本項につき、乙15)
カディスコ社は、平成24年頃、SD装置の販売実績を伸ばしていた。そこで、被告が、原告に対し●(省略)● (争いがない事実)
キ原告と被告の間では、 ●(省略)●
(本項につき、争いがない事実のほか、甲28)
ク ●(省略)●
(本項につき、争いがない事実のほか、甲29、30、乙17、18)
ケ原告の代表取締役副社長であるa及びcは、平成26年10月8日、被
告を訪問し、被告の相談役b、被告の代表取締役半導体社社長であるD
(以下「d」という。)と打合せ(以下「10月8日打合せ」という。)
を行った。
10月8日打合せでは、 ●(省略)●(本項につき、争いがない事実のほか、甲30、乙18、弁論の全趣旨) 90 コ ●(省略)● (甲31、乙19)
サ ●(省略)● (甲33、乙67)
シ ●(省略)●
ス ●(省略)●
(本項につき、争いがない事実のほか、甲35、36)
セ原告の代表取締役であるeは、入院したaに代わり、原告における被告
との間の連絡窓口を務めることになり、 ●(省略)● (甲8、乙80、
82)
ソ ●(省略)●
(本項につき、甲37、乙38、75)
タ ●(省略)● (甲8)
チ ●(省略)●
(本項につき、甲8)
⑵ 原告による許諾の有無及びその内容について
ア原告及び被告は、平成26年10月8日に10月8日打合せを行い、その際、被告から、 ●(省略)● (前記
ケ)。
被告は、10月8日打合せにおいて、 ●(省略)● 本件許諾を原告が被
告に対してした旨主張する。被告が作成し原告の代表取締役副社長a及
びcが署名した10月8日議事録には前記
ケの記載がある。また、当
時、被告の代表取締役半導体社社長であったdは、aとの間で、●(省略)●原告による許諾が、場合により相当長い期間にわたり多くのSD
エンジンに適用されることになることについての記載は全くなく、上記
の「●(省略)● 」が被告が主張するような意味のものであるとは直ち
には認められない。10月8日打合せ時やその後の状況をみると、 ●
(省略)● 原告被告間で、被告が主張する内容の本件許諾を前提にして交渉がされていたことを直ちには認めるに足りず、かえって、原告は、91 ●(省略)● とするなどしていた。これらによれば、10月8日打合せ
で、原告と被告間で、被告が主張する内容の本件許諾がされたと認める
に足りない。
また、本件業務提携契約の内容は ●(省略)● 。
したがって、10月8日打合せにおいて、原告が、被告に対し、 ●(省略)●被告が開発、製造したSDエンジンを搭載したSD装置すなわち
対象製品1⑵Bを製造して販売することについて許諾したとは認めるに
足りない。
イもっとも、10月8日打合せの内容について、cは、原告は被告に対し、
●(省略)● と認識していたと陳述し(乙124)、本件回答の内容(前記⑴サ)もこれに沿う。
これらによれば、原告は、10月8日打合せにおいて、被告に対し、 ●
(省略)● と認められる。そして、一般に、試作機を顧客に提供して顧
客の満足を得た結果、当該製品を販売するに至る場合、顧客に対し、試
作機をそのまま販売することもあれば、試作機に代えて同一仕様の製品を販売機として販売することもあるのであり(弁論の全趣旨)、原告も
そのことを踏まえて、試作機1台に関する許諾をした以上、 ●(省略)
●の限度において、本件各発明の実施を許諾したものと認められる。な
お、このような試作機1台及びそれに対応する販売機の製造、販売の限
度における本件各発明の実施の許諾は、本件業務提携契約で定められた事項に対して、個別事情に基づく例外的な扱いを定めたものとして●
(省略)● することができると解される(原告も、上記試作機1台の製
造等について本件各発明の実施の許諾があったことは認めている。)。
●(省略)● (前記
サ、タ)。
ウ以上から、原告は、10月8日打合せにおいて、被告に対し、被告が主張する本件許諾をしたと認めるに足りず、被告による全ての対象製品192
の製造、販売について、原告の許諾があったとは認められない。もっ
とも、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号1の対象製品1⑵Bの製造、
販売については、原告の許諾があったと認められる。
7争点⑥(被告が対象製品1⑵Bを製造等するおそれがあるか。)及び争点⑦
(廃棄の必要があるか。)について被告は、平成29年9月に被告エンジンBを搭載した対象製品1⑵Bの受注
を停止し、その後、被告エンジンBとは別に開発した被告エンジンAを搭載し
た対象製品1⑴、1⑵Aを製造、販売等するようになった。また、販売済みの
対象製品1⑵Bについては、順次、搭載されている被告エンジンBを被告エン
ジンAに交換する改造を行った(なお、さらに、令和3年12月をもって、対象製品1⑴、1⑵Aの製造、販売等も終了した。)(前記第2の1⑷ウ、オ)。
これらの事実経過によると、被告が、今後、SD装置を販売するに当たり、自
ら開発した被告エンジンAではなく被告エンジンBを製造してこれをSD装置
に搭載するとは考えにくく、本件で提出された各証拠及び弁論の全趣旨によっ
ても、同様である。
したがって、被告が対象製品1⑵Bを製造等するおそれがあるとは認めるに
足りず、その製造等の差止請求は認められず、したがって、廃棄の請求にも理
由がない。
8争点⑧(原告の受けた損害又は損失及び額)及び争点⑨(原告に過失がある
か、また、これを考慮して損害賠償額を定めるべきか。)について
⑴ 認定事実
前提事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められ
ア対象製品1⑵Bは、SD装置であるところ、筐体、ステージ(X、Y、
θ軸)、搬送系、SDエンジン及び制御用ソフトウェア(CPU)等によって構成される。 93 筐体は、例えば、幅2.71m、奥行1.715m、高さ1.85m程
度の大きさがあり、搬送系、SDエンジン及び制御用ソフトウェア等を
内蔵する。
ステージのうち、X軸は、シリコンウェハを真空吸着して固定したカッ
ティングテーブルを、ロード・アンロード位置と加工部の間で移動させ、
加工時には、SDエンジンの位置を固定しつつカッティングテーブルを
移動することにより、シリコンウェハと対物レンズとをシリコンウェハ
の主面に沿って移動させる。また、Y軸は、SDエンジンを加工ライン
に移動させる。θ軸は、カッティングテーブルを回転させ、シリコンウ
ェハのストリートがX軸と平行になるよう調整したりする。
搬送系は、加工前には、シリコンウェハを収納したカセットからロード
ポートにおいてシリコンウェハを引き出し、ロードステージ上のシリコ
ンウェハをロードアームで吸着し、観察(アラインメント)用顕微鏡に
よる記録(外観形状の記録によるシリコンウェハの中心、方向の算出)
を経てカッティングテーブルに搬送し、また、加工後には、処理済みのシリコンウェハをカッティングテーブルからアンロードステージに搬送
し、アンロードステージ上からカセットに格納する。
SDエンジンは、レーザ加工エンジンユニット、Z軸ステージ及びソフ
トウェア設計によって構成される。このうちレーザ加工エンジンユニッ
トは、加工用レーザ光の光源、対物レンズ及び光学系を有するレーザ照射機構、測距用レーザ光の光源、位置検出素子及び光学系からなるAF
ユニット、対物レンズ保持機構を含む。
ステージやSDエンジン等の制御は、制御用ソフトウェアによって行わ
れ、カッティングテーブルに載置されたシリコンウェハは、観察用顕微
鏡による観察の結果に基づき、制御用ソフトウェアによって制御されたステージやSDエンジン等により加工される。 94 (本項につき、甲13)
イ原告は、SDエンジンを製造して、これを被告、ディスコ社などの半導
体製造装置の製造業者に対し販売しているが、自らSD装置を製造、販売
していない。被告及びディスコ社は日本国内においてSD装置を製造、販
売しており、その販売先はサムスン社など専ら海外法人であった。
原告は、被告に対し、原告エンジンを基本的に1台●(省略)● 円(消
費税別)で販売していた。(前記6⑴ エ)
ウ被告は、平成28年4月から平成30年8月まで、別紙対象製品1⑵B
売上一覧記載番号 ●(省略)● のとおり、いずれも海外の法人であるサム
スン社、TI社、SKハイニックス社、STATSチップPAC、シングネティクス等の半導体の製造業者に対し、対象製品1⑵Bを合計 ●(省略)
●台販売した。
●(省略)●RMモジュールとは、SD装置を、ポリッシュグラインダ
というシリコンウェハの薄片化とダメージ除去を行う装置に接続するた
めに開発された装置であり、RMモジュール等をSD装置に接続することにより、SD装置によるレーザ加工の工程に続いてテープ貼替え等の
工程を実現することが可能となる。RMモジュール等をSD装置に接続
した場合、SD装置でレーザ加工されたシリコンウェハは、中間ユニッ
トを介してRMモジュールに搬送され、RMモジュールにおいてダイシ
ングテープの貼付と表面保護テープの剥離が行われる。SD装置とRMモジュールは、それぞれモニタと制御機構を備え、個別に制御すること
が可能である。 ●(省略)● (甲73、乙95~97、128、129)
被告は、RMモジュール付きSD装置の定価を●(省略)● 円、RMモ
ジュールを接続しないSD装置の定価を ●(省略)● 円と定めており、
したがって、RMモジュール付きSD装置の販売価格におけるSD装置本体の割合は約 ●(省略)● %であった。(乙139) 95 ●(省略)●
被告は、その後、いずれも海外の法人であるサムスン社、TI社、スマ
ートに対し合計 ●(省略)● 台の対象製品1⑴、⑵Aを販売し、日本法
人であるTDK株式会社に対し ●(省略)● 台の対象製品1⑴を販売し
た。
エ海外においては、EOTechnicsCo. ,Ltd ,(以下「E
O社」という。)、徳力激光、長城科技、無錫先導知能設備など複数の
法人がSD装置を製造、販売しており、例えば、EO社は、平成27年
から平成28年にかけて、サムスン社に対し、約50台のSD装置を販
売した。(甲73、乙66)
半導体製造業者は、一般的には、その優位性を確保するため、複数の業
者から半導体製造装置を購入する体制を採用している。例えば、サムス
ン社は、当初は被告のみからレーザダイシング装置を購入していたが、
平成23年頃からは被告及びEO社から、平成25年頃から平成28年
頃まではEO社及びディスコ社からSD装置を購入していた。サムスン社は、同年4月20日、原告からの申入れにより、原告に対しEO社か
ら新規にSD装置を購入することは控えたい旨述べ、同年頃以降は被告
及びディスコ社からSD装置を購入していた。(甲75、乙94、95)
オ原告と被告は、●(省略)● 本件業務提携契約を締結した。本件業務提
携契約においては、原告は被告に対し、 ●(省略)● ここで原告が被告に対し実施を許諾したステルスダイシングに関する各発明、ノウハウに
は、原告が当時ステルスダイシングに関して有していた、188特許、
711特許及び108特許に係る特許権を含む ●(省略)● 件の特許権
に係るもののほか、本件業務提携契約締結後に原告が取得することにな
る特許権に係る各発明等も含まれていた。原告は、平成16年には、本件特許及び965特許について特許出願をし、その後、原告と被告は、96 ●(省略)● なお、原告は、平成22年に本件特許権及び965特許に
係る特許権を取得したほか、その後も、ステルスダイシングに関する特
許権を取得し、平成29年11月には、被告に対し、被告によるSD装
置等の製造、販売等が、原告の特許ポートフォリオを侵害するなどと主
張した。(前記6⑴ イ、ウ、オ、乙74、乙107~109)
原告は、遅くとも平成31年4月までに、第三者との間で、原告が、同
第三者に対し、原告エンジンを供給することを前提に、ステルスダイシ
ングに関する特許に係る各発明を実施してSD装置を製造、販売するこ
とを許諾し、同第三者は原告に対し、SD装置の販売価格の ●(省略)
●%相当額を実施料(ロイヤリティ)として支払うことを内容とする業務提携契約を締結した。同契約においては、同契約で定める条件に違反
する同第三者製造に係るSD装置が市場において発見された場合には、
同第三者は原告に対し、SD装置の販売価格の35%相当額か原告の逸
失利益のいずれかを支払う旨の損害賠償額の定めがされていた。(甲7
4)
⑵ 特許法102条2項の適用について
ア原告は、金銭請求に関する主位的請求についての選択的主張①として、
特許法102条2項に基づく損害額を主張する。
特許法102条2項は、民法の原則の下では特許権侵害行為によって特
許権者が受けた損害の賠償を求めるためには、特許権者において、損害の発生及び額、これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張立証しな
ければならないところ、その立証等には困難が伴い、その結果妥当な損
害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が
侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の
受けた損害の額と推定することとして、特許権者の立証の困難の軽減を図った規定であり、このような同項の趣旨に照らせば、特許権者に侵害97 者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうとい
う事情が存在する場合には、同項の適用が認められると解すべきである。
そして、特許法102条2項は、上記のとおり、特許権者の立証の困難
の軽減を図って、侵害者が侵害行為によって受けた利益の額を特許権者
の受けた損害の額と推定するものであり、これが推定である以上、この推定は、侵害者による特許権侵害行為がなかった場合に、侵害者が特許
権侵害行為により受けた利益やそれと同質といえる利益を特許権者が獲
得し得るという関係があることを前提としているといえる。そうすると、
侵害者による特許権侵害行為がなかったとしても、侵害者が特許権侵害
行為により受けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係が類型的にない場合には、同条適用の基礎を欠くといえる。同条
適用に当たり、特許権者が販売しているのが当該特許の実施品でなくと
も、侵害品と競合する製品であれば、侵害者が特許権侵害行為により受
けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係があり
特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するといえるのに対し、そもそも侵害者が
特許権侵害行為により受けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得
し得るという関係が類型的になければ、特許権者に侵害者による特許権
侵害行為がなかったとしても、上記にいう利益が得られたであろうとい
う事情が存在するとはいえない。
イ本件において、原告は、SDエンジン(原告エンジン)を製造、販売し
ているが、SD装置を製造、販売することはしておらず、SDエンジン
はSD装置の一部品であって、SDエンジンの需要者は半導体製造装置
の製造業者であるのに対し、SD装置の需要者は半導体の製造業者であ
る(前記⑴ア~エ)。原告は、本件各発明の実施品であるSD装置の製造等に使用される部品に相当するSDエンジンを製造、販売等するにす98 ぎず、SD装置を販売等していない。そうすると、被告による特許権侵
害行為がなかった場合に、原告が、被告に代わってSDエンジンを搭載
した装置であるSD装置を販売できたわけではない。本件で被告の利益
は被告がSD装置を販売したことにより得た利益であり、被告による本
件特許権の侵害行為がなかったとしても、原告がそのようなSD装置を販売等することによる利益と同質の利益を得ることができたとは認めら
れないから、被告が特許権侵害行為により受けた利益について、類型的
に原告が獲得し得るという関係がない。そうすると、本件においては特
許法102条2項の適用の基礎を欠く。
なお、原告は、被告及びディスコ社が海外及び国内においてほぼ独占的にSD装置を販売しており、SD装置に搭載するSDエンジンは原告の
みが販売している等と主張する(前記第2の2⑻ (原告の主張)ア)。
関係各証拠によっても、同事実は認めるには足りないが、同事実があっ
ても、原告がSD装置を販売等していない以上、前記に述べた理由によ
り、被告がSD装置を販売したことによる利益に基づく特許法102条2項の推定の基礎がない。
⑶ 特許法102条1項の適用について
ア原告は、金銭請求に関する主位的請求の選択的主張②として、特許法1
02条1項に基づく損害を主張する。
特許法102条1項は、民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であ
り、侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図
ることにより、より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である。
同項の文言及び趣旨に照らせば、特許権者等が「侵害行為がなければ販
売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者の製品であれば足り、侵害品と、市場において、侵害者99 の侵害行為がなければ販売等することができたという競合関係にある製
品をいうものと解するのが相当である。
イ本件で、被告は、侵害品である対象製品1
BすなわちSD装置を販売
したが、SDエンジンを搭載してステルスダイシングを行う装置がSD装
置なのであるから、SD装置においてSDエンジンは必要なものであったといえる。
特許法102条1項における、特許権者等が「侵害行為がなければ販売
することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受
ける特許権者の製品であれば足りるところ、特許権者である原告はSD
エンジンである原告エンジンを販売している。そして、SD装置にはSDエンジンは必要なものであったといえるのであるから、被告によるS
D装置の販売により原告エンジンの販売数量が影響を受ける。したがっ
て、本件には、特許法102条1項を適用する基礎があるといえる。
ウ特許発明を実施した特許権者の製品において、特許発明の特徴部分がそ
の一部分にすぎない場合であっても、特許権者の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定されるという
べきである。もっとも、特許権者の製品のうち、特許発明の特徴を有する
部分が特許権者の製品の販売による利益の全てに貢献しているとはいえな
いことが認められる場合には、上記の事実上の推定が一部覆滅されるとい
うべきである。
原告エンジンは、ステルスダイシングを行う装置(SD装置)に用いら
れるものであり、原告が供給したSDエンジンを搭載したSD装置に「 S
tealth Dicing Engine inside!」との記載のある本件プレートの貼付がさ
れていたことなどからもうかがえるように、原告エンジンは、それを用
いることでステルスダイシングをすることができることに高い顧客吸引力があったと認められる。他方、本件各発明は、ステルスダイシングに100 付随して加工対象物の端部における加工の精度を従来技術より高めるこ
とにより加工の効率化を図るというものであり、その部分の顧客吸引力
は、ステルスダイシングを行うことができることに比べて相当に小さい
と認められる。また、対象製品1⑴及び1⑵Aには、本件各発明に代替
する技術として低追従によるものが導入されており(前記第2の1⑷オ、
同⑸、前記4)、技術的には、ステルスダイシングを行う場合、本件各
発明には代替することが可能な技術があったといえた。これらからする
と、原告エンジンのうち、本件各発明の特徴を有する部分が原告エンジ
ンの販売による利益の全てに貢献しているとはいえず、前記の事実上の
推定は一部覆滅され、その程度は少なくとも8割5分であると認めるのが相当である。
エ本件で、原告は、第2の2⑻ (原告の主張)イのとおり主張し、原告エ
ンジン一式の販売価格が●(省略)● 円又は●(省略)● 円であると主張
するが、原告は、原告エンジンを基本的に被告に対して1台 ●(省略)●
円で販売していた(前記
イ)。また、原告は、上記原告の主張を前提に原告エンジン一式の利益が●(省略)● 円又は●(省略)● 円であると主
張する。被告は、前記
ウのとおり、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番
号●(省略)● のとおり、本件特許権の侵害となる対象製品1⑵Bを合計
●(省略)● 台販売し、上記原告の主張によっても、その利益の合計は ●
(省略)● 円であり、上記ウの推定覆滅をした後の額は ●(省略)● 円となる。この額は、後記
で認定する1億1916万1399円よりも小さ
い。
オ原告は、特許法102条1項の損害の算定に当たり、SD装置販売後に
交換されると主張するLDモジュールの販売による利益も主張する。し
かし、原告が主張するLDモジュールの交換は、 ●(省略)● 年後以降というSDエンジンの販売から時間的に隔たった時期にされるものをい101 うものと解され、その交換が確実であるともいえず、LDモジュールが
原告エンジンと一体のものとして「侵害行為がなければ販売することが
できた物」であるということはできない。
また、特許法102条1項は、同項各号を含めた同項全体によって特許
権者の損害額を推定するものであり、同項に加えて同条3項が適用されるものではない。
⑷ 特許法102条3項の算定による損害について
ア特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭
の額に相当する額」は、当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施
料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要
性、他のものによる代替可能性、当該特許発明を当該製品に用いた場合の
売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、特許権者と侵害者との競業関係や
特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率
を定めるべきである。
イ当該特許発明に含む発明等についての実際の実施許諾契約における実施
料率についてみると、本件において、原告と被告は、原告が被告に対し原
告エンジンを販売するとともに、被告が原告がステルスダイシングに関し
て特許権を有するなどする各発明を実施してSD装置を製造、販売するこ
との対価として、SD装置の販売価格の●(省略)● %相当額を実施料として支払うことを内容とする本件業務提携契約を締結した(前記
オ)。
また、原告は、遅くとも平成31年4月までに、第三者との間で、原告が、
同第三者に対し、原告エンジンを供給することを前提に、SD装置の販売
価格の●(省略)● %相当額を実施料として支払うことを内容とする業務
提携契約を締結した(前同)。本件業務提携契約においては、その後、被告が原告に対して支払う実施料がSD装置の販売価格の ●(省略)● %相102 当額に変更されたものの、 ●(省略)● を原因としてされたものであって
(前同)、当時の原告と被告との特段の関係から定められたものいえる。
ここで、上記各業務提携契約においては、原告が被告及び第三者に対し
て原告エンジンを販売し、被告及び第三者は原告エンジンを使用してS
D装置を製造、販売することが前提となっていたから(前記⑴オ)、原告は、ステルスダイシングに関する一連の特許権に係る各発明等の実施
料に加えて、原告エンジンの販売による利益も獲得し得るものであった。
そうすると、上記各業務提携契約で定められた実施料率は、原告が、原
告のステルスダイシングに関する一連の特許権に係る各発明等を実施す
る者との間で業務提携をすることにより、原告エンジンの販売に伴う利益を獲得し得ることなど考慮して決められたものであったと認められる。
したがって、原告が特許権を侵害した者との間で特許権の侵害があった
ことを前提として合意する場合には、必ずしも同様の水準で実施料率が
定められるとはいえず、原告エンジンの販売に伴う利益を獲得し得るこ
とを前提としないことから、上記料率より相当に高い料率になると推認できる。
そして、原告と第三者との間の上記業務提携契約においては、同契約で
定める条件に違反する同第三者が製造したSD装置が市場において発見
された場合には、同第三者は原告に対しSD装置の販売価格の35%相
当額を支払うなどの定めがされている(前記
オ)。この定めは、同契約の各当事者が様々な義務を負ったことを前提として当該当事者が契約
に違反した場合の料率の定めであって、これが、原告エンジンを販売し
ない場合の実施許諾契約における実際の実施料率であると確定的に認め
るには足りないが、この定めは原告エンジンを販売しない場合の実施料
率が前記の ●(省略)● %より相当に高くなることをうかがわせるものである。 103 なお、被告の主張中には、被告が支払う実施料には本件プレートの貼付
の対価が含まれている旨の主張がある、被告が原告エンジンを用いて製
造、販売したSD装置には、原告エンジンを用いたことを示す本件プレ
ートが貼付されていた(前記6⑴ ウ)が、本件プレートは、原告の商号
とともに「 Stealth Dicing Engine inside!」と記載されたものであって、
原告エンジンが内蔵されているものを明らかにするものといえ、本件プ
レートの交付及びSD装置への貼付の許可は、基本的には原告エンジン
の販売に付随するものであると認められる。したがって、本件業務提携
契約において定められた被告が原告の有する特許発明等を実施してSD
装置を製造、販売することの対価として定められた実施料において、本件プレートの交付及びSD装置への貼付の許可の対価の部分があったと
までは認められない。
ウ当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性について
みると、本件各発明は、従来のレーザ加工技術においては、加工の開始
に当たりレーザ光の焦点が切断予定ラインに合って安定状態になるまでの間切断予定ラインではない部分が加工されることになるという問題点
に対し、集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる初期
位置にレンズを保持するように保持手段を制御し、切断予定ラインの一
端部において改質領域が形成された後に、レンズを初期位置に保持した
状態を解除する等保持手段を制御すること等により、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加
工を行うことができるという効果があるというものである(前記1⑵)。
本件各発明は、ステルスダイシングに付随して加工対象物の端部におけ
る加工の精度を従来技術より高めることにより加工の効率化を図るとい
うものであって、一定の条件でレーザ光をウェハ内部に集光してウェハ内部に加工層を形成し、その後ウェハに引っ張り応力を加え、ウェハ表104 面に形成される集積回路に損傷を与えずに加工層を起点としてウェハを
分割するというステルスダイシング(前記第2の1⑷ア)そのものにつ
いての技術ではない。
また、被告は、対象製品1⑴及び1⑵Aには、本件各発明に代替する技
術として低追従によるものを導入しており(前記第2の1⑷オ、同⑸、
前記4)、本件各発明には代替可能な技術も存在するといえる。このよ
うな本件各発明の技術内容等に照らすと、本件各発明がSD装置である
対象製品1⑵Bの売上げの増加に対して、特段の貢献をしたと認めるに
は足りない。
エ前記各業務提携契約においては、原告が有するステルスダイシングに関する一連の特許権に係る各発明等の実施が許諾されていて、同各発明に
は本件業務提携契約締結当時において原告が有する少なくとも ●(省略)
●件の特許権に係るものが含まれていた(前記⑴ オ)。前記各業務提携
契約において、原告が有するステルスダイシングに関する一連の特許権
に係る各発明等の実施が一括して許諾されたといえるところ、それらの各発明等について、ステルスダイシングそのものをすることに関係する
発明等があることがうかがえる一方、本件各発明は、ステルスダイシン
グに付随して加工対象物の端部における加工の精度を従来技術より高め
ることにより加工の効率化を図るというものであり、代替技術もあり、
原告が実施を許諾したステルスダイシングに関して有する他の特許権に係る各発明等と比較して特段の重要性を有するものであるとは認めるに
足りない。
なお、被告は、本件各発明が原告と被告との間の共同開発の中でされた
ものであり本件特許が共同出願されるべきものであったことや、本件許
諾をした際の原告の代表取締役副社長の言動が被告をして対象製品1⑵Bの販売等について許諾を受けたと誤信させるものであった等という事105 情(前記第2の2⑻(被告の主張)ウ
)を挙げた上で、これらについ
て本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を定める上
で考慮すべきであると主張するが、被告が主張する上記各事実自体を認
めるに足りず、被告の上記主張には理由がない。
オ以上から、本件において、原告と業務提携関係にない者がステルスダイシングに関する一連の特許権に係る相当数の各発明等を実施する場合に合
意することが想定される実施料率は●(省略)● %より相当に高い料率に
なると推認することができるが、本件各発明は、ステルスダイシングをす
ること自体についてのものではなく、代替技術もあり、対象製品1⑵Bの
売上げへの貢献の程度も高いものとは認めるに足りず、原告が業務提携契約において実施を許諾した原告が有するステルスダイシングに関する一連
の特許権に係る相当数の各発明等の中では、他の発明等と比較して特段の
重要性を有するものとは認めるに足りない。これらを考慮し、原告が本件
各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、対象製品1 ⑵B
の売上高の5%相当額であると認めるのが相当である。
そして、被告は、平成28年4月から平成30年8月まで、原告の特許
権を侵害する製品として対象製品1⑵Bを合計 ●(省略)● 台販売し合
計●(省略)● 円を売り上げた(前記 ⑴ウ)から、原告が本件各発明の
実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、その5%相当額である
●(省略)● 円であると認めるのが相当である。
カまた、本件の内容等に照らし、原告が本件訴訟追行に費やした弁護士費
用のうち ●(省略)● 円は、被告の不法行為と相当因果関係がある損害と
して被告が負担すべきである。
キ以上によれば、被告による対象製品1⑵Bの製造、販売により、原告は、
1億3116万1399円の損害を受けたものと認められる。
【計算式】 ●(省略)● ×5%≒●(省略)● 106 ●(省略)● =131,161,399
⑸ 民法709条における損害(特許法102条の適用を主張しないもの)に
ついて
原告は、被告による対象製品の販売行為がなければ原告が原告エンジン一
式等を販売等できたと主張して、特許法102条の適用を主張せずに、民法709条に基づく損害を主張する。
原告は、平成19年頃から、被告のほかディスコ社に対しても原告エンジ
ンを販売し、被告とディスコ社は日本国内においてSD装置を製造、販売し
ていた。そして、その販売先はサムスン社など専ら海外法人であった。日本
国外においては、EO社、徳力激光、長城科技、無錫先導知能設備など複数の法人がSD装置を製造、販売していた。また、半導体製造業者は、被告及
びディスコ社のSD装置の販売先であるサムスン社も含め、一般的には、そ
の優位性を確保するため、複数の業者から半導体製造装置を購入する体制を
採用しており、例えば、サムスン社は、当初は被告からのみレーザダイシン
グ装置を購入していたが、平成23年頃からは被告及びEO社から、平成2年頃から平成28年頃まではEO社及びディスコ社から、同年頃以降は被
告及びディスコ社からレーザダイシング装置を購入しており、EO社は、平
成27年から平成28年にかけて、サムスン社に対し、約50台のSD装置
を販売した。(以上につき、前記第2の1⑷イ、前記6⑴ オ、カ、前記⑴ ウ、
エ)。
これらによれば、SD装置の供給者及び需要者はいずれも日本国内の者に
限られない。そうすると、本件で問題となるSD装置を製造、販売する者が
被告とディスコ社のみであるとはいえないのであり、被告が対象製品1⑵B
を製造、販売することにより、その販売数量について、ディスコ社によるS
D装置の販売数量が減少し、その結果、その数量について原告のディスコ社に対する原告エンジンの販売数量が減少したという事実を認めるには足りな107 い。
したがって、被告による対象製品1⑵Bの製造、販売により、その販売数
量について原告が原告エンジンを販売することができなくなったと認めるに
は足りず、被告により製造、販売された対象製品1⑵Bの数量について原告
が原告エンジンの販売ができなくなりそれによって得られるはずであった利益を失ったとは認められない。
⑹ 過失相殺について
被告は、原告の代表取締役副社長の平成26年10月8日の言動を理由と
して、被告が対象製品1
Bの製造販売を行うに至ったことには、原告の過
失がある旨主張する。
しかし、被告が仮に原告側の平成26年10月8日の言動によりその許諾
があったものと考えて対象製品1⑵Bを製造、販売したとしても、そのこと
について原告に過失があったとは認められない。すなわち、前記6⑵のとお
り、原告は、平成26年10月8日、被告に対し、 ●(省略)● 試作機1台
の製造、提供及びこれに対応する販売機の製造、販売の限度で本件各発明の実施を許諾したにすぎない。原告と被告との間で、10月8日打合せにより、
原告が被告に対し、 ●(省略)● 被告が開発、製造したSDエンジンを搭載
したSD装置すなわち対象製品1⑵Bを製造して販売することについて許諾
し、被告が原告に対しロイヤリティを支払うという、被告が主張する内容の
許諾が明確な文言で確認されたとはいえない。そもそも、本件業務提携契約の内容は ●(省略)● ものとされており、原告と被告が、被告が主張する前
記合意内容を合意するに当たっては ●(省略)● が必要であったが、そのよ
うな書面は作成されなかった。このような状況からすると、被告が仮に
月8日打合せの際の原告側の言動により許諾があったものと誤信して対象製
品1⑵Bを製造、販売したとしても、それは上記のとおりの客観的状況を踏まえずに被告が誤信したといえるものであり、その誤信について原告に過失108 相殺の根拠となるような過失があったとは認められない。
⑺ 不当利得について
被告が対象製品1⑵Bの製造、販売により法律上の原因なく受けた本件特
許の実施料相当額の利益額は、前記⑷の損害額を超えない。
⑻ 小括以上から、原告は、被告による対象製品1⑵Bの製造、販売により、1億
3116万1399円(前記⑷)の損害を受けたものというべきである。
第4 結論
以上のとおり、原告の被告に対する各請求は、不法行為による損害賠償請求
権に基づき1億3116万1399円及びこれに対する不法行為より後の日である平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を
求める限度で理由があるから、同限度で認容し、その余はいずれも理由がない
から棄却することとし、主文第1項には仮執行宣言を付し、また、仮執行免脱
宣言は相当でないのでこれを付さないこととする。
よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長
裁判官 柴田義明
裁判官 佐伯良子
裁判官 仲田憲史
109 別紙
対象製品目録
次の型番のレーザダイシングマシン
1⑴ ML300EXシリーズ
(その型番中に「ML300EX」を含むもの)
⑵ ML300PlusXシリーズ
(その型番中に「ML300PlusX」を含むもの)
Aうち「NS900」以外の型番のレーザエンジンを搭載するもの
Bうち「NS900」の型番のレーザエンジンを搭載するもの
2ML200EXシリーズ
(その型番中に「ML200EX」を含むもの)
以上
110 別紙
本件発明図面
【図1】 【図3】
111 【図4】 【図6】
【図7】 【図8】
112 【図10】 【図11】
以上
113 別紙●(省略)●
114 別紙
対象製品1動作態様
1対象製品1⑵B
⑴ 面取り部分のあるシリコンウェハの場合
⑵ 面取り部分のないシリコンウェハの場合
115 2対象製品1⑴、1⑵A
⑴ 面取り部分のあるシリコンウェハの場合
⑵ 面取り部分のないシリコンウェハの場合
以上
出典: 平成30年(ワ)第28931号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →