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判例調査 電気

特許権(携帯情報通信装置)

0.01% 認定料率
▲競業関係▼代替技術あり▼ライセンス実績なし▼非競合
事件番号 令和元年(ワ)第32239号
判決日 2022/06/30
裁判所 東京地裁
認容額 819万9458円(=売上高819億9458万9000円 × 0.01%)+遅延損害金(令和元年12月13日から年5分)

📋 判決要旨

判決日: 2022年6月30日 | 裁判所: 東京地裁 | 料率: 0.01%(102条3項)


株式会社DAPリアライズ(特許管理会社)が、シャープのAQUOSシリーズ7製品(Snapdragon搭載スマートフォン6機種+タブレット1機種)が特許第4555901号(携帯情報通信装置における高解像度画像の外部表示機能(=スマートフォン内蔵の画面より高解像度の画像を、外部ディスプレイに表示する技術。伝送方式はTMDS・LVDS等を含み、HDMI限定ではない))の技術的範囲に属すると主張した事件。裁判所は技術的範囲への属否および無効理由(進歩性欠如、明確性・サポート要件違反等6件)をいずれも原告有利に判断し、侵害を認定した。差止請求はなく、損害賠償請求のみ。


料率の決め方:(102条3項=特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額)

  • 📊 基準: 被告シャープのアプリ特許ライセンス契約実績。被告は携帯電話メーカー10社との間でアプリ特許のライセンス契約を締結しており、パテントファミリー単位で1件あたりのライセンス料率は●(黒塗り)%と算出される。裁判所はこの実績を「業界における実施料の相場等を示すもの」として参考にした
  • 📊 統計データ: 原告は[経産省2010年調査報告書](https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/guideline/list15.html)の「電気」分野平均2.9%・「コンピュータテクノロジー」平均3.1%を引用 → 裁判所は採用せず。理由:同報告書自体がエレクトロニクス業界では「一つのデバイスが関連する特許は膨大な量」であり「クロスライセンスが主流で相場は1%未満」と記載しており、上記平均値はスマートフォン分野の実態を反映しない
  • 📉 引き下げ要因: 本件発明の代替可能性 — 外部表示機能の実現に本件発明が不可欠とまではいえず、他の技術で代替できないことを認めるに足りる証拠はない
  • 📉 引き下げ要因: 利益への貢献度が不明確 — 原告は「本件発明により製品1台あたり1000円のコスト削減」と主張したが、裁判所は本件発明を採用しない場合でも製造コストの低い部品構成を試みることは製造業者として当然であるとして退けた
  • 📉 引き下げ要因: 原告に実施許諾の実績なし — 原告は他社への実施許諾を営業方針とするが、これまで一度も実施許諾契約を締結した実績がない
  • 📉 引き下げ要因: 競業関係の不存在 — 原告は製造販売を行わない特許管理会社であり、被告との競業関係がない
  • 結論: 上記諸事情を総合考慮し、実施料率0.01%と認定

認容額819万9458円(=売上高819億9458万9000円 × 0.01%)+遅延損害金(令和元年12月13日から年5分)。

📜 判決文全文

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原告の主張
被告の主張
裁判所の判断
▼ 判決文全文(クリックで折りたたみ)
主 文

1被告は、原告に対し、819万9458円及びこれに対する令

和元年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員

を支払え。

2原告のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。

3訴訟費用はこれを4分し、その1を被告の負担とし、その余は

原告の負担とする。

4この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
第1 請求

1主位的請求

被告は、原告に対し、3000万円及びこれに対する令和元年12月13日

から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2予備的請求被告は、原告に対し、3000万円及びこれに対する令和元年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要

1事案の要旨本件は、発明の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム」とする特許第4555901号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が、別紙「被告製品目録」記載の各製品(以下、併せて「被告各製品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属するものであり、被告による被告各製品の製造販売が本件特許権の侵害に当たると主張して、主位的に、(1) 不法行為による損害賠償請求権に基づき、被告各製品に係る実施料相当額(特許法102条3項)の合計7億2000万円の一部として、3000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年12月13日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、予備的に、(2) 本件発明の実施料相当額の支払を免れたことによる不当利得返還請求権に基づく、利得金の合計7億2000万円の一部として、3000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年12月13日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲の証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者

ア原告原告は、各種情報処理・通信システムの考案・開発等を目的とする株式会社である。

イ被告被告は、電機メーカーであり、スマートフォンを始めとする携帯情報通信装置の企画、製造、販売等を行っている株式会社である。

(2) 本件特許

ア原告は、平成17年12月21日(優先日平成16年12月24日及び平成17年7月28日、優先権主張国日本)を出願日とする特許出願(特願2005-367373号)の一部を分割して出願した特許出願(特願2006-277062号)の一部を更に分割して、平成20年6月23日、新たに本件特許の特許出願(特願2008-162678号。以下「本件出願」という。)をし、平成22年7月30日、本件特許権の設定登録(請求項の数4)を受けた(甲1ないし3)。

イ原告は、平成28年5月19日、本件出願の願書に添付した特許請求の範囲を訂正することを求める旨の訂正審判請求(訂正2016-390069号事件)をしたところ、特許庁は、同年10月17日、上記特許請求の範囲の請求項2ないし4について訂正することを認める一方、同請求項1に係る訂正についての審判請求は成り立たない旨の審決をした。そこで原告は、同年11月29日、審決取消訴訟(
知的財産高等裁判所平成28年(行ケ)第10257号事件)を提起したが、同裁判所は、平成29年10月19日、原告の請求を棄却する判決をし、上記審決は同年11月7日確定した(甲1、3)。

ウ原告は、平成30年4月9日、上記イの特許請求の範囲を本件特許の特許請求の範囲のとおり訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求める旨の訂正審判請求(訂正2018-390070号事件)をしたところ、特許庁は、同年7月25日、本件訂正を認める旨の審決をし、同審決は、同年8月2日確定した(以下「本件訂正審判」という。審決確定後の請求項の数1。甲1、3)。

エ本件特許の訂正請求被告は、本件特許について無効審判を請求したところ(無効2020-800032)、原告は、令和3年3月22日付で、請求項1を次のとおり訂正することを求める訂正請求を行った。そして、特許庁は、同年10月12日、同訂正請求をいずれも認めた上、無効審判請求を不成立とする旨の審決をした(甲54)。

(ア) 訂正事項1「を備える携帯情報通信装置において、」とあるのを、「を備え、前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理し、前記グラフィックコントローラが、該中央演算回路の処理結果に基づき、前記単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段又は前記インターフェース手段に送信して、前記ディスプレイ手段又は前記外部ディスプレイ手段に画像を表示する機能(以下、「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記する)を有する、携帯情報通信装置において、」と訂正する。

(イ) 訂正事項2「前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、」とあるのを、「前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、」と訂正する。

(3) 特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件訂正後のもの)は、別紙「特許請求の範囲」記載のとおりである。

(4) 本件発明の構成要件の分説本件発明は、次のとおり、構成要件AないしKに分説することができる(以下、分説に係る各構成要件については頭書の符号に対応させて「構成要件A」などという。)。

Aユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;B無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;C後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;D前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;E画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;F外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;Gを備える携帯情報通信装置において、H前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、I前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、Jことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、Kことを特徴とする携帯情報通信装置。

(5) 被告各製品の構成

アイ号製品の本件発明に対応する構成イ号製品の構成を、本件発明の構成要件に対応させて表現すれば、次のとおりになる。

a入力手段としての、タッチパネルを備える。このタッチパネルは、ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータを、中央演算回路であるモバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8960。以下「MSM8960」という。)に送信する。b無線通信手段としての、無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用ICを備える。この無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用ICは、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、MSM8960(中央演算回路)に送信するとともに、MSM8960(中央演算回路)から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する。c記憶手段としての、内部メモリ及び外部メモリであるmicroSDカードを備える。この内部メモリは、MSM8960(中央演算回路)を動作させるプログラムを格納する。また、このmicroSDカードは、MSM8960(中央演算回路)で処理可能なデータファイルを格納する。dデータ処理手段としての、MSM8960(中央演算回路)を備える。そして、このMSM8960は、タッチパネル(入力手段)から受信したデータと内部メモリ(記憶手段)に格納されたプログラムとに基づき、メインアンテナ及び無線送受信用IC(無線通信手段)から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとしてmicroSDカード(記憶手段)に一旦格納し、その後読み出した上で処理する。イ号製品は、MSM8960が生成した内部用表示データ及び外部用表示データを書き込み/読み出しを行う外部SDRAMを備えており、当該SDRAMは4ギガビットのSDRAM2個から構成された合計8ギガビット(1ギガバイト)のRAMになっている。MSM8960は、処理結果に基づきデジタル表示信号とHDMI信号を生成し、当該デジタル表示信号又はHDMI信号をディスプレイ制御手段である液晶ドライバ又はインターフェース手段であるMHLトランスミッタに送信する。eディスプレイ手段としての、液晶ディスプレイパネル(ディスプレイパネル)と液晶ドライバ(ディスプレイ制御手段)を備える。そして、この液晶ディスプレイパネルは、画面解像度が1280×720 画素であり、画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示する。また、この液晶ドライバは、MSM8960から受信したデジタル表示信号に基づき液晶ディスプレイパネル(ディスプレイパネル)の各々の画素を駆動する。fインターフェース手段としての、MHLトランスミッタ及びmicroUSB端子を備える。そして、このmicroUSB端子は、外部ディスプレイ手段を備える周辺装置を接続することができる。また、MHLトランスミッタは、MSM8960から受信したHDMI信号に基づき、MHL信号をmicroUSB端子を介して周辺装置に送信する。g以上を備えるスマートフォン(携帯情報通信装置)である。hMSM8960は、無線送受信用ICから受信した画像ファイルデータをデコードして、デコード後画像データを生成する。MSM8960は、デコード後画像データを処理して、内蔵用表示データを生成する。MSM8960は、生成した内蔵用表示データを外部SDRAMの内蔵用表示データ用のメモリエリアに書き込み/読み出しを行い、液晶ドライバに送信する。MSM8960は、生成した内蔵用表示データを、補間又は間引き等の処理を行い、外部表示用データを生成し、外部SDRAMの外部表示用データ用のメモリエリアに書き込み/読み出しを行い、HDMI信号としてMHLトランスミッタに送信する。MSM8960は、外部から「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」(1920×1080 画素)を受信して、その画像を外部ディスプレイに表示させる場合、まず、外部から受信した画像データに間引き処理をして1280×720 画素の内蔵表示データを生成し、さらに、その内蔵用表示データに補間処理をして1920×1080 画素の外部用表示データを生成する。iMHLトランスミッタは、MSM8960から受信したHDMI信号を、MHL信号に変換し、該MHL信号をmicroUSB端子を介して周辺装置に送信する。j外部ディスプレイ手段に1920×1080 画素の画像を表示させる場合であっても、その画像は、液晶ディスプレイパネル用(内部用)の1280×720 画素の画像データに基づいて、画素を補間して拡大した画像であって、画像解像度は、1280×720 である。kスマートフォン(携帯情報通信装置)である。

イロ号製品は、イ号製品と同じ構成を有する。

ウハ号製品は、モバイルプロセッサがAPQ8064であること、及び、RAMが4ギガビットのSDRAM4個で構成されていることを除き、イ号製品と同じ構成を有する。

エニ号製品は、モバイルプロセッサが、MSM8660Aであることを除き、イ号製品と同じ構成を有する。

オホ号製品は、液晶ディスプレイパネルの画面解像度が1280×800 画素であることを除き、イ号製品と同じ構成を有する。

カへ号製品は、モバイルプロセッサがMSM8260Aであることを除き、イ号製品と同じ構成を有する。

キト号製品は、モバイルプロセッサがAPQ8064であること、及び、RAMが4ギガビットのSDRAM4個で構成されていることを除き、イ号製品と同じ構成を有する。

(6) 被告による被告各製品の製造販売被告は、平成24年頃から平成26年頃までの間に、被告各製品を製造、販売した(弁論の全趣旨)。

被告各製品の販売状況は、別紙「被告各製品の売上高」記載のとおりである(弁論の全趣旨)。

3争点(1) 被告各製品は、本件発明の構成要件を充足するか(争点1)

ア被告各製品は、「グラフィックコントローラ」を備えているか(構成要件D、E、F、H、Iの充足性)(争点1-1)

イ被告各製品は、データ処理手段における「処理」を行っているか(構成要件Dの充足性)(争点1-2)

ウ被告各製品における、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理方法は、本件発明の処理方法と異なるか(構成要件Hの充足性)(争点1-3)

エ被告各製品は、「単一のVRAM」を備えているか(構成要件D、Hの充足性)(争点1-4)(2) 無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否(争点2)

ア特開2000-66649号公報(乙1。以下「乙1公報」という。)を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如(無効理由1)(争点2-1)

イ特開2004-214766号公報(乙5。以下「乙5公報」という。)を主引例とする進歩性欠如(無効理由2)(争点2-2)

ウ「単一のVRAM」なる語句の意義が不明瞭であることによる明確性要件違反(無効理由3)(争点2-3)

エ本件明細書に「単一のVRAM」としたことの作用効果の記載がないことによるサポート要件違反(無効理由4)(争点2-4)

オ訂正要件違反(無効理由5)(争点2-5)

カ本件明細書に「適切に処理する」以外の処理が記載されていないことによるサポート要件違反(無効理由6)(争点2-6)(3) 訂正の対抗主張の可否(争点3)(4) 特許権侵害の不法行為による損害の発生の有無及びその額(争点4)(5) 本件発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべき利得の額(争点5)(6) 不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の成否(争点6)
第3 争点に関する当事者の主張
👤 原告の主張
1争点1-1(被告各製品は、「グラフィックコントローラ」を備えているか(構成要件D、E、F、H、Iの充足性))について(原告の主張)被告各製品のモバイルプロセッサは、CPUとGPUから構成されており、GPUはグラフィックコントローラと呼ばれるのであるから、被告製品においては、モバイルプロセッサに内蔵されるGPUがグラフィックコントローラに相当する。また、構成要件Dでは、データ処理手段が、中央演算回路とグラフィックコントローラとから構成されることを特定するものであり、携帯情報通信装置が、部品としての中央演算回路と部品としてのグラフィックコントローラを備えることは特定していないのであるから、一つのモバイルプロセッサにおいて、CPU機能とGPU機能が区別されていれば十分である。
👤 被告の主張
(被告の主張)原告の主張は、否認又は争う。被告各製品では、液晶コントローラを用いることなく、モバイルプロセッサから液晶ドライバ又はMHLトランスミッタに表示データを送信している。したがって、被告各製品は、液晶コントローラを備えていない。また、本件発明は、中央演算回路とグラフィックコントローラをそれぞれ備えることが構成要件とされているのに対し(構成要件D)、被告各製品は、一つのモバイルプロセッサのみを備えるのであるから、構成要件Dを充足しない。
👤 原告の主張
2争点1-2(被告各製品は、データ処理手段における「処理」を行っているか(構成要件Dの充足性))について(原告の主張)構成要件Dにおける「処理」とは、信号を別の信号へと変換する信号処理又はデータを別形式のデータへと変換するデータ処理である。被告各製品のCPUは、デコード、間引き処理、補間処理といった処理を行っており、これはデータを別の形式のデータへと変換するデータ処理である。したがって、被告製品のCPUは、「処理」を行っている。
👤 被告の主張
(被告の主張)構成要件Dにおける「処理」とは、明細書の段落【0032】における「適切に処理する」ことであり、具体的には、データ処理手段が画像データファイルについて、物理的な現実化にあたって、画素数を間引いて表示画像の画素数を少なくしたり、画素を補間して表示画像の画素数を多くしたりといったことをしない処理をすることをいうものと解される。被告製品では、画素数を間引いて表示画像の画素数を少なくしたり、画素を補間して表示画像の画素数を多くしたりといった処理を行っているから、構成要件Dにおける「処理」を行っていない。
👤 原告の主張
3争点1−3(被告各製品における、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理方法は、本件発明の処理方法と異なるか(構成要件Hの充足性))について(原告の主張)被告各製品のモバイルプロセッサに内蔵されるGPUは、携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、付加機能H1(単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能)及び付加機能H2(単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能)を実現する。したがって、被告各製品における「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理方法は、構成要件Hに記載の方法とは異なっておらず、構成要件Hに記載の方法の範疇に含まれる。被告の主張は、本件発明のデータ処理手段が補間処理も間引き処理もしないということを前提とするものであるが、構成要件Hではそのような特定はされていないのであるから、失当である。
👤 被告の主張
(被告の主張)被告各製品では、まず元の画像から間引き処理をして1280×720 画素の内蔵ディスプレイ用の画像を生成し、その内蔵ディスプレイ用の画像データを補間処理して1920×1080 画素の外部ディスプレイ用画像データを生成している。これに対して、本件発明では、デコードされた元の画像データを「単一のVRAM」に対して書き込み/読み出しを行い(構成要件D)、該「単一のVRAM」から「前記ディスプレイパネルの解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」(=1280×720 画素のビットマップデータ)を読み出してデジタル表示信号を生成し前記ディスプレイ制御手段(=液晶ドライバ)に送信して(構成要件Hの3~6行目)、内蔵ディスプレイに表示させている。このとき、補間処理も間引き処理もせずに「読み出し」のみを行っているから、内蔵ディスプレイパネルには、「単一のVRAM」に書き込まれた画像データ(2880×1620画素の画像データ)の一部が表示されることになる。また、本件発明では、該「単一のVRAM」から「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きな解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、それを外部ディスプレイに表示させている(構成要件Hの6~10行目)。このときも補間処理も間引き処理もせずに「読み出し」を行っているから、元の画像の画素数が外部ディスプレイの画素数と同じ場合では外部ディスプレイに元の画像の全体が表示され、元の画像の画素数が外部ディスプレイの画素数より大きい場合では外部ディスプレイに元の画像の一部が表示されることになる。以上のように、被告製品における「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理方法が、本件発明の構成要件Hに記載された処理方法と異なっている。よって、被告製品は、構成要件Hを充足しない。
👤 原告の主張
4争点1−4(被告各製品は、「単一のVRAM」を備えているか(構成要件D、Hの充足性))について(原告の主張)構成要件D、Hの「単一のVRAM」は、VRAMが、物体として分離している複数の部品から構成されていない、という意味である。被告各製品が備える外部SDRAMは、1個のマルチチップパッケージのRAMであり、物体として分離している複数の部品から構成されていない。すなわち、一旦樹脂モールドでまとめられた複数のSDRAMを再び分離しようとすると、もはや部品としての機能を失ってしまうから、樹脂モールドでまとめられた複数のSDRAMは物体として分離しているとはいえない。したがって、被告各製品が備える外部SDRAMは、「単一のVRAM」に相当する。
👤 被告の主張
(被告の主張)本件発明では、一つの仮想画面のビットマップデータが書き込まれるメモリ領域と、内蔵用ディスプレイ用ビットマップデータ及び外部ディスプレイ用ビットマップデータが切り出されるメモリ領域が同一であることから、「単一のVRAM」に対してビットマップデータの書き込み/読み出しをしていることになる。これに対し、被告各製品では、モバイルプロセッサで生成した内蔵用表示データは、SDRAMの内蔵用表示データ用のメモリエリアに書き込み/読み出しがされ、外部用表示データはSDRAMの外部表示データ用のメモリエリアに書き込み/読み出しがされ、内蔵用表示データのメモリエリアと外部用表示データのメモリエリアが異なっている。したがって、「単一のVRAM」の要件を満たさない。また、仮に、「単一のVRAM」を物理的に分離した複数の部品から構成されていないという意味であると解釈した場合、被告各製品のRAMは2個又は4個の4ギガビットのSDRAMが樹脂モールドでまとめられたSDRAMであり、物理的に分離した複数の部品から構成されているから、この意味でも被告各製品は、「単一のVRAM」の要件を満たさない。
👤 被告の主張
5争点2-1(乙1公報を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如)(無効理由1)について(被告の主張)(1) 本件発明と乙1公報に記載された発明(以下「乙1発明」という。)との一致点本件発明と乙1発明は次の点で一致する(符号に付したカンマは本件発明の構成要件と一致していない要件を示す。)。(A)ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;(C)後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;(D’)前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、デジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;(E)画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;(F’)外部ディスプレイ手段を備える周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;(G’)を備える携帯装置において、(H’)前記グラフィックコントローラは、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現する、(J)ことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、(K’)ことを特徴とする携帯装置。(2) 本件発明と乙1発明との相違点本件発明と乙1発明は次の点で相違する。

ア相違点1本件発明は、「無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段」を備えているのに対し、乙1発明には「無線通信手段」について特定されていない点。

イ相違点2本件発明の「中央演算回路」は、「無線通信手段」から「デジタル信号」を受信しているが、乙1発明の「CPU10」は「表示データ」をどこから受信したかについて、特定されていない点。

ウ相違点3本件発明は「携帯情報通信装置」についての発明であるが、乙1発明は「携帯装置」であって、「情報通信」を行う点について、特定されていない点。

エ相違点4本件発明の「携帯情報通信装置」が、「画像を表示する場合」に、「「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理」しているのに対し、乙1発明の「携帯装置」は、「画像データを処理」して「画像を表示する」ことについて、特定されていない点。

オ相違点5本件発明の「グラフィックコントローラ」は、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理を行っているが、乙1発明は、「表示コントローラ20」が「画像データ」を取り扱うことについて、特定されていない点。

なお、無効審判の通知書(乙8)では、乙1発明について、「「内部表示装置22」の「解像度」より大きい「解像度」を「本来解像度」とする」ことが特定されていない点も相違点と認定している(乙8・25頁)。しかし、本件明細書【0032】の「表示信号等の「本来画像」とは、十分な大きさの画面解像度を有するディスプレイ手段、又は、データ処理手段と十分な大きさの画面解像度を有するディスプレイ手段とが、該表示信号等を受信して適切に処理することにより表示される本来の画像を意味し、「本来解像度」とは「本来画像」の解像度を意味する」との記載に照らせば、乙1発明の「表示コントローラ20」が取り扱っている外部表示装置用の表示データの解像度(640×480)は、「内部表示装置22」の解像度(640×240)より十分に大きいことから、この解像度は「本来解像度」と推定できる。したがって、「「内部表示装置22」の「解像度」より大きい「解像度」を「本来解像度」とする」点は、本件発明と乙1発明の相違点ではない。

カ相違点6本件発明の「インターフェース手段」は、「デジタル外部表示信号」を送信する際に、「デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式」に変換するのに対し、乙1発明では「伝送方式」について特定されていない点。

(3) 前記各相違点が当業者にとって容易想到であったこと前記各相違点は、いずれも以下に述べるように、優先日前に当業者が容易に想到できたことである。

ア相違点1について乙1発明には「無線通信手段」について特定されていない。しかし、乙

第1号証には、「また、通信媒体により伝送して各種装置に提供することも可能である。」(乙1【0103】)と記載されていることから、乙1発明では通信媒体の存在が予定されている。また、この通信媒体が有線か無線かは特定されていないが、有線通信では携帯情報端末としての携帯性が著しく損なわれることから、当業者は無線通信を選択することが必然である。また、無線通信の信号は無線信号であり、中央演算回路に送信する信号がデジタル信号であることが技術常識である。これらのことから、相違点1は、単に乙1に明文で記載されていないだけの形式的相違点であって実質的な相違点ではないと評価すべきであり、仮に実質的な相違点であるとしても、優先日当時の当業者の通常の創作能力により容易に想到できたものである。また、乙5には「制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求する」(乙5【0020】)と記載されている。乙1発明の「CPU10」は、乙5公報に記載された発明(以下「乙5発明」という。)の「制御部10」(の一部)に相当し、乙1発明の「送受信部11」は本件発明の「無線通信手段」に相当する。また、乙1発明と乙5発明は、携帯端末の出力装置として外部表示機器を接続するという点で課題が共通していることから、乙1発明の明文で特定されていない「CPU10」への入力手段として、乙5発明に記載された「送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して」という手段を適用してみることは当業者が容易に想到できたものである。よって、相違点1は、形式的な相違点にすぎないか、又は相違点であるとしても、優先日前に当業者が容易に想到できたものである。

イ相違点2について乙1発明では「CPU10」がどこから表示データを受信しているか特定されていない。しかし、「CPU10」は「表示描画プログラム……等に従って各種の制御を実行する」ものであり(乙1公報【0013】)、前記表示描画プログラムは「表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のアプリケーションによって指定され」るものである(乙1公報【0083】)。すなわち、乙1発明の「CPU10」は、上位のアプリケーションによって指定される表示内容を表示描画する制御を実行することになる。表示内容は上位のアプリケーションによって指定されることから、表示データを「CPU10」の外から受信することも当然に想定されている。そして、前記[相違点1]で述べたとおり、「無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、中央演算回路に送信する」ことは当業者が容易に想到できたことである。以上のことから、「CPU10」が受信する表示データの送信元を無線通信手段とすることは当業者の通常の創作能力により容易に想到できたものであり、[相違点2]は優先日前に当業者が容易に想到できたものである。

ウ相違点3について乙1発明では「情報通信」を行う点について特定されていない。しかし、前記[相違点1]で述べたとおり、乙1発明の「CPU10」への入力手段として、乙5発明に記載された「送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して」という手段を適用してみることは、優先日当時の当業者の通常の創作能力で容易に想到できたことである。そして、「送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して」は「情報通信」を行うことに他ならないから、前記[相違点3]は優先日前に当業者が容易に想到できたものである。

エ相違点4について乙1発明では「画像を表示する」ことが特定されていない。しかし、乙1発明では「表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のアプリケーションによって指定され」るものであり(乙1公報【0083】)、優先日当時には、ワープロやブラウザなど画像を表示させるアプリケーションが広く知られていたから、「上位のアプリケーション」として画像を表示させるアプリケーションを用いて画像を表示させることは当業者が容易に想到できた。よって[相違点4]は優先日前に当業者が容易に想到できたものである。

オ相違点5について乙1発明では「表示コントローラ20」が「画像データ」を取り扱うことが特定されていない。しかし、前記[相違点4]で述べたとおり、上位のアプリケーションとしてワープロやブラウザなど画像を表示させるアプリケーションを用いることにより「表示コントローラ20」が「画像データ」を取り扱うようにすることは当業者が容易に想到できたことである。

なお、前述のとおり、乙1には、「表示コントローラ20」が「外部表示装置24」に表示させる表示データを取り扱うことが記載されており、当該外部表示装置用の表示データの解像度(640×480)は「内部表示装置22」の解像度(640×240)より大きいことが記載されている。したがって、乙1発明での、「表示コントローラ20」が、「内部表示装置22」の「解像度」(640×200)より大きい「解像度」(640×480)を「本来解像度」とする「表示データ」を取り扱うことができるものであると解される。

よって、前記[相違点5]は優先日前に当業者が容易に想到できたものである。

カ相違点6について乙1発明では伝送方式について特定されていない。しかし、本件発明で特定されている伝送方式は、優先日前に当業者に周知の伝送方式を単に列挙しただけであり、乙1発明に周知の伝送方式を適用してみることは当業者が容易に想到できたことである。

よって、前記[相違点6]は、優先日前に当業者が容易に想到できたものである。
👤 原告の主張
(原告の主張)(1) 被告の上記主張は、争う。被告による乙1発明の認定及びこれに基づく一致点の認定は誤りであり、少なくとも、構成要件Hについて、次の相違点(相違点5’)が存在する。すなわち、本件発明のグラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記「単一のVRAM」から「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」と「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出す機能を実現するが、これに対し、乙1発明の「表示コントローラ20」は、「内部表示装置22の画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」と「内部表示装置22の画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出す機能が特定されていない点で相違する。

(2) 相違点5’に係る構成の容易想到性について被告の乙1発明を主引例とする進歩性欠如の主張は、乙5発明を副引用発明とする進歩性欠如の主張であると解される。

しかし、そもそも、乙5発明には「「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない」のであるから、乙1発明へ乙5発明を適用したとしても、[相違点5’]は全く解消されない。したがって、乙1発明へ乙5発明を適用したとしても、当業者は、[相違点5’]に係る構成を容易に想到することはできない。
👤 被告の主張
6争点2-2(乙5公報を主引例とする進歩性欠如)(無効理由2)について(被告の主張)(1) 本件発明と乙5発明との一致点本件発明と乙5発明とは、次の点で一致する(符号に付したカンマは本件発明の構成要件と一致していない要件を示す。)。(A)ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;(B)無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;(C)後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;(D’)前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、処理する中央演算回路と、から構成されるデータ処理手段と;(E’)画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、デジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;(F’)外部ディスプレイ制御手段を備える周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、デジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;(G)を備える携帯情報通信装置において、(I’)前記インターフェース手段は、受信したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号を、伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、(J)ことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、(K)ことを特徴とする携帯情報通信装置。(2) 本件発明と乙5発明との相違点本件発明と乙5発明とは、次の点で相違する。

ア相違点7特許庁審判官は、通知書(乙8)の暫定的な見解において、本件発明の「中央演算回路」は、「前記無線通信手段から受信したデジタル信号」に対して、「前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムに基づき」、「リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出」すという手順を踏んで処理するのに対し、乙5発明では「制御部10」は、受信した信号に対する具体的な処理手段について記載されていない点で相違する旨述べている。

しかし、乙5には「制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し」(【0020】)と記載されていることから、乙5発明では「制御部10」が「送受信部11」(無線通信手段)からの信号を処理して「画像出力部17」に送出しており、「「前記無線通信手段から受信した信号」に対して」の部分は本件発明と乙5発明との相違点ではないと解すべきである。また、「送受信部11」から受信した信号を処理して「画像出力部17」に送出する「処理」は、信号をリアルタイムで処理するか、信号をリアルタイム以外で処理する、の2通りの処理方法しか論理的に存在しない。そして、信号をリアルタイム以外で処理するためには、受信した信号を一旦記録手段に記録し、それを読み出して処理する以外の方法はない。また、制御部10に送受信される信号はデジタル信号であることが技術常識である。したがって、乙5発明では「リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記録手段に一旦格納し、その後読み出す」ことが必然であり、かかる部分は本件発明と乙5発明との相違点ではないと解すべきである。したがって、[相違点7]はそもそも実質的な相違点とはいえない。

イ相違点8本件発明の「データ処理手段」には、「該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラ」が備えられているのに対し、乙5発明には「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない点。

ウ相違点9本件発明の「ディスプレイ手段」は、「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、乙5発明の「表示部12」は、「デジタル表示信号」が「グラフィックコントローラから受信した」ものである点が特定されていない点。

エ相違点10本件発明の「インターフェース手段」は、「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、乙5発明の「画像出力部17」は「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作することについて特定されていない点。

オ相違点11本件発明の「グラフィックコントローラ」は、「前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能」を実現しているのに対し、乙5発明には「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない点。

カ相違点12本件発明では「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」が変換される伝送方式が列挙されているのに対し、乙5発明では「デジタル表示信号」はどの「伝送方式」に変換されるのか特定されていない点。

(3) 前記各相違点が当業者に容易想到であったこと

ア相違点7について前述のとおり、相違点7は実質的な相違点ではない。

また、仮に相違点7が相違点であるとしても、次のとおり相違点7は当業者が容易に想到できたものである。まず、ユーザーが実行したい処理を入力手段によって入力することや中央演算回路で処理するプログラムをROMやRAMなどの記憶手段に記憶させることは当業者が通常行うことであり、「前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき」処理することは当業者が容易に想到できたことである。次に、中央演算回路が受信したデジタル信号に基づいて表示データを生成するためには、「リアルタイムでデジタル表示信号を生成する」か「受信したデジタル信号をデータファイルとして記憶手段に一旦格納し、その後読み出して処理する」かの二者択一であるから、「リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出す」ことは当業者が容易に想到できたことである。

イ相違点8について乙5発明には「グラフィックコントローラ」と「単一のVRAM」が特定されていない。しかし、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えてみることは当業者が容易に想到できたことである。

この点について、仮に、原告が、乙5発明の「画像出力部17」と乙1発明の「表示コントローラ20」がどのように機能分担すればよいか不明である旨を主張するかもしれない。しかし、乙5発明の「画像出力部17」は、「入力された情報(静止画や動画、文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば、ビデオ信号形式)に変換して出力するインターフェイス部である」(乙5公報【0016】)ことから、信号形式を変換する機能を乙5発明の「画像出力部17」で担当し、それ以外の機能を乙1発明の「表示コントローラ20」で担当するように適宜機能分担することは、当業者の通常の創作能力により容易に想到できたことである。

また、乙1公報の図2では「表示メモリ(VRAM)18」は一つしか描かれていないから、「VRAM」を「単一のVRAM」にすることは当業者が容易に想到できたことである。

また、相違点8は、乙5発明の「制御部10」を特開平09-090919号公報(乙6。以下「乙6公報」という。)に記載された発明(以下「乙6発明」という。)の「CPU」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えてみることによって当業者が容易に想到できたことである。また、乙6公報の図1では「VRAM40」が複数の四角を重ねたものとして描かれているが、これは「VRAM40」が機能面からみて複数のフレームを記憶することを示すだけで、「VRAM」に付された符号は「40」の一つだけであるから、仮に「単一のVRAM」が「物理的に単一部品である」と解釈するのであれば、乙6発明のVRAMも単一ということになる。

ウ相違点9について乙5発明には、「表示部12」は「デジタル表示信号」が「グラフィックコントローラから受信した」と特定されていない。しかし、相違点9は、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えてみることにより当業者が容易に想到できたことである。乙1発明では、表示コントローラ20内の内部表示用回路20cを介して内部表示装置22に表示データを出力している(乙1公報【0020】)。したがって、乙1発明では「内部表示装置22」(乙5発明の「表示部12」に相当する)は、表示信号を「表示コントローラ20」から受信している。また、外部に送信する場合を除いて表示信号をデジタル信号で送受信することは当業者が通常行うことである。よって、相違点9は、乙5発明に乙1発明を適用してみることにより当業者が容易に想到できたことである。また、相違点9は、乙5発明の「制御部10」を乙6発明の「CPU10」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えてみることによっても当業者が容易に想到できたことである。乙6発明では、「LCD表示制御部23」(本件発明のグラフィックコントローラの一部に相当する)から「LCD52」(本件発明の「ディスプレイ手段」、乙5発明の「表示部」に相当する)にビデオ信号が供給されている(乙6公報【0034】)。そして、ビデオ信号をデジタル表示信号とすることは当業者が通常の創作能力により容易に想到できたことである。よって、相違点9は、乙5発明に乙6発明を適用してみることにより当業者に容易に想到できたことである。

エ相違点10について乙5発明では、「画像出力部17」は「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作することが特定されていない。しかし、この相違点は、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えてみることにより当業者が容易に想到できたことである。乙1発明では、「表示コントローラ20」(本件発明のグラフィックコントローラに相当する)から「外部表示装置24」に、ケーブル等を介して表示信号が送信されている(乙1公報【0018】)。「ケーブル等を介して」であることから、乙1発明の「表示コントローラ20」と「外部表示装置24」の間に明示されていないインターフェース部(乙5発明の「画像出力部17」に相当する)が存在していることが明らかである。すなわち、乙1発明では「表示コントローラ20」(グラフィックコントローラに相当する)から明示されていないインターフェース部(乙5発明の「画像出力部17」に相当する)にデジタル表示信号を送信している。よって、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えてみるときに、グラフィックコントローラから「画像出力部17」にデジタル表示信号を送信することは当業者が容易に想到できたことである。

同様に、相違点10は、乙5発明の「制御部10」を乙6発明の「CPU10」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えてみることによって当業者が容易に想到できたことである。乙6発明では、「CRT表示制御部25」(グラフィックコントローラの一部に相当する)から「CRTディスプレイ53」に表示信号を送信しており、乙6発明を乙5発明に適用することにより、相違点10は当業者が容易に想到できたことである。

オ相違点11について乙5発明では、「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない。しかし、相違点11は、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えてみることにより当業者が容易に想到できたことである。乙1発明の「表示コントローラ20」は本件発明のグラフィックコントローラに相当する。また、乙1 公報には、「表示コントローラ20」が「外部表示装置24」に表示させる表示データを取り扱うことが記載されており、当該外部表示装置用の表示データの解像度(640×480)は「内部表示装置22」の解像度(640×240)より大きいことが記載されている。したがって、乙1発明には、「表示コントローラ20」が、「内部表示装置22」の「解像度」(640×240)より大きい「解像度」(640×480)を「本来解像度」とする「表示データ」を取り扱うことができるものと解される。また、乙1公報の図2では「表示メモリ(VRAM)18」は一つしか描かれていないから、「VRAM」を「単一のVRAM」にすることは当業者が容易に想到できたことである。

また、相違点11は、乙5発明の「制御部10」を乙6発明の「CPU10」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えてみることによって当業者が容易に想到できたことである。乙6発明では、「LCDディスプレイの解像度は640×480ドット、800×600ドット、1024×768ドットなど、画面サイズに応じて様々である。また、CRTディスプレイの解像度は比較的高く、1024×768ドット、又は1280×1024ドットが一般的である」(乙6公報【0006】)と記載されており、グラフィックコントローラが「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理することが示唆されている。また、乙6公報の図1では、「VRAM」に付された符号は「40」の一つしかなく、「VRAM」は物理的には単一であることが示唆されている。

カ相違点12について乙5発明では伝送方式について特定されていない。しかし、本件発明で特定されている伝送方式は、優先日前に周知の伝送方式を単に列挙しただけであり、乙5発明に周知の伝送方式を適用してみることは当業者が容易に想到できたことである。
👤 原告の主張
(原告の主張)(1) 被告の主張は、否認又は争う。(2) 乙5発明に乙1発明を適用することには阻害要因が存在すること被告の主張する「乙5発明への乙1発明の適用」は、「「乙5発明の制御部10」の「乙1発明のCPU10、表示コントローラ20」への置き換え」である。しかし、「乙5発明への乙1発明の適用」(=「「乙5発明の制御部10」の「乙1発明のCPU10、表示コントローラ20」への置き換え」)を行おうとすると、乙5発明の携帯電話機1が有していた多くの機能(通話、ブラウジング、撮像)を失うことになってしまう。したがって、当業者が被告の主張する「乙5発明への乙1発明の適用」に想到することには阻害要因が存在するというべきである。(3) 乙5発明への乙1発明の適用によっては、相違点11に係る構成に想到できないこと仮に、当業者が「乙5発明への乙1発明の適用」に想到したとしても、相違点8ないし相違点11のうち、少なくとも、相違点11に係る構成に想到することはできない。すなわち、仮に、被告の主張する「乙5発明への乙1発明の適用」を行って、乙5発明の携帯電話機1に乙1発明の表示コントローラ20(及び表示メモリ18)を挿入したとしても、挿入された表示コントローラ20は「内部表示装置22の画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」と「内部表示装置22の画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出す機能が特定されていないのであるから、相違点11に係る構成には想到できない。
👤 被告の主張
7争点2-3(「単一のVRAM」なる語句の意義が不明瞭であることによる明確性要件違反(無効理由3))について(被告の主張)構成要件D及びHの「単一のVRAM」なる語句は、本件訂正審判で追加された語句であり、本件明細書の発明の詳細な説明の欄には「単一のVRAM」なる語句は全く存在しない。そのため、本件明細書には、「単一のVRAM」なる語句の意義を解釈するための基準が全く示されていない。

この点、原告と被告は、別の訴訟(当庁平成30年(ワ)第36690号特許権侵害損害賠償請求事件)において「単一のVRAM」の語句の意義解釈について争っている。具体的には、被告は、上記訴訟において、「単一のVRAM」とは「一つの仮想画面(例えば3840×2400 画素の仮想画面)のビットマップデータが書き込まれるVRAMのメモリ領域と、内蔵用ディスプレイ用ビットマップデータ(例えば240×320 画素の画面)が切り出されるVRAMのメモリ領域及び外部ディスプレイ用ビットマップデータ(例えば640×480 画素)が切り出されるVRAMのメモリ領域が単一であること」を「単一のVRAM」の意義であると解釈した。すなわち、被告は「単一のVRAM」の意義を、VRAMが機能面からみて単一であると解釈すべきと主張した。これに対して、原告は、上記訴訟において、「単一のVRAM」とは「VRAMが、物理的に分離した複数の部品から構成されていない」意義である旨主張した。すなわち、原告は「単一のVRAM」の意義を、物理的に単一部品であると解釈すべきと主張した。そもそも、このように、「単一のVRAM」の意義解釈が分かれるのは、本件明細書に「単一のVRAM」の意義の解釈となる記載が全く示されておらず、「単一のVRAM」なる語句が不明瞭であるためである。すなわち、「単一のVRAM」の語句の意義解釈において、原告と被告の解釈が分かれていること自体が、本件特許の構成要件D、Hの「単一のVRAM」なる語句が不明瞭であることの証左である。

よって、本件特許は、構成要件D、Hの「単一のVRAM」の語句の意義が不明瞭であるため明確性要件を満たさず、無効審判によって無効とされるべきものである。
👤 原告の主張
(原告の主張)被告の主張は否認又は争う。本件発明の構成要件D、Hの「単一のVRAM」の意義は、「単一」の一般的な用法に照らしても、本件明細書の記載及び図面を考慮しても、VRAMが「物体として分離している複数の部品」から構成されていないことであることは明確であるから、明確性要件違反の主張には理由がない。
👤 被告の主張
8争点2-4(本件明細書に「単一のVRAM」としたことの作用効果の記載がないことによるサポート要件違反(無効理由4))について(被告の主張)構成要件D及びHの「単一のVRAM」なる語句は、本件訂正審判で追加された語句であり、本件明細書の発明の詳細な説明の欄には「単一のVRAM」なる語句は存在せず、また、「単一のVRAM」とすることによる作用効果は発明の詳細な説明の欄に記載されていない。そのため、本件明細書の発明の詳細な説明の欄は、「単一のVRAM」を構成要素とする本件発明の作用効果を理解できるように記載されていない。したがって、本件特許はサポート要件を満たしていない。特に、「単一のVRAM」を原告が前記訴訟(当庁平成30年(ワ)第36690号特許権侵害損害賠償請求事件)にて主張するように「VRAMが、物理的に分離した複数の部品から構成されていない」意義であると解釈した場合、本件明細書には「VRAMが、物理的に分離した複数の部品から構成されていない」ことによってどのような作用効果が生じるのかは全く記載も示唆もされていない。よって、本件特許は、発明の詳細な説明に「単一のVRAM」の作用効果が記載されておらずサポート要件を満たさないから、無効審判によって無効とされるべきものである。
👤 原告の主張
(原告の主張)(1) 被告の主張は、否認又は争う。

(2) 本件発明の作用効果本件発明が奏すべき作用効果について、本件明細書には、次のように記載されている。すなわち、本件発明の携帯情報通信装置を用いれば、携帯情報通信装置のインターフェース手段に「高解像度外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、高解像度外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置」を接続することにより、該高解像度外部ディスプレイ手段において、携帯情報通信装置に付属するディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像を表示することを、該高解像度外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を別個に使用することなく、実現することができる。

(3) 「VRAMが単一である」ことによって、はじめて本件発明の作用効果が生じること本件発明は、構成要件AないしKの構成を採用することで、上記作用効果を奏する。ここで、VRAMが「単一」ではないとすると、高解像度外部ディスプレイ手段向けの表示データを生成するための専用の手段であるVRAM②(付加機能H1(単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能)が割り振られたVRAM)を別個に使用することになるのであるから、本件発明の作用効果を奏さない。逆に言えば、VRAMが「単一である」ことによってはじめて本件発明の作用効果を奏するのである。以上のとおり、「VRAMが単一である」ことによって、はじめて、本件発明の作用効果が生じるのであるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の構成要件D、Hにおいて「単一のVRAM」としたことの作用効果が記載されているといえる。
👤 被告の主張
9争点2-5(訂正要件違反(無効理由5))について(被告の主張)本件訂正審判の訂正事項4及び7では、構成要件D及びHに「単一のVRAM」という語句を追加している。しかしながら、本件特許の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には「単一のVRAM」という語句はなく、また「単一のVRAM」という技術的事項は明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することによって導かれる技術的事項でもないから、特許請求の範囲の記載に「単一のVRAM」という語句を追加した訂正事項4及び7に係る訂正は特許法126条5項の要件を満たさない訂正である。よって、本件特許は、無効審判によって無効とされるべきものである。
👤 原告の主張
(原告の主張)(1) 被告の主張は、否認又は争う。(2) 被告は、「単一のVRAM」導出不可の主張を「単一の積極的意義」の記載要求と「単一の積極的意義」不記載の認定から導き出している。しかし、被告の「単一の積極的意義」の記載要求を主張する際の根拠は、「「単一」という日本語は、一つであることに積極的な意味を有する言葉である。」という解釈だけであるところ、そもそも、「単一」に対する被告解釈における「「単一」が有する積極的な意味」が何を意味しているかは今一つ不明瞭である。また、仮に、甲38(三省堂国語辞典第七版)の冒頭に記された「①そのものばかりであること」という語義に基づく主張だとすると、「単一」に対する被告解釈は、少なくとも、「単一」が、「VRAM」のように「装置に内蔵される部品や要素」に適用される場合には適合しない。また、「単一の積極的意義」不記載の認定は、実質的には、「本件特許の明細書等には、「VRAMが単一である」ことによる作用効果が記載されていない」という主張に帰結するが、本件特許の明細書等の記載を総合すれば、VRAMが「単一である」ことによってはじめて、本件発明が奏すべき作用効果が生じることは明らかである。
👤 被告の主張
10 争点2-6(本件明細書に「適切に処理する」以外の処理が記載されていないことによるサポート要件違反(無効理由6))について(被告の主張)原告は、前記訴訟(当庁平成30年(ワ)第36690号特許権侵害損害賠償請求事件)において、構成要件Dの「処理」の意義解釈について、「信号を別の信号へと変換する信号処理、又は、データの別の形式のデータへと変換するデータ処理」であると主張した(以下、原告が主張する「処理」を「広義の処理」と称する。)。

しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明では、デジタル表示信号の処理について、【0032】における「適切な処理」、具体的にはデータ処理手段が画像データファイルについて、物理的な現実化にあたって画素数を間引いて表示画像の画素数を少なくしたり、画素を補間して表示画像の画素数を多くしたりといったことをしない処理、しか記載されていない。すなわち、本件明細書の発明の詳細な説明には、広義の処理のうち、【0032】における「適切な処理」以外の処理、例えば表示信号の画素を補間して表示画像の画素数を多くする処理、は記載されていない。このため、構成要件Dの「処理」を原告が前記訴訟にて主張するような広義の処理と解すると、本件特許は発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えることになり、サポート要件を満たさない。

したがって、発明の詳細な説明に「適切な処理」以外の処理が記載されておらず、適切な処理以外の処理を含む本件特許はサポート要件を満たさないから、無効審判によって無効とされるべきものである。
👤 原告の主張
(原告の主張)本件明細書の発明の詳細な説明では、データ処理手段である「中央演算回路」が「適切な処理を行う主体」であることを示唆するような記載は一切ない。反対に、本件明細書には、「中央演算回路が行う「処理」は「適切な処理」には限定されず、「広義の処理」である」ことをサポートする数多くの記載がある。このように、中央演算回路が行う処理に係る無効の抗弁の前提となっている「本件明細書の発明の詳細な発明では、デジタル表示信号の処理について、【0032】における「適切な処理」しか記載されていない」との認定自体が誤りであるから、中央演算回路が行う処理に係る無効の抗弁には理由がない。
👤 原告の主張
11 争点3(訂正の対抗主張の可否)について(原告の主張)原告は、前記前提事実のとおり、特許請求の範囲の請求項1の各記載を訂正事項1及び2のとおり訂正することを内容とする訂正を行った。

上記の適法な訂正により無効理由は解消し、また、被告各製品は同訂正後の発明の技術的範囲に属するから、原告による訂正の対抗主張は理由があるとされるべきである。
👤 被告の主張
(被告の主張)原告の上記主張は、争う。上記訂正後の請求項1記載の発明は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内ではないので、上記訂正は特許法134条の2第9項で準用する同法126条第5項の訂正要件を充たさない。

また、上記訂正によって本件訴訟における各無効理由が解消するものではなく、さらに、被告各製品は、訂正後の請求項1の発明の技術的範囲に属するものではない。
👤 原告の主張
12 争点4(特許権侵害の不法行為による損害の発生の有無及びその額)(原告の主張)(1) 本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、被告各製品の売上高を基準とし、そこに本件発明の実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。実施に対し受けるべき料率は、①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである。

(2) 事項①について本件特許については実施許諾契約の実績がないため、「業界における実施料の相場等」を考慮するほかはない。

本件発明の実施料率を算定する際には、「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~(平成22年3月)」(甲55。以下「調査研究報告書」という。)の記載を考慮することができ、その際には、「業界における実施料の相場等」として、調査研究報告書の表Ⅱ-3における「器械」、「電気」、「コンピュータテクノロジー」についての数値、及び表Ⅲ-12の「司法データ」の欄における「電気」の数値を採用することができる。(3) 事項②について

ア本件発明の重要性について本件発明の作用効果は、「高解像度画像の外部表示を不合理な二重投資や非効率な資源利用を行うことなく実現すること」である。被告は、被告各製品が発売された時期において、自社のスマートフォンに高解像度画像の外部表示を実現する機能を付加する必要があり、その際、「不合理な二重投資や非効率な資源利用」を避けなければならず、自社のスマートフォンにおいて「本件発明の作用効果」を実現することは極めて重要であった。

イ本件発明の代替可能性について被告がこれまでに製造・販売した高解像度画像外部表示機能付きスマートフォン・タブレットは、本件訴訟その他の関連訴訟において、いずれも本件発明の技術的範囲に属することが認定されており、このことは、スマートフォンにおいて高解像度画像の外部表示を実現するには、本件発明を採用することが技術的、経済的に最も合理的であったことを意味している。このように、本件発明の作用効果を実現するための選択肢としては、実質上、本件発明を採用する以外の方法はなかったというべきである。

(4) 事項③について被告各製品が発売された時期には、被告が製造・販売する携帯電話は、ほとんどがスマートフォンであり、Android端末用のモバイルプロセッサについては、Snapdragonを採用する以外に選択肢はなかった。

そして、本件特許を採用せずに高解像度画像の外部表示を実現しようとするなら、Snapdragonが有する機能をそのまま活用せずに何らかの改造を行う必要があるが、このような改造には余分のコストを要する。被告ができる改造は、せいぜいSnapdragon自体には何らの改造も加えず、「高解像度画像の外部表示のための部品」を追加することに留まるところ、かかる部品に類似する部品として、被告は、「モバイル機器向け液晶コントロールIC(LR388G9)」を開発・発売しており(甲57)、この部品の価格は2400円と設定されている。したがって、Snapdragonが有する機能をそのまま活用せずに実現できるようにするために追加される「高解像度画像の外部表示のための部品」の単価もこの部品と同程度になるものと推定され、この単価は、少なくとも1000円は下回らない。

以上のことから、「本件発明を被告各製品に用いることによる利益への貢献」は、被告各製品1台あたり1000円を下回らず、これは、被告各製品の平均単価(4万円)の2.5%に相当する。

(5) 事項④について原告は、自社が考案・開発した情報処理・通信システムを自社自身で製造・販売することはせず、自社の特許発明に係る実施権を他社に許諾し、当該他社が当該特許発明を実施した製品を販売する対価として実施料を得ることを営業方針としている。そして、原告は、自社の特許発明に係る実施権を他社に許諾する場合には、一時金方式は採用せずにランニング方式を採用するとともに、実施料率としては、当該特許発明が本来有する価値(重要性や付加価値)に応じた適正な値を設定することを方針とするものである。また、原告は、各種情報処理・通信システムの製造・販売には一切携わっていないのであるから、ライセンス契約にあたっては、ライセンシーとの間でクロスライセンス契約を交わすことはあり得ない。(6) 以上の事情によれば、本件発明の実施料率は少なくとも1%が相当である。そして、被告各製品の売上げは以下のとおりであり、これに実施料率1%を乗じた金額が、原告がその実施に対して受けるべき金額となる。

アイ号製品の実施料相当額被告は、遅くとも平成24年6月29日から令和元年11月29日までの間に、イ号製品を、平均単価4万円で少なくとも30万個販売した。したがって、原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は、1億2000万円を下らない。

イロ号製品の実施料相当額被告は、遅くとも平成24年8月30日から令和元年11月29日までの間に、ロ号製品を、平均単価4万円で少なくとも20万個販売した。したがって、原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は、8000万円を下らない。

ウハ号製品の実施料相当額被告は、遅くとも平成24年11月29日から令和元年11月29日までの間に、ハ号製品を、平均単価4万円で少なくとも70万個販売した。したがって、原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は、2億8000万円を下らない。

エニ号製品の実施料相当額被告は、遅くとも平成24年6月28日から令和元年11月29日までの間に、ニ号製品を、平均単価4万円で少なくとも15万個販売した。したがって、原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は、6000万円を下らない。

オホ号製品の実施料相当額被告は、遅くとも平成24年12月7日から令和元年11月29日までの間に、ホ号製品を、平均単価4万円で少なくとも5万個販売した。したがって、原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は、2000万円を下らない。

カヘ号製品の実施料相当額被告は、遅くとも平成24年7月6日から令和元年11月29日までの間に、ヘ号製品を、平均単価4万円で少なくとも25万個販売した。したがって、原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は、1億円を下らない。

キト号製品の実施料相当額被告は、遅くとも平成25年3月8日から令和元年11月29日までの間に、ト号製品を、平均単価4万円で少なくとも15万個販売した。したがって、原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は、6000万円を下らない。

ク以上から、被告が賠償すべき損害額は、上記実施料相当額の合計である7億2000万円を下らない。
👤 被告の主張
(被告の主張)(1) 本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額について

ア相当な実施料率について携帯電話の技術分野の特許には、大別すると、携帯電話事業分野の標準規格の実施に不可欠な特許(標準必須特許)と、標準必須特許以外の特許(アプリ特許)があり、本件発明に係る特許は、アプリ特許に該当する。また、本件発明は、携帯電話に特別高い価値を付与するアプリ特許発明ではないから、本件発明の実施料率は、アプリ特許1件当たりの実施料率によって推定することができる。

被告は、被告各製品の製造、販売に当たって、アプリ特許等のライセンス契約を締結した実績があり、当該実績に基づいてアプリ特許1件当たりのライセンス料率を計算すると、パテントファミリー単位で、1件当たりのライセンス料率は●(省略)●%と算出される。

したがって、被告各製品の製造、販売についての本件発明の実施料率は、●(省略)●%が相当である。

イ実施料相当額について被告各製品の販売状況は、別紙「被告各製品の売上高」記載のとおりであり、被告各製品における本件発明の実施料率は、前記アのとおり、●(省略)●%であるから、被告各製品の総売上高に対する実施料相当額は、合計●(省略)●円と推定される。

(2) 原告の主張する実施料率について

ア本件発明の価値(重要性と非代替性)について被告各製品の販売当時においては、HDMIを用いて画像を外部出力する機能を備えるために本件発明を利用しなければならないものではなかったから、その意味でも本件発明が被告各製品にとって重要であったとはいえない。

イ本件発明を被告各製品に用いることによる売上げ及び利益への貢献について画像外部表示機能の有無による携帯電話の販売価格又は販売数量への影響は、いずれも存在しないか、軽微なものにとどまるから、本件発明の売上げへの貢献はわずかなものにすぎなかった。

ウ業界における実施料率の相場について調査研究報告書に記載された「電気」分野の「コンピュータテクノロジー」も、広範な技術分野をまとめて統計処理しており、被告各製品の技術分野と直接対比できる統計データではない。

エしたがって、以上の要素に基づく原告主張の実施料率は相当でない。
👤 原告の主張
13 争点5(本件発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべき利得の額)について(予備的主張)(原告の主張)被告は、本件特許の登録日以降の期間に、特許権者である原告から何らの実施許諾を得ないまま、本件発明の技術的範囲に属する被告各製品を製造、販売した。その結果、本件発明の実施料相当額の支払を免れることで、同額の利益を得ており、その利益の合計額は前記12(原告の主張)の7億2000万円を下らない。
👤 被告の主張
(被告の主張)原告の主張については、争う。実施料率については、前記12(被告の主張)のとおりである。
👤 被告の主張
14 争点6(不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の成否)について(被告の主張)原告は、遅くとも、当庁平成24年(ワ)第237号特許権侵害損害賠償請求事件(以下「別件訴訟」という。乙2、3)の判決言渡日である平成25年8月2日には、被告が被告各製品の製造、販売を行っていたことを知っていたし、また、被告各製品の本件発明に対応する構成を知っていた。

さらに、原告は、遅くとも同日には、上記の製造、販売による損害についても、損害賠償請求訴訟を提起できる程度に知っていた。

したがって、原告は、遅くとも平成25年8月2日には原告が主張する不法行為の損害及び加害者を知っていたことになるから、改正前民法724条前段の消滅時効は遅くとも同日から進行し、既に3年の時効期間が経過した。
👤 原告の主張
(原告の主張)被告の主張は、否認又は争う。

原告が被告各製品について、損害賠償請求訴訟を提起できる程度に損害を認識したのは、本件訴訟の訴状提出日(令和元年11月29日)の直前である。

また、原告が、「損害及び加害者を知った」といえるためには、被告は、原告が平成26年頃には被告各製品が本件発明の技術的範囲に属することを認識していたことを立証する必要があるが、この点に関し、被告は何ら主張立証をしていない。
第4 当裁判所の判断

1本件明細書の記載等(1) 本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、前記第2の2の前提事実(3)のとおりであるところ、本件明細書(甲2)には、次のような記載がある。

ア【技術分野】【0001】本発明は、携帯電話機などの携帯情報通信装置、携帯情報通信装置とともに用いる接続ユニット、及び携帯情報通信装置とともに用いる外部入出力ユニットに関する。

イ【背景技術】【0004】このような事情により、携帯電話機を中心とする携帯情報通信装置において、文字や映像を含む画像の表示機能は、今後、ますます重要性を増していくものと考えられる。ところが、携帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置においては、その携帯性が重視されるため大きいサイズのディスプレイを付属させることができない。(以下略)【0010】(略)このため、データ通信やデータ処理のニーズが電子メールの送受信やウェブページの閲覧等に限られるような多数のユーザーにとって、上記のように、長文の電子メールを読んだり、パソコン向けウェブページを閲覧したりする際の、付属ディスプレイの画面サイズ・解像度が小さいことに起因する不便さを解消するためだけに別途パソコンを所有することは、経済的に不合理である。

(中略)パソコンと携帯情報通信装置との使い分けを行うとすれば、同種のものに二重投資を行うことになり、結果として少なくとも一方の稼働率の低下をもたらすため、資源の効率的な利用の観点からも好ましくない。【0013】このような事情から、携帯情報通信装置の携帯性を損なわないために付属ディスプレイのサイズを現状通りに維持したままで、しかもパソコンを併用することなく、長文の電子メールやパソコン向けウェブページ、娯楽性の高いゲーム、さらにはテレビ番組の映像などを大きな画面で表示すること、特に、長文の電子メールについては、垂直スクロールを繰り返すことなく読めること、パソコン向けウェブページについては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し、しかも水平スクロールを繰り返すことなく閲覧できること、テレビ番組については、テレビ放送における本来画像を全画面表示することが課題とされている。

【0014】このような課題を解決するため、携帯情報通信装置に、該携帯情報通信装置の付属ディスプレイよりも画面が大きい外部ディスプレイ装置(以下、大画面外部ディスプレイ装置と略称する)を接続することにより、大画面外部ディスプレイ装置で画像を表示する技術がいくつか開示されており、そして、それらの技術は、以下の3つのタイプに分類される。

第一種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置を何らかの接続ユニットを介して接続するタイプ第二種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置は直接的に接続されるが、その代わり、大画面外部ディスプレイ装置としては、携帯情報通信装置から受信した表示データに各種の処理を施す機能を有する画像表示装置が使用されるタイプ第三種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置は直接的に接続され、しかも、大画面外部ディスプレイ装置としては、携帯情報通信装置との間での何らかのインターフェース手段は備えていることを除けば、テレビモニタ等の汎用的なディスプレイが用いられるタイプ【0015】このうち、第一種の技術は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4において開示されている。これらの特許文献で開示される技術においては、携帯情報通信装置とは別にパソコンを用いる必要はないが、その代わりに、別途、プロセサ(特許文献1の場合)、CPU(特許文献2の場合)、読出制御回路(特許文献3の場合)、表示制御手段(特許文献4の場合)といった、何らかの表示データ処理手段を備えた接続ユニットが必要である。(以下略)【0017】一方、第二種の技術は、例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9において開示されている。このタイプの技術においては、パソコンやそれに準ずるような接続ユニットは不要であるが、今度は、大画面外部ディスプレイ装置として、テレビ受像機のような汎用的なディスプレイ装置をそのままでは使用できず、制御系(マイクロコンピュータ)(特許文献5の場合)、制御部15(特許文献6の場合。無線電話機側の制御部10とは別)、高精細変換部や表示処理部(特許文献7の場合)、拡大回路や表示回路(特許文献8の場合)あるいやCPU(特許文献9の場合)といった表示データ処理手段を備えた画像表示装置を使用しなければならない。(以下略)【0019】それに対して、第三種の技術は、接続ユニットや特殊な画像処理装置を使用せず、携帯情報通信装置と汎用的な大画面外部ディスプレイ装置だけで構成される。このため、一般的にいって、「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題が、少なくとも第一種の技術や第二種の技術よりは少ないと考えられる。

【0020】この第三種の技術として既に実用化されているものに、いわゆる「テレビ(TV)出力機能」又は「AV出力機能」を有する携帯電話機がある。このような携帯電話機においては、携帯電話機とテレビモニタを、携帯電話機側は携帯電話機に固有の接続端子とし、テレビモニタ側はビデオ端子とするケーブルで接続することにより、該携帯電話機に付属するデジタルカメラ機能を用いて撮影した静止画や動画、あるいは一部のゲームを、携帯電話機の付属ディスプレイよりも大画面であるテレビモニタに表示することができる。しかし、その場合にテレビモニタに表示される画像の解像度は、付属ディスプレイの画面解像度(最大でもQVGA)と同じであるため、該画像は、テレビモニタの中央部に小さく表示されるか、画質の粗い拡大画像が全画面に表示されるかのいずれかである。

【0022】したがって、上記の課題を解決するためには、「TV出力機能」又は「AV出力機能」を有する携帯電話機のように、ただ単に付属ディスプレイに表示される画像を大画面外部ディスプレイ装置に拡大表示するという機能を有するに留まらず、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を大画面外部ディスプレイ装置に表示する機能を有する携帯情報通信装置を提供することが必要である。(以下略)

ウ【発明が解決しようとする課題】【0031】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、携帯電話機やPDAをはじめとする携帯情報通信装置に大画面外部ディスプレイ装置を接続することにより、より一般的には、携帯情報通信装置に大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続することにより、該大画面外部ディスプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示すること、特に、長文の電子メールについては、垂直スクロールを繰り返すことなく読めること、パソコン向けウェブページについては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し、しかも水平スクロールを繰り返すことなく閲覧できること、テレビ番組については、テレビ放送における本来画像を表示することを、該大画面外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生成手段(以下、付属表示データ生成手段と略記する)とは別個に使用することなく、大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の追加と、付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現する携帯情報通信装置を提供する点にある。また、携帯情報通信装置及び大画面外部ディスプレイ装置とともに用いられ、該大画面外部ディスプレイ装置の画面に、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示するための接続ユニットを提供する点にある。さらに、携帯情報通信装置とともに用いられ、自らに付属する大画面外部ディスプレイパネルに、該携帯情報通信装置の付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示する外部入出力ユニットを提供する点にある。

エ【課題を解決するための手段】【0041】また、携帯情報通信装置に係る第10の発明は、第7乃至第9のいずれか1つの発明の携帯情報通信装置において、前記データ処理手段は、後記グラフィックコントローラ1に対して、仮想画面におけるビットマップデータを生成するように命令する描画命令と、前記送信先指定手段の指定に基づき、該ビットマップデータから必要な部分を切り出して前記ディスプレイ制御手段Aと前記インターフェース手段A1の少なくとも一方に送信するように命令する送信命令とを与える中央演算回路1と、前記描画命令に基づき仮想画面におけるビットマップデータを生成して後記ビットマップメモリ1に書き込むとともに、前記送信命令がビットマップデータを前記ディスプレイ制御手段Aに送信するように命じる場合には、後記ビットマップメモリ1から該ディスプレイパネルAに表示される画像に対応する部分だけを切り出して前記ディスプレイ制御手段Aに送信し、前記送信命令がビットマップデータを前記インターフェース手段A1に送信するように命じる場合には、後記ビットマップメモリ1から周辺装置における外部ディスプレイ手段の画面に表示される高解像度画像に対応する部分だけを切り出して前記インターフェース手段A1に送信するグラフィックコントローラ1と、前記グラフィックコントローラ1で生成された仮想画面におけるビットマップデータを保持するビットマップメモリ1とを備えるようにしたものである。

オ【発明の効果】【0078】

第1乃至第15の発明の携帯情報通信装置においては、携帯情報通信装置のインターフェース手段A1に高解像度外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続して高解像度外部表示信号を送信することにより、該高解像度外部ディスプレイ手段の画面において、携帯情報通信装置に付属するディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する高解像度画像を表示することができる。(中略)しかも、(中略)従来の技術のように、携帯情報通信装置に備えられた表示データ処理手段とは別に、外部ディスプレイ手段を含む周辺装置向けの専用の表示データ生成手段を設ける必要はなく、「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題は回避できる。

カ【発明を実施するための最良の形態】【0115】(略)グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき、あらかじめ十分な大きさ(以下では、QUXGAWide(QuadUltraXGAWide)サイズ(水平画素数×垂直画素数=3840×2400画素)として説明する)の論理解像度を有するように設定された仮想画面におけるビットマップデータを生成し、必要に応じてVRAM(VideoRAM)1_10Cへの書き込み/読み出しを行いつつ、該ビットマップデータをLCDドライバ15Bに送信する。なお、VRAM1_10C は、[特許請求の範囲]でいうところのビットマップメモリ1にあたる。(以下略)【0117】特に、携帯電話機1が、インターネットに接続したウェブサイトにアクセスし、該ウェブサイトを構成するウェブページを閲覧している場合には、中央演算回路1_10A1は、フラッシュメモリ14Aに格納されたブラウザプログラムに従って、通信用アンテナ111A、RF送受信部111B、ベースバンドプロセッサ11及びバス19を経由して、ウェブページを構成するマークアップ文書ファイル及びそのリンクファイルを取得し、ウェブページのレイアウト形式に応じて以下のように描画命令を生成・送信する。すなわち、ウェブページがリキッドレイアウト、又はLCDパネル15Aの画面水平解像度(240画素)よりも狭い固定幅レイアウトを採用していれば、LCDパネル15Aの画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を、ウェブページがLCDパネル15Aの画面水平解像度よりも広い固定幅レイアウトを採用していれば、該固定幅と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を、それぞれ生成し、該描画命令をグラフィックコントローラ1_10Bに送信する。

グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき仮想画面におけるビットマップデータを生成しVRAM1_10Cに書き込むとともに、LCDパネル15Aに表示され、LCDパネル15Aの画面解像度と同じ解像度を有する画像を記述するビットマップデータをVRAM1_10Cから切り出してLCDドライバ15Bに送信する。(以下略)【0127】グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_10A1から受信した描画命令に基づき、あらかじめ設定された仮想画面上においてビットマップデータを生成し、VRAM1_10Cに書き込む。さらに、グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_10A1から入手した外部ディスプレイ装置5の画面解像度データに基づき、外部ディスプレイ装置5の画面解像度と同じ解像度を有し、外部ディスプレイ装置5の画面に表示される画像を記述するビットマップデータをVRAM1_10Cから切り出す。その上で、中央演算回路1_10A1から受信した送信命令に基づき、該ビットマップデータをTMDSトランスミッタ13Aに送信し、TMDSトランスミッタ13Aは、該ビットマップデータを、外部接続端子部A_13Dを経由して接続ユニット3のインターフェース部B_33にTMDS伝送方式で送信する。
(2) 前記(1)の記載事項及び本件発明に係る特許請求の範囲によれば、本件明細書には、本件発明に関し、次のとおりの開示があることが認められる。

ア携帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置においては、その携帯性が重視され、大きいサイズのディスプレイを付属させることができないことから、携帯情報通信装置のユーザーは、携帯情報通信装置とともにパソコンを所有することも多い(【0002】ないし【0004】、【0008】、【0009】)。

しかし、パソコンは、通常、汎用的な用途に使用できるように設計されているため、高機能なプロセッサを有している上、ソフトウェアも準備しなければならず、その所有に要するコストは大きく、上記の不便さを解消するためだけに別途パソコンを所有することは、経済的に不合理である一方、携帯情報通信装置のデータ処理手段は、表示画面が小さいということを除けば、パソコンにおけるプロセッサの機能に匹敵するから、上記のようなパソコンと携帯情報通信装置との使い分けを行うとすれば、同種のものに二重投資を行うことになり、資源の効率的な利用の観点からも好ましくない(【0010】、【0011】、【0013】)。

そのため、従来、携帯情報通信装置に、その付属ディスプレイよりも画面が大きい大画面外部ディスプレイ装置を接続することにより、同装置で画像を表示する技術がいくつか開示されていたが、いずれも、「不合理な二重投資」と「非効率な資源利用」という問題を十分に回避できるものではなかった(【0014】ないし【0022】)。

イ本件発明は、前記アの課題を解決するため、別紙「特許請求の範囲」(【請求項1】)に記載された構成を採用することで、携帯電話機等の携帯情報通信装置に大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置及び/又は大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続することにより、大画面外部ディスプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示することを、付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生成手段(付属表示データ生成手段)とは別個に大画面外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を使用することなく、上記のような周辺装置との間のインターフェース手段の追加と付属ディスプレイに画像を表示するための付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現するという作用効果を奏する(【0031】)。

2争点1-1(被告各製品は、「グラフィックコントローラ」を備えているか(構成要件D、E、F、H、Iの充足性))について(1) 前記前提事実(5)記載の被告各製品の構成に加え、証拠(甲16、17)及び弁論の全趣旨によれば、被告各製品に内蔵されたモバイルプロセッサは、CPU機能とGPU機能を有しているところ、GPUは、グラフィックコントローラなどと呼ばれ、コンピュータが画面に表示する映像を描画するための処理を行うものであることが認められる。そうすると、被告各製品のモバイルプロセッサに内蔵されるGPUは、グラフィックコントローラの機能を有するものと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

したがって、被告各製品は、「グラフィックコントローラ」(構成要件D、E、F、H、I)を備えているものと認められる。

(2) 被告は、本件発明は、中央演算回路とグラフィックコントローラが物理的に分離した複数の部品から構成されることを前提としており、被告各製品は、一つのモバイルプロセッサのみを備えるのであるから、構成要件Dを充足しない旨を主張する。

しかし、構成要件Dを含め、本件発明の文言上、中央演算回路とグラフィックコントローラが物理的に分離した複数の部品から構成されているものに限定することについては何ら規定されていない上、本件明細書の段落【0023】には、CPUとグラフィックプロセッサ等とを一つのプロセッサとして構成することが示されている。以上の事情からすると、本件明細書の段落【0115】、【0117】、【0127】及び図1において、実施例として、中央演算回路とグラフィックコントローラに異なる符号が付されていることを考慮しても、本件発明において、構成要件Dにおけるグラフィックコントローラが、中央演算回路と物理的に分離した複数の部品から構成されているものに限定されていると解することはできない。

したがって、被告の上記主張は採用することができない。

3争点1−2(被告各製品は、データ処理手段における「処理」を行っているか(構成要件Dの充足性))について(1) 「処理」(構成要件D)の意義について

ア特許請求の範囲の記載について構成要件Dにおいては、本件発明の「携帯情報通信装置」が、「データ処理手段」を備え、これが「中央演算回路」及び「グラフィックコントローラ」から構成されると規定されているところ、そのうち、「中央演算回路」について、「前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する」ものと規定され、また、「グラフィックコントローラ」について、「該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信する」ものと規定されている。

これらの記載からは、「中央演算回路」が、入力手段から受信したデータと記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、受信した「デジタル信号」に「必要な処理」を行って「デジタル表示信号」を生成する機能、データファイルとして記憶手段に格納した「デジタル信号」を読み出した上で「処理」する機能及びその「処理結果」に基づき「グラフィックコントローラ」を動作させる機能を有しているものと理解できる。

イ本件明細書の記載について本件明細書には、「【課題を解決するための手段】」として、「データ処理手段」が「前記入力手段から送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読み出したデータに必要な処理を行って、デジタル表示信号及びその他のデジタル信号を生成して送信する」、「本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「デジタル表示信号」には、…「ビットマップデータ」等のデジタル画像データに直接対応した信号だけでなく、デジタル画像データの生成(描画)を命令する描画命令のデジタル信号も含む」(【0032】)との記載がある。

これらの記載に照らし、前記アの特許請求の範囲の記載を解釈すれば、構成要件Dの「中央演算回路」及び「グラフィックコントローラ」によって構成される「データ処理手段」のうち、特に「データ」と「プログラム」とに基づいて動作する「中央演算回路」が、「必要な処理」又は「処理」を行うことで、「ビットマップデータ」等のデジタル画像データに直接対応した信号又は描画命令のデジタル信号も含む「デジタル表示信号」を生成するものと理解できる。

ウ被告の主張について被告は、本件発明の構成要件Dの「処理」とは、本件明細書における「適切に処理する」(【0032】)ことに限定される旨を主張する。

この点、本件明細書においては、「適切に処理する」の定義として、「表示信号、画像データファイル又は動画信号(以下、表示信号等と略記する。)を「適切に処理する」とは、ディスプレイ手段、又は、データ処理手段及びディスプレイ手段が、表示信号等に含まれている画素ごとの論理的な色情報を、ディスプレイ手段の画面を構成する物理的な画素の色表示として過不足なく現実化することを意味しており、より具体的には、物理的な現実化にあたって画素を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり、画素を補間して表示画像の解像度を大きくしたりしないことを意味している。」と記載されている(【0032】)。また、上記記載と同じ段落には、「適切に処理する」ことに関連して、「本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「外部表示信号」とは、周辺装置における外部ディスプレイ手段がそれを受信して適切に処理することにより画像を表示することが可能であるような信号を意味する。」、「また、表示信号等の「本来画像」とは、十分な大きさの画面解像度を有するディスプレイ手段、又は、データ処理手段と十分な大きさの画面解像度を有するディスプレイ手段とが、該表示信号等を受信して適切に処理することにより表示される本来の画像を意味し、「本来解像度」とは「本来画像」の解像度を意味する。」との記載がある。しかし、構成要件Dには「適切に処理する」と記載されてはおらず、当該記載に関連する「外部表示信号」、「本来画像」及び「本来解像度」との記載もないことからすると、本件明細書における上記の各記載は、構成要件Dの「必要な処理」ないし「処理」に係るものとは認められず、それらの解釈を左右するものではないというべきである。むしろ、本件明細書の「【発明を実施するための最良の形態】」においては、「中央演算回路1_10A1は、…AD/DA変換部1_112Cから送信されるデジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度の低い画像の全体画像の描画命令を生成する」(【0118】)、「テレビ放送を視聴している場合及び被写体を撮影している場合には、それぞれAD/DA変換部1_112C及びAD/DA変換部2_12Cから送信されるデジタル動画信号における本来画像の解像度は、外部ディスプレイ装置5における画面解像度より依然として大きいため、中央演算回路1_10A1は、該デジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度を外部ディスプレイ装置5の画面解像度に合わせた低画質の全体画像の描画命令が生成・送信される」(【0124】)、「フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演算回路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置5の画面解像度(無線動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有する画像の描画命令を生成・送信することができる」(【0125】)、「フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演算回路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置5の画面解像度(デジタル動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有する画像の描画命令を生成することができる」(【0126】)との記載がある。これらの記載からは、外部ディスプレイ手段の解像度と表示画像の本来の解像度との関係によっては、外部ディスプレイ手段に画像を表示するに当たり、画素を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり、画素を補間して表示画像の解像度を大きくしたりすることが示されていると理解できる。以上のとおり、特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載に照らし、構成要件Dの「必要な処理を行い」及び「処理する」は、本件明細書における「適切に処理する」(【0032】)に限定されるものとは認められない。したがって、被告の上記主張は採用できない。

(2) 被告各製品の「処理」(構成要件D)の充足性前記前提事実(5)及び弁論の全趣旨によれば、被告各製品におけるモバイルプロセッサは、構成要件Dの「中央演算回路」に該当し、タッチパネルから受信したデータと内部メモリに格納されたプログラムに基づき、無線通信手段から受信したデジタル信号(画像データ)を処理して、被告各製品に対応する解像度の内蔵用表示データを生成し、SDRAMのメモリエリアに書き込み/読み出しを行い、液晶ドライバに送信し、また、生成した内蔵用表示データに必要な処理を行い、外部表示用データを生成し、SDRAMに書き込み/読み出しを行い、HDMI信号としてMHLトランスミッタに送信する機能を有するものと認められる。したがって、被告各製品におけるモバイルプロセッサの上記の機能は、無線通信手段から受信したデジタル信号から、ビットマップデータ等のデジタル画像データに直接対応した信号であるデジタル表示信号を生成するものに該当するから、被告各製品は、構成要件Dの、データ処理手段における「処理」を行っているものと認められる。

4争点1-3(被告各製品における、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理方法は、本件発明の処理方法と異なるか(構成要件Hの充足性))について(1) 前記前提事実(5)の被告各製品の構成、前記2(1)の説示内容、及び弁論の全趣旨によれば、被告各製品のモバイルプロセッサに内蔵されるGPUは、構成要件Hの「グラフィックコントローラ」に該当し、被告各製品が、外部から、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を受信して、その画像を外部ディスプレイに表示させる場合に、「単一のVRAM」である外部SDRAM(後記5)から、ディスプレイパネルと同じ解像度の内蔵用表示データを読み出して、ディスプレイ制御手段である液晶ドライバに送信する機能と、前記外部SDRAMから、前記内蔵用表示データに補間処理をして生成した外部用表示データを読み出して、インターフェース手段であるMHLトランスミッタに送信する機能を有するものと認められる。したがって、被告各製品に内蔵されるGPUは、単一のVRAMから「ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号をディスプレイ制御手段に送信する機能と、単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能を有するものと認められ、構成要件Hを充足するものと認められる。
(2) 被告は、本件発明では、デコードされた元の画像データを「単一のVRAM」に対して書き込み/読み出しを行い、「単一のVRAM」から「前記ディスプレイパネルの解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出してデジタル表示信号を生成し前記ディスプレイ制御手段に送信して、内蔵ディスプレイに表示させる際に、補間処理も間引き処理もせずに「読み出し」のみを行っており、また、「単一のVRAM」から「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きな解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、それを外部ディスプレイに表示させる際に、補間処理も間引き処理もせずに「読み出し」を行っているから、被告各製品における「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理方法(そのGPUは、補間処理や間引き処理を行っている。)が、本件発明の構成要件Hに記載された処理方法と異なっているとして、被告各製品は、構成要件Hを充足しない旨を主張する。しかし、前記3において説示したとおり、本件発明のデータ処理手段について規定した構成要件Dの「処理」は、本件明細書に記載された「適切に処理する」ことに限定されるものとはいえず、データ処理手段を構成するグラフィックコントローラの機能について規定した構成要件Hを含め、本件発明の文言上も、その処理方法について、補間処理も間引き処理もしないことは何ら規定されておらず、本件明細書上もこれをうかがわせる記載はない。そうすると、被告各製品のGPUが、補間処理や間引き処理をしていたとしても、被告各製品における「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理方法が、本件発明の構成要件Hに記載された処理方法と異なっているとはいえない。したがって、被告の上記主張は採用できない。

5争点1-4(被告各製品は、「単一のVRAM」を備えているか(構成要件D、Hの充足性))について(1) 「単一のVRAM」の意義

ア特許請求の範囲の記載について(ア) 構成要件Dにおいては、「グラフィックコントローラ」が、「該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成」すると規定されている。また、構成要件Hにおいては、「グラフィックコントローラ」が、「前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成」すること及び「前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成」することが規定されている。なお、構成要件Hにおける「前記単一のVRAM」の文言から、構成要件Dと構成要件Hの「単一のVRAM」は同一の意義を持つものと解される。これらの記載から、構成要件D及びHの「単一のVRAM」は、「グラフィックコントローラ」により、「ビットマップデータの書き込み/読み出し」がされるものであって、その「読み出し」においては、携帯情報通信装置の「ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」又は「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」の読み出しがされるものであると理解できる。

(イ) 他方で、本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には、「単一のVRAM」を定義する記載はないところ、「単一」について、「三省堂国語辞典第七版」(平成26年1月10日発行)(甲38)には、「そのものばかりであること。」、「ひとつ。」等の記載があり、また、「VRAM」について、「ASCII.jpデジタル用語辞典」(甲26)の解説には、「ディスプレーに表示する画像データを一時的に蓄積するメモリーで、ビデオカードなどに搭載されている。」との記載がある。これらの記載から、「単一のVRAM」の一般的な語義については、コンピュータのディスプレイに表示する画像データを一時的に蓄積するメモリが、一つ存在することを意味するものと理解できる。

(ウ) 以上によれば、構成要件D及びHの「単一のVRAM」については、画像のビットマップデータの書き込み及び2種類の解像度を有する画像のビットマップデータの読み出しがされるメモリが一つ存在することを意味すると解するのが相当である。

イ本件明細書の記載について本件明細書においても、「単一のVRAM」の定義規定は置かれていないが、「グラフィックコントローラ1_10Bは…必要に応じてVRAM(VideoRAM)1_10Cへの書き込み/読み出しを行いつつ、該ビットマップデータをLCDドライバ15Bに送信する。」(【0115】)との記載があり、また、【図1】においては、「VRAM1」が、「中央演算回路1」、「グラフィックコントローラ1_10B」、「LCDドライバ」等と同列に記載されている。これらの記載からは、構成要件D及びHの「VRAM」については、中央演算回路、グラフィックコントローラ、LCDドライバ等と同様の物理的に把握可能なハードウェアと理解するのが相当であって、さらに、前記アの検討結果と総合すれば、「単一のVRAM」とは、ハードウェアとしての一つのVRAM(ディスプレイに表示する画像データを一時的に蓄積するメモリ)をいうものと解することができる。

ウ被告の主張について(ア) 被告は、構成要件D及びHの「VRAM」とは、ディスプレイに画像を表示するために必要なデータを保持するメモリ領域を指し、「単一のVRAM」とは、一つの仮想画面のビットマップデータを書き込むメモリ領域が単一という意義である旨を主張する。しかし、本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には、「メモリ領域」ないし「仮想画面」に係る記載はない。また、「VRAM」の語義について、「VRAM」を「メモリ領域」との意義で使用することが一般的であることを認めるに足りる証拠もない。

(イ) また、被告は、本件明細書において、VRAMにデータサイズの大きい仮想画面のビットマップデータを書き込み、この仮想画面のビットマップデータから内蔵ディスプレイ用ビットマップデータや外部ディスプレイ用ビットマップデータを切り出す動作が記載されており(【0115】、【0117】、【0127】)、この動作では、一つの仮想画面のビットマップデータが書き込まれるメモリ領域と、内蔵ディスプレイ用ビットマップデータ及び外部ディスプレイ用ビットマップデータが切り出されるメモリ領域が同一であることが前提とされているから、本件明細書の上記の記載は、一つの仮想画面のビットマップデータを書き込むメモリ領域が単一であることを示すものである旨を主張する。しかし、被告が指摘する本件明細書の記載は、「VRAM(VideoRAM)1_10C」をハードウェアとしてのメモリと理解することと矛盾するものではない。その他、本件明細書において、構成要件D及びHの「VRAM」が、ハードウェアではなく、メモリ領域であることを示すような記載は見当たらない。

(ウ) したがって、構成要件D及びHの「単一のVRAM」が、一つの仮想画面のビットマップデータを書き込むメモリ領域が単一であることを意味するとの被告の前記主張は、採用することができない。
(2) 被告各製品の「単一のVRAM」の充足性

ア前記前提事実(5)及び弁論の全趣旨によれば、被告各製品の構成としては、ハードウェアとしてのVRAMが一つ内蔵されていると認められる。したがって、被告各製品のVRAMは、構成要件D及びHにおける「単一のVRAM」に該当するから、被告各製品はこれを備えるものと認められる。

イ被告の主張について被告は、被告各製品のRAMは2個又は4個の4ギガビットのSDRAMが樹脂モールドでまとめられたSDRAMであり、物理的に分離した複数の部品から構成されているから、「単一のVRAM」の要件を満たさない旨を主張する。しかし、複数のチップから構成される被告各製品のRAMは、チップ単位では複数の部品であるとはいえ、パッケージ単位では一つの部品であり、樹脂モールドでまとめられたマルチチップパッケージのRAMを物理的に2個又は4個に分離して使用することは想定されておらず、弁論の全趣旨によれば、携帯情報通信装置に関する技術分野の当業者においては、樹脂で固められたパッケージのRAMを一つの部品として認識して扱うものであることが認められるところである。したがって、被告の上記主張は採用できない。以上によれば、被告各製品は、本件発明の技術的範囲に属するというべきである。そこで続いて、本件発明の無効理由の有無について検討する。

6争点2-1(乙1公報を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如)(無効理由1)について(1) 乙1公報の記載事項等

ア本件発明に係る優先日(証拠(甲1、2)及び弁論の全趣旨から、平成16年12月24日を本件発明についての優先日(以下「本件優先日」という。)と認める。)前に頒布された刊行物である乙1公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア) 請求項1内蔵された内部表示装置における表示以外に、外部表示装置を接続して表示させることが可能な携帯情報処理装置において、前記内部表示装置と、前記内部表示装置よりも高解像度の前記外部表示装置に表示させる表示データを格納する表示メモリと、前記内部表示装置による内部表示と、前記外部表示装置による外部表示とをそれぞれ制御して、前記表示メモリに格納された表示データに応じた画面を表示させる表示コントローラと、前記前記内部表示装置による内部表示の内容を選択的に前記外部表示装置に表示させる表示制御手段とを具備したことを特徴とする携帯情報処理装置。

(イ) 【0002】【従来の技術】一般に、携帯情報処理装置は、携帯性を確保するために装置の小型化が要求され、それに伴って出力装置として内蔵した表示デバイスの表示サイズも小さくなってしまうため、例えば特開平8-115063号に開示されているように、大きな表示サイズでの表示を可能とするために外部表示機器であるCRTを接続可能な機能が設けられている。【0003】携帯情報処理装置は、外部表示機器を接続した場合、内蔵した表示デバイスにおいて表示する描画イメージと同じ描画イメージを外部表示機器において表示させる。【0004】【発明が解決しようとする課題】このように従来の携帯情報処理装置では、外部表示機器を接続した場合には、内蔵した表示デバイスでの描画イメージと同じ描画イメージを、外部表示機器において表示させていた。【0005】従って、外部表示機器を用いた場合には、画面の物理的な表示サイズが大きくなるだけであって、外部表示機器の解像度が内蔵した表示デバイスの解像度よりも高く、より多くの情報を表示可能であったとしても、同じ情報を提供するだけとなっていた。【0006】つまり、従来の携帯情報処理装置では、内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の外部表示機器を利用することで生じる、より広い画面表示サイズを有効に利用することができなかった。【0007】本発明は前記のような事情を考慮してなされたもので、外部表示機器における表示を有効に活用することが可能な携帯情報処理装置及び外部表示出力の制御方法を提供することを目的とする。

(ウ) 【0012】図1に示すように、本実施形態における携帯機器2は、CPU10、システムメモリ(DRAM)12、ROM14、入力装置16、表示メモリ18、表示コントローラ20、及び内部表示装置22を有して構成されている。また、携帯機器2は、表示コントローラ20を介して、外部表示装置24(図1中に示す外部表示デバイス4)を接続して表示させることができる。【0013】CPU10は、システム全体の制御を司るもので、システムメモリ12やROM14に格納されたプログラム、例えば表示制御に関係するOS(オペレーティングシステム)、表示描画プログラム、デバイスドライバ等に従って各種の制御を実行する。【0014】システムメモリ12は、プログラムやデータ等の一時使用の記憶領域として使用される。ROM14は、プログラム等の本体の記憶領域として使用される。【0015】入力装置16は、画面の座標位置等入力するペン(タブレット)やマウス等のポインティングデバイス、文字等を入力するキーボードなどにより構成される。表示メモリ18は、内部表示装置22及び外部表示装置24において表示させる表示データの記憶領域として使用される。表示メモリ18の記憶領域の制御については後述する。【0016】表示コントローラ20は、内部表示装置22及び外部表示装置24における表示を制御するもので、表示メモリ18に格納された表示データに応じて、内部表示装置22と外部表示装置24に対して異なる画面を表示させることができる。【0017】内部表示装置22は、携帯機器2に予め内蔵されたLCD等によって構成される表示デバイスであり、携帯機器2の筐体のサイズに応じて比較的、表示サイズが小さい表示装置である。ペンによるポインティングデバイスが設けられる場合、内部表示装置22の表示面と積層一体化して、座標データ入力用のタブレットが設けられる(図21参照)。【0018】外部表示装置24は、携帯機器2にケーブル等(無線等による接続も可能)を介して任意に接続されるCRT等によって構成される表示デバイスであり、本実施形態では内部表示装置22よりも表示サイズが大きく、かつ高解像度であるものが用いられるものとする。【0019】図3は、図1に示す表示コントローラ20の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、表示コントローラ20には、メモリコントローラ20a、レジスタ20b、内部表示用回路20c、外部表示用回路20dを含んで構成されている。【0020】メモリコントローラ20aは、CPUI/F(インタフェース)を経由して入力されるCPU10からの指示に応じて表示制御を行なうもので、表示データのリード/ライトが指示された場合には、この指示に応じて表示メモリ18に対して表示データをリード/ライトし、またレジスタ20bに設定されたアドレスをもとに表示メモリ18から表示データをリードし、内部表示用回路20cを介して内部表示装置22へ、また外部表示用回路20dを介して外部表示装置24へ出力する。なお、メモリコントローラ20aによる表示データの表示メモリ18からのリード、及び出力の処理は一定間隔で繰り返して実行されているので、プログラム(CPU10)が表示メモリ18の表示データ(描画イメージ)を変更すると出力画面にただちに反映される。

(エ) 【0025】また、CPU10は、各デバイスの初期設定として(ステップA2)、表示描画プログラムに従って表示制御に関係する初期化処理を実行する。まず、内部と外部の表示デバイス固有の初期化処理(例えば表示に必要な走査線の周波数など)を行い(ステップa1)、内部表示に必要な表示メモリ18のエリアを確保する(ステップa2)。【0026】また、表示コントローラ20(レジスタ20b)に対して、表示を開始するアドレスを設定する(内部表示は先に確保した表示メモリ18エリアの先頭のアドレス)(ステップa3)。【0027】そして、表示描画プログラムによる初期化の終わりの処理にて、表示デバイスへの出力の開始を表示コントローラ20へ設定する。これよりシステムの画面が表示される。【0028】こうして各デバイスの処理設定が完了すると、システム定常状態となる。なお、システムの定常状態とは、キーボードやペン等の入力装置16からの入力待ちの状態である。このシステムの定常状態において入力装置16から入力があると割り込み処理が実行される。【0029】図5は、割り込み処理の簡単な流れをソフトウェア的に示す図である。まず、入力機器等のハードウェア34において割り込みが発生すると、OS31により割り込み処理が実行される。例えば、入力装置16がユーザによって操作されると入力の割り込みが発生する(例えばキーボードの打鍵やペンのタッチなど)。

(オ) 【0033】次に、内部表示装置22及び外部表示装置24における描画の動作について説明する。図6は、内部表示装置22及び外部表示装置24で描画を行なうための簡単な流れの仕組みを示す図である。【0034】ここでは、システムは定常状態であり、通常の表示、すなわち内部表示装置22における内部表示が行われているものとし、さらに外部表示装置24による外部表示を行わせる。【0035】まず、外部表示装置24において外部表示させるために、ユーザによって外部表示装置24への表示データ(描画イメージ)の出力方法を指定させる。この出力方法の指定は、例えばアプリケーションプログラム35の実行により提供される機能によって、ユーザからの指示を入力装置16から指定させる。出力方法の指定の内容としては、例えば「内部表示と同じ描画イメージを表示する」、「内部表示と異なった描画イメージを表示する」といった指定があるものとする。【0036】アプリケーション35によって出力方法の指定が入力されると、OS38の制御のもとで、内部表示用と外部表示用のそれぞれの描画プログラム(以下、内部表示ドライバ36、外部表示ドライバ37)に従って、表示コントローラ20に対してユーザからの指定の設定、すなわち内部表示と外部表示に用いる表示データ(描画イメージ)を示すアドレスを表示コントローラ20内のレジスタ20bに設定する。【0037】一方、アプリケーションプログラム35は、内部表示装置22と外部表示装置24において描画させるイメージ、すなわち内部表示イメージと外部表示イメージの2種類を、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表示メモリ18上にライトする。【0038】表示コントローラ20は、アプリケーションプログラム35によってライトされた内部表示イメージと外部表示イメージに応じて、内部表示装置22と外部表示装置24に対して、それぞれに応じた描画イメージを表示させる。【0039】図7は、前述のようにして内部表示イメージと外部表示イメージがライトされる、表示メモリ18の使用方式の一例を示す図である。図7(a)に示す例は、解像度の異なる内部表示装置22(低解像度)と外部表示装置24(高解像度)に対して、表示メモリ18の表示エリアの一部を共有させることを示している。【0040】図7(a)に示すように、表示エリアの一部を共有させることにより、外部表示装置24において表示される描画イメージが、内部表示装置22おいて表示される描画イメージの一部と同じになる。なお、図7(a)に示す例は、内部表示装置22と外部表示装置24の横方向の解像度が同じ場合である。【0041】表示エリアの一部を共有させる場合、表示コントローラ20のレジスタ20bに対して、外部表示用の出力アドレスと内部表示用の出力アドレスとを同じにすることによって実現することができる。(カ) 【0044】以上説明したように、本実施形態における携帯機器2は、図1~図7に示すように構成され、表示コントローラ20の内部表示用の出力アドレスと外部表示用の出力アドレスの設定を行なうことによって、異なる解像度を持つ内部表示装置22と外部表示装置24に対して、それぞれ異なるイメージや同一のイメージを表示させることが可能となる。【0045】次に、前述した基本構成をもとにして実行される、本発明における第1~第5の特徴的な機能について説明する。(第1機能:外部表示エリアへ表示データをコピーするコピー機能)コピー機能では、前述した図1~5までの基本構成で、例えば内部表示デバイス(内部表示装置22)が640×240の解像度、外部表示デバイス(外部表示装置24)が640×480の解像度を持ち、内部と外部でメモリの一部を共有するといった環境の装置(図7(a)参照)において、外部表示エリアに内部・外部共有表示エリアの表示データをコピーすることによって、外部表示装置24において参照したい画面を一時的に表示させることができるようにする。(キ) 【0083】表示描画プログラムは、外部表示用の領域に関する情報(例えば開始アドレス、メモリサイズなど)をシステムメモリ12へ記憶することでOSへ渡す。また、表示コントローラ20に表示を開始するアドレスを設定して表示を行う(ステップE15)。なお、表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のアプリケーションによって指定される。(ク) 【0103】なお、上述した実施形態において記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク(フロッピーディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで各種装置に提供することができる。また、通信媒体により伝送して各種装置に提供することも可能である。本装置を実現するコンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、または通信媒体を介してプログラムを受信し、このプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。【0104】【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、内部表示装置における内部表示用の表示データを格納するための領域と、内部表示装置よりも高解像度の外部表示装置における外部表示用の表示データを格納するための領域を表示メモリに確保し、内部表示用の表示データを選択的に外部表示用の領域に格納することで、解像度の違いによる外部表示装置における表示領域を有効に利用することが可能となる。

イ上記アの記載によれば、乙1公報には、乙1発明に関し、次のような開示があることが認められる。携帯機器2は、CPU10、システムメモリ(DRAM)12、ROM14、入力装置16、表示メモリ18、表示コントローラ20及び内部表示装置22を有して構成されており、携帯機器2は、表示コントローラ20を介して、外部表示装置24を接続して表示させることができ、CPU10は、システムメモリ12やROM14に格納されたプログラム、例えば表示制御に関係するOS、表示描画プログラム、デバイスドライバ等に従って各種の制御を実行し、システムメモリ12は、プログラムやデータ等の一時使用の記憶領域として使用され、ROM14は、プログラム等の本体の記憶領域として使用され、入力装置16は、画面の座標位置等入力するペン(タブレット)やマウス等のポインティングデバイス、文字等を入力するキーボードなどにより構成され、表示メモリ18は、内部表示装置22及び外部表示装置24において表示させる表示データの記憶領域として使用され、表示コントローラ20は、内部表示装置22及び外部表示装置24における表示を制御するものであり、内部表示装置22は、携帯機器2に予め内蔵されたLCD等によって構成される表示デバイスであり、外部表示装置24は、携帯機器2にケーブル等を介して任意に接続されるCRT等によって構成される表示デバイスであり、表示コントローラ20は、メモリコントローラ20a、レジスタ20b、内部表示用回路20c、外部表示用回路20dを含んで構成されており、メモリコントローラ20aは、CPU10からの指示に応じて表示制御を行うもので、表示データのリード/ライトが指示された場合には、この指示に応じて表示メモリ18に対して表示データをリード/ライトし、またレジスタ20bに設定されたアドレスをもとに表示メモリ18から表示データをリードし、内部表示用回路20cを介して内部表示装置22へ、また外部表示用回路20dを介して外部表示装置24へ出力し、キーボードやペン等の入力装置16からの入力待ちの状態であるシステム定常状態となり、このシステムの定常状態において入力装置16から入力があるとOS31により割り込み処理が実行され、アプリケーションプログラム35の実行により提供される機能によって、ユーザからの指示を入力装置16から指定させ、アプリケーション35によって出力方法の指定が入力されると、OS38の制御のもとで、内部表示用と外部表示用のそれぞれの描画プログラムに従って、表示コントローラ20に対してユーザからの指定の設定、すなわち内部表示と外部表示に用いる表示データ(描画イメージ)を示すアドレスを表示コントローラ20内のレジスタ20bに設定し、一方、アプリケーションプログラム35は、内部表示装置22と外部表示装置24において描画させるイメージ、すなわち内部表示イメージと外部表示イメージの2種類を、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表示メモリ18上にライトし、表示コントローラ20は、アプリケーションプログラム35によってライトされた内部表示イメージと外部表示イメージに応じて、内部表示装置22と外部表示装置24に対して、それぞれに応じた描画イメージを表示させ、内部表示装置22が640×240の解像度、外部表示装置24が640×480の解像度を持ち、内部と外部でメモリの一部を共有するといった環境の装置において、外部表示エリアに内部・外部共有表示エリアの表示データをコピーすることによって、外部表示装置24において参照したい画面を一時的に表示させ、表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のアプリケーションによって指定され、通信媒体を介してプログラムを受信する、携帯機器2。
(2) 乙1発明と本件発明との対比前記(1)イの乙1発明と本件発明とを対比すると、少なくとも、構成要件B、G、H及びKに対応する構成に関して、以下の各点で相違することが認められる。(相違点①)構成要件Bに対応する構成として、乙1発明には無線通信手段が明示されていない点。(相違点②)構成要件Dに対応する構成として、本件発明の中央演算回路は、無線通信手段からデジタル信号を受信しているのに対して、乙1発明のCPU10は表示データをどこから受信したかについて、特定されていない点。(相違点③)構成要件G及びKに対応する構成として、本件発明は携帯情報通信装置であるのに対して、乙1発明は携帯情報処理装置である点。(相違点④)構成要件Hに対応する構成として、本件発明の「携帯情報通信装置」は、「画像を表示する場合」に、「「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して、画像を表示」しているのに対し、乙1発明の「携帯装置」は、「「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して、画像を表示」することが特定されていない点。
(3) 相違点④についての検討事案に鑑み、相違点④について先に検討する。被告は、乙1発明の「表示コントローラ20」が取り扱っている外部表示装置用の表示データの解像度(640×480)は、「内部表示装置22」の解像度(640×240)より十分に大きいことから、この解像度は「本来解像度」と推定でき、したがって、「「内部表示装置22」の「解像度」より大きい「解像度」を「本来解像度」とする」点は、本件発明と乙1発明の相違点ではない旨を主張する。しかし、前記(1)のとおり、乙1発明は、「内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の外部表示機器を利用することで生じる、より広い画面表示サイズを有効に利用する」ことを課題とし、アプリケーションプログラムによって、表示装置の画面に対応した解像度の描画イメージを生成するためのものであるといえるところ、乙1発明には、外部表示装置の「より広い画面表示サイズを有効に利用する」ために、具体的にどのような解像度のデータを扱うかについては記載がなく、かつ、前記データが「本来解像度」を有する画像データであることについても記載がない。したがって、本件発明の「携帯情報通信装置」は、「画像を表示する場合」に、「「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して、画像を表示」しているのに対し、乙1発明の「携帯装置」は、「「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して、画像を表示」することが特定されていない点(相違点④)は、本件発明と乙1 発明との実質的な相違点であり、しかも、その技術内容に照らし、その相違の程度は小さいものとはいえないところ、この相違点を埋めるために組み合わせる副引用例や組合せのための示唆等は主張立証されていない。また、乙1発明に記載された構成を採用した上で、さらに、本件発明に記載されている、「携帯情報通信装置」が、「画像を表示する場合」に、「「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して、画像を表示」する、という構成をとることが、本件優先日前において、周知技術又は単なる設計事項であることを認めるに足りる証拠はない。したがって、本件発明の構成要件Hと乙1発明の構成との間には、少なくとも相違点④が存在し(新規性欠如は成り立たない。)、かつ、この点について当業者が容易に想到し得たものとは認められない(進歩性欠如は成り立たない。)。
(4) 小括以上によれば、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明について、乙1公報を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如の無効理由(無効理由1)は認められない。

7争点2-2(乙5公報を主引例とする進歩性欠如)(無効理由2)について(1) 乙5公報の記載事項等

ア本件優先日前に頒布された刊行物である乙5公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア) 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話機(通信機能搭載のパームトップPCやPDA[Personal Digital/Data Assistant]などの携帯電子機器を含む)に関するものである。【0002】【従来の技術】従来より、携帯電話機の多くは、各種情報(静止画や動画、文字など)を表示する手段として、数インチの表示部(液晶ディスプレイなど)を有して成る。

(イ) 【0004】【発明が解決しようとする課題】確かに、上記構成から成る携帯電話機は、アドレス帳や電子メールの内容、或いは携帯電話機での閲覧を目的として作成されたWebコンテンツ等を表示部に出力することができるので、ユーザにとって非常に便利である。【0005】しかしながら、上記構成から成る携帯電話機では、本体の携帯性を考慮して表示部の設置面積を大きくとれないため、表示内容の視認性や臨場感が乏しい上、ユーザの視力低下を招くおそれがあった。また、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについては、正常に表示することすらできなかった。

(ウ) 【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る携帯電話機は、入力された情報を外部表示装置で読取可能な画像信号形式に変換して出力する画像出力部を有して成り、前記外部表示装置への情報出力を行う構成としている。このような構成とすることにより、本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性や臨場感を向上させることが可能となる。

(エ) 【0012】また、上記構成から成る携帯電話機において、前記外部表示装置に出力される情報は、サーバから取得されたWebコンテンツ情報とすればよい。このような構成とすることにより、外部表示装置には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示されることになるので、携帯電話機本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可能となる上、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、正常に表示することが可能となる。また、ユーザは、外部表示装置を通してWebコンテンツ情報を閲覧しながら、携帯電話機本体で良好な音声通話を行うことが可能となる。【0013】また、上記構成から成る携帯電話機において、前記外部表示装置に出力される情報は、サーバから取得されたストリーミング情報に含まれる画像情報とすればよい。このような構成とすることにより、外部表示装置には、再生中のストリーミング画像が表示されることになるので、携帯電話機本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性及び臨場感を向上させることが可能となる。また、ユーザは、外部表示装置を通して再生中のストリーミング画像を見ながら、携帯電話機本体で良好な音声通話を行うことが可能となる。

(オ) 【0015】【発明の実施の形態】図1は本発明に係る携帯電話機の要部構成を示すブロック図である。本図に示すように、本発明に係る携帯電話機1は、制御部10と、送受信部11と、表示部12と、音声部13と、操作部14と、撮像部15と、記憶部16と、画像出力部17と、を有して成る。【0016】制御部10は、CPU[Central Processing Unit]等から成り、上記各部11~17を含む装置全体の動作を制御する。送受信部11は、送信回路と受信回路を有して成り、アンテナ11aを介して電波を送受信することで、基地局(不図示)との双方向通信を行う。なお、アンテナ11aとしては、携帯性や格納性に優れたロッドアンテナを用いるとよい。表示部12は、液晶ディスプレイ等から成る情報表示手段である。音声部13は、マイク13aやスピーカ13bを制御する音声入出力手段である。操作部14は、ダイヤルキーやブラウザ操作キー等を備えた入力デバイスである。撮像部15は、CCDカメラやCMOSカメラから成る画像撮影手段である。記憶部16は、ROMやRAMから成る情報格納手段である。本発明の特徴部分である画像出力部17は、入力された情報(静止画や動画、文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば、ビデオ信号形式)に変換して出力するインターフェイス部である。(カ) 【0018】

第1の具体例は、記憶部16の格納情報(アドレス帳や電子メールの内容等)を外部表示装置2に出力する場合である。この場合、制御部10は、記憶部16から所望の情報を読み出して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求する。該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力する。このような動作により、外部表示装置2には、携帯電話機1の記憶部16から読み出された情報が表示されることになる。従って、外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用いれば、携帯電話機1本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可能となる。(キ) 【0020】

第3の具体例は、閲覧中のWebコンテンツ情報を外部表示装置2に出力する場合である。この場合、制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求する。該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力する。このような動作により、外部表示装置2には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示されることになる。従って、外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用いれば、携帯電話機1本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可能となる。また、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示することが可能となる。

イ上記アの記載によれば、乙5公報には、乙5発明に関し、次のような開示があることが認められる。携帯電話機1は、制御部10と、送受信部11と、表示部12と、操作部14と、記憶部16と、画像出力部17と、を有して成り、制御部10は、CPU[Central Processing Unit]等から成り、装置全体の動作を制御し、送受信部11は、送信回路と受信回路を有して成り、アンテナ11aを介して電波を送受信することで、基地局との双方向通信を行い、表示部12は、液晶ディスプレイ等から成る情報表示手段であり、操作部14は、ダイヤルキーやブラウザ操作キー等を備えた入力デバイスであり、記憶部16は、ROMやRAMから成る情報格納手段であり、画像出力部17は、入力された情報(静止画や動画、文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば、ビデオ信号形式)に変換して出力するインターフェイス部であり、記憶部16の格納情報を外部表示装置2に出力する場合、制御部10は、記憶部16から所望の情報を読み出して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求し、該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力し、閲覧中のWebコンテンツ情報を外部表示装置2に出力する場合、制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求し、該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力し、外部表示装置2には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示され、外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用い、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示することが可能となる、携帯電話機1。
(2) 乙6発明の記載事項等

ア本件優先日前に頒布された刊行物である乙6公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア) 請求項1情報処理装置に接続された複数の表示装置間で表示信号の出力先を切り換えるための画面表示制御方法において、(a) 接続されている複数の表示装置夫々の物理的な最高解像度を検査し且つ記憶するための第1の解像度管理段階と、(b) 画面バッファのアロケーションを行うための最高解像度(静的最高解像度)を設定するための第2の解像度管理段階と、(c) ユーザからの指示に応じて表示信号の出力先となる表示装置を指定するための切り換え段階と、(d) 現在画面表示を行っているソフトウェアの表示能力に応じて最高解像度(動的最高解像度)を設定するための第3の解像度管理段階と、(e) 前記切り換え段階によって新たに表示信号の出力先として指定された表示装置上での物理的な解像度を、前記第1の解像度管理段階にて管理されている該表示装置の物理的な解像度か、又は前記第3の解像度管理段階によって設定された動的解像度のうちいずれか低いものに設定するための解像度決定手段と、を具備することを特徴とする画面表示制御方法(イ) 【0006】PCが表示信号の出力先を切り換えるときの問題点の1つは、表示装置間での解像度の相違である。(例えば家庭用TVモニタの解像度は、NTSC方式なら640×400ドットであり、PAL方式なら800×600ドットである。また、LCDディスプレイの解像度は640×480ドット、800×600ドット、1024×768ドットなど、画面サイズに応じて様々である。また、CRTディスプレイの解像度は比較的高く、1024×768ドット、又は1280×1024ドットが一般的である。)(ウ) 【0026】【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳解する。【0027】A.パーソナル・コンピュータ(PC)100のハードウェア構成図1は、本発明の実施に供されるPC(以下、「システム」ともいう)100のハードウェア構成を概略的に示したブロック図である。以下、各部について簡単に説明する。

(エ) 【0034】ビデオ・アダプタ20は、コンピュータ信号をビデオ信号に変換して表示装置(例えばLCD52、あるいはTVモニタ51やCRTモニタ53など)に出力するための周辺機器である。より具体的には、ビデオ・アダプタ20は、CPU10から受け取った描画命令を処理してフレーム・バッファ(VRAM)40に一旦書き込むとともに、表示装置の走査タイミングに同期させてフレーム・バッファ40中から画像情報を順次読み出して、ビデオ信号に変換して表示装置(例えば標準装備されたLCD52)に供給するようになっている。また、ビデオ・アダプタ20は、画面の解像度や発色数、表示速度などをコントロールするようにもなっている。【0035】フレーム・バッファ40は、WindowsやOS/2、あるいはDOSなどの起動中のソフトウェアが表示する画面を一時書き込むための記憶媒体である。フレーム・バッファ40は、各ドットの持つデータ数に応じた枚数(R、G、B、…)だけプレーン数で構成され、1プレーンのドット・サイズは、ビデオ・アダプタ20が許容する最高解像度に応じた充分な大きさであり、例えば最高解像度のCRTディスプレイ53に対応した1280×1024ドット・サイズである。実際にフレーム・バッファ40に書き込まれる画面サイズは、起動中のソフトウェアにも依存し、例えばWindowsやOS/2が表示可能な最高解像度(すなわちウィンドウ画面)は1024×768である。フレーム・バッファ40中に書き込まれたソフトウェア画面は、表示装置51、52、53(後述)上の現実に映し出された画面ではないことから、「仮想スクリーン」とも呼ばれる。

【0036】TVモニタ51、LCD52、及びCRTディスプレイ53は、システム100に装着可能な、あるいは標準装備された表示装置である。一般には、ノートブック型PCはLCDを、デスクトップ型PCはCRTディスプレイを、それぞれ標準装備しているが、いずれを装備するかということ自体は設計的事項に過ぎない。TVモニタ51やLCD52は、時としてフレーム・バッファ40の仮想スクリーンよりも解像度が低いこともあるが、このような場合にはビデオ・アダプタ20が仮想スクリーンから適切なサイズだけを切り出して表示するようになっている。表示装置51、52、53上に現実に映し出された画面は、「実スクリーン」とも呼ばれる。

(オ) 【0038】B.ビデオ・アダプタ20のハードウェア構成図2は、PC100のハードウェア構成要素のうち、ビデオ・アダプタ20、及びその周辺をさらに詳しく示したブロック図である。同図において、ビデオ・アダプタ20は、インターフェース部21と、フレーム・バッファ制御部22と、LCD表示制御部23と、内部RAMDAC24と、CRT表示制御部25とを含んでいる。また、ビデオ・アダプタ20は、TVモニタ51、LCD52、CRTディスプレイ53の各々にビデオ信号を出力するための出力端子を有している。

(カ) 【0040】フレーム・バッファ制御部22は、フレーム・バッファ40へのアクセス(リード及びライト)を制御するためのものである。より具体的には、フレーム・バッファ制御部22は、仮想スクリーンをフレーム・バッファ40に書き込むとともに、仮想スクリーンから実スクリーンを切り出すようになっている。

【0041】LCD表示制御部23は、フレーム・バッファ40から読み出された画像情報を並列-直列変換して直列のビデオ信号を発生し、表示タイミングをとりながらLCD52に供給するためのものである。本実施例のLCD表示制御部23は、設定された解像度に従って、1画面のサイズが640×400、640×480、800×600、1024×768のいずれかとなるタイミングで駆動する。

【0042】LCD表示制御部23が出力するビデオ信号は、TVモニタ51やLCD52に供給される。TVモニタ51は、NTSC/PAL方式でありPC100とはデータ・フォーマットが異なるため、TVエンコーダ27によって復号化したビデオ信号が供給されるようになっている。本実施例のTVモニタ51は、最高で640×4080ドット・サイズの画面を表示することができる(但しNTSC方式の場合。PAL方式なら800×600)。また、LCD52の最大表示画面サイズは、640×480ドット、800×600ドット、1024×768ドットのいずれかである。【0043】内部RAMDAC24は、フレーム・バッファ40から読み出されたデジタル形式のままの画像情報をアナログ形式のビデオ信号に変換してから、CRTディスプレイ53に供給するようになっている。RAMDAC24は、カラー・パレットを持ち、これに基づいてアナログ信号に高速変換することが可能である。

【0044】CRT表示制御部25は、表示タイミングをとるための駆動制御信号(例えば水平同期信号hsyncや垂直同期信号vsync)をCRTディスプレイ53に供給するためのものである。本実施例のCRT表示制御部25は、設定された解像度に従って、1画面のサイズが1024×768、又は1280×1024のいずれかとなるタイミングで駆動する。【0045】内部RAMDAC24及びCRT表示制御部25が出力するビデオ信号及び駆動制御信号は、CRTディスプレイ53に供給される。本実施例のCRTディスプレイ53の最高解像度は、1024×768、又は1280×1024のいずれかである。

【0046】表示画面の解像度の制御は、ビデオ・アダプタ20が所与の設定値に基づいて行う(前述)。システム起動時には、ビデオ・アダプタ20の解像度(すなわちLCD表示制御部23やCRT表示制御部25が駆動する解像度)は、CMOSRAM55の書き込みデータに従って設定される。そして、LCD表示制御部23やCRT表示制御部25は、設定された解像度に応じて各表示装置51、52、53を駆動制御するようになっている。本実施例では、D項で後述するように、BIOSの中に特別なインターフェースが用意されており、該インターフェースによってビデオ・アダプタ20に設定された解像度を動的に切り換えることができるようになっている。

イ上記アの記載によれば、乙6公報には、乙6発明に関し、次のような開示があることが認められる。

ビデオ・アダプタ20は、CPU10から受け取った描画命令を処理してフレーム・バッファ(VRAM)40に一旦書き込むとともに、表示装置の走査タイミングに同期させてフレーム・バッファ40中から画像情報を順次読み出して、ビデオ信号に変換して表示装置に供給するようになっており、実際にフレーム・バッファ40に書き込まれる画面サイズは、起動中のソフトウェアにも依存し、例えばWindowsやOS/2が表示可能な最高解像度は1024×768であり、TVモニタ51やLCD52は、時としてフレーム・バッファ40の仮想スクリーンよりも解像度が低いこともあるが、このような場合にはビデオ・アダプタ20が仮想スクリーンから適切なサイズだけを切り出して表示するようになっており、ビデオ・アダプタ20は、インターフェース部21と、フレーム・バッファ制御部22と、LCD表示制御部23と、内部RAMDAC24と、CRT表示制御部25とを含んでいる、ビデオ・アダプタ20。

(3) 乙5発明と本件発明との対比前記(1)イの乙5発明と本件発明とを対比すると、少なくとも、構成要件D、E、F、H、Iに対応する構成に関して、次の各点で相違することが認められる。

(相違点①)構成要件Dに対応する構成として、本件発明の「データ処理手段」には、「該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラ」が備えられているのに対し、乙5発明には「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない点。

(相違点②)構成要件Eに対応する構成として、本件発明の「ディスプレイ手段」は、「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、乙5発明の「表示部12」は、「デジタル表示信号」が「グラフィックコントローラから受信した」ものである点が特定されていない点。

(相違点③)構成要件Fに対応する構成として、本件発明の「インターフェース手段」は、「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、乙5発明の「画像出力部17」は「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作することについて特定されていない点。

(相違点④)構成要件Hに対応する構成として、本件発明の「グラフィックコントローラ」は、「前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能」を実現しているのに対し、乙5発明には、「グラフィックコントローラ」が「本来解像度がディスプレイパネル(表示部12)の画面解像度より大きい画像データ」を処理し、表示部12及び外部表示装置2に画像を表示するための信号を生成することが特定されていない点。

(相違点⑤)構成要件Iに対応する構成として、本件発明では「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」が変換される伝送方式が列挙されているのに対し、乙5発明では「デジタル表示信号」はどの「伝送方式」に変換されるのか特定されていない点。
(4) 相違点④の容易想到性について

ア事案に鑑み、相違点④について先に検討する。被告は、相違点④について、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えてみることにより当業者が容易に想到できたことである旨を主張する。

しかし、乙5発明に開示された内容(前記(1))、及び乙1発明に開示された内容(前記6(1))に照らすと、乙5発明の「画像データを処理して画像を表示する」ための構成と、乙1発明の「描画イメージを表示する」ための構成とは、それぞれを構成する構成要素の機能が大きく異なっており、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」、「表示コントローラ20」及び「表示メモリ」に置き換え、さらに、「表示コントローラ20」によって表示部12と外部表示装置2との両方の画像信号を生成することとし、「画像出力部17」において外部表示装置2のための画像信号の生成を除いた信号処理を行うように組み合わせる動機付けがあるとはいえない。したがって、当業者において、相違点④に係る乙5発明に乙1発明を組み合わせることによって、相違点④に係る構成を容易に想到することができたものとは認められない。

イまた、被告は、相違点④について、乙5発明の「制御部10」を乙6発明の「CPU10」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えてみることによって当業者が容易に想到できたことである旨を主張する。

しかし、乙5発明に開示された内容(前記(1))及び乙6発明に開示された内容(前記(2))に照らすと、乙5発明と乙6発明とは画像表示に関する構成が大きく異なっており、乙5発明に対して、乙6発明の構成要素に含まれる複数の機能の中から、所定の機能のみを切り出して置き換える動機付けがあるとはいえない。

したがって、当業者において、相違点④に係る乙5発明に乙6発明を組み合わせることによって、相違点④に係る構成を容易に想到することができたものとは認められない。
(5) 小括以上によれば、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明について、乙5公報を主引例とする進歩性欠如の無効理由(無効理由2)は認められない。

8争点2-3(「単一のVRAM」なる語句の意義が不明瞭であることによる明確性要件違反(無効理由3))について被告は、「単一のVRAM」という語句の意義が不明確であるため、明確性要件を満たさない旨を主張する。

しかし、前記5で説示したとおり、「単一のVRAM」とは、ハードウェアとしてのVRAM(ディスプレイに表示する画像データを一時的に蓄積するメモリ)が一つ存在することを意味するものと理解できるから、「単一のVRAM」という語句の意義が不明確であるとは認められない。

したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、明確性要件違反の無効理由(無効理由3)は認められない。

9争点2-4(本件明細書に「単一のVRAM」としたことの作用効果の記載がないことによるサポート要件違反(無効理由4))について被告は、本件明細書の発明の詳細な説明には「単一のVRAM」としたことの作用効果について何ら記載がないため、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものということができず、特許法36条6項1号の要件を満たさない旨を主張する。しかし、前記1(2)のとおり、本件明細書には、本件発明の解決しようとする課題として、外部ディスプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示することを、不合理な二重投資や非効率な資源利用がないように、外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生成手段(付属表示データ生成手段)とは別個に使用することなく、付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現することに係る課題が開示されており、本件発明は、上記のような課題を解決するため、特許請求の範囲に記載された「単一のVRAM」を含む構成を採用することで、「携帯情報通信装置に大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続することにより、該大画面外部ディスプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示すること」を「該大画面外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生成手段とは別個に使用することなく、大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置との間のインターフェース手段の追加と、付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現する」(段落【0031】)という作用効果を奏するものであると認められる。そして、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、上記のような本件発明の課題について、本件発明の構成を採用することによって解決できることを認識できるというべきである。そうすると、本件発明に係る特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明の記載とを対比すれば、特許請求の範囲に記載された本件発明が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。したがって、被告の上記主張には理由がない。

10 争点2-5(訂正要件違反(無効理由5))について(1) 本件特許に本件訂正前の特許請求の範囲は、別紙「本件訂正前の特許請求の範囲」に記載のとおりである(甲2、3)。

すなわち、本件訂正では、訂正後の本件発明における構成要件D及びHに対応する部分について「単一のVRAM」という語句が追加され、グラフィックコントローラが「単一のVRAM」に対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い(構成要件D)、グラフィックコントローラが「単一のVRAM」からディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ及びディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータを読み出す(構成要件H)ことが特定されている(甲3。本件訂正における訂正事項4及び7)。
(2) 被告は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には「単一のVRAM」という語句はなく、また、「単一のVRAM」という技術的事項は上記の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することによっても導かれる技術的事項ではないとして、特許請求の範囲の記載に「単一のVRAM」という語句を追加することは特許法126条5項に違反すると主張する。

そこで検討するに、本件明細書には、本件発明における「VRAM」の動作に対応する記載(【0115】、【0117】、【0127】等)があり、グラフィックコントローラが「VRAM」に対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行うこと、グラフィックコントローラが「VRAM」からディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ及びディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータを読み出すことが開示されているほか、【図1】にも「VRAM」の記載が存在する。

そして、前記5(1)のとおり、本件発明における「単一のVRAM」とは、「VRAM」がハードウェアとして一つであることを指すと解すべきところ、本件明細書においては、「VRAM」のハードウェアとしての個数についての特定はされていないが、VRAMが物理的に複数であることを必要とするような記載は見られない。そして、【図1】における「VRAM1」の記載も、「VRAM」が物理的に一つのハードウェアであることと矛盾するものではない。

また、本件明細書に開示された本件発明の外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生成手段とは別個に使用しないという作用効果(前記1(2))は、「VRAM」をハードウェアとして一つのものとして構成することと矛盾しない。

そうすると、特許請求の範囲に「単一のVRAM」との文言を加える訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であり、特許法126条5項の要件に適合するものというべきである。

なお、被告は、本件明細書等からは、VRAMが「単一」であることの積極的な意義を見出すことができず、「単一のVRAM」にするという技術的事項は導き出せないことも根拠とするが、仮に、本件発明において、「VRAM」を一つのハードウェアとして構成すること自体には特段の技術的意義がないとしても、「単一」のものに限定することが新規の技術的事項の追加になるものではない。

したがって、被告の訂正要件違反(無効理由5)の主張には理由がない。

11 争点2-6(本件明細書に「適切に処理する」以外の処理が記載されていないことによるサポート要件違反(無効理由6))被告は、本件特許の構成要件Dには、「必要な処理を行い」及び「処理する」との要件が含まれるが、本件明細書には、段落【0032】に記載されている「適切に処理する」以外の処理が記載されていないから、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えており、特許法36条6項1号の要件を満たさない旨を主張する。

しかし、前記1(2)のとおり、本件明細書には、本件発明の解決しようとする課題として、外部ディスプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示することを、不合理な二重投資や非効率な資源利用がないように、外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生成手段(付属表示データ生成手段)とは別個に使用することなく、付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現することに係る課題が開示されており、前記3(1)に説示したところに照らせば、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、上記のような本件発明の課題について、特許請求の範囲に記載された構成を採用することによって解決できることを認識できるというべきである。そうすると、本件発明に係る特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明の記載とを対比すれば、特許請求の範囲に記載された本件発明が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。したがって、被告の上記主張には理由がない。

12 小括以上のとおりであり、被告各製品は、本件発明の技術的範囲に属するものと認められ、また、本件特許について被告の主張する各無効理由はいずれも認められないから、争点3(訂正の対抗主張の可否)について判断するまでもなく、被告による被告各製品の製造販売は、原告の本件特許権を侵害するものと認められる。

13 争点4(特許権侵害の不法行為による損害の発生の有無及びその額)について(1) 被告による被告各製品の製造、販売(前提事実(6))に係る本件発明の実施料相当額は、別紙「被告各製品の売上高」記載の被告各製品の売上高を基準とし、そこに実施に対し受けるべき料率を乗じて算定するのが相当である。そして、特許発明の実施に対し受けるべき料率を認定するに当たっては、①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に顕れた諸事情を総合考慮するのが相当である。
(2) 実施料率認定の考慮要素に係る事情

ア原告における特許発明の実施許諾の実績等原告において、本件発明についての実施許諾契約が締結されたことはない(弁論の全趣旨)。原告は、携帯情報通信装置等を製造、販売するメーカーではなく、被告との競業関係はない。また、原告は、自社が考案・開発した情報処理・通信システムについて、自社自身で製造、販売することはせず、他社に実施許諾をして実施料を得ることを営業方針としているものの、これまで原告が保有する特許発明について、実施許諾契約の締結に至った例はない(弁論の全趣旨)。

イ文献に記載された実施料の相場等本件発明に関連する実施料の相場等について、調査研究報告書(「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~本編平成22年3月」)には、次のような記載がある(甲55)。

(ア) 調査研究報告書には、国内企業・団体を対象として、平成21年11月から平成22年2月に実施されたアンケート結果として、技術分類のうち「電気」の製品分野においては、ロイヤルティ料率の平均値が2.9%(最大値9.5%、最小値0.5%)であり、「コンピュータテクノロジー」の製品分野においては、ロイヤルティ料率の平均値が3.1%(最大値7.5%、最小値0.5%)であることの記載がある。また、調査研究報告書では、「電気」の製品分野である、エレクトロニクス業界のライセンス交渉実態及びロイヤルティ決定手順について、次の①、②のような記載がされている。
① 規格技術に関する特許に係るパテントプールの例では、地デジの通信規格技術について、特許300件ほどのパテントプールが形成され、地デジTV一台あたり、200円の特許料が徴収されていること、MPEG2ビデオ圧縮技術について、特許100件ほどのパテントプールが形成され、DVDなどの製品1台あたり、2米ドルの特許料が徴収されていること。
② デバイス等の製品は、数百から数千の要素技術で成り立っており、一つのデバイスが関連する特許は膨大な量となり、1件あたりのロイヤルティ料率を定めると100%を超えてしまうため、デバイスに関する特許は、各社が保有する特許群の中で代表的な特許を選抜し、クロスライセンスによる交渉を行うことが主流であり、交渉によって得られたロイヤルティの差がロイヤルティ料率又は一時金として設定され、その相場は1%未満となること。

(イ) 上記(ア)のとおり、調査研究報告書には、電気等の分野の実施料率の平均値等の記載があるものの、同報告書では、エレクトロニクス業界のライセンス交渉実態について、一つのデバイスが関連する特許が膨大な量となることから、実施料率の定めに特徴がある旨の記載がされており、そこで例示されている実施料率は、上記の平均値を大幅に下回るものである。このような事情はスマートフォン又はタブレットである被告各製品にも当てはまるものと考えられるから、被告各製品に関して、業界における実施料の相場等として上記の平均値等の記載を採用するのは相当とはいえない。

ウ被告における被告各製品に関する実施許諾契約の実績(ア) 被告従業員作成の陳述書(乙13、15)においては、被告各製品に関する実施許諾契約の内容について、次の説明がされている。a携帯電話に関する特許は、携帯電話の分野における標準規格の実施に不可欠な特許(標準必須特許)とそれ以外の特許(アプリ特許)に分けられるところ、被告は、携帯電話メーカー業界の慣行として、いずれについても、実施許諾地域を全世界として、複数の特許権を一括でライセンス契約を締結している。ライセンス料の方式には、売上高に一定の料率を掛けて算出されるランニングロイヤルティを支払う「ランニング方式」と、契約締結時に実施料を一括して支払う「一時金方式」がある。b標準必須特許のライセンスを含めず、被告各製品の製造、販売に関連する10社との間のライセンス契約について、パテントファミリー単位で1件当たりのライセンス料率を算定する(一時金方式を取るものについてもライセンス期間中の売上高からライセンス料率を算定する)と、平均●(省略)●%となる。c前記bの10社のうち、ランニング方式での契約は1社(C社)であり、残りは一時金方式であった。このC社との契約においては、●(省略)●。d平成22年頃の画像処理・外部出力関連の標準規格としてはHDMI通信規格を含む4規格が存在し、被告は、その当時、被告各製品の販売に関連し、特許ライセンス料を含むこれらの規格の使用許諾料として、1台当たり合計0.8米ドルを支払っていた。

(イ) 前記(ア)の陳述書の記載内容は、調査研究報告書における前記イ(ア)の記載とも整合的であり、本件において、その合理性を疑わせる事情は特段うかがわれず、前記アのとおり、原告による実施許諾の実績がないことも踏まえれば、本件発明に関し、業界における実施料の相場等を示すものとして、上記陳述書の説明内容を参考とするのが相当である。

エ本件発明の代替可能性、利益への貢献等(ア) 本件発明の課題や作用効果は、前記1(2)のとおりであり、特許請求の範囲(請求項1)に記載された構成を採用することによって、不合理な二重投資や非効率な資源利用を避けつつ、携帯電話機等の携帯情報通信装置に周辺装置を接続することにより、大画面外部ディスプレイ手段において付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示することを実現するというものである。しかして、被告各製品においては、HDMI端子を介した外部表示機能を実現する際に本件発明が実施されているものであるが、本件発明は、HDMI端子を介した外部表示に係る通信規格等に関する特許発明のように、外部表示機能の実現自体のために必須のものとまでは認められない。また、不合理な二重投資や非効率な資源利用を避けつつ、携帯電話機に外部表示機能を実施するという作用効果につき、これを本件発明の構成以外では実現できないことを認めるに足りる証拠はない。したがって、本件発明が他の技術によって代替不可能なほどに重要なものであるとまではいえないというべきである。

(イ) 原告は、本件発明を実施することによって、「高解像度画像の外部表示のための部品」を追加することなく、不合理な二重投資や非効率な資源利用を避けつつ、携帯電話機に外部表示機能を実施するという作用効果を実現できるから、実施しない構成と比較して少なくとも製品1台当たり1000円のコストが削減できる旨を主張する。しかしながら、前記(ア)のとおり、不合理な二重投資や非効率な資源利用を避けつつ、携帯電話機に外部表示機能を実施することが、本件発明における構成以外では実現できないとは認められない上、被告において、本件発明の構成を採用しない場合であっても、製造コストの低い部品構成を試みること自体は、製造業者として当然のことと考えられる。そうすると、他の方法と比較して、本件発明の構成を採用することが被告の利益にどの程度貢献しているかにつき、原告が主張するような具体的な金額によって確定することはできないというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(3) 実施料率の認定

ア上記(2)アないしウによれば、①実際の実施許諾契約における実施料率、業界における実施料の相場等について、次の点を指摘することができる。本件発明を含め、原告による特許発明の実施許諾の実績はない。また、業界における実施料の相場等として、調査研究報告書における平均値等の記載を採用することも相当ではない。このような状況に照らせば、本件発明に関し、業界における実施料の相場等を示すものとしては、被告が締結した被告製品に関する特許の実施許諾契約の内容を参考とするのが相当である。そして、被告の従業員作成に係る前記陳述書においては、被告各製品に関連する標準必須特許以外のライセンス契約において、パテントファミリー単位での特許権1件あたりのライセンス料率が●(省略)●%であり、また、ランニング方式での契約をとるC社との契約においては、代表的な特許1件当たりのライセンス料率の平均が約●(省略)●%であったこと、また、被告が、平成22年頃、被告各製品の販売に関連し、画像処理・外部出力関連の標準規格の特許ライセンス料を含む使用許諾料として支払っていた額は1台当たり合計0.8米ドルであったことが説明されている。

イ上記アの点に加え、前記(2)エのとおり、②本件発明が被告各製品にとって代替不可能なものとは認められず、③本件発明を実施することによる被告の利益の程度も明らかではないこと、前記(2)アのとおり、④原告と被告との間に競業関係がなく、原告は、特許発明について自社での実施はしておらず、他社に実施許諾をして実施料を得ることを営業方針としているものの、これまで保有する特許発明について、実施許諾契約の締結に至ったことはないことといった事情を総合考慮すれば、本件発明について、被告各製品の製造、販売に対して受けるべき実施料率は0.01%と認めるのが相当である。
(4) 損害額のまとめ以上によれば、本件において、原告の特許法102条3項による損害額は、別紙「被告各製品の売上高」記載の被告各製品の売上高合計819億9458万9000円(前記第2の2の前提事実(6))に実施料率0.01%を乗じた819万9458円(1円未満切り捨て)と認められる。したがって、原告は、被告に対し、本件特許権侵害の不法行為による損害賠償請求として、819万9458円及びこれに対する不法行為の後である令和元年12月13日(本件訴状送達日の翌日)から支払済みまで、改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

14 争点6(不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の成否)について事案に鑑み、争点6について先に判断する。被告は、原告が、別件訴訟の判決日である平成25年8月2日頃には、被告が被告各製品の販売を行っていたことを知っていたことを前提に、被告各製品は、本件訴訟の訴状提出日(令和元年11月29日)より3年以上前の平成26年度中には販売を終了していたから、その頃には原告は、本件特許権侵害に係る「損害及び加害者」を知ったというべきであるとして、不法行為による損害賠償請求権は時効により消滅した旨を主張する。

ところで、消滅時効の起算点は、被害者等が「損害及び加害者を知った時」、すなわち加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当であり、また、違法行為による損害の発生及び加害者を現実に了知したことを要すると解される。そして、本件のような物の製造販売による特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の事案では、被害者である特許権者が、上記不法行為の成立の認識、すなわち、加害者による当該物の製造販売の事実及びそれによる損害発生の事実を認識したことに加え、当該物が当該特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することを認識したことも必要であると解するのが相当である。しかるに、原告が平成25年8月2日頃には被告各製品が販売されていることを知っていたこと、及び被告各製品が平成26年度中には販売を終了していたこと、という被告主張に係る各事実をもって直ちに、原告が平成25年8月2日頃又は平成26年頃に、被告各製品が本件発明の技術的範囲に属することについてまで認識していたと認めることはできない。また、本件訴訟の被告各製品と別件訴訟の対象製品とは異なるものであることに照らすと(乙2、3)、平成25年8月2日に別件訴訟の判決が言い渡された事実は、上記説示を左右するものとはいえない。そのほかに、原告が、平成25年8月2日頃又は平成26年頃の時点で、被告各製品が本件発明の技術的範囲に属することについてまで認識していたことを認めるに足りる証拠はない。以上によれば、被告の主張は前提を欠き、消滅時効の抗弁は認められない。

15 争点5(本件発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべき利得の額)について原告は、予備的に、原告が本件発明の実施料相当額の支払を免れたとし、同額を返還すべき利得の額として不当利得返還請求をするところ、同請求に係る返還すべき利得の額は、その内容に照らし、前記13で認定した損害額の限度で理由があるが、これを上回ることはない。

したがって、原告の被告に対する不当利得返還請求は、そのうち、前記13で認定した損害額の限度で理由があるが、これを上回る部分については理由がない。

16 結論よって、原告の主位的請求及び予備的請求は、主文第1項記載の限度で理由があり、その余の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判官小口五大
裁判官稲垣雄大
裁判長裁判官田中孝一は、転補のため署名押印することができない。
裁判官小口五大別紙被告製品目録

1イ号製品スマートフォン「docomo NEXT series AQUOS PHONE ZETA SH-09D」

2ロ号製品スマートフォン「docomo NEXT series AQUOS PHONE sv SH-10D」

3ハ号製品スマートフォン「docomo NEXT series AQUOS PHONE ZETA SH-02E」

4ニ号製品スマートフォン「AQUOS PHONE SERIE ISW16SH」

5ホ号製品タブレット「AQUOS PAD SHT21」

6ヘ号製品スマートフォン「AQUOS PHONE Xx 106SH」

7ト号製品スマートフォン「AQUOS PHONE Xx SoftBank 203SH」以上別紙特許請求の範囲【請求項1】ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;を備える携帯情報通信装置において、前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、ことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、ことを特徴とする携帯情報通信装置。

以上別紙本件訂正前の特許請求の範囲【請求項1】ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記データ処理手段へ送信する入力手段と;無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記データ処理手段に送信するとともに、後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ処理手段で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理することによりデジタル表示信号を生成するかして、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するデータ処理手段と;画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;を備える携帯情報通信装置において、前記データ処理手段は、前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像(以下、高解像度画像と略称する)のビットマップデータを生成して、該ビットマップデータを前記インターフェース手段に送信する機能を有し、前記インターフェース手段は、前記データ処理手段から受信したビットマップデータを、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、ことを特徴とする携帯情報通信装置。

以上別紙被告各製品の売上高被告製品販売台数(台)売上(千円)イ号●(省略)●●(省略)●ロ号●(省略)●●(省略)●ハ号●(省略)●●(省略)●ニ号●(省略)●●(省略)●ホ号●(省略)●●(省略)●ヘ号●(省略)●●(省略)●ト号●(省略)●●(省略)●合計81,994,589以上

出典: 令和元年(ワ)第32239号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →

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