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主文
1被告は、原告に対し、705万7771円及びこれに対する令和2年1
2月5日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用(補助参加により生じた費用を含む。)は、これを9分し、そ
の7を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
第1 請求の趣旨
被告は、原告に対し、3000万円及びこれに対する令和2年12月5日か
ら支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1本件は、その発明の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用
したパーソナルコンピュータシステム」とする特許権(以下「本件特許権」と
いう。)を有する原告が、被告に対し、被告の販売する別紙物件目録記載の各
スマートフォンは、本件特許権に係る特許(以下「本件特許」という。)の特
許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属するとして、不法行為又は不当利得に基づき、損害賠償又は不当利得の一部である3000万円及び訴状送達日の翌日である令和2年12月5日から民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実をいう。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に記載がない限り、枝番を含むものとする。)
⑴ 当事者等
ア原告は、各種情報処理・通信システムの考案・開発等を目的とする株式会社である。
イ被告は、電気通信事業者であり、携帯情報通信装置の企画・販売及び同装置に係るサービスの提供等をする株式会社である。
ウ被告補助参加人は、別紙物件目録記載の各スマートフォンを製造し、被告に販売した株式会社である。
⑵ 本件特許及び本件発明
ア原告は、以下の本件特許権を保有している(以下、本件特許の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書等」という。甲1、2)。登録番号第4555901号発明の名称携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム優先日平成16年12月24日及び平成17年7月28日原出願日平成17年12月21日出願日平成20年6月23日登録日平成22年7月30日
イ本件特許については、平成30年4月9日付け訂正審判による訂正(以下「本件当初訂正」という。)がされているが、その訂正後の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、以下のとおりである。(甲3)「ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;を備える携帯情報通信装置において、前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、ことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、ことを特徴とする携帯情報通信装置。」
ウ本件発明の特許請求の範囲の記載は、以下の構成要件AないしKに分説することができる。Aユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;B無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;C後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;D前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;E画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;F外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;Gを備える携帯情報通信装置において、H前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、I前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、Jことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、Kことを特徴とする携帯情報通信装置。
⑶ 本件発明に係る訂正の請求
ア被告補助参加人は、令和2年3月31日付けで、特許庁長官に対し、原告を被請求人として、本件特許を無効とする審判(無効2020-800032)を請求した。(乙7)
イ原告は、上記アの審判事件において、令和3年3月22日付けで、本件発明に係る請求項の記載の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。同訂正による本件発明(以下「本件訂正発明」という。)の特許請求の範囲は、構成要件G及びHに相当する部分を以下の構成要件G’及びH’の記載(ただし、下線部は、当該訂正による修正部分である)とするほかは、本件発明と異なるところはない。(甲15、16)G’を備え、前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理し、前記グラフィックコントローラが、該中央演算回路の処理結果に基づき、前記単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段又は前記インターフェース手段に送信して、前記ディスプレイ手段又は前記外部ディスプレイ手段に画像を表示する機能(以下、「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記する)を有する、携帯情報通信装置において、H’前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、
ウ特許庁は、原告及び被告補助参加人に対し、令和3年10月12日付けで、前記イの訂正の請求を認めるとともに、前記アの審判の請求は成り立たない旨の審決(未確定)をした。(甲28)
⑷ 被告の行為
ア被告は、平成23年頃から平成25年頃まで、被告補助参加人から別紙物件目録記載のイ号ないしト号製品(以下「被告製品1」という。)並びにチ号及びリ号製品(以下「被告製品2」という。)を購入し、これらの製品(以下「被告製品」という。)を業として販売していた。
イ原告が主張する被告製品の構成は、それぞれ別紙被告製品説明書に記載のとおりであり、本件発明及び本件訂正発明の構成要件充足性との関係では、被告製品1に含まれる各製品相互間及び被告製品2に含まれる各製品相互間において、その構成を区別する必要はない。
⑸ 関連訴訟
ア原告は、平成24年1月9日頃、被告及び被告補助参加人ほか2名を相手方とし、被告製品1ほかの製品が、原告の保有する特許第3872502号(乙4)に係る発明の技術的範囲に属するなどと主張し、特許権侵害損害賠償請求事件(当庁平成24年(ワ)第237号)を提起したが、
東京地方裁判所は、平成25年8月2日、原告の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。(乙2、3、甲4・114頁)
イ原告は、平成30年12月4日頃、被告補助参加人に対する特許権侵害損害賠償請求事件(当庁平成30年(ワ)第36690号)を提起したところ、
東京地方裁判所は、令和3年1月15日、被告補助参加人が製造販売する被告製品1を含むスマートフォンが、本件発明の技術的範囲に属するなどとして、被告補助参加人に対し、実施料相当額980万1770円の不当利得金の返還などを命じる判決(未確定)をした。(甲4)
ウ原告は、令和元年11月29日頃、被告補助参加人を相手方とし、被告補助参加人が製造販売する被告製品2を含むスマートフォンが、本件発明の技術的範囲に属するなどと主張して、損害賠償金又は不当利得金の一部である3000万円及び遅延損害金の支払を求める特許権侵害損害賠償請求事件(当庁令和元年(ワ)第32239号)を提起し、当該訴訟は、
東京地方裁判所民事第47部に係属中である。(甲5)
⑹ 先行文献
ア本件発明の優先日前(平成12年3月3日)に、特開2000-66649号公報(以下「乙1公報」という。)が存在した(以下、同公報に記載された発明を「乙1発明」という。)。(乙1)
イ本件発明の優先日前(平成16年7月29日)に、特開2004-214766号公報(以下「乙5公報」という。)が存在した(以下、同公報に記載された発明を「乙5発明」という。)。(乙5)
ウ本件発明の優先日前(平成9年4月4日)に、特開平9-90919号公報(以下「乙6公報」という。)が存在した(以下、同公報に記載された発明を「乙6発明」という。)。(乙6)
3争点
⑴ 充足論
ア被告製品のモバイルプロセッサが、構成要件Dの「処理」をするものに当たるか。(争点1-1)
イ被告製品の画像データを保持するメモリが、構成要件D及びHの「単一のVRAM」に当たるか(争点1-2)
ウ被告製品2が、構成要件Dの「中央演算回路」及び「グラフィックコントローラ」を共に備えているか。(争点1-3)
エ被告製品2における画像の処理方法が、構成要件Hに規定されるものと一致するか。(争点1-4)
⑵ 無効論
ア乙1発明による新規性又は進歩性の欠如(争点2-1)
イ乙5発明による進歩性の欠如(争点2-2)
ウ本件当初訂正の訂正要件違反(争点2-3)
エ明確性要件違反(争点2-4)
オサポート要件違反(争点2-5)
⑶ 損害論
ア原告に生じた損害又は損失(争点3-1)
イ消滅時効の抗弁(争点3-2)
第3 争点に関する当事者の主張
⑴ 構成要件Dの「中央演算回路」が、そこで行うとされる「処理」は、無線通信手段から受信したデジタル信号又は記憶手段から読み出したデータファイルから、ビットマップデータ等のデジタル画像データに直接対応した信号又はデジタル画像データの生成を命令する描画命令のデジタル信号を含むデジタル表示信号を生成することを意味すると解すべきである。
⑵ そして、被告製品のモバイルプロセッサ(中央演算回路)は、メインアンテナ及び無線送受信用IC(無線通信手段)から受信したデジタル信号からリアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、microSDカード(記憶手段)に格納していたデータファイルを読み出し、同様に処理するのであるから、これを「処理」しているといえる。
⑶ これに対し、被告は、グラフィックコントローラが、構成要件Hの段階において、被告のいう「本来解像度」の外部表示信号を送信するものであるという理解を前提に、構成要件Dの段階で行われる「処理」は、本件明細書等の段落【0032】の「適切に処理する」であり、具体的には、画素を間引いたり、補間したりしないものでなければならないなどと主張する。しかし、構成要件Hは、被告主張のような構成ではない。例えば、8000×480画素のディスプレイパネルを有する携帯情報通信装置が、「本来解像度」が1920×1080画素の画像を読み込み、中央演算回路が、これを1280×720画素に間引いた「処理」をしたとして、グラフィックコントローラが、構成要件Hの「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出すなどする機能は妨げられるところがない。したがって、構成要件Dの「処理」は、前記のとおりに認定されるべきであり、被告の前記主張は失当である。
⑴ 構成要件Dには、「中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い」とあるから、そこにいう「処理結果」は、構成要件Hのグラフィックコントローラが、「単一のVRAM」に対して前記「書き込み/読み出し」を行うに足りるものでなければならない。そして、構成要件Hは、グラフィックコントローラが「本来解像度」の外部表示信号を送信するものと理解されるから、当該「処理結果」は、その送信を行うのに足りるものでなければならない。そして、本件明細書等には、そのような「処理」の内容として、段落【0032】の「適切に処理する」しか記載されていない。したがって、構成要件Dの「処理する」とは、「適切に処理する」を意味し、具体的には、画素を間引いたり、補間したりしない処理を意味すると解釈すべきである。このように解釈することによって、「高解像度外部ディスプレイ手段においては、その本来の解像度のままの全体画像として表示できるようになる」(【0078】)という本件発明の作用効果を奏することができる。
⑵ 他方、被告製品のモバイルプロセッサは、ウェブサーバからダウンロードした画像データファイルの画素数(本来画像度)に応じ、これがHD解像度未満なのであれば、画素を補間する処理をし、これがHD解像度を超えているのであれば、画素を間引く処理をすることによって、一律にHD解像度の表示信号を生成しているのであり、前記のように「適切に処理する」をするものではない。したがって、被告製品のモバイルプロセッサは、構成要件Dの「処理」をする「中央演算回路」に当たらない。
⑴ 構成要件D及びHの「単一」とは、VRAMが、ハードウェア(部品)として、1つであることを意味すると解すべきである。本件明細書等の【図1】は、「本発明の第1の実施形態に係る携帯情報通信装置、携帯情報通信装置用接続ユニット、及び両者を接続した上で該接続ユニットに外部ディスプレイ装置及び外部入力装置を接続することによって構成した情報通信システムの構成及び機能を説明するためのブロック図である」(【図面の簡単な説明】、【0111】)とされており、本件発明におけるVRAMの数的な「構成」を説明した図面であると十分に了解し得るものであり、前記の解釈の根拠となるものである。
⑵ そして、被告製品1は、液晶コントローラ内に前記の意味における単一のVRAMを内蔵するのであるから、前記の構成を備える。また、被告製品2のVRAMは、複数のSDRAMからなるマルチチップ・パッケージのメモリであるが(甲6、7)、これを複数のSDRAMに再分離しようとすれば、もはやハードウェア(部品)として機能しなくなるものであるから、同様に「単一のVRAM」に該当する。
⑴ 本件明細書等の記載によれば、本件発明は、VRAMのメモリ領域にデータサイズの大きい仮想画面のビットマップデータを書き込み、そのビットマップデータから内蔵用ディスプレイ用ビットマップデータや外部ディスプレイ用ビットマップデータを切り出すというものである(【0115】、【0117】、【0127】)。そうすると、構成要件D及びHの「単一のVRAM」とは、前記の各ディスプレイに画像を表示するための必要なデータを保持するメモリのことであり、前記のビットマップデータが切り出されるメモリ領域が「単一」であることを意味すると理解すべきである。なお、本件明細書等の段落【0115】には、VRAMが、中央演算回路やグラフィックコントローラ、LCDドライバといった物理的に把握可能なハードウェアとともに記載されているが、これは作用機序を説明した記載にすぎず、原告の主張のように、「単一」が物理的に把握可能なハードウェアとしての意味であると理解する根拠とはならない。また、【図1】のVRAMに付された符号は1個のみであるが、同様に1個の符号を付されたマイクロホン、CCD及びフラッシュメモリなども物理的に1個であると理解するのは不自然であるから、この点も原告主張の根拠とならない。
⑵ 他方、被告製品は、ダウンロードした画像データファイルからHD解像度のビットマップデータを生成し上、VRAM(又はSDRAM)の第1のグラフィックメモリ領域に液晶ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度のビットマップデータ(又は内蔵用表示データ)を書き込む一方、この領域とは異なるメモリアドレスで定義される第2のグラフィックメモリ領域にHDの解像度のビットマップデータ(又は外部表示用データ)を書き込むものであり、これらのメモリ領域は共用されない。したがって、被告製品は、構成要件D及びHの「単一のVRAM」を備えない。仮に、原告が主張するように、「単一のVRAM」とは、複数の部品から構成されていないことを意味すると解釈したとしても、少なくとも、被告製品2のSDRAMは、2個のSDRAMからなるマルチチップ・パッケージのメモリであるから、これに当たらない。マルチチップ・パッケージは、複数の部品を樹脂で固めたものであり、物理的に分離した異なる半導体基板上にRAMの本体部分である回路が構成されているからである。
⑴ 被告製品2に内蔵されるモバイルプロセッサは、CPU及びGPUから構成されており(甲9)、CPU機能を実行する回路とGPU機能を実行する回路とは区別されている(甲11、12)。そして、GPUは、コンピュータが画面に表示する映像を描画するための処理に特化して開発されており、「現在の高機能GPUは高速のビデオメモリ(VRAM)と接続され」ているのであるから、被告製品2のモバイルプロセッサように、CPU回路とは別個にGPU回路を有しているモバイルプロセッサにおいては、GPU回路が内蔵用表示データと外部用表示データの双方について「書き込み/読み出し」を行うことは明らかである。そうすると、前記CPUは、構成要件Dの「中央演算回路」に相当し、前記GPUは、「グラフィックコントローラ」に相当し、被告製品2が、これらの構成を備えることは明らかであるというべきである。
⑵ なお、争点1-2の「単一のVRAM」と異なり、特許請求の範囲の記載に特段の限定はないから、被告製品2におけるCPUとGPUが「単一」であるか否かは、この点の判断を左右しないというべきである。
⑴ 被告製品2は、「中央演算回路」と「グラフィックコントローラ」を別個に設けず、1個のモバイルプロセッサによって、CPU機能とGPU機能とを実現している。そして、当該モバイルプロセッサ上でCPU機能に係る回路とGPU機能に係る回路が区別され、かつ、それぞれが本件発明の構成要件を充足するように信号の授受等をしている旨の立証はされていない。したがって、被告製品2が構成要件Dの構成を備えているとはいえない
⑵ なお、仮に、争点1-2において、「単一のVRAM」を物理的に分離した部品であることを意味すると理解するとすれば、その根拠は、本件明細書等の【図1】において、VRAMが、「VRAM1_10C」などと1個の符号で表されることに求めざるを得ないが、そうであれば、中央演算回路とグラフィックコントローラには、別個の符号が付されている以上、これは物理的に分離した異なる部品であると解釈すべきことになる。
⑴ 被告製品2は、モバイルプロセッサに内蔵されたGPU(グラフィックコントローラ)が、外部SDRAM(単一のVRAM)から、内蔵ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度の内蔵用表示データを読み出し、これを液晶ドライバ(ディスプレイ制御手段)に送信する(甲6)。そうすると、被告製品2は、構成要件Hの「ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を「読み出し」、デジタル表示信号を生成した上、「ディスプレイ制御手段に送信する機能」を有するものであるということができる。
⑵ また、被告製品2は、前記GPUが、前記外部SDRAMから、内蔵ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度の内蔵用表示データを補間処理して生成した外部用表示データを読み出し、これをHMLトランスミッタ(インターフェース手段)に送信する(甲6)。そして、画像処理の分野における補間処理(甲13)とは、画像全体を通して新規ピクセルを追加し、その解像度を増加させるものである以上、前記の外部用表示データの解像度が、前記の内蔵ディスプレイパネルの画面解像度よりも大きいものであることは明らかである。そうすると、被告製品2は、構成要件Hの「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を「読み出し」、デジタル表示信号を生成した上、「インターフェース手段に送信する機能」も有するものであるということができる。
⑶ したがって、被告製品2の画像の処理方法は、構成要件Hと一致し、これを充足するというべきである。これに対し、被告は、被告製品2が、以上の処理に当たり、画素を間引いたり、補間したりすることを指摘する。しかし、構成要件Hは、その文言上も、画素を間引いたり、補間したりしないことは特定しないのであるから、その充足性を左右する事情ではない。
⑴ 本件発明の構成要件Hは、「単一のVRAM」から「画像のビットマップデータ」を「読み出し」、内蔵ディスプレイや外部ディスプレイに表示させるものであるが、その際、間引き処理や補間処理をしない「読み出し」(争点1-1に主張した「処理」)がされる。
⑵ 他方、被告製品2は、元の画像を間引き処理し、HD解像度の内部ディスプレイ用の表示画像を生成した上、これを補間処理し、外部ディスプレイ用の表示画像を生成する。したがって、被告製品2の画像の処理方法は、構成要件Hの規定するものと異なる。
⑴ 乙1発明の内容及び本件発明との相違点
ア乙1公報には、以下の内容の乙1発明が開示されている。「携帯機器2は、CPU10、ROM14、入力装置16、表示メモリ18、表示コントローラ20、及び内部表示装置22を有して構成されており、携帯機器2は、表示コントローラ20を介して、外部表示装置24を接続して表示させることができ、CPU10は、ROM14に格納されたプログラム、例えば表示制御に関係するOS、表示描画プログラム、デバイスドライバ等に従って各種の制御を実行し、ROM14は、プログラム等の本体の記憶領域として使用され、入力装置16は、画面の座標位置等入力するペン(タブレット)やマウス等のポインティングデバイス、文字等を入力するキーボードなどにより構成され、表示メモリ18は、内部表示装置22及び外部表示装置24において表示させる表示データの記憶領域として使用され、表示コントローラ20は、内部表示装置22及び外部表示装置24における表示を制御するもので、内部表示装置22は、携帯機器2に予め内蔵されたLCD等によって構成される表示デバイスであり、外部表示装置24は、携帯機器2にケーブル等を介して任意に接続されるCRT等によって構成される表示デバイスであり、表示コントローラ20には、メモリコントローラ20a、レジスタ20b、内部表示用回路20c、外部表示用回路20dを含んで構成されており、メモリコントローラ20aは、CPU10からの指示に応じて表示制御を行なうもので、表示データのリード/ライトが指示された場合には、この指示に応じて表示メモリ18に対して表示データをリード/ライトし、またレジスタ20bに設定されたアドレスをもとに表示メモリ18から表示データをリードし、内部表示用回路20cを介して内部表示装置22へ、また外部表示用回路20dを介して外部表示装置24へ出力し、CPU10は、システム定常状態という、キーボードやペン等の入力装置16からの入力待ち状態となり、アプリケーションプログラム35の実行により提供される機能によって、ユーザーからの指示を入力装置16から指定させ、アプリケーション35によって出力方法の指定が入力されると、OS38の制御のもとで、内部表示用と外部表示用のそれぞれの描画プログラムに従って、表示コントローラ20に対してユーザーからの指定の設定、すなわち内部表示と外部表示に用いる表示データ(描画イメージ)を示すアドレスを表示コントローラ20内のレジスタ20bに設定し、一方、アプリケーションプログラム35は、内部表示装置22と外部表示装置24において描画されるイメージ、すなわち内部表示イメージと外部表示イメージの2種類を、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表示メモリ18上にライトし、表示コントローラ20は、アプリケーションプログラム35によってライトされた内部表示イメージと外部表示イメージに応じて、内部表示装置22と外部表示装置24に対して、それぞれに応じた描画イメージを表示させ、内部表示装置22が640×240の解像度、外部表示装置24が640×480の解像度を持ち、内部と外部でメモリの一部を共有するといった環境の装置において、外部表示エリアに内部・外部共有表示エリアの表示データをコピーすることによって、外部表示装置24において参照したい画面を一時的に表示させ、表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のアプリケーションによって指定され、通信媒体を介してプログラムを受信する、携帯機器2。」
イ乙1発明と本件発明とは、以下の相違点1ないし6で相違するが、その余は一致する。(相違点1)本件発明は、「無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段」を備えているのに対し、乙1発明には「無線通信手段」について特定されていない点(相違点2)本件発明の「中央演算回路」は、「無線通信手段」から「デジタル信号」を受信しているが、乙1発明の「CPU10」は「表示データ」をどこから受信したかについて、特定されていない点(相違点3)本件発明は「携帯情報通信装置」についての発明であるが、乙1発明は「携帯機器」であって、「情報通信」を行う点について、特定されていない点(相違点4)本件発明の「携帯情報通信装置」が、「画像を表示する場合」に「「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理」しているのに対し、乙1発明の「携帯装置」には、「画像データを処理」して「画像を表示する」ことについて、特定されていない点(相違点5)本件発明の「グラフィックコントローラ」は、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の処理を行っているが、乙1発明には「表示コントローラ20」が「画像データ」を取り扱うことについて、特定されていない点(相違点6)本件発明の「インターフェース手段」は、「デジタル外部表示信号」を送信する際に、「デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式」に変換するのに対し、乙1発明では「伝送方式」について特定されていない点
ウこれに対し、原告は、本件発明において、画像の「解像度」、画像データの「本来解像度」、ディスプレイの「画面解像度」という用語の使い分けがあることを前提に、相違点5’や相違点13の存在を主張する。しかし、本件明細書等の段落【0032】には、「本来画像」の解像度を「本来解像度」という旨の記載があり、原告の前記主張とは異なる定義をする。また、段落【0008】や【0010】には、ディスプレイについても「解像度」の用語を用いており、原告主張のような使い分けはされていない。したがって、原告の前記前提は根拠がない。他方、表示デバイスの画面解像度と異なる解像度の画像を表示させるには特別な工夫が必要であるが、乙1公報の段落【0037】には、「内部表示イメージと外部表示イメージの2種類を、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表示メモリ18上にライトする」とあるのみであり、そのような特別な工夫は記載されていない。そうすると、当業者は、乙1公報における「内部表示イメージ」の解像度は内部表示装置の画面解像度と同じ640×240であり、「外部表示イメージ」の解像度は外部表示装置の画面解像度と同じ640×480であると容易に理解するはずである。そのため、乙1発明と本件発明の相違点は、このような理解を前提に認定されるべきである。したがって、乙1公報に記載された「640×240」、「640×480」の解像度が、表示イメージの解像度を表していないことを前提として、相違点5’や相違点13の存在を主張する原告の主張は、失当である。
ア実質的な相違点の欠如相違点1ないし6は、乙1公報では形式的に「特定されていない」だけであり、実質面で相違しているわけではない。したがって、本件発明と乙1発明は同一であり、本件発明は新規性が欠如している。
イ相違点1の容易想到性乙1発明には「無線通信手段」に係る特定がない。しかし、乙1公報には、「通信媒体」の存在が予定されており(【0103】)、携帯情報端末としての携帯性を考慮すれば、当業者が無線通信を選択することは必然である。そして、無線通信の信号が無線信号であり、中央演算回路に送信する信号がデジタル信号であることは、技術常識である。したがって、相違点1が、実質的な相違点であったとしても、当業者の通常の創作能力により容易に想到できたものであるというべきである。また、乙5公報には、「制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求する」(【0020】)とある。乙1発明と乙5発明とは、携帯端末の出力装置として外部表示機器を接続するという点で課題が共通していることから、乙1発明のCPU10に対する入力手段として、前記の「Webコンテンツ情報」の取得という手段を適用することは、当業者が容易に想到できたということもできる。これに対し、原告は、乙1発明におけるCPU10が、「入力装置16によって入力されるデータ」のみを受信するものであることを前提に、無線通信手段からデータを受信するように変更する動機付けがないなどと主張する。しかし、相違点2及び4で論じるとおり、原告の主張は、その前提が誤りである。また、原告は、無線通信手段を付加すると装置の大型化を招来するなどと主張するが、これは別の技術で解決すれば足りるのであるから、この点も阻害要因となるものではない。
ウ相違点2の容易想到性乙1発明は、CPU10において受信する表示データの送信元を特定していない。しかし、CPU10は「表示描画プログラム…等に従って各種の制御を実行する」ものであり(乙1公報【0013】)、当該表示描画プログラムの「表示内容に関しては、…上位のアプリケーションによって指定され」るから(同【0083】)、表示データをCPU10の外から受信することも当然に想定されている。そして、相違点1で述べたとおり、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、中央演算回路に送信することは当業者が容易に想到できたことであるから、CPU10が受信する表示データの送信元を無線通信手段とすることは、当業者の通常の創作能力により容易に想到できたものであるというべきである。
エ相違点3の容易想到性乙1発明は、「情報通信」を行う点を特定していない。しかし、相違点1で述べたとおり、乙1発明の「CPU10」への入力手段として、乙5発明の「送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して」という手段を適用してみることは、当業者の通常の創作能力で容易に想到でき、これは「情報通信」を行うことに他ならないから、相違点3は、当業者が容易に想到できたものであるというべきである。
オ相違点4の容易想到性乙1発明は、「画像を表示する」ことを特定していない。しかし、乙1発明は「表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のアプリケーションによって指定され」るものであり(乙1公報【0083】)、当時、ワープロやブラウザなど画像を表示させるアプリケーションは広く知られていたから(周知技術)、「上位のアプリケーション」としてブラウザなどの画像を表示させるアプリケーションを用いて画像を表示させることは当業者が容易に想到できた。したがって、相違点4は、当業者が容易に想到できたものであるというべきである。
カ相違点5の容易想到性乙1発明は、「表示コントローラ20」が「画像データ」を取り扱うことを特定していない。しかし、相違点4で述べたとおり、上位のアプリケーションとしてワープロやブラウザなど画像を表示させるアプリケーションを用いることにより「表示コントローラ20」が「画像データ」を取り扱うようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。したがって、相違点5は、当業者が容易に想到できたものであるというべきである。
キ相違点6の容易想到性について乙1発明は伝送方式を特定していない。しかし、本件発明が特定する伝送方式は、当時、当業者に周知であったものを列挙したものにすぎない。したがって、乙1発明に、そのような周知の伝送方式を適用し、相違点6に至ることは、当業者が容易に想到できたものであるというべきである。
⑶ 訂正の再抗弁の当否
ア本件訂正請求の適法性本件訂正発明の構成要件G’は、構成要件Bの「無線通信手段」を示す「前記無線通信手段」によって、「高解像度画像受信」という機能が実現することを規定するものであるが、この「無線通信手段」とは、送受信双方の機能を有する通信手段と考えるべきである。しかるに、本件訂正請求の根拠とされる本件発明の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、「高解像度画像受信」について、「テレビ受信用アンテナ112A」及び「テレビチューナ112B」という無線通信を受信する手段によるものしか記載されていない。これらの手段は、段落【0117】の「通信用アンテナ111A」や「RF送受信部111B」とは異なり、受送信双方の機能を備える「無線通信手段」ではない。すなわち、当初明細書には、「無線通信手段」を「高解像度画像受信」の手段とする「高解像度画像受信・処理・表示機能」を有する発明は記載されていないことになる。したがって、本件発明は、この点において、当初明細書等に記載した事項の範囲内ではない発明であり、特許法134条の2第9項、同法126条5項の訂正要件を充たさない不適法なものである。この理は、「前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合」なる構成を有する構成要件H’との関係でも同様である。よって、原告の訂正の再抗弁は、これらの点からして失当である。また、構成要件G’は、「前記ディスプレイ手段」(付属ディスプレイ)と「前記外部ディスプレイ手段」のいずれか一方に、「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を表示する機能を有していればよいことを規定するものである。しかるに、本件発明の当初明細書等には、テレビ番組の画像を「LCDパネル15A」(前記ディスプレイ手段)に表示する場合に、「解像度の低い画像の全体画像」を表示させることしか記載されておらず(【0118】)、「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を表示することは記載されていない。すなわち、当初明細書等には、構成要件G’のうち「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データを……前記ディスプレイ手段に画像を表示させる機能」が記載されていないことになる。これに対し、原告は、構成要件G’は、表示される画像の解像度を何ら規定していないと主張する。これが被告の主張に対する反論になっているかはともかく、原告の当該主張によれば、構成要件G’は、本件訂正発明の効果を奏さない発明を含むものであるということになる。なぜなら、本件訂正発明は、「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データを伝達する無線信号を受信」するものであり、構成要件G’で表示される画像の解像度の如何を問わず、その効果を奏するものであるとは考えられないからである。したがって、いずれにせよ、本件発明は、この点においても、当初明細書等に記載した事項の範囲内ではない発明であり、特許法134条の2第9項、同法126条5項の訂正要件を充たさない不適法なものであり、原告の訂正の再抗弁は失当である。
イ被告製品の本件訂正発明の充足性本件訂正請求に係る訂正請求書(甲15)によれば、構成要件G’及びH’の「高解像度画像受信・処理・表示機能」とは、本件発明の当初明細書等の段落【0118】、【0124】及び【0126】ないし【0129】に記載された「テレビ放送を視聴している場合」に実現される機能であると理解すべきである。しかるに、原告は、被告製品がテレビ放送番組を視聴でき、それが構成要件G’の「高解像度画像受信機能」を実現することを主張立証しない。実際、被告製品は、内蔵ディスプレイの画面解像度以下のワンセグ放送以外にはテレビ放送番組を視聴する手段を備えない。したがって、被告製品は、構成要件G’及びH’を充足しない。
ウ本件訂正発明に係る相違点の検討仮に、原告が主張するように、本件訂正発明の「高解像画像受信」に係る機能が、テレビ放送番組を視聴する場合に限らず、インターネットのブラウジングをする場合を含むとすれば、結局、本件訂正発明と乙1発明の相違点については、本件発明と乙1発明の相違点4の検討で論じたところが妥当する。すなわち、当業者において、「上位のアプリケーション」として、ブラウザなどの画像を表示させるアプリケーションを採用し(周知技術)、その画像を表示させることは容易に想到し得たのであるから、インターネットに無線接続し、Webサーバから内部ディスプレイパネルの解像度より大きい解像度の画像をダウンロードすることも、容易に想到し得たというべきある。したがって、本件訂正請求によって、乙1発明による新規性及び進歩性欠如の無効理由が解消しないことは明らかであり、原告による訂正の再抗弁は、この点からも失当である。
⑴ 乙1発明の内容及び本件発明との相違点
ア本件発明の特許請求の範囲の記載は、画像に対する「解像度」、画像データに対する「本来解像度」、ディスプレイに対する「画面解像度」を使い分けているのに対し、乙1公報は、「解像度」という言葉を前記の「画面解像度」の意味にのみ使用するものである。したがって、乙1発明の構成は、そのような用語法を前提に認定されるべきである。
イそのため、被告の一致点及び相違点の認定には誤りがあり、相違点5に代え、以下の相違点5’が認定されるべきであり、また、追加して、相違点13が認定されるべきである。(相違点5’)本件発明のグラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記「単一のVRAM」から「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」と「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出す機能を実現するが、乙1発明の「表示コントローラ20」は、「内部表示装置22の画面解像度と同じ解像度を有する画面のビットマップデータ」と「内部表示装置22の画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出す機能が特定されていない点(相違点13)本件発明の携帯情報通信装置は、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにしたが、乙1発明の外部表示装置24には、「内部表示装置22の画面解像度より大きい解像度を有する画像」が表示できることが特定されていない点
ア相違点1について乙1発明は、無線受信手段の機能を含まないから、当業者が相違点1に係る構成に想到するためには、「何らかの無線受信手段を付加した乙1発明」に対して、①「受信した無線信号をデジタル信号に変換の上、CPU10に送信する」という信号変換・内部送信機能を付加し、②何らかの無線受信手段に対して、「CPU10から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する」という外部送信機能を付加する必要がある。しかし、乙1発明は、入力装置16からのデータにのみ基づき、表示や描画をしており、外部データを入力する機能を有しないのであるから、当業者が、前記①及び②をする動機付けがない。むしろ、乙1発明に無線受信手段を付加すれば、機器の大型化を招来し、消費電力の増加により、バッテリも大型化もするから、「小型化」(乙1公報【0002】)という乙1発明の大前提に反する点で、阻害要因があるというべきである。
イ相違点2及び4についてこの点に関する被告の主張は、乙1発明においては、「上位のアプリケーション」(段落【0083】)が、表示データを外部から受信し、これを処理して画像を処理することを前提とする。しかし、乙1公報の記載によれば、「上位のアプリケーション」とは、段落【0087】ないし【0090】における「アプリケーション」と同義であり、それらの段落にいう「表示描画プログラム」に対し、指定や要求を行う「上位」のプログラムをいうと解すべきところ、これらは【図6】の「アプリケーションプログラム35」及び「描画プログラム36」に相当する。そして、その【図6】によれば、「アプリケーションプログラム35」に対する入力としては、ユーザーからの描画指定があることが記載されるのみであるが、これは「入力装置16によって入力されるデータ」に相当する。すなわち、被告が指摘する「上位のアプリケーション」も、「入力装置16によって入力されるデータ」にのみ基づいて表示をするプログラムにすぎず、前記の前提は成立しない。したがって、相違点2及び4が、乙1公報に記載されている事項であるとも、これに等しい事項であるともいえない。
ウ相違点5’について被告は、当業者において、乙1発明に乙5発明を適用すれば、相違点5を容易に想到し得たと主張する。しかし、被告による相違点5の認定が誤りであり、原告主張の相違点5’を認定すべきことは、既に指摘したとおりである。そして、乙5発明は、相違点11(争点2-2)に認定されるとおり、「グラフィックコントローラ」や「単一のVRAM」が特定されないのであるから、仮に、乙1発明に乙5発明を適用したとして、相違点5’を想到することはできない。
エ相違点13について本件発明と乙1発明との間には、被告指摘の相違点に加え、相違点13があることは、既に指摘したとおりである。そして、本件発明と乙1発明との間の相違点13は、本件発明と乙5発明との間の相違点14(争点2-2)と同様の内容であるから、仮に、乙1発明に乙5発明を適用したとしても、当然、相違点13に至ることはできない。
⑶ 訂正の再抗弁の成否
ア本件訂正請求の適法性本件訂正請求は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、「特許出願の際に独立して特許を受けることができるもの」であって、「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」には該当せず、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」に「記載した事項の範囲内の訂正」であるから、適法な請求である。これに対し、被告は、構成要件G’の「無線通信手段」に該当するのは「テレビ受信用アンテナ112A」と「テレビチューナ112B」だけであることを前提に、本件発明の当初明細書等には、構成要件BとG’の双方を充足する無線通信手段は記載されていないから、本件訂正請求が、当初明細書等の範囲内の訂正に当たらないと主張するようである。しかし、当初明細書等の段落【0118】、【0124】及び【0126】ないし【0129】は、第1の実施形態において、特に構成要件G’の「高解像度画像受信・処理・表示機能」を担う無線通信手段として、「テレビ受信用アンテナ112A」、「テレビチューナ112B」及び「AD/DA変換部1_112C」を記載しているにすぎない。他方、被告も認めるように、構成要件BとG’の「無線通信手段」は一致するのであるから、当初明細書等の段落【0113】ないし【0117】の「通信用アンテナ111A、RF送受信部、ベースバンドプロセッサ11」も、構成要件G’の「無線通信手段」であり、構成要件Bの「無線通信手段」でもあると考えることに何の支障もない。以上のとおり、当初明細書等の第1の実施形態においては、「無線通信手段」は、「通信用アンテナ111A、RF送受信部、ベースバンドプロセッサ11」と「テレビ受信用アンテナ112A、テレビチューナ112B、AD/DA変換部1_112C」を合わせたものであり、この「無線通信手段」は構成要件Bと構成要件G’の双方を充足する。したがって、被告の前記主張は、前提を欠いて失当である。また、被告は、構成要件G’が、無線信号が伝達する画像データの本来解像度と同じ解像度の画像を「前記ディスプレイ手段」に表示させるものであるという理解を前提に、当初明細書等には「解像度の低い画像の全体画像」を表示させるとの記載しかないから、本件訂正請求は、当初明細書等の範囲内の訂正に当たらないと主張する。しかし、構成要件G’は、「前記ディスプレイ手段」に表示される画像の解像度については、何らの規定もしていないのであるから、被告の前記理解は曲解というべきものである。したがって、この点に関する被告の主張も、構成要件G’に対する誤った解釈に基づいて導かれたものであって、前提を欠いて失当である。
イ被告製品の本件訂正発明の充足性被告製品が、本件訂正発明の構成要件のうち、本件訂正請求に関係しない部分を充足することは、既に論じたとおりである。そして、被告製品が、構成要件G’及びH’のうち、本件訂正請求で訂正された部分を充足することは、別紙被告製品説明書から明らかである。これに対し、被告は、構成要件G’及びH’の「高解像度画像受信・処理・表示機能」が、テレビ放送番組を視聴する場合に限定されるものであるという理解を前提に、被告製品が、構成要件G’及びH’を充足していないと主張する。しかし、構成要件G’に係る特許請求の範囲が定義する「高解像度画像受信・処理・表示機能」の記載は、これをテレビ放送番組の視聴に何ら限定していないのであるから、被告の前記の理解は、特許法70条の規定に反する明らかに失当な解釈である。また、当初明細書等の記載をみても、本件訂正発明の「無線通信手段」について、テレビ受信用アンテナやテレビチューナを不可欠の要素とするような記載はない。そのため、被告の理解は、特許請求の範囲を実施例の記載に限定するものと理解されるものであり、これを採用する余地がない。
ウ本件訂正発明に係る相違点の検討本件訂正発明と乙1発明の相違点(相違点G1)本件訂正発明の無線通信手段は、「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し、また、本件訂正発明の中央演算回路は、該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理するのに対して、乙1発明の携帯機器においては、無線通信手段が特定されておらず、また、乙1発明のCPU10(中央演算回路)は、「画像データを処理」して「画像を表示する」ことについて、特定されていない点(相違点H1)本件訂正発明のグラフィックコントローラは、携帯情報通信装置が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能及び前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能を実現するのに対して、乙1発明の表示コントローラ20には、そもそも乙1発明の携帯機器が高解像度画像受信・処理・表示機能を実現することが特定されておらず、高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合にいかなる機能を実現するかは特定されていない点相違点G1の容易想到性相違点G1のうち、「通信手段」の有無は、周知技術から容易に想到し得るものであるとしても、それによって、本来解像度が内部表示装置22(ディスプレイパネル)の画面解像度より大きい画像データを伝達する信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPU10に送信し、CPU10において、当該デジタル信号を受信して、これが伝達する「画像データを処理する」という構成に到達することはできない。仮に、前記「画像データ」を扱うことまでは当業者の設計事項であるとしても、通信手段からデジタル信号を受信し、当該デジタル信号が伝達する「画像データを処理する」という構成にまで至ることはできない。まして、乙1発明の通信手段が、本来解像度が内部表示装置22の画面解像度より大きい画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPU10に送信するように構成することまでが、当業者の設計的事項などということはできない。そして、前記「画像データを処理する」について、「上位のアプリケーション」として、ワープロやブラウザを想定する被告の主張が失当であることは、相違点2及び4に関して論じたとおりである。仮に、「上位のアプリケーション」としてブラウザを適用し得たとしても、そのブラウザを用いてインターネットに無線接続してWebサーバから内部ディスプレイパネルの解像度より大きい解像度の画像をダウンロードするという構成までが容易想到とはならない。まして、乙1発明の通信手段が、本来解像度が内部表示装置22の画面解像度より大きい画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPU10に送信するように構成することまで容易想到とはなることはない。相違点H1の容易想到性上記のとおり、乙1発明から相違点G1に係る構成には至ることはできないのであるから、同様に、乙1発明から相違点H1に係る構成に至ることもできないことは明らかである。
⑴ 乙5発明の内容及び本件発明との相違点
ア乙5公報には、以下の内容の乙5発明が開示されている。「携帯電話機1は、制御部10と、送受信部11と、表示部12と、操作部14と、記憶部16と、画像出力部17と、を有して成り、制御部10はCPU等から成り、装置全体の動作を制御し、送受信部11は、送信回路と受信回路を有して成り、アンテナ11aを介して電波を送受信することで、基地局との双方向通信を行い、表示部12は、液晶ディスプレイ等から成る情報表示手段であり、操作部14は、ダイヤルキーやブラウザ操作キー等を備えた入力デバイスであり、記憶部16は、ROMやRAMから成る情報格納手段であり、画像出力部17は、入力された情報(静止画や動画、文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば、ビデオ信号形式)に変換して出力するインターフェース部であり、記憶部16の格納情報を外部表示装置2に出力する場合、制御部10は、記憶部16から所望の情報を読み出して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求し、該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力し、制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求する。該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力し、外部表示装置2には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示され、外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用い、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示することが可能となる、携帯電話機1。」
イ乙5発明と本件発明とは、以下の相違点7ないし12で相違するが、その余は一致する。(相違点7)本件発明の「中央演算回路」は、「前記無線通信手段から受信したデジタル信号」に対して、「前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムに基づき」、「リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出」すという手順で処理するのに対し、乙5発明では「制御部10」は、受信した信号に対する具体的な処理手段について記載されていない点(相違点8)本件発明の「データ処理手段」は、「該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラ」を備えるのに対し、乙5発明には「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない点(相違点9)本件発明の「ディスプレイ手段」は、「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、乙5発明の「表示部12」は、「デジタル表示信号」が「グラフィックコントローラから受信した」ものである点が特定されていない点(相違点10)本件発明の「インターフェース手段」は、「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、乙5発明の「画像出力部17」は「グラフィックコントーラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作することについて特定されていない点(相違点11)本件発明の「グラフィックコントローラ」は、「前記携帯情報通信装置が『本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ』を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから『前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ』を読み出し、『該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号』を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから『前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ』を読み出し、『該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号』を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能」を実現しているのに対し、乙5発明には「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない点(相違点12)本件発明では「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」が変換される伝送方式が列挙されているのに対し、乙5発明では「デジタル表示信号」はどの「伝送方式」に変換されるのか特定されていない点
ウこれに対し、原告は、本件発明において、「解像度」、「本来解像度」及び「画面解像度」の用語の使い分けがあることを前提に、相違点14の存在を主張する。しかし、原告の当該主張は、前提において誤りがあることは、争点2-1で主張したとおりであり、乙5発明と本件発明の相違点は、前記イのとおり認定されるべきである。
ア相違点7の容易想到性乙5公報の段落【0020】には、制御部10が、送受信部11(無線通信手段)を介し、指定サーバからWebコンテンツ情報を取得する旨の記載がある。そうすると、相違点7のうち、「「前記無線通信手段から受信した信号」に対して」の部分は、乙5発明と本件発明との実質的な相違点ではないと解すべきである。また、ユーザーが実行したい処理を入力手段によって入力することや中央演算回路で処理するプログラムをROMやRAMなどに記憶させることは、当業者が通常に行うことであり、相違点7のち、「前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき」処理することは、当業者が容易に想到できたことである。そして、乙5発明が、受信した信号を画像出力部17に送出する「処理」としては、相違点7の「リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又、自らが処理可能なデータファイルとして前記記録手段に一旦格納し、その後読み出す」ことが必然であるから、当該部分も実質的な相違点とはいえず、又は当業者が容易に想到できたことである。
イ相違点8ないし11の容易想到性①乙1発明との組み合わせ乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」(グラフィックコントローラ)に置き換えてみることは、当業者が容易に想到し得た。そして、この適用を前提にすれば、次のないしに説明するとおり、当業者は、相違点8ないし11を容易に想到し得たということができる。これに対し、原告は、乙1発明を乙5発明に適用すると、乙5発明の携帯電話に係る機能が失われるから、その適用に阻害事由があると主張する。しかし、その適用に当たり、課題解決に関係しない範囲で携帯電話機の機能を残すことは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないのであるから、原告が指摘する点は、その適用を否定する理由とならない。相違点8について乙1発明を乙5発明に適用することによって、相違点8のうち、「グラフィックコントローラ」の有無の点は解消される。また、相違点8のうち、「単一のVRAM」に関しても、乙1公報の図2には、「表示メモリ」(VRAM)が1つしか描かれていないことからすれば、当業者が容易に想到できた点であるということができる。相違点9について乙5発明は、「表示部12」が「デジタル表示信号」を「グラフィックコントローラから受信した」ことを特定しない。しかし、乙1発明の内部表示装置22(表示部12)は、「表示信号」を表示コントローラ20(グラフィックコントローラ)から受信している(乙1公報【0020】)。そして、「表示信号」をデジタル信号とすることは、当業者が通常に行うことである。したがって、乙1発明を適用した乙5発明によって、相違点9は、当業者が容易に想到し得たというべきである。相違点10について乙5発明では、「画像出力部17」は「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作することが特定されていない。しかし、乙1発明の表示コントローラ20(グラフィックコントローラ)は、ケーブル等を介し、「外部表示装置24」に表示信号が送信されているから(乙1公報【0018】)、両者の間にインターフェース部があることは明らかであって、その表示コントローラ20からインターフェース部(画像出力部17)に「デジタル表示信号」を送信しているといえる。したがって、乙1発明を適用した乙5発明によって、相違点9は容易に想到し得たというべきである。相違点11について乙5発明は、本件発明の「グラフィックコントローラ」に係る機能を特定していない。しかし、乙1公報には、表示コントローラ20(グラフィックコントローラが、「外部表示装置24」に表示させる表示データを取り扱うこと、当該外部表示装置用の表示データの解像度(640×480)は「内部表示装置22」の解像度(640×240)より大きいことが記載されているのであるから、乙1発明の表示コントローラ20は、「内部表示装置22」の「解像度」より大きい解像度を「本来解像度」とする「表示データ」を取り扱うことができるものと解される。そして、相違点11のうち、「単一のVRAM」の有無については、相違点8において論じたのと同様であるから、乙1発明を適用した乙5発明によって、相違点11は当業者が容易に想到し得たというべきである。
ウ相違点8ないし11の容易想到性②乙6発明との組み合わせ乙5発明の「制御部10」を乙6発明の「CPU10」、「LCD表示制御部23」(グラフィックコントローラ)、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えてみることも、当業者が容易に想到できたことである。そして、この適用を前提にすれば、次のないしに説明するとおり、当業者は、相違点8ないし11を容易に想到し得たということができる。これに対し、原告は、乙6発明を乙5発明に適用することに阻害事由があると主張する。しかし、その主張は、要するに、機械的な置換えができないというものにすぎず、当業者の通常の創作能力を否定した主張であって失当である。また、原告は、乙6公報に記載されたPC用のCPUが大型であることを理由に、携帯電話機である乙5発明の制御部10を乙6発明のCPU10に置き換えることに阻害事由があるとも主張する。しかし、本件発明は、携帯情報通信機器用のCPUが容易に入手できることを前提としたものであり、その前提に基づけば、乙6公報の実施態様のCPU10がPC用であるからといって、乙6発明を乙5発明に適用することの阻害事由があるとはいえない。相違点8について乙6発明を乙5発明に適用することによって、相違点8のうち、「グラフィックコントローラ」の有無の点は解消される。また、相違点8のうち、「単一のVRAM」に関しても、乙1公報の図2には、「表示メモリ」(VRAM)が1つしか描かれていないことからすれば、当業者が容易に想到できた点であるということができる。相違点9について乙5発明は、「表示部12」が「デジタル表示信号」を「グラフィックコントローラから受信した」ことを特定していない。しかし、乙6発明においては、LCD表示制御部23からLCD52(ディスプレイ手段)に「ビデオ信号」が供給されており(乙6公報【0034】)、その「ビデオ信号」を「デジタル表示信号」とすることも、当業者が通常の創作能力の範囲内にある。したがって、相違点9は、乙5発明に乙6発明を適用することにより当業者が容易に想到できたといえる。相違点10について乙5発明の「制御部10」を乙6発明の「CPU10」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えてみることも、当業者が容易に想到できたことである。そして、乙6発明においては、「CRT表示制御部25」(本件発明の「グラフィックコントローラ」)から「CRTディスプレイ53」に表示信号を送信しているから、乙6発明を乙5発明に適用することによって、相違点10は、当業者が容易に想到できたことであるといえる。相違点11について乙5発明は、本件発明の「グラフィックコントローラ」に係る機能を特定していない。しかし、乙6公報の段落【0006】には、グラフィックコントローラが「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理することを示唆している。そして、相違点11のうち、「単一のVRAM」の有無については、相違点8において論じたのと同様であるから、乙6発明を適用した乙5発明によって、相違点11は容易に想到し得たというべきである。
エ相違点12の容易想到性乙5発明は伝送方式を特定していない。しかし、本件発明で特定されている伝送方式は、周知の伝送方式を単に列挙しただけであり、乙5発明に周知の伝送方式を適用してみることは、当業者が容易に想到できたことである。
⑶ 訂正の再抗弁の当否
ア本件訂正請求が不適法なものであり、被告製品が本件訂正請求に係る構成要件G’及びH’を充足しないことは、争点2-1で論じたとおりであり、原告の訂正の再抗弁は失当である。
イ本件訂正発明によって、乙5発明による進歩性欠如の無効理由は解消しない。したがって、原告の主張は、本件発明の進歩性欠如に係る主張を繰り返しているものにすぎず、この点からも訂正の再抗弁は失当である。
⑴ 乙5発明の内容及び本件発明との相違点
ア本件発明の特許請求の範囲の記載は、画像に対する「解像度」、画像データに対する「本来解像度」、ディスプレイに対する「画面解像度」を使い分けているのに対し、乙5公報は、「解像度」という言葉を前記の「画面解像度」の意味にのみ使用するものである。したがって、乙5発明の構成は、そのような用語法を前提に認定されるべきである。
イそのため、被告の一致点の認定には誤りがあり、相違点7ないし12に追加し、相違点14が認定されるべきである。(相違点14)本件発明の携帯情報通信装置は、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにしたが、乙5発明の外部表示装置2には、「表示部12の画面解像度より大きい解像度を有する画像」が表示できることが特定されていない点
ア相違点8ないし11について乙1発明との組み合わせ被告は、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えることを主張する。しかし、乙1発明は携帯電話機ではないから、乙1発明の「CPU10」は、もともと乙5発明の「制御部10」が担っていた「送受信部11」や「音声部13」、「撮像部15」(乙5公報【図2】)に係る機能を実現することができない。すなわち、乙1発明を適用することによって、乙5発明の携帯電話機が有していた多くの機能が失われてしまうから、このような適用には阻害要因があるというべきである。なお、乙5発明と乙1発明との組み合わせ方法として、前記の置換えにおいて、制御部10のうちのCPUは残し、その余の機能を乙1発明で置き換えることも考え得る。しかし、乙5公報には、制御部10のうちのCPUが単独で果たす機能の記載はないのであるから、当業者によって、乙5発明のCPUに係る機能と乙1発明で置き換えられた機能との間で、どのように機能分担するのか不明であって、いずれにせよ阻害要因があるというべきである。これが設計事項であるとする被告の主張は、当業者の通常の創作能力を過大に評価するものである。乙6発明との組み合わせまた、被告は、乙5発明の「制御部10」を乙6発明の「CPU10」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えることを主張する。しかし、乙6発明は、「PC100」の周辺機器である「ビデオ・アダプタ20」に係る発明であると理解すべきものであるから、被告の主張は、乙6発明である「ビデオ・アダプタ20」には含まれない「PC100」から「CPU10」を抜き出し、乙1発明に適用しようというものであり、阻害要因があるというべきである。しかも、PC用のCPUは、本件発明の優先日当時、携帯電話用のCPUに比し大型で発熱量も大きかったため、携帯電話機に採用することには物理的な困難があった。そうすると、「本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性や臨場感を向上させることが可能な携帯電話機の提供を第1の目的」(乙5公報【0007】)とする乙5発明に、乙6発明を適用することには、阻害要因があったというべきである。なお、そもそも、乙5発明は、本件発明の「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」を備えていないのに対し、被告の主張する乙6発明の乙5発明に対する適用は、この点の相違を埋めるものではない。すなわち、乙6発明のうち、「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」に相当するものは、「フレーム・バッファ制御部22」及び「フレーム・バッファ40」であるから、被告の主張を前提としても、前記の置き換えに当たり、乙6発明の「フレーム・バッファ制御部22」及び「フレーム・バッファ40」も挿入される必要がある。そして、被告主張の要素に加え、「フレーム・バッファ制御部22」及び「フレーム・バッファ40」も挿入しなければならないということは、乙5発明に、乙6発明である「ビデオ・アダプタ20」の大部分の構成要素(インターフェース部21の全部又は一部を除く部分)を挿入しなければならないことを意味する。このような乙5発明と乙6発明の組み合わせには、阻害要因があるというべきである。
イ相違点14について本件発明と乙1発明との間には、被告指摘の相違点に加え、相違点14があることは、既に指摘したとおりである。そして、本件発明と乙1発明との間の相違点13(争点2-1)は、本件発明と乙5発明との間の相違点14と同様の内容なのであるから、仮に、乙5発明に乙1発明を適用したとしても、当然、相違点14に至ることはできない。
⑶ 訂正の再抗弁の成否
ア本件訂正請求の適法性及び被告製品の充足性争点2-1に関して論じたとおり、本件訂正請求は適法であり、被告製品は、本件訂正発明の構成要件を充足する。
イ本件訂正発明に係る相違点の検討本件訂正発明と乙5発明の相違点(相違点G5)本件訂正発明の携帯情報通信装置は、「高解像度画像受信・処理・表示機能」を有するのに対し、乙5発明では、送受信部11(無線通信手段)が、「本来解像度が表示部12(ディスプレイパネル)の画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPU(中央演算回路)に送信すること、CPUが、該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理すること、携帯電話機が、グラフィックコントローラ及び「単一のVRAM」を備えることが特定されていない点(相違点H5)本件訂正発明のグラフィックコントローラは、携帯情報通信装置が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能及び前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と実現するのに対し、乙5発明の携帯電話機においては、グラフィックコントローラ及び「単一のVRAM」が特定されていない点乙5発明と乙1発明の組み合わせそもそも、本件訂正発明と乙1発明との間には相違点G1が存在しているのであるから、乙5発明に乙1発明を適用したとしても、相違点G5のうち、乙5発明の送受信部11が、本来解像度が表示部12の画面解像度より大きい画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPU10又はCPUに送信するという構成、乙5発明のCPUが、該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理する構成に至ることはできない。そして、乙5発明に乙1発明を適用しても、相違点G5に至ることができない以上、相違点H5に至ることもできない。乙5発明と乙6発明の組み合わせ乙6発明は、どのように特定しようとも、「無線通信手段」を特定するものではない。したがって、どのように乙5発明に乙6発明を適用しても、相違点G5のうち、乙5発明の送受信部11は、本来解像度が表示部12の画面解像度より大きい画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPU10に送信するという構成に到達することはできない。また、乙5発明のCPUを乙6発明のCPU10と置き換えたとして、乙6発明において、CPU10が、外部から受信した信号が伝達する画像データを処理するという構成は特定されない。したがって、どのように乙5発明に乙6発明を適用しても、相違点G5のうち、乙5発明のCPUは、該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理するという構成に到達することはできない。そして、乙5発明に乙6発明を適用しても、相違点G5に至ることができない以上、相違点H5に至ることもできない。
⑴ 本件当初訂正に係る訂正事項4及び7は、本件発明である本件特許の特許請求の範囲の請求項1について、「前記単一のVRAM」という語句を追加する部分を含む訂正である(甲3)。
⑵ しかし、当該訂正の根拠とされる当初明細書等の段落【0115】、【0117】、【0127】及び【図1】などの記載をみても、そこに記載されたVRAMが1個に限定されたりするような記載はない。
⑶ また、当初明細書等には、「VRAM」が「単一」であることの積極的な意義や作用効果の記載もない。そのため、当初明細書等の記載から、「単一のVRAM」にするという技術的事項を導き出すこともできない。
⑷ したがって、訂正事項4及び7は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正に当たらないから、特許法126条5項に違反しており、本件発明の無効理由となる。
⑴ 特許請求の範囲の記載において、装置の部品や要素に「単一」という語が使用される場合、特段の積極な意味を込められておらず、数が複数ではなく単数であるという意味にすぎない。したがって、本件明細書等において、VRAMが「単一」であることの積極的な意義が記載されていなければならないとする被告の主張は、失当である。
⑵ また、争点2-5において主張するとおり、本件明細書等の記載によれば、本件発明において、VRAMが「単一」であることから生じる作用効果は明らかであるから、その記載がないとする被告の主張も、前提を欠いて失当である。
⑴ 本件明細書等には、本件発明の構成を「単一のVRAM」とすることによる作用効果が記載されていない。そのため、本件明細書等の発明の詳細な説明の欄は、「単一のVRAM」を構成要素とする本件発明の作用効果を理解し得るように記載していないといえる。したがって、本件特許には、この点において、特許法第36条6項1号のサポート要件に違反する無効理由があるというべきである。
⑵ 本件発明の構成要件Dには、「必要な処理を行い」又は「処理する」との要件が含まれる。しかし、本件明細書等には、段落【0032】の「適切に処理する」以外の処理に関する記載はない。仮に、構成要件Dの「処理」が前記「適切に処理する」以外の処理を含むとすれば、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えることになるから、本件発明は、この点でもサポート要件に違反する無効理由があるというべきである。
⑴ 被告は、本件明細書等には、「単一のVRAM」に係る作用効果が記載されていないと主張する。しかし、以下のとおり、この点について、サポート要件違反があるということはできない。
ア平成6年法律第116号による改正後の特許法36条4項1号においては、明細書に発明の効果を記載することは必須の記載要件とされないのであるから、被告の主張は条文解釈として誤りである。
イまた、仮に、本件発明のVRAMが単一でなかったとすれば、構成要件Hの「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」の読み出し元と「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」の読み出し元とに、別々のVRAMが割り当てられるのが自然である。しかし、その場合、本件明細書等の段落【0031】に記載された高解像外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を別個に使用しないという課題を解決することができない。したがって、本件明細書等には、「単一のVRAM」を使用することの作用効果が記載されているといえる。
⑵ 被告は、本件明細書等には「適切な処理」に係る記載はあるが、構成要件Dの「処理」に係る記載はないと主張する。しかし、本件明細書等には、構成要件Dの「中央演算回路」が、「適切な処理」以外の「処理」をする旨の多数の記載があるのであるから、この点を理由にサポート要件違反をいう被告の主張も、失当である。
⑴ 被告製品の売上高
ア特許法102条3項の原告が受けるべき利益の額の算定の基礎となる被告製品の売上高は、製品自体の販売代金収入のみならず、当該製品に係る通信料収入をも含めた算定をすべきである。なぜなら、被告を始めとする電気通信事業者は、被告製品を販売していた当時、いわゆる「SIMロック」や「2年縛り」となどの商慣行によって、携帯電話機の購入者から少なくとも2年程度の通信料収入を得る一方、製品自体の小売価格を低額に抑えていたからである(甲24、25)。
イなお、被告が主張する被告製品の売上高は、被告補助参加人が被告に被告製品を販売した段階のものであるから、製品自体の販売代金収入としても失当である。原告は、被告による被告製品の販売行為を問題としているのであるから、製品自体の販売代金収入は、被告が一般消費者に被告製品を販売した段階の売上高によるべきであることは当然である。
⑵ 本件発明(本件訂正発明)の相当実施料率以下の事情を総合考慮すれば、特許法102条3項による損害の算定の基礎となる相当実施料率は、前記売上高の1%を下らない。
ア業界における実施料の相場等本件特許は実施許諾の実績がないが、「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書」(甲26)は、国内アンケート調査における実施料率について、「器械」の技術分野が平均1.9%(最大:9.5%、最小:0.5%)、「電気」の技術分野が平均2.9%(最大:9.5%、最小:0.5%)、「コンピュータテクノロジー」の技術分野が平均3.1%(最大:7.5%、最小:0.5%)であり、司法データの実施料率について、「電気」の技術分野が平均3.0%(最大:7.0%、最小:1.0%)であるとする。なお、前記報告書には、「電気」の技術分野においては、パテントプールによる実施許諾、クロスライセンスによる実施許諾、ノウハウを含めた実施許諾があるため、前記平均値が妥当しない場合がある旨の記載がある。しかし、本件特許は、パテントプールに含まれず、原告は、クロスライセンスによる実施許諾やノウハウを含めた実施許諾をするという営業方針を採用していないから、前記の場合に該当せず、本件訴訟における本件特許の相当実施料率を算定するに当たっては、前記の数値を採用することができるというべきである。他方、被告は、被告補助参加人における特許1件当たりのライセンス料率は、●(省略)●%になるなどと指摘する。しかし、被告補助参加人のライセンス契約は、「C社」を除き一時金方式であり(乙14)、ランニング方式よりもディスカウトされる傾向のあるものである(甲27)。これに対し、原告は、一時金方式のライセンスはしないという営業方針を採用しているのであるから、被告補助参加人の前記ライセンス実績を考慮することは許されない。また、「C社」との契約にしても、クロスライセンス契約であり、互いのライセンス料が差引計算され、本来のライセンス料率よりも低額になっているはずであるから、その実施料率を参考にするのは不適当である。仮に、これを考慮するにしても、特許件数で除する前の●(省略)●%という数字が参考にされるべきである。さらにいえば、被告の前記主張は、特許侵害者と利害を共有する者が締結したライセンス契約の実績に基づいたものである上、その計算においても、複数一括ライセンス契約の実施料率を個々の特許の実施料率と同視している点、一時金方式のライセンス契約における対象製品の売上高が過大に見積もられている点で不当である。
イ特許発明の技術内容や重要性等本件発明は、高解像度画像の外部表示を不合理な二重投資や非効率な資源利用を行うことなく実現することを作用効果とするものである。そして、これは携帯電話機に必須の機能である(甲29)。そして、被告製品は、国内携帯電話市場がスマートフォンに移行しつつある時期であり、また、被告がアンドロイド端末の取扱いを強化しようという時期に発売されたものであるが、他方で、それ以前に、アンドロイド端末やアイフォン端末において、高解像度画像を外部表示する機能を有するものは発売されていなかった。そうすると、被告製品において、本件発明の作用効果を実現することは、被告の戦略上も極めて重要であり、本件発明の重要性は高いというべきである。また、被告は、被告製品の販売時期において、被告製品以外に、高解像度画像を外部表示する機能を搭載したアンドロイド製品を販売していない。このことは、それ以外の選択肢がなかったことを意味する。しかも、被告製品の販売期間が3年以上にわたることなどからすれば、前記の機能を実現する上で、本件発明の構成を採用することが、技術的、経済的に合理的であったといえる。そうすると、被告には、本件発明の構成を採用する以外の方法はなかったというべきである。これに対し、被告は、被告補助参加人が製造した携帯電話機に、本件発明の構成を採用しないものがあると主張するが、仮に、被告の指摘する携帯電話機が、本件発明の構成を採用していないとしても、それらの携帯電話機は、いずれもフィーチャーフォンである。前記のとおり、被告製品が販売されたのは、被告が、スマートフォンの取扱いを強化しようという時期であったのであるから、フィーチャーフォンにおける代替技術の有無は、実施料率算定の上で重要な事情ではない。
ウ売上げ及び利益への貢献や侵害の態様本件発明によらずに高解像度画像の外部表示の機能を実現しようとすれば、合理的と考えられる被告製品の構成に何らかの改造を行う必要があるが、このような改造には余分のコストを要する。すなわち、その余分のコストが、本件発明の構成を被告製品に用いたことの利益に貢献した程度を示すことになる。そして、仮に、そのような改造を加えようとすれば、当該機能を実現するための部品を追加する必要があるが、例えば、被告製品の発売の約2年前において、同時に2画面に表示するためのモバイル機器向け液晶コントロールIC「LR388G9」の価格は2400円と設定されていた。そうすると、本件発明の被告製品の利益への貢献は、被告製品1台当たり1000円を下回らないというべきであり、これは被告製品の平均単価の2.5%に相当する。これに対し、被告は、外部表示機能を採用したことは販売価格に影響しなかったと主張する。しかし、当該主張は、売上げへの貢献を問題とするものであり、本件発明の実施料率を算定する上では意味がない。そもそも、スマートフォンの販売価格は、電気通信事業者の販売戦略に大きく左右されるのであり、当該主張は、当然の事実を指摘するにすぎない。
エ競業関係や特許権者の営業方針等原告は、情報処理・通信システムの考案及び開発を目的とする会社であり、その製造販売には携わっていない。そのため、原告は、自社の特許発明に係る実施権を他社に許諾し、これに対する実施料を得ることを営業方針としており、自ら製造販売するためのクロスライセンスをすることはない。また、原告は、他の事業から運営資金を確保しているため、その実施許諾に当たり、ランニング方式よりも低額となる傾向のある一時金方式によって、自らの運営資金を確保する必要性も有していない。
⑶ 原告に生じた損害(損害賠償請求)前記⑴及び⑵によれば、本件発明の実施料相当額は、以下の合計である●(省略)●を下らず、原告は、同額の損害を被った。① 別紙被告製品目録記載のイ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料率1%② 別紙被告製品目録記載のロ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%③ 別紙被告製品目録記載のハ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%④ 別紙被告製品目録記載のニ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%⑤ 別紙被告製品目録記載のホ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%⑥ 別紙被告製品目録記載のヘ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%⑦ 別紙被告製品目録記載のト号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%⑧ 別紙被告製品目録記載のチ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%⑨ 別紙被告製品目録記載のリ号製品 ●(省略)●●(省略)●、実施料1%
⑷ 被告に存する利益(不当利得返還請求)
ア被告は、原告から実施許諾を得ないまま、被告製品を販売した。その結果、被告は、前記実施料相当額の支払を免れ、●(省略)●を下らない利益を不当に受け、原告は、これに相当する損失を受けたから、原告は、被告に対し、同額の不当利得返還請求権を有する。
イこれに対し、被告は、被告と被告補助参加人との取引条件を定めた契約の存在を理由に、被告に現存利益がないなどと主張する。しかし、被告が指摘する当該契約の条項は、「製造のために必要な特許ライセンス」や「製造するためのライセンス」に係る規定にすぎない。他方、原告は、被告が、被告製品を販売した行為に係る不当利得を問題としているのであるから、当該規定の存在は無関係である。
ウまた、被告は、原告が計算する実施料相当額は、民法703条の「現存利益」に当たらないなどとも主張する。しかし、仮に、特許法102条3項の規定が、民法703条の「現存利益」の認定に適用されないとしても、被告が、実施料相当額の利得を不当に得ており、原告が、同額の損失を被ったのであるから、これを原告に返還すべきことに議論の余地はない。
⑴ 被告製品の売上高被告補助参加人による被告製品の販売数量及び売上高は、以下のとおりである(乙13)。なお、被告は被告補助参加人以外から被告製品を購入しておらず、被告補助参加人は被告以外に被告製品を販売していない。被告製品販売台数売上高イ号製品●(省略)●●(省略)●ロ号製品●(省略)●●(省略)●ハ号製品●(省略)●●(省略)●ニ号製品●(省略)●●(省略)●ホ号製品●(省略)●●(省略)●ヘ号製品●(省略)●●(省略)●ト号製品●(省略)●●(省略)●チ号製品●(省略)●●(省略)●リ号製品●(省略)●●(省略)●合計●(省略)●
⑵ 本件発明(本件訂正発明)の相当実施料率
ア本件発明の価値本件発明は、外部出力機能(HDMI/MHL出力機能)を実現するために不可欠ではないから、被告製品に特に高い付加価値を付与するものではない。実際、被告補助参加人は、平成23年頃においても、本件発明の構成を備えない携帯電話機であるSH-01C、002SH、SH-05C、SH-09C、SH-10C及びSH-03Dといった製品を製造しており、本件発明を実施しなくとも、HDMI/MHL出力機能を実現し得たことは明らかである。また、外部表示機能の貢献が、販売価格に影響した事実を見いだすことはできず、仮に、影響があったとしても軽微なものにとどまる。もっとも、外部表示機能の有無のみが異なる製品は存在しなかったため、その販売価格への影響の有無を直接的に示す資料はないが、平成23年頃の携帯電話機において、その販売価格に影響を与えた主な要因は、CPUの性能・価格、電池容量、内蔵カメラの性能・個数の3点であると考えられ、外部表示機能の有無・性能の影響は見られなかった(乙16)。被告補助参加人が保有する過去のデータを精査したが、外部表示機能の貢献による販売数量への影響は見られず、仮にあったとしても、その影響は軽微としかいえないものであった。すなわち、販売数量への影響は通信キャリアの販売戦略の影響が大きく、外部表示機能の有無・性能が販売数量に与えた影響はみられなかった。実際、平成22年から平成24年までの間で1、2番目に多くの台数を販売した2機種は、HDMI出力機能を備えていなかった。(乙16)被告製品は、多数の特許発明を実施している。また、本件特許は、携帯電話事業分野における標準規格を実施するために不可欠ではない発明に係る特許(以下「アプリ特許」という)である。そして、前記のとおり、本件発明が携帯電話に特に高い付加価値を付与するものではないことからすれば、本件特許の寄与割合は、他のアプリ特許の寄与割合と同程度と推定できる。したがって、本件発明の実施料率は、被告製品のアプリ特許1件当たりの実施料率と同じと考えるべきである。
イアプリ特許1件あたりの実施料率被告補助参加人は、被告製品を製造販売するため、各社とアプリ特許等のライセンス契約を締結した。そのうち、破産申立てという切迫した事情のあった「H社」を除いたライセンス契約につき、①複数の特許が対象になっている場合は、パテントファミリーごとに1件の特許とカウントし、②対象特許が特定されていない場合は、交渉過程で合意された特許や契約書に明示された限りの特許をカウントし、③実施料が一時金方式である場合は、原則、対象製品の8年間の売上高に対する料率を算定し、④ライセンス料率が●(省略)●とする計算をすることとし、アプリ特許1件当たりのライセンス料率は、●(省略)●%と計算される。(乙14)また、前記において、特殊な規定のあった「C社」とのライセンス契約を除き、さらに、画像処理関連発明に限定すると、その平均ライセンス料率は、●(省略)●%となる。そして、「C社」とのライセンス契約にしても、画像処理関連発明に限り、年度ごとに1件当たりのライセンス料率を計算し、その8年間の平均を計算する方法を採用すると、1件当たりのライセンス料率は、●(省略)●%である。(乙16)さらに、前記の計算は、標準必須特許を除いたものであるが、標準必須特許の1件当たりのライセンス料は、製品1台につき、0.001米ドル以下であり(乙16)、仮に製品1台当たりの平均売上高を5万円と仮定すると、その平均ライセンス料率は0.0002%以下であるから、標準必須特許を含めた全特許に係る平均ライセンス料を計算するとすれば、前記の計算額より低額になる。なお、「C社」、「D社」及び「I社」とのライセンス契約は、クロスライセンスであったが、「C社」及び「I社」は、携帯電話関連事業を行っておらず、クロスライセンスされた特許を実施した形跡もないこと、「D社」については、クロスライセンスされた特許が2件(残存期間2年以下)にすぎなかったことから、前記の計算において、クロスライセンスであることは考慮しなかった。(乙15)
⑶ 原告に生じた損害(損害賠償請求)以上によれば、仮に、原告の被告に対する損害賠償請求権が時効消滅していなかったとしても、その金額は、前記⑴の●(省略)●を上回ることはないというべきである。
⑷ 被告に存する利益(不当利得返還請求)
ア被告は、製造業者である被告補助参加人から被告製品などの携帯電話機を購入し、それを販売している電気通信事業者にすぎず、被告補助参加人が携帯電話機を製造販売し、これを被告が販売するためのライセンスについては、被告補助参加人に取得させ、被告と被告補助参加人の売買契約において、仮に、特許権侵害があったような場合には、その費用を被告補助参加人が負担することを合意している。(乙12)すなわち、仮に、被告製品を製造するため、本件特許に係るライセンスを受ける必要があったとしても、そのライセンス料は被告補助参加人が負担することになるのであって、被告製品の販売に当たり、本件特許のライセンス料の支払を免れていたとして、被告が利益を受けるという関係にはない。したがって、被告には、民法703条の現存利益が存在しないということができ、原告の不当利得返還請求は理由がない。
イこれに対し、原告は、特許法102条3項に基づき、被告の利益の額を計算する。しかし、同条項を原告に生じた損失の算定に類推適用し得たとしても、これを原告の現存利益の算定に使用し得る根拠はない。なお、民事訴訟法248条の規定にしても、損害額を認定する規定であり、民法703条の現存利益を認定するための規定ではない。
⑴ 原告は、平成26年10月20日、本件特許が実際上は行使し得ないものであると判断し(甲17)、特許庁に対し、訂正審判を請求し、平成30年8月13日、その訂正登録を得た。そうすると、原告が、その訂正登録の前に、被告製品が、本件特許を侵害すると認識することは不可能であったというべきである。したがって、本件訴訟の訴訟提起日である令和2年11月24日までに、被告製品による本件特許の侵害に対する損害賠償請求権の消滅時効が完成していないことは明らかである。
⑵ また、原告が、平成25年8月2日頃、被告製品2の販売の事実を知っていたことは認める。しかし、原告が、その頃、これが本件発明の技術的範囲に属することを認識していた旨の主張立証はない。そして、原告が、損害賠償請求を提起できる程度の損害を認識したのは、前記前提事実⑸イに係る訴訟を提起した令和元年11月29日の直前である。したがって、被告製品2については、この点からしても、本件特許の侵害に対する損害賠償請求権の消滅時効は完成していないということができる。
第4 当裁判所の判断
1本件発明の内容
⑴ 本件明細書等(甲2)には、次のとおりの記載があることが認められる。
ア技術分野「本発明は、携帯電話機などの携帯情報通信装置、携帯情報通信装置とともに用いる接続ユニット、及び携帯情報通信装置とともに用いる外部入出力ユニットに関する。」(【0001】)
イ背景技術「最近の電子・情報技術及び通信技術の進歩によって、無線通信によってデータを送受信する機能を有する、PHS(Personal HandyphoneSystem)を含む携帯電話用端末装置(以下、「PHSを含む携帯電話用端末装置」を「携帯電話機」と略記する)やPDA(Personal DigitalAssistants)をはじめとする携帯情報通信装置は多機能化し、電子メールの送受信機能はもちろん、インターネットに接続したウェブサーバからHTML(Hyper Text Markup Language)、XML(eXtensible MarkupLanguage)又はそれらをベースとするマークアップ言語で記述された文書ファイル(以下、マークアップ文書ファイルと略記する)及びそのリンクファイルを取得し、適切にレイアウトした上で、通常は液晶ディスプレイである付属ディスプレイに文字や画像を表示することによってウェブページを閲覧するブラウザ機能を標準的に有するようになってきている。」(【0002】)「また、ウェブサーバからゲームプログラムをダウンロードしてフラッシュメモリ等の記憶手段に格納した上で、付属するキー操作部を操作することによって該プログラムを作動させるとともに必要なデータをマニュアル入力することにより、付属ディスプレイに表示される画像の変化を楽しむゲーム機能についても、多くの携帯電話機が保有するようになってきている。さらに、一部の携帯電話機については、テレビジョン放送の電波信号(以下、テレビ放送信号と略記する)を受信し、テレビ番組の映像を付属ディスプレイに表示するためのテレビチューナ機能をも有するようになっている。特に、テレビチューナ機能については、携帯情報通信装置向けの地上デジタル放送の開始が予定されており、このデジタルテレビチューナ機能と上述のブラウザ機能を携帯電話機上で結合することにより、携帯電話機ユーザーに対して、一斉性のある電波放送と、パーソナル性、インタラクティブ性を持つインターネット通信の双方の特性を活かしたサービスを提供することが可能になると期待されている。」(【0003】)「このような事情により、携帯電話機を中心とする携帯情報通信装置において、文字や映像を含む画像の表示機能は、今後、ますます重要性を増していくものと考えられる。ところが、携帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置においては、その携帯性が重視されるため大きいサイズのディスプレイを付属させることができない。このため、携帯電話機の場合、画面サイズは最大でも2.5インチ程度であり、また、画面解像度は最大でもQVGA(Quarter Video Graphics Array)サイズ(携帯電話機においては、通常、縦長画面であるため、水平画素数×垂直画素数=240×320画素)となっている。」(【0004】)「このような画面上の制約のため、携帯情報通信装置で電子メールを受信した場合、それが長文である場合には、文章が表示画面内におさまらず、何行にもわたって表示されるため、垂直スクロールを何度も繰り返さなければならず、結果として、その内容を円滑に理解できないことが起こる。一方、電子メールの発信者は、たとえ自分自身が十分な大きさの表示画面を有するデスクトップタイプやノートブックタイプのパーソナルコンピュータシステム(以下、「デスクトップタイプやノートブックタイプのパーソナルコンピュータシステム」を「パソコン」と略記する)を用いており、したがって、長文を画面に表示するのに支障がない場合であっても、そのような受信者側の制約を考慮すれば、携帯情報通信装置向けには自ずと短いメールとせざるを得ない。」(【0005】)「さらに、携帯情報通信装置でウェブページを閲覧する際の制約は、電子メールの読解する場合よりも大きい。通常、パソコンで閲覧されることを想定して作成されるウェブページ(以下、パソコン向けウェブページと略記する)は、HTMLで記述された文書ファイル(以下、HTMLファイルと略記する)及びそのリンクファイルで構成される。ところが、多くの携帯電話機では、付属ディスプレイの画面サイズ・画面解像度が小さいことを理由の一つとして、フルスペックのHTMLで記述されたウェブページを適切に閲覧することはできず、閲覧できるのはパソコン向けウェブサイトとは別個に構築されたいわゆる「ケータイ向けサイト」のウェブページであって、CHTML(CompactHTML)、HDML(HandheldDevice Markup Language)又はWML(Wireless Markup Language)等の携帯情報通信装置向けに特化したマークアップ言語で記述されたウェブページだけとなっている。このため、特に解像度の大きい画像ファイルにリンクしたHTMLファイルで記述されたウェブページは、ほとんどの場合正しく表示できず、また、画面を複数のフレームに分割し、各フレームに異なるURL(Uniform Resource Locator)を有するファイルを割り当てるフレーム表示のウェブページを含むウェブサイトなどでは、そもそも管理者側が携帯電話機からのアクセス自体を拒否することもある。」(【0006】)「最近は、パソコン向けウェブページを閲覧できる「フルブラウザ機能」又は「PC(Personal Computer)サイトビュー機能」を有する携帯電話機が発売されているが、多くの場合、画像を付属ディスプレイの画面水平解像度(縦長QVGAの場合、240画素)に合わせて縮小したり、テキスト部分を画面幅で改行したり、フレーム表示のウェブページについてはフレーム単位での画面イメージを表示したりするなど特殊なレンダリングモードを採用しており、ウェブページの作成者が本来意図したはずの、パソコンの画面イメージとして実現されるレイアウトで表示されるわけではない。また、携帯電話機によっては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示するレンダリングモードを有する場合もあるが、通常、パソコン向けウェブページは、最低でもVGA(Video Graphics Array)サイズ(水平画素数×垂直画素数=640×480画素)の画面で閲覧されることを想定して作成するため、このレンダリングモードでは、水平スクロールを何度も繰り返さなければウェブページの全体を閲覧することができず、したがって、ウェブページの全容を理解することに支障が生じる。」(【0007】)「一方、携帯情報通信装置でゲームを楽しむ場合でも、そのゲームはグラフィックスがサイズの小さな付属ディスプレイに表示できる程度の比較的単純なゲームに限定される。このため、「ケータイ向けサイト」からダウンロードされる、いわゆる「ケータイアプリ」のゲームは、ゲーム専用機向けやパソコン向けのゲームの世界では一世代から数世代前のゲームが大半であり、結果として、短時間の暇つぶしに楽しまれるケースがほとんどである。また、付属ディスプレイの画面解像度が最大でもQVGAである携帯電話機でテレビ番組を視聴する場合、できる限り大きな画面で視聴するために横置き(水平画素数×垂直画素数=320×240画素)とすることが通常であるが、その場合でも、テレビ放送が前提とする有効走査線の数(=垂直画素数。アナログテレビ放送の場合、480本)は付属ディスプレイの画面垂直解像度(240画素)より大きいため、画素を間引いて表示する必要がある。特に、デジタルテレビ放送においては、有効走査線数(垂直画素数)に加えて、有効水平画素数も規定されているが、最も解像度の小さい480i方式の場合でも水平画素数×垂直画素数=720×480画素、いわゆる「フルハイビジョン方式」である1080i方式においては1920×1080画素であって、いずれにせよ、付属ディスプレイの画面解像度が最大でもQVGAである携帯電話機では、十分なテレビチューナ機能及び表示機能を有するテレビジョン受像機(以下、テレビ受像機と略記する)によってテレビ放送信号を適切に処理した場合に表示される本来の解像度を有する画像(以下、テレビ放送における本来画像と略記する)を全画面表示することはできず、それより解像度の低い画質の劣った画像しか表示できない。」(【0008】)「このような事情から、携帯情報通信装置のユーザーは、携帯情報通信装置とともにパソコンを所有することも多い。そのような場合には、長いメールを送受信したり、パソコン向けウェブページを閲覧したり、あるいはグラフィックスが大きなサイズの画面でなければ表示できないような複雑なゲームを楽しんだりする際にはパソコンを利用し、携帯情報通信装置は、短いメールを送受信したり、「ケータイ向けサイト」にアクセスしてウェブページを閲覧したりするためだけに携帯情報通信装置を利用するという使い分けが行われる。あるいはまた、パソコンと携帯情報通信装置を接続し、ネットワークへの接続のためだけに携帯情報通信装置の無線通信手段を使用し、該無線通信手段によって取得されたデータの処理は、もっぱらパソコンによって行うというような使い方がなされる。また、最近では、テレビチューナを内蔵しディスプレイでテレビ番組が視聴できる機能を有する、いわゆる「AV(Audio Visual)パソコン」が販売されるようになってきているが、このようなパソコンとテレビチューナ付き携帯電話機を併用する場合、外出時や移動時にはテレビチューナ付き携帯電話機でテレビ番組を視聴し、自宅や自室では「AVパソコン」で視聴するという使い分けが行われる。」(【0009】)「ところが、このような方法において使用されるパソコンは、通常は、携帯情報通信装置で行われる電子メールの送受信やウェブページの閲覧等に限定されない汎用的な用途に使用できるように設計されているため、携帯情報通信装置自体のデータ処理手段よりも高機能であるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有している。その上、ハードウェアを起動させるためには、別途、OS(Operating System)等のソフトウェアも準備しなければならないため、パソコンを所有するために要するコストは、携帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置自体を所有するために要するコストより、通常は大きい。このため、データ通信やデータ処理のニーズが電子メールの送受信やウェブページの閲覧等に限られるような多数のユーザーにとって、上記のように、長文の電子メールを読んだり、パソコン向けウェブページを閲覧したりする際の、付属ディスプレイの画面サイズ・解像度が小さいことに起因する不便さを解消するためだけに別途パソコンを所有することは、経済的に不合理である。一方、携帯情報通信装置のデータ処理手段は、汎用的な用途には必ずしも向いていないとは言え、付属ディスプレイに画像を表示するための表示データ処理機能については、表示画面が小さいということを除けば、パソコンにおけるCPU等のプロセッサの機能に匹敵する。それにもかかわらず、上記のようなパソコンと携帯情報通信装置との使い分けを行うとすれば、同種のものに二重投資を行うことになり、結果として少なくとも一方の稼働率の低下をもたらすため、資源の効率的な利用の観点からも好ましくない。」(【0010】)「同様の「不合理な二重投資」と「非効率的な資源利用」という問題は、携帯情報通信装置がテレビチューナ機能を有する場合についても生じる。すなわち、テレビ番組の映像や音声を楽しむためには、テレビ放送信号を受信し、テレビ番組の映像をディスプレイやテレビモニタに表示するためのテレビチューナ回路を必要とする。一方、通常の携帯情報通信装置のユーザーは、携帯情報通信装置の付属ディスプレイの画面サイズが小さく表示される画質も劣るため、該携帯情報通信装置とは別に画面の大きいテレビ受像機又は「AVパソコン」を有するのが通常である。このため、ユーザーは、携帯情報通信装置におけるテレビチューナ回路とテレビ受像機又は「AVパソコン」におけるテレビチューナ回路の双方を所有することを強いられ、結果として少なくとも一方のテレビチューナ回路の稼働率は低下せざるを得ない。」(【0011】)「地上デジタル放送においては、一つのチャンネルを構成する13セグメントのうち、12セグメント(ハイビジョン放送)又は4セグメント(通常画質の放送)が通常のテレビ受像機向けの放送に割り当てられるのに対し、携帯情報通信装置向けには1セグメントのみが割り当てられる予定であり、この場合、テレビ受像機におけるテレビチューナと携帯情報通信装置におけるテレビチューナは異なる仕様となるため、単純な二重投資は発生しないと考えられる。しかし、電子・情報技術の進歩の結果、携帯情報通信装置の内部に、通常のテレビ受像機が受信すると想定されている12セグメント又は4セグメント放送を受信できるテレビチューナが納められるように可能性も大きく、そのような場合には、現状の技術の延長上では、高価なデジタルテレビチューナに対して、同様の「不合理な二重投資」と「非効率的な資源利用」の問題が生じる。」(【0012】)「このような事情から、携帯情報通信装置の携帯性を損なわないために付属ディスプレイのサイズを現状通りに維持したままで、しかもパソコンを併用することなく、長文の電子メールやパソコン向けウェブページ、娯楽性の高いゲーム、さらにはテレビ番組の映像などを大きな画面で表示すること、特に、長文の電子メールについては、垂直スクロールを繰り返すことなく読めること、パソコン向けウェブページについては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し、しかも水平スクロールを繰り返すことなく閲覧できること、テレビ番組については、テレビ放送における本来画像を全画面表示することが課題とされている。」(【0013】)「このような課題を解決するため、携帯情報通信装置に、該携帯情報通信装置の付属ディスプレイよりも画面が大きい外部ディスプレイ装置(以下、大画面外部ディスプレイ装置と略称する)を接続することにより、大画面外部ディスプレイ装置で画像を表示する技術がいくつか開示されており、そして、それらの技術は、以下の3つのタイプに分類される。第一種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置を何らかの接続ユニットを介して接続するタイプ第二種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置は直接的に接続されるが、その代わり、大画面外部ディスプレイ装置としては、携帯情報通信装置から受信した表示データに各種の処理を施す機能を有する画像表示装置が使用されるタイプ第三種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置は直接的に接続され、しかも、大画面外部ディスプレイ装置としては、携帯情報通信装置との間での何らかのインターフェース手段は備えていることを除けば、テレビモニタ等の汎用的なディスプレイが用いられるタイプ」(【0014】)「このうち、第一種の技術は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4において開示されている。…」(【0015】)「しかしながら、この場合においても、画像や文字を表示するための表示データ処理機能に限って考えれば、携帯情報通信装置側と接続ユニット側で、表示する画面のサイズが異なるということを除けばほぼ同等の機能を有する表示データ処理手段を二重に保有することになる。このため、多かれ少なかれ、パソコンを併用する場合と同様の「不合理な二重投資」と「非効率的な資源利用」の問題は生じることになる。また、現実的には、接続ユニットの購入費は、接続ユニットの販売台数がパソコンの販売台数よりも著しく少ない場合には、パソコンと同程度かそれよりも高くなる可能性がある。」(【0016】)「一方、第二種の技術は、例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9において開示されている。…」(【0017】)「さて、上記で説明した通り、第二種の技術においても、携帯情報通信装置側と大画面外部ディスプレイ装置側でほぼ同等の機能を有する表示データ処理手段を二重に有することになり、結果的に「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題が生じる。また、このような表示データ処理手段を備えた画像表示装置の購入費は、汎用的なCRT(Cathode RayTube)ディスプレイ装置や液晶ディスプレイ装置と比較して確実に高くなるため、この追加コストを考慮すれば、パソコンとの併用や第一種の技術の場合に生じるのと同様の、本来であれば回避すべき不合理な経済的負担が生じる。」(【0018】)「それに対して、第三種の技術は、接続ユニットや特殊な画像処理装置を使用せず、携帯情報通信装置と汎用的な大画面外部ディスプレイ装置だけで構成される。このため、一般的にいって、「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題が、少なくとも第一種の技術や第二種の技術よりは少ないと考えられる。」(【0019】)「この第三種の技術として既に実用化されているものに、いわゆる「テレビ(TV)出力機能」又は「AV出力機能」を有する携帯電話機がある。このような携帯電話機においては、携帯電話機とテレビモニタを、携帯電話機側は携帯電話機に固有の接続端子とし、テレビモニタ側はビデオ端子とするケーブルで接続することにより、該携帯電話機に付属するデジタルカメラ機能を用いて撮影した静止画や動画、あるいは一部のゲームを、携帯電話機の付属ディスプレイよりも大画面であるテレビモニタに表示することができる。しかし、その場合にテレビモニタに表示される画像の解像度は、付属ディスプレイの画面解像度(最大でもQVGA)と同じであるため、該画像は、テレビモニタの中央部に小さく表示されるか、画質の粗い拡大画像が全画面に表示されるかのいずれかである。」(【0020】)「現在のところ、「TV出力機能」又は「AV出力機能」によってテレビモニタに表示されるのは、撮影した静止画や動画、又は一部のゲームに限られているが、仮に、これらの携帯電話機が「フルブラウザ機能」又は「PCサイトビュー機能」を有し、閲覧したパソコン向けウェブページをテレビモニタで閲覧できるようになったとしても、それはあくまでも付属ディスプレイに表示される画面イメージを拡大表示するだけであって、画面イメージの解像度が増えるわけではない。したがって、ウェブページの作成者が本来意図したはずの、パソコンの画面イメージとして実現されるレイアウトでの表示が、テレビモニタにおいて実現できるわけではない。また、仮に、これらの携帯電話機がテレビチューナ機能を有し、受信した映像をテレビモニタに出力できたとしても、テレビ放送における本来画像がテレビモニタに表示されるわけではない。」(【0021】)「したがって、上記の課題を解決するためには、「TV出力機能」又は「AV出力機能」を有する携帯電話機のように、ただ単に付属ディスプレイに表示される画像を大画面外部ディスプレイ装置に拡大表示するという機能を有するに留まらず、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を大画面外部ディスプレイ装置に表示する機能を有する携帯情報通信装置を提供することが必要である。これにより、付属ディスプレイでは自らの画面解像度に相当する部分だけを切り出した部分画像しか表示できなかったり、画素を間引くことによって画質を落とした全体画像しか表示できなかったりした画像を、大画面外部ディスプレイにおいては、その本来の解像度のままの全体画像として表示できるようになる。また、特に、水平方向の画素数が付属ディスプレイの画面水平解像度より大きい画像を大画面外部ディスプレイ装置に表示する機能を有する場合には、一行あたりに表示できる文字数を増やすことができ、その結果、長文の電子メールであっても、何行にもわたって表示され、垂直スクロールを何度も繰り返さなければならないということはなくなる。また、それらの効果が総合されることにより、パソコン向けウェブページも、大画面外部ディスプレイ装置において、パソコンの画面イメージとして実現されるレイアウトで閲覧できるようになる。」(【0022】)
ウ発明が解決しようとする課題「本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、携帯電話機やPDAをはじめとする携帯情報通信装置に大画面外部ディスプレイ装置を接続することにより、より一般的には、携帯情報通信装置に大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続することにより、該大画面外部ディスプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示すること、特に、長文の電子メールについては、垂直スクロールを繰り返すことなく読めること、パソコン向けウェブページについては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し、しかも水平スクロールを繰り返すことなく閲覧できること、テレビ番組については、テレビ放送における本来画像を表示することを、該大画面外部ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生成手段(以下、付属表示データ生成手段と略記する)とは別個に使用することなく、大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の追加と、付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現する携帯情報通信装置を提供する点にある。また、携帯情報通信装置及び大画面外部ディスプレイ装置とともに用いられ、該大画面外部ディスプレイ装置の画面に、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示するための接続ユニットを提供する点にある。さらに、携帯情報通信装置とともに用いられ、自らに付属する大画面外部ディスプレイパネルに、該携帯情報通信装置の付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示する外部入出力ユニットを提供する点にある。」(【0031】)
エ課題を解決するための手段「上記目的を達成するために、携帯情報通信装置に係る第1の発明は、ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータを後記データ処理手段に送信する入力手段と、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記データ処理手段に送信するとともに、後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と、後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ処理手段で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と、前記入力手段から送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読み出したデータに必要な処理を行って、デジタル表示信号及びその他のデジタル信号を生成して送信するデータ処理手段と、画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルAと、前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルAの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段Aとから構成されるディスプレイ手段とを備える携帯情報通信装置であって、外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、又は、外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段A1と、前記データ処理手段で生成されたデジタル表示信号の送信先として、前記ディスプレイ制御手段Aと前記インターフェース手段A1の少なくともいずれか一方を選択して指定する送信先指定手段とを備えるとともに、前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って、前記送信先指定手段がデジタル表示信号の送信先として前記インターフェース手段A1を指定した場合には、該インターフェース手段A1から、高解像度外部表示信号を送信する機能を実現するようにしたものである。なお、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「デジタル表示信号」には、後で詳述する「ビットマップデータ」等のデジタル画像データに直接対応した信号だけでなく、デジタル画像データの生成(描画)を命令する描画命令のデジタル信号も含む。また、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「外部表示信号」とは、周辺装置における外部ディスプレイ手段がそれを受信して適切に処理することにより画像を表示することが可能であるような信号を意味する。そして、表示信号、画像データファイル又は動画信号(以下、表示信号等と略記する)を「適切に処理する」とは、ディスプレイ手段、又は、データ処理手段及びディスプレイ手段が、表示信号等に含まれている画素ごとの論理的な色情報を、ディスプレイ手段の画面を構成する物理的な画素の色表示として過不足なく現実化することを意味しており、より具体的には、物理的な現実化にあたって画素を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり、画素を補間して表示画像の解像度を大きくしたりしないことを意味している。さらに、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「高解像度」とは、表示信号等の本来解像度が前記ディスプレイパネルAの画面解像度(水平画素数×垂直画素数)より大きいことを意味し、特に、「高解像度外部表示信号」とは、本来解像度が前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい外部表示信号を意味する。また、表示信号等の「本来画像」とは、十分な大きさの画面解像度を有するディスプレイ手段、又は、データ処理手段と十分な大きさの画面解像度を有するディスプレイ手段とが、該表示信号等を受信して適切に処理することにより表示される本来の画像を意味し、「本来解像度」とは「本来画像」の解像度を意味する。さらに、本「明細書」及び「特許請求の範囲」においては、「周辺装置における~手段」という表記によって、「周辺装置に含まれた~手段又は周辺装置に接続された~手段」を意味する。」(【0032】)
オ発明の効果「第1乃至第15の発明の携帯情報通信装置においては、携帯情報通信装置のインターフェース手段A1に高解像度外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続して高解像度外部表示信号を送信することにより、該高解像度外部ディスプレイ手段の画面において、携帯情報通信装置に付属するディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する高解像度画像を表示することができる。これにより、付属ディスプレイパネルにおいては、その画面解像度に相当する部分だけを切り出した部分画像しか表示できなかったり、画素を間引くことによって画質を落とした全体画像しか表示できなかったりしたような画像を、高解像度外部ディスプレイ手段においては、その本来の解像度のままの全体画像として表示できるようになる。特に、水平方向の本来の画素数がディスプレイパネルの画面水平解像度より大きい高水平解像度外部表示信号を送信する機能が実現されることにより、該高解像度外部ディスプレイ手段の画面における一行あたりの表示文字数を、付属ディスプレイパネルにおける表示文字数よりも増やすことができる。これにより、例えば、長文の電子メールを読むような場合でも、付属ディスプレイパネルにおけるように何行にもわたって表示され、垂直スクロールを何度も繰り返さなければならないため、理解に困難が伴うというようなことはなくなる。しかも、そのような高解像度外部表示信号の送信は、付属ディスプレイパネルにおいて画像を表示するためにもともと必要であるデータ処理手段と、外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続するために不可欠のインターフェース手段だけによって実現されている。このため、従来の技術のように、携帯情報通信装置に備えられた表示データ処理手段とは別に、外部ディスプレイ手段を含む周辺装置向けの専用の表示データ生成手段を設ける必要はなく、「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題は回避できる。」(【0078】)
カ発明を実施するための最良の形態「(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係る携帯情報通信装置、携帯情報通信装置用接続ユニット、及び両者を接続した上で該接続ユニットに外部ディスプレイ装置及び外部入力装置を接続することによって構成した情報通信システムの構成及び機能を説明するためのブロック図であり、特に、該携帯情報通信装置が携帯電話機である場合について説明している。」(【0111】)【図1】「この実施形態においては、携帯電話機1は、それ単独として、音声通話用、携帯テレビ電話でのコミュニケーション用、データ通信・処理用、テレビ放送番組の視聴用、被写体の撮影用、又は、画像データ及び/又は音声データの保存・再生用として使用することができ、音声通話以外の用途で使用する場合には、各種の画像が、付属ディスプレイパネルであるLCD(Liquid Crystal Display)パネル15Aに表示される。以下では、LCDパネル15AはQVGAサイズの画面解像度を有し、通常は縦長画面(水平画素数×垂直画素数=240×320画素)で使用するものとして説明するが、それ以外の解像度であってもよい。」(【0112】)「次に、携帯電話機1が携帯テレビ電話でのコミュニケーション用に使用される場合には、上で説明した音声データのやり取りに加えて、以下のような画像(動画)データのやり取りが加わる。すなわち、通常は携帯電話機1のユーザー自身である被写体から反射又は放射される光信号は、光学レンズ等で構成される光学系部12Aを経由してCCD12Bに入射し、CCD12Bにおいて画素ごとの電気信号に変換された上で、AD/DA変換部2_12Cでデジタル動画信号に変換され、バス19を経由して中央演算回路1_10A1に送信される。該デジタル動画信号は中央演算回路1_10A1において必要な処理を施され、上記の音声データと同じく、ベースバンドプロセッサ11及びRF送受信部111Bを経由し、通信用アンテナ111Aから電波信号として公衆ネットワークに送信される。なお、以下では、CCD12Bの解像度はSXGAサイズ(水平画素数×垂直画素数=1280×1024画素)であるものとして説明するが、それ以外の解像度であってもよい。」(【0114】)「一方、コミュニケーションの相手先から電波信号(無線動画信号)として公衆ネットワークに送信された画像(動画)データは通信用アンテナ111Aで受信され、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を経由することによりデジタル信号に変換された上で、中央演算回路1_10A1に送信される。中央演算回路1_10A1では、フラッシュメモリ14Aに格納されたプログラムに基づいて必要な処理を行い、該デジタル信号に対応した描画命令をグラフィックコントローラ1_10Bに送信する。グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき、あらかじめ十分な大きさ(以下では、QUXGAWide(Quad Ultra XGA Wide)サイズ(水平画素数×垂直画素数=3840×2400画素)として説明する)の論理解像度を有するように設定された仮想画面におけるビットマップデータを生成し、必要に応じてVRAM(VideoRAM)1_10Cへの書き込み/読み出しを行いつつ、該ビットマップデータをLCDドライバ15Bに送信する。なお、VRAM1_10Cは、[特許請求の範囲]でいうところのビットマップメモリ1にあたる。LCDドライバ15Bは、該ビットマップデータに基づいて、ソース・ドライバ部とゲート・ドライバ部とを作動させることによりLCDパネル15Aの画面を構成する各々の画素を駆動し、最終的にコミュニケーションの相手からの無線動画信号に対応した画像がLCDパネル15Aに表示される。この際、携帯テレビ電話において送受信される無線動画信号の本来画像の解像度は、通常、LCDパネル15Aの画面解像度を上回らないため、LCDパネル15Aには、該本来画像が全画面表示されるか、本来画像がLCDパネル15Aの画面の一部に表示されるか、又は本来画像の解像度はそのままで全画面に拡大表示される。…」(【0115】)「次に、携帯電話機1がデータ通信・処理用に使用される場合、通常は20個前後の小型のキーからなるキー操作部16Aを操作することによって入力され、キー入力コントローラ16Bでデジタル信号に変換されたデータ、及び/又は、インターネットプロトコルに準拠した電波信号を公衆ネットワークから通信用アンテナ111Aで受信し、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を経由することによりデジタル信号に変換されたデータが、バス19を経由して中央演算回路1_10A1に転送される。中央演算回路1_10A1では、フラッシュメモリ14Aに格納されたプログラムに基づいて必要な処理を行い、処理されたデータは、バス19を経由して、フラッシュメモリ14A及びRAM(Random Access Memory)14Bや、グラフィックコントローラ1_10Bや、ベースバンドプロセッサ11に転送される。そして、最終的には、LCDパネル15Aに画像が表示されたり、スピーカ18Bから音声が出力されたり、通信用アンテナ111Aから電波信号が送信されたり、フラッシュメモリ14Aにデータが保存されたりする。なお、インターネットプロトコルに準拠した電波信号の送受信は、音声通信の場合と同様に、各種の通信方式によって実現できる。その際、通信用アンテナ111A、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を複数帯域の電波信号に対応できるようにすることによって、例えば、屋内等の無線LANの基地局・アクセスポイントに近い箇所では高速の無線LAN方式で通信を行い、それ以外の箇所ではCDMA方式等の第3世代移動体通信(セルラーシステム)で通信を行うようなことが実現できる。」(【0116】)「特に、携帯電話機1が、インターネットに接続したウェブサイトにアクセスし、該ウェブサイトを構成するウェブページを閲覧している場合には、中央演算回路1_10A1は、フラッシュメモリ14Aに格納されたブラウザプログラムに従って、通信用アンテナ111A、RF送受信部111B、ベースバンドプロセッサ11及びバス19を経由して、ウェブページを構成するマークアップ文書ファイル及びそのリンクファイルを取得し、ウェブページのレイアウト形式に応じて以下のように描画命令を生成・送信する。すなわち、ウェブページがリキッドレイアウト、又はLCDパネル15Aの画面水平解像度(240画素)よりも狭い固定幅レイアウトを採用していれば、LCDパネル15Aの画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を、ウェブページがLCDパネル15Aの画面水平解像度よりも広い固定幅レイアウトを採用していれば、該固定幅と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を、それぞれ生成し、該描画命令をグラフィックコントローラ1_10Bに送信する。グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき仮想画面におけるビットマップデータを生成しVRAM1_10Cに書き込むとともに、LCDパネル15Aに表示され、LCDパネル15Aの画面解像度と同じ解像度を有する画像を記述するビットマップデータをVRAM1_10Cから切り出してLCDドライバ15Bに送信する。LCDドライバ15Bは、該ビットマップデータに基づいてLCDパネル15Aの画面を構成する各々の画素を駆動し、最終的に前記ウェブページに対応したページ画像の全部又は一部に、必要に応じて画面の上部・下部に表示されるメニュー表示等を組み合わせた全画面画像がLCDパネル15Aに表示される。この際、ページ画像の解像度がLCDパネル15Aの画面解像度より大きい場合には、キー操作部16Aにおいて画面スクロール機能を担うキーを操作することによって入力されるデータに応じて、中央演算回路1_10A1が描画命令を変更することにより、VRAM1_10Cから切り出されるビットマップデータは仮想画面上を徐々に遷移し、その結果として、LCDパネル15Aにおいてページ画像がスクロール表示される。」(【0117】)「また、携帯電話機1がテレビ番組の視聴用に使用される場合、テレビ受信用アンテナ112Aで受信したテレビ放送信号は、テレビチューナ112B及びAD/DA変換部1_112Cでデジタル動画信号及びデジタル音声信号に変換され、バス19を経由して中央演算回路1_10A1に送信される。携帯電話機1においては、テレビ番組の画像を、LCDパネル15Aを縦置きにして表示する(→縦長画面(水平画素数×垂直画素数=240×320画素))か、横置きにして表示する(→横長画面(水平画素数×垂直画素数=320×240画素))かを、キー操作部16Aを操作することによって選択することができ、中央演算回路1_10A1は、この選択に対応した入力信号及び前記デジタル動画信号に基づき、LCDパネル15Aに表示される画面イメージ(ただし、縦長画面の場合、上部及び/又は下部に非表示領域が生じた画面イメージ)のビットマップデータを作成する描画命令を生成し、該描画命令をグラフィックコントローラ1_10Bに送信する。この際、テレビ放送における本来画像の水平・垂直画素数は、縦長画面、横長画面のいずれの場合でも、LCDパネル15Aの水平・垂直画素数よりも大きいため、描画命令の生成にあたっては、AD/DA変換部1_112Cから送信されるデジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度の低い画像の全体画像の描画命令を生成する。グラフィックコントローラ1_10B、VRAM1_10C及びLCDドライバ15Bの動作は、キー操作部16Aの操作に従った画像のスクロールがないことを除けば、ウェブページのページ画像を表示する場合と同様であり、結果として、LCDパネル15Aにテレビ放送の動画がリアルタイムで表示される。 …」(【0118】)「また、携帯電話機1が被写体の撮影用に使用される場合、被写体から反射又は放射される光信号は、携帯テレビ電話でのコミュニケーションの場合と同じ経路でデジタル動画信号に変換され中央演算回路1_10A1に送信される。また、中央演算回路1_10A1、グラフィックコントローラ1_10B、VRAM1_10C及びLCDドライバ15Bは、テレビ放送番組を視聴する場合と同様に動作し、結果として、LCDパネル15Aに被写体の映像(動画)がリアルタイムで表示される。この際、CCD12Bによって撮像される本来画像の水平・垂直画素数は、縦長画面、横長画面のいずれの場合でも、LCDパネル15Aの水平・垂直画素数よりも大きいため、中央演算回路1_10A1が描画命令を生成する際には、AD/DA変換部2_12Cから送信されるデジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度の低い画像の全体画像の描画命令を生成する。」(【0119】)「以上が携帯電話機1をそれ単独として使用する場合の機能の概略であるが、携帯電話機1は、接続ユニット3と接続するための外部接続端子部A_13Dを備えており、外部接続端子部A_13Dと、接続ユニット3に備えられたインターフェース部B_33を構成する外部接続端子B_33Dとを接続ケーブル2を介して接続することにより、携帯電話機1と接続ユニット3を一体的な情報通信システムとして動作させることができるようになる。」(【0121】)「一方、接続ユニット3は、周辺装置と接続するためのインターフェース部C1_35とインターフェース部C2_36を備えており、インターフェース部C1_35には、LCDである外部ディスプレイ装置が、インターフェース部C2_36には、フルキーボードである外部キーボード61とマウス62が、それぞれ接続されている。…以下では、原則として、外部ディスプレイ装置(LCD)の画面解像度は、VGAサイズ(水平画素数×垂直画素数=640×480画素)であるものとして説明するが、それ以上の解像度であってもよい。」(【0122】)「さて、…作動中の携帯電話機1を接続ユニット3に接続し、接続ユニット3を起動させた場合、あるいは携帯電話機1を作動中の接続ユニット3に接続し、携帯電話機1を起動させた場合に、携帯電話機1の中央演算回路1_10A1は、接続ユニット3から、接続ユニット3が接続していることを検知する信号(以下、接続検知信号と略記)、及び接続ユニット3のインターフェース部C1_35に接続された外部ディスプレイ装置の画面解像度データを、外部接続端子部B_33D、接続ケーブル2、外部接続端子部A_13D及びバス19を経由して受信する。そして、携帯電話機1の中央演算回路1_10A1が前記接続検知信号を受信した場合、中央演算回路1_10A1は、LCDパネル15Aの画面水平解像度又は画面解像度に対応した画像の描画命令に替えて、以下で説明するように、LCDパネル15Aの画面解像度より大きな解像度を有する画像の描画命令を生成し、グラフィックコントローラ1_10Bに対して送信する。また、中央演算回路1_10A1は、上記の描画命令とともに、VRAM1_10Cから切り出したビットマップデータを、LCDドライバ15Bに送信する替わりに、TMDSトランスミッタ13Aに送信するように命令する送信命令を生成し、該送信命令をグラフィックコントローラ1_10Bに送信する。」(【0123】)「まず、インターネットに接続したウェブサイトにアクセスし、該ウェブサイトを構成するウェブページを閲覧している場合には、中央演算回路1_10A1は、フラッシュメモリ14Aに格納されたブラウザプログラムに従い、ウェブページのレイアウト形式に応じて以下のように描画命令を生成・送信する。すなわち、ウェブページがリキッドレイアウト、又は外部ディスプレイ装置の画面水平解像度(640画素)よりも狭い固定幅レイアウトを採用していれば、外部ディスプレイ装置の画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を生成・送信し、ウェブページが外部ディスプレイ装置の画面水平解像度よりも広い固定幅レイアウトを採用していれば、該固定幅と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を生成・送信する。一方、テレビ放送を視聴している場合及び被写体を撮影している場合には、それぞれAD/DA変換部1_112C及びAD/DA変換部2_12Cから送信されるデジタル動画信号における本来画像の解像度は、外部ディスプレイ装置における画面解像度より依然として大きいため、中央演算回路1_10A1は、該デジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度を外部ディスプレイ装置の画面解像度に合わせた低画質の全体画像の描画命令が生成・送信される。」(【0124】)「なお、携帯テレビ電話でのコミュニケーションを行っている場合には、携帯テレビ電話における無線動画信号の本来画像の解像度は、LCDパネル15Aの画面解像度を上回らないため、携帯電話機1を接続ユニット3と接続した場合でも、中央演算回路1_10A1からの描画命令が描画を命令する画像の解像度は変わらない。ただし、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演算回路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置の画面解像度(無線動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有する画像の描画命令を生成・送信することができる。」(【0125】)「ところで、外部ディスプレイ装置として、画面解像度がVGAサイズであるようなものに替えて、フルハイビジョンテレビモニタ(水平画素数×垂直画素数=1920×1080画素)のように、画面解像度が十分に大きい(ただし、あらかじめ設定された仮想画面の論理解像度(3840×2400画素)よりも小さい)ものを使用する場合には、中央演算回路1_10A1が生成・送信する描画命令は、以下のように変わる。まず、ウェブページを閲覧している場合には、ほとんどのウェブページは、仮に固定幅レイアウトを採用している場合でも該固定幅が外部ディスプレイ装置の画面水平解像度を超えることはないため、中央演算回路1_10A1においては、外部ディスプレイ装置の画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令が生成・送信される。次に、テレビ放送を視聴している場合、又は被写体を撮影している場合にも、デジタル動画信号における本来画像の解像度は、外部ディスプレイ装置の画面解像度を超えることはないため、中央演算回路1_10A1においては、デジタル動画信号における本来画像の描画命令が生成・送信される。その際、視聴しているテレビ放送がアナログテレビ放送である場合や、この説明で想定しているようにCCD12Bの解像度(1280×1024画素)がフルハイビジョンサイズ(1920×1080画素)より小さい場合には、描画命令が生成される本来画像の解像度は外部ディスプレイ装置の画面解像度より小さくなるが、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演算回路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置の画面解像度(デジタル動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有する画像の描画命令を生成することができる。」(【0126】)「グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_10A1から受信した描画命令に基づき、あらかじめ設定された仮想画面上においてビットマップデータを生成し、VRAM1_10Cに書き込む。さらに、グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_10A1から入手した外部ディスプレイ装置の画面解像度データに基づき、外部ディスプレイ装置の画面解像度と同じ解像度を有し、外部ディスプレイ装置の画面に表示される画像を記述するビットマップデータをVRAM1_10Cから切り出す。その上で、中央演算回路1_10A1から受信した送信命令に基づき、該ビットマップデータをTMDSトランスミッタ13Aに送信し、TMDSトランスミッタ13Aは、該ビットマップデータを、外部接続端子部A_13Dを経由して接続ユニット3のインターフェース部B_33にTMDS伝送方式で送信する。」(【0127】)「接続ユニット3においては、インターフェース部B_33で受信・転送されたビットマップデータを、TMDSレシーバ機能を有するインターフェース部C1_35で受け入れて、必要な処理を行った上で外部ディスプレイ装置に送信し、結果として、外部ディスプレイ装置の画面において、その画面解像度に対応した解像度を有する画像が表示される。その際、リキッドレイアウト、又は外部ディスプレイ装置の画面水平解像度よりも狭い固定幅レイアウトを採用しているウェブページを閲覧している場合には、ページ画像の水平方向の全体が表示され、水平方向のスクロールを行う必要はないが、外部ディスプレイ装置の画面水平解像度よりも広い固定幅レイアウトを採用しているウェブページを閲覧している場合には、外部ディスプレイ装置の画面には、ページ画像は水平方向の一部だけが表示されることになり、水平スクロールを行うことによってページ画像の全体が閲覧できる。一方、テレビ放送を視聴している場合、又は被写体を撮影している場合には、デジタル動画信号の本来画像よりも解像度の低い画像が全画面表示される。」(【0128】)「ただし、外部ディスプレイ装置として、上記のようにフルハイビジョンテレビモニタのような高解像度ディスプレイ装置を採用している場合には、外部ディスプレイ装置に表示される画像は、以下のように変わる。まず、ウェブページを閲覧している場合には、上記の理由により、ほとんどのウェブページのページ画像はその水平方向の全体が表示され、水平スクロールすることなく閲覧できる。次に、テレビ放送を視聴している場合、被写体を撮影している場合には、又は携帯テレビ電話でのコミュニケーションを行っている場合には、上記のように、通常のケースでは、中央演算回路1_10A1においてデジタル動画信号における本来画像の描画命令が生成・送信されることに対応して、外部ディスプレイ装置の画面には本来画像が表示される。その際、外部ディスプレイ装置又は接続ユニット3におけるインターフェース部C1_35がアップスキャンコンバート機能を有する場合には、該本来画像が外部ディスプレイ装置の画面全体にわたって表示され、そうでない場合には、画面の中央部分、又は四隅のいずれかに偏った部分だけが表示領域となって、それ以外の部分は非表示領域となるような形態で表示される(ただし、ハイビジョンテレビ放送を視聴し、外部ディスプレイ装置がフルハイビジョンモニタである場合には、インターフェース部C1_35がアップスキャンコンバート機能を有しない場合でも、本来画像が外部ディスプレイ装置の画面全体に表示される)。いずれの場合も外部ディスプレイ装置の画面に表示される画像の解像度は本来解像度のままで変わらない。一方、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演算回路1_10A1がそれに従って作動しているケースでは、外部ディスプレイ装置の画面解像度と同じ解像度を有する画像の描画命令を生成・送信する場合には、本来解像度よりも解像度の大きい画像が、外部ディスプレイ装置の画面全体にわたって表示される。」(【0129】)「なお、画像データを外部ディスプレイ装置の画面で再生する場合にも、中央演算回路1_10A1、グラフィックコントローラ1_10B及びTMDSトランスミッタ13A等の機能は、基本的には他の用途における機能と同じである。画像データの本来画像の解像度と外部ディスプレイ装置の解像度の大小関係、補間プログラムの有無、さらには外部ディスプレイ装置又は接続ユニット3がマルチスキャン機能を有しているか否かと等に応じて、本来画像、本来画像から画素が間引かれることによって低解像度となった画像、又は本来画像に画素が補間されることによって高解像度となった画像が、外部ディスプレイ装置の画面全体にわたって表示されたり、画面の中央部分、又は四隅のいずれかに偏った部分の表示領域に表示されたりする。」(【0130】)「なお、グラフィックコントローラ1_10Bで生成されたビットマップデータの送信先の指定(切り替え)や、中央演算回路1_10A1に対するデータの入力元の指定(切り替え)は、上記のように、受信した接続検知信号に基づいて自動的に行われるだけでなく、例えば、携帯電話機1のキー操作部16Aのマニュアル操作によって行うような構成とすることも可能である。また、外部ディスプレイ装置に出力されるビットマップデータが記述する画像の解像度の指定は、上記のように、受信した外部ディスプレイ装置の画面解像度データに基づいて自動的に行われるだけでなく、例えば、LCDパネル15A又は外部ディスプレイ装置の画面に解像度の選択肢を示す画像を表示し、外部キーボード61又はマウス62によって外部ディスプレイ装置の画面解像度に適合した解像度を選択する仕方で行うような構成とすることもできる。あるいは、そのような選択手段は設けず、外部ディスプレイ装置に出力されるビットマップデータが記述する画像の解像度を、例えばVGAサイズに固定することも可能である。」(【0133】)
⑵ 本件発明の技術的特徴
ア本件明細書等の上記記載によれば、従来技術における携帯電話機等は、今後画像表示機能の重要性が増すことになるのに、携帯性が重視されるため、大画面のディスプレイを付属させることができず、そのために別途パソコンを用意すると、「不合理な二重投資」と「非効率的な資源利用」が生じ、従来技術のように大画面の外部ディスプレイを接続しても、携帯電話機等の有するものと同等の表示データ処理手段を二重に備える「不合理な二重投資」と「非効率的な資源利用」が生ずることになり、他方、これを避ける従来技術は、携帯電話等の付属ディスプレイの画面解像度と同じ解像度の画像を外部ディスプレイに表示するものにすぎず、大画面の外部ディスプレイには、パソコンの画面で実現されるレイアウトなどを表示させることができないという課題があったことが認められる。
イ本件発明は、前記アの課題を解決するために、構成要件AないしIの構成を採用し、携帯電話等の付属ディスプレイに画像を表示させるために必要な表示データ生成手段とは別個に、専用の表示データ生成手段を二重に備えることなく、携帯電話等に接続される外部ディスプレイに対し、前記付属ディスプレイの画面解像度よりも大きい解像度を有する画像データを表示させるためのデジタル信号を送信する機能を実現するという作用効果を奏するものであるということができる。
2争点1-1(被告製品のモバイルプロセッサが、構成要件Dの「処理」をするものに当たるか。)について
⑴ 構成要件Dの「処理」の意義
ア本件発明の特許請求の範囲によれば、構成要件Dにおいて、「中央演算回路」は、「無線通信手段から受信したデジタル信号」に対し、リアルタイム又は非リアルタイムによる「処理」をし、「デジタル表示信号」を生成するものであり、「グラフィックコントローラ」は、その「処理結果」に基づき、「VRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出し」をし、「ディスプレイ制御手段」又は「インターフェース手段」に送信するものであることが記載されている。
イそして、本件明細書等の記載によれば、「デジタル表示信号」とは、「「ビットマップデータ」等のデジタル画像データに直接対応した信号だけでなく、デジタル画像データの生成(描画)を命令する描画命令のデジタル信号」を含むものであり(【0032】)、「グラフィックコントローラ」は、「中央演算回路」から送信された「描画命令」から十分な大きさの「仮想画面におけるビットマップデータを生成し」、VRAMに「書き込み/読み出し」をすることが記載されている(【0115】)。
ウ上記の各記載によれば、構成要件Dの「処理」とは、「無線通信手段から受信したデジタル信号」から「ビットマップデータ」等のデジタル画像データに直接対応したデジタル信号又はデジタル画像データの描画命令に係るデジタル信号を生成し、そのような「処理」の「結果」に基づき、デジタル信号の送信を受けた「グラフィックコントローラ」が、「VRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出し」を可能とするものであると解するのが相当である。
⑵ 被告の主張について
ア被告は、「グラフィックコントローラ」が、構成要件Hにおいて、「本来解像度」の外部表示信号を送信するための「書き込み/読み出し」をするためには、「グラフィックコントローラ」を受信する構成要件Dの「処理」の結果は、画素を間引いたり、補間したりしたものであってはならず、当該「処理」は、本件明細書等の段落【0032】にいう「適切に処理する」という意味に限定される旨主張する。しかし、構成要件Dの記載によれば、「適切に処理する」という文言は採用されておらず、かえって、本件明細書等の記載(段落【0124】、【0126】)によれば、外部ディスプレイにも収まらない画素数を有する画像を取り扱う場合について、画素を間引いたり、補間したりする処理をすることが記載されている。しかも、被告の主張を前提とすれば、「適切に処理する」場合には、グラフィックコントローラは「本来解像度」のビットマップデータを読み出すことになるのに、構成要件Hには、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出すと記載されており、「本来解像度」のビットマップデータを読み出すものとは記載されていない。そうすると、被告の主張は、本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書等の各記載に整合するものとはいえない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
イ被告は、画素を間引いたり、補間したりしていない「処理」であるからこそ、本件明細書等の段落【0078】に記載された「高解像度外部ディスプレイ手段においては、その本来の解像度のままの全体画像として表示できるようになる」という本件発明の作用効果が奏されると主張する。しかし、当該記載は、全ての場合において、本来の解像度の画像を表示すべきことをいうものと理解することはできず、むしろ、本件明細書等の記載(【0124】、【0126】)には、外部ディスプレイにも収まらない画素数を有する画像を取り扱う場合について、画素を間引いたり、補間したりする処理をすることが記載されていることは、上記において説示したとおりである。そうすると、本件明細書等の前記作用効果に係る記載も、被告の主張を裏付けるものとはいえない。のみならず、そもそも被告が指摘する本件明細書等の段落【0032】の「適切に処理する」に係る記載は、本件発明の「外部表示信号」が、外部ディスプレイ手段において、画素を間引いたり、補間したりせず、「適切に処理する」ことで「物理的な画素の色表示として過不足なく現実化」し、画像として表示し得るものであることを説明した部分である。そうすると、当該記載は、外部ディスプレイ手段において、専用の表示データ生成手段を備えることを要しないという本件発明の作用効果(前記1⑵イ)に関わるものであると解するのが相当であり、これが中央演算装置における「処理」を説明する記載であると認めることはできない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
⑶ 被告製品の充足性被告製品のモバイルプロセッサ(中央演算装置)が、「無線通信手段から受信したデジタル信号」からデジタル画像データに直接対応したデジタル信号又はデジタル画像データの描画命令のデジタル信号を生成し、当該デジタル信号に基づき、被告製品の液晶コントローラIC又はモバイルプロセッサのGPU機能(グラフィックコントローラ)が、「VRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み込み」をしていることについては、当事者間において格別争いがなく又は弁論の全趣旨から認めることができる。そうすると、被告製品のモバイルプロセッサは、構成要件Dの「処理」をするものに該当するというべきである(ただし、被告製品のモバイルプロセッサのGPU機能が、「グラフィックコントローラ」に当たるか否かは、争点1-3で検討する。)。
3争点1-2(被告製品の画像データを保持するメモリが、構成要件D及びHの「単一のVRAM」に当たるか)について
⑴ 本件発明の「単一のVRAM」の意義
ア本件発明の特許請求の範囲の記載によれば、本件発明の「単一のVRAM」とは、「グラフィックコントローラ」が、「中央演算回路」から得た「処理結果」に基づき、「ビットマップデータの書き込み/読み出し」をするものであり(構成要件D)、「ディスプレイ制御手段」に送信するデジタル信号を生成する「ビットマップデータ」及び「インターフェース手段」に送信するデジタル信号を生成する「ビットマップデータ」を読み出すことができるものであると認めることができる(構成要件H)。
イそして、本件明細書等には、「VRAM」が「単一」であることに係る直接的な記載はないものの、【図1】によれば、「中央演算回路1」から、「グラフィックコントローラ1」、「VRAM1」の順に通信がされ、「グラフィックコントローラ1」が「VRAM1」から読みだしたデータが、①「LCDドライバ」を経由し、「LCDパネル15A」に至る場合に加え、②「接続ケーブル」等を経由し、「外部ディスプレイ装置(LCD)」に至る場合があることが認められる。
ウ他方、本件明細書等には、本件発明の課題は、「大画面ディスプレイ手段」(外部ディスプレイ装置(LCD))の「専用の表示データ生成手段」について、「付属ディスプレイ」(LCDパネル15A)に「もともと必要である表示データ生成手段」とは「別個」に使用せず、「大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の追加」と「もともと必要である表示データ生成手段」に「若干の機能追加」だけで、これを実現することにある旨の記載がある(【0031】)。
エ上記認定事実及び本件明細書の記載のほか、「VRAM」は、ディスプレイに表示する画像データを一時的に蓄積するためのメモリというハードウェアに係る用語である上(甲14)、その他の「VRAM」に関する技術常識を踏まえると、構成要件D及びHの「単一のVRAM」とは、付属ディスプレイに係る「ディスプレイ制御手段」(構成要件E)のためのメモリとは物理的に別個の部品として、外部ディスプレイに係る「インターフェース手段」(構成要件F)のためのメモリを備えないことをもって、両者が「単一」であると解するものと認めるのが相当である。
⑵ 被告の主張について
アこれに対し、被告は、本件発明の「単一のVRAM」とは、「グラフィックコントローラ」が、「ディスプレイ制御手段」に送信するデジタル信号を生成する「ビットマップデータ」と「インターフェース手段」に送信するデジタル信号を生成する「ビットマップデータ」とが、共通のメモリ領域から「切り出される」ことをいうと主張する。しかし、上記技術常識等を踏まえると、ディスプレイに表示する画像データを一時的に蓄積するために用意されたメモリ空間のうち、一定の「ビットマップデータ」等が記憶された領域を「VRAM」と称し、そのようなメモリ領域ごとに複数の「VRAM」が存在し得るように表現することが、「VRAM」という用語の一般的な用法であることを認めるに足りる証拠はない。実質的にも、被告の主張は、単一の記憶領域の中の複数の部分領域をそれぞれ独立した記憶領域とみなすものにすぎず、被告の主張を前提としても、物理的に別個の部品といえないことは明らかであり、被告の主張は、上記判断を左右するに至らない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
イ被告は、本件明細書等の実施例の記載を根拠に、本件発明は、VRAM上に大きい「仮想画面」のビットマップデータを書き込み、そのビットマップデータから付属ディスプレイ用のビットマップデータや外部ディスプレイ用のビットマップデータを「切り出す」ものであるから、その「仮想画面に係るメモリ領域を「単一」とするものであると主張する。しかし、本件明細書等の段落【0123】には、外部ディスプレイが接続された場合、「中央演算回路」は、「LCDパネル15A」(付属ディスプレイ)の「画面水平解像度又は画面解像度に対応した画像の描画命令に替えて」、「LCDパネル15Aの画面解像度より大きな解像度を有する画像の描画命令を生成し」、「グラフィックコントローラ」に送信することが記載されているにとどまるから、本件発明の前記実施例が、当然に、「単一」の「仮想画面」に係るビットマップデータを付属ディスプレイ及び外部ディスプレイのために共用するものと認めることはできず、前記実施例は、被告の主張の理由となるものとはいえない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
⑶ 被告製品の充足性
ア被告製品が、付属ディスプレイに表示する画像データを保持するVRAMとして、液晶コントローラIC内のVRAM又はモバイルプロセッサの外部SDRAMを備え、これらが外部ディスプレイに表示する画像データを保持するものであるから、これとは物理的に別個の部品からなるVRAMを備えないことは、当事者間に格別争いはない。したがって、被告製品の「VRAM」は、構成要件D及びHの「単一のVRAM」を備えるというべきである。
イこれに対し、被告は、被告製品においては、付属ディスプレイに表示する画像データと外部ディスプレイに表示する画像データとで別個のメモリ領域を使用し、これを共用していないと主張する。しかし、既に説示した「単一のVRAM」の意義によれば、被告の当該主張は、「単一のVRAM」の内で別個のメモリ領域を使用しているというにすぎず、物理的に別個の部品とまでいうことはできないから、前記アの充足性に係る判断を左右するものとはならない。
ウまた、被告は、被告製品2の外部SDRAMは、マルチチップ・パッケージあり、複数の部品から構成されていると主張するが、これは、複数のSDRAMを樹脂で固め、単一の部品として機能するようにしたものであるから、物理的に別個の部品ということはできず、また、付属ディスプレイのためのVRAMと外部ディスプレイのためのVRAMを物理的に別個に備えるものでもないから、前記アの充足性に係る判断を左右するものとはいえない。
4争点1-3(被告製品2が、構成要件Dの「中央演算回路」及び「グラフィックコントローラ」を共に備えているか。)について
⑴ 証拠(甲9、11、12)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品2のモバイルプロセッサは、「中央演算回路」に相当するCPU回路に加え、これと区別され、「グラフィックコントローラ」の機能を実現するGPU回路を有することが認められる。このような場合には、画像データや描画命令は、CPU回路からGPU回路に渡され、GPU回路は、画像データをVRAMに蓄積し、付属ディスプレイ等に信号を送信する等の役割を果たすことが通常であって、これを覆すに足りる立証はない。そうすると、被告製品2は、そのモバイルプロセッサ内に構成要件Dの「中央演算回路」及び「グラフィックコントローラ」を共に備えていると認めるのが相当である。
⑵ これに対し、被告は、被告製品2は「中央演算回路」と「グラフィックコントローラ」とが物理的に分離した部品となっていないから、これらを共に備えないと主張する。しかし、本件特許発明の範囲の記載において、両者が物理的に別個の部品であることを特定するような部分はない。そして、本件明細書等の【図1】には、「中央演算回路」と「グラフィックコントローラ」とに別個の符号が付されているものの、これは実施例を説明したものにすぎず、本件明細書等においても、両者が物理的に別個の部品であることを必須とするような記載はない。そうすると、両方が1個の部品を構成していることは、前記⑴の判断を左右するものではない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
5争点1-4(被告製品2における画像の処理方法が、構成要件Hに規定されるものと一致するか。)について
⑴ 証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品2は、無線通信手段から得た画像データを外部SDRAM(VRAM)に1280×720画素の画像データをとして蓄積し、①これを付属ディスプレイ(1280×720画素)に表示する場合は、当該画像データ(1280×720画素)に係る信号を付属ディスプレイ側に送信し、②例えば、これを1920×1080画素の外部ディスプレイに表示する場合は、これを1920×1080画素に補間処理した画像データに係る信号を外部ディスプレイ側に送信するものであると認めることができる(甲6・14頁、別紙2)。そうすると、被告製品2は、①「前記ディスプレイパネル」(付属ディスプレイ)の「画面解像度と同じ解像度」(1280×720画素)を有する画像のビットマップデータを「ディスプレイ制御手段」(付属ディスプレイ側)に送信する機能と、②「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度」(1920×1080画素)を有する画像のビットマップデータを「インターフェース手段」(外部ディスプレイ側)に送信する機能を有するものであると認めることができる。したがって、被告製品2は、構成要件Hを充足するというべきである。
⑵ これに対し、被告は、本件発明が、構成要件HにおけるVRAMからのビットマップデータの「読み出し」においても、画素を間引いたり、補間したりするものであってはならないことを前提に、被告製品が、画素を補間する処理している以上、構成要件Hを充足しないと主張する。しかし、構成要件Hは、「読み出し」に当たり、画素を間引いたり、補間したりしないことを規定するものではなく、本件発明が、画素を間引いたり、補間したりする構成を必ずしも排除しないことは、争点1-1において説示したとおりである。したがって、被告の主張は、採用することができない。
6争点2-1(乙1発明による新規性又は進歩性の欠如)について
⑴ 乙1公報の記載事項
ア乙1公報には、次のとおりの記載があることが認められる。特許請求の範囲「内蔵された内部表示装置における表示以外に、外部表示装置を接続して表示させることが可能な携帯情報処理装置において、前記内部表示装置と、前記内部表示装置よりも高解像度の前記外部表示装置に表示させる表示データを格納する表示メモリと、前記内部表示装置による内部表示と、前記外部表示装置による外部表示とをそれぞれ制御して、前記表示メモリに格納された表示データに応じた画面を表示させる表示コントローラと、前記内部表示装置による内部表示の内容を選択的に前記外部表示装置に表示させる表示制御手段とを具備したことを特徴とする携帯情報処理装置。」(【請求項1】)従来の技術「一般に、携帯情報処理装置は、携帯性を確保するために装置の小型化が要求され、それに伴って出力装置として内蔵した表示デバイスの表示サイズも小さくなってしまうため、例えば特開平8-115063号に開示されているように、大きな表示サイズでの表示を可能とするために外部表示機器であるCRTを接続可能な機能が設けられている。」(【0002】)「携帯情報処理装置は、外部表示機器を接続した場合、内蔵した表示デバイスにおいて表示する描画イメージと同じ描画イメージを外部表示機器において表示させる。」(【0003】)発明が解決しようとする課題「従って、外部表示機器を用いた場合には、画面の物理的な表示サイズが大きくなるだけであって、外部表示機器の解像度が内蔵した表示デバイスの解像度よりも高く、より多くの情報を表示可能であったとしても、同じ情報を提供するだけとなっていた。」(【0005】)「つまり、従来の携帯情報処理装置では、内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の外部表示機器を利用することで生じる、より広い画面表示サイズを有効に利用することができなかった。」(【0006】)「本発明は前記のような事情を考慮してなされたもので、外部表示機器における表示を有効に活用することが可能な携帯情報処理装置及び外部表示出力の制御方法を提供することを目的とする。」(【0007】)課題を解決するための手段「本発明は、内蔵された内部表示装置における表示以外に、外部表示装置を接続して表示させることが可能な携帯情報処理装置において、内部表示装置における内部表示用の表示データを格納するための領域と、内部表示装置よりも高解像度の外部表示装置における外部表示用の表示データを格納するための領域を表示メモリに確保し、内部表示用の表示データを選択的に外部表示用の領域に格納することで、解像度の違いによる外部表示装置における表示領域を有効に利用できるようにしている。」(【0008】)発明の実施の形態「図1は、本実施形態における携帯機器2を用いたシステムの概略を示す図である。…」(【0010】)「図2は、図1に示す携帯機器2のシステム構成を示すブロック図である。…」(【0011】)【図1】【図2】「…本実施形態における携帯機器2は、CPU10、システムメモリ(DRAM)12、ROM14、入力装置16、表示メモリ18、表示コントローラ20、及び内部表示装置22を有して構成されている。また、携帯機器2は、表示コントローラ20を介して、外部表示装置24(図1中に示す外部表示デバイス4)を接続して表示させることができる。」(【0012】)「CPU10は、システム全体の制御を司るもので、システムメモリ12やROM14に格納されたプログラム、例えば表示制御に関係するOS(オペレーティングシステム)、表示描画プログラム、デバイスドライバ等に従って各種の制御を実行する。」(【0013】)「システムメモリ12は、プログラムやデータ等の一時使用の記憶領域として使用される。ROM14は、プログラム等の本体の記憶領域として使用される。」(【0014】)「入力装置16は、画面の座標位置等入力するペン(タブレット)やマウス等のポインティングデバイス、文字等を入力するキーボードなどにより構成される。表示メモリ18は、内部表示装置22及び外部表示装置24において表示させる表示データの記憶領域として使用される。表示メモリ18の記憶領域の制御については後述する。」(【0015】)「表示コントローラ20は、内部表示装置22及び外部表示装置24における表示を制御するもので、表示メモリ18に格納された表示データに応じて、内部表示装置22と外部表示装置24に対して異なる画面を表示させることができる。」(【0016】)「内部表示装置22は、携帯機器2に予め内蔵されたLCD等によって構成される表示デバイスであり、携帯機器2の筐体のサイズに応じて比較的、表示サイズが小さい表示装置である。…」(【0017】)「外部表示装置24は、携帯機器2にケーブル等(無線等による接続も可能)を介して任意に接続されるCRT等によって構成される表示デバイスであり、本実施形態では内部表示装置22よりも表示サイズが大きく、かつ高解像度であるものが用いられるものとする。」(【0018】)「図3は、図1に示す表示コントローラ20の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、表示コントローラ20には、メモリコントローラ20a、レジスタ20b、内部表示用回路2【図3】0c、外部表示用回路20dを含んで構成されている。」(【0019】)「メモリコントローラ20aは、CPUI/F(インタフェース)を経由して入力されるCPU10からの指示に応じて表示制御を行なうもので、表示データのリード/ライトが指示された場合には、この指示に応じて表示メモリ18に対して表示データをリード/ライトし、またレジスタ20bに設定されたアドレスをもとに表示メモリ18から表示データをリードし、内部表示用回路20cを介して内部表示装置22へ、また外部表示用回路20dを介して外部表示装置24へ出力する。なお、メモリコントローラ20aによる表示データの表示メモリ18からのリード、及び出力の処理は一定間隔で繰り返して実行されているので、プログラム(CPU10)が表示メモリ18の表示データ(描画イメージ)を変更すると出力画面にただちに反映される。」(【0020】)「次に、内部表示装置22及び外部表示装置24における描画の動作について説明する。図6は、内部表示装置22及び外部表示装置24で描画を行なうための簡単な流れの仕組みを示す図である。」(【003【図6】3】)「ここでは、システムは定常状態であり、通常の表示、すなわち内部表示装置22における内部表示が行われているものとし、さらに外部表示装置24による外部表示を行わせる。」(【0034】)「まず、外部表示装置24において外部表示させるために、ユーザによって外部表示装置24への表示データ(描画イメージ)の出力方法を指定させる。この出力方法の指定は、例えばアプリケーションプログラム35の実行により提供される機能によって、ユーザからの指示を入力装置16から指定させる。出力方法の指定の内容としては、例えば「内部表示と同じ描画イメージを表示する」、「内部表示と異なった描画イメージを表示する」といった指定があるものとする。」(【0035】)「アプリケーション35によって出力方法の指定が入力されると、OS38の制御のもとで、内部表示用と外部表示用のそれぞれの描画プログラム(以下、内部表示ドライバ36、外部表示ドライバ37)に従って、表示コントローラ20に対してユーザからの指定の設定、すなわち内部表示と外部表示に用いる表示データ(描画イメージ)を示すアドレスを表示コントローラ20内のレジスタ20bに設定する。」(【0036】)「一方、アプリケーションプログラム35は、内部表示装置22と外部表示装置24において描画させるイメージ、すなわち内部表示イメージと外部表示イメージの2種類を、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表示メモリ18上にライトする。」(【0037】)「表示コントローラ20は、アプリケーションプログラム35によってライトされた内部表示イメージと外部表示イメージに応じて、内部表示装置22と外部表示装置24に対して、それぞれに応じた描画イメージを表示させる。」(【0038】)【図7】「図7は、前述のようにして内部表示イメージと外部表示イメージがライトされる、表示メモリ18の使用方式の一例を示す図である。図7(a)に示す例は、解像度の異なる内部表示装置22(低解像度)と外部表示装置24(高解像度)に対して、表示メモリ18の表示エリアの一部を共有させることを示している。」(【0039】)「次に、前述した基本構成をもとにして実行される、本発明における
第1~第5の特徴的な機能について説明する。(第1機能:外部表示エリアへ表示データをコピーするコピー機能)コピー機能では、前述した図1~5までの基本構成で、例えば内部表示デバイス(内部表示装置22)が640×240の解像度、外部表示デバイス(外部表示装置24)が640×480の解像度を持ち、内部と外部でメモリの一部を共有するといった環境の装置(図7(a)参照)において、外部表示エリアに内部・外部共有表示エリアの表示データをコピーすることによって、外部表示装置24において参照したい画面を一時的に表示させることができるようにする。」(【0045】)【図4】【図8】「以下、外部表示エリアへ表示データをコピーするコピー機能の処理の流れについて、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。スタート時点は、図4で説明したシステム定常状態である。ここで、キーボードやペン等の入力装置16の入力を受け付け、指定のキー(コピー実行キー)が打鍵されたか否かを判断する。」(【0046】)「例えばキーボードのキーが打鍵された場合、OSに対して割込みが発生して、キーボード制御プログラムの制御によって、打鍵されたキーを読込む。この読込まれたキーがコピー実行キーであるか否か、すなわち内部表示装置22に表示されているイメージを外部表示装置24に待避させる指示が入力されたかを判断する(ステップB1)。コピー実行キーで無い場合は、キー入力待ちになる。」(【0047】)「一方、コピー実行キーであればコピー実行プログラムを起動する。コピー実行プログラムは、表示コントローラ20を通じて、レジスタ20bに設定されたアドレスをもとに、図9に示すようにし【図9】て、表示メモリ18の内部・外部共有表示エリアをリードして、外部表示エリアへライト(コピー)する(ステップB2)。」(【0048】)「以下、表示ルーチンを実行することで、外部表示装置24には、外部表示エリアにコピーされた表示データ、すなわちコピー実行キーが打鍵されたときに内部表示装置22に表示されていた画面が、例えば画面の下半分の領域において表示される(図7(a)参照)(ステップB3)。」(【0049】)「このようにして、任意のタイミングでコピー実行キーを打鍵することで、内部表示装置22に表示されていた画面を外部表示装置24において表示させることができるので、外部表示装置24において表示された画面を参照しながら、内部表示装置22の表示画面を用いて処理を実行することができる。」(【0050】)「…(第4機能:表示メモリ18のイメージ描画用に使用する領域を動的に確保する方法)内部表示装置22と外部表示装置24の両方において異なる画面を表示する際に、内部表示用と外部表示用の両方の表示データを格納するための領域を表示メモリ18に確保する必要があるが、外部表示を行わない場合には、表示メモリ18の描画に利用されていない領域をプログラムの一時使用領域として使用することで、表示メモリ18を有効に活用できるようにする。…」(【0071】)「(2)外部表示がOFF→ONに変更された場合。まず、表示描画プログラムは、内部表示エリアと内部表示用ワークエリアに記憶されていたデータを一時的にシステムメモリ12へ待避させ、その後、表示メモリ18の内部表示エリアと内部表示用ワークエリアを解放する(ステップE11)。」(【0080】)「次に、表示描画プログラムは、新たに表示メモリ18において、内部表示用の領域(内部表示エリアと内部表示用ワークエリア)を、外部表示がある場合のサイズで確保し(ステップE12)、また外部表示用の領域(外部表示エリアと外部表示用ワークエリア)を確保する(ステップE13)(図15(a))。」(【0081】)【図15】「表示描画プログラムは、システムメモリ12に待避させていた内部表示用のデータを、表示メモリ18に確保した領域、すなわち内部表示エリアと内部表示用ワークエリアのそれぞれに書き戻す(ステップE14)。なお、コピー先の開始アドレスは、元と同じアドレスとする。」(【0082】)「表示描画プログラムは、外部表示用の領域に関する情報(例えば開始アドレス、メモリサイズなど)をシステムメモリ12へ記憶することでOSへ渡す。また、表示コントローラ20に表示を開始するアドレスを設定して表示を行う(ステップE15)。なお、表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のアプリケーションによって指定される。」(【0083】)「なお、上述した実施形態において記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク(フロッピーディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで各種装置に提供することができる。また、通信媒体により伝送して各種装置に提供することも可能である。本装置を実現するコンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、または通信媒体を介してプログラムを受信し、このプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。」(【0103】)発明の効果「以上詳述したように本発明によれば、内部表示装置における内部表示用の表示データを格納するための領域と、内部表示装置よりも高解像度の外部表示装置における外部表示用の表示データを格納するための領域を表示メモリに確保し、内部表示用の表示データを選択的に外部表示用の領域に格納することで、解像度の違いによる外部表示装置における表示領域を有効に利用することが可能となる。」(【0104】)
イ上記の記載によれば、乙1発明は、CPU10、システムメモリ12ROM14、入力装置16、表示メモリ18、表示コントローラ20及び内部表示装置22を有し、表示コントローラ20を介し、外部表示装置24を接続して表示させることができる携帯機器2であって、表示コントローラ20は、内部表示装置22及び外部表示装置24における表示をCPU10からの指示に応じて表示制御し、表示メモリ18は、内部表示装置22及び外部表示装置24に係る表示データの記憶領域として使用され、内部表示用の表示データは、表示コントローラ20を通じ、選択的に外部表示用の表示データの記憶領域に格納され、表示コントローラ20は、表示データのリード/ライトが指示された場合には、この指示に応じて表示メモリ18に対して表示データをリード/ライトし、表示メモリ18からリードされた表示データは、内部表示用回路20cを介して内部表示装置22に、外部表示用回路20dを介して外部表示装置24に出力され、もって、携帯機器2において、高解像度の外部表示装置における表示領域を有効活用することを可能にするものであることが認められる。
⑵ 本件訂正請求の検討被告は、本件発明について、乙1発明による新規性及び進歩性欠如の無効理由があると主張するのに対し、原告は、本件訂正請求による訂正の再抗弁を主張している。そして、本件訂正請求については、これを認める審決(甲28)がされている経緯に鑑み、以下、訂正の再抗弁から検討する。
ア本件訂正請求の適法性被告は、本件訂正発明の構成要件G’が、無線通信を送受信する手段である「無線通信手段」によって、「高解像度画像受信」という機能を実現することを規定しているのに対し、当初明細書等には、「高解像度画像受信」の機能について、無線通信を受信する手段にすぎない「テレビ受信用アンテナ112A」と「テレビチューナ112B」を利用し、「テレビ放送信号」を受信する場合の例しか記載されていないと主張する。しかし、本件発明の当初明細書等(その発明の詳細な説明及び図面の記載は本件明細書等と異ならないものと認められる。以下同じ。)の段落【0118】に記載された「テレビ受信用アンテナ112A」、「テレビチューナ112B」及び「AD/DA変換部1_112C」は、無線信号を受信し、これを処理するのであるから、それ自体、「無線通信手段」であると認められるものである。他方、段落【0117】には、インターネット通信に利用される「通信用アンテナ111A」、「RF送受信部111B」及び「ベースバンドプロセッサ11」の例が記載されているが、これは無線信号を送受信する「無線通信手段」である。そして、【図1】には、「テレビ受信用アンテナ112A」、「テレビチューナ112B」及び「AD/DA変換部1_112C」と「通信用アンテナ111A」、「RF送受信部111B」及び「ベースバンドプロセッサ11」とを備えた実施例の記載があることからすれば、当該実施例においては、これらが「無線通信手段」を構成するものと認めることができる。そうすると、本件発明の当初明細書等には、「無線通信手段」であって、構成要件Bに特定される送信及び受信の機能を有し、かつ、構成要件G’の「高解像度画像受信」機能を実現する構成が記載されているということができる。また、本件明細書等の段落【0056】においては、「前記無線通信手段は、アナログテレビ放送信号、デジタルテレビ放送信号、携帯テレビ電話信号、インターネットプロトコルに準拠した無線ストリーミング信号のうちの少なくとも1つの無線信号」を受信する発明が記載されており、【図1】と同様に、インターネットプロトコルによる無線通信とテレビ放送信号に係る無線通信とを併用することが想定されているのみならず、「テレビ放送信号」と並列のものとして、「インターネットプロトコルに準拠した無線ストリーミング信号」も記載されているのであるから、本件発明の当初明細書等が「高解像度画像受信」について、「テレビ受信用アンテナ112A」と「テレビチューナ112B」を利用し、高解像度の「テレビ放送信号」を受信する場合の例しか記載されていないということはできない。したがって、被告の主張は、前提を欠くものであり、採用することができない。また、被告は、構成要件G’の「高解像度画像受信」は、「前記ディスプレイ手段」(付属ディスプレイ)に「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を表示する場合を含むと解されるのに対し、当初明細書等には、「LCDパネル15A」(付属ディスプレイ)に、「解像度の低い画像の全体画像」(【0018】)を表示させることしか記載されていないと主張する。しかし、本件訂正発明の特許請求の範囲に相当する記載によれば、構成要件G’の「高解像度画像受信」の機能は、構成要件H’で具体化されていると理解すべきである。そして、構成要件H’は、「前記ディスプレイ手段」に「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を表示させる場合、「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出すと特定するのであるから、構成要件G’に規定された「高解像度画像受信」は、当初明細書等の前記記載の範囲内の訂正に当たるというべきである。したがって、被告の主張は、採用することができない。そうすると、被告の主張を考慮しても、本件訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」に記載した事項の範囲内の訂正であり、適法な訂正請求に当たると認めるのが相当である。
イ本件訂正発明の充足性被告は、構成要件G’の「高解像度画像受信機能」が、「テレビ放送を視聴している場合」に限られることを前提に、被告製品が、高解像度のテレビ放送を視聴するための手段を有しない以上、構成要件G’の「高解像度画像受信機能」を備えないと主張する。しかし、構成要件G’の「高解像度画像受信機能」が、「テレビ受信用アンテナ112A」や「テレビチューナ112B」を利用したものに限られないことは、前記アに説示したとおりである。そして、本件発明の当初明細書等の段落【0018】は、付属ディスプレイの解像度を超える画像を受信する場合の説明として、テレビ放送を視聴する例を挙げていると理解される一方、段落【0017】には、インターネットのウェブサイトの固定幅レイアウトが、付属ディスプレイの解像度を超える場合の記載があり、段落【0126】には、これらを外部ディスプレイに表示する場合の記載があるのであるから、当初明細書等との関係を踏まえても、構成要件G’の「高解像度画像受信機能」は、インターネット通信等の「無線通信手段」で取得した画像データを対象とする場合を含むものと解釈するのが相当である。そうすると、被告製品が、このような機能を実現するための無線通信手段を有していることは明らかである以上、構成要件G’の「高解像度画像受信機能」を備えるというべきである。そして、本件訂正発明のその余の構成要件は、前記に関わる部分のほか、本件発明と実質的に同一であるか又はその充足性に格別争いのないものであるから、被告製品は、本件訂正発明を充足するものと認められる。
⑶ 本件訂正発明と乙1発明の相違点
ア本件訂正発明と乙1発明とは、少なくとも、以下の相違点①ないし④で相違する。(相違点①)本件訂正発明は、「無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段」(構成要件B)を備えているのに対し、乙1発明には「無線通信手段」について特定されていない点(被告の主張する相違点1)(相違点②)本件訂正発明は「携帯情報通信装置」(構成要件K)についての発明であり、「無線通信手段」から「デジタル信号」を受信しているが(構成要件D)、乙1発明は「携帯機器」であって、「情報通信」を行う点が特定されず、CPU10」が、どこから「表示データ」を受信するかについてが特定されていない点(被告の主張する相違点2及び3)(相違点③)本件訂正発明の「インターフェース手段」は、「ビットマップデータを伝達する外部表示信号」を「デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式」(構成要件I)に変換するが、乙1発明では、「伝送方式」について特定されていない点(被告の主張する相違点6)(相違点④)本件訂正発明は、「高解像度画像受信・処理・表示機能」を実現する場合に、「無線通信手段」が、「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」無線信号を受信してデジタル信号に変換し、「中央演算回路」が、当該画像データを処理し、「グラフィックコントローラ」が、単一のVRAMから「ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、デジタル表示信号を「ディスプレイ制御手段」に送信し、また、前記単一のVRAMから「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、デジタル表示信号を「インターフェース手段」に送信するのに対し、乙1発明は、CPU10が、画像データを処理することが特定されておらず、また、「高解像度画像受信・処理・表示機能」に係る機能が特定されていない点(被告の主張する相違点4及び5並びに原告の主張する相違点5’、13、G1及びH1)
イ本件事案に鑑み、まず相違点④を検討するに、被告は、本件発明の優先日当時において、ブラウザなど画像を表示させるアプリケーションが広く知られていたことからすると(周知技術)、当業者が、乙1発明における内部表示装置と外部表示装置の表示内容に関する指定する「上位のアプリケーション」にブラウザを採用し、インターネットに無線接続し、Webサーバから付属ディスプレイパネルの解像度より大きい解像度の画像をダウンロードし、これを表示させることは、容易に想到し得たと主張する。しかし、乙1発明は、内部表示装置よりも高解像度の外部表示装置における表示領域を有効活用するため(【0006】、【0007】)、内部表示用の表示データを「選択的」に外部表示用の表示メモリの領域に格納するというものにとどまり(【0104】)、内部表示装置に内部表示装置の「画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を表示し、外部表示装置に内部表示装置の「画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を表示することを特定するものではなく、内部表示装置で表示した内容について、外部表示装置でより高解像度で表示することを開示するものではない。実際、乙1公報には、内部表示装置が640×240画素の解像度を有し、外部表示装置が640×480画素の解像度を有する場合において(【0045】)、「コピー実行キー」が打鍵されたときは(【0047】)、外部表示装置の下半分に、内部表示装置の表示内容を表示させるという実施例が記載されており(【0048】)、本件訂正発明のような「高解像度画像」を受信し、これを内部表示装置と外部表示装置に異なる解像度で表示するような機能は開示されていない。そうすると、乙1発明において、内部表示装置及び外部表示装置の表示内容を指示する「上位のアプリケーション」として、インターネット・ブラウザを採用し、Webサーバからダウンロードした画像を取り扱わせることが周知技術であったとしても、当業者が、乙1発明及び当該周知技術に基づき、相違点④を容易に想到し得たといえない。したがって、その余の点を検討するまでもなく、乙1発明に基づき、本件訂正発明に進歩性が欠如するとはいえず、そうである以上、新規性が欠如するということもできない。
⑷ 小括以上によれば、乙5発明に基づく進歩性欠如を理由とする無効理由については、少なくとも、本件訂正請求に基づく原告の訂正の再抗弁を採用することができるから、被告の無効の抗弁は理由がない。
7争点2-2(乙5発明による進歩性の欠如)について
⑴ 乙5公報の記載事項
ア乙5公報には、次のとおりの記載があることが認められる。発明の属する技術分野「本発明は、携帯電話機(通信機能搭載のパームトップPCやPDA[PersonalDigital/Data Assistant]などの携帯電子機器を含む)に関するものである。」(【0001】)従来の技術「従来より、携帯電話機の多くは、各種情報(静止画や動画、文字など)を表示する手段として、数インチの表示部(液晶ディスプレイなど)を有して成る。」(【0002】)発明が解決しようとする課題「しかしながら、上記構成から成る携帯電話機では、本体の携帯性を考慮して表示部の設置面積を大きくとれないため、表示内容の視認性や臨場感が乏しい上、ユーザの視力低下を招くおそれがあった。また、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについては、正常に表示することすらできなかった。」(【0005】)「本発明は、上記の問題点に鑑み、本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性や臨場感を向上させることが可能な携帯電話機の提供を第1の目的と…とする。」(【0007】)課題を解決するための手段「上記目的を達成するために、本発明に係る携帯電話機は、入力された情報を外部表示装置で読取可能な画像信号形式に変換して出力する画像出力部を有して成り、前記外部表示装置への情報出力を行う構成としている。このような構成とすることにより、本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性や臨場感を向上させることが可能となる。」(【0008】)「また、上記構成から成る携帯電話機において、前記外部表示装置に出力される情報は、サーバから取得されたWebコンテンツ情報とすればよい。このような構成とすることにより、外部表示装置には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示されることになるので、携帯電話機本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可能となる上、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、正常に表示することが可能となる。また、ユーザは、外部表示装置を通してWebコンテンツ情報を閲覧しながら、携帯電話機本体で良好な音声通話を行うことが可能となる。」(【0012】)発明の実施の形態「図1は本発明に係る携帯電話機の要部構成を示すブロック図である。本図に示すように、本発明に係る携帯電話機1は、制御部10と、送受信部11と、表示部12と、音声部13と、操作部14と、撮像部15と、記憶部16と、画像出力部17と、を有して成る。」(【00【図1】15】)「制御部10は、CPU[Central Processing Unit]等から成り、上記各部11~17を含む装置全体の動作を制御する。送受信部11は、送信回路と受信回路を有して成り、アンテナ11aを介して電波を送受信することで、基地局(不図示)との双方向通信を行う。なお、アンテナ11aとしては、携帯性や格納性に優れたロッドアンテナを用いるとよい。表示部12は、液晶ディスプレイ等から成る情報表示手段である。音声部13は、マイク13aやスピーカ13bを制御する音声入出力手段である。操作部14は、ダイヤルキーやブラウザ操作キー等を備えた入力デバイスである。撮像部15は、CCDカメラやCMOSカメラから成る画像撮影手段である。記憶部16は、ROMやRAMから成る情報格納手段である。本発明の特徴部分である画像出力部17は、入力された情報(静止画や動画、文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば、ビデオ信号形式)に変換して出力するインターフェイス部である。」(【0016】)「次に、上記構成から成る携帯電話機1の特徴動作(外部表示装置2への画像出力動作)について、具体例を挙げながら詳細に説明する。」(【0017】)「第1の具体例は、記憶部16の格納情報(アドレス帳や電子メールの内容等)を外部表示装置2に出力する場合である。この場合、制御部10は、記憶部16から所望の情報を読み出して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求する。該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力する。このような動作により、外部表示装置2には、携帯電話機1の記憶部16から読み出された情報が表示されることになる。従って、外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用いれば、携帯電話機1本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可能となる。」(【0018】)「第3の具体例は、閲覧中のWebコンテンツ情報を外部表示装置2に出力する場合である。この場合、制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求する。該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力する。このような動作により、外部表示装置2には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示されることになる。従って、外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用いれば、携帯電話機1本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可能となる。また、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示することが可能となる。」(【0020】)
イ上記の記載によれば、乙5発明は、制御部10、送受信部11、表示部12、操作部14、記憶部16、画像出力部17などから構成され、そのうち、制御部10は、CPUなどを含み、装置全体の動作を制御し、送受信部11は、送信回路と受信回路を有し、アンテナ11aを介して電波を送受信することで、基地局との双方向通信を行い、表示部12は、液晶ディスプレイ等から成る情報表示手段であり、操作部14は、入力デバイスであり、記憶部16は、ROMやRAMから成る情報格納手段であり、画像出力部17は、入力された静止画や動画、文字などを外部表示装置2で読取可能な画像信号形式に変換して出力するインターフェース部である携帯電話機1であって、制御部10が、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、画像出力部17が、制御部10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力することにより、表示部12より大型のモニタ装置である外部表示装置2において、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示され、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツを表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示することを可能とするものであるということができる。
⑵ 乙6公報の記載事項
ア乙6公報には、次のとおりの記載があることが認められる(ただし、明らかな誤記は訂正している。)。発明の属する技術分野「本発明は、パーソナル・コンピュータを始めとする各種情報処理装置に用いられる表示装置(例えば液晶表示ディスプレイ、CRTディスプレイ)の画面表示を制御するための画面表示制御方法及び装置に係り、特に、解像度が異なる複数の表示装置間で表示信号の出力先を切り換えたときに画面表示を好適に制御するための画面表示制御方法及び装置に関する。更に詳しくは、本発明は、いかなる解像度の表示装置に対しても情報処理装置が好適に画面表示を行うための画面表示制御方法及び装置に関する。」(【0001】発明が解決しようとする課題「最近のPCは、1つの表示装置を標準装備する以外に、他の複数のタイプの表示装置も増設できるようになっている。現在市販されているノートブック型PCの中には、LCDを標準装備しつつ、CRTディスプレイを増設するための出力端子も備え、適宜出力先を切り換えられるようになっているものもある…」(【0005】)「PCが表示信号の出力先を切り換えるときの問題点の1つは、表示装置間での解像度の相違である。…」(【0006】)「表示画面の解像度の制御は、一般には、「ビデオ・アダプタ」と呼ばれる周辺装置が、システム起動前に予め定められている設定内容に基づいて行うようになっている。…もし、ユーザが、LCDからCRTディスプレイへ、あるいはCRTディスプレイからLCDへと、表示出力先を切り換えるに伴って解像度まで変更したい場合には、一旦ユーティリティ・プログラムを起動してCMOSRAM内の情報を書き換えた後、システムをリブートさせなければならない。すなわち手間のかかる作業であった。」(【0007】)「解像度が所与の設定値に固定されたまま、出力先だけを動的に切り換えると、以下のような問題が発生していた。
(1)高解像度の表示装置から低解像度の表示装置に切り換えるとき:LCD、CRTディスプレイそれぞれの表示を制御するLCD表示制御回路及びCRT表示制御回路は、表示タイミングをとるための同期信号を発生するようになっている。ここで、出力先がCRTディスプレイで、且つ解像度を1024×768という高レベルに設定してあるときに、出力先を比較的低解像度(800×600)のLCDに切り換えようとしても、LCD表示制御回路は解像度のギャップを相殺するようにタイミングをとることはできない。LCDはデジタル表示なので、LCD表示制御回路は、画面バッファ中に書き込まれたデジタル画像情報に対応したデジタル表示信号をそのままLCDに送り出すしかないからである。LCD表示制御回路の他に専用のハードウェアを付加しない限りは、デジタル形式の画像情報から走査線を間引いたり画素データを補間したりといった操作を行うことはできない。すなわち、デジタル画像の解像度をソフトウェア的に操作することはできないのである。もしLCDの物理的な表示能力を越えた高解像度のまま表示信号を出力したならば、最悪の場合、ハードウェアを破壊しかねない。…要するに、高解像度の表示装置から低解像度の表示装置に動的に遷移させることはできないのである。
(2)低解像度の表示装置から高解像度の表示装置に切り換えるとき:LCDからCRTディスプレイに出力先を切り換えること自体は可能である。なぜなら、CRTディスプレイはアナログ表示形式なので画素データの補間は比較的容易であり、また、CRT表示制御回路が表示タイミングを調整することによって、画面上に最高解像度を下回る解像度の画面内容を拡大表示させればよいだけだからである。ただし、CRTディスプレイ上の表示画面は、所与の低解像度のままのものが画面いっぱいに拡大されているに過ぎず、解像度を動的に変更することはできない。なぜなら、前述したように、ビデオ・アダプタに設定された最高解像度は、CMOSRAMの内容を書き換え且つ再起動させない限りは、固定されたままだからである。すなわち、表示画面が低解像度から高解像度に動的に遷移することはないのである。…」(【0008】)「本発明は、このような技術的課題に着眼したものであり、その目的は、パーソナル・コンピュータなどの情報処理装置に用いられる表示装置(例えば液晶表示ディスプレイ、CRTディスプレイ)の画面表示を制御するための、優れた画面表示制御方法及び装置を提供することにある。」(【0009】)「また、本発明の更なる目的は、解像度が異なる複数の表示装置間で表示信号の出力先を切り換えたときに画面表示を好適に制御することができる画面表示制御方法及び装置を提供することにある。」(【0010】)「また、本発明の更なる目的は、いかなる解像度の表示装置に対しても情報処理装置が好適に画面表示を行うことができる画面表示制御方法及び装置を提供することにある。」(【0011】)「また、本発明の更なる目的は、表示画面の解像度を動的に切り換えることが可能な画面表示制御方法及び装置を提供することにある。」(【0012】)発明の実施の形態「A.パーソナル・コンピュータ(PC)100のハードウェア構成図1は、本発明の実施に供されるPC(以下、「システム」ともいう)100のハードウェア構成を概略的に示したブロック図である。以下、各部について簡単に説明する。」(【00【図1】27】)「図1において、メイン・コントローラであるCPU10は、オペレーティング・システム(OS)の制御下で、各種プログラムを実行するようになっている。CPU10は、画面表示のためのコンピュータ信号も出力する。また、CPU10は、データ信号線、アドレス信号線、コントロール信号線などを含む共通信号線路(「バス」ともいう)11によって他の周辺機器類と連絡している。…」(【0028】)「ROM13は、製造時に書き込みデータが決められてしまう不揮発性メモリであり、所定のコードを恒久的に格納するために用いられる。ROM13に格納されるコードには、例えば、始動時のテスト・プログラム(POST:Power On Self Test)や、各ハードウェア(後述のビデオ・アダプタ20を含む)を操作するための基本動作命令を集めたプログラム(BIOS:Basic Input/Output System)などが含まれる。」(【0030】)「ビデオ・アダプタ20は、コンピュータ信号をビデオ信号に変換して表示装置(例えばLCD52、あるいはTVモニタ51やCRTモニタ53など)に出力するための周辺機器である。より具体的には、ビデオ・アダプタ20は、CPU10から受け取った描画命令を処理してフレーム・バッファ(VRAM)40に一旦書き込むとともに、表示装置の走査タイミングに同期させてフレーム・バッファ40中から画像情報を順次読み出して、ビデオ信号に変換して表示装置(例えば標準装備されたLCD52)に供給するようになっている。また、ビデオ・アダプタ20は、画面の解像度や発色数、表示速度などをコントロールするようにもなっている。」(【0034】)「フレーム・バッファ40は、WindowsやOS/2、あるいはDOSなどの起動中のソフトウェアが表示する画面を一時書き込むための記憶媒体である。フレーム・バッファ40は、各ドットの持つデータ数に応じた枚数(R、G、B、…)だけプレーン数で構成され、1プレーンのドット・サイズは、ビデオ・アダプタ20が許容する最高解像度に応じた充分な大きさであり、例えば最高解像度のCRTディスプレイ53に対応した1280×1024ドット・サイズである。実際にフレーム・バッファ40に書き込まれる画面サイズは、起動中のソフトウェアにも依存し、例えばWindowsやOS/2が表示可能な最高解像度(すなわちウィンドウ画面)は1024×768である。フレーム・バッファ40中に書き込まれたソフトウェア画面は、表示装置51、52、53(後述)上の現実に映し出された画面ではないことから、「仮想スクリーン」とも呼ばれる。」(【0035】)「TVモニタ51、LCD52、及びCRTディスプレイ53は、システム100に装着可能な、あるいは標準装備された表示装置である。一般には、ノートブック型PCはLCDを、デスクトップ型PCはCRTディスプレイを、それぞれ標準装備しているが、いずれを装備するかということ自体は設計的事項に過ぎない。TVモニタ51やLCD52は、時としてフレーム・バッファ40の仮想スクリーンよりも解像度が低いこともあるが、このような場合にはビデオ・アダプタ20が仮想スクリーンから適切なサイズだけを切り出して表示するようになっている。表示装置51、52、53上に現実に映し出された画面は、「実スクリーン」とも呼ばれる。」(【0036】)「B.ビデオ・アダプタ20のハードウェア構成図2は、PC100のハードウェア構成要素のうち、ビデオ・アダプタ20、及びその周辺をさらに詳しく示したブロック図である。同図において、ビデオ・アダプタ20は、インターフェース部21と、フレー【図2】ム・バッファ制御部22と、LCD表示制御部23と、内部RAMDAC24と、CRT表示制御部25とを含んでいる。また、ビデオ・アダプタ20は、TVモニタ51、LCD52、CRTディスプレイ53の各々にビデオ信号を出力するための出力端子を有している。」(【0038】)「インターフェース部21は、CPU10との間でデータ交換を可能にするためのものであり、バス11と電気的に接続している。CPU11からのコマンドやデータの授受はインターフェース部21を介して行われる。CPU10(より具体的にはビデオ・アダプタ20をハードウェア操作するBIOS)は、インターフェース部21内のレジスタ(図示しない)にアクセスすることによって、画面の解像度や発色数、表示速度などを設定できるようになっている。」(【0039】)「フレーム・バッファ制御部22は、フレーム・バッファ40へのアクセス(リード及びライト)を制御するためのものである。より具体的には、フレーム・バッファ制御部22は、仮想スクリーンをフレーム・バッファ40に書き込むとともに、仮想スクリーンから実スクリーンを切り出すようになっている。」(【0040】)「LCD表示制御部23は、フレーム・バッファ40から読み出された画像情報を並列-直列変換して直列のビデオ信号を発生し、表示タイミングをとりながらLCD52に供給するためのものである。本実施例のLCD表示制御部23は、設定された解像度に従って、1画面のサイズが640×400、640×480、800×600、1024×768のいずれかとなるタイミングで駆動する。」(【0041】)「LCD表示制御部23が出力するビデオ信号は、TVモニタ51やLCD52に供給される。TVモニタ51は、NTSC/PAL方式でありPC100とはデータ・フォーマットが異なるため、TVエンコーダ27によって復号化したビデオ信号が供給されるようになっている。本実施例のTVモニタ51は、最高で640×4080ドット・サイズの画面を表示することができる(但しNTSC方式の場合。PAL方式なら800×600)。また、LCD52の最大表示画面サイズは、640×480ドット、800×600ドット、1024×768ドットのいずれかである。」(【0042】)「内部RAMDAC24は、フレーム・バッファ40から読み出されたデジタル形式のままの画像情報をアナログ形式のビデオ信号に変換してから、CRTディスプレイ53に供給するようになっている。RAMDAC24は、カラー・パレットを持ち、これに基づいてアナログ信号に高速変換することが可能である。」(【0043】)「CRT表示制御部25は、表示タイミングをとるための駆動制御信号(例えば水平同期信号hsyncや垂直同期信号vsync)をCRTディスプレイ53に供給するためのものである。本実施例のCRT表示制御部25は、設定された解像度に従って、1画面のサイズが1024×768、又は1280×1024のいずれかとなるタイミングで駆動する。」(【0044】)「内部RAMDAC24及びCRT表示制御部25が出力するビデオ信号及び駆動制御信号は、CRTディスプレイ53に供給される。本実施例のCRTディスプレイ53の最高解像度は、1024×768、又は1280×1024のいずれかである。」(【0045】)「表示画面の解像度の制御は、ビデオ・アダプタ20が所与の設定値に基づいて行う(前述)。システム起動時には、ビデオ・アダプタ20の解像度(すなわちLCD表示制御部23やCRT表示制御部25が駆動する解像度)は、CMOSRAM55の書き込みデータに従って設定される。そして、LCD表示制御部23やCRT表示制御部25は、設定された解像度に応じて各表示装置51、52、53を駆動制御するようになっている。本実施例では、D項で後述するように、BIOSの中に特別なインターフェースが用意されており、該インターフェースによってビデオ・アダプタ20に設定された解像度を動的に切り換えることができるようになっている。」(【0046】)
イ上記の記載によれば、乙6発明は、CPU10と、VRAM40(フレームバッファ40)に接続され、フレーム・バッファ制御部22、LCD表示制御部23、内部RAMDAC24及びCRT表示制御部25などから構成され、LCD52及びLCD52より高解像度のCRTモニタ53にビデオ信号を出力することができるビデオ・アダプタ20を少なくとも備えるパーソナル・コンピュータであり、ビデオ・アダプタ20に設定された解像度は、BIOS中の特別なインターフェースによって、動的に切り換えられるが、ビデオ・アダプタ20は、フレーム・バッファ40に書き込まれた仮想スクリーンから適切なサイズだけを切り出して表示することにされているものであるということができる。
⑶ 本件訂正発明と乙5発明の相違点
ア本件訂正請求が適法であり、被告製品が本件訂正発明を充足することは争点2-1に説示したとおりであるが、本件訂正発明と乙5発明とは、少なくとも、以下の相違点⑤ないし⑧で相違する。(相違点⑤)本件訂正発明の「中央演算回路」は、無線通信手段から受信したデジタル信号に対し、「前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムに基づき」、「リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか」、「前記記憶手段に一旦格納」(構成要件D)するのに対し、乙5発明では「制御部10」は、受信した信号に対する具体的な処理手段について記載されていない点(被告の主張する相違点7)(相違点⑥)本件訂正発明の「ディスプレイ手段」及び「インターフェース手段」においては、「グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」、動作するとされているのに対し(構成要件E及びF)、乙5発明の「表示部12」及び「画像出力部17」については、「グラフィックコントーラから受信したデジタル表示信号に基づき」、動作することが特定されていない点(被告の主張する相違点9及び10)(相違点⑦)本件訂正発明「インターフェース手段」は、「ビットマップデータを伝達する外部表示信号」を「デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式」(構成要件I)に変換するが、乙1発明では、「伝送方式」について特定されていない点(被告の主張する相違点12)(相違点⑧)本件訂正発明は、「高解像度画像受信・処理・表示機能」を実現する場合に、「無線通信手段」が、「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」の無線信号を受信してデジタル信号に変換し、「中央演算回路」が、当該画像データを処理し、「グラフィックコントローラ」が、単一のVRAMから「ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、デジタル表示信号を「ディスプレイ制御手段」に送信し、また、前記単一のVRAMから「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、デジタル表示信号を「インターフェース手段」に送信するのに対し、乙5発明には、このような「高解像度画像受信・処理・表示機能」に係る「中央演算回路」、「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」が特定されていない点(被告の主張する相違点8及び11並びに原告の主張する相違点G5及びH5)
イそこで検討するに、被告は、乙5発明に乙1発明を適用すれば、当業者は、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示コントローラ20」に置き換えるなどした上、本件発明との相違点を容易に想到することができるのであって、このことは、本件訂正発明との相違点との関係においても同様であるなどと主張する。しかしながら、争点2-1で認定したとおり、本件訂正発明と乙1発明との間には、本件訂正発明と乙5発明との相違点⑧に対応する相違点④が認められるのであるから、仮に、乙5発明に乙1発明を適用し得たとしても、少なくとも相違点⑧に至るといえないことは明らかである。のみならず、乙5発明は、前記乙5公報の記載によれば、携帯電話機において、「制御部10」が「表示部12」に表示するための画像信号を出力するとともに、「画像出力部17」が、「制御部10」からの要求に基づき入力された情報から画像信号を生成し、画像信号から「外部表示装置2」で読み取り可能な画像信号形式に変換して出力することによって、「外部表示装置2」において、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツを正常に表示するものであることが認められる。これに対し、乙1発明は、前記乙1公報の記載によれば、内部表示装置22を備える携帯機器において、高解像度の外部表示装置24の表示領域を有効活用するため、「CPU10」の指示を受ける「表示コントローラ20」で「表示メモリ」を用いて、内部表示装置22に係る表示データを選択的に外部表示装置24に係る表示データの記憶領域に格納することによって、「内部表示装置」及び「外部表示装置」のそれぞれに表示するための表示データを生成し出力するものであり、乙1公報においては、「CPU10」及び「表示コントローラ20」が、携帯電話機での閲覧が意図されていないようないWebコンテンツを外部表示装置24に表示するための処理をすることについての記載も示唆もない。そうすると、乙5発明の「表示部12」と「外部表示装置2」とに表示をするための構成と、乙1発明の「内部表示装置」と「外部表示装置」とに表示をするための構成とは、それぞれを構成する構成要素の機能が大きく異なっており、乙5発明の「制御部10」を乙1発明の「CPU10」及び「表示メモリ」に置き換え、更に「表示コントローラー20」によって「表示部12」と「外部表示装置2」との両方の画像信号を生成することとし、入力された情報から画像信号を生成して画像信号から外部表示装置で読み取り可能な画像信号形式に変換するという「画像出力部17」における処理を、入力された情報から画像信号の生成に係る処理を除き、画像信号から外部表示装置で読み取り可能な画像信号形式への変換のみを行うように組み合わせる動機付けがあるとはいえない。また、乙5文献の【0005】及び【0025】によれば、乙5発明では、携帯電話機での閲覧が意図されていない情報である「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を、表示部12において正常に表示することを意図しているとはいえないのであるから、上記置き換えをする際に、「表示コントローラー20」において、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して、「外部表示装置2」のための画像信号と「表示部12」のための画像信号とを生成するようにすることが、容易であるともいえない。そうすると、本件発明の構成に至るように、乙5発明に乙1発明を組み合わせる動機付けを欠くというべきである。したがって、被告の主張は、いずれも採用することができない。
ウまた、被告は、乙5発明に乙1発明を適用すれば、当業者は、乙5発明の「制御部10」を、「CPU10」、「LCD表示制御部23」、「内部RAMDAC24」及び「CRT表示制御部25」に置き換えるなどした上、本件発明との相違点を容易に想到することができるのであって、このことは、本件訂正発明との相違点との関係においても同様であるなどと主張する。しかし、仮に、当業者において、上記の置き換えを容易に想到し得たとしても、乙6発明は「無線通信手段」を特定するものではないから、当該置き換え後の乙5発明において、相違点⑧のうち、送受信部11が、本来解像度が表示部12の画面解像度より大きい画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換するという構成に至ることはできない。そうすると、当業者が、乙5発明に乙1発明を適用することによって、相違点⑧を容易に想到し得たということはできない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
⑷ 小括以上によれば、乙5発明に基づく進歩性欠如を理由とする無効理由については、少なくとも、本件訂正請求に基づく原告の訂正の再抗弁を採用することができることからすると、被告の無効の抗弁は理由がない。
8争点2-3(本件当初訂正の訂正要件違反)について原告は、本件発明の当初明細書等に、VRAMが単一であることを示す記載はなく、「前記単一のVRAM」という語句を追加する本件当初訂正は、新規事項の追加であると主張する。しかし、本件発明の「単一のVRAM」とは、「ディスプレイ制御手段」のためのメモリとは物理的に別個の部品として「インターフェース手段」のためのメモリを備えないものと解されることは、争点1-2に説示したとおりである。そして、本件発明の当初明細書等の段落【0115】、【0117】、【0127】のほか、【図1】における「VRAM」に係る記載は、このような意味における「単一」のVRAMが存在することをいうものとして理解し得るものであり、他方、当初明細書等において、それとは物理的に別個のVRAMが存在することを示すような記載はない。そうすると、特許請求の範囲の記載に「前記単一のVRAM」という語句を追加した本件当初訂正は、当該明細書等に「記載した事項の範囲内」(特許法126条5項)でされたものであるというべきである。これに対し、被告は、当初明細書等には、「VRAM」を「単一」とすることの積極的意義や作用効果の記載がないとも主張するが、これらの記載がある事項しか訂正できない理由はなく、当初明細書等によれば、当初明細書等の記載によれば、「単一」のVRAMが存在すると理解できるのであるから、被告の主張を踏まえても、上記判断を左右するものとはいえない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
9争点2-4(明確性要件違反)について原告は、構成要件D及びHの「単一のVRAM」という語句は、「機能面からみて単一のVRAM」であるとも、「物理的に分離したVRAM」であるとも、いずれにも解釈し得るのに、本件明細書等には、その意義を解釈するための基準が何ら示されていないとして、本件発明が、明確性要件に違反すると主張する。しかし、本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書等の記載によれば、構成要件D及びHの「単一のVRAM」が、「ディスプレイ制御手段」のためのメモリとは物理的に別個の部品として「インターフェース手段」のためのメモリを備えないものと解されることは、争点1-2において説示したとおりである。そうすると、構成要件D及びHの「単一のVRAM」の意義は明確であるというべきである。したがって、被告の主張は、採用することができない。
10争点2-5(サポート要件違反)について
⑴ 原告は、本件明細書等が「単一のVRAM」に係る作用効果を理解し得るように記載されていないから、サポート要件に違反すると主張する。しかし、本件明細書等の段落【0014】ないし【0022】には、本件発明の背景技術について、付属ディスプレイよりも画面が大きい外部ディスプレイに画像を表示する従来技術が、「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」をするものであると記載され、段落【0031】には、本件発明が解決しようとする課題として、「大画面ディスプレイ手段向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイにもともと必要である表示データ生成手段」とは「別個に使用することなく、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の追加」と「表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現する」ことが記載されている。これらの記載によれば、当業者は、構成要件D及びHにおいて、グラフィックコントローラが、ディスプレイ制御手段(付属ディスプレイ)やインターフェース手段(外部ディスプレイ)にデジタル表示信号を送信するに当たり、ビットマップデータの書き込み及び読み出しをする対象を「単一のVRAM」とする構成が採用されることによって、上記の課題が解決されることを認識し得たことは明らかである。そうすると、構成要件D及びHの「単一のVRAM」という構成は、本件発明の詳細な説明の記載により、当業者において、その課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。したがって、被告の主張は、採用することができない。
⑵ 被告は、構成要件Dの「処理」が、本件明細書等の段落【0032】に記載された「適切に処理する」以外の処理を含むとすれば、本件発明は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えることになり、サポート要件に違反すると主張する。そこで検討するに、本件明細書等の段落【0032】にいう「適切に処理する」は、構成要件Dの「中央演算回路」における「処理」とは異なるものであることは、争点1-1で説示したとおりである。そして、当該「処理」については、本件明細書等の段落【0118】に、「中央演算回路」は、「前記デジタル動画信号」に基づき、「ビットマップデータを作成する描画命令を生成する」が、「描画命令の生成にあたって」、「デジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度の低い画像の全体画像の描画命令」を生成する旨の記載があり、その段落【0126】には、「中央演算回路」が、フラッシュメモリに格納された「画像の補間プログラム」に「従って作動する場合」には、デジタル動画信号の本来画像の解像度より大きい「外部ディスプレイ装置の画面解像度」と「同じ解像度を有する画像の描画命令」を生成する旨の記載がある。これらの記載によれば、本件明細書等には、上記にいう「適切な処理」以外の様々な処理をすることが記載されていることからすると、本件明細書等に「適切な処理」しか記載されていないことを前提とする被告の主張は、その前提を欠く。そうすると、本件発明が、構成要件Dの「処理」について、本件明細書等の「発明の詳細な説明に記載したもの」(特許法36条6項1号)の範囲を超えるものであるということはできない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
⑶ 以上によれば、本件発明が、特許法36条6項1号のサポート要件に違反する無効理由があるということもできない。
11争点3-1(原告に生じた損害又は損失)について
⑴ 原告に生じた損害及び損失の計算方法
ア被告製品は、被告補助参加人が製造し、被告に販売していたものであるが、被告補助参加人が、前記前提事実⑸イ及びウの訴訟における請求にかかわらず、原告に対し、被告製品の製造販売に対し、本件発明の実施に係る実施料を支払っていないことは、当事者間に争いがない。そうすると、被告による被告製品の販売行為は、本件発明に係る原告の特許権を侵害する不法行為に当たるから、原告には、当該不法行為について、被告製品の販売による本件発明の実施に係る実施料相当額の損害が生じたということできる(特許法102条3項)。
イまた、被告は、被告製品を販売することにより、本件発明を実施したのに、特許権者である原告に実施料率を支払っていないことになるから、不当利得として、前記実施料相当額の利益を得ており、原告は、これと同額の損失を被ったものと認めるのが相当である。これに対し、被告は、被告と被告補助参加人との被告製品の販売契約において、被告製品に特許権侵害があった場合、これによる費用を被告補助参加人が負担することになっていたから、被告には民法703条の現存利益がないなどと主張する。しかし、前記アの不当利得は、被告が、原告に対し、支払うべき実施料の支払を免れたことから生じるものであり、被告と被告補助参加人との間において、被告補助参加人が当該実施料を負担すると合意されていたとしても、その利益の発生又は利益の現存に係る認定が直ちに左右されるものではない。また、被告は、特許法102条3項の規定は、民法703条の現存利得の算定の場合には適用し得ないなどと主張する。しかし、前記⑵アのとおり、被告は、被告製品を販売したことによる実施料を支払っていないことから利益を得ているのであって、その後その利益の全部又は一部が消滅したことに関する立証がないという事情を踏まえると、被告は、上記の計算方法により算定された利得金を得たものと推認するのが相当である。したがって、被告の主張は、いずれも採用することができない。
⑵ 実施料相当額の計算方法
ア被告製品の販売に係る本件発明の実施料相当額は、被告製品の売上高に相当な実施料率を乗じて算定するのが相当である。そして、証拠(乙12ないし16)及び弁論の全趣旨によれば、被告と被告補助参加人は、端末設備等購入基本契約書に係る契約(以下「本件契約」という。)を締結し、本件契約に基づき、被告補助参加人は、被告製品を製造し、被告に販売していたこと、本件契約によれば、被告補助参加人は、被告製品の製造販売のために必要な特許ライセンスを取得しており、被告が第三者からその権利を侵害するものとして訴えが提起された場合には、被告補助参加人の責任と費用で第三者との紛争を解決することとされていたこと、そのため、被告製品に使用される特許については、被告補助参加人の製造販売の段階で実施料が負担され、被告の販売の段階で実施料が支払われることは想定されていなかったこと、もとより、被告補助参加人が、原告に上記相当額を支払っていれば、原告が、被告から実施料率を得ることはできなかったこと、以上の事実を認めることができる。上記認定事実によれば、被告製品の実施料に関する取引の実情を踏まえると、被告製品の販売に係る本件発明の実施料相当額は、被告補助参加人による被告製品の売上高(乙13)に相当な実施料率を乗じて算定したものと推認するのが相当であり、これを覆すに足りる的確な証拠はない。
イこれに対し、原告は、独自に被告の一般消費者に対する販売台数及び売上高の数字を主張するものの、これを認めるに足りる証拠はない。また、原告は、被告による被告製品の小売価格が、いわゆる「SIMロック」や「2年縛り」などと引き換えに低額に抑えられている実態があるとして、被告における通信料収入をも売上高に含めるべきである旨主張する。しかし、本来実施料率に係る合意後に発生する個別具体的な通信料収入についてまで、売上高に含めて実施料率を算定するのは、取引の実情一般に照らし、相当であると認めることはできず、原告主張に係る算定方法が適切であるとする的確な証拠もない。したがって、原告の主張は、採用することができない。
⑶ 被告製品の相当実施料率
ア特許発明の実施に対し受けるべき料率を認定するに当たっては、①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮するのが相当である。
イそこで検討するに、本件発明に関しては、前記①ないし④に係る事情として、次のとおりのものが認められる。「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書」には、以下のような実施料率を報告するが、同時に、関係特許が多数に上り、クロスライセンスが主流であるデバイスの特許の分野では、その相場は1%以下であるとも記載されている。(甲26)平均値最大値最小値ソース技術分野3.5%9.5%0.5%国内アンケート調査器械3.1%7.5%0.5%コンピュータテクノロジ2.9%9.5%0.5%電気3.0%7.0%1.0%司法決定電気実際、被告補助参加人は、被告製品の製造販売のため、11社とライセンス契約を締結したが、破産直前という特殊事情のある1社を除くと、アプリ特許等に係るパテントファミリー1件当たりのライセンス料率は、平均●(省略)●%であると計算された。(乙14)また、前記の10社とのライセンス契約のうち、ライセンス料率が初年度の●(省略)●%から逓減する特殊な規定となっていた1社を除き、画像処理に関連する発明に限定したとすると、1件当たりのライセンス料率は、平均●(省略)●%と計算された。(乙16)平成20年5月発行の雑誌「日経エレクトロニクス」には、「携帯電話の画面サイズには限界がある。」、「HDTV対応によって、大画面テレビなど周囲のAV機器を接続し、コンテンツをやりとりする機能が携帯電話機に必須となる。」との記載がある。(甲29・43頁)他方、前記雑誌には、「スマートフォンのような両手の操作を前提とする端末であれば、比較的大きな4~5型程度のディスプレイを搭載する可能性はある。このような端末ならば、「液晶パネルの画素数を高精細化してHDTV対応にできる」」との記載もある。(甲29・59頁)原告は、情報処理・通信システムの考案及び開発を目的とする会社であり、自ら実施品の製造販売をすることはせず、その発明を他社に許諾し、これに対する実施料収入を得るという営業方針をとっているが、本件発明については、実施許諾をした例はない。(弁論の全趣旨)
ウこれらの事情によれば、①本件発明の技術分野においては、ライセンス料率を0.5%ないし9.5%程度とする例はあるが、スマートフォンのように多数の特許が関連する分野では、クロスライセンスによる場合に限らず、特許1件当たりで計算した実施料率が、0.01%を下回ることも通常であること、②本件発明で実現される高解像度画像を外部出力する機能は、携帯電話において早くから望まれていたものではあるが、被告製品のようなスマートフォンにおいては、当然に必須の機能であるとはいえず、その顧客に対する顧客吸引力は明らかとはいえないこと、③原告は、その保有する発明を他社に許諾し、その実施料収入を得るという営業方針をとっているものの、本件発明を実施するため、原告とライセンス契約を締結した者はいないこと、以上の事情を認めることができる。これらの事情を考慮すると、被告補助参加人の売上高に乗じる相当実施料率は、侵害があったことを前提に通常の実施料率よりも自ずと高くなることをも十分考慮しても、0.01%の限度で認めるのが相当である。
エこれに対し、原告は、被告補助参加人におけるライセンス例は、大部分が一時金方式であり、ランニング方式よりも割安となっていることなど種々の事情を指摘し、これを相当実施料率の認定の参考にすることを争うものの、原告の指摘を踏まえても、業界における実施料の相場等として、当該ライセンス例を上記の限度で参酌することまで妨げられるべきものではなく、上記認定を左右するに至らない。また、原告は、本件発明には代替技術がなかったと主張するが、これを認めるに足りる証拠はないほか、原告は、本件発明を代替するには、2400円程度の部品(甲31)を追加する必要があったとも主張するが、当該部品は、本件発明に係る機能のみを実現するものとは認められず、その2400円というのも「サンプル価格」にすぎず、いずれも、上記の結論を左右するものとはいえない。原告に生じた損害及び損失以上によれば、原告に生じた損害及び損失の額は、被告製品のそれぞれについて、被告補助参加人における売上高と認められる下表の「売上高」欄の金額に、それぞれ前記相当実施料率0.01%を乗じた「損害又は損失」欄記載の額と計算され、その合計は705万7771円となる。被告製品売上高損害又は損失イ号製品●(省略)●●(省略)●ロ号製品●(省略)●●(省略)●ハ号製品●(省略)●●(省略)●ニ号製品●(省略)●●(省略)●ホ号製品●(省略)●●(省略)●ヘ号製品●(省略)●●(省略)●ト号製品●(省略)●●(省略)●チ号製品●(省略)●●(省略)●リ号製品●(省略)●●(省略)●合計705万7771円12争点3-2(消滅時効の抗弁)について
⑴ 被告製品1について前記前提事実⑸アのとおり、原告は、平成24年1月9日頃、被告製品1などが原告の保有する別の特許に係る発明の技術的範囲に属するとする訴訟を提起し、当該訴訟の第一審判決は、平成25年8月2日に言い渡されているところ、証拠(乙2ないし4)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、当該訴訟の審理を通じるなどし、遅くとも前記判決の言渡日までには、被告製品1の具体的な構成について、本件訴訟の訴状で記載した程度には認識しており、被告が、被告製品1を販売していることを認識していたことも認めることができる。そして、証拠(乙12、13)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1は、平成26年頃までに、その販売を終了していたことを認めることができるのであるから、被告による被告製品1の販売に係る不法行為に対する損害賠償請求権について、原告は、遅くとも同年頃までに、その損害及び加害者を知ったということできる。したがって、本件訴訟が提起されたものと認められる令和2年11月24日までに、当該損害賠償請求権に係る3年の消滅時効が完成していたことは明らかである。これに対し、原告は、被告製品1が、本件特許を侵害すると認識することが可能となったのは、本件当初訂正の訂正登録日である平成30年8月13日であると主張する。しかし、証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば、本件当初訂正は、いずれも、特許請求の範囲の減縮(特許法126条1項ただし書1号)又は「明瞭でない記載の釈明」(同3号)を目的としてなされたものであると認められ、原告は、前記の事実関係の下、本件当初訂正に係る訂正登録がされる前から、被告製品1が、本件当初訂正による訂正前の本件発明の技術的範囲に属することを認識していたというべきである。したがって、被告による被告製品1の販売に係る不法行為に対する損害賠償請求権については、その消滅時効が完成しているから、被告による消滅時効の援用によって、当該損害賠償請求権は消滅している。
⑵ 被告製品2について原告が、平成25年8月2日頃、被告製品2が販売されている事実を知っていたことは、当事者間において争いがない。しかし、本件発明は、スマートフォンなどの携帯情報通信装置に係るものであって、これが備える中央演算回路やグラフィックコントローラによるデータ処理手段や画像表示機能などを特定するものであるから、原告が、その頃において、当然に被告製品2の構成を知っていたと認めることはできず、これが本件発明の技術的範囲に属することを知っていたことを認めるべき証拠もない。そして、原告が、原告自身が認める令和元年11月29日頃以前に、被告製品2が、本件発明の技術的範囲に属することを知っていた旨の主張立証もない。したがって、被告による被告製品2の販売に係る不法行為に対する損害賠償請求権について、本件訴訟が提起された令和2年11月24日までに、その消滅時効が完成していたものと認めることはできない。
⑶ 小括したがって、被告の消滅時効の抗弁は、被告製品1に係る部分の限度で成立し、原告の損害賠償請求権は、前記11⑸の表のとおり、チ号製品に係る●(省略)●円及びリ号製品に係る●(省略)●円との合計178万3999円の限度で認めることができる。
13小括被告は、先行訴訟の結果に基づき、被告補助参加人が被告製品に係る賠償金又は利得金を支払った場合には、本件における賠償金又は利得金が消滅すると主張するものの、上記の支払を認めるに足りる証拠はない。その他に、原告及び被告が提出する準備書面及び書証を改めて検討しても、以上の判断を左右するに至らない。したがって、上記判断と異なる原告及び被告の主張は、いずれも採用することができない。なお、争点3-1で認定したとおり、原告に生じた不法行為にいう損害の額と不当利得にいう損失の額は、別紙被告製品目録記載のイ号製品ないしリ号製品ごとに同額であり、その遅延損害金も、不法行為については不法行為の後である訴状送達の日の翌日から、不当利得については訴状による催告の翌日である同日から、それぞれ支払を求めるものとして、いずれも同額となる。そして、不法行為に基づく損害賠償請求と不当利得に基づく利得金返還請求は選択的に併合されているところ、被告製品1に係る損害賠償請求は理由がなく、その不当利得返還請求の一部は理由があるため、その限度で認容し、被告製品2に係る不当利得返還請求の一部は理由があり、その余の請求部分及びこれと選択的に併合された損害賠償請求に係る部分は理由がないから、いずれも棄却することとする。
第5 結論
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官中島基至
裁判官小田誉太郎
裁判官𠮷野俊太郎は、転補のため、署名押印することができない。
裁判長裁判官中島基至(別紙)
物件目録
1イ号物件スマートフォン「GALAPAGOS SoftBank 003SH」
2ロ号物件スマートフォン「DM009SH」
3ハ号物件スマートフォン「GALAPAGOS SoftBank 005SH」
4ニ号物件スマートフォン「AQUOS PHONE SoftBank 006SH」
5ホ号物件スマートフォン「AQUOS PHONE THE HYBRID SoftBank 007SH」
6ヘ号物件スマートフォン「AQUOS PHONE THE HYBRID SoftBank 007SH J」
7ト号物件スマートフォン「SoftBank 007SH KT」
8チ号物件スマートフォン「AQUOS PHONE Xx 106SH」
9リ号物件スマートフォン「AQUOS PHONE Xx SoftBank 203SH」(別紙)被告製品説明書
第1イ号物件イ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4モバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8255)及び「単一のVRAMを内蔵する液晶コントローラIC」
5画面解像度が800×480 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバIC
6HDMI送信IC及びmicroHDMI端子また、イ号物件の上記の各構成要素は、次の参考図1の通りに接続されている。
【参考図1】無線通信用メインアンテナ無線送受信用タッチパネルIC液晶液晶ドライバ液晶ディスプレイパネルモバイルICコントローラプロセッサ内部メモリICVRAMmicroSDHDMImicroカード送信ICHDMI端子さらに、イ号物件の上記の各構成要素は、以下の機能を有している。
① タッチパネルは、ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータをモバイルプロセッサに送信する。
② 無線通信手段は、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、モバイルプロセッサに送信するとともに、モバイルプロセッサから受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する。
③ -1 内部メモリは、モバイルプロセッサを動作させるプログラムを格納する。
③ -2 microSDカードは、モバイルプロセッサで処理可能なデータファイルを格納する。
④ -1 モバイルプロセッサは、タッチパネルから受信したデータと内部メモリに格納されたプログラムとに基づき、無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとしてmicroSDカードに一旦格納し、その後読み出した上で処理する。
④ -2 液晶コントローラICは、モバイルプロセッサの処理結果に基づき、内蔵するVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を、液晶ドライバIC又はHDMI送信ICに送信する。また、液晶コントローラICは、イ号製品が「本来解像度が1280×720 画素である画像データ」を処理して画像を表示する場合に、内蔵するVRAMから「800×480 画素である画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を液晶ドライバICに送信する機能と、内蔵するVRAMから「1280×720 画素である画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号をHDMI送信ICに送信する機能を実現する。
⑤ -1 液晶ディスプレイパネルは、画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示する。
⑤ -2 液晶ドライバICは、液晶コントローラICから受信したデジタル表示信号に基づき液晶ディスプレイパネルの各々の画素を駆動する。
⑥ -1 microHDMI端子は、外部ディスプレイ手段を備える周辺装置を接続することができる。
⑥ -2 HDMI送信ICは、液晶コントローラICから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号をmicroHDMI端子を介して周辺装置に送信する。また、HDMI送信ICは、液晶コントローラICから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」をHDMI信号に変換し、該HDMI信号をHDMI端子を介して周辺装置に送信する機能を有する。上記の構成により、イ号物件は、⑦ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1280×720 画素である画像」を表示できる。
第2ロ号物件ロ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4モバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8255)及び「単一のVRAMを内蔵する液晶コントローラIC」
5画面解像度が800×480 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバIC
6HDMI送信IC及びmicroHDMI端子また、ロ号物件の各要素は、イ号物件の各要素と同様に接続され、同じ機能を有している。上記の構成により、ロ号物件は、⑦ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1280×720 画素である画像」を表示できる。
第3ハ号物件ハ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4モバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8255)及び「単一のVRAMを内蔵する液晶コントローラIC」
5画面解像度が800×480 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバIC
6HDMI送信IC及びmicroHDMI端子また、ハ号物件の各要素は、イ号物件の各要素と同様に接続され、同じ機能を有している。上記の構成により、ハ号物件は、⑦ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1280×720 画素である画像」を表示できる。
第4ニ号物件ニ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4モバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8255)及び「単一のVRAMを内蔵する液晶コントローラIC」
5画面解像度が960×540 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバIC
6HDMI送信IC及びmicroHDMI端子また、ニ号物件の各要素は、「800×480 画素」が「960×540 画素」となることを除き、イ号物件の各要素と同様に接続され、同じ機能を有している。上記の構成により、ニ号物件は、⑦ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1280×720 画素である画像」を表示できる。
第5ホ号物件ホ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4モバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8255)及び「単一のVRAMを内蔵する液晶コントローラIC」
5画面解像度が854×480 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバIC
6HDMI送信IC及びmicroHDMI端子また、ホ号物件の各要素は、「800×480 画素」が「854×480 画素」となることを除き、イ号物件の各要素と同様に接続され、同じ機能を有している。上記の構成により、ホ号物件は、⑦ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1280×720 画素である画像」を表示できる。
第6ヘ号物件ヘ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4モバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8255)及び「単一のVRAMを内蔵する液晶コントローラIC」
5画面解像度が854×480 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバIC
6HDMI送信IC及びmicroHDMI端子また、ヘ号物件の各要素は、「800×480 画素」が「854×480 画素」となることを除き、イ号物件の各要素と同様に接続され、同じ機能を有している。上記の構成により、ヘ号物件は、⑦ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1280×720 画素である画像」を表示できる。
第7ト号物件ト号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4モバイルプロセッサ(Qualcomm 製Snapdragon MSM8255)及び「単一のVRAMを内蔵する液晶コントローラIC」
5画面解像度が854×480 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバIC
6HDMI送信IC及びmicroHDMI端子また、ト号物件の各要素は、「800×480 画素」が「854×480 画素」となることを除き、イ号物件の各要素と同様に接続され、同じ機能を有している。上記の構成により、ト号物件は、⑦ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1280×720 画素である画像」を表示できる。
第8チ号物件チ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4CPU及びGPUから構成されるモバイルプロセッサ(Qualcomm 製SnapdragonMSM8260A)
5SDRAM
6画面解像度が1280×720 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバ
7MHLトランスミッタ及びmicroUSB端子また、チ号物件の上記の各構成要素は、次の参考図1の通りに接続されている。
【参考図1】無線通信用メインアンテナ無線送受信用タッチパネルIC液晶液晶ドライバディスプレイパネル内部メモリCPUGPUMHLmicromicroSDトランスミッタUSBI端子カードモバイルプロセッサ外部SDRAMさらに、チ号物件の上記の各構成要素は、以下の機能を有している。
④ タッチパネルは、ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータをモバイルプロセッサに内蔵されるCPUに送信する。
⑤ 無線通信手段は、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPUに送信するとともに、CPUから受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する。
⑥ -1 内部メモリは、CPUを動作させるプログラムを格納する。
⑤ -2 microSDカードは、CPUで処理可能なデータファイルを格納する。
⑥ -1 CPUは、タッチパネルから受信したデータと内部メモリに格納されたプログラムとに基づき、無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとしてmicroSDカードに一旦格納し、その後読み出した上で処理する。
⑥ -2 モバイルプロセッサに内蔵されるGPUは、CPUの処理結果に基づき、SDRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を、液晶ドライバ又はMHLトランスミッタに送信する。また、GPUは、イ号製品が「本来解像度が1920×1080 画素である画像データ」を処理して画像を表示する場合に、SDRAMから「1280×720 画素である画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を液晶ドライバに送信する機能と、SDRAMから「1920×1080 画素である画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号をMHLトランスミッタに送信する機能を実現する。
⑦ -1 液晶ディスプレイパネルは、画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示する。
⑦ -2 液晶ドライバは、GPUから受信したデジタル表示信号に基づき液晶ディスプレイパネルの各々の画素を駆動する。
⑧ -1 microUSB端子は、外部ディスプレイ手段を備える周辺装置を接続することができる。
⑦ -2 MHLトランスミッタは、GPUから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号をmicroUSB端子を介して周辺装置に送信する。また、MHLトランスミッタは、SDRAMから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」をMHL信号に変換し、該MHL信号をmicroUSB端子を介して周辺装置に送信する機能を有する。上記の構成により、チ号物件は、⑧ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1920×1080 画素である画像」を表示できる。
第9リ号物件リ号物件はスマートフォンであって、以下の構成を備えている。
2無線通信手段(無線通信用メインアンテナ及び無線送受信用IC)
3内部メモリ及びmicroSDカード
4CPU及びGPUから構成されるモバイルプロセッサ(Qualcomm 製SnapdragonAPQ8064)
5SDRAM
6画面解像度が1280×720 画素である液晶ディスプレイパネル及び液晶ドライバ
7MHLトランスミッタ及びmicroUSB端子また、リ号物件の各要素は、「MSM8260A」が「APQ8064」となることを除き、チ号物件の各要素と同様に接続され、同じ機能を有している。上記の構成により、リ号物件は、⑧ 周辺装置に備えられる外部ディスプレイ手段に、「1920×1080 画素である画像」を表示できる。
出典: 令和2年(ワ)第29604号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →