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判例調査 電気

特許実施許諾契約(MEMSセンサ技術)

3.0% 認定料率
事件番号 平成31年(ワ)第3197号
判決日 2020/07/29
裁判所 東京地裁
認容額 4506万0843円(特許実費のみ

📋 判決要旨

判決日: 2020年7月29日 | 裁判所: 東京地裁 | 料率: 3.0%(契約で合意済みのランニング・ロイヤルティ)


ワコー(原告・特許権者)が第一精工(被告・実施権者)に対し、MEMS技術(=微小電気機械システム。半導体製造技術を応用した超小型センサ等を製造する技術)を用いたトルクセンサ・加速度センサ・触覚センサ等の特許実施許諾契約に基づき、未払いの特許実費(=特許の出願・登録・維持に要する実費)とロイヤルティの支払を求めた契約紛争。裁判所が料率を独自に認定したケースではなく、当事者間で「正味販売価格の3%」と契約で合意済みであった。


本件契約は5製品分野(圧電型加速度センサ、触覚センサ、トルクセンサ、マイクロ発電機、MEMSミラー)にまたがり、契約締結時点で既に42件超の日本・外国特許が対象に含まれていた。外国出願には国ごとに翻訳料・代理人費用・庁費用がかかるため、半期分の特許実費だけで約4500万円に達した(契約締結時の一時金も6748万円と高額)。


争点と裁判所の判断:


  • ⚖️ 争点1(特許実費の支払範囲): 契約書5条1項は、被告が「専用実施権又は独占的通常実施権を有している本件特許権等」について特許実費を負担すると規定していた。被告は「専用実施権の設定登録を受けた特許権のみが支払対象」と主張したが、裁判所は、契約書が出願中の特許や将来の特許権も実施許諾の対象に含めていること、被告が過去2年半にわたり設定登録のない特許の実費も全額支払っていたこと等から、設定登録の有無にかかわらず、本件製品に関する特許権・出願中の特許の全てが支払対象と判断した。平成29年度第2半期の特許実費4512万6043円から既払の6万5200円を控除した4506万0843円の支払を命じた
  • ⚖️ 争点2(ロイヤルティ): 原告が契約解除を主張してロイヤルティの受領を拒絶したため、被告は法務局に供託(=債権者が受領を拒絶した場合に、国に預けることで「支払った」と同じ効果を得る制度)していた。裁判所は供託額448万7710円が正当と認め、ロイヤルティ債務は弁済により消滅したと判断
  • 結論: 特許実費4506万0843円を認容。ロイヤルティは供託済みにつき請求棄却

認容額4506万0843円(特許実費のみ。ロイヤルティは供託済みにつき消滅)。

📜 判決文全文

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裁判所の判断
▼ 判決文全文(クリックで折りたたみ)
主 文

1被告は,原告に対し,4506万0843円及びこれに対する平成

年6月13日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。

2原告のその余の請求を棄却する。

3訴訟費用は,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余は被告

の負担とする。

4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
第1 請求

1主文1項と同旨

2被告は,原告に対し,220万7070円及びこれに対する平成31年2月2

0日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要

本件は,被告との間で特許の実施許諾等に係る契約を締結した原告が,同契約上被

告において支払義務を負う費用のうち,平成29年10月1日から平成30年3月3

1日までの平成29年度第2半期(以下,この期間を指すときは単に「平成29年度

第2半期」という。)における特許に係る出願,登録及び維持に要する費用(以下,特許に係る出願,登録及び維持に要する費用を「特許実費」という。)が4512万6043円であり,また,平成30年4月1日から同年6月29日までの期間の実施料が220万7070円である旨主張して,被告に対し,上記契約に基づき,特許実費4521万6043円から既払の6万5200円を控除した残額4506万0843円及びこれに対する約定の弁済期の翌日である同月13日から商事法定利率年6%の割合による遅延損害金並びに実施料220万7070円及びこれに対する訴状送達により請求した日の翌日である平成31年2月20日から支払済みまで約定の年14.6%の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。

1前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)当事者

ア原告は,半導体の製造・販売等を目的とする株式会社である。原告代表者A(以下「原告代表者A」という。)は,平成27年3月27日から平成30年3月29日までの間,被告の社外取締役を務めていた。

イ被告は,精密電子部品等の設計・製造・販売等を目的とする株式会社である。特許の実施許諾等に係る契約の締結(甲1)原告は,平成27年4月1日,被告との間で,別紙「契約条項」の内容の特許の実施許諾等に係る契約(以下「本件契約」といい,本件契約に係る契約書を「本件契約書」という。)を締結した。被告による平成30年2月23日頃の原告に対する通知被告は,平成30年2月23日頃,同日付け書面により,原告に対し,本件契約2条3項に基づき,本件特許権等について被告が有する全ての専用実施権を同年3月31日をもって非独占的通常実施権に変更する旨を通知した(乙4。以下,この通知を「本件変更通知」という。)。原告による特許実費の請求等(甲2~4,29)原告は,平成30年4月23日,被告に対し,平成29年度第2半期における特許実費が4512万6043円である旨をその明細及び支払先とともに報告した。

原告は,平成30年5月13日,被告に対し,上記特許実費の支払を請求し,その結果,上記特許実費の弁済期は同年6月12日となった。原告による本件契約解除の意思表示等(甲4)原告は,平成30年6月21日頃,被告に対し,被告において前記の特許実費を支払わないことが本件契約に定める義務に違反するとして,同月29日までに上記特許実費を支払うよう催告するとともに,同日までに上記支払がされないときには本件契約を解除する旨の意思表示をした。

被告は,その後,原告に対し,本件契約に基づく平成29年度第2半期の特許実費として6万5200円のみを支払った。被告によるランニング・ロイヤルティの弁済供託等(甲5,33)

ア被告は,平成30年10月16日,原告に対し,平成30年4月1日から同年9月30日までの期間における本件製品別の正味販売価格合計,主要販売先及びランニング・ロイヤルティ額が消費税相当額込みで448万7710円であることを報告するとともに,請求書の送付を依頼した。

イ原告が本件契約を解除したことを理由にランニング・ロイヤルティに係る請求書の発行を拒絶したため,被告は,平成30年12月25日,原告がランニング・ロイヤルティの受領を拒絶する意思を明確にしたことを理由として,前記アの期間のランニング・ロイヤルティ448万7710円について民法494条に基づく供託をした。原告によるランニング・ロイヤルティの履行請求(顕著な事実)原告は,平成31年2月19日,被告に対し,本件訴状の送達をもって,平成30年4月1日から原告が解除により本件契約が終了したとする同年6月29日までの本件契約に基づくランニング・ロイヤルティ220万7070円の支払を請求した。

2争点被告が支払義務を負う特許実費の範囲(争点1)被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲(争点2)

3争点に対する当事者の主張争点1(被告が支払義務を負う特許実費の範囲)について【原告の主張】

ア被告が支払義務を負う特許実費の範囲について次のとおり,被告は,本件契約に基づき,原告から専用実施権設定の許諾を受けた本件特許権等の特許実費を支払う義務を負う。そして,平成29年度第2半期における特許実費は4512万6043円である。

本件特許権等には,原告が将来に所有すべき特許権及び出願中の特許が含まれること(本件契約書1条1号),原告は,被告に対し,専用実施権を許諾し,その設定登録手続に協力する義務を負うにすぎないこと(本件契約書2条1項),被告が,本件契約締結前の交渉段階において,原告から専用実施権の許諾を受けた特許権等について特許実費を負担する旨の提案をしており専用実施権の設定登録が必要であるとはしていなかったことに照らすと,本件契約書5条1項の「専用実施権…を有している」の文言は,「専用実施権…を許諾された」又は「専用実施権…の許諾を有している」ことを意味し,専用実施権の設定登録を要しないと解するべきである。

このことは,被告が,専用実施権の設定登録のない特許権及び出願中の特許に係る平成27年4月1日から平成29年9月30日までの期間における特許実費を現実に支払っていたことからも裏付けられる。

上記のとおり解しないと,原告は,被告において専用実施権の設定登録手続を行わない限り特許実費の支払を受けられず,かつ,本件契約上,被告以外の第三者に実施権を許諾し得ない反面,被告は,特許実費を支払うことなく特許権を排他的に使用することができることになって不合理である。また,被告が専用実施権の設定登録を行う特許権を選別できることとなると,原告が特許実費の支払を受けられるものと受けられないものとが混在し,予測可能性が欠けることとなって,原告の法的地位が極めて不安定なものとなる。

イ被告の主張についての反論特許実費の仮払の主張について本件契約には特許実費の仮払に関する定めもなく,前記アの被告による過去の特許実費の支払に当たっても,被告は,原告に対し,仮払である旨を説明したことはない。コンサルタント契約との関係の主張について本件契約と被告主張に係るコンサルタント契約とは互いに独立した関係のものであるし,仮に関係があるとしても,上記コンサルタント契約では特許権等の帰属を規定し,本件契約では帰属の決定した特許権等のうち原告のみに帰属するものについてその実施許諾を規定したという関係があるにすぎないから,上記コンサルタント契約の規定を根拠として被告の主張する本件契約の解釈が成り立つものではない。本件特許権等の出願等が原告の裁量のみによるものであったとの主張について被告は,原告から,半期に一度,直近に出願等した特許について少なくとも被告において当該特許の要不要を十分に判断できる程度の内容の説明を受けており,原告に対して出願の取下げを求めることもできたのであるから,実質的に本件特許権等の終局的な管理処分権を有していたといえる。本件変更通知後の特許実費について被告は,平成30年2月23日,原告に対し,本件変更通知をしているが,本件変更通知により非独占的通常実施権への変更の効果が生じるのは平成30年3月31日であるから,原告が本件変更通知後同日までの特許実費を請求することには何らの問題もない。

また,被告は,原告において本件変更通知後に必要のない特許出願をしてその特許実費を被告に請求した旨を主張するが,原告は,対象となった特許出願についての依頼を平成29年11月10日までに行っており,特許事務所の事務の遅れにより,同事務所からの請求が平成30年2月23日以降になったものがあるにすぎず,本件変更通知後に必要のない特許出願をしたわけではない。

【被告の主張】

ア被告が支払義務を負う特許実費の範囲について次のとおり,被告は,本件契約上,本件特許権等のうち,被告において専用実施権の設定登録を受けたものに限り特許実費の支払義務を負うにすぎない。そして,平成29年度第2半期における特許実費は特許第04948630号(甲2のNo.37)に係る6万5200円である。本件契約書5条1項の文言からも,本件契約締結の交渉段階で被告が専用実施権及び独占的通常実施権を有する本件特許権等の特許実費に限り被告の負担とする旨の合意がされ,これに基づき本件契約が締結されたという経緯からも,同項は,被告が本件契約書2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施権を現に有している本件特許権等に限り被告において特許実費を負担することを規定すると解するべきである。そして,専用実施権は,その設定登録をしなければ効力が発生しないから,本件契約書5条1項は,被告において専用実施権の設定登録を受けた特許権のみを特許実費の支払対象とするものであると解するべきである。原告と被告は,本件契約の締結に先立ち,原告が被告に対してトルクセンサ等の開発に当たって技術的な助言,指導をすることを目的とするコンサルタント契約を締結している。そして,同契約では,原告又は被告が単独でした発明及び考案については,それぞれが単独で出願し単独で権利者になること,これらの出願に関する費用は権利者となる者の負担とすることが定められている。本件契約は,上記コンサルタント契約における上記費用負担の定めの存在を前提とした上で,その例外として,被告が専用実施権を有するものについてはその特許実費を負担することを定めたものである。

実際に,被告は,特許実費を負担する必要があることを専用実施権設定の要否の検討の際の考慮要素とするなど,前。

また,原告が,被告に対して,自らの判断で特許を出願等した後に出願に係る発明の図面や要約を説明するのみであったこと,原告が出願した特許の多くにつき拒絶査定又は原告による出願取下げ等により特許権が発生していないこと,原告が被告に対して特許実費を請求してきた特許権等のほとんどが被告の製造販売等する製品を権利範囲に含んでいないことからしても,専ら原告がその裁量で自己の権利として本件特許権等の出願等を管理していたということができる。他方で,被告が判断できるのは本件特許権等について専用実施権の設定登録を受けるか否かの点のみである。

以上の各事情に照らしても,前合理的なものである。

イ本件変更通知後の特許実費の主張について仮に,本件契約の解釈につき原告の主張を前提としたとしても,被告が本件特許権等につき専用実施権を有しないことが本件変更通知により明確となった以上,本件変更通知後に発生した特許実費1846万3556円については,本件契約上被告が負担すべきものと解釈されるべきではない。仮にそのように解釈されたとしても,上記の特許実費の発生原因となった原告による特許出願等が被告にとって必要性がなく,また,早期に行われる必要もないものであったことも踏まえると,原告が上記の特許実費を請求することは権利の濫用に該当し許されない。

ウ原告の主張についての反論本件契約の解釈について専用実施権の設定登録の前に許諾の段階は存しないから,原告の主張は特許法と整合しないものであるし,仮に原告の主張する内容を規定するのであれば,端的に「許諾されている」とか「許諾を有している」という文言を使用すれば足りたはずである。

被告が本件契約締結前の交渉段階において許諾の文言を用いて提案をしていたのは,専用実施権に対応する外国の実施権をも含めたためであり,これと専用実施権の設定登録とを併せて許諾と表現したにすぎない。過去の特許実費の支払について原告と被告は,本件契約の締結に当たり,締結日から3年間を目途として,相互に事業性及びビジネスパートナーとしての適格性を確認することとしていた(本件契約書2条2項参照)。被告は,原告の求めに応じ,上記3年間の確認期間経過後に精算することを前提に,専用実施権の設定されていない本件特許権等に係る特許実費を仮払したにすぎない。争点2(被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲)について【原告の主張】次のとおり,被告は,原告の特許権等が存在しない国や地域での販売額も含めてランニング・ロイヤルティの支払義務を負う。平成30年4月1日から同年6月29日までのランニング・ロイヤルティ額は,同年4月1日から同年9月30日までの183日間のランニング・ロイヤルティ額448万7710円を同年4月1日から6月29日までの90日の期間で日割り計算した220万7070円である。

ア本件契約書4条1項2号の「本件特許権等」には,外国における将来所有すべき特許権や外国における出願中の特許が含まれるから,現時点で有効に特許権が存続していない国における本件製品の販売についてもランニング・ロイヤルティの対象に含まれる。また,本件契約書1条1号において,本件特許権等は,「本件製品を技術的範囲に含む」ものとされてはいるが,他方で,技術的範囲未確定である将来に所有すべき特許権及び出願中の特許を含むことから,上記の「技術的範囲に含む」との文言も,「技術的範囲に含み得る」と解するべきである。このように,本件契約は,本件製品の販売について一般的,包括的に実施許諾をするというものである。

イ被告は,平成27年4月1日から平成30年3月31日までのランニング・ロイヤルティにつき,被告の販売した本件製品が個々の特許権の技術的範囲に属するか否かを問題とすることなくランニング・ロイヤルティを支払ってきた。また,被告は,前記第2の1イのとおり,平成30年4月1日から同年9月30日までのランニング・ロイヤルティについても上記同様の前提のもとで計算して弁済供託したほか,同年10月1日から平成31年3月31日までのランニング・ロイヤルティについても,上記同様の前提のもとで計算をしている。

【被告の主張】

ア被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲について次のとおり,被告は,本件特許権等の権利範囲に属する本件製品に関してのみランニング・ロイヤルティの支払義務を負うところ,平成30年4月1日から同年6月29日までのランニング・ロイヤルティの額は,三木プーリ株式会社(31台),三益HDS株式会社(1台),株式会社ディスコ(6台),橋本義肢製作株式会社(1台),株式会社北川鉄工所(2台)及びI-PEXES-Gripper(5台)への販売額合計の3%相当額である17万1000円に8%の消費税相当額1万3680円を加えた18万4680円である。実施料は,特許発明実施の禁止の解除ないしは専用実施権を設定する場合には同権利付与に対する対価であるから,特段の事情のない限り特許発明の実施を基準に算定されるべきである。

そして,本件契約書4条1項柱書は,本件契約書2条の実施許諾の対価としてランニング・ロイヤルティ等を支払う旨定めているところ,本件契約書2条1項は,本件特許権等の有効期間中,本件特許権等に基づき本件製品を開発,製造(製造委託を含む),販売等をすることにつき,専用実施権(専用実施権に対応する外国の実施権を含む)を設定及び許諾する旨規定し,ランニング・ロイヤルティ等の対象を,有効期間中の本件特許権等に基づく製品の販売等,すなわち,本件特許権等に係る特許発明の実施品の販売等であると特定している。

また,本件契約書4条1項2号は,「本件特許権等が有効に存続している国において本件製品を販売したときは,当該国における販売分について」のみランニング・ロイヤルティの支払義務が生じる旨を規定しているところ,「本件特許権等」とは「本件製品を技術的範囲に含む…特許権…」とされている(本件契約書1条1号)。このように,本件契約書4条1項2号における「本件製品を販売したとき」とは,本件製品を技術的範囲に含む特許権等が有効に存続している場合を意味するから,本件特許権等の技術的範囲に含まれる製品の販売のみがランニング・ロイヤルティの対象であることは明確である。

さらに,本件契約書3条1項は,本件製品にランニング・ロイヤルティ支払対象のものと支払対象外のものの両方が含まれることを前提として,完全独占実施権設定の対価の支払とランニング・ロイヤルティの支払とを調整するための規定であって,ランニング・ロイヤルティの対象について,本件特許権等の権利範囲に属する製品の販売のみであるとの理解をすることにより,初めて意味を持つ規定である。

以上によれば,本件契約書の各規定はいずれも前記の実施料の原則的な法的性質と整合的であり,前記の特段の事情は存在しない。本件契約締結前の交渉段階においても,被告は,原告に対し,ランニング・ロイヤルティの支払対象を本件特許権等の実施品に限定することを提案していた。

イ原告の主張についての反論本件契約におけるランニング・ロイヤルティの支払義務につき原告の主張するように解釈するのであれば,本件契約書1条1号につき「本件製品を技術的範囲に含む」ではなく「本件製品を技術範囲に含み得る」と規定すべきものである。また,同4条1項2号につき「本件特許権等が有効に存続している国において」や「当該国における販売分について」との限定を付す必要はなく,単に本件製品を販売したときにランニング・ロイヤルティを支払う旨規定すれば足りることになる。このように,原告の主張する解釈は,本件契約書の規定に沿わないものである。
第3 争点に対する判断

1事実認定前記前提事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定することができる。原,被告間のコンサルタント契約の締結

ア原告と被告は,平成25年9月20日,
①静電容量の変化を利用し,回転軸周りの静止トルクを検出するセンサであるトルクセンサ及び②MEMS技術を利用して製造され,錘に作用した加速度(力)を圧電効果で電荷に変換して発電する発電機であるマイクロ発電機を開発するに当たり,原告が被告に対して技術的な助言及び指導をすることを目的とし,期間を契約日から1年間,被告の支払う対価を2500万円とするコンサルタント契約を締結した。同コンサルタント契約においては,上記各製品の開発に当たって原告又は被告が単独でした発明及び考案についてはそれぞれが単独で出願し単独で権利者になること,これらの出願に関する費用は権利者となる者の負担とすることがそれぞれ定められていた(乙1の1)。

イその後,原告と被告は,平成26年9月20日,前記ア①及び②の各製品に,
③圧電効果を利用し,3次元空間の加速度を3軸成分に分けて検出するセンサである高感度加速度センサ,
④静電容量の変化を利用し,2次元平面の圧力分布を検出するセンサである触覚センサ及び⑤MEMS技術を利用して製造され,圧電効果で反射板が2軸周りに回転振動する反射装置であるMEMSミラーを加え,期間を1年間,被告の支払う対価を2300万円とした上で,原告又は被告が単独でした発明及び考案の権利関係及び出願費用の負担につき前記アと同内容の規定を含むコンサルタント契約を締結した(乙1の2)。

ウさらに,原告と被告は,平成27年4月1日,本件契約と開始時期をそろえるために,前記イのコンサルタント契約をいったん合意解約した上で,再度,対象製品を前記ア①及び②並びに前記イ③ないし⑤の各製品,期間を1年間,被告の支払う対価を2300万円とし,原告又は被告が単独でした発明及び考案の権利関係及び出願費用の負担につきに前記アと同内容の規定を含むコンサルタント契約を締結した(乙1の3。以下,前記アないしウのコンサルタント契約を併せて「本件コンサルタント契約」ということがある。)。本件契約締結に至る経緯

ア原告は,平成26年9月10日,被告に対し,「第一精工株式会社殿と弊社との取り組み(案)」と題する書面により,原告及びその関連会社等が権利を有する①圧電型加速度センサ(L字タイプ),
②触覚センサ(薄型力覚センサ),
③トルクセンサ,
④マイクロ発電機及び⑤MEMSミラーの各商品に関する特許権の独占的通常実施権又は専用実施権を被告又はその関係会社に許諾することを提案した。同書面における提案には,被告が販売価格の3%のランニング・ロイヤルティを支払うこと,契約締結後は,同書面に記載された日本国及び外国の特許権又は出願中の特許合計42件の全部につき維持年金,外国出願費用,翻訳料,代理人費用及びその他の経費を被告が全額負担するほか,上記①ないし⑤の各製品に関して原告が単独で出願した特許についても被告が独占権を有し,特許出願に関する費用を被告が全額負担することが含まれていた(乙5)。

イ被告は,平成26年11月5日,原告に対し,「株式会社ワコー殿と弊社取り組みについてのご提案」と題する書面により,前記アの原告の提案に対する対案を提示した。同書面における提案には,被告が原告から前記アの①ないし⑤の各商品に加えて,
⑥イのコンサルタント契約締結期間中に原告単独又は原,被告共同で新規開発した商品に関する専用実施権(独占権)の許諾を受けること,許諾期間を契約締結から15年間とし,同期間経過後は対象特許権の存続期間満了日まで被告が通常実施権を有すること,被告が原告に対し契約日から15年間又はロイヤルティ総額が30億円に達するまでのいずれか早い時点まで許諾特許を使用する商品の売上高の3%をランニング・ロイヤルティとして支払うこと,上記①ないし⑥の各商品に関して原告が単独で出願した特許についても,被告が専用実施権(独占権)を有する期間(15年間)において,特許出願,専用実施権登録に関する費用を被告が負担すること,専用実施権を許諾された特許に関する契約締結後の維持年金,外国出願費用,翻訳料,代理人費用及びその他の経費を被告が全額負担することが含まれていた(乙6)。

ウ原告は,平成27年1月30日,被告に対し,「第一精工株式会社殿と弊社との取り組み(案)」と題する書面により,前記イの被告の提案に対する対案を提示した。

同書面における提案には,許諾する権利を専用実施権ではなく独占的通常実施権とすること,前記イ⑥の商品のうち原告が単独で新規に開発した商品については被告が優先的に交渉権を有するにとどめること,許諾期間を契約締結から15年間とし,同期間経過後は対象特許権の存続期間満了日まで被告が通常実施権を有すること,特許の有効期間中は,被告がランニング・ロイヤルティを支払うこと,契約締結後に出願された特許につき,対象商品に関するものと原告が単独で出願した特許について,被告が独占的通常実施権を有し,かつ特許が有効である期間中は,特許出願等に関する費用を被告が全額負担すること,独占的通常実施権に関する対象商品の特許経費については被告が全額を負担することが含まれていた(乙7)。

エ被告は,平成27年2月24日,原告に対し,「株式会社ワコー殿と当社取り組みについてのご提案(4次案)」と題する書面により,前記ウの原告の提案に対する対案を提示した。同書面における提案には,イのコンサルタント契約期間中の原告単独開発商品については前記ウのとおり被告が優先的に交渉権を有すること,契約期間を対象商品の許諾特許の有効期間,許諾実施権を専用実施権とすること,対象商品の売上高ベースで3%をランニング・ロイヤルティとして支払うこと,専用実施権許諾特許については被告がその特許費用を負担すること,被告が,契約期間中,対象製品のうちいずれかを個別に又は全てを一括して許諾実施権を専用実施権から通常実施権に変更できる権利を留保することが含まれていた(乙8)。

オ原告は,平成27年2月26日,被告に対し,前記エの被告の提案に対し,許諾する実施権の内容につき,契約から3年間は専用実施権としそれ以降は独占的通常実施権とすることを要望した(乙10)。

カ前記アからオまでのやり取りを経て,原告と被告は,実施許諾契約について大筋で合意が整ったとして,被告において実施許諾契約書案を作成した上で細部を詰めることとし,被告訴訟代理人作成の実施許諾契約書案(乙11)を基礎として契約条項についての調整を重ね,本件契約の締結に至った。同実施許諾契約書案(乙11)における本件特許権等及び本件製品の定義部分(1条1号,3号),本件特許権等につき原告が被告に対して専用実施権等を設定及び許諾する部分(2条1項),ランニング・ロイヤルティの決定方法に関する部分(4条1項2号),被告が特許実費を支払うべき範囲に関する部分(5条1項)及び被告が特許実費支払義務を免れる場合に関する部分(同条2項)の各規定は,専用実施権等について再実施許諾権付であることが削除されたほかは,いずれも文言の変更なく,本件契約に引き継がれた(乙9~16)。本件契約締結後の当事者間のやり取りの状況等被告は,本件契約期間中,原告に対し,原告が出願した特許の内容の説明を求め,これに応じて原告も被告に対してその概要を説明していた(甲18~23)。また,被告は,原告からの特許実費請求に対し,必要に応じてその内容についての説明や出願に係る特許の明細書や請求項等の出願書類の写しの提供を求め,これに応じて原告も回答するなどしていた。被告は,原告の回答も踏まえ,原告の特許実費請求の内容を確認し,原告に対し特許実費を支払っていた(甲20,24~29)。被告内部におけるやり取りの状況等被告の知的財産部知財管理課に所属するB(以下「B」という。)は,平成28年11月30日,被告の常務取締役を務めるC(以下「C常務」という。)及び知的財産部の部長を務めるD(以下「D部長」という。)に対し,原告が出願して特許権の設定登録がされた8件の特許について専用実施権の設定登録を申請するに際し,本件契約では,専用実施権の設定登録期間中特許実費を支払うとされているとして,使用が見込まれない特許権について専用実施権の設定登録をしないことを含め,設定の要否の検討をするように依頼した(乙2)。被告による本件契約に基づく特許実費及びランニング・ロイヤルティの支払状況等

ア原告は,被告に対し,原告が有する特許権又は単独で発明して出願した出願中の特許で本件製品に関するものに関し,専用実施権の設定登録がされていないものも含めて,平成27年4月1日から平成29年9月30日までの間に発生した特許実費の全額を請求し,被告はこれを支払った。被告が上記のとおり支払った特許実費の対象となる特許権及び出願中の特許の中には,その権利範囲に,被告の製造販売等に係るいずれの製品も含まないものが多数あったほか,平成29年度第2半期分の特許実費請求の対象である特許権又は出願中の特許も複数含まれていた(甲2,6~15,24~28)。

イ被告は,原告に対し,本件特許権等の実施の有無を区別することなく本件製品の正味販売価格を計算し,圧電加速度センサについては原告との合意により正味販売価格の10%を基礎とした上で,これらに実施料率3%を乗じる方法で平成27年4月1日から平成30年3月31日までの期間のランニング・ロイヤルティを計算して支払っていた。また,被告は,平成30年10月16日,原告に対し,上記同様の計算方法に基づき,同年4月1日から同年9月30日までのランニング・ロイヤルティの額が448万7710円(消費税相当額を含む。)である旨報告し,同年12月25日には,原告が同年4月1日から同年9月30日までのランニング・ロイヤルティの受領を拒絶する意思を明確にしたとして,同額について民法494条に基づく供託をした。さらに,被告は,平成31年4月26日,原告に対し,上記同様の計算方法に基づき,平成30年10月1日から平成31年3月31日までのランニング・ロイヤルティの額を計算して報告した(甲5,33,36~42)。被告による本件変更通知

ア被告は,平成29年9月12日頃,同日付け書面により,原告に対し,本件特許権等のうち外国特許を含む25件の特許権について被告が有する専用実施権につき,同年5月24日をもって非独占的通常実施権に変更することを通知した(乙3)。

イ被告は,平成30年2月23日頃,同日付け書面により,原告に対し,本件特許権等について被告が有する全ての専用実施権につき,同年3月31日をもって非独占的通常実施権に変更する旨の本件変更通知をした(乙4)。原告による平成29年度第2半期における特許実費の請求及び被告によるその支払拒絶の経緯等(甲29)

ア原告は,平成30年4月23日,被告に対し,平成29年度第2半期における特許実費として請求する費用の一覧(甲2)をメールで送付するとともに,同月24日,被告に宛てて,原告の支払先から原告宛ての請求書の写しを郵送した。

原告の請求に係る特許実費の対象とされた特許権及び出願中の特許は,本件製品のいずれかに関する発明を含むものであり,これらに係る特許実費は4512万6043円であった(甲2,弁論の全趣旨)。

イBは,平成30年5月2日,原告代表者Aに対し,前記アの請求について,特に同年2月の最終週以降に費用が計上された案件について支払の対象かどうか判断できかねる点があるとして,PCT出願の移行期限に余裕がある4件の特許出願について移行の手続をとった理由,1件の米国出願について特許審査ハイウェイ(PatentProsecution Highway と英文表記される。以下「PPH」という。)の申請をした理由等をメールで質問した。

ウ原告代表者Aは,平成30年5月8日,Bに対し,発明者であり,原告において,外国出願に対する拒絶理由が発せられた際に対応することができる唯一の者である原告代表者Aが高齢となっているため,早期の権利化をすべく移行の手続をとったこと,同様の理由により,PPHの申請の効果が期待できなくても早期の権利化を優先したこと等をメールで回答した。

エBは,平成30年5月9日,原告代表者Aに対し,少なくとも権利化されていない案件については被告において独占的に実施できる機会がなかったため,本件契約上の特許実費の対象とならず,したがって,前記アの請求に係る費用のうち上記案件の費用については被告が支払う必要がないと考えている旨をメールで伝えた。

オ原告代表者Aは,平成30年5月9日,Bに対し,本件契約書1条1号に定める本件特許権等には将来所有する特許権及び出願中の特許も含むことから,同年3月までに出願した本件製品に係る全ての特許について特許実費を請求したこと,過去2年間も同様に請求し,被告から支払を受けていることをメールで回答した。

カBは,平成30年5月10日,原告代表者Aに対し,被告が専用実施権を有している特許権に限り特許実費を負担する旨が本件契約書5条1項において定められているため,被告が専用実施権を有していない本件特許権等の特許実費については被告が負担すべきものではないこと,過去の特許実費についても精査を開始する意向であることをメールで回答した。

さらに,Bは,平成30年5月16日,原告代表者Aに対し,過去に被告が特許実費を支払ったもののうち2391万8150円については特許権が発生してないものに関する費用であること,上記費用のうち,原告により出願取下げとなったものの費用115万1459円を除く2276万6691円については,将来的に独占的な実施権を得られるであろうとの期待から自発的に支払ったものにすぎず,本件契約上被告において支払義務のないものであること,少なくとも,上記出願取下げとなったものの費用及び本件変更通知後特許実費については,独占的な実施権を将来的に被告において設定し得ないことが明らかなものに関する費用であるから支払に応じかねることなどをメールで伝えた。

2争点1(被告が支払義務を負う特許実費の範囲)について本件契約の解釈等

ア特許実費の支払義務を負う対象となる権利の範囲について,本件契約書5条1項は,「専用実施権又は独占的通常実施権を有している本件特許権等」と規定しているところ,このうち,まず,「専用実施権又は独占的通常実施権を有している」との文言の解釈が問題となる。

法律上,専用実施権又は独占的通常実施権を有効に設定することができる対象は,特許権として成立したものであり,出願中の特許,将来出願される特許又は将来発生する特許権は含まれない。

1条において定義される本件特許権等についてのものであるとされ(前文),本件特許権等について,原告において現に所有する特許権のみならず,現に所有する出願中の特許,将来所有すべき特許権及び出願中の特許を含むものと定義されるとともに,これに含まれるものを例示した一覧には,出願中の特許も掲げられ(1条1号,別紙1),その上で,支払義務を負う特許実費の範囲として,特許権又は出願中の特許に係る出願,登録及び維持に要する実費であるとされている(5条2項)。また,本件契約書には,被告から原告に対して,本件製品の全部又は一部を単位として専用実施権又は独占的通常実施権を非独占的通常実施権に変更する旨の通知(2条3項)をした際には,当該通知がされた対象特許権又は出願中の特許について特許実費の負担義務を免れるとされ(5条2項),専用実施権又は独占的通常実施権の対象に出願中の特許を含むことが示されている。

このように,本件契約書には,特許実費の支払対象を専用実施権又は独占的通常実施権の設定された特許権のみであると明確に限定する旨の規定はなく,かえって,既に成立した特許権のみならず,出願中の特許,将来出願される特許及び将来成立する特許権を含めて専用実施権又は独占的通常実施権の設定及び許諾の対象とし,かつ,特許実費の支払対象として出願中の特許を含める規定が設けられているのである。そうすると,本件契約書5条1項の「専用実施権又は独占的通常実施権を有している」との文言は,専用実施権又は独占的通常実施権が法律上有効に成立するか否かを問わず,特許権又は出願中の特許で,原,被告間において専用実施権若しくは独占的通常実施権を設定する旨の合意又はこれらと同等の許諾をする旨の合意がされていることを意味すると解するのが相当である。

求の対象に含まれる特許権又は出願中の特許に係る費用も含め,原告の有する特許権又は単独で発明して出願した出願中の特許で,本件製品に関するものについて,平成27年4月1日から平成29年9月30日までの間に発生した特許実費の全額を支払っていたのであるが,このことは,上記解釈と整合するものである。

イ次に,本件契約書5条1項の「専用実施権又は独占的通常実施権を有している本件特許権等」のうち,「本件特許権等」との文言について,本件契約書1条1号において,本件特許権等が本件製品を技術的範囲に含むものと定義されていることとの関係で,その範囲の解釈が問題となる。

この点,本件契約書1条1号の定義において本件特許権等について本件製品を技術的範囲に含むとする概括的な表現とされていることに加えて,本件契約締結に至る交渉の状況を踏まえれば,上記の「本件特許権等」との文言は,いずれかの本件製品がその技術的範囲に属するとして発明を実施すると解されるものに限らず,本件製品のいずれかに関する発明を含むものを意味すると解するのが相当である。すなわち,本件契約締結に係る交渉において,原告は,被告に対し,本件契約締結後は,原告の有する本件製品に関する特許を対象として実施許諾をし,その対価として被告が販売価格の3%のランニング・ロイヤルティ告は,いったんは許諾特許を使用する商品の売上高の3%をランニング・ロイヤルティとして支払う旨の提案をしたものの(同イ),その後に,許諾特許を使用する商品と原告単独開発製品を対象商品としてその売上高の3%をランニング・ロイヤルティとその後,ランニング・ロイヤルティの支払条件として本件特許権等の実施の有無やその数については何ら触れられないまま,本件製品の正味販売価格に実施料率を乗じた額のランニング・ロイヤルティを支払う旨を定めた本件契約書が作成されているのである。

告が支払った特許実費の対象となる特許権及び出願中の特許の中には,その権利範囲に,被告の製造販売等に係るいずれの製品も含まないものが多数あったこと,同イのとおり,被告が,平成27年4月1日から平成31年3月31日までのランニング・ロイヤルティにつき,原告に対し,本件特許権等の実施の有無を区別することなく支払又は算定をしていたことは,前記解釈と整合するものである。特許実費の範囲以上の解釈を踏まえた上で,平成29年度第2半期における特許実費についてみる中の特許は,本件製品のいずれかに関する発明を含むものであり,これらに係る特許実費は4512万6043円であるから,平成29年度第2半期における特許実費は4512万6043円であると認められる。被告の主張について

ア被告は,その文言からも,本件契約締結の経緯からも,本件契約書5条1項は,被告が本件契約書2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施権を現に有している本件特許権等に限り被告において特許実費を負担することを規定するものであり,専用実施権は,その設定登録をしなければ効力が発生しないから,本件契約書5条1項は,被告において専用実施権の設定登録を受けた特許権のみを対象とすると解するべきである旨主張する。

本件契約書5条1項が被告において専用実施権の設定登録を受けた特許権のみを特許実費支払の対象とするものと解することはできない。

また,前記1のとおりの本件契約締結前の原,被告間の交渉における原告の提案内容や,原告が,本件契約締結後も,専用実施権の設定登録がされていないものについての特許実費を請求していたことに照らすと,原告は,一貫して特許実費の対象が被告において専用実施権の設定登録を受けた特許権に限られないことを前提とした行動をとっている。これに対し,被告は,原告に対し,被告が専用実施権(独占権)を有する期間中は,本件製品等に関して原告が単独で出願した特許に係る特許出願,専用実施権登録に関する費用を被告が負担し,専用実施権を許諾された特許に関する契約締結後の維持年金,外国出願費用,翻訳料,代理人費用及びその他の経費を被告が負担する旨や(イ),専用実施権を許諾された特許について被告がその特許費用を負担する旨の提案をしたにとどまり(エ),これらの提案内容からは,被告が,本件契約締結前の時点で,明確に専用実施権が設定登録された特許権に限り特許実費の支払の対象とする旨の意向を示していたとまでは認め難い。そうすると,本件契約締結前の交渉時の事情が直ちに被告の主張を裏付けるものとはいえない。

よって,被告の上記主張は採用することができない。

イ被告は,
①本件契約は,本件コンサルタント契約において,原告が単独でした発明の出願に関する費用は原告の負担とする定めがあることを前提とした上で,その例外として,被告が専用実施権を有するものについてその特許実費を負担することを定めたものであること,
②被告が特許実費を負担する必要があることを専用実施権設定の要否の検討の際の考慮要素としていること,
③本件特許権等の出願等は,専ら原告がその裁量で自己の権利として管理しており,被告が判断できるのは本件特許権等について専用実施権の設定登録を受けるか否かの点のみであることから,本件契約書5条1項は,被告において専用実施権の設定登録を受けた特許権のみを特許実費の支払対象とするものと解するべきである旨を主張する。

上記①の点につき,前記1のとおり,本件コンサルタント契約では,製品の開発に当たって原告又は被告が単独でした発明及び考案について,それぞれが単独で出願し単独で権利者になり,これらの出願に関する費用は権利者となる者の負担とするとされており,本件製品と本件コンサルタント契約の対象となった製品には重複するものも存在するのであるが,本件コンサルタント契約の上記条項は,のコンサルタント契約時から同内容のままであったのに対し,最初のコンサルタント契約締結から約1年して交渉が開始されて本件契約が締結されるに至ったことからすれば,原,被告間においては,本件契約の締結により,原告が単独で発明して出願し権利者となった特許についても,本件契約の対象となる限りは,本件契約に従って特許実費を負担する旨の合意がされたものと解することすほどの不合理な点はない。

上記②の点について,前記1のとおり,Bは,平成28年11月30日,C常務及びD部長に対し,原告が出願して特許権の設定登録がされた8件の特許について専用実施権の設定登録を申請するに際し,本件契約では,専用実施権の設定登録期間中特許実費を支払うとされているとして,使用が見込まれないような特許権について専用実施権の設定登録をしないことを含め,設定の要否の検討をするように依頼しているのであるが,前記1アのとおり,上記のやり取り以降も含め,被告が原告に対し,専用実施権を設定していないものも含めて原告が有し又は単独で発明し出願した本件製品に関する特許権及び出願中の特許を対象として平成27年4月1日から平成29年9月30日までの特許実費の全額を支払っていたことに照らすと,上記の被告上記③の点について,原告が被告の了承を得ることなく本件特許権等の出願等をしていたとしても,前記1のとおり,被告は,原告から,出願した特許の概要の説明を受けていたほか,必要に応じて原告に対して原告の出願に係る特許に係る明細書や請求項等の出願書類の写しの提供を求めていたものである。そして,被告は,これらを踏まえ,本件契約書2条3項に基づき,いつでも専用実施権の許諾を受けた権利につき非独占的通常実施権に変更し,特許実費の負担を免れることができたのであるから(本件契約書5条2項)ものであるとはいえない。

ウ被告は,本件変更通知以降は,被告が本件特許権等につき何らの専用実施権を有しないことが明確となった以上,それ以降に発生した本件変更通知後特許実費については,本件契約上,被告が負担すべきものと解釈されるべきではないし,仮にそのように解釈されたとしても,本件変更通知後特許実費の発生原因となった原告による特許出願等が被告にとって必要性がなく,また,早期に行われる必要もないものであったことも踏まえると,原告の本件変更通知後特許実費の請求は権利の濫用に該当する旨主張する。

しかしながら,前記のとおり,本件契約上,原,被告間に本件特許権等についての専用実施権の設定合意が存在する間は,被告が本件特許権等の特許実費を負担すべきであると解されるところ,本件変更通知によって上記の合意が解消されるのは平成30年3月31日である上に,本件変更通知の対象には本件特許権等に含まれる出願中の特許は含まれておらず,アの本件特許権等の文言の解釈を前提とすると,本件変更通知の対象とされたのは本件契約の対象となる本件特許権等のうちの一部にとどまることとなるから,本件変更通知により被告が本件特許権等につき何らの専用実施権を有しないことが明確になったともいえない。

また,証拠(甲2,43)及び弁論の全趣旨によれば,原告の請求に係る平成29年度第2半期における特許実費のうち,原告において平成29年11月10日以前に特許事務所に対して出願等の依頼をしたにもかかわらず,特許事務所からの実際の請求が平成30年2月23日以降にされたにすぎないものも相当額含まれていることが認められるし,また,これに当たらないものに関し,原告において,同日以降に殊更同年3月31日までに特許出願等の特許実費を発生させる行為をしたと認めるに足りる証拠もないこと,本件契約上,被告における実施の必要性がないこと等を理由として被告において特許実費の負担を免れることができる旨の定めも存在しないことに照らすと,原告の本件変更通知後特許実費の請求が権利の濫用に該当するともいえない。

エ被告は,過去に原告の有する本件製品に関する特許権及び出願中の特許を対象としてその特許実費全額を支払っていた点について,後に精算することを前提に仮払したにすぎない旨主張する。

しかしながら,本件契約書上,支払対象とならない特許実費に関する仮払やその精算に関する定めは存在しない上に,証拠(甲6~15,24~28)及び弁論の全趣旨によれば,被告が,原告の特許実費の請求に応じてその支払をするに当たり,仮払であることや後に精算する必要があることを示すことなく支払をしたことが認められるほか,前記1は,過去の特許実費の支払につき,仮払という説明ではなく,支払当時将来的に独占的な実施権を得られるであろうとの期待から自発的に支払ったなどと説明していたのであって,他に被告が原告に対して仮払であることや精算の必要性があることを支払の際に示していたことをうかがわせる証拠もないことに照らすと,被告の上記主張は採用することができない。まとめ以上によれば,被告は,原告に対し,本件契約に基づく平成29年度第2半期における特許実費4512万6043円から支払済みの6万5200円を控除した残額4506万0843円の支払義務を負うと認められる。

また,前記第2の2被告による上記特許実費支払義務の不履行により,平成30年6月29日の経過をもって解除されたものと認められる。

3争点2(被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲)について本件契約の解釈等ランニング・ロイヤルティの支払義務を負う場合について,本件契約書4条1項2号は,「本件特許権等が有効に存続している国において」と規定しているところ,このうち,「本件特許権等」については,原告が現に所有する特許権及び出願中の特許並びに原告が将来に所有すべき特許権及び出願中の特許を含むものであり(本件契約書1条1号),これを踏まえれば,本件契約書4条1項2号の上記文言のうち「有効に存続している」との文言については,本件特許権等のうち同号の対象となるものを限定する趣旨であると解するのが自然である。そして,その文言に照らせば,本件特許権等のうち同号の対象となるのは,現に有効に存続している特許権,又は出願後に取り下げられたり,拒絶査定が確定した等の事情が存在せず,特許権として発生する余地のある特許出願であり,まだ出願すら存在しない将来所有すべき出願中の特許又は特許権については除かれると解するべきである。さらに,本件契約書4条1項2号は,本件特許権等が有効に存続している国において本件製品を販売したときに当該国における販売分についてランニング・ロイヤルティの支払義務を課すものであるから,ランニング・ロイヤルティの支払義務につき,本件特許権等に含まれる特許権又は出願中の特許が存在する国における本件製品の販売に限定することを定めたと解するのが自然である。

また,前記2イのとおり,本件契約書1条1号の「本件製品を技術的範囲に含む本件特許権等」とは,本件製品のいずれかに関する発明を含む本件特許権等を意味するものである。

以上によれば,被告は,発明の対象が本件製品のいずれかに該当する特許権又は出願中の特許が存在する国において本件製品を販売したときは,原告に対し,本件契約書4条1項2号に基づき,当該国における販売分について,ランニング・ロイヤルティとして,本件製品の正味販売価格の3%相当額及び消費税相当額を支払う義務を負うということができる。被告の主張について

ア被告は,実施料につき,特許発明実施の禁止の解除ないしは実施専有権付与に対する対価であるから,特段の事情のない限り,特許発明の実施を基準に算定されるべきである旨主張する。

しかしながら,特許発明実施の禁止の解除ないしは実施権許諾の対価として実施料の性質をとらえることができるとしても,多数の特許権等を一括して実施許諾する際に,実施許諾の対象となる特許権及び出願中の特許の技術的範囲に属するか否かにかかわらず,製品の名称を特定しその販売額に応じてランニング・ロイヤルティを定めれば,実際に実施する特許権等の数にかかわらずランニング・ロイヤルティを一定額にとどめることができる上に,その算定に当たり実施の有無について争いとなることを防ぐこともできるという点において合理的なものであり,そのような合意をすること自体は何ら不自然なものではないから,特許権等の実施許諾契約において,特段の事情のない限り,被告の主張するような実施料の算定に関する合意が存在するということはできない。出願中の特許についても,出願公開後に生じる補償金請求権の行使を回避できる上に,本件契約上,特許権が発生すれば当然に実施許諾の対象となること(本件契約書2条1項)に照らすと,これを実施許諾の対象とすることも何ら不合理ではない。

また,被告が本件契約書4条1項2号の解釈について種々主張する点は,いずれも前に判示したとおりであって,採用することができない。この点,被告の本件契約書3条1項に基づく主張については,同条項は原告及び被告が共同でした発明等に関する規定であるから,原告において単独で有する本件特許権等に関するランニング・ロイヤルティの支払義務を定めた本件契約書4条1項2号の解釈に同条項が影響を与えるものではない。

イ被告は,本件契約締結前の交渉段階においても,被告は,原告に対し,ランニング・ロイヤルティの支払対象を本件特許権等の実施品に限定することを提案していた旨主張する。この点,被告は,当初は,ランニング・ロイヤルティの支払対象を本件特許権等の実施品に限定する旨の提案をしてはいるものの,同エのとおり,その後にされたランニング・ロイヤルティに関する提案にはそのような限定はされておらず,前記1本件契約締結後も,本件特許権等の実施の有無を区別することなくランニング・ロイヤルティを計算して支払っていたことに照らすと,被告が支払うべきランニング・ロイヤルティの額について証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許権等が有効に存続する日本国内において被告が販売した本件製品の正味販売価格の3%相当額は,平成30年4月につき67万8300円,同年5月につき72万2100円,同年6月につき118万8017円であり,その合計額は258万8417円であると認められ,これに8%の消費税相当額20万7073円(1円未満の端数切捨て)を加えた額は279万5490円となる。そして,上記金額と原告の請求する220万7070円との差額である58万8420円を超えるランニング・ロイヤルティが,平成30年6月30日に発生したことをうかがわせる証拠はないから,本件契約に基づき被告が支払うべき同年4月1日から同年6月29日までのランニング・ロイヤルティの額は,原告の請求する220万7070円を下回るものではないと推認することができる。被告による弁済供託について前記第2の1おり,被告は,平成30年12月25日,同年4月1日から同年9月30日までの本件契約に基づくランニング・ロイヤルティとして448万7710円を供託しており,この供託は民法494条に基づく有効な供託として弁済の効力を生じたと認められるから,これにより原告が有していたランニング・ロイヤルティの支払義務は消滅している。まとめ以上によれば,原告のランニング・ロイヤルティ支払請求は理由がない。
第4 結論
よって,原告の請求は,特許実費4506万0843円及びこれに対する平成30年6月13日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金の支払並を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官山田真紀
裁判官神谷厚毅
裁判官矢野紀夫(別紙)契約条項前文被告と原告は,原告が有する本件特許権等(定義は1条のとおり)の実施許諾に関し,以下のとおり契約を締結する。

1条(定義)本件契約において,別段の定めがある場合を除き,次の各用語は,次に定める意味を有するものとする。

① 「本件特許権等」とは,本件製品を技術的範囲に含む原告が現に所有し又は将来に所有すべき特許権及び出願中の特許(これらに対応する外国における特許権及び出願中の特許を含む。本号において以下同じ。)の総称を意味する。本件特許権等には別紙1(判決注・本件契約書に添付された別紙である。)に係る対象特許目録記載の特許権及び出願中の特許,並びにこれらの特許権及び出願中の特許に関する分割出願,継続出願,一部継続出願,再発行,更新,延長及び追加が含まれる。

③「本件製品」とは,圧電型加速度センサ(L字タイプ),触覚センサ(薄型力覚センサ),トルクセンサ,マイクロ発電機,及びMEMSミラーを意味する。

④ 「正味販売価格」とは,被告が第三者に本件製品を販売した販売高の税抜金額を意味する。

2条(本件特許権等の実施許諾)

1原告は,被告に対し,本件特許権等の有効期間中,本件特許権等に基づき,被告が全世界において本件製品を開発,製造(製造委託を含む。),販売,使用,販売の申出,輸出及び輸入することにつき,専用実施権(専用実施権に対応する外国の実施権を含む。)を設定及び許諾する。原告は,本件契約締結後速やかに,被告が本項所定の専用実施権の設定登録を行う手続に協力する。

2前項の定めにかかわらず,本件契約締結日から3年間を経過したときは,前項の専用実施権は独占的通常実施権(独占的通常実施権に対応する外国の実施権を含む。)に変更されるものとする。ただし,本項本文の変更を除き,被告が有する実施権の内容については維持されるものとする。

3本件契約における他の定めにかかわらず,被告は,本件契約の有効期間中,自己の選択により,本件製品の全部又は一部を単位として,本件契約に定める専用実施権及び独占的通常実施権を非独占的通常実施権に変更する権利を有する。被告は,当該変更をするときは,書面による変更通知を原告に対して行うものとする。被告による当該変更通知をもって被告の実施権は変更対象製品について非独占的通常実施権に変更されるものとするが,独占性以外の実施権の内容については維持されるものとする。

4原告及び被告は,原,被告間で別途締結するコンサルタント契約の有効期間中に原告が開発した製品について,被告が当該製品の事業化を希望したときは,原告は被告に対して当該製品に関する特許権及び出願中の特許の実施許諾を含む契約締結に関する優先交渉権を付与するものとし,両者は契約締結に向けて誠実に協議するものとする。

3条(原,被告共有の発明及び考案に係る知的財産権の実施)原告及び被告は,2条4項のコンサルタント契約の有効期間中に原,被告が共同で成した発明及び考案(以下「共同特許」という。)については,相手方に何らの支払を要せず原,被告それぞれが自ら実施できることを相互に確認し,本件製品を技術的範囲に含む原,被告共有の発明及び考案に係る知的財産権について原告又は被告が単独での実施を希望し,相手方と協議の上その承諾を得て独占的に実施(第三者への実施委託を含む。)及び実施許諾を行う権限(以下「完全独占実施権」という。)を得たときは,当該相手方が当該知的財産権を自己又は第三者をして実施しないことを条件に,本項に定める知的財産権の出願,登録及び維持に要する実費を負担するほか,完全独占実施権を有している期間に限り,完全独占実施権を実施して本件製品を販売したときは,相手方に対し,完全独占実施権設定の対価として,本件製品の正味販売価格の3%相当額(税別)を支払う。ただし,完全独占実施権の実施対象製品が本件契約書4条1項2号所定のランニング・ロイヤルティ支払対象の本件製品と重複し被告がランニング・ロイヤルティを支払う場合,被告は,本項所定の完全独占実施権設定の対価の支払義務を負わない。

4条(実施料)

1被告は,原告に対し,2条の実施許諾の対価(以下「実施料」という。)を支払う。

① 一時金被告は,原告に対し,本件契約締結日から60日以内に,本件契約締結日時点において本件特許権等の出願に関して原告が支出した別表1(判決注・本件契約書に添付された別表である。)に示す特許の実費総合計6748万8800円を一括して支払う。

② ランニング・ロイヤルティ被告は,本件特許権等が有効に存続している国において本件製品を販売したときは,当該国における販売分について,原告に対し,ランニング・ロイヤルティとして,本件製品の正味販売価格の3%相当額(税別)を支払う。

③ 最低保証実施料前2号のほか,被告は,2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施権を有している期間に限り,原告に対し,1年間(始期を毎年4月1日,終期を翌年3月31日とする。)当たり以下に定める最低保証実施料を支払う。具体的には,本項前②号にて定めるランニング・ロイヤルティの実績金額が本号所定の最低保証実施料に係る金額に満たない場合に限り,被告は,最低保証実施料と実績金額の差額分を原告に支払う。

(i) 2条4項のコンサルタント契約の有効期間中1年間当たり1500万円(税別)(ii) (i)以外の場合1年間当たり3500万円(税別)

2被告は,本条前項②号に係るランニング・ロイヤルティに関し,本件契約期間中の各半期(第1半期を4月1日~9月30日,第2半期を10月1日~3月31日とする)の終了後30日以内に当該半期における本件製品別の正味販売価格合計,主要販売先及びランニング・ロイヤルティ額を原告に報告するとともに,当該報告に基づいて原告が請求書を被告に送付して被告が受領した日から30日以内に当該ランニング・ロイヤルティ額を支払う。

4被告が,原告に対し,実施料を支払期限までに支払わなかった場合,被告は当然に期限の利益を失い,加えて,当該支払期限から実際に支払を行う日までの期間につき,年14.6%の割合による遅延損害金を原告に支払う。

条(本件特許権等に関する費用)

1被告は,2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施権を有している本件特許権等に限り,当該特許権又は出願中の特許に係る出願,登録及び維持に要する実費(以下「特許実費」という。)を負担する。ただし,当該独占的通常実施権下において原告が自己の実施権を行使しようとするときはあらかじめ被告に通知するものとし,以降の費用負担は原,被告折半とする。

2被告が本件特許権等の全部又は一部について2条3項に基づく非独占的通常実施権への変更通知をしたときは,当該変更通知がなされた対象特許権及び/又は出願中の特許については,前項の費用負担義務を免れるものとし,以降は,原告が自己の責任と費用をもって当該対象特許権及び/又は出願中の特許の維持を行う。

3原告は,本件契約期間中の各半期(第1半期を4月1日~9月30日,第2半期を10月1日~3月31日とする)の終了後30日以内に当該半期における特許実費を集計して,その明細及び支払先とともに被告に報告する。被告は当該報告に基づいて原告が請求書を被告に送付して被告が受領した日から30日以内に特許実費を支払う。

条(契約期間)本件契約の有効期間は,本件契約締結日から本件特許権等の最終の存続期間満了の日までとする。ただし,理由の如何を問わず,本件特許権等の存続期間満了前に本件特許権等がすべて消滅した場合には,本件契約は当該全部消滅日をもって自動的に終了する。

11条(契約の解除)

1原告及び被告は,相手方が本件契約に定める義務に違反した場合は,催告の上,本件契約を解除することができる。以上

出典: 平成31年(ワ)第3197号 裁判所ウェブサイト掲載の判決文 →

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