システムの特許を取るときには、システムの特許を取ることだけにこだわり過ぎず、柔軟に考えることが重要です。具体的には、次の3つのポイントに気を付ける必要があります。
1つ目が特許を取る対象です。例えば、インターネットを使ってユーザーにサービスを提供するシステムの特許を取る場合は、システムのみならず、システムを構成するサーバーやシステムを使うためにユーザーのスマホ等にインストールするプログラム等についても特許を取ることを検討します。
2つ目が特許を取得する国です。日本だけで特許を取るのではなく、システムを稼働させる可能性がある国での特許の取得も検討しましょう。
3つ目があえて特許を取らない場合もあることを念頭におくことです。特許のアイデアが使われているのかを確認するのが困難なアイデアについては、特許を取っても特許の効果が薄くなりがちです。そのため、特許を取らない選択もあり得るため、特許を取るのか、よく検討する必要があります。
システムの特許を取るときに気を付けるべき3つのポイント
システムの特許を取る時に気を付けるべき3つのポイントがあります。1つ目が特許を取る対象です。2つ目が特許を取得する国です。 3つ目があえて特許を取らない場合もあることを念頭におくことです。
1.特許を取るべき対象

例えば、インターネットを使ってユーザーにサービスを提供するシステムについて特許を取る場合を考えます。
このようなシステムについて特許を取る場合には、システム全体について特許を取るだけでなく、システムの一部を構成する部分についても特許の取得を検討します。例えば、システムを構成するサーバーやシステムを使うためにユーザーのスマホやパソコン等にインストールするプログラム等について特許の取得を検討します。
システム全体の特許しか取っていないと、システムの一部だけを真似された場合に真似を防止できない可能性があります。例えば、システムを使うためにユーザーのスマホやパソコンなどにインストールされるプログラムだけを真似された場合には、システムの特許だけでは真似を防止できない可能性があります。
システムの特許の他にソフトウェア特許なども取得する
システム以外に特許が取れる可能性があるものとしては、例えば、システムを使うためにユーザーのスマホやパソコンなどにインストールされるプログラム、スマホやパソコンにインストールするアプリのユーザーインターフェース、システムの一部を構成するサーバーなどでのデータの処理方法などがあります。
このようなソフトウェアに関連する部分についても、真似がされる可能性が高い部分については特許を取得すると良いでしょう。
2.特許を取るべき国
システムによっては、システムの一部を構成するサーバーを海外に設置するなど、日本と日本以外の国をまたいでシステムを稼働させる場合もあります。
日本で特許を取ったアイデアは日本でしか守られないため、海外に設置するサーバーについては日本の特許では守れません。そのため、システムを一部でも稼働させる可能性がある全ての国において特許を取得することが望ましいです。
ただし、日本以外の国で特許を取得する場合は、一般的に日本で特許を取得するのにかかる費用よりも高額になるため、システムを稼働させる可能性がある全ての国において特許を取得することは現実的ではありません。そのため、システムを稼働させる可能性の高い国(例えばアメリカなど)から優先して特許を取得すべきかを検討すると良いでしょう。
3.特許を取るか検討が必要なアイデア
例えば、サーバー内部での動作のアイデアについて特許を取っても、特許のアイデアが使われているのかを確認するのが困難です。サーバー内部での動作は、一般的に外部から確認できないからです。そのため、使われていることを外部から確認することができないアイデアについては、特許を取るのかをよく検討する必要があります。
特許は申請すると特許のアイデアの内容が公開されます(参考:特許が公開される理由と公開された特許の調べ方の記事)。
使われていることを外部から確認するのが困難なアイデアについて特許を取っても、特許を取ったアイデアが自分の知らないところで使われてしまう可能性があります。
そのため、このようなアイデアについては特許を取らずにノウハウとして保護する場合もあります。その一方で、他社に特許が取られるのを防止するために特許を取りにいくという場合もあります。
特許を取る場合のメリットとデメリット、特許を取らない場合のメリットとデメリットなどをよく検討して、特許を取るのか検討する必要があります。
よくある質問
Q1. システムの特許は、ソフトウェア特許と何が違いますか?
厳密な区別はありませんが、本記事ではネットワークやサーバーを含めた仕組み全体を「システム」、その中で動くプログラムやアプリの処理を「ソフトウェア」とイメージしています。実務上は、システム全体のクレームに加えて、サーバー装置やプログラム、ユーザー端末側のアプリなどを個別にクレームしておくことが多いです。
Q2. システム全体とサーバー・プログラムの両方を出願するメリットは何ですか?
システム全体だけを特許にしていると、システムの一部だけを真似された場合に権利行使が難しくなることがあります。サーバーでの処理方法やユーザー端末側のプログラムなど、模倣されやすい箇所について個別にクレームを用意しておくことで、侵害態様に応じて柔軟に権利行使しやすくなります。
Q3. 海外での特許は、いつ・どの国から検討すべきでしょうか?
日本出願から1年以内であれば、優先権を主張して海外出願する選択肢があります。すべての国で特許を取るのは現実的ではないため、ビジネス上の重要度が高い国(例えばアメリカや欧州など)から優先して検討するのが一般的です。将来稼働させる可能性のある国も含めて、早い段階で方針を決めておくと安心です。
Q4. サーバー内部の処理のように、外から見えないアイデアでも特許を取るべきですか?
サーバー内部の処理など、第三者から侵害の有無を確認しにくいアイデアは、特許を取っても権利行使が難しい場合があります。一方で、他社に先に特許を取られると自社の開発が制約されるリスクもあるため、「ノウハウとして秘匿するか」「あえて特許を取るか」をメリット・デメリットを比較しながら検討する必要があります。
Q5. 自社システムでどこまで特許を取るべきか相談できますか?
はい、可能です。システムの全体像や今後の展開、海外展開の有無などによって、出願すべき対象や国は変わります。当サイトの無料相談からご相談いただければ、前提を伺ったうえで「どこまで特許を取るか」「どこはノウハウに留めるか」を一緒に整理します。
気を付けるポイントを理解した上で特許を取るか検討しよう
システムの特許を取るときに気を付けるポイントをお伝えしました。システムの特許を取るときには、システムの特許を取ることだけにこだわり過ぎず、柔軟に考えることが重要です。具体的には、次の3つのポイントに気を付ける必要があります。
1つ目のポイントは、特許を取る対象をシステムに限定せずに、システムを構成する各部分のアイデアについても特許を取ることです。2つ目のポイントは、特許を取得する国を日本に限定せずに、実際にシステムを稼働させる国について特許の取得を検討することです。3つ目のポイントは、アイデアによっては、ノウハウで保護するか特許で保護するかよく検討することです。
このような各ポイントを理解した上で、システムの特許について、どのように特許を取るのかを検討してみましょう。自社のビジネスモデルや開発計画と照らし合わせて、どこまでを特許で押さえ、どこまでをノウハウとして社内にとどめるのかを整理しておくことが大切です。
特許を取得するための特許出願について詳しく知りたい方は、特許の取り方と出願の流れの記事を参考にして下さい。
次の一歩
- 特許の基礎と実務ガイド:この記事の周辺テーマも含めて、特許全体の流れを整理したい方はこちら。
- 知財・試作・商標価値評価の総合ガイド:特許以外の選択肢も含めて整理したい場合はこちらをご覧ください。
- 無料相談(30分):状況に合わせて「システムを特許でどう守るべきかなど」を一緒に検討します。
この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)







