出願前の準備資料チェックリスト(名前・ロゴ・商標編)

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このページは、「商標を出願したいけれど、どんな資料を集めておけばいいか分からない」「弁理士に相談する前に、社内で整理しておきたい」という方向けのチェックリストです。

すでに公開中の「発明・特許編」「デザイン・意匠編」と同じく、出願の直前に慌てないための「事前整理シート」として使えるように構成しています。この記事を読みながら、手元のメモやスプレッドシートなどに書き出していってください。

まずは、次の3つだけ整理できれば十分です:

  • 守りたい商標名(候補名)のリスト
  • それを使っている(使う予定の)商品・サービス
  • 今すぐ出願したいもの/次のフェーズでよいもの

1. このチェックリストの使い方

ここで整理するのは、次の3つです。

  • いま使っている(または使う予定の)名前・ロゴ・ブランド全体像
  • それをどこで・どのように使っているか(使用実態)
  • どの商標から優先的に出願すべきかというざっくりした優先度

すべてを完璧に埋める必要はありません。「分かる範囲で埋める → 足りないところをあとから補う」「迷うところは弁理士と詰める」というイメージで使っていただければ十分です。

チェックシートのイメージ

まずは、下のシートのようなイメージで「分かる範囲だけ」書き出してみてください。紙のメモでも、自社で使っているExcel/スプレッドシートでも構いません。同じ項目の列を作って、そこに商標候補を1行ずつ入れていくイメージです。

※下の表は、「まずはこのくらいの粒度で一覧にする」ための骨格です。チェックリストにある細かい内容(略称・ハッシュタグ、URL、認知状況など)は、必要に応じて各行の「メモ」欄や別シートに追記していけば十分です。

商標名
(候補名)
種別(ブランド/サービス/ロゴなど)使用媒体(サイト・店舗など)使用開始時期主要な商品・サービス優先度(高/中/低)メモ
例:◯◯PAYサービス名公式サイト、アプリ2026年4月予定キャッシュレス決済サービス略称:◯◯、#◯◯/主要顧客:◯◯業界/将来的に海外展開も検討

このように、まずは「1行=1ブランド」で全体像を並べてから、必要に応じてメモ欄や別シートで細かい情報を足していくのがおすすめです。

2. チェックリスト(ネーミング・ブランドの基本情報)

まずは、出願を検討している名前やロゴを、できるだけ漏れなく書き出します。ここで整理した情報は、後の「優先順位づけ」「区分検討」にもそのまま使えます。

基本情報のチェック項目

★ 出願を検討している商品名・サービス名・ブランド名を書き出した(例:◯◯PAY、◯◯ラボ、◯◯スクール)
★ 上記の略称・愛称・ハッシュタグなど表記も書き出した(例:通称「◯◯」、#◯◯で投稿している)
★ ロゴマークがある場合、画像データ(PNG・JPGなど)の保存場所を把握している
★ 文字だけで使うパターン(標準文字)と、デザイン付きロゴで使うパターンの両方があるかどうかを整理した
★ 会社名や屋号とは別に、個別の商品・サービスだけに使う名前があれば区別して書き出した
★ 今後使う予定のブランド拡張(新サービス名・派生プラン名など)があれば、候補として列挙しておいた

ここで大事なのは、「いま使っているもの」だけでなく「近い将来使う予定のもの」も一緒に整理しておくことです。後からブランドを細かく分けたくなった場合の、出願戦略のヒントになります。

3. チェックリスト(どこで・どう使っているか:使用実態)

次に、整理した名前・ロゴを、どこで・いつ頃から・どのように使っているかを書き出します。これは、先使用権の検討や、優先順位づけの判断材料になります。

使用実態のチェック項目

★ 各商標ごとに、使用している媒体を書き出した(例:Webサイト、ECサイト、パンフレット、店舗看板、アプリ内表示、SNSプロフィールなど)
★ それぞれの商標について、実際に使い始めた時期(◯年◯月頃〜)をメモした
★ オンラインで使っている場合、ドメイン名・URL・アカウント名を一覧にした
★ オフラインで使っている場合、使用している地域・店舗が分かるよう整理した
★ すでに取引先やユーザーの間で、一定の認知があるかどうか(例:◯社との取引実績、ユーザー数・会員数の目安など)を書き出した
★ まだ全く使っていない名前については、いつ頃から使用開始する予定かをメモした

ここで整理した情報は、「先にどれを押さえるべきか」を決めるときの重要な材料になります。露出が大きいもの、今後の柱になりそうなブランドから優先的に検討していきます。

4. チェックリスト(ざっくり優先順位・区分のイメージ)

商標出願では、本来「区分(第◯類)」をきちんと検討する必要がありますが、細かい区分の切り方は弁理士が設計する部分です。ここでは、あくまで「事業のどの領域で使うのか」をざっくり整理しておきましょう。

優先順位と使途イメージのチェック項目

★ 各商標について、どの商品・サービスに使うのかを1行で書いた(例:SaaS型業務システム、オンライン講座、ECサイトで販売する食品など)
★ 売上や事業計画の観点から、特に守りたい「柱」ブランドにマークを付けた
★ 「今すぐ出願したいもの」「次のフェーズで検討するもの」など、ざっくり優先度(高・中・低など)を付けた
★ 既に他社の類似商標が気になっている領域(競合が多い業種など)があれば、メモ欄を作っておいた

この段階では、区分の番号まで無理に決める必要はありません。「どんな事業で使っている/使う予定か」が整理されていれば、弁理士側で適切な区分案を組み立てやすくなります。

5. 簡易チェック:自分でできる「ざっくり類似調査」のメモ

本格的な調査は弁理士に任せるとしても、自社のブランド戦略を考えるうえで「ざっくり把握しておきたい」という方も多いと思います。以下のような簡易チェックをしてみて、結果をメモしておくとよいでしょう。

★ 商標候補をそのままGoogle検索し、同じ業種で似た名前・ロゴを使っている会社がいないかざっと確認した
★ 必要に応じて、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)の簡単検索で同じ・似た名前を検索してみた
★ 「これは明らかに似ているのでは?」と感じた事例があれば、URLやスクリーンショットを保存しておいた
★ 自社の商標候補が、ごく一般的な説明用の言葉(例:おいしいパン、安い家具など)だけになっていないかを確認した

ここでのチェックはあくまで「感触を掴む」ためのものであり、登録可否や侵害の有無を最終的に判断するものではありません。気になる結果が出た場合は、そのまま弁理士に情報を渡して、専門的な観点で評価してもらうのがおすすめです。

6. 弁理士に渡すとスムーズな資料一覧

最後に、実際に出願や調査・相談を依頼するときに、一緒に渡しておくと話が早くなる資料をまとめておきましょう。

★ 整理した商標候補一覧(名前・ロゴ・略称など)
★ それぞれの使用実態(媒体・開始時期・地域など)のメモ
★ WebサイトやLP、ECページ、アプリ画面など、実際の使用画面のスクリーンショット
★ ロゴデータ(可能であれば、ベクターデータ(AI/SVGなど)+画像ファイル
★ 今後1〜2年で予定している事業展開や、ブランド拡張のイメージを書いた簡単なメモ
★ すでに気になっている競合ブランドや、似ていそうな他社商標の例(分かる範囲で)

ここまで整理できていれば、「どの商標を、どの範囲で、どの順番で押さえるか」について、かなり具体的な相談がしやすくなります。

7. よくある質問

Q1. まだ名前が完全に決まっていませんが、チェックリストを使う意味はありますか?

はい、あります。むしろ「候補段階」だからこそ整理しておきたい情報が多くあります。候補名が複数ある場合でも、

  • どの商品・サービスで使いたいのか
  • どの候補が事業の柱になりそうか
  • どの候補を先に出願したいか

といった観点で比較検討しやすくなります。最終候補が1つに絞り切れていない段階でも、分かる範囲で書き出しておきましょう。

Q2. ロゴと文字、どちらを先に出願すべきか分かりません。

一般論としては、実際に使う場面が多いほうから優先して出願を検討することが多いです。たとえば、

  • Webサイト・資料などで、文字だけで表示する場面が多い → 文字商標(標準文字)を優先
  • パッケージ・看板など、ロゴ一式で見せる場面が多い → ロゴ商標を優先

どちらが適切かは事業によって異なりますので、チェックリストで「実際の使い方」を整理した上で、迷う場合は弁理士に相談いただくのが安心です。

Q3. まだ使用を開始していない名前でも、出願して大丈夫ですか?

日本の商標制度では、将来使用する予定の商標でも出願することが可能です。ただし、長期間まったく使用しないままだと、不使用取消審判で取り消されるリスクがあります。

そのため、今後確実に使っていく予定があるか、いつ頃から使い始めるか、といった点をこのチェックリストで整理しておき、出願のタイミングについては、整理した内容をもとに弁理士と相談して決めることをおすすめします。

Q4. 自分で簡易調査をした結果と、弁理士による調査は何が違いますか?

ご自身で行うGoogle検索やJ-PlatPatの簡易検索は、「周辺状況をざっくり把握する」ためには非常に有用です。一方で、

  • どこまで似ていると拒絶理由になるか
  • 指定商品・役務との関係でどの程度リスクがあるか
  • 将来のブランド展開を見据えた出願の切り方

といった点は、専門的な判断が必要になります。チェックリストと簡易調査の結果をまとめて弁理士に共有していただければ、より実務的でバランスの良いアドバイスがしやすくなります。

8. まとめ:出願前は「一覧化」と「優先順位づけ」ができれば十分

このページで紹介したチェックリストは、商標出願の前に、次の3つをざっくり整理するためのものです。

  • どんな名前・ロゴがあるのか(商標候補の一覧)
  • それぞれを、どの商品・サービスで・どこで使っているのか(使用実態)
  • 今すぐ押さえたいもの/次のフェーズでもよいもの(ざっくりした優先順位)

この3点が一覧化できていれば、区分の細かい検討や、類似商標との関係、どの範囲まで出願するかといった設計は、弁理士と一緒に詰めていくことができます。

完璧な表を作ることよりも、まずは「分かる範囲で書き出してみる」ことが何より大切です。この記事を、社内で整理を始めるためのたたき台として活用していただければ幸いです。

商標出願まわりで、あわせて読みたい記事

このチェックリストとあわせて、商標制度の基本やロゴ・文字商標の違いを整理しておきたい場合は、次のガイドも参考になります。

次の一歩

チェックリストを書き出してみて、「どこから出願すべきか」「区分をどう切るべきか」に迷った場合は、次のページも参考になります。

この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。