商標はいくらで売れる?──「商標だけ」か「サイト・事業込み」かで変わる価格の考え方

商標はいくらで売れる?──商標だけか、サイト・事業込みかで変わる価格の考え方(知育特許事務所・弁理士が解説)

「商標を売るとしたら、いくらくらいになりますか?」──そんなご相談を頂くことがあります。商標の売却といっても、実務では商標だけを売るケースもあれば、サイト・ドメイン・SNSアカウントなどとセットで引き継ぐケースもあります。どこまで含めるかは、売り手が「何を手放したいか」、買い手が「どこまでの仕組みを引き継ぎたいか」によって変わります。

この記事では、専門用語をできるだけ使わず、商標単体の価格の考え方と、サイトや事業とセットで譲渡する場合の違いを整理して解説します。

なお、商標価値の計算ステップ全体を押さえたい場合は、先に👉 商標価値の出し方(簡易RFR)|稟議・融資・譲渡で使える基礎ガイドを読んでおくと、この記事の位置づけが掴みやすくなります。

1. どこまで引き継ぐのかで価格が変わる

商標を売却する場合でも、実際には「商標だけを移すのか」、それとも「商標を使っているサイト・商品・SNSなども含めるのか」によって、整理すべき内容が大きく変わります。まずは、どの範囲を相手に引き継ぐのかを決めることが大切です。

代表的なパターンは次の3つです。

  • 商標権のみ: 登録済みの商標権だけを、特許庁の「移転登録手続」で新しい持ち主に変更するケース。権利そのものを移す形です。
  • サイト・ドメイン・SNS込み: 商標を使っているホームページ、ドメイン名、SNSアカウントなどもまとめて引き継ぐケース。検索評価やフォロワーなど信用や集客の土台ごと移転できます。
  • 事業とセット: 商標だけでなく、実際に販売している商品・サービス、顧客対応、取引先、販路なども含めて譲渡するケース。事業譲渡に近い形で、最も価格が大きくなる傾向があります。

買う側の希望はケースごとに違うため、まずは「商標だけ渡すのか」「運用中の資産も含めるのか」を整理しておくことが大切です。

2. 譲渡条件(支払い・サポート・範囲)でも金額が変わる

商標そのものの価値とは別に、どんな条件で譲るかによっても、最終的な取引価格は上下します。つまり、商標の「価値」と「取引条件」は分けて考える必要があります。

よく調整されるポイントは次のとおりです。

  • 支払い方法: 一括払いと、複数回払いでは評価が変わります。後払いが増えるほど価格は控えめになることが多いです。
  • 引継ぎサポート: 売り手が一定期間フォローする(運用の説明・引継ぎ作業など)場合、その労力が評価されて上乗せされます。
  • 利用範囲の制限: 商標の使用範囲(地域・業種など)を制限したいという要望がある場合、価格は下がる傾向があります。

つまり、「何をどこまで渡すか」+「どういう条件で渡すか」の組み合わせで価格が決まっていきます。

このとき、まずはRFR法にもとづく「商標そのものの価値レンジ」を整理しておくと、交渉の過程で価格が上下したとしても、出発点となる客観的な基準が共有しやすくなります。取引条件の調整と、もともとの価値を混同しないための「物差し」として機能します。

3. 商標の「使いやすさ」と「安定性」も重要

価格を決めるときは「どこまでを引き継ぐか」「どんな条件で譲るか」と合わせて、その商標を今後も問題なく使えるかという安全性も確認されます。

特に、商標そのものに関わる次のようなポイントは、買う側が必ずチェックする項目です。

  • 似た名前が多い: 他社の商標や商品名と紛らわしいと、今後のトラブルリスクがあるため価格が下がりやすいです。
  • 使っていない期間: 長期間使っていない商標は「取り消される可能性」があるため、慎重に見られます。
  • 登録の安定性: 登録済みで、他社から異議や無効請求が出ていない場合は、継続利用の安心感が高く評価されます。

これらのポイントを事前に整理しておくと、交渉や検討がスムーズに進みます。

ここまでが「商標の価格がどのように決まるか」という全体の仕組みです。

では実際に自分の商標ではどのくらいの金額感になるのか──この部分を整理するために、当事務所では次のような評価を行っています。

4. 弁理士が行う「根拠ある価格づけ」

当事務所では、商標の売却・譲渡・融資資料に活用できる簡易価値評価(RFR法ベース)を提供しています。売上規模や知名度をもとに、商標が事業にどれだけ貢献しているかを整理し、

・1枚の要約
・詳細な評価書(前提・試算・比較)

のセットでご提供しています。「なぜこの金額になるのか」を説明できる形にすることで、買い手・売り手・金融機関にとって判断しやすい資料になります。サービス全体の流れや料金の詳細は、商標価値評価サービスのご案内ページにまとめています。

RFR評価が譲渡交渉や金融機関との対話において「事業判断の根拠」として機能する論理的な理由を、もう少し専門的な観点から知りたい方は、👉 簡易RFRによる商標価値評価が事業判断の根拠になる理由 もあわせてご覧ください。

商標の価値を「数字」で整理してみませんか?

5. よくある質問(抜粋)

Q1. 出願中の商標も売却できますか?

可能です。登録前の場合は「商標権」ではなく「出願人としての立場」を引き継ぐ形になります。

Q2. 使っていない商標でも価値はありますか?

状況によります。長期間使っていないとリスクがありますが、短く覚えやすい名前別の分野にも使いやすい言葉であれば、買い手が見つかるケースもあります。

Q3. 売却の相談はいつできますか?

登録済みであれば、いつでも相談可能です。登録内容・使用状況・事業規模を踏まえて評価の方向性を整理します。

※本記事は一般的な説明です。実際の価格は、権利範囲・使用状況・セット内容・譲渡条件などで変わります。

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この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。