はじめに
商標価値評価を検討される際に、「何を準備しておけばよいのか分からない」という方も少なくありません。
実務では、次の5つの情報が大まかに把握できていれば、どの範囲まで価値評価が可能か、どの資料が追加で必要かなど、
評価を進めるための初期的な見通しを立てることができます。
すべてが完璧に揃っている必要はなく、不足部分はヒアリングや補足資料をもとに整えて進めていきます。
商標価値評価全体の考え方や、RFR法の位置づけについては、商標価値評価|RFR法の基礎と実務ガイド(まとめ)に整理していますので、あわせてご覧ください。
評価前に確認しておきたい5つの情報
1. 商標の基本情報(登録番号・出願番号・使用状況)
▼ 必要な情報
- 登録番号(登録済みの場合)
- 出願番号(出願中の場合)
- 商標が使用されている場面(商品名・サービス名・ウェブサイト・SNS・パンフレットなど)
商標の対象範囲を明確にするための基礎資料です。
2. 商標が関わる商品の売上またはサービス利用状況(最低限の数ヶ月分〜、望ましくは1年以上)
商標と紐づく事業の実績が分かると、価値評価の精度が高まります。
▼ 例
- 大まかな売上金額(最低数ヶ月分でも可)
- 商標の付いた商品・サービスの売上
- 主要カテゴリごとの売上
- サービスの場合:利用件数・登録者数の推移
過去1〜3年分のデータがあればより正確になりますが、直近の数ヶ月のデータからでも評価を開始できます。
3. 販売場所と顧客層(どこで誰に売っているか)
商標が「どこで」「どんなお客様に」選ばれているかは、ブランドの影響度を判断するための重要な材料になります。
▼ 販売場所の例
- ECサイト(Amazon、楽天、自社EC など)
- LP(各商品・サービスの専用ページ)
- 実店舗
- 卸先(小売店・代理店など)
▼ 顧客層
- 一般消費者
- 企業向け(BtoB)
- 特定の業界向けのお客様(例:美容サロン、製造業、医療機関、EC運営者など)
なぜ販売場所や顧客層が必要?⇒商標がどの種類のお客様に選ばれているかで、市場規模やブランドの寄与度の把握につながるためです。
4. 広告・販売促進の状況(わかる範囲でOK)
広告・販促の状況は、「ブランドで自然に選ばれているのか」「広告依存度が高いのか」を判断する手がかりになります。
▼ 例
- 広告費の目安
- 主な施策(SNS運用、検索広告、展示会など)
- 広告依存の程度・ブランド訴求の有無
正確な数字である必要はありません。大まかなイメージが分かれば十分で、詳細があればより精度が向上します。
5. 事業の利益構造が分かる情報(利益率・継続率・コスト構造など)
事業の利益構造を把握することで、商標が事業の収益にどれだけ寄与しているかを判断する材料になります。
▼ 例
- 粗利率
- リピート率
- サブスク:継続率・解約率
- 小売:返品率
- 1件あたりの平均利益
- 原価率・外注費・発送費などのコスト構造
※歩留まりなどの製造工程詳細は必須ではありませんが、原価率に影響する場合は参考情報として扱います。
商標登録にかかった費用について
商標登録にかかった費用(出願費・登録料など)は、価値評価には原則不要です。
商標の価値は、こうした取得費用の大小ではなく、その商標が事業の売上や利益にどれだけ寄与しているかで判断されます。
資料が揃っていない場合について
資料が完全に整っているケースは少ないため、出せる範囲の資料だけで評価を開始できます。
不足している情報は、公的データ・市場データ・業界平均値などの客観情報を参考にしながら補完します。
取得側・譲渡側からの依頼について
買い手側・売り手側のどちらからの依頼にも対応可能です。ただし、より正確な評価には、売り手(譲渡側)のデータがある方が望ましいです。
相談するタイミングについて
次の2つが大まかに把握できれば、まず評価の相談を始めるには十分です。
- 事業のおおまかな売上規模
- 商標がどこで使われているか
これらは評価を進めるための“土台”となります。ただし、この2つだけで評価額を確定することはありません。追加資料の確認を重ねながら、段階的に精度を高めていきます。
よくある質問
Q1:売上データが少ししかありませんが依頼できますか?
はい。直近の数ヶ月分が分かれば評価の開始は可能です。
Q2:商標登録していなくても評価できますか?
状況によって扱いが異なります。
① 登録済み商標:権利範囲が確定しているため、もっとも正確に価値評価ができます。
② 出願中(審査待ち):評価は可能ですが、登録の可否が確定していないため、権利の安定性は登録済みより低くなります。このため、価値評価では やや控えめ(保守的)な見方 になることが多いです。
③ 未出願(名称だけを使用している状態):事業で継続的に使用されているブランド名については、売上や利用状況にもとづく 「ブランドとしての経済的価値」 を整理することはできます。
ただし、まだ商標権自体は存在していないため、これは「商標権そのものの価値」ではなく、「現時点のブランド状況を整理するための参考値」として扱うのが基本です。あわせて、必要に応じて商標の出願・登録も検討されることをおすすめします。
Q3:資料が揃っていなくても依頼できますか?
はい。出せる範囲の資料を基に、客観情報と合わせて評価を行います。
Q4:買い手側として評価を依頼することもできますか?
可能です。ただし、売り手側のデータがある方が、より正確な評価につながります。
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この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)













