ノウハウにすべきか特許を取るべきか…判断基準を簡易に解説

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自社で生み出した発明やアイデアを、社外に漏らさない「ノウハウ」として抱えるべきか、それとも特許として公開して守るべきか――実務ではよく迷うポイントです。

特許を取れば一定期間独占できますが、出願の手間や費用がかかります。一方でノウハウとして秘密にしておけば、うまく管理できた場合には半永久的に独占できる可能性もあります。その反面、社外に漏れてしまえば守りにくくなるという弱点もあります。

この記事では、発明やアイデアをノウハウとして守るべきか、それとも特許を取って守るべきかについて、実務で使いやすい6つの判断基準に分けて整理します。

特許そのものの仕組みや基本を確認したい場合は「特許とは?弁理士が初心者に向けてわかりやすく解説」、特許まわりの全体像を俯瞰したい場合は「特許の基礎と実務ガイド」もあわせてご覧いただくと、位置づけがつかみやすくなります。

特許で守るかノウハウで守るかの判断基準

発明やアイデアをノウハウとして守るべきか特許を取って守るべきかについては、ここでは、次の6つの判断基準をお伝えします。

  • 特許の権利化が可能か
  • 特許侵害を容易に発見できるか
  • ノウハウ管理ができそうか
  • 他社が考え付くか
  • ノウハウが見破られる可能性があるか
  • 特許取得後の見通しは明るいか

1.特許の権利化が難しいならばノウハウに向く

判断基準の1つが特許の権利化が可能であるかです。特許を取ることができない発明やアイデアならば、ノウハウとしてしか保護することはできません。例えば、世の中に知られている技術から簡単に思い付きそうな発明やアイデアならば特許が認められない可能性が高いです。このように特許を取ることが難しい場合には、ノウハウとして保護するしかありません。

2.特許侵害を容易に発見できないならばノウハウに向く

判断基準の1つが特許侵害を容易に発見できるかです。特許を取ったとしても、特許を取った発明やアイデアを真似されているのを見つけることが難しい場合は、特許の効果がさほど期待できないため、ノウハウとして保護することもあり得ます。

例えば、工場の内部でのみ使用する方法や装置などの発明やアイデアに特許を取ったとしても、他社の工場内には通常、関係者以外は入れないので、特許の発明やアイデアが勝手に使われているのかを確認することはできません。そのため、特許の発明やアイデアを完全に独占できるという特許の効果がさほど期待できない場合もあります。

ただし、自分の知らないところで他社に特許の発明やアイデアを使われる可能性があったとしても、他社に特許を取られてしまうと、自社で特許の発明やアイデアが使いにくくなり、何かと面倒になることを理由に、特許侵害を容易に発見できない発明やアイデアであっても積極的に特許を取っている企業もあります。

3.ノウハウ管理ができそうならばノウハウに向く

判断基準の1つがノウハウ管理はできそうかです。ノウハウ管理ができなければ、ノウハウとした発明やアイデアが社外に流出してしまい、ノウハウを保護できなくなります。

ノウハウの流出を防止するためには

▲ノウハウ流出を防止する手順を示す概念図

ノウハウの流出を防止するためには、先ずは、ノウハウとなる発明やアイデアを特定して、その内容を文章や図面などにして見える化します。次に、見える化した資料に対して第三者が簡単に利用することができないように管理します。そして、可能であれば、従業員に対してノウハウが外部に漏れるのを防ぐ研修をしたり、従業員や退職者に対して秘密保持契約などを結んだりすると良いでしょう。

なお、ノウハウを文書化すると、ノウハウが盗み出されやすくなるデメリットもあります。しかし、ノウハウを文書化することで、ノウハウが明確になり、従業員が何を外部に漏らしたらいけないのかが理解しやすくなります。また、ノウハウが文章化されることで、ノウハウ自体を他社にライセンスできたり、ノウハウを研究開発の資料として活用しやすくなるとのメリットもあります。

4.他社が考え付くものであれば特許に向く

判断基準の1つが他社が考え付くものかです。他社が簡単に考え付くような発明やアイデアであれば、ノウハウとして秘密にしたとしても、いつかは他社が考え付いてしまうのでノウハウとして秘密にする意味がありません。

そのため、このような場合には、他社に先駆けて特許を取ることができれば、他社の動きを牽制することができるため、特許を取るという場合もあります。

5.ノウハウが見破られる可能性があれば特許に向く

判断基準の1つがノウハウが見破られる可能性があるかです。ノウハウとして保護しようとしても、ノウハウが簡単に見破られる可能性があるならば、ノウハウとして秘密にしても意味がありません。

例えば、ノウハウを利用して作った製品が市場に出た際に、競合他社が市場に出た製品を分析することでノウハウが判明してしまうような場合は、ノウハウとして保護することは得策ではありません。このような場合には、製品が市場に出る前に特許を申請し、特許を取ることができれば、一定期間は製品に含まれる発明やアイデアを守ることができます。

6.特許取得後の見通しは明るいならば特許に向く

判断基準の1つが特許取得後の見通しは明るいかです。特許を取れたとしても、特許の発明やアイデアを参考にし、特許を回避するような形で改良品が他社に作られやすい場合は、特許を取得する効果が薄まります。

しかし、特許を回避するような改良品が作られにくく、特許によるライセンス収入を見込める場合は、特許を取得するという保護の仕方も考えられます。なお、ノウハウについても他社にライセンスをすることが可能ですが、一般的には特許の方がライセンスしやすいでしょう。

判断基準を参考にして特許とノウハウの両方で保護を図る

▲ノウハウか特許取得かの判断基準の概念図

6つの判断基準を説明しました。各判断基準を参考に、ノウハウと特許の両方で発明やアイデアを守りましょう

例えば、自社がノウハウとして守ろうとする発明やアイデアを他社が考え付くのに、ある程度の期間を要する場合には、一定期間はノウハウとして秘密にし、一定期間経過後に特許を取ることにより、発明やアイデアを手厚く守ることが可能となります。ただし、永遠に他社が考え付きそうにない発明やアイデアならば、できる限りノウハウとして秘密にすると良いでしょう。

また、例えば、製品の製造装置と製造装置の使い方に関する発明がある場合に、製造装置については特許を取得し、製造装置の使い方についてはノウハウにする場合もあります。特許を取った製造装置が自社の知らないところで真似されたとしても、製造装置の使い方をノウハウにすることで、自社と同じ品質の製品を他社が勝手に作れなくなります。

このように同じような発明やアイデアでも、一部は特許として保護し、一部はノウハウとして保護することにより、自社の発明やアイデアをしっかりと保護することができます。

したがって、個々のケースごとに判断基準を参考にしてノウハウにすべきか特許を取るべきかを判断していく必要があります。

よくある質問

Q1. ノウハウと特許の一番大きな違いは何ですか?

ノウハウは、社内で秘密として管理することで独占を図る守り方です。上手く管理できれば長期間独占できる一方、外部に漏れてしまうと守りにくくなる弱点があります。特許は、国に出願して審査を受けることで、一定期間その発明やアイデアを独占的に使える権利を得る仕組みです。代わりに、出願内容は公開されます。

Q2. どんな場合にノウハウとして守る方が向いていますか?

特許の権利化が難しい場合や、特許侵害を外から見つけにくい場合、また社内でノウハウ管理がしっかりできそうな場合は、ノウハウとして守る方向に傾きます。記事本文で紹介したように、ノウハウの内容の見える化とアクセス管理、従業員教育などを組み合わせて運用できるかがポイントです。

Q3. どんな場合に特許として出願した方が良いですか?

他社も考え付きそうなアイデアであったり、製品を見ればノウハウが簡単に見破られてしまう場合は、特許として出願する方向に傾きます。また、特許取得後にライセンス収入が見込める、改良で簡単に回避されにくいといった場合も、特許を積極的に検討する価値があります。

Q4. ノウハウと特許を組み合わせて守ることはできますか?

できます。同じ技術の中でも、一部は特許として公開して権利化し、一部はノウハウとして社内にとどめる、といった組み合わせが有効なケースも多くあります。たとえば、製造装置そのものは特許で守り、装置の使い方や条件出しの勘どころはノウハウにする、といった分け方です。

Q5. ノウハウにすべきか特許にすべきか判断に迷ったときはどうすれば良いですか?

業種やビジネスモデルによって最適なバランスは変わります。この記事で挙げた6つの判断基準を参考にしても決めきれない場合は、個別の事情を踏まえて検討することが大切です。迷われるときは、まずは当事務所の無料相談をご利用いただき、ノウハウと特許の両面から整理してみてください。

ノウハウか特許かを検討して発明やアイデアを守ろう

発明やアイデアをノウハウとして守るべきか、特許を取って守るべきかを判断するための基準として、この記事では6つの観点を整理しました。具体的には、特許の権利化が可能か、特許侵害を容易に発見できるか、他社が考え付くか、ノウハウが見破られる可能性があるか、特許取得後の見通しは明るいか、ノウハウ管理ができそうか──といったポイントです。

これらの基準を参考にしながら、特許とノウハウそれぞれのメリット・デメリットを整理し、一部は特許、一部はノウハウといった組み合わせも含めて、自社にとって最適な守り方を検討していくことが大切です。

どちらを選ぶべきか判断が難しい場合は、案件の内容やビジネスモデルによって最適解が変わります。社内だけで抱え込まず、必要に応じて第三者の視点も交えながら、「どこまでを特許」「どこまでをノウハウ」とするかを検討していくことが、結果的に発明やアイデアを長く活かす近道になります。

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この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。