サービス業での特許の取り方を特許の実例とともに説明

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サービス業において特許を取るには、先ずは、サービス業において特許が取れる可能性がある4つのポイントを把握します。次に、把握したポイントに基づいて、実際に提供している又は提供を考えているサービスにおいて特許が取れる可能性があるアイデアを探します。

特許が取れる可能性があるアイデアがある場合は、似たようなアイデアについて既に特許の申請がなされていないかを調査します。調査の結果、特許が取れる可能性がある場合は、特許の申請をします。特許の申請をして審査で特許が認められると、特許を取ることができます。

サービス業における特許の取り方

サービス業で特許を取るには、サービス業において特許が取れる可能性がある4つのポイントを把握し、特許が取れる可能性があるアイデアを探します。特許が取れる可能性があるアイデアがある場合は、特許調査をした後、特許の申請をすることになります。

1.サービス業で特許が取れる4つのポイントを把握する

サービス業で特許を取るには、先ずは、サービス業において特許が取れる可能性がある4つのポイントを把握する必要があります。

①サービスを提供するのに使う道具や装置の特許

サービス業で特許が取れる可能性があるものの1つとして、サービスを提供するのに使う道具や装置があります。

引用:実用新案公報|実用新案公告昭和37-18526
引用:実用新案公報|実用新案公告昭和37-18526

例えば、回転寿司のサービスに欠かせないのは、お寿司が回転して流れるためのコンベアです。回転寿司に使うコンベアについては、回転寿司の生みの親と言われる元禄産業株式会社の創設者の故・白石義明氏によって開発されるとともに、上の画像のようにコンベヤ附調理食台として実用新案登録(公告実用新案番号:昭和37-18526)がされています。

このようにサービスを提供するのに使う道具や装置などについて特許が取れる場合もあります。

②サービスを提供する仕方(方法)の特許

サービス業で特許が取れる可能性があるものの1つとしては、サービスを提供するやり方があります。

引用:特許公報|特許第3141287号
引用:特許公報|特許第3141287号

例えば、ハウスクリーニングなどの清掃サービスにおいて、普通ではやらないような清掃方法や清掃の手順によって、汚れが落ちやすくなるような清掃方法や清掃の手順などがある場合は、清掃というサービスを提供するやり方(方法)として特許が取れる可能性があります。

清掃の手順としては、上の画像にもあるように、オフィスなどにある椅子のように布製の座面に油膜を破壊する溶剤などを散布した後に、洗剤などを散布しながら汚れを吸引することで効率よく洗浄できるクリーニング方法について特許が取得されています(特許第3141287号)。

このようにサービスを提供するやり方(方法)において、普通ではやらないようなやり方(方法)をすることで、今までよりも便利になるのであれば特許が取れる場合があります。

③Webサービスなどの特許

サービス業で特許が取れる可能性があるものの1つとしては、Webサービスのシステムだったり、Webサービスを利用するためにユーザーのスマホやパロコンなどにインストールするアプリなどのプログラムについても特許が取れる可能性があります(参考:システムの特許を取る時に気を付けるべき3つのポイントの記事)。

引用:特許公報|特許第4959817号
引用:特許公報|特許第4959817号

Webサービスに関するものとしては、上の画像にもあるようにアマゾンが保有している特許で有名な、いわゆるワンクリック特許があります。ネットでショッピングをする場合は、欲しい商品をショッピングカートに入れてから購入する必要がありますが、アマゾンの特許では1回クリックするだけで商品を購入することができるWebの注文システムです。

このようにWebサービスなどに用いられるシステムなどについては、特許が取れる場合もあります。

④例外的なもの(いきなりステーキの例)

サービス業で特許が取れる可能性があるものとして、極めて例外的なケースにもなりますが、サービスの接客マニュアルのようなサービスの一連の流れが特許になるケースもあります。

引用:特許公報|特許第5946491号
引用:特許公報|特許第5946491号

サービスの接客マニュアルのようなサービスの一連の流れで特許が取れているものとしては、上の画像にもあるように、いきなりステーキを運営する株式会社ペッパーフードサービスが保有する特許(特許第5946491号)があります。

この特許では、店内でステーキ肉の量り売りをして提供する一連のサービスにおいて、カットした肉と他の顧客の肉が混同しないように印を付けて切った肉の取り違えを防止する一連のサービスの流れについて特許が認められています。

サービスを提供する上で生じる問題(いきなりステーキの例では切り分けた肉が混同してしまうとの問題)を道具などを使って解決できるような(いきなりステーキの例では印を使って肉が混同するの防止している)一連のサービスについて、極めて稀ですが特許が取れる場合もあります。

現状においては、いきなりステーキのような特許を取れる可能性がありますが、今後の動向次第で、いきなりステーキのような特許が取れなくなる可能性もあります。

2.特許が取れそうな部分を探す

サービス業で特許が取れる可能性がある4つのポイントを把握したら、各パターンに基づいて、実際に提供しているサービスにおいて特許が取れる可能性があるアイデアが存在しないか又は特許が取れそうなアイデアが考えれないかを検討します。

3.似たような特許がないか調べる

特許が取れそうなアイデアなどが見つかった場合には、見つかったアイデアに似たアイデアについて既に特許の申請がなされていないかを調査します。調査については、無料で使える特許のデータベースなどを使うと良いでしょう(参考:無料の特許データベース3選と各データベースでの特許の検索方法の記事)。

4.特許を申請する

似たようなアイデアがなくて、特許が取れる可能性がある場合には、アイデアについて特許出願をします。特許出願をして審査で特許が認められると、特許を取ることができます。

特許出願については、特許の取り方と出願の流れの記事に詳しく書いてあります。

サービス業の特許とビジネスモデルの関係

サービス業で特許を取得することができれば、サービス業のビジネスモデルを守ることができる場合もあります。

例えば、回転寿司のコンベアは回転寿司のサービスには必須の装置になります。よって、回転寿司のコンベアについて他社が回避できないような特許を取ることができれば、回転寿司というサービスのビジネスモデルが真似されるのを防ぐことができます。

また、提供するサービスにおいて必須の装置や道具でなくても、サービスを提供するのにあると便利な装置や道具について他社が回避できないような特許を取ることができれば、ビジネスモデルを守るとまではいかなくても、特許によりサービスの独自性を守ることができます。

同様にサービスを提供するのに、必須の方法やあると便利な方法などについても特許を取ることで、特許によりサービスの独自性を守ることができます。

このようにサービスを提供するのに必須であったり、あると便利な部分について特許を取得することができれば、サービス業のビジネスモデルを守ることができる場合があります。

よくある質問

Q1. サービス業でも特許を取ることはできますか?

はい、可能な場合があります。本記事で紹介しているとおり、サービス業でも「サービスに使う装置や道具」「サービスの提供方法」「Webサービスのシステム」「ごく例外的な一連のサービスフロー」などに新規性・進歩性があれば、特許の対象になり得ます。

Q2. どんなサービスが特許になりやすいですか?

回転寿司のコンベアのような「サービスに不可欠な装置」や、清掃サービスの特殊な手順、ワンクリック購入のようなWeb注文システムなど、サービスの提供を支える具体的な仕組みや方法に工夫があるものは、特許の検討対象になりやすい傾向があります。

Q3. 接客マニュアルや一連のサービスの流れも特許になりますか?

いきなりステーキの事例のように、サービス提供上の問題を道具や手順の工夫で解決する一連の流れについて、特許が認められたケースもあります。ただし非常に例外的であり、どの接客マニュアルでも特許になるわけではありません。

Q4. 自社のサービスが特許になりそうか、まずはどう調べればよいですか?

無料で使える特許情報プラットフォームなどを使って、似た発明やサービスがすでに出願・登録されていないかを調べるのが第一歩です。自力での検索が難しい場合は、本記事で紹介しているように、専門家に先行技術調査を依頼する方法もあります。

Q5. サービス業のビジネスモデル全体を特許で守ることはできますか?

ビジネスモデル全体をそのまま特許で囲い込むのは現実的ではありませんが、サービスに必須の装置や方法、Webシステムなど「真似されると困る中核部分」について特許を取得できれば、結果としてビジネスモデルの独自性を守りやすくなります。どこを特許で守り、どこをノウハウとして秘匿するかは個別の検討が必要です。

サービス業で特許が取れないか検討してみよう

サービス業での特許の取り方を特許の実例をあげて説明してきました。

サービス業で特許を取るには、サービス業で特許が取れる可能性のある4つのポイント(サービスに使う装置や道具、サービスを提供する方法、Webサービス、いきなりステーキのような一連のサービスの流れ)を把握し、特許が取れる可能性があるアイデアを探します。特許が取れる可能性があるアイデアがある場合は、特許調査をした後、特許申請をすることになります。

サービス業で特許の取得を考えている場合は、特許が取れる可能性があるポイントを理解し、特許が取れるアイデアがあるか又は特許が取れそうなアイデアを考えれないかを検討してみましょう。

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この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。