特許が公開される理由と1年半後に公開される仕組み｜出願公開制度と公開特許の調べ方

Q: 特許出願の内容を1年半より早く公開してもらうことはできますか？

はい、可能です。早期公開制度を利用すると、出願人の請求により、通常より早いタイミングで出願内容を公開してもらえます。すでに他社が出願中の技術を使っていそうな場合など、早めに出願公開して牽制したいときに利用される制度です。

特許出願がされると、原則として出願から1年半後に出願内容がインターネット上で公開され、誰でも見ることができるようになります。この仕組みは「出願公開制度」と呼ばれ、公開されたものは「公開特許公報（特開○○○○-△△△△△）」として閲覧できます。

「なぜ1年半なのか」「公開されると何が起きるのか」「公開された特許はどうやって調べるのか」といったポイントを押さえておくと、自社の出願戦略や情報収集の場面で迷いにくくなります。

この記事では、特許が公開される理由（なぜ1年半なのか）と仕組み、早期公開制度や出願取下げによる例外、そして公開された特許の調べ方までを整理してお伝えします。

特許はいつ・どこで公開される？出願公開制度のキホン

日本の特許制度では、出願日から1年6か月経過した時点で、その出願内容が原則として公開されます。これを「出願公開」といい、公開された出願は「公開特許公報（特開）」として、特許情報プラットフォーム（J-PlatPat）などのデータベースから誰でも検索できます。

公開特許公報は、あくまで「出願内容を社会に知らせるための公報」であり、審査に通って登録されたあとの「特許公報」とは役割が異なります。出願公開の段階では、まだ特許権として確定していない点に注意が必要です。

特許が公開される理由（なぜ出願から1年半なのか）

特許が公開される理由は、主に2つです。1つ目は、特許出願や研究・設備投資などの重複を避けるため。2つ目は、技術情報を社会に公開して、世の中をより便利にするためです。これらの目的と、出願人の利益とのバランスを取った結果が「出願から1年半」というタイミングだと理解すると分かりやすくなります。

重複を避けるため

出願された特許の内容と同じ内容の特許を後から出願しようと考えている人が、既に同じ内容の特許があることに気づくことができれば、その出願をやめることができます。同様に出願された特許の発明と同じ研究をしている人が、既に同じ研究をして研究の成果について特許出願されていることに気づくことができれば、同じ研究をするのをやめたり、同じ研究に対する設備投資などもやめることができます。

既に出願された特許や既になされた研究などと同じことを後追いで行うと、時間もお金も無駄になりやすいため、重複した特許出願、重複した研究、重複した設備投資などを防ぐために、出願された特許の内容を公開しています。

世の中を便利にするため

出願された特許の内容が公開されなければ、特許を出願した人しか出願した特許のアイデアを知らないことになります。例えば、出願されたアイデアが魅力的で世の中に非常に役に立つものの、まだ不便な部分があるとした場合、そのアイデアをより優れたものにするためには、出願人本人が自分自身で改良案を考えるしかありません。

しかし、出願された特許の内容が公開されれば、世の中の人が出願した特許のアイデアを知ることができます。そのため、公開された特許のアイデアをもとに色んな人が改良案を考えることができます。そうすると、場合によっては、素晴らしいアイデアがより素晴らしいアイデアとなり、その結果、世の中が便利になるということも十分あり得ます。

出願人だけで出願した特許のアイデアを改良しようとしても限界があるため、技術を公開する代わりに一定期間の独占権を与えるというのが特許制度の基本的な考え方です。その具体的な仕組みのひとつが、出願から1年半の出願公開制度だと言えます。

特許が公開される仕組みとタイミング

特許出願や研究や設備投資などの重複を避けるとの目的と、世の中を便利にするとの目的で特許が公開されています。これらの目的を達成するように、出願公開のタイミングや例外的な取り扱いが制度として用意されています。

特許が公開されるまでの期間

特許出願がされると、原則として出願から1年半後に申請した特許の内容が公開されます。ただし、インターネット上で公開特許公報として実際に見れるようになるのは、出願から1年半＋2週間程度です。

特許出願などの重複を避ける観点と世の中を便利にする観点から考えると、出願された特許の内容については、出願後すぐに公開した方が良いように思われます。しかし、出願後すぐに特許の内容を公開してしまうと、出願した特許を改良するアイデアを我先にと他の人がどんどん特許出願してしまう可能性が出てきます。

そうすると、大元となる特許のアイデアを出願した人にとって不利益になる場合があります。このような観点から、出願人に不利益とならないことも考慮し、出願から1年半経過した時点で公開されることになっています。

公開の期間を短縮したい場合（早期公開制度の利用）

出願した特許の内容が公開されるまでの期間は、ほとんどの場合、出願から1年半後です。しかし、出願した特許の内容が公開されるまでの期間を短縮することもできます。具体的には、早期公開制度を利用すると、公開までの期間を前倒しできます。

出願した特許の内容が公開される時期を早めるメリットなんて何もないと思われがちですが、出願後にそのアイデアを勝手に使っている会社などがある場合には、メリットがあります。早期公開制度を使って出願中の特許の内容を公開することで、出願中のアイデアを使っている会社などに対して「この技術は出願済みです」と示しやすくなり、利用を止めさせる交渉がしやすくなるケースもあります。

公開をやめたい場合（公開前に特許出願を取り下げる）

出願した特許の内容は、原則として出願から1年半後に公開されます。ただし、出願から1年半を経過するまでに特許出願を取り下げると、出願内容が公開されるのを防ぐことができます。この場合、その出願に基づいて特許を取得することはできなくなります。

自社のノウハウの一部を秘匿しておきたい場合など、「特許として公開して守るか」「営業秘密として公開せずに守るか」を検討する場面では、出願の取下げも選択肢のひとつになります。

公開された特許の調べ方

インターネット上に公開された特許の内容は、特許情報プラットフォーム（J-PlatPat）などの無料で使えるデータベースを利用することで、自由に見たり、調べたりすることができます。無料で使える特許のデータベースや各データベースの使い方については、「無料の特許データベース3選と各データベースでの特許の検索方法」の記事を参考にして下さい。

気になる特許があるならば実際に調べてみよう

今回は、特許が公開される理由と、公開された特許の調べ方についてお伝えしました。重複した特許出願や重複した研究などを防ぐとともに、世の中がより便利になるために、出願された特許の内容が公開されます。出願から1年半以上前の特許については、その内容が原則として公開されています。気になる特許がある場合には、特許情報プラットフォームなどのデータベースを使って実際に調べてみましょう。

よくある質問（FAQ）

Q1. なぜ特許は出願から1年半で公開されるのですか？

A. 特許制度では、技術情報を社会に公開する代わりに一定期間の独占権を与えるという考え方が基本にあります。出願から1年半で出願内容を公開することで、重複する出願や研究・設備投資を防ぐとともに、公開された技術を土台にさらなる改良や新しい発明が生まれやすくなります。一方で、出願後すぐに公開してしまうと出願人に過度の不利益が生じるため、一定期間（1年半）は非公開とするバランスが取られています。