自分の名前は商標登録できる?苗字・下の名前・氏名の3パターンを解説

自分の名前は商標登録できるかを解説するアイキャッチ(苗字・下の名前・氏名の3パターン)

「自分の名前だけで商標登録できる?」「個人名や苗字って、ほかの人と同じでも登録できるの?」──そんな疑問を持つ方は多いと思います。

結論だけ先にまとめると、自分の名前について商標登録できるかは、次の3つで考えると整理しやすくなります。

  1. 苗字だけを商標登録する場合:ありふれた苗字でなければ、登録が認められることがある
  2. 下の名前だけを商標登録する場合:同じ・似た商標が先に登録されていなければ、登録されることがある
  3. 氏名(フルネーム)を商標登録する場合:同姓同名の人がいないなど一定の条件のもとで、登録されることがある

この記事では、「自分の名前(苗字・下の名前・フルネーム)が商標登録できるか」を3つのパターン別に整理しつつ、あわせて「名前の特許」との違いや、自分で出願する場合の注意点もまとめていきます。

1. 自分の名前は商標登録できる?まず押さえたい3つのパターン

「自分と同じ名前について商標登録できるか?」というとき、ひとくちに「名前」と言っても、次の3つに分かれます

  1. 苗字だけを商標登録する例:「織部」「東雲」など
  2. 下の名前だけを商標登録する例:「翔」「愛」など
  3. 氏名(フルネーム)を商標登録する例:「山田 花子」のように、苗字+名前のフルネームをそのままブランド名として使うケース など

どの場合も、「絶対に登録できる」「絶対に登録できない」というものではなく、商標法上のルールと、すでに登録されている商標との関係で判断されます。ここからは、それぞれのパターンをもう少し具体的に見ていきます。

2. 自分の苗字だけを商標登録できるケース

まず、「苗字(姓)だけを商標登録したい」というケースです。

商標法上、「ありふれた氏(ありふれた苗字)」については、原則として登録が認められにくいとされています。たとえば電話帳や住民基本台帳などに多数出てくるような、極めて一般的な苗字がこれにあたります。

逆にいうと、全国的に見て珍しい苗字であれば、「苗字だけ」の商標登録が認められる余地があります。実際に、比較的珍しい苗字について、文字商標として登録される場合もあります。

ただし、「珍しいかどうか」はあくまで全体としての判断であり、感覚だけで判断するのは危険です。「自分の苗字はありふれているのか?」という点に不安があれば、一度商標専門の検索(J-PlatPatなど)や弁理士への相談をすると安心です。

3. 下の名前だけを商標登録できるケース

次に、「下の名前だけを商標登録したい」というケースです。たとえば、「翔」「愛」といった名前を、そのままブランド名として使いたい場合がこれにあたります。

下の名前については、苗字ほど「ありふれているかどうか」で厳しく線引きされるわけではありません。その代わりに重要になるのが、すでに同じ・似た名前の商標が登録されていないかという点です。

  • 同じ分野(同じ区分)の商品・サービスで、同じ名前が商標登録されていないか
  • 読み方や印象が紛らわしい名前が、既に登録されていないか

これらに同一・類似の商標がなければ、下の名前だけでも商標登録が認められるケースがあります。一方で、人気のある名前や、短くてシンプルな名前は、同じような商標がすでにたくさん存在していることも多く、実務上は狙いどころの見極めが重要になります。

4. 氏名(フルネーム)を商標登録できるケース

最後に、「氏名(フルネーム)をそのまま商標登録したい」というケースです。芸名・作家名・起業家としての氏名などを、そのままブランドとして保護したいというニーズもあります。

氏名については、自分と同じフルネーム(同姓同名)の人がどれくらいいるかが一つのポイントになります。あまりにも一般的な氏名で、多数の同姓同名者がいるような場合は、識別力の観点から登録が難しくなることがあります。

反対に、比較的珍しい氏名であれば、フルネームをそのまま商標登録している例も存在します。著名な実業家やクリエイターなどが、自分の氏名について商標登録を取っているケースが典型です。

もっとも、実務では、本名の氏名全体よりも、ブランドとして使う名称(屋号・ペンネームなど)を中心に登録することもあり、どこまでを商標として押さえるかは、将来の事業展開も含めて検討していくことになります。

5. 「名前の特許」はある?商標との違いを整理

インターネットで調べていると、「名前 特許」「名前の特許」といったキーワードもよく使われています。ここで、特許と商標の役割の違いを簡単に整理しておきます。

  • 特許:
    発明(技術的アイデア)を守る権利
    例:新しい機械の構造、新しい化合物、ソフトウェアの処理方法 など
  • 商標:
    商品やサービスにつける名前やマークを守る権利
    例:ブランド名、ロゴ、サービス名 など

「名前」そのものは発明ではないため、原則として「特許」で守る対象ではありません。名前・ブランド名を守りたい場合には、特許ではなく商標登録を検討することになります。

一方で、「名前を使ったサービスの仕組み」など、ビジネス全体に技術的な工夫がある場合には、

  • 仕組みや技術的アイデアの部分:特許で検討
  • サービス名やブランド名の部分:商標で検討

といった形で、特許と商標の役割分担を考えることもあります。

ただし、「名前そのものに特許を取る」というイメージは誤解で、名前を守るメインの手段は、あくまで商標登録だと考えておくと整理しやすいと思います。

6. 自分で商標登録する場合のざっくり流れと注意点

「自分の名前だし、まずは自分で手続きしてみようかな」と考える方も少なくありません。商標登録の手続き自体は、ご自身で進めることも可能です。大まかな流れは次のようになります。

  1. 自分の名前を何に使うのか整理する
    例:コンサルティングサービス名として使うのか、YouTubeチャンネル名なのか、商品名なのか など。
  2. 既に似た名前が登録されていないか調べる
    特許庁の公報検索サイト(J-PlatPat など)で、同じ・似た名前が登録済みかどうかを確認します。
  3. どの区分・どの商品・サービスを指定するか決める
    自分の名前を、どのジャンルの商品・サービスの名前として使うのかを整理し、該当しそうな区分と指定商品/指定役務を決めます。
  4. 出願書類を作成・提出する
    特許庁の電子出願ソフト等を使って、願書を作成し、出願手数料を納付します。
  5. 審査〜登録まで進む
    審査で問題がなければ登録査定が出され、登録料を納付すると商標登録が完了します。

一方で、「自分の名前」を商標登録するときには、次のようなつまずきやすいポイントがあります。

  • 「ありふれた氏」に当たるかどうか
    苗字だけを商標にする場合、「全国的に見てよくある苗字かどうか」が問題になります。
  • どこまでを「同じ・似た名前」と見るか
    漢字違い・ひらがな/カタカナ表記・ローマ字表記など、どの程度まで似ていると判断されるかは、実務経験がないと読みづらい部分です。
  • 将来の事業展開をどこまで見込んで区分を取るか
    今の事業だけに合わせて区分を狭く取りすぎると、後から事業を広げたときに再出願が必要になることもあります。

「ひとまず出してみて、ダメならまた考える」というやり方も不可能ではありませんが、取り直しになると、時間もコストも二重にかかることになります。特に、会社の看板や、長く育てていきたいブランドに自分の名前を使う場合には、

といった資料で、事業の全体像と区分の取り方を一度整理したうえで進めることをおすすめします。必要に応じて、最初の一件だけでも弁理士に相談しておくと、「あとから気づいてやり直し」というリスクをかなり減らせます。

7. 名前の商標登録を検討するときのチェックポイント

ここまでの内容を踏まえて、「自分と同じ名前について商標登録を検討するとき」に考えたいポイントを、簡単なチェックリストにまとめておきます。

  • ビジネスとの関係
    ・その名前をどんな商品・サービスのブランド名として使うかはっきりしているか
    ・3年後・5年後も、その名前を看板として使い続けたいか
  • 名前の種類
    ・苗字だけなのか、下の名前だけなのか、氏名全体なのか
    ・苗字は「ありふれた氏」といえるほど一般的かどうか
  • 既存の商標との関係
    ・同じ分野で、同じ・似た名前の商標がすでに登録されていないか
    ・読み方や印象が近い商標が多くないか
  • 保護したい範囲
    ・名前だけを文字商標で取れば足りるのか
    ・ロゴやデザインも含めて、別途商標や意匠で守るべきか(ロゴとの関係はロゴと商標・著作権・意匠の関係も参照)

これらを一度整理してみるだけでも、「どこまで名前の商標登録を検討すべきか」がだいぶ見えやすくなります。

7. よくある質問

Q1. 自分の名前だけで商標登録できますか?

自分の名前について商標登録できるかは、「苗字だけ」「下の名前だけ」「氏名(フルネーム)」のどれを商標にするかによって考え方が変わります。苗字だけの場合は「ありふれた氏」に当たるかどうか、下の名前だけの場合は同じ・似た商標が先に登録されていないか、氏名の場合は同姓同名の人がどれくらいいるかなどがポイントになります。

いずれのパターンでも、「絶対に登録できる/できない」という単純な話ではなく、商標法上のルールと、すでに登録されている商標との関係で個別に判断されます。

Q2. 苗字だけでも商標登録できますか?

苗字(姓)だけを商標登録したい場合、「ありふれた氏(ありふれた苗字)」に当たるかどうかがひとつのポイントになります。電話帳や住民基本台帳などに多数出てくるような、極めて一般的な苗字は、原則として登録が認められにくいとされています。

一方で、全国的に見て珍しい苗字であれば、苗字だけの文字商標として登録が認められる余地があります。ただし、「珍しいかどうか」は感覚だけでは判断しにくいため、不安があれば一度弁理士に相談したり、商標データベースで近い事例を確認してみると安心です。

Q3. 「名前の特許」を取ることはできますか?

「名前」そのものは発明(技術的アイデア)ではないため、原則として特許で守る対象にはなりません。商品名・サービス名・ブランド名を守りたい場合には、特許ではなく商標登録を検討することになります。

一方で、「名前を使ったサービスの仕組み」など、ビジネス全体に技術的な工夫がある場合には、仕組みや技術的アイデアの部分を特許で、名前そのものを商標で守るといった役割分担を考えることもあります。ただし、「名前自体に特許を取る」というイメージは誤解で、名前を守るメインの手段はあくまで商標登録だと考えておくと整理しやすいと思います。

Q4. 自分で商標登録の手続をすることはできますか?

商標登録の手続き自体は、ご自身で行うことも可能です。自分の名前をどの商品・サービスに使うのか整理し、同じ・似た商標が登録されていないかを調べ、区分や指定商品/指定役務を決めたうえで、特許庁に出願するという流れになります。

ただし、「ありふれた氏」に当たるかどうか、漢字違い・カタカナ表記・ローマ字表記をどこまで「似ている」と見るか、将来の事業展開を見込んだ区分の取り方など、自分の名前ならではの判断が難しいポイントも多くあります。会社の看板や、長く育てていきたいブランドに自分の名前を使う場合には、区分の考え方ガイド出願前の準備資料チェックリストで一度全体を整理したうえで、必要に応じて弁理士に相談することをおすすめします。

8. まとめ:自分の名前の商標登録は「3つのパターン」で考える

自分と同じ名前について商標登録できるかは、①苗字だけ ②下の名前だけ ③氏名(フルネーム)の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 苗字だけ:ありふれた氏でなければ、商標登録が認められる場合がある
  • 下の名前だけ:同じ・似た商標が先に登録されていなければ、登録が認められる場合がある
  • 氏名(フルネーム):同姓同名の人が多くないなど、条件によって登録が認められる場合がある

一方で、「名前を特許で守る」という考え方は誤解であり、名前そのものは商標で守る対象になります。また、手続き自体は自分で行うこともできますが、ありふれた氏かどうか・既存商標との類似・区分や指定商品/役務の選び方など、判断が難しいポイントも多くあります。

自分の名前を使ったブランドを本格的に育てていきたい場合には、
商標の区分をどう考えるか|45のジャンルと優先順位の決め方ガイド
出願前の準備資料チェックリスト(名前・ロゴ・商標編)も参照しつつ、一度専門家のアドバイスを受けてから、出願方針を決めるのがおすすめです。

自分の名前の商標登録で、あわせて読みたい記事

「名前をブランドにしたいけれど、本当にどこまで権利を取るべきか分からない」「区分やロゴとの関係も含めて整理したい」という場合は、次の関連記事もあわせて確認しておくと全体像をつかみやすくなります。

「自分のケースで本当に名前の商標登録をすべきか」「どこまで区分を取るべきか」など、個別事情が絡む場合には、弊所の無料相談もご利用ください。名前・ロゴ・将来の事業展開も含めて、出願方針を一緒に整理します。

この記事を書いた人:弁理士・米田恵太(知育特許事務所)

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米田恵太
知育特許事務所 代表弁理士(弁理士登録番号:第16197号)。 中小企業や個人の方を中心に、商標価値評価(簡易RFR)や 3Dプリント試作×知財戦略のサポートを行っている。商工会議所、金融機関、各種業界団体などでの講演実績も多数。 幼い頃、大切にしていたガンダムのカードをパクられた経験から、「大切なものをパクられないようにする」ために特許・商標・意匠などの知的財産の取得支援を行うとともに、取得した知財の価値を実感できるよう「守るだけでなく活かす」ことを重視している。 支援先は、メーカー、スタートアップ企業、個人発明家、デザイン会社、 マーケティング会社、ミシュラン掲載の飲食店など多岐にわたり、アイデアの保護や出願、3D試作、価値評価など、案件ごとに必要な部分を組み合わせてサポートしている。